説明

シート分離搬送装置及びシート処理装置

【課題】分離ローラの取り外し作業を容易化すること。
【解決手段】シートを搬送する搬送ローラと、該搬送ローラに対向して設けられ、その軸方向に着脱可能な分離ローラと、を備え、前記分離ローラがシートを戻す方向に回転することにより、前記搬送ローラと前記分離ローラとのニップ部に供給されるシートを1枚ずつ分離しながら搬送するシート分離搬送装置であって、前記ニップ部に供給されるシートを、前記分離ローラ周面よりも先に前記搬送ローラ周面に接するように案内する案内部を有する案内部材を備え、前記案内部材を、前記案内部が前記分離ローラに近接する案内位置と、前記案内部が前記分離ローラから離間する退避位置との間で変位可能に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを一枚ずつ分離して搬送する機構を備えたシート分離搬送装置及びシート処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙類等のシートを束の状態から一枚ずつ分離して搬送する装置としてシート分離搬送装置が知られている(特許文献1)。この装置は、一対のローラの一方をシートの送り出し方向に回転させる搬送ローラとし、他方を戻り方向に回転可能な分離ローラとする。これらのニップ部にシートが重送されてきた場合、一方は搬送ローラによって送り出し方向に搬送されるが、他方は分離ローラによって送り出し方向には搬送されない。こうしてシートが一枚ずつ搬送されることになる。
【0003】
一方、このようにローラを用いた搬送装置では、一般に、使用によりローラ表面が磨耗するため、定期的にその交換が必要となる。このため、装置に対してローラが着脱自在な構成となっている場合が多い。例えば、特許文献2にはローラをその軸方向に着脱自在な構成のものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4179898号公報
【特許文献2】特開2001−270626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート分離搬送装置では、搬送ローラと分離ローラとのうち、特に分離ローラは、一般に、シートの搬送方向と逆方向に回転することから磨耗し易く、定期的な交換の必要性が高い。一方、シート分離搬送装置では、ニップ部に供給されたシートが搬送ローラ周面よりも先に分離ローラ周面に接すると、円滑にシートが搬送されない場合がある。その対策として、シートが分離ローラ周面よりも先に搬送ローラ周面に接するように案内部材を設けることが挙げられる。しかし、このような案内部材を設けると、分離ローラの交換の際、分離ローラの着脱作業の邪魔になる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、分離ローラの取り外し作業を容易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、シートを搬送する搬送ローラと、該搬送ローラに対向して設けられ、その軸方向に着脱可能な分離ローラと、を備え、前記分離ローラがシートを戻す方向に回転することにより、前記搬送ローラと前記分離ローラとのニップ部に供給されるシートを1枚ずつ分離しながら搬送するシート分離搬送装置であって、前記ニップ部に供給されるシートを、前記分離ローラの周面よりも先に前記搬送ローラの周面に接するように案内する案内部を有する案内部材を備え、前記案内部材を、前記案内部が前記分離ローラに近接する案内位置と、前記案内部が前記分離ローラから離間する退避位置との間で変位可能に設けたことを特徴とするシート分離搬送装置が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、シートを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対向して設けられ、その軸方向に着脱可能な分離ローラとを備えると共に、前記分離ローラがシートを戻す方向に回転することにより、前記搬送ローラと前記分離ローラとのニップ部に供給されるシートを1枚ずつ分離しながら搬送するシート分離搬送部と、前記シート分離搬送部から送り出されるシートに所定の処理を施すシート処理部とを備え、前記シート分離搬送部は、前記ニップ部に供給されるシートを、前記分離ローラの周面よりも先に前記搬送ローラの周面に接するように案内する案内部を有する案内部材を備え、前記案内部材は、前記案内部が前記分離ローラに近接する案内位置と、前記案内部が前記分離ローラから離間する退避位置との間で変位可能に設けられていることを特徴とするシート処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分離ローラの取り外し作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】チェックスキャナの斜視図。
