説明

シートカッター及びスリット方法

【課題】最終的に形成されるシートの品質を向上させるシートカッター及びスリット方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係るシートカッターは、シート400を回転する上部ローラー601の外周面と回転する下部ローラー602の外周面との間に挟み込んで後方に搬送するメインフィードロール600と、メインフィードロールの後方に配置され、シートを回転する上部ローラー801の外周面と回転する下部ローラー802の外周面との間に挟み込んで後方に搬送するサブフィードロール800と、各フィードロールの間に配置され、シートの幅が所定の幅となるようにシートをスリットするスリッター700と、各ローラーの回転数及び/又はトルクを制御することにより、各フィードロール間におけるシート400の張力を制御するサーボモータ(SM1、SM2)と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やフィルム等のシートの幅が所定の幅となるようにシートをスリッターにより切断するシートカッター、及び、シートをスリッターにより切断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場等において、製造された連続的に繋がった紙やフィルム等のシートは、ロール状に巻かれた後、加工工場等に出荷される。加工工場等では、ロール状のシートは、シートカッターに供給され、その幅が所定の幅となるようにスリット(切断)された後、所定の長さにカットされる。これにより、所定の幅及び所定の長さを有するシートが連続的に形成される。このような従来技術に係るシートカッターの構成について、図6及び図7を参照して説明する。
【0003】
図6は、従来技術に係るシートカッターの構成を示す模式図である。図7は、ロール状に巻かれたシートを保持し、シートカッターに連続的にシートを供給するアンリールスタンドを示す模式図である。
【0004】
図7に示すアンリールスタンド10は、ベース部材11の上に互いに所定の間隔をおいて固定された2つの支持板12と、これらの支持板12の間に回転可能に取り付けられた回転軸13と、を有する。なお、図7には、便宜上、2つの支持板12のうちの一方の支持板12のみしか表現されていない。
【0005】
アンリールスタンド10は、ロール状に巻かれたシート20の中心に形成された貫通穴に回転軸13を通すことにより、このロール状のシート20を回転可能に保持する。また、アンリールスタンド10は、回転軸13の回転すなわちロール状のシート20の回転に対して制動を行うブレーキ14が取り付けられている。
【0006】
このロール状のシート20の外周から、連続的に繋がった一枚のシート25が、取り出され、矢印Aに示すように2つの回転可能なローラー31及びローラー32を有する補助ロール30に導かれた後、矢印Bに示す方向に導かれ、図6に示すシートカッターに供給される。
【0007】
図6に示すシートカッターにおいて、アンリールスタンド10から補助ロール30を介して供給されたシート25は、2つの回転可能なローラー41及びローラー42を有するリードインロール40に導かれる。リードインロール40を通過したシート25は、スリッター50により、その幅が所定の幅となるように連続的にスリットされる。すなわち、スリッター50は、回転する上刃51と回転する下刃52とを用いてシート25を連続的に切断する。スリッター50により所定の幅に形成されたシート25は、フィードロール60に向かう。
【0008】
フィードロール60は、回転可能な上部ローラー61及び下部ローラー62を有する。下部ローラー62は、サーボモータ(SM1)から動力を供給されることにより回転する。上部ローラー61は、その外周面が下部ローラー62の外周面に当接している。よって、下部ローラー62の回転に伴って、上部ローラー61も同期して回転する。かかるフィードロール60は、回転する上部ローラー61の外周面と下部ローラー62の外周面との間にシート25を挟み込むことにより、シート25を後方に搬送する。これにより、フィードロール60がシート25を引っ張ることにより、アンリールスタンド10に保持されたロール状のシート20から、シート25が、引っ張られ、補助ロール30及びリードインロール40を介して搬送される。すなわち、フィードロール60が、シート25に対して移動力(走行力)を与えている。
【0009】
