説明

シート挟持具

【課題】製造コストを抑制しつつ、多くのシートを安定して保持すること。
【解決手段】基板1、挟持板2、及び、プレート板3からシート挟持具を構成する。挟持板2の裏面側に嵌め込んだ金属板7は、基板1の裏面側に嵌め込んだ磁石4よりも小さく、この金属板7の中心は、磁石4の中心からずれた位置に配置されている。この磁石4と金属板7の中心を意図的にずらしておくことで、大きな磁石4を用いることなく高い吸着力を得ることができる。このため、製造コストを抑制しつつ、金属板7の小型化に伴う軽量化の分だけ、より多くのシートを安定して保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のシートを個別に保持する磁石式のシート挟持具に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性体からなる冷蔵庫の前面ドアや掲示板等の固定部に、磁石を用いてメモ等の紙片等(シート)を挟んで保持しておくことがよくある。この場合、このシートを種類別(買い物メモ、伝言等)に一括して保持しておくことができれば、異なる種類のシートを混在することなく、スムーズに各シートを取り出して確認することができるため利便性が高い。
【0003】
このシートを種類別に一括保持し得るシート挟持具として、例えば特許文献1に示すものがある。このシート挟持具は、基板に挟持板を回転軸でもって起伏自在に取り付けたものであって、前記基板の裏面に磁石を設け、その磁力で基板を前記固定部に吸着させる。さらに、挟持板の裏面に磁性体からなる金属板を設け、この金属板の前記磁石への吸着力によって、挟持板を伏せた状態(閉じた状態)となるようにしている。このシート挟持具を用いると、前記基板と固定部との間、前記基板と挟持板との間に異なる種類のシートをそれぞれ挟み込んで保持することができる。
【0004】
前記磁石は固定部に直接吸着するのに対して、前記金属板は、例えば樹脂材料からなる基板を介して前記磁石に吸着する。このため、基板と固定部との間の吸着力よりも、基板と挟持板との間の吸着力の方が小さくなって、金属板と磁石との間の吸着力に抗して基板から挟持具を引き起こす際に、その引き起こし力によって固定部から基板が外れる(シート挟持具が落下する)のを極力防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−50476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このシート挟持具は、多くのシートを保持しても、このシートの重みで基板が掲示板等の固定部からずれることなく、安定してシートを保持することができ、しかも、できるだけ低コストで製造できることが要求される。
【0007】
第一の方策として、磁石の磁力をより高いものに変更することが考えられる。このようにすれば、吸着力の向上によって安定してシートを保持することができる。その反面、磁石の変更(高性能化)は製造コストの上昇をもたらすため、現実的には、この第一の方策を採用するのは難しい。
【0008】
第二の方策として、シート挟持具の各構成部材の軽量化が考えられる。軽量化によって、磁石の磁力を高めなくても、軽量化した分だけ、より多くのシートを安定して保持し得るためである。この軽量化として、各構成部材に使用する素材や形状の見直し及び変更を行い得る。その素材として、磁石の磁力をあまり妨げず、しかも比較的低コストであるという理由から、一般的に樹脂材料が用いられている。この樹脂材料は比較的比重が小さく、形状の変更に伴う軽量化のメリットはあまりない。これに対し、挟持板に設ける金属板は、樹脂材料と比較して比重が大きく、シート保持具の軽量化のためには、この金属板を小型化するのが有効である。しかしながら、この金属板を小型化すると、金属板と磁石との吸着力が低下して、基板と挟持具との間に挟み込んだシートをしっかりと保持できなくなる問題が生じ得る。
【0009】
