説明

シンチレータを有する放射線測定器

【課題】放射線感度や計数精度が高く、十分大きな光信号出力を持つシンチレータを具備した放射線線量計を提供する。
【解決手段】シンチレータ3の放射線に対する光出力を増やすためシンチレータ3の容積を増加させ、シンチレータ3を放射線が透過できる鏡2で覆い、その鏡2を透過してくる放射線によりシンチレータ3で蛍光を発光させ、その発光全てを鏡2で集光し光センサの受光エリアに導くことにより、大きな光信号を得ることができ、放射線感度や計数精度の高い放射線線量計が容昜に得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線計測におけるシンチレーション光の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
高S/N比かつ高感度の放射線測定技術に関する。
【先行技術文献】
【0003】
【非特許文献】
【非特許文献】 三門正吾「紙筒ガイガー計数管の性能の検討」Isotope News,No.636,25−28(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
東日本大震災後に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故は、周辺に今なお発生している放射線により、その地区に居住していた多くの住民を長期にわたり避難させ、近辺を産地とする諸々の食材にまで影響を及ぼしている。そのような放射能汚染の結果、現在、廉価でかつ小型・軽量で持ち運べる放射線線量計に対する社会的ニーズは飛躍的に高まっている。そのような携帯型の放射線線量計の放射線検出部には、GM管を使用したものやシンチレータを使用したものなどがある。前者は放射線によりGM管の内部で発生する高電圧放電を検出に使うため検出部の出力信号は、すでに十分な大きさを持った電気信号であり、放射線感度や計数精度は比較的高く良好である。一方、後者は放射線を受けた時に発生するシンチレーション光(蛍光)を使うため検出部の出力は微弱な光信号である。一般に微弱信号の増幅においては、S/Nや感度は、初段の増幅度、次段の増幅度、・・・と、順番に影響度が下がる。言い換えれば、S/Nや感度は、初段の増幅度が最も影響を与える。そのため、後者の場合、後段に増幅度の高い光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードなど増幅度の高いものが用いられてはいてもS/Nや感度は初段に相当するシンチレータの微弱な光信号出力で決定されている。すなわち、現状の携帯型放射線線量計に使われているシンチレータは、微弱な光信号出力であるが故の計数ミスの問題を引き起こしており、放射線感度や計数精度という点で不十分であると考えられる。
そこで本発明は、高S/Nで、かつ放射線感度や計数精度が高い、十分大きな光信号出力を持つシンチレータを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記2種類の携帯型放射線線量計のGM管とシンチレータを比較して、放射線検出という初段部分で何が異なり上記の課題が発生しているのかを考える。引用した上記の文献によれば、手作りの紙筒GM管でも市販のGM管に相当する計数精度は確保でき、紙筒の直径と筒の長さの積(側面から見たGM管の断面積)に比例して検出感度は向上する。そのことから現在のシンチレータが抱える問題の一つは、放射線が入射するシンチレータの容積である。それは、市販のGM管、シンチレータの容積比較でも明らかにGM管の方が容積が大きく、より多くの放射線がGM管に入射していると考えられることからも理解できる。気体、液体、固体と放射線により蛍光を発する物質は様々な種類があり、それらの発光スペクトル特性や入射放射線による発光効率は、物質固有の物理量である。それに対し、全発光量はシンチレータの容積で変わる量であり、機械的な寸法で加減可能である。また、赤外線、可視光線、紫外線などの光線は鏡でその光が反射するのに対し、X線やガンマ線のような放射線は薄い鏡面は透過してしまう。これらのことを活用すれば、一定の大容積のシンチレータを鏡で覆い、透過してくる放射線により蛍光を発光させ、その全ての発光を反射鏡で集光し光センサの受光エリアに導くことにより、放射線−光変換という初段のところでノイズの少ない十分大きな光信号を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0006】
シンチレータの容積を増やし、周囲を反射鏡で覆うことによりシンチレータ内で発生した蛍光の全発光を光センサの受光エリアに集光するよう光学的に設計する。初段のその十分大きな光信号出力は、S/N比や感度を改善するから、光センサ以降の後段の電子回路設計を適正に行えば、放射線感度や計数精度の高い放射線線量計が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】発明を構成する「個々の部品の断面図」である
【図2】発明の要件になる部品を一体化した「発明の主要部分の図」である
【図3】従来技術を示した図である
【発明を実施するための形態】
【0008】
シンチレータの発光スペクトル強度に整合する受光スペクトル感度を持つ光センサを採用し、そのセンサの受光エリアに確実に集光すること、シンチレータの外側の光(外光)を完全に遮蔽すること等の光学的設計を適正化すれば、高価な光電子増倍管を使わずに放射線感度や計数精度が高くかつ廉価な放射線線量計が容易に得られる。
【実施例】
【0009】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、X線やガンマ線により370nmをピーク波長とする紫外線を蛍光発光することで有名である。また、370nmをピーク感度波長とする光センサも市販されている。これらを組み合わせ、シンチレータとしてPETを使い、それが収納される型枠の内側に鏡面としての金属メッキを施し光センサと共に封入する(図1、図2参照)。型枠や金属メッキの厚さを放射線が透過するよう十分薄く製作すれば、飛来する放射線は、シンチレータ内部まで進入し、そこで370nmをピーク波長とする紫外線領域の蛍光を発する。発生した紫外光は全て鏡面で反射し光センサの受光エリアに集光するよう光学的設計を適正化すれば、放射線により十分大きな電気信号出力を得ることが可能になる。
【0010】
従来からあるプラスティックシンチレータは、可視光領域にピーク感度波長を有するものとして有名である。これについても整合する光センサを用い、上記と同様にして放射線により十分大きな電気信号出力を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0011】
図1で示す1、2、3、4は下記である。
1:反射鏡、シンチレータ、光センサを内部に収納し、それらを機械的に支持する型枠で、上型枠(1a)と下型枠(1b)で構成される。上型枠と下型枠は隙間なく接触し、反射鏡とシンチレータを包みこんでいる。なお、型枠の肉厚は、被測定放射線が十分透過するよう設計する。
2:型枠の内面又はシンチレータの外面に存在し、シンチレータの内部の蛍光を反射する反射鏡
3:反射鏡の内側に存在するシンチレータ
4:下型枠の切れている部分に挿入され、鏡面の無いところでシンチレータに受光エリアが接触している光センサ
図3で示す3′、4′は下記である。
3′:1層または複数層のシンチレータ
4′:シンチレータに受光エリアが接している光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレータの外面またはシンチレータを容れた容器の外面を、被測定放射線は透過し、該シンチレータが発するシンチレーション光は反射する反射鏡で覆い、該反射鏡の一部に鏡面の無いエリアを設け、その部分を該シンチレータから外部への該シンチレーション光の取り出し口として具備していることを特徴とする放射線測定器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−44742(P2013−44742A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199967(P2011−199967)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(508203965)
【Fターム(参考)】