説明

シリンダの保護装置

【課題】作業機を駆動するためのシリンダの露出側に配置する保護装置は、従来堅牢に構成されていたために、障害物と当接すると永久変形して油圧シリンダの伸縮に合わせて摺動できない場合があったので、容易に変形しない保護装置を提供する。
【解決手段】保護装置30をガード部材32と、該ガード部材32を伸縮自在に収納可能とするスライドガイド31より構成し、該スライドガイド31をシリンダチューブ9aに取り付け、ガード部材32の先端をピストンロッド9b先端に取り付け、該ガード部材32をバネ鋼で平板に構成し、該ガード部材32の幅をピストンロッドの直径よりも広くし、ガード部材32の基部側端の幅方向両側には切欠32aを設け、該切欠32aにスライダー33を嵌合し、ガード部材32の先端をロール状に曲げて枢支部を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックホーやローダー等の作業車に備えられる油圧シリンダの保護装置に関し、特に、油圧シリンダのロッドの損傷を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、掘削作業機を搭載したバックホーにおいて、ブームやアームやバケット等を回動駆動するために油圧シリンダが用いられている。例えば、ブームを回動するために、ブームの中途部とブームブラケットの間に油圧シリンダを介装した場合、バケットを手前側に引き寄せたときに土等がロッドに付着して、油圧シリンダを伸縮せたときに、土等の異物がシリンダチューブとロッドの間に介装したシールに損傷を与え、油漏れ等の不具合か発生するため、ピストンロッドの前面側の長手方向に沿ってカバーが摺動するように設けられている。
【0003】
このブームシリンダのロッドを保護するためのカバーは、バケットの変わりにブレーカ等を装着した際に、該ブレーカをブーム側に引き寄せるように回動したときに、先端がカバーに当接しても、容易に横方向に逃がせるように断面視山形状に構成した技術がある。(例えば、特許文献1参照)。
また、バケットを回動するためのバケットシリンダは掘削時に前面に位置するために、障害物に当接し易い。そこで、ピストンロッドを覆うように断面視「コ」字型に構成した技術(例えば、特許文献2参照)や半割のパイプ状としてロッド部全体を両側から覆う構成とした技術もある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−220853号公報
【特許文献2】特開平10−292426号公報
【特許文献3】特開2001−82414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述のような従来の技術は、ロッドを障害物から保護するために、カバー自体の断面形状を山形や「コ」字型やU字状や丸型等に構成して剛性を持たせて、容易に変形し難い構成としているので、大きな力がかかって局所的に永久変形(塑性変形)したり、尖った障害物が当たって窪みや凹みができた場合等では、油圧シリンダを伸縮した時に、カバーと該カバーのガイドの間で摺動するときに、異音が発生したり、スムースに摺動できなかったたりし、カバーが大きく変形すると、保護装置自体が破損することがあった。また、ピストンロッド先端がボルト等で作業機側に固定する構成であると、障害物が当接したときに、ボルトの固定部で変形してしまい、油圧シリンダの伸縮に伴いカバーは歪んだ(永久変形した)まま摺動することになり、コジレたり、摩耗が生じたりすることがあった。
【0005】
そこで本発明は、保護装置はガード自体を変形しても再現性を有する平板のバネ鋼等で構成して、平板をピストンロッドの前面に配置し、障害物がガードに当たっても曲がるだけで永久変形することはなく、障害物が直接ピストンロッドに当たらないように構成して、ピストンロッド表面が損傷することがないようにし、構造が簡単で安価なガードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、作業機を駆動するためのシリンダの露出側に配置する保護装置であって、該保護装置をガード部材と、該ガード部材を伸縮自在に収納可能とするスライドガイドより構成し、該スライドガイドをシリンダチューブに取り付け、ガード部材の先端をピストンロッド先端に取り付け、該ガード部材をバネ鋼により構成したものである。
【0008】
請求項2においては、作業機を駆動するためのシリンダの露出側に配置する保護装置であって、該保護装置をガード部材と、該ガード部材を伸縮自在に収納可能とするスライドガイドより構成し、該スライドガイドをシリンダチューブに取り付け、ガード部材の先端をピストンロッド先端に取り付け、該ガード部材を平板により構成したものである。
