説明

シート搬送装置

【課題】一枚ずつに分離されて搬送されるシートの搬送抵抗を安定して小さくできるシート搬送装置を提供する。
【解決手段】分離ローラ12は、第1載置部81に載置されたシート99に対して上方から当接可能に設けられ、第1軸心X1周りに回転して、シート99を搬送方向D1に送り出す。分離部材20は、分離ローラ12とシート99を挟む第1ニップ部N1を形成するように設けられ、分離ローラ12によって送り出されるシート99を一枚ずつに分離する。ホルダ21は、分離部材20を保持する。支持部30L、30Rは、第1軸心X1と平行、かつ分離部材20に対して搬送方向D1の下流側に位置する第2軸心X2周りにホルダ21を揺動可能に支持する。付勢部材40は、分離部材20を分離ローラ12に押し付けるようにホルダ21を付勢する。ホルダ21には、第2軸心X2周りに回転し、搬送されるシート99に当接可能とされたコロ50が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のシート搬送装置の例が開示されている。このシート搬送装置は、装置本体と、装置本体に設けられ、シートが載置される載置部と、装置本体内において載置部に載置されたシートに対して上方から当接可能に設けられた分離ローラとを備える。分離ローラは、搬送されるシートの幅方向に延びる分離ローラ軸心周りに回転して、シートを搬送方向に送り出すようになっている。特許文献1の図2等において、載置部は符号7として図示され、分離ローラは符号62として図示されている。
【0003】
また、このシート搬送装置は、分離ローラとシートを挟むニップ部を形成するように設けられた分離パッドと、装置本体内に設けられ、分離パッドを保持するホルダと、装置本体内に設けられ、ホルダを揺動可能に支持する支持部と、装置本体内に設けられ、分離パッドを分離ローラに押し付けるようにホルダを付勢する付勢部材とを備える。特許文献1の図6に図示されているように、支持部は、分離ローラ軸心と平行、かつ分離パッドに対して搬送方向の上流側に位置するホルダ軸心周りにホルダを揺動可能に支持している。
【0004】
このシート搬送装置では、分離パッドが分離ローラに押し付けられた状態で、分離ローラがシートを搬送方向に送り出すことにより、ニップ部においてシートを一枚ずつに分離するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−176320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のシート搬送装置では、搬送方向における分離ローラ及び分離パッドより下流側において、分離されたシートが搬送経路を構成する搬送ガイド等に擦れることにより、シートに搬送抵抗が生じ易いという問題がある。特に、搬送ガイドが屈曲又は湾曲している場合、シートが搬送ガイドに強く当接しながら擦れるため、大きな搬送抵抗が生じ易い。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、一枚ずつに分離されて搬送されるシートの搬送抵抗を安定して小さくできるシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシート搬送装置は、装置本体と、
前記装置本体に設けられ、シートが載置される第1載置部と、
前記装置本体内において前記第1載置部に載置された前記シートに対して上方から当接可能に設けられ、搬送される前記シートの幅方向に延びる第1軸心周りに回転して、前記シートを搬送方向に送り出す分離ローラと、
前記装置本体内において前記分離ローラと前記シートを挟む第1ニップ部を形成するように設けられ、前記分離ローラによって送り出される前記シートを一枚ずつに分離する分離部材と、
前記装置本体内に設けられ、前記分離部材を保持するホルダと、
前記装置本体内に設けられ、前記第1軸心と平行、かつ前記分離部材に対して前記搬送方向の下流側に位置する第2軸心周りに前記ホルダを揺動可能に支持する支持部と、
前記装置本体内に設けられ、前記分離部材を前記分離ローラに押し付けるように前記ホルダを付勢する付勢部材とを備え、