フィードロール60の後方には、ロータリーナイフ70が配置されている。ロータリーナイフ70は、回転可能な上部ドラム71及び下部ドラム72を有する。上部ドラム71及び下部ドラム72の外周面には、それぞれ、刃71a及び刃72aが形成されている。よって、これらの刃71a及び刃72aが、一定時間間隔ごとにシート25を圧接することにより、シート25は所定の長さにカットされる。カットされたシートは、複数のローラー及びベルトにより構成されたコンベア部80により案内され、最終的なシート28としてレイボーイ90に格納される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来技術に係るシートカッターにあっては、シートにおけるスリッターにより切断された面(切断面)の形状が悪化して、最終的な製品としてのシートの品質が低下する、という問題がある。シートの切断面の良否は、製品を購入して利用するユーザにより非常に重要視される点であるため、かかる問題は、製品を生産してユーザに提供する生産業者等において致命的な問題となりかねない。
【0011】
さらに、シートがスリッターにより切断される際に、紙粉(ダスト)が発生及び散乱してシートに付着することもまた、最終的な製品としてのシートの品質を低下させる要因となっている。例えば、生産業者等が、紙粉が付着したままの印刷用紙をユーザである印刷業者等に納品した場合、印刷業者等がその印刷用紙にそのまま印刷を行うと、紙粉が付着した部分には塗料が付着しないため、印刷面に白抜けが生ずることになる。よって、印刷業者等は、印刷前に印刷用紙を掃除しなくてはならない。また、印刷機のブランケットに付着した紙粉を掃除しなくてはならない。この結果、生産業者等は、印刷業者等から重要なクレームを受けることになる。
【0012】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、最終的に形成されるシートの品質を向上させるシートカッター及びスリット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
まず、本発明者は、シートの切断面の形状が悪化する原因を模索した結果、シートにおいてスリッターにより切断しようとする部分の張力が大きいほど、切断面の形状が悪化する、ということを発見した。
【0014】
図1は、スリッターによりシートをスリットする場合におけるシート及びスリッターを部分的に拡大して概念的に示す断面図である。図2は、シートの切断面の様子を拡大して概念的に示す断面図である。
【0015】
図1に示すスリッターは、上刃として皿型刃110を有し、下刃として椀型刃120を有する。椀型刃120は、椀型の形状を有しており、中心軸121の周りに回転する。皿型刃110は、皿型の形状を有しており、図示しない中心軸の周りに回転する。回転している皿型刃110及び椀型刃120に対して、紙面上奥行き方向にシート200が進行することによって、シート200は、その幅が所定の幅となるようにカットされる。
【0016】
図1から明らかなように、皿型刃110は、あたかもシート200に楔を打ち込むかのようにシート200に食い込んでいる。この場合、シート200の張力が大きければ大きいほど、シート200の切り口が皿型刃110を挟み込む力も大きくなる。換言すれば、シート200の張力が大きければ大きいほど、シート200の切り口は、皿型刃110の側面111及び側面112からの圧力(側圧)を受けやすい。よって、シート200の切り口は、皿型刃110の各側面によって、こすられ、時には、シヤーカットの途中から引き裂かれる場合もある。この場合、シート200は、ある厚さ201までにおいてはシヤーカットされるが、残余の部分202においては引き裂かれる。このようにシート200の残余の部分202が引き裂かれることにより、紙粉210が発生する。さらに、シート200のシヤーカットされた部分201に着目すると、この部分201のうち、皿型刃110の側面(腹側)112に接した部分201aには、良好な切断面が形成されることもあるが、皿型刃110の側面(背側)111に接した部分201bは、この側面111によりこすられてザラザラとなり、紙粉を発生させる。
【0017】
このような傾向は、シート200の張力が大きいほど、シート200の厚さが厚いほど、さらには、皿型刃110及び下刃椀型刃120のラップ量(図1において符号130で示した長さ)が大きいほど、強くなる。
【0018】
また、図1に示したスリッターではなく、図3に示すように上刃だけでなく下刃にも皿型刃110を用いたスリッターを用いた場合にも、図1に示したスリッターにおけるものと同様の傾向が見られる。ただし、図1に示した例では、シート200のうち、切断により分離する一方の部分200bのみが、上刃皿型刃110の側面(背側)111によりこすられてザラザラとなっているが、図3に示す例では、切断により分離する一方の部分200bだけでなく、他方の部分200aもまた、下刃皿型刃110の側面(背側)111によりこすられることになる。