【0009】
請求項3においては、前記ガード部材の幅をピストンロッドの直径よりも広くしたものである。
請求項4においては、前記ガード部材の基部側端の幅方向両側に切欠を設け、該切欠にスライダーを嵌合したものである。
請求項5においては、前記ガード部材の先端をロール状に曲げて枢支部を形成し、該枢支部をピストンロッド先端に軸部材で枢支したものである。
請求項6においては、前記枢支部と軸部材の間にブッシュを介装したものである。
請求項7においては、前記ピストンロッド先端に設ける支持部に長孔を設けて、前記軸部材を枢支するものである。
【0010】
請求項8においては、前記スライドガイドの幅方向両側に取付ステーを突出し、シリンダチューブの側面より取付座を前記取付ステー向かって突出して、取付ステーと取付座をボルトで固定するとともに、該取付ステーの取付孔を長孔としたものである。
請求項9においては、前記スライドガイドの幅方向両側に取付ステーを突出し、シリンダチューブの側面より取付座を前記取付ステー向かって突出して、取付ステーと取付座をボルトで固定するとともに、該取付座をシリンダに設けるクッション部を避けた基部側に設けたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、作業時等でガード部材に障害物が当接しても、ガード部材自体が有する弾性により弾性変形し、当接が解除されると元の状態に戻り、ガード部材が変形してスライドガイドに収納できなくなり、破損したりすることを防止できる。つまり、従来では障害物と当接すると塑性変形してガード部材の交換が必要であったが、本発明のようにバネ鋼で構成することで、弾性変形するだけなので、寿命が長くメンテナンスは殆ど不要となる。そして、障害物に当接したときは、バネ鋼が緩衝部材となり、衝撃を緩和しピストンロッドの傷つきを防止できる。
【0012】
請求項2においては、ガード部材が平板で構成できるので、構成が簡単で安価に構成することができる。そして、障害物と当接したときには、ピストンロッドに対して面または線で当接するので、ピストンロッドは傷つき難くなる。
【0013】
請求項3においては、ガード部材はピストンロッドよりも幅広となるので、ピストンロッドの開放側の面を覆うことが可能となり、障害物から直接ピストンロッドに当接することを防止できる。
請求項4においては、スライダーによりガード部材とスライドガイドとの間の摺動をスムースに行うことが可能となり、該スライダーはガード部材に形成する切欠に嵌合するだけなので、工具等が不要で簡単に組み立てることができ、確実にスライダーをガード部材に保持できる。該切欠も平板に形成するため安価で容易に加工することができる。
請求項5においては、枢支部はロール状に曲げるだけなので安価に簡単に構成することができる。そして、ピストンロッドに対してガード部材を回動自在に枢支されるので、障害物がガード部材に当接したときに、ガード部材の弾性変形とともに枢支部を中心に回動し、ガード部材の取付部における変形を防止することができる。
請求項6においては、ブッシュをガード部材と軸部材の間に介装することにより、回動時やガード部材の摺動時に金属同士が擦れて発生する異音等の発生を低減することができる。そして,ガード部材が軸部材に対してスムースに回動できるようになる。
請求項7においては、障害物と当接したときに、ガード部材の先端はピストンロッドに近づくように長孔内を摺動して変形して衝撃が吸収され、ガード部材にかかる衝撃は小さくなり、先端を固定した場合に比して塑性変形もし難くなる。また、サイズの異なるシリンダに同じ支持部を使用することが可能となり、コスト低減化が図れる。
【0014】
請求項8においては、サイズが異なるシリンダにスライドガイドを取り付けるときに、長孔により寸法差を吸収することができ、保護装置はシリンダサイズが異なっても取り付けることが可能となり、保護装置は兼用できて部品の種類の増加を抑えコスト低減化が図れる。
請求項9においては、シリンダの最伸長時にクッション部において高応力が発生してシリンダチューブが変形するが、取付座はこのクッション部から離れて設けられるので、変形の影響がなく、シリンダ伸縮時においてスライドガイド取付ステー溶接部の応力を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の保護装置を装備した掘削作業者の全体側面図、図2はアームに保護装置を装着した斜視図、図3は油圧シリンダに保護装置を取り付けた側面図、図4は油圧シリンダに保護装置を取り付けた正面図、図5はガード部材の側面図、図6はガード部材の平面図、図7は油圧シリンダの平面図、図8は油圧シリンダの側面図一部断面図、図9は油圧シリンダの正面図、図10はスライドガイドの平面図、図11はスライドガイドの側面図、図12はスライドガイドの正面図である。