前記ホルダには、前記第2軸心周りに回転し、搬送される前記シートに当接可能とされたコロが設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明のシート搬送装置では、ホルダに設けられたコロが分離部材に対して搬送方向の下流側に位置する第2軸心周りに回転し、搬送されるシートに当接できる。このため、搬送方向における分離ローラ及び分離部材より下流側において、搬送経路を構成する搬送ガイド等にシートが擦れ難くなり、シートの搬送抵抗を小さくできる。
【0010】
また、ホルダとコロとは、同じ第2軸心周りに揺動又は回転可能に支持されている。このため、ホルダ及び分離部材が揺動しても、搬送されるシートに対するコロの位置が変化しないので、シートの搬送が常に一定であり、コロとシートとの接触が安定する。
【0011】
したがって、本発明のシート搬送装置は、一枚ずつに分離されて搬送されるシートの搬送抵抗を安定して小さくできる。
【0012】
本発明のシート搬送装置は、搬送方向におけるコロより下流側に設けられ、一枚ずつに分離されたシートを搬送する搬送ローラ対を備える。そして、幅方向から見た場合、搬送ローラ対がシートを挟む第2ニップ部は、コロのシートに対する当接部と、第1ニップ部とを結ぶ線よりも下側に位置している。本発明は、このような位置関係にあるシート搬送装置に採用するときに、より適している。
【0013】
搬送ローラ対の第2ニップ部が、コロのシートに対する当接部と、第1ニップ部とを結ぶ線よりも下側である場合、搬送経路を構成する搬送ガイド等が当接部の近傍において屈曲又は湾曲し、シートも当接部の近傍において屈曲又は湾曲しながら搬送されることになる。この場合でも、コロがシートの屈曲又は湾曲する部位に当接して回転するので、シートが搬送ガイド等に擦れ難くなり、シートの搬送抵抗を確実に小さくできる。その結果、このシート搬送装置は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0014】
本発明のシート搬送装置において、分離ローラにより送り出されたシートの先端が第2ニップ部に到達した後、シートの重送を防止するために分離ローラに対する駆動力の伝達が遮断される。本発明は、このような構成であるシート搬送装置に採用するときに、より適している。
【0015】
搬送ローラ対がシートをニップして搬送するようになって分離ローラが従動回転に切り替えられた場合、シートは、分離ローラ及び分離部材と、搬送ローラ対との間で引っ張られた状態になる。この場合でも、コロが引っ張られた状態のシートに当接して回転するので、シートが搬送ガイド等に擦れ難くなり、シートの搬送抵抗を確実に小さくできる。その結果、このシート搬送装置は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0016】
本発明のシート搬送装置において、コロは、搬送方向から見て、分離部材と重なっていることが望ましい。この構成によれば、コロの幅方向のスペースを小さくでき、部品の小型化を実現できる。
【0017】
本発明のシート搬送装置は、装置本体内において搬送方向における第1載置部より下流側に設けられ、搬送されるシートに画像を形成する画像形成部と、装置本体内において、画像形成部の下方に設けられ、シートが載置される第2載置部とを備える。そして、第2シート載置部から搬送されるシートは、上方にUターンするUターン経路に沿って搬送された後、装置本体の一方の側面側から他方の側面側に向かって略水平に延びて画像形成部に至る略水平経路に沿って搬送される。また、第1シート載置部は、第1シート載置部から送り出されるシートがUターン経路に合流するように装置本体の一方の側面側に配置される。さらに、第1ニップ部は、略水平経路よりも下側に位置している。このような具体的構成である場合、第1載置部から第1ニップ部を介して画像形成部に至る搬送経路が屈曲又は湾曲し易いので、本発明の作用効果を確実に享受できる。
【0018】
上記の場合において、画像形成部の少なくとも一部は、略水平経路に沿って、装置本体の一方の側面側から着脱可能に設けられていることが望ましい。この構成によれば、画像形成部の少なくとも一部を装置本体の一方の側面側、すなわち、第1載置部が配置されている側面側から着脱できる。この場合において、第1ニップ部が略水平経路よりも下側に位置することで、分離ローラ等を装置本体内の下方にレイアウトし易くなるので、画像形成部の少なくとも一部を着脱する際に、分離ローラ等が邪魔になり難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のシート搬送装置の一例である実施例の画像形成装置の概略断面図である。
