シート処理装置、および画像形成システム
【課題】綴じ処理され折りたたまれた冊子の背部を平坦化する際に、用紙枚数の少ない冊子であっても、その冊子の姿勢を精度良く補正する。
【解決手段】本発明が適用されるシート処理装置は、中綴じと中折りとが施された冊子をベルト対にて搬送するとともに冊子の姿勢のずれを補正する搬送ユニット51と、冊子の姿勢のずれを補正する際の基準となる基準部材52と、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を挟み込むようにして保持するクランプ部材53と、冊子の先端部を押圧しながら移動することで先端部を平坦化する押圧ロール部材54とを備え、搬送ユニット51は、クランプ部材53にて端部が保持された冊子を搬送方向とは反対方向に引っ張るようにベルト対を駆動させる。
【解決手段】本発明が適用されるシート処理装置は、中綴じと中折りとが施された冊子をベルト対にて搬送するとともに冊子の姿勢のずれを補正する搬送ユニット51と、冊子の姿勢のずれを補正する際の基準となる基準部材52と、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を挟み込むようにして保持するクランプ部材53と、冊子の先端部を押圧しながら移動することで先端部を平坦化する押圧ロール部材54とを備え、搬送ユニット51は、クランプ部材53にて端部が保持された冊子を搬送方向とは反対方向に引っ張るようにベルト対を駆動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に対して処理を施すシート処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像形成装置から排出される記録済みの用紙(シート)に、折りや穿孔、ステープル等の処理を施すシート処理装置については、従来から多くの提案がなされている。例えば、特許文献1では、背部が湾曲するように折り畳まれた冊子を処理する装置において、背部が折り畳まれた一組のシート材料を把持し固定するように配置されたクランプ手段と、背部の長さ方向に沿って移動可能であり、背部の湾曲を平坦化するのに充分な圧力を背部に対して付与する成形手段とを備えたものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−260564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、冊子の折り畳み部である背部の湾曲を平坦化する前段階として、冊子の背部を例えば板状部材に突き当て、この冊子の姿勢を揃える処理が行われる。この突き当てに際して、用紙枚数の少ない冊子では、冊子の剛性が低いことから、例えば板状部材に冊子が突き当たる際に、冊子の背部近傍の紙面にて冊子への搬送力により搬送方向と交差する方向に湾曲(ループ)が発生する場合がある。このとき、例えば板状部材に対して冊子が傾いた状態で最初に突き当たった部分は搬送力が集中することから、この突き当たった部分のループ量が大きく、その後に突き当たった部分では搬送力が分散されてループ量が小さくなるという傾向がある。その結果、冊子の姿勢を揃える際に、冊子の幅方向の位置によって異なる大きさのループが発生してしまう。かかる場合には、ループ量の差に起因する姿勢のずれが残存し、その後、製本に際して、例えば冊子の後端部(搬送方向の後端側)に裁断処理を施した場合には、その冊子の平面形状のばらつきが大きくなる。
【0005】
また、冊子の背部を潰して角付けを行なうための準備動作として、冊子の背部近傍をクランプ部材にて押さえる、所謂クランプ作業が行なわれる。このとき、冊子の厚さが変ってもクランプを良好に行なうために、冊子のクランプ圧調整機構が設けられる場合が多いが、このクランプ圧調整機構によるクランプ作業を行なった際にも、冊子に生じるダメージを軽減し、冊子の姿勢を良好に保つことが要求される。
【0006】
本発明は、用紙枚数の少ない冊子であっても、その冊子の姿勢を精度良く補正することを主たる目的とする。
また他の目的は、冊子に対するダメージを軽減させ、冊子の姿勢を良好に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明が適用されるシート処理装置は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記ベルト搬送機構に設けられた前記ベルト対の移動を、前記冊子を前記搬送方向に移動させる方向と当該搬送方向とは反対方向に移動させる方向とに制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数より少ない場合に、前記端部が保持された当該冊子を前記反対方向に移動させるように制御することを特徴とする。
【0009】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用されるシート処理装置は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子の端部を前記基準部材に接触させた後、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された当該冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子から前記ベルト対のうちの当該冊子の上部に配置されたベルトを離隔させるように当該ベルトを移動させることを特徴とする。
【0011】
また、上記の2つのシート処理装置にて、前記ベルト搬送機構は、前記ベルト対により搬送される前記冊子が前記基準部材に接触し搬送が遮られることで当該ベルト対の駆動トルクが所定値以上となった場合に当該ベルト対への駆動力の伝達を停止するように設定されたトルクリミッタを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記冊子保持部材は、移動しない位置に設けられ前記冊子の端部を一方向から保持するための第1の保持部と、前記第1の保持部に向けて移動することにより当該第1の保持部との間に押圧力を形成し、当該第1の保持部とともに前記冊子の端部を挟んで保持する第2の保持部と、前記第2の保持部に設けられ、前記第1の保持部との間に形成される前記押圧力を調整する弾性部とを有することを特徴とする。
更に、前記冊子保持部材の前記弾性部は、前記第2の保持部の長手方向に沿って前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする。
【0013】
また、上記の2つのシート処理装置にて、前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を一方から保持する第1の保持部と他方から保持する第2の保持部とを備え、当該冊子を保持していない設定状態での当該第1の保持部と当該第2の保持部との間隔が当該冊子を構成する前記シート材の枚数に応じて変更可能であることを特徴とする。
更に、前記基準部材は、前記冊子の傾きの補正を行う際に当該冊子の搬送面と交差する位置に設定され、当該冊子の傾きの補正を行わない場合には当該搬送面から退避する位置に設定され、前記基準部材による傾き補正後に当該冊子が搬送される場合には前記搬送面から退避する位置に配置されていた当該冊子の搬送を導くガイド部が当該搬送面の近傍に設定されることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明が適用される画像形成システムは、シート材に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置から出力されたシート材に対する後処理を行う用紙処理装置とを備え、前記用紙処理装置は、複数の前記シート材が重ねられた冊子に綴じを施す綴じ手段と、前記綴じ手段にて綴じが施された前記冊子の当該綴じが施された部分に折りを施す折り手段と、綴じと折りとが施された前記冊子を上下方向から挟み込んで当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を上下方向から挟み込んで保持する冊子保持部材と、前記冊子保持部材にて保持された前記冊子の前記端部を押圧して平坦化する平坦化部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数以下の場合に、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする。
また、前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を上方向から移動して挟む上部保持部と下方向に固定されて挟む下部保持部とを有し、当該上部保持部の長手方向に沿って当該下部保持部と当該上部保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
シート処理装置または画像形成システムにて、用紙枚数の少ない冊子であっても、その冊子の姿勢を精度良く補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔実施の形態1〕
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される用紙処理システム1の全体構成を示した図である。図1に示す用紙処理システム1は、例えば電子写真方式によってカラー画像を形成するプリンタや複写機等の画像形成装置2と、画像形成装置2によって例えばトナー像が形成された用紙(シート材)に対して後処理を施す用紙処理装置3とを備えている。
そして、この用紙処理装置3は、画像形成装置2から出力された用紙を更に下流側に搬送する搬送装置10と、この搬送装置10により搬送される用紙に対して厚紙や窓空き用紙等の合紙を供給する合紙供給装置20とを備えている。また、搬送装置10から搬送された用紙に対して内三折り(C折り)や外三折り(Z折り)等の折り処理を施す折り装置30と、折り装置30の下流側に設けられて用紙に穴あけや端綴じ、中綴じを行う第1後処理装置40とを備えている。更に、この第1後処理装置40の下流側に設けられて中折り/中綴じされた用紙束(冊子)に対する更なる後処理を行う第2後処理装置50を備えている。
また、用紙処理装置3は、用紙処理装置3の全体を制御する制御部100を有し、この制御部100は、例えば第1後処理装置40に設けられている。
【0018】
用紙処理装置3の第1後処理装置40は、図1に示すように、用紙に穴あけ(パンチ)を施す穿孔ユニット41と、用紙束の端を綴じるための端綴じステープラユニット42とを備えている。また、端綴じされた用紙束をユーザが取りやすいようにして積み重ねるスタッカトレイ(積載部)43と、用紙束を中折り/中綴じして見開き状の冊子を作製する中綴じユニット44とを備えている。更に、第1後処理装置40での処理が行われない用紙または穴あけだけが施された用紙を積み重ねるトップトレイ45を備えている。
【0019】
ここで、第1後処理装置40に設けられた中綴じユニット44について説明する。
図2は、第1後処理装置40の構成を説明する図である。図2に示すように、中綴じユニット44は、中折り/中綴じされた冊子を作製するに際して、画像形成後の用紙を必要枚数だけ集積させるコンパイルトレイ441と、用紙をコンパイルトレイ441に排出する排出ロール442と、コンパイルトレイ441上に突出するように位置決めストッパを備えて中綴じ位置や中折り位置を決定するためにコンパイルトレイ441に沿って移動するエンドガイド443とを備えている。また中綴じユニット44は、コンパイルトレイ441上に集積される用紙をエンドガイド443に向けて揃えるために回転するパドルからなる複数の用紙揃え部材444と、コンパイルトレイ441上に集積される用紙を幅方向に揃えるためにスライド移動する一対の整合板からなる用紙幅揃え部材445と、コンパイルトレイ441に集積された用紙束を中綴じするステープラ446とを備えている。
更に、中綴じユニット44は、ステープラ446により中綴じされた用紙束を中綴じ位置で折るためにコンパイルトレイ441の上方から下方に向けて突出するように移動する折りナイフ447と、折りナイフ447によって折りが開始された用紙束を挟み込む一対のロールからなる折りロール448と、折りロール448により挟み込まれた用紙束を第2後処理装置50へと搬送する搬送ロール449とを備えている。
【0020】
そして、第1後処理装置40において中折り/中綴じされた冊子を作製する場合には、制御部100からの指示に基づき、折り装置30を経由して搬送された用紙が穿孔ユニット41を通って中綴じユニット44に送られる。
中綴じユニット44の排出ロール442は、搬送されてくる用紙をコンパイルトレイ441に順次載置していく。例えば、5枚、10枚、15枚等、例えば画像形成装置2の制御部(図示せず)にて設定された枚数がこのコンパイルトレイ441に集積される。このとき、エンドガイド443は、例えば用紙の中央部分がステープラ446によるステープル位置に位置するように移動して停止している。更にこのとき、用紙揃え部材444は、このエンドガイド443に向けて回転し、集積される用紙をエンドガイド443に押し当てて、用紙揃えを補助している。また、用紙幅揃え部材445は、コンパイルトレイ441上に集積される用紙の幅方向にスライド移動して、集積された用紙に対し幅方向から用紙揃えを行う。
【0021】
コンパイルトレイ441に所定枚数の用紙が集積された後、ステープラ446によって、用紙の所定部分(例えば中央部分)に対する中綴じが実行される。次いで、中綴じを終えた用紙束は、エンドガイド443の上方への動きによって、折り部分(例えば用紙の中央部分)が折りナイフ447の先端位置と一致するように移動される。尚、折りナイフ447は、コンパイルトレイ441への用紙集積段階や、ステープラ446による中綴じ段階、また、中綴じ後の用紙搬送段階では、その先端がコンパイルトレイ441の上方に退避するように構成されている。
【0022】
用紙束の折り位置が折りナイフ447の先端位置まで移動した後、折りナイフ447は上方から下方に向けて押し出される。すなわち、折りナイフ447に対向する位置に開口が設けられたコンパイルトレイ441の収容面に直交する方向に、折りナイフ447の先端が上方から下方に向けて用紙束を押圧する。更に折りナイフ447の先端はコンパイルトレイ441の開口の下方向側に押し出され、されにより用紙束はコンパイルトレイ441の収容面から押し下げられて、折りロール448に挟み込まれる。この場合に、折りナイフ447は、用紙束が充分に折りロール448に食い込む位置まで移動するように構成されている。