【0016】
まず、本発明の保護装置を有する掘削作業車としてバックホーを実施例として説明する。図1において、バックホーは、本機の前部に作業機7を装着しており、本機はクローラ式走行装置1の上部中央に旋回台軸受17を介して旋回フレーム2を左右旋回可能に支持しており、該クローラ式走行装置1の前後一側には、ブレード3を上下回動自在に配設している。旋回フレーム2の上部にはエンジン等を被覆するボンネット14が配設され、該ボンネット14上に運転席16を配置し、該運転席16の近傍に油圧操作レバー21やロックレバー23等を配置し、運転席16前方に走行レバー25やペダル等を配置して運転操作部を構成している。該運転操作部の上方にはキャノピー8が配設されている。
【0017】
また、旋回フレーム2の前端部にはブームブラケット12が左右回動自在に取り付けられ、該ブームブラケット12にはブーム6の下端部が上下回動自在に支持されている。ブーム6は途中部で前方に屈曲して略「く」字状に形成されており、該ブーム6の上端部にはアーム5が回動自在に支持され、該アーム5の先端部には作業用アタッチメントであるバケット4が回動自在に支持されている。これらのブーム6、アーム5、及びバケット4等により作業機7が構成されている。
【0018】
そして、前記ブーム6はブームシリンダ11により回動動作され、アーム5はアームシリンダ10により回動動作され、バケット4はバケットシリンダ9により回動動作される。前記ブームシリンダ11、アームシリンダ10、及びバケットシリンダ9は油圧シリンダにより構成され、運転操作部15に配設される油圧操作レバー21やペダル等の回動操作によりパイロットバルブが切り換えられて、該パイロットバルブから主バルブ(方向制御バルブ)を切り換えて、旋回台2のボンネット14内に配設される油圧ポンプから油圧ホースを通じて圧油が供給されることにより伸縮駆動や回転駆動される。
【0019】
次に、本発明のシリンダの保護装置30について説明する。本実施例ではバケットシリンダ(以下油圧シリンダと称する)9の保護装置30について説明するが、その他の油圧シリンダに適用することも可能である。
図2、図3に示すように、保護装置30は主にスライドガイド31とガード部材32からなり、図8に示すように、油圧シリンダ9は主にシリンダチューブ9aと、該シリンダチューブ9a内に収納さるピストン9dと、該ピストン9dに固定されてシリンダチューブ9aより突出されるピストンロッド9b等から構成される。そして、保護装置30のスライドガイド31はシリンダチューブ9a外周の露出側に取り付けられ、ガード部材32はスライドガイド31内に進退自在に設けて、その先端をピストンロッド9b先端に設けた支持部34に取り付けている。なお、保護装置30は本体や作業機に対して露出側、詰まり反対側に配設され、具体的には、バケットシリンダ9の場合図1においてアーム5の前面側(アーム5と反対側)に配設され、アームシリンダ10の場合ブーム6の上面(ブーム6と反対側)に取り付けられる。
【0020】
前記ガード部材32は図5、図6に示すように、平板のバネ鋼で構成されている。即ち、ガード部材32は弾力性を有した固い金属製の短冊状の板体で構成されている。このようにバネ鋼で構成することにより、障害物が当接しても弾性変形して、当接が解除されれば元の状態に戻り、永久変形(塑性変形)することが殆どない材料で構成しているので、従来のように摺動する側の部材が障害物との当接で塑性変形すると、スライドガイド31内に収納されるときに引っ掛かったりすることがあったが、本発明のように構成することでスムースな摺動を確保することができる。そして、障害物と当接しても表面に傷つく程度で塑性変形することが殆どないため、寿命が長くメンテナンスも殆ど必要がない。
【0021】
また、平板で構成しているために、コストが安く入手し易く、後述する切欠32aや枢支部32bを切断や曲げ等による加工によって簡単に形成することができる。そして、ガード部材32が平板であるため、障害物がガード部材32に当接して、該ガード部材32が弾性変形してピストンロッド9bと当接するときには面または線で当接するため、ピストンロッド9a自体は殆ど傷つくことがないのである。なお、ピストンロッド9a自体が作業をするために必要な剛性を有しているため、半径方向からの応力に対しても十分な剛性を有している。但し、ピストンロッド9bへの傷つきを更に低減するために、ガード部材32の裏面、つまり、ピストンロッド9bと対向する面にクッション部材を貼設することも可能である。該クッション部材としては、例えは、ゴムや発泡樹脂や弾性を有する合成樹脂等であり、表面は撥水性を有して滑らかに構成することで泥やゴミ等が付着し難くなり、ガード部材32に障害物が当接して、該ガード部材32がピストンロッド9bに当接したときには、クッション部材とガード部材32の弾性によりショックを緩和し、ピストンロッド9b表面の傷つきを防止することができるのである。