そこで、この発明は、製造コストを抑制しつつ、多くのシートを安定して保持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明では、裏面に壁等の固定部に吸着する磁石を設けた基板と、裏面に前記磁石よりも小さい磁性体を設け、前記基板に対して起伏自在とした挟持板とを備え、この挟持板を伏せた状態とした際に、前記磁性体の中心が、前記磁石の中心からずれた位置で吸着するように前記磁性体及び前記磁石を配置してシート挟持具を構成した。
【0011】
磁性体に磁石を吸着させて物品を固定・保持するタイプの固定部材(例えば、メモホルダや、バッグの止め具)においては、磁石よりも磁性体の大きさの方を大きく、あるいは、磁石と磁性体の大きさを同じとするのが通常である。できるだけ磁性体を大きくしておいて、磁石との間の十分な吸着力を得ようとする設計思想があるからである。この場合、磁性体の磁石への吸着部全体が均一に磁化され、磁石よりも磁性体の大きさの方が大きい場合は、磁性体の任意の位置において、磁石と磁性体の大きさが同じ場合は、この磁石と磁性体の中心が一致するように両者が吸着する。
【0012】
これに対し、本願発明のように、磁性体の軽量化を図るために、磁石よりも磁性体の方を小さくした場合は、両者の吸着挙動が上記と若干異なる。すなわち、磁石の表面上のどの位置に磁性体を配置するかによって、その磁性体中の磁化の強さの面内分布が異なるのである。例えば、円板形の磁石に、この磁石の大きさよりも少し小さい円板形の磁性体を吸着させる場合、両者の中心が完全に一致している場合は、この磁性体中の磁化の面内分布は中心対称となって、両者は準安定的に同軸で吸着し得る。しかしながら、実際に中心が完全に一致していることはほとんどなく、僅かながらずれていることが通常である。このように両者の中心がずれた場合、磁性体中の磁化の面内分布は中心対称でなくなり、磁石の磁力の分布と、磁性体中に生じた磁化の面内分布の兼ね合いで、安定位置が定まる。そして、その安定位置が最大吸着力の位置となる。
【0013】
この最大吸着力となる位置は、磁石の中心から外周縁までのいずれかの位置に存在するが、その位置は磁石と磁性体の大きさや形状によって変わる。このため、設計段階において、実際に使用する磁石と磁性体を用いて、最大吸着力となる位置を、予備実験を行って調べておく必要がある。
【0014】
本願発明は、上記のように、磁石よりも磁性体の大きさが小さい場合に、最大吸着力となる位置が磁石の中心からずれる、という現象に着目して、基板に設けた磁石と、挟持板に設けた磁性体の中心を意図的にずらして配置し、その最大吸着力の位置で吸着させたことに特徴を有するものである。
【0015】
前記構成においては、前記挟持板の表面側にプレート板を設け、前記挟持板の表面に凹曲面を、前記プレート板に押さえ部をそれぞれ形成し、前記挟持板と前記プレート板との間にシートを挿し込んだ際に、このシートが前記押さえ部によって前記凹曲面側に押さえ付けられるようにするのがより好ましい。
【0016】
このようにプレート板を設けることによって、さらに別の種類のシートを保持することができるため、このシート挟持具の利便性が向上する。このプレート板を用いることに起因する重量増加は、上述した磁性体の小型化による軽量化によって相殺できるため、多くのシートを安定して保持するという本願発明の課題に何ら影響を及ぼさない。
【0017】
前記各構成においては、前記挟持板に設けた磁性体を磁石とするのがより好ましい。
このようにすることで、挟持板を基板に一層強く吸着させることができ、この挟持板と基板との間に挟み込んで保持するシートが脱落するのを極力防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明では、基板に対して挟持板を伏せた状態とした際に、この基板に設けた磁石の中心と、挟持板に設けた磁性体の中心がずれた位置に配置されるように構成した。このずれた位置は、磁石と磁性体の最大吸着力が得られる位置であって、軽量化の目的で挟持板に設けた磁性体を小型化した場合でも、シートの保持のために十分な吸着力を確保することができる。また、軽量化することにより前記磁石を磁力の高いものに交換する必要が無く、製造コスト抑制の点でもメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係るシート挟持具を示す斜視図