このようにして、ステープラ446による中綴じと、折りナイフ447および折りロール448による中折りとが施された用紙束は、その後、搬送ロール449によって第2後処理装置50に搬送される。
【0023】
次に、第1後処理装置40において中綴じと中折りとが施された用紙束(冊子)が搬送される第2後処理装置50について説明する。
図3は、第2後処理装置50の構成を説明する図である。図3に示すように、第2後処理装置50は、第1後処理装置40において中綴じと中折りとが施された冊子を搬送するとともに冊子の姿勢のずれを補正する搬送ユニット51と、冊子の姿勢のずれを補正する際の基準となる基準部材52と、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を挟み込むようにして保持するクランプ部材53と、冊子の先端部を押圧しながら移動することで先端部を平坦化する押圧ロール部材54とを備えている。
また、第2後処理装置50は、冊子の後端部(見開き部)を揃えるために裁断する裁断ユニット55と、冊子を裁断ユニット55の内部に送り込む送りロール56と、冊子の後端部の裁断位置を決定するために冊子を挟み込み保持した状態で移動する裁断位置設定ユニット57とを備えている。また、裁断ユニット55にて裁断された冊子からの裁断屑を収容する裁断屑収容ユニット58と、裁断ユニット55にて後端部が裁断された冊子を搬送する冊子搬送ロール59とを備えている。
更に、第2後処理装置50には、製本された冊子を集積する冊子トレイ60が備えられており、冊子搬送ロール59から送られた冊子は冊子トレイ60において一冊毎に順次搬送されながら集積される。
【0024】
続いて、第2後処理装置50にて実行される冊子の先端部(中折り/中綴じ部)に対する平坦化処理について説明する。
冊子の先端部に対する平坦化処理は、冊子の姿勢のずれ(スキュー)を補正する姿勢補正(以下、「スキュー補正」ともいう)を行い、冊子の姿勢が整った状態で行われる。そこで、まず、第2後処理装置50にて行われるスキュー補正について説明する。
【0025】
図4は、冊子に対するスキュー補正を行う機構部を側面方向側から示した図である。また、図5は、冊子に対するスキュー補正を行う機構部を上方向側から示した図である。図4および図5に示すように、第2後処理装置50には、冊子に対するスキュー補正を行う機構部として、冊子を上下方向から挟み込んで搬送するベルト搬送機構部51A,51Bが冊子搬送方向に沿って平行に二対設けられている。なお、図4では、そのうちの一対のベルト搬送機構部51Aを表示している。
【0026】
ベルト搬送機構部51A,51B各々は、冊子を上下方向から挟み込んで搬送する搬送ベルト部材511a,511bと、搬送ベルト部材511a,511b各々を回転駆動する駆動ロール512a,512bと、搬送ベルト部材511a,511b各々を張架するアイドルロール513a,513bと、駆動ロール512a,512b各々に駆動モータ(不図示)からの駆動力を伝達する駆動伝達ロール515a,515bとを備えている。
また、駆動伝達ロール515aと駆動ロール512aとの間、および駆動伝達ロール515bと駆動ロール512bとの間には、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bに伝達される回転トルクを所定値(例えば100gf・cm)以下に制限するトルクリミッタ514a,514bが配置されている。それにより、駆動ロール512a,512bに伝達される駆動伝達ロール515a,515bからの回転トルクが所定値を超えると、トルクリミッタ514a,514bはスリップして、駆動ロール512a,512bにはそれ以上の回転トルクの回転駆動力は伝達されない。ベルト搬送機構部51A,51Bにて、アイドルロール513a,513bによって搬送ベルト部材511a,511bが張架される部分は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部として機能している。
【0027】
ここで、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動ロール512aは、トルクリミッタ514aを介して共通の支持軸516aに軸支されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動ロール512bは、ともにトルクリミッタ514bを介して支持軸516bに軸支されている。
ベルト搬送機構部51A,51B双方のアイドルロール513aは、共通の支持軸518aに回転自在に軸支されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方のアイドルロール513bは、共通の支持軸518bに回転自在に軸支されている。
ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動伝達ロール515aは、駆動モータに連結された共通の駆動伝達軸517aに固定されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動伝達ロール515bは、駆動モータに連結された共通の駆動伝達軸517bに固定されている。
【0028】
また、図4に示すように、第2後処理装置50では、冊子に対するスキュー補正時には、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を平坦化する押圧ロール部材54は上方に退避し、冊子のスキュー補正する際の基準となる基準部材52が冊子と接触する位置まで引き上げられて設定される。
【0029】
次の図6〜図8は、第2後処理装置50においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。まず図6(a)に示すように、第1後処理装置40から第2後処理装置50のベルト搬送機構部51A,51Bに冊子が傾いて(傾き角θ)搬送されてくると、冊子搬送方向Fに沿って平行なベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bによるほぼ等しい搬送力を受けて、冊子は傾き角θを持った状態で搬送される。そして、図6(b)に示すように、冊子は傾き角θを持った状態で基準部材52に突き当たる。その際に、冊子の傾きにより、基準部材52に対してC1側の端部側から先に順次突き当たる。なお、この状態では、C2側はまだ突き当たっていない。
【0030】
基準部材52に対して先に突き当たったC1側の端部側では、図7(c)に示すように、基準部材52に突き当たった時点で冊子の搬送が遮られる。その際に、冊子を構成する用紙束の枚数が多い場合には冊子自体の剛性は高いため、冊子が基準部材52に突き当たったことによる冊子からの反力は直ちにベルト搬送機構部51B側に伝達される。それにより、冊子に対するベルト搬送機構部51B側での回転トルクは直ちにトルクリミッタ514a,514bの上限を超えることとなり、トルクリミッタ514a,514bにはスリップが発生する。それによって、ベルト搬送機構部51B側の駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止し、冊子のC1側の端部側での搬送力はなくなる。
すなわち、冊子を構成する用紙束の枚数が多く冊子自体の剛性が高い場合には、冊子が基準部材52に突き当たった時点で直ちに冊子に対するベルト搬送機構部51Bからの搬送力は停止され、冊子のC1側に加わる力は0となる。またその場合に、トルクリミッタ514a,514bの上限値は、所定枚数からなる冊子の剛性よりも低く設定されている。そのため、C1側の端部側が基準部材52に突き当たった際に、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bからの搬送力がC1側の端部側に集中するが、その際の冊子自体の剛性は搬送ベルト部材511a,511bによる搬送力に対抗し得る程度に高い。このようなことから、C1側の端部側には、冊子の紙面に直交する方向の湾曲(ループ)は発生し難い。
【0031】
その一方で、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には冊子自体の剛性が低いため、冊子のC1側が基準部材52に突き当たったことによる基準部材52からの反力の一部は、冊子が吸収する。そのために、冊子が基準部材52に突き当たったことによる基準部材52からの反力は直ちにベルト搬送機構部51B側に伝達されず、反力の一部をC1側の端部側が吸収した後に、冊子に対するベルト搬送機構部51B側の回転トルクがトルクリミッタ514a,514bの上限を超える。そして、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。
すなわち、冊子を構成する用紙束の枚数が少なく冊子自体の剛性が低い場合には、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bからの搬送力の一部を冊子が吸収するために、冊子が基準部材52に突き当たった時点でもベルト搬送機構部51B側の回転トルクがトルクリミッタ514a,514bの上限を超えない。それにより、冊子が基準部材52に突き当たった後にも、冊子はベルト搬送機構部51A,51Bからの搬送力を受けることとなる。このようなことから、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、冊子には紙面に直交する方向のループが発生し易くなる。
【0032】
また、C1側の端部側が基準部材52に突き当たった図7(c)に示す状態では、冊子のC2側の端部側は基準部材52にまだ突き当たった位置まで到達していない。そのため、ベルト搬送機構部51Bでの搬送が停止した場合でも、C2側の端部側を主に搬送するベルト搬送機構部51A(図4、図5参照)ではトルクリミッタ514a,514bがその上限を超えない。それにより、搬送ベルト部材511a,511bは回転移動を継続し、冊子を基準部材52側に搬送する。それにより、ベルト搬送機構部51A,51Bに冊子が搬送されてきた時点での冊子の傾き角θは低減され、冊子の姿勢補正(スキュー補正)が行われる。そして、冊子のC2側も基準部材52に突き当たった時点で、上記と同様のメカニズムにより、ベルト搬送機構部51Bの搬送ベルト部材511a,511bも停止する。
【0033】
その場合にも、C1側の端部側と同様に、冊子を構成する用紙束の枚数が少なく冊子自体の剛性が低い場合には、C2側にもループが発生する場合がある。
しかし、冊子のC2側の端部側が基準部材52に突き当たる際には、すでにベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bは停止している。そのために、冊子のC2側が基準部材52に突き当たる際には、冊子はベルト搬送機構部51A側からの搬送力を受けているだけなので、冊子のC2側が基準部材52から受ける反力はC1側よりも小さい。そのため、C2側の端部側に発生するループ量はC1側の端部側に発生するループ量よりも小さくなる。それにより、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、先端部にループが発生することがあり、その際には、C1側の端部側とC2側の端部側とに発生するループ量は異なることとなる。そして、この冊子に生じるループ量は、冊子の基準部材52側への進入量(搬送量)に比例しているので、冊子にはループ量の差に応じた傾きが残存する。
【0034】
そこで、本実施の形態の第2後処理装置50では、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、図7(d)に示すように、冊子の先端部の全体が基準部材52に突き当たってベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bが停止した状態において、クランプ部材53を冊子の先端部を挟み込んで保持する状態に設定する。更に、図8(e)に示すように、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを逆方向(冊子の後端部方向G)に向けて移動させる。それにより、冊子の先端部がクランプ部材53により挟み込まれて固定された状態で、冊子全体に対して後端部方向Gへの引っ張り力が作用する。それによって、冊子の先端部に発生したループが引き延ばされ、ループ量が低減される。
【0035】
すなわち、本実施の形態の第2後処理装置50では、両方向の回転に対して上限トルクが設定されて作動するトルクリミッタ514a,514bを用いる。図7(d)に示すように、クランプ部材53が冊子の先端部を保持した後、搬送ベルト部材511a,511bは同時に逆方向に向けて回転駆動される。そして、搬送ベルト部材511a,511bの移動速度は同じであるから、ループ量が小さいC2側の端部側での引き延ばしは早く完了し、ループ量が大きいC1側の端部側では、それよりも遅れて完了する。その際に、ループ量が小さいC2側の端部側の引き延ばしが完了した場合は、冊子に対するベルト搬送機構部51A側の回転トルクが、逆方向の回転に対して設定されたトルクリミッタ514a,514bの上限を超える。そのため、ベルト搬送機構部51A側の駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止し、冊子のC2側の端部側での引き延ばし力はなくなる。一方、その状態で、ループ量が大きいC1側の端部側の引き延ばしはベルト搬送機構部51Bにより継続される。そして、C1側の端部側の引き延ばしが完了した時点で、ベルト搬送機構部51B側の回転トルクが逆方向の回転に対して設定されたトルクリミッタ514a,514bの上限を超え、C2側の端部側での引き延ばし力もなくなる。それにより、冊子では、C1側のループ量とC2側のループ量との差がほぼ同程度となるまで緩和される。その結果として、ループ量の差に基づき残存していた冊子での傾きは補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0036】
ここで、本実施の形態の第2後処理装置50において、一方向(正回転方向)の回転に対して上限トルクが設定され、他方向(逆回転方向)へは自在に回転するように動作する一方向性のトルクリミッタ514a,514bを用いてもよい。この場合には、ループ量が小さいC2側の端部側での引き延ばしが完了した時点で、冊子表面と搬送ベルト部材511a,511b表面との間にはスリップが生じる。そのために、ベルト搬送機構部51A側での両者間の摩擦力は静的摩擦から動的摩擦に変化することで低下する。それにより、C1側の端部側の引き延ばしが完了した時点では、静的摩擦状態にある搬送機構部51B側での冊子表面と搬送ベルト部材511a,511b表面との間の摩擦力の方が相対的に大きくなる。このような作用を利用して、C1側のループ量とC2側のループ量との差を緩和するように構成してもよい。