【図2】分離搬送部の要部拡大図。
【図3】カバー部材を取り外した状態での分離搬送部の要部拡大図。
【図4】分離搬送部の要部斜視図。
【図5】搬送ローラ及び分離ローラの縦断面図。
【図6】搬送ローラ及び分離ローラを取り外した状態を示す図。
【図7】分離搬送部の動作説明図。
【図8】分離搬送部の他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
図1は本発明の適用例に係るチェックスキャナAの斜視図である。チェックスキャナAは、小切手等のシートCの表裏の画像読取等を行う装置である。チェックスキャナAは、本発明の一実施形態に係るシート分離搬送装置としての分離搬送部10を備える。分離搬送部10は、シートCの束を立てた状態で載置するシート載置部11を備え、シートCを立てた状態でスリット12を通して処理部20に一枚ずつ搬送する。なお、シートの搬送経路内には、1つ又は複数のレジストセンサ(図示しない)が設けられている。レジストセンサは、シートへの各種処理タイミングを図るために、シートの到達及び通過を検知している。
【0012】
処理部20にはシートCの磁気情報を読み取る磁気センサ、及び、シートCの片面の画像の読み取りを行う撮像センサが設けられる。ここでの処理部20では、まず、分離直後のシートCに含まれる磁気情報を磁気センサによって読み取り、例えば、磁気インク文字認識(MICR:Magnetic ink character recognition)を行う。そして、シートCの磁気情報を読み取った後は、シートCの磁気インク文字付与面の画像を読み取るようにする。もちろん、磁気インク文字の読み取り前に、シートCの磁気インク文字面の画像を読み取るようにしてもよい。処理部20を通過したシートCは、立てた状態で湾曲搬送部30により処理部40へ搬送される。同図の矢印はシートCの搬送方向を示している。
【0013】
処理部40はシートCへの印刷を行う印刷ヘッドやシートCの片面の画像の読み取りを行う撮像センサが設けられる。ここでの処理部40では、まず、搬送方向上流側の処理部20での読み取り結果(磁気インク文字認識の判定結果等)に基づいて、所定の印刷処理が行われる。また、画像の読み取り処理は、シートCの印刷処理面面の画像を読み取るようにする。処理部40を通過したシートCは排出部50に排出されて一単位の処理が終了する。
【0014】
カバー部材60は、着脱自在に装置本体に取り付けられており、装置本体の一部の機構を覆う。カバー部材60は、カバー部61を有する。カバー部61は後述する分離ローラ14周辺の上方を覆う。カバー部材70は後述する搬送ローラ13周辺の上方を覆う。
【0015】
図2は分離搬送部10の要部拡大図、図3はカバー部材60、70を取り外した状態での分離搬送部10の要部拡大図である。図2及び図3に示すように、スリット12の直前には、互いに対向して配置された搬送ローラ13と分離ローラと案内部材15とが設けられている。分離搬送部10はシート載置部11の側方に位置する不図示の給紙ローラを備え、この給紙ローラによりシート載置部11に載置されたシートを搬送ローラ13と分離ローラ14とのニップ部Nに送り出す。搬送ローラ13と分離ローラ14とはシートを1枚ずつスリット12に送り出すことになる。
【0016】
図4は分離搬送部10の要部斜視図であり、搬送ローラ13、分離ローラ14及び案内部材15の斜視図である。図5は搬送ローラ13及び分離ローラ14の縦断面図である。図4及び図5に示すように、搬送ローラ13及び分離ローラ14は、それぞれ、装置本体に設けられた、互いに軸方向が平行な駆動軸16、17により回転駆動される。駆動軸16、17は装置本体内部に設けた不図示の駆動源(モータ等)により回転駆動される。
【0017】
本実施形態の場合、シートCを立てた状態で搬送するため、駆動軸16、17はその軸方向が上下方向(鉛直方向)であり、この結果、搬送ローラ13と分離ローラ14もそれらの軸方向が上下方向となっている。しかし、シートCを横に寝かした状態で搬送する場合は、これらの軸方向は左右方向(水平方向)となる。