【図2】実施例の画像形成装置に係り、画像形成部の一部の着脱動作を説明する概略断面図である。
【図3】実施例の画像形成装置の要部拡大概略断面図である。
【図4】実施例の画像形成装置に係り、分離パッド、ホルダ及び支持部を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施例)
図1に示すように、本発明のシート搬送装置の具体的態様の一例である実施例1の画像形成装置1は、電子写真方式により、シート99に単色の画像を形成するモノクロレーザプリンタである。図1では、紙面右側を装置の前側と規定し、装置を前側から見た場合に左手に来る側である紙面手前側を左側と規定して、前後、左右及び上下の各方向を表示する。そして、図2以降の各図に示す各方向は、全て図1に示す各方向に対応させて表示する。以下、図1等に基づいて、画像形成装置1が備える各構成要素について説明する。
【0022】
<全体構成>
図1に示すように、画像形成装置1は、略箱状体であるハウジング2と、ハウジング2の内側に設けられた図示しないフレーム部材とを備えている。ハウジング2及びフレーム部材により、本発明の「装置本体」が構成されている。ハウジング2の上面には、排出トレイ2Aが下方に凹むように形成されている。ハウジング2の前面における上側には、第1開口2Bが形成され、ハウジング2の前面における下側には、第2開口2Cが形成されている。ハウジング2の前面は、本発明の「装置本体の一方の側面」の一例である。ハウジング2の後面は、本発明の「装置本体の他方の側面」の一例である。
【0023】
また、画像形成装置1は、マルチパーパストレイ(以下、「MPトレイ」と呼ぶ)81と、シートカセット82とを備える。MPトレイ81は、本発明の「第1載置部」の一例である。シートカセット82は、本発明の「第2載置部」の一例である。
【0024】
MPトレイ81は、略平板形状部材であり、図1に二点鎖線で示すように、上下方向に起立した状態で第1開口2Bを閉鎖している。この状態では、MPトレイ81は、ハウジング2の前面側の意匠面の一部を構成している。MPトレイ81の下端縁側は、ハウジング2の前面における中心部よりも、多少下側に位置し、かつ、ハウジング2に軸支されている。そして、MPトレイ81は、図1に実線で示すように、その上端側が下端縁側を中心として前方に向けて揺動することにより、ハウジング2から前方に向けて略水平に延びる状態に変化する。この状態では、MPトレイ81の上面に、例えば用紙やOHPシート等であるシート99が載置される。MPトレイ81上のシート99は、後述するMP給紙部10により、搬送方向D1に送り出されるようになっている。本実施例では、搬送されるシート99の幅方向は、左右方向である。
【0025】
シートカセット82は、ハウジング2内の下方に着脱可能に設けられている。シートカセット82は、上方が開放されて、その内部に複数枚のシート99を積層状態で収容する略箱状体である。シートカセット82は、ハウジング2の手前側から第2開口2Cを介して、略水平に挿入されることにより、ハウジング2に装着され、その逆の動作により、ハウジング2から取り外される。
【0026】
ハウジング2内には、シート99を搬送するMP経路P1、略水平経路P2、排出経路P3及びUターン経路P4が設けられている。
【0027】
MP経路P1は、MPトレイ81から、後方(装置本体の他方の側面の方向)に向かって上り傾斜しつつ延びている。MP経路P1は、上り傾斜した後に、略水平方向に向かって後方へ延びている。略水平経路P2は、MP経路P1に連続し、略水平にハウジング2の後面側まで延びている。排出経路P3は、略水平経路P2に連続し、上方にUターンして、排出トレイ2Aまで延びている。Uターン経路P4は、シートカセット82の前端部側から上方にUターンして、略水平経路P2に連続している。MP経路P1とUターン経路P4とは、略水平経路P2の直前で合流している。
【0028】
ハウジング2内には、MPトレイ81の下端縁側から後方に向かって延びるMP搬送ガイド3が設けられている。MP搬送ガイドの上面は、MP経路P1に対して下方から沿って、略水平経路P2の直前まで延びている。MP搬送ガイドの上面は、MPトレイ81から搬送方向D1に送り出されるシート99に対して下側から当接して、MP経路P1に沿って案内する下側搬送面3Aとされている。MP搬送ガイド3は、本実施例では、例えばPS−HI等である熱可塑性樹脂の射出成型品が採用されている。PS−HIは低コストであるが、摺動性及び耐摩耗性はあまり良くない。