なお、上記の図6〜図8は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bを上方から見た図であるので、ベルトの回転移動方向を示す矢印は、搬送ベルト部材511aの上面の移動方向を示したものである。
【0037】
引き続き、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合におけるベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bでの搬送ベルト部材511a,511bの動作と、冊子保持部材としてのクランプ部材53の動作とを側面方向側から説明する。
図9は、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前後でのベルト搬送機構部51A側の搬送ベルト部材511a,511bの動作とクランプ部材53の動作とを説明する図である。まず、図9(a)に示すように、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前までは、駆動ロール512a,512bは、駆動伝達ロール515a,515bからの回転駆動力を受けて、搬送ベルト部材511a,511bを冊子が基準部材52方向に搬送されるように回転する。
【0038】
そして、冊子の先端部が基準部材52に突き当たると、図9(b)に示すように、冊子の搬送が基準部材52により遮られるため、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転トルクが所定値(例えば100gf・cm)を超える。それにより、トルクリミッタ514a,514bが作動して、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。すなわち、トルクリミッタ514a,514bがスリップすることで、駆動ロール512a,512bの回転は停止し、それにより、ベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bは停止する。その状態で、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持するように設定される。それによって、冊子の先端部はクランプ部材53によって固定される。
【0039】
冊子の先端部がクランプ部材53によって固定されると、図9(c)に示すように、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、駆動伝達ロール515a,515bは、逆方向に回転する。それにより、駆動ロール512a,512bは、搬送ベルト部材511a,511bが冊子を基準部材52から離れる方向(冊子の後端部方向)に搬送するように回転する。そして、先端部がクランプ部材53によって固定された冊子は、冊子の後端部方向に引き延ばされる力を受ける。そのために、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合に冊子の先端部に発生したループがそれぞれ引き延ばされ、冊子が冊子搬送方向とは反対方向に引っ張られることでループ量が低減する。そして、ループ量の差に基づき残存していた冊子の傾き(スキュー)は補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0040】
ところで、上記した冊子に対するスキュー補正を行う機構部の動作は、制御部100によって制御される。
そして、制御部100は、例えば冊子を構成する用紙束の枚数に応じて、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作を行うか否かを決定する。すなわち、制御部100は、次のように冊子の傾きを補正する動作を制御する。
【0041】
図10は、制御部100が行う冊子の傾きを補正する際の動作制御の手順の一例を示したフローチャートである。図10に示すように、まず、制御部100が画像形成装置2の制御部(図示せず)から冊子を構成する用紙束の枚数に関する情報を取得する(ステップ101)。そして、冊子を構成する用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)以下であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)以下である場合には、制御部100は、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持した状態で、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子の後端部方向に向けて移動させるように制御する(ステップ103)。即ち、冊子搬送方向とは反対方向に冊子を引っ張るように制御する。また、言い換えると、冊子とこの冊子を挟み込んだベルト対(搬送ベルト部材511a,511b)との間の領域の冊子に作用する力を解放するように制御する。
【0042】
一方、ステップ102にて、用紙束の枚数が所定枚数よりも多い場合には、制御部100は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子の後端部方向に向けて移動させる動作を行わないように制御する(ステップ104)。そして、1サイクルの印刷処理におけるすべての冊子について上記の処理が行われる(ステップ105)。
それにより、ループが生じ難い用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)よりも多い冊子には、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作が行われない。その結果、用紙処理装置3での後処理に要する時間の短縮化が図られる。
なお、制御部100において、冊子を構成する用紙束の枚数に拘わらず、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作を行うように制御してもよい。
【0043】
続いて、クランプ部材53の構成および動作を説明する。
図11は、クランプ部材53の構成および動作を側面方向側から説明する図である。図11(a)はクランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態を示し、(b)は冊子の先端部を挟み込んで保持した状態を示している。図11に示すように、クランプ部材53は、冊子を下側から保持する下部クランパ(第1の保持部)531と、冊子を上側から保持する上部クランパ(第2の保持部)532と、上部クランパ532と下部クランパ531との間の押圧力を調整しながら上部クランパ532を下部クランパ531側に押圧する圧調整バネ部材533と、圧調整バネ部材533を介して上部クランパ532を下部クランパ531側に押圧する押圧部材534とを備えている。
【0044】
下部クランパ531は、上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。また、上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534とは一体的に構成され、冊子の先端部を挟み込んで保持する設定状態と保持する前の設定状態とに応じて上下方向に移動する可動部を構成する。
【0045】
そして、図11(a)に示すように、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態では、可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)は、固定された上部クランパ532の上方に退避した位置に設定され、冊子の先端部が基準部材52に突き当たった状態に設定されるまで待機する。冊子の先端部が基準部材52に突き当てられ、ベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bが停止すると、図11(b)に示すように、可動部は下方に移動し、上部クランパ532と下部クランパ531とで冊子を押圧しながら保持する。
【0046】
ここで、図11(a)に示す冊子の先端部を保持する前の設定状態での上部クランパ532と下部クランパ531との間の開口量hに関しては、冊子を構成する用紙束の枚数に応じて開口量hを調整するように構成してもよい。例えば、制御部100が画像形成装置2の制御部(図示せず)から冊子を構成する用紙束の枚数に関する情報を取得して、用紙束の枚数が少ない場合には、開口量hを小さく設定し、用紙束の枚数が多い場合には、開口量hを大きく設定する。それにより、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる際に、上部クランパ532と下部クランパ531との間において冊子の先端部が上部クランパ532側にずれる空間が制限される。それにより、冊子の先端部が搬送面Hから浮き上がった状態で基準部材52に突き当たることを適度に抑制するので、図11(b)に示す可動部を下方に移動させる際に、冊子の先端部を変形させて挟み込むことを抑制する。その結果、冊子に対するスキュー補正の精度も向上する。
【0047】
次の図12は、クランプ部材53の長手方向の構成と動作とを説明する図である。クランプ部材53の上部クランパ532と押圧部材534とは、上部クランパ532の両端部に設けられた突出部532aが押圧部材534に設けられた穿孔部534aによって上下方向にスライド移動自在に支持されることで、一体的な可動部を構成している。そして、上部クランパ532と押圧部材534との間には、長手方向に沿って所定の間隔を隔てた複数の圧調整バネ部材533が配置されている。このような構成により、図12(a)に示すクランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態から、図12(b)に示す冊子の先端部を挟み込んで保持した状態に移行する際には、押圧部材534が不図示の駆動手段により押し下げられることで、複数の圧調整バネ部材533各々による弾性力が長手方向に均等な押圧力を上部クランパ532に付加する。それによって、上部クランパ532と下部クランパ531との間には長手方向に均等な押圧力が形成され、冊子を均等に保持する。
そのため、冊子の先端部に発生したループを引き延ばす際に、冊子が長手方向により確実に保持されるので、冊子の長手方向のループが全体的に均一に均される。また、上部クランパ532と下部クランパ531との圧接力のむらによる冊子先端部の凹み等といった不具合の発生を抑制する。
【0048】
また、本実施の形態のクランプ部材53では、上記したように、下部クランパ531は、その上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。そのため、クランプ部材53を通過する冊子の搬送面Hは変動し難く、冊子は冊子を裁断ユニット55の内部に送り込む送りロール56に円滑に搬入される。
【0049】
図13は、(a)本実施の形態のクランプ部材53と、(b)下部クランパ531´側に圧調整バネ部材533´が設けられた比較例としてのクランプ部材53´との比較を行った図である。図13(a)に示すように、本実施の形態のクランプ部材53では、下部クランパ531は固定されているため、可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)が下部クランパ531を押圧しても、下部クランパ531の上面位置に変動が生じない。そのため、冊子の搬送面Hはほぼ一定の高さ位置に維持される。それにより、冊子は送りロール56のニップに対してほぼ平行に進入するので、冊子の先端部に屈曲等が生じ難い。
それに対して、比較例のクランプ部材53´では、上部クランパ532´が下部クランパ531´を押圧すると、下部クランパ531´側に設けられた圧調整バネ部材533´が支持部材535´に支持されながら圧縮されて、下部クランパ531´の上面位置は下方に移動する。それにより、冊子の搬送面Hは、下部クランパ531´の上面の移動量gだけ低く位置する搬送面H´に変動する。そのため、冊子は送りロール56のニップに対して角度を持って進入することとなり、冊子の先端部に屈曲等が生じ易い。
【0050】
そこで、本実施の形態の下部クランパ531は、下部クランパ531の上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。そのため、クランプ部材53を通過する冊子の搬送面Hはほぼ一定に維持されるので、冊子は送りロール56のニップに対してほぼ平行に進入する。それによって、冊子の先端部に屈曲等が生じることを抑制している。
【0051】
このように、第2後処理装置50では、第1後処理装置40から送られた冊子の先端部(中折り/中綴じ部)に対する平坦化処理を行う前に、上記した冊子へのスキュー補正が行われる。そして、スキュー補正が完了した後に、冊子の先端部に対する平坦化処理が実行される。
第2後処理装置50において冊子の先端部を平坦化処理する場合には、スキュー補正を行う際に用いた基準部材52は冊子の搬送面H(図11参照)よりも低い位置に引き下げられる。それに伴って、押圧ロール部材54が冊子の先端部を押圧する位置まで引き下げられる。
【0052】
ここで、図14は、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う機構部とその動作を説明する図である。図14(a)は、冊子の先端部に対する平坦化処理が行われる状態を示し、(b)は、冊子の先端部に対する平坦化処理が行われた後の状態を示している。図14(a)に示すように、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う際には、スキュー補正が完了した際の状態である、クランプ部材53は冊子の先端部を保持した状態、かつ、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bは停止した状態がそのまま維持される。そして、基準部材52が冊子の搬送面Hよりも低い位置に引き下げられた後、押圧ロール部材54が冊子の先端部を押圧する位置に設定される。そして、押圧ロール部材54は、クランプ部材53に保持された冊子の先端部を横方向から押圧した状態で、回転しながら冊子の幅方向に沿って一方の端部から他方の端部に向けて1回の移動または往復移動、または、複数回の往復移動を行う。それにより、第1後処理装置40での中折りによって湾曲していた冊子の先端部は平坦に均される。