【0018】
搬送ローラ13、分離ローラ14は、それぞれ、それらの軸心線上に駆動軸16、17が挿通される軸孔13a、14aを備える。空転防止のため、駆動軸16、17の周面の一部はその軸方向に沿って面取りがなされており、軸孔13a、14aも駆動軸16、17の断面形状に応じた断面形状を有している。
【0019】
搬送ローラ13、分離ローラ14は、それぞれ、小径部131、141と、大径部132、142と、を有している。図5に示すように、搬送ローラ13の大径部132と、分離ローラ14の大径部142とは、軸方向に互い違いになるように配設されている。大径部132、142の周面はシートCを挟むニップ部Nを構成し、シートCを分離搬送する。また、搬送ローラ13(大径部132)と、分離ローラ14(大径部142)とは、ニップ部Nにおいて、軸方向に各周面が略同一面上となっているか、あるいは、両者がわずかにオーバーラップ、すなわち、噛み合うように配置されている。さらに、搬送ローラ13の大径部132の周面の摩擦係数は、分離ローラ14の大径部142の周面の摩擦係数よりも大きく設定されている。
【0020】
搬送ローラ13、分離ローラ14は、それぞれ、軸方向の上側端部にユーザが把持可能な把持部133、143を有する。本実施形態の場合、把持部133、143は、搬送ローラ13、分離ローラ14と同心の円筒形状をなしている。図3に示すように、搬送ローラ13、分離ローラ14の上部空間は、手前側では広いが奥側(スリット12側)では狭い。本実施形態では、把持部133、143を円筒形状としたことで、搬送ローラ13、分離ローラ14の回転停止位置に関わらず、常に手前側にユーザが把持可能な部分が存在することになり、搬送ローラ13、分離ローラ14の着脱作業性を向上できる。なお、把持部133、143には、内側に突起した突起部133a、143aが形成されている。
【0021】
搬送ローラ13、分離ローラ14は、それぞれ、把持部133、143の内部空間にレバー部134、144を備える。レバー部134、144はそれらの下端部が搬送ローラ13、分離ローラ14の各本体部分に一体成形されており、この下端部を中心として弾性的に傾倒可能になっている。駆動軸16、17の上端部には、溝16a、17aが周設されており、レバー部134、144は溝16a、17aに入り込む係合部134a、144aを有している。
【0022】
溝16a、17aと係合部134a、144aとの係合により、駆動軸16、17に対する搬送ローラ13、分離ローラ14の軸方向の移動が規制され、駆動軸16、17に対して搬送ローラ13、分離ローラ14が取り付けられた状態となる。搬送ローラ13、分離ローラ14を、駆動軸16、17を取り外す場合は、レバー部134、144を傾倒して溝16a、17aと係合部134a、144aとの係合を解除する。こうして本実施形態では、搬送ローラ13、分離ローラ14がそれぞれ、その軸方向に着脱可能な構成としている。図6は搬送ローラ13及び分離ローラ14を取り外した状態を示す。
【0023】
なお、本実施形態では装置本体側が駆動軸16、17を有する構成としたが、搬送ローラ13、分離ローラ14側が軸を有し、装置本体側はこの軸が挿入されると共に回転駆動される駆動孔を有する構成としてもよい。
【0024】
図4及び図5に示すように、案内部材15は、搬送ローラ13のローラ表面(凹凸)形状に対応して櫛歯形状に設けられている。具体的には、案内部材15は、筒部151と、案内部保持部152と、案内部153と、ストッパ部154と、を備える。筒部151には、装置本体に設けられた、駆動軸16、17と平行な軸18が挿通し、案内部材15はこの軸18回りに回動可能になっている。案内部153は案内部保持部152を介して筒部151に接続されている。
【0025】
また、案内部153は、本実施形態では、分離ローラ14の軸方向に複数並列されている。また、各案内部153は、分離ローラ14の上流側に張り出して、ニップ部Nに供給されるシートCを、分離ローラ14の大径部142の周面よりも先に、搬送ローラ13の大径部132の周面に接するように案内する。本実施形態の場合、案内部153は、分離ローラ14の小径部141の位置に設けられた上側の2つの案内部153と、最も下側の大径部142よりも下側に位置する1つの案内部153と、を含む。
【0026】