【図2】この発明に係るシート挟持具を示す分解斜視図
【図3】この発明に係るシート挟持具を示す断面図であって、(a)は挟持板を起こした状態、(b)は挟持板を伏せた状態
【図4】この発明に係るシート挟持具の正面図
【図5】図4中のV−V線に沿う断面図
【図6】図4中のVI−VI線に沿う断面図
【図7】図4中のVII−VII線に沿う断面図
【図8】この発明に係るシート挟持具の使用態様を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係るシート挟持具の一実施形態を図1〜8に示して説明する。このシート挟持具は、図1及び2に示すように、基板1、挟持板2、及び、プレート板3から構成される。
【0021】
基板1の裏面側には凹部が形成され、この凹部に円板形の磁石4(直径15mm)が嵌め込まれている。この磁石4を磁性体からなる壁等の固定部Wに吸着させることにより、固定部Wと基板1との間に、メモ等の紙片等(シートS)を挟み込んだ状態でしっかりと保持することができる。この磁石4の表面と凹部の外周縁とは、ほぼフラットな面を構成しているが、磁石4を前記外周縁よりも突出させてもよい。このようにすれば、磁石4が固定部Wに一層接近あるいは当接して、この固定部Wへの高い吸着力を発揮し得るからである。
【0022】
基板1の上端部には軸受5が形成されている。この軸受5に、挟持板2の上端に形成した突起状の回転軸6が挿し込まれる。これにより、図3(a)及び(b)に示すように、基板1に対して挟持板2が起伏自在となる。この挟持板2の裏面側には凹部が形成され、この凹部に、磁石4よりも小さい円板形の鉄製の金属板7(磁性体)(直径10mm)が嵌め込まれている。この金属板7が磁石4に吸着することにより、基板1と挟持板2との間にシートSを挟み込んだ状態でしっかりと保持することができる。
【0023】
この金属板7の大きさは、シートSの保持を行い得る限りにおいて適宜変更することができるが、できるだけ小さく(少なくとも磁石4より小さく)、かつ、薄くするのが好ましい。そうすれば、シート挟持具の軽量化を図ることができ、シートSを保持した際に、このシートSの重みでシート挟持具が固定部Wからずれたり、外れたりするのを極力防止することができるからである。
【0024】
この磁石4と金属板7は、図4に示すように、金属板7の中心が、磁石4の外周部位置となる位置関係で配置されている。磁石4と金属板7とをこの位置関係で配置することによって最大吸着力が得られるからである。この最大吸着力となる位置関係は、磁石4及び金属板7の大きさや形状によって変化する。この磁石4と金属板7の大きさがほぼ同じ場合は、両者の中心がほぼ一致している場合に最大吸着力となるが、本構成のように、金属板7の軽量化を目的として、その大きさを磁石4よりも小さくした場合、両者の中心をずらした場合に最大吸着力を得ることができる。この最大吸着力となる磁石4と金属板7の位置関係については、このシート挟持具に実際に用いる大きさ及び形状の磁石4及び金属板7を用い、予備実験を行って調べておく必要がある。
【0025】
図5に示すように、この挟持板2の表面は、左右方向に弧を描く凹曲面8となっており、その下端部の両端には係止孔9が形成されている。この係止孔9に、プレート板3の裏面側の下端に形成した係止突部10を嵌め込むことによって、このプレート板3を挟持板2に固定する。このプレート板3の裏面側には、挟持板2側に向かって起立する複数の押さえ部11が、互いに平行に形成されている。この押さえ部11と挟持板2との間には若干の隙間が設けられており、図6及び7に示すように、シートSがこの隙間に挿し込まれる。そして、このシートSは、押さえ部11によって挟持板2の凹曲面8側に押さえ付けられるようにして保持される。この押さえ部11の上端には、挿し込み方向の奥側ほど挟持板2側に近付くように傾斜するテーパ12が形成されており、このテーパ12によって、シートSが挿し込み方向にスムーズに案内される。
【0026】