【0053】
冊子の先端部に対する平坦化処理が行われた後には、図14(b)に示すように、押圧ロール部材54は冊子の上面位置よりも上方に引き上げられて設定される。そして、それに伴って、クランプ部材53の可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)は引き上げられて、冊子は解放される。また、冊子の搬送面Hよりも低い位置に引き下げられていた基準部材52は、その上面に配置された冊子ガイド部521が冊子の搬送面Hに一致する位置まで引き上げられる。それにより、先端部が平坦化された冊子は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bにより、基準部材52の上面の冊子ガイド部521に導かれながら送りロール56の位置に搬送される。
【0054】
その後、第2後処理装置50では、上記した図3に示すように、平坦化処理された冊子は、送りロール56によって裁断ユニット55に搬送される。裁断ユニット55に搬送された冊子は、裁断位置設定ユニット57によって冊子の後端部の裁断位置が決定される。そして、裁断ユニット55により冊子の後端部が裁断される。それにより、冊子の平面形状が揃えられる。この場合に、冊子の先端部に対する平坦化処理時に冊子の姿勢のずれが精度良く補正されているので、冊子の平面形状のばらつきは低減される。
そして、製本された冊子は、冊子搬送ロール59によって冊子トレイ60に送られ、冊子トレイ60において一冊毎に順次搬送されながら集積される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の用紙処理システム1に設けられた用紙処理装置3では、用紙枚数が少なく剛性が低い冊子に発生したループに起因する冊子の姿勢のずれを補正する機構が設けられている。それにより、用紙枚数が少ない冊子であっても冊子の姿勢のずれが補正され、製本された冊子での平面形状のばらつきが低減される。
【0056】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、スキュー補正時にベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子が後端部方向に向かうように移動させる構成を用いた。実施の形態2は、実施の形態1での構成に代わり、スキュー補正時にベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の上側に配置された搬送ベルト部材511aを退避させる構成を有する。尚、実施の形態1と同様の機能については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0057】
図15は、本実施の形態の用紙処理装置3において、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前後でのベルト搬送機構部51A側の搬送ベルト部材511a,511bの動作とクランプ部材53の動作とを説明する図である。本実施の形態のベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bは、上側に配置された搬送ベルト部材511aが、不図示の移動機構により、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避するように構成されている。
【0058】
本実施の形態のベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bでは、まず、図15(a)に示すように、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前までは、上側の搬送ベルト部材511aと下側の搬送ベルト部材511bとは、冊子を挟み込むように圧接して配置される。そして、搬送ベルト部材511a,511bは、駆動伝達ロール515a,515bからの回転駆動力を受けた駆動ロール512a,512bにより、冊子を基準部材52方向に搬送する。
その後、冊子の先端部が基準部材52に突き当たると、図15(b)に示すように、冊子の搬送が基準部材52により遮られるため、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転トルクが所定値(例えば100gf・cm)を超える。それにより、トルクリミッタ514a,514bが作動して、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。それにより、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bの搬送ベルト部材511a,511bは停止する。その状態で、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持するように設定される。それによって、冊子の先端部はクランプ部材53によって固定される。
【0059】
冊子の先端部がクランプ部材53によって固定されると、図15(c)に示すように、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、上側に配置された搬送ベルト部材511aは、不図示の移動機構により、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避して、搬送ベルト部材511aを離隔させる。それにより、冊子に作用していた搬送ベルト部材511aとの摩擦力から解放される。即ち、冊子とこの冊子を挟み込んだベルト対(搬送ベルト部材511a,511b)との間の領域の冊子に作用する力を解放することができる。更には、上側の搬送ベルト部材511aと下側の搬送ベルト部材511bとの圧接力がなくなるため、搬送ベルト部材511bとの摩擦力も低減する。それにより、先端部がクランプ部材53によって固定された冊子は、冊子の先端部に存在する応力が後端側に開放される。それによって、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない冊子の先端部に発生したループは自発的に延び、ループ量が低減する。そして、ループ量の差に基づき残存していた冊子の傾き(スキュー)は補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0060】
このように、本実施の形態の用紙処理装置3では、冊子の先端部が基準部材52に突き当たり、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持した状態で、上側に配置された搬送ベルト部材511aを、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避させる。それにより、用紙束の枚数が少ない冊子であっても冊子の姿勢のずれが補正され、製本された冊子での平面形状のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態が適用される用紙処理システムの全体構成を示した図である。
【図2】第1後処理装置の構成を説明する図である。
【図3】第2後処理装置の構成を説明する図である。
【図4】冊子に対するスキュー補正を行う機構部を側面方向側から示した図である。
【図5】冊子に対するスキュー補正を行う機構部を上方向側から示した図である。
【図6】(a)、(b)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図7】(c)、(d)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図8】(e)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図9】(a)〜(c)は、冊子の先端部が基準部材に突き当たる前後でのベルト搬送機構部側の搬送ベルト部材の動作とクランプ部材の動作とを説明する図である。
【図10】制御部が行う冊子の傾きを補正する際の動作制御の手順の一例を示したフローチャートである。
【図11】(a)、(b)は、クランプ部材の構成および動作を側面方向側から説明する図である。
【図12】(a)、(b)は、クランプ部材の長手方向の構成と動作とを説明する図である。
【図13】(a)の本実施の形態のクランプ部材と、(b)の下部クランパ側に圧調整バネ部材が設けられた比較例としてのクランプ部材との比較を行った図である。
【図14】(a)、(b)は、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う機構部とその動作を説明する図である。
【図15】(a)〜(c)は、冊子の先端部が基準部材に突き当たる前後でのベルト搬送機構部側の搬送ベルト部材の動作とクランプ部材の動作とを説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
1…用紙処理システム、2…画像形成装置、3…用紙処理装置、10…搬送装置、30…折り装置、40…第1後処理装置、50…第2後処理装置、51…搬送ユニット、52…基準部材、53…クランプ部材、54…押圧ロール部材、55…裁断ユニット、56…送りロール、57…裁断位置設定ユニット、58…裁断屑収容ユニット、59…冊子搬送ロール、60…冊子トレイ、100…制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に対して処理を施すシート処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタや複写機等の画像形成装置から排出される記録済みの用紙(シート)に、折りや穿孔、ステープル等の処理を施すシート処理装置については、従来から多くの提案がなされている。例えば、特許文献1では、背部が湾曲するように折り畳まれた冊子を処理する装置において、背部が折り畳まれた一組のシート材料を把持し固定するように配置されたクランプ手段と、背部の長さ方向に沿って移動可能であり、背部の湾曲を平坦化するのに充分な圧力を背部に対して付与する成形手段とを備えたものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−260564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、冊子の折り畳み部である背部の湾曲を平坦化する前段階として、冊子の背部を例えば板状部材に突き当て、この冊子の姿勢を揃える処理が行われる。この突き当てに際して、用紙枚数の少ない冊子では、冊子の剛性が低いことから、例えば板状部材に冊子が突き当たる際に、冊子の背部近傍の紙面にて冊子への搬送力により搬送方向と交差する方向に湾曲(ループ)が発生する場合がある。このとき、例えば板状部材に対して冊子が傾いた状態で最初に突き当たった部分は搬送力が集中することから、この突き当たった部分のループ量が大きく、その後に突き当たった部分では搬送力が分散されてループ量が小さくなるという傾向がある。その結果、冊子の姿勢を揃える際に、冊子の幅方向の位置によって異なる大きさのループが発生してしまう。かかる場合には、ループ量の差に起因する姿勢のずれが残存し、その後、製本に際して、例えば冊子の後端部(搬送方向の後端側)に裁断処理を施した場合には、その冊子の平面形状のばらつきが大きくなる。
【0005】
また、冊子の背部を潰して角付けを行なうための準備動作として、冊子の背部近傍をクランプ部材にて押さえる、所謂クランプ作業が行なわれる。このとき、冊子の厚さが変ってもクランプを良好に行なうために、冊子のクランプ圧調整機構が設けられる場合が多いが、このクランプ圧調整機構によるクランプ作業を行なった際にも、冊子に生じるダメージを軽減し、冊子の姿勢を良好に保つことが要求される。
【0006】
本発明は、用紙枚数の少ない冊子であっても、その冊子の姿勢を精度良く補正することを主たる目的とする。
また他の目的は、冊子に対するダメージを軽減させ、冊子の姿勢を良好に保つことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的のもと、本発明が適用されるシート処理装置は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記ベルト搬送機構に設けられた前記ベルト対の移動を、前記冊子を前記搬送方向に移動させる方向と当該搬送方向とは反対方向に移動させる方向とに制御する制御部をさらに備え、前記制御部は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数より少ない場合に、前記端部が保持された当該冊子を前記反対方向に移動させるように制御することを特徴とする。
【0009】
また、他の観点から捉えると、本発明が適用されるシート処理装置は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子の端部を前記基準部材に接触させた後、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された当該冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする。
【0010】
ここで、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子から前記ベルト対のうちの当該冊子の上部に配置されたベルトを離隔させるように当該ベルトを移動させることを特徴とする。
【0011】
また、上記の2つのシート処理装置にて、前記ベルト搬送機構は、前記ベルト対により搬送される前記冊子が前記基準部材に接触し搬送が遮られることで当該ベルト対の駆動トルクが所定値以上となった場合に当該ベルト対への駆動力の伝達を停止するように設定されたトルクリミッタを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記冊子保持部材は、移動しない位置に設けられ前記冊子の端部を一方向から保持するための第1の保持部と、前記第1の保持部に向けて移動することにより当該第1の保持部との間に押圧力を形成し、当該第1の保持部とともに前記冊子の端部を挟んで保持する第2の保持部と、前記第2の保持部に設けられ、前記第1の保持部との間に形成される前記押圧力を調整する弾性部とを有することを特徴とする。