各案内部153は薄板状のプラスチック等の可撓性を有する材料から構成されており、搬送ローラ13や分離ローラ14及びシートCを傷付けないようにしている。上側の2つの案内部153の先端は、搬送ローラ13の大径部132の周面に接しており、ニップ部Nに供給されるシートCを、分離ローラ14の大径部142の周面よりも先に、搬送ローラ13の大径部132の周面に確実に案内するようにしている。案内部153が可撓性を有することで、案内部153の先端を常時搬送ローラ13の大径部132の周面に接した状態とすることができる。なお、案内部153は、搬送ローラの大径部132に接触していなくてもよい。
【0027】
本実施形態では、上述したシートの分離搬送方式を採用することにより、搬送時にシートCを搬送ローラ13及び分離ローラ14の間での押圧力を一定とすることができるので、シートCを1枚ずつ分離しながら一定速度でその下流側に良好に搬送することができる。これにより、例えば、本実施形態のようなチェックスキャナAにおいては、MICR等において速度変動時に文字認識又は文字判定が難しい文字(例えば、E−13Bフォントの「2」と「5」等)が含まれていても、文字認識又は文字判定を良好に行うことができる。
【0028】
ここで、各案内部153は、分離ローラ14とは非接触状態で配置されるが、例えば、本実施形態では、分離ローラ14の小径部141に対向する部分で、且つ小径部141と大径部142との外径差で形成された段差部(凹部)に入り込んでいる。つまり、この状態では、案内部材15を分離ローラ14の軸方向に向かって取り外そうとすると、大径部142の端部が障壁となって取り外せない。逆に無理して分離ローラ14を取り外そうとすると、案内部材15等の損傷原因となる。本実施形態では、詳細は後述するが、案内部材15を分離ローラ14から離れる方向に移動させないと分離ローラ14が取り外せない構造としている。
【0029】
ストッパ部154は、分離ローラ14の軸方向両端部のうち、離脱方向先端側である上側の端部上に位置している。ストッパ部154は、チェックスキャナAの動作中、分離ローラ14の離脱方向への移動を規制し、係合部144aと溝17aとの係合が不完全でチェックスキャナAの動作中に係合解除されても、分離ローラ14が駆動軸17から抜けることを防止する。また、ストッパ部154は、ユーザが案内部材15を回動操作する場合の把持部も兼ねている。
【0030】
次に、図7を参照して分離搬送部10による分離搬送動作及び搬送ローラ13、分離ローラ14の取り外し作業について説明する。まず、分離搬送動作について説明する。図7(a)はチェックスキャナAの動作中の分離搬送部10の要部の平面図である。
【0031】
搬送ローラ13と、分離ローラ14とはそれぞれ、駆動軸16、17によって回転駆動されている。搬送ローラ13はシートCを送り出す方向に、分離ローラ14はシートCを戻す方向に回転しており、本実施形態の場合、いずれも時計回りに回転している。
【0032】
同図に示すように、シートCがニップ部Nに1枚搬送されてきた場合、搬送ローラ13の大径部132周面の方が分離ローラ14の大径部142周面よりも摩擦係数が高いために、シートCは搬送ローラ13によって送り出し方向に搬送される。
【0033】
一方、シートCがニップ部Nに重送されてきた場合は、搬送ローラ13側のシートCはシートC間の摩擦力よりも搬送ローラ13とシートCとの間の摩擦力が勝ることで搬送ローラ13によって送り出し方向に搬送される。分離ローラ14側のシートCはシートC間の摩擦力よりも分離ローラ14とシートCとの間の摩擦力が勝ることで分離ローラ14によって戻り方向に搬送される。こうして、シートCが一枚ずつ分離搬送されることになる。これにより、シートの分離搬送を良好に行うことができ、分離直後に配置される処理部20、特に磁気センサによるシートCの磁気情報認識(例えば、磁気インク文字認識等)を正確に行うことができる。
【0034】
案内部材15は、案内部153が分離ローラ14に近接した案内位置に位置している。案内部153の先端は分離ローラ14の大径部142間を通過して搬送ローラ13の大径部132の周面に接している。このため、シートCが分離ローラ14よりも先に搬送ローラ13に接するようにシートCを案内できる。ストッパ部154は分離ローラ14の上側端部上に位置している。
【0035】
次に、搬送ローラ13、分離ローラ14の取り外し作業について説明する。ユーザは、カバー部材60、70を取り外した後、搬送ローラ13、分離ローラ14を取り外すことができる。図7(a)に示したように案内部材15が案内位置にある場合、案内部153やストッパ部154が分離ローラ14を取り外す際に邪魔になる。