【0022】
ガード部材32の長手方向の長さは、シリンダチューブ9aと略同じ長さとし、幅はシリンダチューブ9aの幅(直径)よりも短く(長くても可能)、ピストンロッド9bの幅(直径)よりも広く構成している。こうして、油圧シリンダを伸縮してもガード部材32も同時にスライドしてピストンロッド9bの露出側を常時覆うことになり、障害物から保護することができるのである。
【0023】
図5、図6に示すように、ガード部材32の基部側、つまり、スライドガイド31に収納する側の端部の幅方向両側には、切欠32a・32aが設けられてスライダー33・33を嵌合可能としている。即ち、切欠32aは四角形状の切欠として凹部を構成し、スライダー33は長手方向の長さを前記切欠32aの長さと同じとしている。該スライダー33は断面視コ字状に構成し、厚さ方向中央に溝33aを長手方向に沿って形成し、該溝33aの幅をガード部材32の厚さと略同じとしている。こうして、スライダー33を側方より切欠32aに嵌合することで簡単に取り付けることができ、図4に示すように取り付けた状態でスライドガイド31に挿入すると、ガード部材32の摺動に対して位置ずれすることがなく、ガード部材32とスライドガイド31の間にはスライダー33の介装によって、その間に所定の空間が形成されている。
また、スライダー33の高さはスライドガイド31のレール部の内側の高さに合わせ、スライダー33を切欠32aに嵌合した状態でその幅をスライドガイド31の内幅と同じとしている。該スライダー33は耐磨耗性があり耐衝撃性を有し、弾性変形可能な合成樹脂等で構成している。
【0024】
このように、切欠32aはパンチや切削等により容易に形成することが可能であり、しかも、ガード部材32とスライドガイド31の間にスライダー33・33が介装されることで、ガード部材32とスライドガイド31は直接接触することがなく油圧シリンダ9の伸縮に対して、異音の発生がなくガード部材32はスライドガイド31内をスムースに摺動することが可能であり、異音等も発生することがない。そして、例えスライドガイド31が障害物に当接して一部塑性変形しても、スライダー33がその塑性変形部分を通過するときにスライダー33は弾性変形して通過することが可能となり、伸縮を妨げるようなことはないのである。
【0025】
ガード部材32の先端部は、図5、図6に示すように、ロール状に曲げて枢支部32bが形成されている。該枢支部32bはピストンロッド9b先端に設けた支持部34に軸部材となる枢支軸35を介して枢支される。該枢支軸35の軸心はガード部材32の長手方向に対して直角となっている。こうして、枢支部32bは曲げ形成により容易に構成することができ、しかも、ピストンロッド9bとガード部材32が回動自在に連結されることによって、ガード部材32が障害物に当接して弾性変形したときに、ガード部材32は枢支軸35を中心に回動するようになり、連結部分において塑性変形することがなくなる。つまり、ピストンロッド9bとガード部材32の先端をボルト等により強固に固定して連結すると、障害物と当接したときに固定部分に応力が集中して折り曲げられ塑性変形してしまう。塑性変形すると、ガード部材32とスライドガイド31が平行とならず、油圧シリンダを伸縮させた際に、摺動部に無理な力がかかりいずれか一方または両方に摩耗が生じたり、伸縮自体が困難となったりしてしまい、部品交換等が必要となるのである。
【0026】
そして、前記枢支部32bと枢支軸35の間には円筒状のブッシュ36が介装されている。該ブッシュ36はゴムまたは合成樹脂等で構成され、ガード部材32が枢支軸35に対してスムースに回動できるようにしている。そして、該ブッシュ36を介装することにより、枢支部32bと枢支軸35との間で回動時やガード部材32の摺動時に金属同士が擦れて異音等が発生することがないようにしている。
【0027】
前記ガード部材32を連結するための支持部34は、図7、図8、図9に示すように、ピストンロッド9b先端に設けるボス部9c上に設けられており、支持部34は平面視略「コ」字状に構成して、ボス部9cに溶接等により一体的に固設され、またはボルト等により着脱可能に構成されている。一体的に構成することにより製造が安価で簡単に行うことができ、着脱可能とすることで部品交換ができ、他の様式の油圧シリンダにも取り付け可能となり、部品の種類を低減できる。