更に、前記冊子保持部材の前記弾性部は、前記第2の保持部の長手方向に沿って前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする。
【0013】
また、上記の2つのシート処理装置にて、前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を一方から保持する第1の保持部と他方から保持する第2の保持部とを備え、当該冊子を保持していない設定状態での当該第1の保持部と当該第2の保持部との間隔が当該冊子を構成する前記シート材の枚数に応じて変更可能であることを特徴とする。
更に、前記基準部材は、前記冊子の傾きの補正を行う際に当該冊子の搬送面と交差する位置に設定され、当該冊子の傾きの補正を行わない場合には当該搬送面から退避する位置に設定され、前記基準部材による傾き補正後に当該冊子が搬送される場合には前記搬送面から退避する位置に配置されていた当該冊子の搬送を導くガイド部が当該搬送面の近傍に設定されることを特徴とする。
【0014】
一方、本発明が適用される画像形成システムは、シート材に画像を形成する画像形成装置と、前記画像形成装置から出力されたシート材に対する後処理を行う用紙処理装置とを備え、前記用紙処理装置は、複数の前記シート材が重ねられた冊子に綴じを施す綴じ手段と、前記綴じ手段にて綴じが施された前記冊子の当該綴じが施された部分に折りを施す折り手段と、綴じと折りとが施された前記冊子を上下方向から挟み込んで当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、前記基準部材に接触した前記冊子の端部を上下方向から挟み込んで保持する冊子保持部材と、前記冊子保持部材にて保持された前記冊子の前記端部を押圧して平坦化する平坦化部材とを備え、前記ベルト搬送機構は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数以下の場合に、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする。
また、前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を上方向から移動して挟む上部保持部と下方向に固定されて挟む下部保持部とを有し、当該上部保持部の長手方向に沿って当該下部保持部と当該上部保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
シート処理装置または画像形成システムにて、用紙枚数の少ない冊子であっても、その冊子の姿勢を精度良く補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔実施の形態1〕
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される用紙処理システム1の全体構成を示した図である。図1に示す用紙処理システム1は、例えば電子写真方式によってカラー画像を形成するプリンタや複写機等の画像形成装置2と、画像形成装置2によって例えばトナー像が形成された用紙(シート材)に対して後処理を施す用紙処理装置3とを備えている。
そして、この用紙処理装置3は、画像形成装置2から出力された用紙を更に下流側に搬送する搬送装置10と、この搬送装置10により搬送される用紙に対して厚紙や窓空き用紙等の合紙を供給する合紙供給装置20とを備えている。また、搬送装置10から搬送された用紙に対して内三折り(C折り)や外三折り(Z折り)等の折り処理を施す折り装置30と、折り装置30の下流側に設けられて用紙に穴あけや端綴じ、中綴じを行う第1後処理装置40とを備えている。更に、この第1後処理装置40の下流側に設けられて中折り/中綴じされた用紙束(冊子)に対する更なる後処理を行う第2後処理装置50を備えている。
また、用紙処理装置3は、用紙処理装置3の全体を制御する制御部100を有し、この制御部100は、例えば第1後処理装置40に設けられている。
【0018】
用紙処理装置3の第1後処理装置40は、図1に示すように、用紙に穴あけ(パンチ)を施す穿孔ユニット41と、用紙束の端を綴じるための端綴じステープラユニット42とを備えている。また、端綴じされた用紙束をユーザが取りやすいようにして積み重ねるスタッカトレイ(積載部)43と、用紙束を中折り/中綴じして見開き状の冊子を作製する中綴じユニット44とを備えている。更に、第1後処理装置40での処理が行われない用紙または穴あけだけが施された用紙を積み重ねるトップトレイ45を備えている。
【0019】
ここで、第1後処理装置40に設けられた中綴じユニット44について説明する。
図2は、第1後処理装置40の構成を説明する図である。図2に示すように、中綴じユニット44は、中折り/中綴じされた冊子を作製するに際して、画像形成後の用紙を必要枚数だけ集積させるコンパイルトレイ441と、用紙をコンパイルトレイ441に排出する排出ロール442と、コンパイルトレイ441上に突出するように位置決めストッパを備えて中綴じ位置や中折り位置を決定するためにコンパイルトレイ441に沿って移動するエンドガイド443とを備えている。また中綴じユニット44は、コンパイルトレイ441上に集積される用紙をエンドガイド443に向けて揃えるために回転するパドルからなる複数の用紙揃え部材444と、コンパイルトレイ441上に集積される用紙を幅方向に揃えるためにスライド移動する一対の整合板からなる用紙幅揃え部材445と、コンパイルトレイ441に集積された用紙束を中綴じするステープラ446とを備えている。
更に、中綴じユニット44は、ステープラ446により中綴じされた用紙束を中綴じ位置で折るためにコンパイルトレイ441の上方から下方に向けて突出するように移動する折りナイフ447と、折りナイフ447によって折りが開始された用紙束を挟み込む一対のロールからなる折りロール448と、折りロール448により挟み込まれた用紙束を第2後処理装置50へと搬送する搬送ロール449とを備えている。
【0020】
そして、第1後処理装置40において中折り/中綴じされた冊子を作製する場合には、制御部100からの指示に基づき、折り装置30を経由して搬送された用紙が穿孔ユニット41を通って中綴じユニット44に送られる。
中綴じユニット44の排出ロール442は、搬送されてくる用紙をコンパイルトレイ441に順次載置していく。例えば、5枚、10枚、15枚等、例えば画像形成装置2の制御部(図示せず)にて設定された枚数がこのコンパイルトレイ441に集積される。このとき、エンドガイド443は、例えば用紙の中央部分がステープラ446によるステープル位置に位置するように移動して停止している。更にこのとき、用紙揃え部材444は、このエンドガイド443に向けて回転し、集積される用紙をエンドガイド443に押し当てて、用紙揃えを補助している。また、用紙幅揃え部材445は、コンパイルトレイ441上に集積される用紙の幅方向にスライド移動して、集積された用紙に対し幅方向から用紙揃えを行う。
【0021】
コンパイルトレイ441に所定枚数の用紙が集積された後、ステープラ446によって、用紙の所定部分(例えば中央部分)に対する中綴じが実行される。次いで、中綴じを終えた用紙束は、エンドガイド443の上方への動きによって、折り部分(例えば用紙の中央部分)が折りナイフ447の先端位置と一致するように移動される。尚、折りナイフ447は、コンパイルトレイ441への用紙集積段階や、ステープラ446による中綴じ段階、また、中綴じ後の用紙搬送段階では、その先端がコンパイルトレイ441の上方に退避するように構成されている。
【0022】
用紙束の折り位置が折りナイフ447の先端位置まで移動した後、折りナイフ447は上方から下方に向けて押し出される。すなわち、折りナイフ447に対向する位置に開口が設けられたコンパイルトレイ441の収容面に直交する方向に、折りナイフ447の先端が上方から下方に向けて用紙束を押圧する。更に折りナイフ447の先端はコンパイルトレイ441の開口の下方向側に押し出され、されにより用紙束はコンパイルトレイ441の収容面から押し下げられて、折りロール448に挟み込まれる。この場合に、折りナイフ447は、用紙束が充分に折りロール448に食い込む位置まで移動するように構成されている。
このようにして、ステープラ446による中綴じと、折りナイフ447および折りロール448による中折りとが施された用紙束は、その後、搬送ロール449によって第2後処理装置50に搬送される。
【0023】
次に、第1後処理装置40において中綴じと中折りとが施された用紙束(冊子)が搬送される第2後処理装置50について説明する。
図3は、第2後処理装置50の構成を説明する図である。図3に示すように、第2後処理装置50は、第1後処理装置40において中綴じと中折りとが施された冊子を搬送するとともに冊子の姿勢のずれを補正する搬送ユニット51と、冊子の姿勢のずれを補正する際の基準となる基準部材52と、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を挟み込むようにして保持するクランプ部材53と、冊子の先端部を押圧しながら移動することで先端部を平坦化する押圧ロール部材54とを備えている。
また、第2後処理装置50は、冊子の後端部(見開き部)を揃えるために裁断する裁断ユニット55と、冊子を裁断ユニット55の内部に送り込む送りロール56と、冊子の後端部の裁断位置を決定するために冊子を挟み込み保持した状態で移動する裁断位置設定ユニット57とを備えている。また、裁断ユニット55にて裁断された冊子からの裁断屑を収容する裁断屑収容ユニット58と、裁断ユニット55にて後端部が裁断された冊子を搬送する冊子搬送ロール59とを備えている。
更に、第2後処理装置50には、製本された冊子を集積する冊子トレイ60が備えられており、冊子搬送ロール59から送られた冊子は冊子トレイ60において一冊毎に順次搬送されながら集積される。
【0024】
続いて、第2後処理装置50にて実行される冊子の先端部(中折り/中綴じ部)に対する平坦化処理について説明する。
冊子の先端部に対する平坦化処理は、冊子の姿勢のずれ(スキュー)を補正する姿勢補正(以下、「スキュー補正」ともいう)を行い、冊子の姿勢が整った状態で行われる。そこで、まず、第2後処理装置50にて行われるスキュー補正について説明する。
【0025】
図4は、冊子に対するスキュー補正を行う機構部を側面方向側から示した図である。また、図5は、冊子に対するスキュー補正を行う機構部を上方向側から示した図である。図4および図5に示すように、第2後処理装置50には、冊子に対するスキュー補正を行う機構部として、冊子を上下方向から挟み込んで搬送するベルト搬送機構部51A,51Bが冊子搬送方向に沿って平行に二対設けられている。なお、図4では、そのうちの一対のベルト搬送機構部51Aを表示している。
【0026】
ベルト搬送機構部51A,51B各々は、冊子を上下方向から挟み込んで搬送する搬送ベルト部材511a,511bと、搬送ベルト部材511a,511b各々を回転駆動する駆動ロール512a,512bと、搬送ベルト部材511a,511b各々を張架するアイドルロール513a,513bと、駆動ロール512a,512b各々に駆動モータ(不図示)からの駆動力を伝達する駆動伝達ロール515a,515bとを備えている。
また、駆動伝達ロール515aと駆動ロール512aとの間、および駆動伝達ロール515bと駆動ロール512bとの間には、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bに伝達される回転トルクを所定値(例えば100gf・cm)以下に制限するトルクリミッタ514a,514bが配置されている。それにより、駆動ロール512a,512bに伝達される駆動伝達ロール515a,515bからの回転トルクが所定値を超えると、トルクリミッタ514a,514bはスリップして、駆動ロール512a,512bにはそれ以上の回転トルクの回転駆動力は伝達されない。ベルト搬送機構部51A,51Bにて、アイドルロール513a,513bによって搬送ベルト部材511a,511bが張架される部分は、複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部として機能している。
【0027】
ここで、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動ロール512aは、トルクリミッタ514aを介して共通の支持軸516aに軸支されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動ロール512bは、ともにトルクリミッタ514bを介して支持軸516bに軸支されている。
ベルト搬送機構部51A,51B双方のアイドルロール513aは、共通の支持軸518aに回転自在に軸支されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方のアイドルロール513bは、共通の支持軸518bに回転自在に軸支されている。
ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動伝達ロール515aは、駆動モータに連結された共通の駆動伝達軸517aに固定されている。同様に、ベルト搬送機構部51A,51B双方の駆動伝達ロール515bは、駆動モータに連結された共通の駆動伝達軸517bに固定されている。
【0028】
また、図4に示すように、第2後処理装置50では、冊子に対するスキュー補正時には、冊子の先端部(中折り/中綴じ部)を平坦化する押圧ロール部材54は上方に退避し、冊子のスキュー補正する際の基準となる基準部材52が冊子と接触する位置まで引き上げられて設定される。
【0029】
次の図6〜図8は、第2後処理装置50においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。まず図6(a)に示すように、第1後処理装置40から第2後処理装置50のベルト搬送機構部51A,51Bに冊子が傾いて(傾き角θ)搬送されてくると、冊子搬送方向Fに沿って平行なベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bによるほぼ等しい搬送力を受けて、冊子は傾き角θを持った状態で搬送される。そして、図6(b)に示すように、冊子は傾き角θを持った状態で基準部材52に突き当たる。その際に、冊子の傾きにより、基準部材52に対してC1側の端部側から先に順次突き当たる。なお、この状態では、C2側はまだ突き当たっていない。