このプレート板3は、透明素材で構成されている。透明素材とすることで、挟持板2とプレート板3との間の隙間に挿し込んだシートSに記載した文字等を容易に視認できる。このため、記載内容を確認するために、このシートSをいちいち引き抜く必要が無く利便性が高い。もちろん、このプレート板3を透明素材とすることは必須ではなく、シート挟持具のデザイン性等を考慮して、不透明着色素材を適宜適用してもよい。また、プレート板3のみならず、基板1及び挟持板2を透明素材で構成することもできる。
【0027】
上記のように押さえ部11を形成する代わりに、プレート板3自体を挟持板2の凹曲面8に沿う形状の凹曲面で構成しても良い。この場合も、押さえ部11と同様に、シートSの押さえ付け作用を発揮し得るからである。
【0028】
このシート挟持具を用いることにより、図8に示すように、三種類のシートa、b、cを個別に保持することができる。シートaは、このシート挟持具を固定部Wに吸着させる際に、この固定部Wと基板1との間に挟み込むことで保持される。シートbは、シート挟持具が固定部Wに吸着された状態のまま、金属板7と磁石4の吸着力に抗して挟持板2を起こし、この挟持板2と基板1との間に挟み込むことで保持される。シートcは、挟持板2とプレート板3の間の隙間に挿し込むことで保持される。
【0029】
このシートa、b、cの保持及び取り外しに際して、他のシートa、b、cを一旦取り外す必要が無い。しかも、金属板7を小型化してシート挟持具自体の軽量化を図るとともに、金属板7の中心と磁石4の中心を所定量だけずらして最大吸着力を得るようにしたことにより、複数のシートa、b、cを保持した場合でも、このシートa、b、cの重さでシート挟持具が固定部からずれたり、外れたりする恐れが低い。このため、このシート挟持具の使用勝手を大幅に向上することができる。
【0030】
上記構成においては、挟持板2に金属板7を設けたが、この金属板7の代わりに磁石を用いることもできる。磁石を用いることにより、基板1と挟持板2との間のより高い吸着力を得ることができる。
【0031】
また、上記構成においては、磁石4の中心よりも下側にずらすように金属板7を配置したが(図4を参照)、基板1と挟持板2との間の十分な吸着力が得られる限りにおいて、磁石4の中心よりも上側にずらすように金属板7を配置することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 基板
2 挟持板
3 プレート板
4 磁石
5 軸受
6 回転軸
7 金属板(磁性体)
8 凹曲面
9 係止孔
10 係止突部
11 押さえ部
12 テーパ
S、a、b、c シート
W 固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に壁等の固定部(W)に吸着する磁石(4)を設けた基板(1)と、裏面に前記磁石(4)よりも小さい磁性体(7)を設け、前記基板(1)に対して起伏自在とした挟持板(2)とを備え、この挟持板(2)を伏せた状態とした際に、前記磁性体(7)の中心が、前記磁石(4)の中心からずれた位置で吸着するように前記磁性体(7)及び前記磁石(4)を配置したシート挟持具。
【請求項2】
前記挟持板(2)の表面側にプレート板(3)を設け、前記挟持板(2)の表面に凹曲面(8)を、前記プレート板(3)に押さえ部(11)をそれぞれ形成し、前記挟持板(2)と前記プレート板(3)との間にシート(S)を挿し込んだ際に、このシート(S)が前記押さえ部(11)によって前記凹曲面(8)側に押さえ付けられるようにした請求項1に記載のシート挟持具。
【請求項3】
前記挟持板(2)に設けた磁性体(7)を磁石とした請求項1又は2に記載のシート挟持具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−14060(P2013−14060A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148021(P2011−148021)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(392006639)株式会社アイナック (7)
【Fターム(参考)】