【0019】
このような問題を解決するために、シート200の張力を小さくすることが考えられる。具体的には、図7に示したアンリールスタンド10において、ブレーキ14による制動力を制御する(低下させる)ことによって、図6に示したシートカッターにおいて、スリッター50によりスリットされる部分におけるシート25の張力を小さくする(スリッティングに適した適切な張力にする)手法を用いることが考えられる。しかしながら、図6に示したシートカッターの全長が通常約40m〜50m程度の長さにわたっていることから明らかなように、この手法を用いた場合には、アンリールスタンド10から供給されたシート25がシートカッター内において走行する際に、シート25にたるみ(歪み)が生じ、これによって、シート25に皺が生ずることになる。この結果、シート25が円滑に走行できないだけでなく、シート25は皺を生じた状態でスリッター50によりスリットされるため、シート25の切断面が劣化してしまう。
【0020】
そこで、本発明者は、シート25の走行に支障のない程度の充分な張力を維持したままシート25を走行させるとともに、シート25におけるスリッターによりカットされる部分のみの張力を局所的に制御することに着目した。ところが、図6に示した従来技術に係るシートカッターでは、アンリールスタンド10のブレーキ14によってシート25の張力を制御することは、マシン全体におけるシート25の張力を一体的に制御することになってしまうため、かかる制御を実現することはできない。
【0021】
したがって、本発明者は、シートにおけるスリットされる部分のみの張力を局所的に制御することに着目して、スリッターの前方に、シートに走行力を与えるメインフィードロール(第1搬送手段)を配置し、このメインフィードロールの後方にサブフィードロール(第2搬送手段)を配置し、メインフィードロールとサブフィードロールとの間にスリッターを配置する、という構成を見出した。この構成によれば、メインフィードロールの回転数及び/又はトルクを調整することにより、アンリールスタンドからこのメインフィードロールに至るまでのシートに対して走行に支障のない程度の充分な張力を与えるようにシートの張力を制御できる一方、サブフィードロールの回転数及び/又はトルクをメインフィードロールの回転数及び/又はトルクとの関係(ロールの直径、減速機の比率等)を考慮して調整することにより、メインフィードロールとサブフィードロールとの間におけるシートの張力、すなわち、スリッターによりカットされる部分におけるシートの張力を局所的に(単独に)制御できる。
【0022】
すなわち、本発明に係るシートカッターは、回転する上部ローラー及び下部ローラーを有し、シートを該上部ローラーの外周面と該下部ローラーの外周面との間に挟み込んで後方に搬送する第1搬送手段と、該第1搬送手段の後方に配置され、前記シートの幅が所定の幅となるように該シートを切断するスリット手段と、該スリット手段の後方に配置され、回転するローラーを有し、前記シートを該ローラーの外周面に当接させて後方に搬送する第2搬送手段と、各ローラーの回転数及びトルクのうちの少なくとも一方を制御することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0023】
さらにまた、本発明に係るスリット方法は、回転する第1上部ローラー及び第1下部ローラーの各々の外周面の間にシートを挟み込んで後方に搬送する段階と、前記第1上部ローラー及び前記第1下部ローラーを通過した前記シートを、回転する第2ローラーの外周面に当接させて後方に搬送する段階と、前記第1上部ローラー及び前記第1下部ローラーを通過した前記シートが前記第2ローラーを通過する前に、該シートの幅が所定の幅となるように該シートを切断する段階と、各ローラーの回転数及びトルクのうちの少なくとも一方を制御することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を制御する段階と、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】スリッターによりシートをスリットする場合におけるシート及びスリッターを部分的に拡大して概念的に示す断面図(第1例)である。
【図2】シートの切断面の様子を拡大して概念的に示す断面図である。
【図3】スリッターによりシートをスリットする場合におけるシート及びスリッターを部分的に拡大して概念的に示す断面図(第2例)である。
【図4】本発明の実施の形態に係るシートカッターの構成を概念的に示す模式図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るシートカッターにおけるメインフィードロールとサブフィードロールとの間におけるシートの張力の具体的な数値例を示すグラフである。