【0030】
基準部材52に対して先に突き当たったC1側の端部側では、図7(c)に示すように、基準部材52に突き当たった時点で冊子の搬送が遮られる。その際に、冊子を構成する用紙束の枚数が多い場合には冊子自体の剛性は高いため、冊子が基準部材52に突き当たったことによる冊子からの反力は直ちにベルト搬送機構部51B側に伝達される。それにより、冊子に対するベルト搬送機構部51B側での回転トルクは直ちにトルクリミッタ514a,514bの上限を超えることとなり、トルクリミッタ514a,514bにはスリップが発生する。それによって、ベルト搬送機構部51B側の駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止し、冊子のC1側の端部側での搬送力はなくなる。
すなわち、冊子を構成する用紙束の枚数が多く冊子自体の剛性が高い場合には、冊子が基準部材52に突き当たった時点で直ちに冊子に対するベルト搬送機構部51Bからの搬送力は停止され、冊子のC1側に加わる力は0となる。またその場合に、トルクリミッタ514a,514bの上限値は、所定枚数からなる冊子の剛性よりも低く設定されている。そのため、C1側の端部側が基準部材52に突き当たった際に、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bからの搬送力がC1側の端部側に集中するが、その際の冊子自体の剛性は搬送ベルト部材511a,511bによる搬送力に対抗し得る程度に高い。このようなことから、C1側の端部側には、冊子の紙面に直交する方向の湾曲(ループ)は発生し難い。
【0031】
その一方で、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には冊子自体の剛性が低いため、冊子のC1側が基準部材52に突き当たったことによる基準部材52からの反力の一部は、冊子が吸収する。そのために、冊子が基準部材52に突き当たったことによる基準部材52からの反力は直ちにベルト搬送機構部51B側に伝達されず、反力の一部をC1側の端部側が吸収した後に、冊子に対するベルト搬送機構部51B側の回転トルクがトルクリミッタ514a,514bの上限を超える。そして、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。
すなわち、冊子を構成する用紙束の枚数が少なく冊子自体の剛性が低い場合には、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bからの搬送力の一部を冊子が吸収するために、冊子が基準部材52に突き当たった時点でもベルト搬送機構部51B側の回転トルクがトルクリミッタ514a,514bの上限を超えない。それにより、冊子が基準部材52に突き当たった後にも、冊子はベルト搬送機構部51A,51Bからの搬送力を受けることとなる。このようなことから、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、冊子には紙面に直交する方向のループが発生し易くなる。
【0032】
また、C1側の端部側が基準部材52に突き当たった図7(c)に示す状態では、冊子のC2側の端部側は基準部材52にまだ突き当たった位置まで到達していない。そのため、ベルト搬送機構部51Bでの搬送が停止した場合でも、C2側の端部側を主に搬送するベルト搬送機構部51A(図4、図5参照)ではトルクリミッタ514a,514bがその上限を超えない。それにより、搬送ベルト部材511a,511bは回転移動を継続し、冊子を基準部材52側に搬送する。それにより、ベルト搬送機構部51A,51Bに冊子が搬送されてきた時点での冊子の傾き角θは低減され、冊子の姿勢補正(スキュー補正)が行われる。そして、冊子のC2側も基準部材52に突き当たった時点で、上記と同様のメカニズムにより、ベルト搬送機構部51Bの搬送ベルト部材511a,511bも停止する。
【0033】
その場合にも、C1側の端部側と同様に、冊子を構成する用紙束の枚数が少なく冊子自体の剛性が低い場合には、C2側にもループが発生する場合がある。
しかし、冊子のC2側の端部側が基準部材52に突き当たる際には、すでにベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bは停止している。そのために、冊子のC2側が基準部材52に突き当たる際には、冊子はベルト搬送機構部51A側からの搬送力を受けているだけなので、冊子のC2側が基準部材52から受ける反力はC1側よりも小さい。そのため、C2側の端部側に発生するループ量はC1側の端部側に発生するループ量よりも小さくなる。それにより、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、先端部にループが発生することがあり、その際には、C1側の端部側とC2側の端部側とに発生するループ量は異なることとなる。そして、この冊子に生じるループ量は、冊子の基準部材52側への進入量(搬送量)に比例しているので、冊子にはループ量の差に応じた傾きが残存する。
【0034】
そこで、本実施の形態の第2後処理装置50では、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、図7(d)に示すように、冊子の先端部の全体が基準部材52に突き当たってベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bが停止した状態において、クランプ部材53を冊子の先端部を挟み込んで保持する状態に設定する。更に、図8(e)に示すように、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを逆方向(冊子の後端部方向G)に向けて移動させる。それにより、冊子の先端部がクランプ部材53により挟み込まれて固定された状態で、冊子全体に対して後端部方向Gへの引っ張り力が作用する。それによって、冊子の先端部に発生したループが引き延ばされ、ループ量が低減される。
【0035】
すなわち、本実施の形態の第2後処理装置50では、両方向の回転に対して上限トルクが設定されて作動するトルクリミッタ514a,514bを用いる。図7(d)に示すように、クランプ部材53が冊子の先端部を保持した後、搬送ベルト部材511a,511bは同時に逆方向に向けて回転駆動される。そして、搬送ベルト部材511a,511bの移動速度は同じであるから、ループ量が小さいC2側の端部側での引き延ばしは早く完了し、ループ量が大きいC1側の端部側では、それよりも遅れて完了する。その際に、ループ量が小さいC2側の端部側の引き延ばしが完了した場合は、冊子に対するベルト搬送機構部51A側の回転トルクが、逆方向の回転に対して設定されたトルクリミッタ514a,514bの上限を超える。そのため、ベルト搬送機構部51A側の駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止し、冊子のC2側の端部側での引き延ばし力はなくなる。一方、その状態で、ループ量が大きいC1側の端部側の引き延ばしはベルト搬送機構部51Bにより継続される。そして、C1側の端部側の引き延ばしが完了した時点で、ベルト搬送機構部51B側の回転トルクが逆方向の回転に対して設定されたトルクリミッタ514a,514bの上限を超え、C2側の端部側での引き延ばし力もなくなる。それにより、冊子では、C1側のループ量とC2側のループ量との差がほぼ同程度となるまで緩和される。その結果として、ループ量の差に基づき残存していた冊子での傾きは補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0036】
ここで、本実施の形態の第2後処理装置50において、一方向(正回転方向)の回転に対して上限トルクが設定され、他方向(逆回転方向)へは自在に回転するように動作する一方向性のトルクリミッタ514a,514bを用いてもよい。この場合には、ループ量が小さいC2側の端部側での引き延ばしが完了した時点で、冊子表面と搬送ベルト部材511a,511b表面との間にはスリップが生じる。そのために、ベルト搬送機構部51A側での両者間の摩擦力は静的摩擦から動的摩擦に変化することで低下する。それにより、C1側の端部側の引き延ばしが完了した時点では、静的摩擦状態にある搬送機構部51B側での冊子表面と搬送ベルト部材511a,511b表面との間の摩擦力の方が相対的に大きくなる。このような作用を利用して、C1側のループ量とC2側のループ量との差を緩和するように構成してもよい。
なお、上記の図6〜図8は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bを上方から見た図であるので、ベルトの回転移動方向を示す矢印は、搬送ベルト部材511aの上面の移動方向を示したものである。
【0037】
引き続き、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合におけるベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bでの搬送ベルト部材511a,511bの動作と、冊子保持部材としてのクランプ部材53の動作とを側面方向側から説明する。
図9は、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前後でのベルト搬送機構部51A側の搬送ベルト部材511a,511bの動作とクランプ部材53の動作とを説明する図である。まず、図9(a)に示すように、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前までは、駆動ロール512a,512bは、駆動伝達ロール515a,515bからの回転駆動力を受けて、搬送ベルト部材511a,511bを冊子が基準部材52方向に搬送されるように回転する。
【0038】
そして、冊子の先端部が基準部材52に突き当たると、図9(b)に示すように、冊子の搬送が基準部材52により遮られるため、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転トルクが所定値(例えば100gf・cm)を超える。それにより、トルクリミッタ514a,514bが作動して、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。すなわち、トルクリミッタ514a,514bがスリップすることで、駆動ロール512a,512bの回転は停止し、それにより、ベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bは停止する。その状態で、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持するように設定される。それによって、冊子の先端部はクランプ部材53によって固定される。
【0039】
冊子の先端部がクランプ部材53によって固定されると、図9(c)に示すように、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、駆動伝達ロール515a,515bは、逆方向に回転する。それにより、駆動ロール512a,512bは、搬送ベルト部材511a,511bが冊子を基準部材52から離れる方向(冊子の後端部方向)に搬送するように回転する。そして、先端部がクランプ部材53によって固定された冊子は、冊子の後端部方向に引き延ばされる力を受ける。そのために、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合に冊子の先端部に発生したループがそれぞれ引き延ばされ、冊子が冊子搬送方向とは反対方向に引っ張られることでループ量が低減する。そして、ループ量の差に基づき残存していた冊子の傾き(スキュー)は補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0040】
ところで、上記した冊子に対するスキュー補正を行う機構部の動作は、制御部100によって制御される。
そして、制御部100は、例えば冊子を構成する用紙束の枚数に応じて、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作を行うか否かを決定する。すなわち、制御部100は、次のように冊子の傾きを補正する動作を制御する。
【0041】
図10は、制御部100が行う冊子の傾きを補正する際の動作制御の手順の一例を示したフローチャートである。図10に示すように、まず、制御部100が画像形成装置2の制御部(図示せず)から冊子を構成する用紙束の枚数に関する情報を取得する(ステップ101)。そして、冊子を構成する用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)以下であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)以下である場合には、制御部100は、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持した状態で、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子の後端部方向に向けて移動させるように制御する(ステップ103)。即ち、冊子搬送方向とは反対方向に冊子を引っ張るように制御する。また、言い換えると、冊子とこの冊子を挟み込んだベルト対(搬送ベルト部材511a,511b)との間の領域の冊子に作用する力を解放するように制御する。
【0042】
一方、ステップ102にて、用紙束の枚数が所定枚数よりも多い場合には、制御部100は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子の後端部方向に向けて移動させる動作を行わないように制御する(ステップ104)。そして、1サイクルの印刷処理におけるすべての冊子について上記の処理が行われる(ステップ105)。
それにより、ループが生じ難い用紙束の枚数が所定枚数(例えば5枚)よりも多い冊子には、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作が行われない。その結果、用紙処理装置3での後処理に要する時間の短縮化が図られる。
なお、制御部100において、冊子を構成する用紙束の枚数に拘わらず、ループ量の差に基づき残存した冊子の傾きを補正する動作を行うように制御してもよい。
【0043】
続いて、クランプ部材53の構成および動作を説明する。