略「コ」字状に構成した支持部34は、その側板それぞれに枢支軸35を軸支するための長孔34aが開口されている。該長孔34aはピストンロッド9aの軸心方向に対して直角方向、つまり、ガード部材32が取り付けられた状態で、ガード部材32の面に対して直角方向に長く開口されている。このように構成することで、シリンダサイズの異なる油圧シリンダに取り付けた場合に、シリンダ中心からスライドガイド31までの距離が異なっても、ピストンロッドのボス部に設けた支持部34の長孔34aによって許容することが可能となり、つまり、軸心からの距離を合わせることが可能となって油圧シリンダの軸心とガード部材32を平行に配置できて、油圧シリンダを伸縮させたときに摩耗等が発生することがないのである。また、ガード部材32に障害物等が当接した場合に、ガード部材32の先端部は長孔34aに沿ってピストンロッド側へ摺動し、ガード部材32と支持部34の連結部における変形量は小さくなり、ガード部材32の耐久性を向上することができる。
【0028】
前記スライドガイド31は、図10、図11、図12に示すように、偏平の角パイプ状で鞘の如く構成されている。該スライドガイド31の長手方向の長さはシリンダチューブ9aの長さより若干短く、幅はシリンダチューブ9aの直径と略同等または直径より短くし、ピストンロッド9bよりも長く構成している。そして、中空の空間内に板状の前記ガード部材32を収納できる空間を形成している。
【0029】
スライドガイド31の一端(基部側)の取付部31aは油圧シリンダの基部側(ヘッド側)のボス部9eの外周部分にボルト等により固定される。該スライドガイド31の一端の取付部31aは上下に押しつぶすようにして厚さ方向を短く構成して、ガード部材32が突き抜けないようにし、取付部31aの幅方向中央には固定孔31bが開口されてボルト等を挿入できるようにし、ボス部9e外周に螺装固定できるようにしている。スライドガイド31の他端の開口部はシリンダチューブ側(下側)を広げた構成として、ガード部材32を挿入し易くしている。
【0030】
そして、スライドガイド31の他側のシリンダチューブへの取付部は、両側に取付ステー37・37を固設して、シリンダチューブ9aの外周に固設した取付座38・38にボルト等によって固定可能としている。前記取付ステー37・37はスライドガイド31の両側に図12において外側下方へ下がるように「ハ」字状に固定され、該取付ステー37の先端側には、後述する取付座38とボルトにより固定するための取付孔37aが開口されている。該取付孔37aは、図4に示すように、油圧シリンダ9に取り付けた状態で略半径方向に長い長孔として開口されている。但し、取付ステー37は図12に二つ両側に設けることも図4に示すように一体的に設けることも可能である。
このように構成することにより、バケットシリンダやアームシリンダ等によって油圧シリンダのサイズが異なっても、長孔37aにより吸収することが可能となり、共通部品を使用できてコスト低減化が図れる。
【0031】
前記取付座38は図7、図8、図9に示すように、プレート状に構成してシリンダチューブ9aの外周より半径方向に左右両外側斜め上方に突出して固設され、先端部に取付孔38aが開口されている。該取付孔38aと前記長孔37aの位置を合わせてボルト等により固定する構成としている。
該取付座38のシリンダチューブ外周での取付位置は、油圧シリンダ9のロッド側キャップ39近傍のロッド側室に配置されるクッション部40を避けて、該クッション部40よりもシリンダ基部側に溶接等により取り付けている。つまり、シリンダにおいては伸縮ストロークエンド部分にはクッション機構が設けられており、該クッション機構によりストロークエンドでキャップに当たり停止する時の衝撃を緩和するようにしている。
【0032】
このシリンダのクッション機構は、ストロークエンド近くにキャップとピストンとにより密閉する空間を設けて、ピストンがエンドに至ると、密閉室内の油圧が圧縮されクッション作用が得られ、絞りながら排出するようにしている。本実施例ではロッド側室内に密閉空間を形成してクッション部40としている。そして、ピストン9dがロッド側エンドに至ると密閉空間の圧力が高くなり、この圧力でシリンダチューブ9aも膨張して変形してしまうのである。前記取付座38をこのクッション部40の外周に溶接すると、取付座溶接部に高応力が発生し破損してしまう。そこで、本実施例ではこのクッション部40を避けた位置に取付座38を取り付けるのである。該取付座38はこのクッション部40を避けてロッド側キャップ39が位置するシリンダチューブ9aの外周に取り付けることも考えられるが、溶接により固定した場合には、熱変形が生じてしまい、ロッド側キャップ39の取付位置も変形して隙間が生じる可能性もある。そこで、取付座38はクッション部40を避けたシリンダ基部側(ボトム側)に設けているのである。