【図6】従来技術に係るシートカッターの構成を示す模式図である。
【図7】ロール状に巻かれたシートを保持し、シートカッターに連続的にシートを供給するアンリールスタンドを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係るシートカッターの構成を概念的に示す模式図である。図4に示すシートカッターには、例えば、ロール状に巻かれたシートを回転可能に保持するアンリールスタンド10(図7参照)から、連続的に繋がったシート400が供給される。
【0026】
アンリールスタンド10から供給されたシート400は、まず、回転可能なローラー501及びローラー502を有するリードインロール500に導かれる。このリードインロール500は、シート400の走行を支持及び案内する機能を有する。なお、アンリールスタンド10からリードインロール500の間には、シート400の走行を支持及び案内する任意の数のローラー等を設けてもよい。
【0027】
リードインロール500の後方には、シート400に走行力を与えるメインフィードロール(第1搬送手段)600が配置されている。メインフィードロール600は、回転可能な上部ローラー601及び下部ローラー602を有する。下部ローラー602は、サーボモータ(SM1)から動力を供給されることにより回転する。上部ローラー601は、その外周面が下部ローラー602の外周面に当接している。よって、下部ローラー602の回転に伴って、上部ローラー601も同期して回転する。このような構成を有するメインフィードロール600は、回転する上部ローラー601の外周面と下部ローラー602の外周面との間にシート400を挟み込むことにより、シート400を後方に搬送する。これにより、メインフィードロール600がシート400を引っ張ることにより、アンリールスタンド10に保持されたロール状のシート20から、シート25が、引っ張られ、リードインロール500を介して、シートカッター内を走行する。
【0028】
メインフィードロール600の各ローラーの回転数及び/又はトルクは、好ましくは、シート400がアンリールスタンド10からメインフィードロール600に至るまでにおいて、シート400にたるみ(歪み)が生じない程度の張力を確保するように、サーボモータ(SM1)の回転数及び/又はトルクを調整することにより、及び/又は、アンリールスタンド10のブレーキ14の制動力を調整することにより、制御される。
メインフィードロール600の各ローラーの回転数(言い換えれば、回転速度又は周速)は、サーボモータ(SM1)に与える周波数を増加又は減少させることにより、増加又は減少する。一方、メインフィードロール600の各ローラーのトルクTは、T=kI(ただし、T:トルク、I:電流、k:係数)に従い、サーボモータ(SM1)に流れる電流Iを増加又は減少させることにより、増加又は減少する。これにより、サーボモータ(SM1)に与える周波数及び電流をそれぞれ制御することによって、各ローラーの回転数及びトルクをそれぞれ個別に制御することができる。
【0029】
メインフィードロール600の後方には、シート400の幅が所定の幅となるようにシート400をカット(切断)するスリッター700が配置されている。スリッター700は、回転する上刃701と下刃702とを用いてシート400を連続的に切断する。スリッターとしては、図1に示した上刃皿型刃及び下刃椀型刃により構成されるもの、図3に示した上刃皿型刃及び下刃皿型刃により構成されるものの他、任意のものを用いることができる。
【0030】
スリッター700の後方には、サブフィードロール(第2搬送手段)800が配置されている。サブフィードロール800は、回転可能な上部ローラー801及び下部ローラー802を有する。下部ローラー802は、サーボモータ(SM2)から動力を供給されることにより回転する。上部ローラー801は、その外周面が下部ローラー802の外周面に当接している。よって、下部ローラー802の回転に伴って、上部ローラー801も同期して回転する。このような構成を有するサブフィードロール800は、回転する上部ローラー801の外周面と下部ローラー802の外周面との間にシート400を挟み込むことにより、シート400を後方に搬送する。なお、図4には、サブフィードロール800が上部ローラー801及び下部ローラー802の両方を備えた形態が、最も好ましい実施の形態として示されている。しかしながら、本発明は、サブフィードロール800が上部ローラー801を用いることなく下部ローラー802のみを備えた形態をも含むものである。この場合には、サブフィードロール800は、シート400を、回転する下部ローラー802の外周面に当接させることによって後方に搬送する。