【0036】
そこで、ユーザは図7(b)に示すように案内部材15を案内部153やストッパ部154が分離ローラ15から離間した退避位置に回動させる。なお、案内部材15には、退避位置において装置本体に係合する係合部を設けることにより、案内部材15を退避位置に保持するようにしてもよい。そして、ユーザは把持部143を摘みながらレバー部144を操作して溝17aと係合部144aとの係合を解除し、分離ローラ14を引き上げて駆動軸17から取り外すことができる。案内部153やストッパ部154は分離ローラ14から離間しているので邪魔にならない。こうして本実施形態では分離ローラ14の取り外し作業を容易化することができる。なお、本実施形態では、案内部材15を、回動させることで案内位置と退避位置とで変位可能としたが並進移動であってもよい。
【0037】
分離ローラ15を駆動軸17に装着する場合は分離ローラ15を駆動軸17に装着して押し込めばレバー部144の弾性変位により溝17aと係合部144aとが係合して装着完了となる。その後、カバー部材60、70を装置本体に装着する。なお、搬送ローラ13の着脱作業も同様である。
【0038】
<第2実施形態>
ユーザは、分離ローラ15の装着作業後、案内部材15を案内位置に戻すことを忘れて退避位置のままカバー部材60を装置本体に装着する場合があり得る。そこで、カバー部材60の装着作業による付勢によって、案内部材15に係合して退避位置にある案内部材15を案内位置に変位させる係合部をカバー部材60に設けてもよい。加えて、カバー部材60を装置本体から外すと自動的に案内部材15が案内位置から退避位置に移動するようにしてもよい。
【0039】
図8は分離搬送部10の他の構成例を示す図である。図8(a)及び(b)はカバー部材60を取り外した状態であって、案内部材15が退避位置にある場合を示す。図8(a)は搬送ローラ13、分離ローラ14及び案内部材15をシートの流れ方向手前側から見た図であり、図8(b)は平面図である。
【0040】
本実施形態の場合、案内部材15を常時退避位置に付勢する弾性部材80を備える。弾性部材80は本実施形態の場合、例えば、コイルスプリングであり、その一端は案内部材15に固定され、その他端は装置本体に固定されている。
【0041】
カバー部材60のカバー部61の下面には、板状の係合部611が突出している。係合部611の幅は下側から上側に向かって徐々に長くなっている。破線で示すように、カバー部材60を装置本体の正規位置に装着する初期の段階では、係合部611の先端は図8(b)に示すようにストッパ部154の側方に位置している。そして、カバー部材60を装着するにしたがって、係合部611がストッパ部154に当接し、弾性部材80の付勢に抗して案内部材15に回動力を付勢することになる。
【0042】
図8(c)はカバー部材60の装着完了時の係合部611と案内部材15との関係を示している。係合部611の幅広部分がストッパ部154に当接し、案内部材15が案内位置に変位している。このように本実施形態ではカバー部材60の着脱を利用して、案内部材15を自動的に案内位置と退避位置とに適切に位置させることができる。
【0043】
<他の実施形態>
以上本発明を実施形態1及び2に基づいて説明したが、本発明は上述した各実施形態1及び2に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1及び2では、案内部材を退避させた状態で分離ローラを取り外す構造例を説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、分離性能を高める等のために櫛歯形状の搬送ローラと櫛歯形状の分離ローラとを互いにオーバーラップさせて噛み合うように配置している場合には、分離ローラから案内部材を退避させる構造とすると共に、搬送ローラ又は分離ローラの少なくとも何れか一方を他方のローラから退避させる移動機構(例えば、スライド機構、あるいはローラ押圧力調整手段の押圧解除機構等)を別途設けることで、搬送ローラ又は分離ローラを取り外し易くすることができる。ローラ同士が噛み合っていると、一方のローラをその軸方向に取り外し難いためである。
【0044】