【0033】
このように、スライドガイド31のピストンロッド側のチェーンチューブ外周の取付位置は、クッション部40を避けた基部側にずらせて配置することで、ピストンがストロークエンドまで伸長したときにクッション部40が膨らんで変形しても取付座38の溶接部は変形することがなく、スライドガイド31も位置ずれすることがなく、ガード部材32を確実にガイドすることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の保護装置を装備した掘削作業者の全体側面図。
【図2】アームに保護装置を装着した斜視図。
【図3】油圧シリンダに保護装置を取り付けた側面図。
【図4】油圧シリンダに保護装置を取り付けた正面図。
【図5】ガード部材の側面図。
【図6】ガード部材の平面図。
【図7】油圧シリンダの平面図。
【図8】油圧シリンダの側面図一部断面図。
【図9】油圧シリンダの正面図。
【図10】スライドガイドの平面図。
【図11】スライドガイドの側面図。
【図12】スライドガイドの正面図。
【符号の説明】
【0035】
9 油圧シリンダ
9a シリンダチューブ
9b シリンダロッド
30 保護装置
31 スライドガイド
32 ガード部材
32a 切欠
33 スライダー
34 支持部
35 枢支軸
36 ブッシュ
37 取付ステー
38 取付座
40 クッション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を駆動するためのシリンダの露出側に配置する保護装置であって、該保護装置をガード部材と、該ガード部材を伸縮自在に収納可能とするスライドガイドより構成し、該スライドガイドをシリンダチューブに取り付け、ガード部材の先端をピストンロッド先端に取り付け、該ガード部材をバネ鋼により構成したことを特徴とするシリンダの保護装置。
【請求項2】
作業機を駆動するためのシリンダの露出側に配置する保護装置であって、該保護装置をガード部材と、該ガード部材を伸縮自在に収納可能とするスライドガイドより構成し、該スライドガイドをシリンダチューブに取り付け、ガード部材の先端をピストンロッド先端に取り付け、該ガード部材を平板により構成したことを特徴とするシリンダの保護装置。
【請求項3】
前記ガード部材の幅をピストンロッドの直径よりも広くしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリンダの保護装置。
【請求項4】
前記ガード部材の基部側端の幅方向両側に切欠を設け、該切欠にスライダーを嵌合したことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3に記載のシリンダの保護装置。
【請求項5】
前記ガード部材の先端をロール状に曲げて枢支部を形成し、該枢支部をピストンロッド先端に軸部材で枢支したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリンダの保護装置。
【請求項6】
前記枢支部と軸部材の間にブッシュを介装したことを特徴とする請求項5に記載のシリンダの保護装置。
【請求項7】
前記ピストンロッド先端に設ける支持部に長孔を設けて、前記軸部材を枢支することを特徴とする請求項5に記載のシリンダの保護装置。
【請求項8】
前記スライドガイドの幅方向両側に取付ステーを突出し、シリンダチューブの側面より取付座を前記取付ステー向かって突出して、取付ステーと取付座をボルトで固定するとともに、該取付ステーの取付孔を長孔としたことを特徴とする請求項1また請求項2に記載のシリンダの保護装置。
【請求項9】
前記スライドガイドの幅方向両側に取付ステーを突出し、シリンダチューブの側面より取付座を前記取付ステー向かって突出して、取付ステーと取付座をボルトで固定するとともに、該取付座をシリンダに設けるクッション部を避けた基部側に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシリンダの保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−16854(P2006−16854A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195835(P2004−195835)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】