【0031】
サブフィードロール800の各ローラーの回転数(言い換えれば、回転速度又は周速)は、サーボモータ(SM2)に与える周波数を増加又は減少させることにより、増加又は減少する。一方、サブフィードロール800の各ローラーのトルクTは、T=kI(ただし、T:トルク、I:電流、k:係数)に従い、サーボモータ(SM2)に流れる電流Iを増加又は減少させることにより、増加又は減少する。これにより、サーボモータ(SM2)に与える周波数及び電流をそれぞれ制御することによって、各ローラーの回転数及びトルクをそれぞれ個別に制御することができる。
【0032】
なお、サーボモータ(SM1)及びサーボモータ(SM2)を制御する構成要素(制御手段)には、例えば、各サーボモータに与える周波数を変化させる周波数インバータ、各サーボモータに流れる電流を変化させる電流制限回路等が含まれる。
【0033】
サブフィードロール800は、このサブフィードロールとメインフィードロール600との間におけるシート400の張力、すなわち、スリッター700により切断(スリット)されるシート400の張力を制御することができる。具体的には、サブフィードロール800は、メインフィードロール600に導かれるシート400の張力より小さくなるように、スリッター700によりスリットされるシート400の張力を制御する。
このような制御を実現するための1つの方法は、サブフィードロール800の各ローラーの回転数とメインフィードロール600の各ローラーの回転数との差を変化させることである。サブフィードロール800の各ローラーの回転数は、メインフィードロール600の各ローラーの回転数より適切に大きく設定されている。この状態において、サブフィードロール800の各ローラーの回転数を減少させてメインフィードロール600の各ローラーの回転数との差を減少させることによって、サブフィードロール800とメインフィードロール600との間におけるシート400の張力を減少させることができる。逆に、サブフィードロール800の各ローラーの回転数を増加させてメインフィードロール600の各ローラーの回転数との差を増加させることによって、サブフィードロール800とメインフィードロール600との間におけるシート400の張力を増加させることができる。
【0034】
1つの具体例としては、メインフィードロール600の各ローラーの回転数を検出し、この回転数とサブフィードロール800の各ローラーの回転数との比率が所定の比率となるように、サブフィードロール800のサーボサーボモータ(SM2)の回転を制御する。上記所定の比率としては、任意のものを用いることができる。好ましくは、サブフィードロール800の各ローラーの回転数がメインフィードロール600の各ローラーの回転数に対して約0.01〜0.1%だけ大きくなるような比率を用いることができる。さらに具体的には、シート400として紙を用いる場合には、サブフィードロール800の各ローラーの回転数がメインフィードロール600の各ローラーの回転数に対して約0.0N%(Nは1以上の自然数)だけ大きくなるような比率を用いることができる。また、シート400としてフィルムを用いる場合には、サブフィードロール800の各ローラーの回転数がメインフィードロール600の各ローラーの回転数に対して約0.N%(Nは1以上の自然数)だけ大きくなるような比率を用いることができる。
【0035】
各ローラーの回転数を制御すること(「ドロー制御」ともいわれる)に加えて、各ローラーのトルクを制御することによっても、各フィードロール間におけるシート400の張力を制御することができる。すなわち、サブフィードロール800の各ローラーのトルクとメインフィードロール600の各ローラーのトルクとの差を変化させる(「トルク制御」ともいわれる)ことによって、各フィードロール間におけるシート400の張力を制御することができる。
まず、サブフィードロール800の各ローラーのトルクは、メインフィードロール600の各ローラーのトルクよりも適切に大きく設定されている。この状態において、サブフィードロール800の各ローラーのトルクを減少させること、及び/又は、メインフィードロール600の各ローラーのトルクを増加させることによって、各フィードロール間におけるトルクの差を減少させることができ、したがって、各フィードロール間におけるシート400の張力を減少させることができる。逆に、サブフィードロール800の各ローラーのトルクを増加させること、及び/又は、メインフィードロール600の各ローラーのトルクを減少させることによって、各フィードロール間におけるトルクの差を増加させることができ、したがって、各フィードロール間におけるシート400の張力を増加させることができる。