図11は、クランプ部材53の構成および動作を側面方向側から説明する図である。図11(a)はクランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態を示し、(b)は冊子の先端部を挟み込んで保持した状態を示している。図11に示すように、クランプ部材53は、冊子を下側から保持する下部クランパ(第1の保持部)531と、冊子を上側から保持する上部クランパ(第2の保持部)532と、上部クランパ532と下部クランパ531との間の押圧力を調整しながら上部クランパ532を下部クランパ531側に押圧する圧調整バネ部材533と、圧調整バネ部材533を介して上部クランパ532を下部クランパ531側に押圧する押圧部材534とを備えている。
【0044】
下部クランパ531は、上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。また、上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534とは一体的に構成され、冊子の先端部を挟み込んで保持する設定状態と保持する前の設定状態とに応じて上下方向に移動する可動部を構成する。
【0045】
そして、図11(a)に示すように、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態では、可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)は、固定された上部クランパ532の上方に退避した位置に設定され、冊子の先端部が基準部材52に突き当たった状態に設定されるまで待機する。冊子の先端部が基準部材52に突き当てられ、ベルト搬送機構部51Aの搬送ベルト部材511a,511bが停止すると、図11(b)に示すように、可動部は下方に移動し、上部クランパ532と下部クランパ531とで冊子を押圧しながら保持する。
【0046】
ここで、図11(a)に示す冊子の先端部を保持する前の設定状態での上部クランパ532と下部クランパ531との間の開口量hに関しては、冊子を構成する用紙束の枚数に応じて開口量hを調整するように構成してもよい。例えば、制御部100が画像形成装置2の制御部(図示せず)から冊子を構成する用紙束の枚数に関する情報を取得して、用紙束の枚数が少ない場合には、開口量hを小さく設定し、用紙束の枚数が多い場合には、開口量hを大きく設定する。それにより、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる際に、上部クランパ532と下部クランパ531との間において冊子の先端部が上部クランパ532側にずれる空間が制限される。それにより、冊子の先端部が搬送面Hから浮き上がった状態で基準部材52に突き当たることを適度に抑制するので、図11(b)に示す可動部を下方に移動させる際に、冊子の先端部を変形させて挟み込むことを抑制する。その結果、冊子に対するスキュー補正の精度も向上する。
【0047】
次の図12は、クランプ部材53の長手方向の構成と動作とを説明する図である。クランプ部材53の上部クランパ532と押圧部材534とは、上部クランパ532の両端部に設けられた突出部532aが押圧部材534に設けられた穿孔部534aによって上下方向にスライド移動自在に支持されることで、一体的な可動部を構成している。そして、上部クランパ532と押圧部材534との間には、長手方向に沿って所定の間隔を隔てた複数の圧調整バネ部材533が配置されている。このような構成により、図12(a)に示すクランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持する前の設定状態から、図12(b)に示す冊子の先端部を挟み込んで保持した状態に移行する際には、押圧部材534が不図示の駆動手段により押し下げられることで、複数の圧調整バネ部材533各々による弾性力が長手方向に均等な押圧力を上部クランパ532に付加する。それによって、上部クランパ532と下部クランパ531との間には長手方向に均等な押圧力が形成され、冊子を均等に保持する。
そのため、冊子の先端部に発生したループを引き延ばす際に、冊子が長手方向により確実に保持されるので、冊子の長手方向のループが全体的に均一に均される。また、上部クランパ532と下部クランパ531との圧接力のむらによる冊子先端部の凹み等といった不具合の発生を抑制する。
【0048】
また、本実施の形態のクランプ部材53では、上記したように、下部クランパ531は、その上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。そのため、クランプ部材53を通過する冊子の搬送面Hは変動し難く、冊子は冊子を裁断ユニット55の内部に送り込む送りロール56に円滑に搬入される。
【0049】
図13は、(a)本実施の形態のクランプ部材53と、(b)下部クランパ531´側に圧調整バネ部材533´が設けられた比較例としてのクランプ部材53´との比較を行った図である。図13(a)に示すように、本実施の形態のクランプ部材53では、下部クランパ531は固定されているため、可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)が下部クランパ531を押圧しても、下部クランパ531の上面位置に変動が生じない。そのため、冊子の搬送面Hはほぼ一定の高さ位置に維持される。それにより、冊子は送りロール56のニップに対してほぼ平行に進入するので、冊子の先端部に屈曲等が生じ難い。
それに対して、比較例のクランプ部材53´では、上部クランパ532´が下部クランパ531´を押圧すると、下部クランパ531´側に設けられた圧調整バネ部材533´が支持部材535´に支持されながら圧縮されて、下部クランパ531´の上面位置は下方に移動する。それにより、冊子の搬送面Hは、下部クランパ531´の上面の移動量gだけ低く位置する搬送面H´に変動する。そのため、冊子は送りロール56のニップに対して角度を持って進入することとなり、冊子の先端部に屈曲等が生じ易い。
【0050】
そこで、本実施の形態の下部クランパ531は、下部クランパ531の上面が冊子の搬送面Hとほぼ一致する高さ位置に設定された状態で、第2後処理装置50に固定されている。そのため、クランプ部材53を通過する冊子の搬送面Hはほぼ一定に維持されるので、冊子は送りロール56のニップに対してほぼ平行に進入する。それによって、冊子の先端部に屈曲等が生じることを抑制している。
【0051】
このように、第2後処理装置50では、第1後処理装置40から送られた冊子の先端部(中折り/中綴じ部)に対する平坦化処理を行う前に、上記した冊子へのスキュー補正が行われる。そして、スキュー補正が完了した後に、冊子の先端部に対する平坦化処理が実行される。
第2後処理装置50において冊子の先端部を平坦化処理する場合には、スキュー補正を行う際に用いた基準部材52は冊子の搬送面H(図11参照)よりも低い位置に引き下げられる。それに伴って、押圧ロール部材54が冊子の先端部を押圧する位置まで引き下げられる。
【0052】
ここで、図14は、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う機構部とその動作を説明する図である。図14(a)は、冊子の先端部に対する平坦化処理が行われる状態を示し、(b)は、冊子の先端部に対する平坦化処理が行われた後の状態を示している。図14(a)に示すように、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う際には、スキュー補正が完了した際の状態である、クランプ部材53は冊子の先端部を保持した状態、かつ、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bは停止した状態がそのまま維持される。そして、基準部材52が冊子の搬送面Hよりも低い位置に引き下げられた後、押圧ロール部材54が冊子の先端部を押圧する位置に設定される。そして、押圧ロール部材54は、クランプ部材53に保持された冊子の先端部を横方向から押圧した状態で、回転しながら冊子の幅方向に沿って一方の端部から他方の端部に向けて1回の移動または往復移動、または、複数回の往復移動を行う。それにより、第1後処理装置40での中折りによって湾曲していた冊子の先端部は平坦に均される。
【0053】
冊子の先端部に対する平坦化処理が行われた後には、図14(b)に示すように、押圧ロール部材54は冊子の上面位置よりも上方に引き上げられて設定される。そして、それに伴って、クランプ部材53の可動部(上部クランパ532と圧調整バネ部材533と押圧部材534)は引き上げられて、冊子は解放される。また、冊子の搬送面Hよりも低い位置に引き下げられていた基準部材52は、その上面に配置された冊子ガイド部521が冊子の搬送面Hに一致する位置まで引き上げられる。それにより、先端部が平坦化された冊子は、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bにより、基準部材52の上面の冊子ガイド部521に導かれながら送りロール56の位置に搬送される。
【0054】
その後、第2後処理装置50では、上記した図3に示すように、平坦化処理された冊子は、送りロール56によって裁断ユニット55に搬送される。裁断ユニット55に搬送された冊子は、裁断位置設定ユニット57によって冊子の後端部の裁断位置が決定される。そして、裁断ユニット55により冊子の後端部が裁断される。それにより、冊子の平面形状が揃えられる。この場合に、冊子の先端部に対する平坦化処理時に冊子の姿勢のずれが精度良く補正されているので、冊子の平面形状のばらつきは低減される。
そして、製本された冊子は、冊子搬送ロール59によって冊子トレイ60に送られ、冊子トレイ60において一冊毎に順次搬送されながら集積される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態の用紙処理システム1に設けられた用紙処理装置3では、用紙枚数が少なく剛性が低い冊子に発生したループに起因する冊子の姿勢のずれを補正する機構が設けられている。それにより、用紙枚数が少ない冊子であっても冊子の姿勢のずれが補正され、製本された冊子での平面形状のばらつきが低減される。
【0056】
〔実施の形態2〕
実施の形態1では、スキュー補正時にベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の搬送ベルト部材511a,511bを冊子が後端部方向に向かうように移動させる構成を用いた。実施の形態2は、実施の形態1での構成に代わり、スキュー補正時にベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51B双方の上側に配置された搬送ベルト部材511aを退避させる構成を有する。尚、実施の形態1と同様の機能については同様の符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0057】
図15は、本実施の形態の用紙処理装置3において、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前後でのベルト搬送機構部51A側の搬送ベルト部材511a,511bの動作とクランプ部材53の動作とを説明する図である。本実施の形態のベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bは、上側に配置された搬送ベルト部材511aが、不図示の移動機構により、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避するように構成されている。
【0058】
本実施の形態のベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bでは、まず、図15(a)に示すように、冊子の先端部が基準部材52に突き当たる前までは、上側の搬送ベルト部材511aと下側の搬送ベルト部材511bとは、冊子を挟み込むように圧接して配置される。そして、搬送ベルト部材511a,511bは、駆動伝達ロール515a,515bからの回転駆動力を受けた駆動ロール512a,512bにより、冊子を基準部材52方向に搬送する。
その後、冊子の先端部が基準部材52に突き当たると、図15(b)に示すように、冊子の搬送が基準部材52により遮られるため、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転トルクが所定値(例えば100gf・cm)を超える。それにより、トルクリミッタ514a,514bが作動して、駆動伝達ロール515a,515bから駆動ロール512a,512bへの回転駆動力の伝達は停止する。それにより、ベルト搬送機構部51Aおよびベルト搬送機構部51Bの搬送ベルト部材511a,511bは停止する。その状態で、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持するように設定される。それによって、冊子の先端部はクランプ部材53によって固定される。
【0059】
冊子の先端部がクランプ部材53によって固定されると、図15(c)に示すように、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない場合には、上側に配置された搬送ベルト部材511aは、不図示の移動機構により、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避して、搬送ベルト部材511aを離隔させる。それにより、冊子に作用していた搬送ベルト部材511aとの摩擦力から解放される。即ち、冊子とこの冊子を挟み込んだベルト対(搬送ベルト部材511a,511b)との間の領域の冊子に作用する力を解放することができる。更には、上側の搬送ベルト部材511aと下側の搬送ベルト部材511bとの圧接力がなくなるため、搬送ベルト部材511bとの摩擦力も低減する。それにより、先端部がクランプ部材53によって固定された冊子は、冊子の先端部に存在する応力が後端側に開放される。それによって、冊子を構成する用紙束の枚数が少ない冊子の先端部に発生したループは自発的に延び、ループ量が低減する。そして、ループ量の差に基づき残存していた冊子の傾き(スキュー)は補正され、冊子の姿勢のずれが修正される。
【0060】