また、上述した実施形態1では、チェックスキャナAの分離搬送部に適用した場合について説明したが、本発明は勿論これに限定されず、例えば、シートの画像読取や画像形成等の各種処理を施すシート処理装置や、このようなシート処理装置に適用可能なシート分離搬送装置を対象とすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送ローラと、
該搬送ローラに対向して設けられ、その軸方向に着脱可能な分離ローラと、を備え、
前記分離ローラがシートを戻す方向に回転することにより、前記搬送ローラと前記分離ローラとのニップ部に供給されるシートを1枚ずつ分離しながら搬送するシート分離搬送装置であって、
前記ニップ部に供給されるシートを、前記分離ローラの周面よりも先に前記搬送ローラの周面に接するように案内する案内部を有する案内部材を備え、
前記案内部材を、
前記案内部が前記分離ローラに近接する案内位置と、前記案内部が前記分離ローラから離間する退避位置との間で変位可能に設けたことを特徴とするシート分離搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ローラと前記分離ローラとは、それらの軸方向が鉛直方向であり、
前記ニップ部に供給するシートの束を立てた状態で載置するシート載置部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項3】
前記分離ローラを覆うように装着されるカバー部材を備え、
前記カバー部材は、その装着作業による付勢によって、前記案内部材に係合して前記退避位置にある前記案内部材を前記案内位置に変位させる係合部を有することを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項4】
前記分離ローラは、その一方の端部にユーザが把持可能な把持部を有し、
前記把持部は、前記分離ローラと同心の円筒形状をなしていることを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項5】
前記案内部材は、前記分離ローラの軸方向と平行な軸回りに回動可能に設けられたことにより、前記案内位置と前記退避位置との間で変位可能であることを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項6】
前記分離ローラは大径部と小径部とを有し、
前記案内部は、前記小径部に位置していることを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項7】
前記案内部は、可撓性を有し、前記案内部の先端によりシートを前記搬送ローラの周面に接するように案内していることを特徴とする請求項6に記載のシート分離搬送装置。
【請求項8】
前記案内部材は、
前記案内位置にある場合に、前記分離ローラの軸方向両端部のうち、離脱方向先端側の端部上に位置し、前記分離ローラの離脱方向への移動を規制するストッパ部を有することを特徴とする請求項1に記載のシート分離搬送装置。
【請求項9】
シートを搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラに対向して設けられ、その軸方向に着脱可能な分離ローラとを備えると共に、前記分離ローラがシートを戻す方向に回転することにより、前記搬送ローラと前記分離ローラとのニップ部に供給されるシートを1枚ずつ分離しながら搬送するシート分離搬送部と、
前記シート分離搬送部から送り出されるシートに所定の処理を施すシート処理部とを備え、
前記シート分離搬送部は、前記ニップ部に供給されるシートを、前記分離ローラの周面よりも先に前記搬送ローラの周面に接するように案内する案内部を有する案内部材を備え、
前記案内部材は、前記案内部が前記分離ローラに近接する案内位置と、前記案内部が前記分離ローラから離間する退避位置との間で変位可能に設けられていることを特徴とするシート処理装置。
【請求項10】
前記シート処理部は、前記シート分離搬送部の直後に配置されると共にシートに含まれる磁気情報を読み取る磁気センサを有することを特徴とする請求項9記載のシート処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−93695(P2011−93695A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251280(P2009−251280)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】