【0036】
なお、シート400として、引っ張られた際に伸張することができない材料(例えば紙など)を用いたときには、ドロー制御のみを用いると、そのような材料が断裂する可能性がある。よって、このような材料を用いる場合には、ドロー制御に加えてトルク制御を用いることが好ましい。
一方、シート400として、引っ張られた際に伸張することができる材料(例えば光学フィルムなど)を用いたときには、そのような材料が断裂する可能性は低いので、ドロー制御のみを用いることもできる。このような材料を用いる場合であっても、ドロー制御に加えてトルク制御をも用いることができることはいうまでもない。
【0037】
サブフィードロール800の後方には、ロータリナイフ900が配置されている。ロータリナイフ900は、回転可能な上部ドラム901及び下部ドラム902を有する。上部ドラム901及び下部ドラム902の外周面には、それぞれ、刃901a及び刃902aが形成されている。よって、これらの刃901a及び刃902aが、一定時間間隔ごとにシート400を圧接することにより、シート400は、所定の長さにカットされる。カットされたシートは、複数のローラー及びベルトにより構成されたコンベア部1000により案内され、最終的なシート410としてレイボーイ1010に格納される。
【0038】
このように、本発明によれば、メインフィードロール600の各ローラーの回転数及び/又はトルクを調整することにより、メインフィードロール600に導かれるシート400の張力を、シート400にたるみ(歪み)が生じない程度の張力となるように制御することができる。さらに、サブフィードロール800の各ローラーとメインフィードロール600の各ローラーとの間における回転数及び/又はトルクの差を調整する(増加又は減少させる)ことにより、メインフィードロール600とサブフィードロール800との間におけるシート400の張力を、シート400の切断面が良好となる程度の張力となるように、局所的に(個別に)制御することができる。
【0039】
次に、本発明の実施の形態に係るシートカッターにおけるメインフィードロール600とサブフィードロール800との間におけるシート400の張力の具体的な数値例を、図5に示す。図5において、横軸は用いられるシート400(1枚)の密度を示し、縦軸は、シート400の張力を示す。
【0040】
このグラフによれば、シート400として一般的なコピー用紙(密度約80[g/m2])を用いた場合には、シート400におけるスリットされる部分の張力は、約45[g/mm]すなわち約0.45[kg/cm]となる。また、シート400として新聞紙(密度約30[g/m2])を用いた場合には、シート400におけるスリットされる部分の張力は、約20[g/mm]すなわち約0.2[kg/cm]となる。
【0041】
一方、図6に示した従来技術に係るシートカッターを用いた場合には、シートにおけるスリットされる部分の張力としては、走行するシートにたるみ(歪み)が生じない程度の充分な張力を確保せざるを得ないという上述した理由から、図5に示したものの「2倍」程度の張力が必要となる。実際、そのような大きな張力を確保した上でシートに対してスリットが行われている。このことは、本発明によれば、シートにおけるスリットされる部分の張力を、従来技術により必要とされていた張力の約半分にまで低下させることができる、ということを意味する。これにより、本発明によれば、従来技術に比べてシートにおける切断面の形状を良好なものとすることができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、スリッターには1台のアンリールスタンドから供給された1枚の連続的に繋がったシートが送られる場合について説明したが、実際には、スリッターには、複数枚のシートが重ねられてスリッターに送られる操業がなされる場合もある。この場合には、好ましくは、複数枚(N枚)のシートにおけるスリットされる部分の張力としては、図5に示した張力をN倍することにより算出される張力を用いることができる。
【0043】
本発明者は、シートにおける切断面の形状が劣化する原因がシートの張力が大きいことにあるということを発見することができたからこそ、シートにおけるスリットされる部分の張力を局所的に小さくすることに着目し、本発明の技術的思想に到達することができた。すなわち、当業者は、シートにおける切断面の形状の劣化がシートの張力に起因していることすら、未だ認識できていない。よって、当業者は、シートの張力を低下させるという発想すらできない。
【0044】