このように、本実施の形態の用紙処理装置3では、冊子の先端部が基準部材52に突き当たり、クランプ部材53が冊子の先端部を挟み込んで保持した状態で、上側に配置された搬送ベルト部材511aを、下側の搬送ベルト部材511bに載置された冊子の表面と接触しない上方側の位置まで退避させる。それにより、用紙束の枚数が少ない冊子であっても冊子の姿勢のずれが補正され、製本された冊子での平面形状のばらつきが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施の形態が適用される用紙処理システムの全体構成を示した図である。
【図2】第1後処理装置の構成を説明する図である。
【図3】第2後処理装置の構成を説明する図である。
【図4】冊子に対するスキュー補正を行う機構部を側面方向側から示した図である。
【図5】冊子に対するスキュー補正を行う機構部を上方向側から示した図である。
【図6】(a)、(b)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図7】(c)、(d)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図8】(e)は、第2後処理装置においてスキュー補正が行なわれる際の各機構部の動作の過程を示した図である。
【図9】(a)〜(c)は、冊子の先端部が基準部材に突き当たる前後でのベルト搬送機構部側の搬送ベルト部材の動作とクランプ部材の動作とを説明する図である。
【図10】制御部が行う冊子の傾きを補正する際の動作制御の手順の一例を示したフローチャートである。
【図11】(a)、(b)は、クランプ部材の構成および動作を側面方向側から説明する図である。
【図12】(a)、(b)は、クランプ部材の長手方向の構成と動作とを説明する図である。
【図13】(a)の本実施の形態のクランプ部材と、(b)の下部クランパ側に圧調整バネ部材が設けられた比較例としてのクランプ部材との比較を行った図である。
【図14】(a)、(b)は、冊子の先端部に対する平坦化処理を行う機構部とその動作を説明する図である。
【図15】(a)〜(c)は、冊子の先端部が基準部材に突き当たる前後でのベルト搬送機構部側の搬送ベルト部材の動作とクランプ部材の動作とを説明する図である。
【符号の説明】
【0062】
1…用紙処理システム、2…画像形成装置、3…用紙処理装置、10…搬送装置、30…折り装置、40…第1後処理装置、50…第2後処理装置、51…搬送ユニット、52…基準部材、53…クランプ部材、54…押圧ロール部材、55…裁断ユニット、56…送りロール、57…裁断位置設定ユニット、58…裁断屑収容ユニット、59…冊子搬送ロール、60…冊子トレイ、100…制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、
前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材と
を備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記ベルト搬送機構に設けられた前記ベルト対の移動を、前記冊子を前記搬送方向に移動させる方向と当該搬送方向とは反対方向に移動させる方向とに制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数より少ない場合に、前記端部が保持された当該冊子を前記反対方向に移動させるように制御することを特徴とする請求項1記載のシート処理装置。
【請求項3】
複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、
前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材と
を備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子の端部を前記基準部材に接触させた後、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された当該冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とするシート処理装置。
【請求項4】
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子から前記ベルト対のうちの当該冊子の上部に配置されたベルトを離隔させるように当該ベルトを移動させることを特徴とする請求項3記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記ベルト搬送機構は、前記ベルト対により搬送される前記冊子が前記基準部材に接触し搬送が遮られることで当該ベルト対の駆動トルクが所定値以上となった場合に当該ベルト対への駆動力の伝達を停止するように設定されたトルクリミッタを備えたことを特徴とする請求項1乃至4何れか記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記冊子保持部材は、
移動しない位置に設けられ前記冊子の端部を一方向から保持するための第1の保持部と、
前記第1の保持部に向けて移動することにより当該第1の保持部との間に押圧力を形成し、当該第1の保持部とともに前記冊子の端部を挟んで保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に設けられ、前記第1の保持部との間に形成される前記押圧力を調整する弾性部と
を有することを特徴とする請求項1乃至5何れか記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記冊子保持部材の前記弾性部は、
前記第2の保持部の長手方向に沿って前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする請求項6記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を一方から保持する第1の保持部と他方から保持する第2の保持部とを備え、当該冊子を保持していない設定状態での当該第1の保持部と当該第2の保持部との間隔が当該冊子を構成する前記シート材の枚数に応じて変更可能であることを特徴とする請求項1乃至7何れか記載のシート処理装置。
【請求項9】
前記基準部材は、前記冊子の傾きの補正を行う際に当該冊子の搬送面と交差する位置に設定され、当該冊子の傾きの補正を行わない場合には当該搬送面から退避する位置に設定され、
前記基準部材による傾き補正後に当該冊子が搬送される場合には前記搬送面から退避する位置に配置されていた当該冊子の搬送を導くガイド部が当該搬送面の近傍に設定されることを特徴とする請求項1乃至8何れか記載のシート処理装置。
【請求項10】
シート材に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置から出力されたシート材に対する後処理を行う用紙処理装置と
を備え、
前記用紙処理装置は、
複数の前記シート材が重ねられた冊子に綴じを施す綴じ手段と、
前記綴じ手段にて綴じが施された前記冊子の当該綴じが施された部分に折りを施す折り手段と、
綴じと折りとが施された前記冊子を上下方向から挟み込んで当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を上下方向から挟み込んで保持する冊子保持部材と、
前記冊子保持部材にて保持された前記冊子の前記端部を押圧して平坦化する平坦化部材とを備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数以下の場合に、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする請求項10記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を上方向から移動して挟む上部保持部と下方向に固定されて挟む下部保持部とを有し、当該上部保持部の長手方向に沿って当該下部保持部と当該上部保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする請求項10または11記載の画像形成システム。
【請求項1】
複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、
前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材と
を備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記ベルト搬送機構に設けられた前記ベルト対の移動を、前記冊子を前記搬送方向に移動させる方向と当該搬送方向とは反対方向に移動させる方向とに制御する制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数より少ない場合に、前記端部が保持された当該冊子を前記反対方向に移動させるように制御することを特徴とする請求項1記載のシート処理装置。
【請求項3】
複数のシート材が重ねられ折りが施された冊子を受け入れる受け入れ部と、
前記冊子を挟み込み当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を挟み込んで保持する冊子保持部材と
を備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子の端部を前記基準部材に接触させた後、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された当該冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とするシート処理装置。
【請求項4】
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子から前記ベルト対のうちの当該冊子の上部に配置されたベルトを離隔させるように当該ベルトを移動させることを特徴とする請求項3記載のシート処理装置。
【請求項5】
前記ベルト搬送機構は、前記ベルト対により搬送される前記冊子が前記基準部材に接触し搬送が遮られることで当該ベルト対の駆動トルクが所定値以上となった場合に当該ベルト対への駆動力の伝達を停止するように設定されたトルクリミッタを備えたことを特徴とする請求項1乃至4何れか記載のシート処理装置。
【請求項6】
前記冊子保持部材は、
移動しない位置に設けられ前記冊子の端部を一方向から保持するための第1の保持部と、
前記第1の保持部に向けて移動することにより当該第1の保持部との間に押圧力を形成し、当該第1の保持部とともに前記冊子の端部を挟んで保持する第2の保持部と、
前記第2の保持部に設けられ、前記第1の保持部との間に形成される前記押圧力を調整する弾性部と
を有することを特徴とする請求項1乃至5何れか記載のシート処理装置。
【請求項7】
前記冊子保持部材の前記弾性部は、
前記第2の保持部の長手方向に沿って前記第1の保持部と前記第2の保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする請求項6記載のシート処理装置。
【請求項8】
前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を一方から保持する第1の保持部と他方から保持する第2の保持部とを備え、当該冊子を保持していない設定状態での当該第1の保持部と当該第2の保持部との間隔が当該冊子を構成する前記シート材の枚数に応じて変更可能であることを特徴とする請求項1乃至7何れか記載のシート処理装置。
【請求項9】
前記基準部材は、前記冊子の傾きの補正を行う際に当該冊子の搬送面と交差する位置に設定され、当該冊子の傾きの補正を行わない場合には当該搬送面から退避する位置に設定され、
前記基準部材による傾き補正後に当該冊子が搬送される場合には前記搬送面から退避する位置に配置されていた当該冊子の搬送を導くガイド部が当該搬送面の近傍に設定されることを特徴とする請求項1乃至8何れか記載のシート処理装置。
【請求項10】
シート材に画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置から出力されたシート材に対する後処理を行う用紙処理装置と
を備え、
前記用紙処理装置は、
複数の前記シート材が重ねられた冊子に綴じを施す綴じ手段と、
前記綴じ手段にて綴じが施された前記冊子の当該綴じが施された部分に折りを施す折り手段と、
綴じと折りとが施された前記冊子を上下方向から挟み込んで当該冊子を搬送するベルト対が当該冊子の搬送方向に沿って複数並列して配置されたベルト搬送機構と、
前記ベルト搬送機構にて搬送された前記冊子の端部が接触することで当該冊子の傾きを補正する際の基準となる基準部材と、
前記基準部材に接触した前記冊子の端部を上下方向から挟み込んで保持する冊子保持部材と、
前記冊子保持部材にて保持された前記冊子の前記端部を押圧して平坦化する平坦化部材とを備え、
前記ベルト搬送機構は、前記冊子を構成する前記シート材の枚数が所定枚数以下の場合に、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子と当該冊子を挟み込んだ前記ベルト対との間の領域の当該冊子に作用する力を解放するように当該ベルト対を動作させることを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
前記ベルト搬送機構は、前記冊子保持部材にて前記端部が保持された前記冊子を前記搬送方向とは反対方向に引っ張るように前記ベルト対を駆動させることを特徴とする請求項10記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記冊子保持部材は、前記冊子の端部を上方向から移動して挟む上部保持部と下方向に固定されて挟む下部保持部とを有し、当該上部保持部の長手方向に沿って当該下部保持部と当該上部保持部との間の押圧力を均す複数のバネ部材が配置されたことを特徴とする請求項10または11記載の画像形成システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−274393(P2009−274393A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129951(P2008−129951)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000251288)鈴鹿富士ゼロックス株式会社 (156)
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