さらにいえば、当業者は、次のような事情により、シートの張力を低下させる方向に向うことはできない。すなわち、シートの張力が小さいと、(1)シートにたるみ(歪み)が生じ、走行中に、シートに皺が生じる、(2)シートにおけるスリッターによる切り口が、蛇行してしまう、(3)カッターにおける流れ寸法の誤差が生じる、といった様々な問題が発生する。特に、走行中のシートに皺が生ずると、シートにおけるスリッターによる切り口の形状が劣化するため、そのようなシートは、最終製品として致命的な欠陥を有するものとなる。よって、当業者は、かかる問題が発生しないように、シートに充分大きな張力を確保することに留意する。したがって、当業者がシートの張力を低下させる発想にすら辿り着けない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、スリットされたシートにおける切り口(切断面)の形状が重要視され、スリットによる紙粉(ダスト)の発生が問題視される、印刷用紙やIT関連素材(例えば偏光板、光学フィルム、及び、リチウムイオン電池電極材等)の分野において適用するのに適している。
【符号の説明】
【0046】
600 メインフィードロール(第1搬送手段)
601 上部ドラム
602 下部ドラム
SM1 サーボモータ
700 スリッター
701 上刃
702 下刃
800 サブフィードロール(第2搬送手段)
801 上部ドラム
802 下部ドラム
SM2 サーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する上部ローラー及び下部ローラーを有し、シートを該上部ローラーの外周面と該下部ローラーの外周面との間に挟み込んで後方に搬送する第1搬送手段と、
該第1搬送手段の後方に配置され、前記シートの幅が所定の幅となるように該シートを切断するスリット手段と、
該スリット手段の後方に配置され、回転するローラーを有し、前記シートを該ローラーの外周面に当接させて後方に搬送する第2搬送手段と、
各ローラーの回転数及びトルクのうちの少なくとも一方を制御することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を制御する制御手段と、
を具備することを特徴とするシートカッター。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第2搬送手段の前記ローラーの回転数を減少させること、及び、前記第1搬送手段の前記ローラーの回転数を増加させること、のうちの少なくとも一方を実行することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を減少させる、請求項1に記載のシートカッター。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2搬送手段の前記ローラーのトルクを減少させること、及び、前記第1搬送手段の前記ローラーのトルクを増加させること、のうちの少なくとも一方を実行することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を減少させる、請求項1または請求項2に記載のシートカッター。
【請求項4】
前記第2搬送手段は、
前記ローラーとして、回転する上部ローラー及び下部ローラーを有し、
前記シートを前記上部ローラーの外周面と前記下部ローラーの外周面との間に挟み込んで後方に搬送する、請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートカッター。
【請求項5】
回転する第1上部ローラー及び第1下部ローラーの各々の外周面の間にシートを挟み込んで後方に搬送する段階と、
前記第1上部ローラー及び前記第1下部ローラーを通過した前記シートを、回転する第2ローラーの外周面に当接させて後方に搬送する段階と、
前記第1上部ローラー及び前記第1下部ローラーを通過した前記シートが前記第2ローラーを通過する前に、該シートの幅が所定の幅となるように該シートを切断する段階と、
各ローラーの回転数及びトルクのうちの少なくとも一方を制御することにより、該第2搬送手段と該第1搬送手段との間における前記シートの張力を制御する段階と、
を含むことを特徴とするスリット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−183461(P2011−183461A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47766(P2010−47766)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000244028)明産株式会社 (9)