【0029】
また、画像形成装置1は、MP給紙部10と、シートカセット給紙部19と、搬送ローラ対13A、13Bと、画像形成部5と、排出ローラ対14A、14Bとを備える。
【0030】
MP給紙部10は、ハウジング2内において、MP経路P1を挟んで下側搬送面3Aの上方に位置している。MP給紙部10は、MPトレイ81上のシート99を一枚ずつに分離し、MP経路P1に沿って、搬送方向D1の下流側である略水平経路P2まで搬送するものである。MP給紙部10の具体的構成については、後述する。
【0031】
シートカセット給紙部19は、ハウジング2内において、シートカセット82の前端部に対して上方、かつUターン経路P4に対して後方に位置している。シートカセット給紙部19は、シートカセット82内のシート99を一枚ずつに分離し、Uターン経路P4に沿って、略水平経路P2まで搬送するものである。シートカセット給紙部19は周知のものであるので、具体的構成についての説明は省略する。
【0032】
搬送ローラ対13A、13Bは、MP経路P1とUターン経路P4との合流点の後方に位置している。搬送ローラ対13A、13Bは、略水平経路P2を挟んで互いに対向して、第2ニップ部N2を形成している。下側の搬送ローラ13Aは、駆動ローラであり、上側の搬送ローラ13Bは、搬送ローラ13Aに押圧されて従動回転する従動ローラである。搬送ローラ対13A、13Bは、MP経路P1又はUターン経路P4を介して、略水平経路P2に搬送されるシート99をニップして、略水平経路P2の下流側に搬送するものである。
【0033】
画像形成部5は、略水平経路P2に対して上方に位置するプロセスカートリッジ6と、略水平経路P2に対して下方に位置する転写ローラ7と、プロセスカートリッジ6及び転写ローラ7に対して略水平経路P2の下流側に位置する定着器8とを有する。
【0034】
プロセスカートリッジ6は、感光ドラム6A、図示しないスキャナ部、現像ローラ、帯電器及びトナー収容部等により構成されている。感光ドラム6Aと転写ローラ7とは、搬送ローラ対13A、13Bに対して略水平経路P2の下流側に位置し、略水平経路P2を挟んで互いに対向している。定着器8は、略水平経路P2を挟んで互いに対向する加熱ローラ8A及び加圧ローラ8Bを有する。
【0035】
プロセスカートリッジ6は、スキャナ部及び帯電器によって感光ドラム6Aに形成された静電潜像を対して、現像ローラによりトナー収容部からトナーを供給してトナー像を形成する。そのトナー像は、略水平経路P2に沿って搬送されるシート99に感光ドラム6Aが当接しつつ回転し、転写ローラ7に印加された負の電圧が作用することにより、シート99に転写される。定着器8は、プロセスカートリッジ6の下方を通過したシート99を加熱ローラ8A及び加圧ローラ8Bにより加熱加圧して、シート99に転写されたトナー像を定着させる。その後、シート99は、加熱ローラ8A及び加圧ローラ8Bの回転により、排出経路P3に搬送される。
【0036】
排出ローラ対14A、14Bは、排出経路P3の最下流側である排出トレイ2Aの直前に位置している。排出ローラ対14A、14Bは、画像形成部5によって画像が形成されたシート99を排出トレイ2Aに排出する。
【0037】
このような構成により、実施例の画像形成装置1は、MPトレイ81又はシートカセット82に載置されたシート99に画像を形成することができる。
【0038】
また、この画像形成装置1では、図2に示すように、MPトレイ81が第1開口2Bを開放した状態において、プロセスカートリッジ6を若干上方に持ち上げつつ、略水平経路P2に沿うように略水平にハウジング2の前面側に引き出すことにより、ハウジング2からプロセスカートリッジ6を取り外すことができる。また、取り外し動作とは逆の動作により、ハウジング2に対してプロセスカートリッジ6を装着することができる。図2から分かるように、MPトレイ81が略水平経路P2よりも水平方向において下側に位置しているため、MP給紙部10もこれに伴って下側に配置される。このような構成にすることで、プロセスカートリッジ6の着脱の経路において、分離ローラ12等が邪魔になりにくい。
【0039】
<MP給紙部の具体的構成>
図3に示すように、MP給紙部10は、分離ローラ12と、給紙ローラ11と、分離パッド20と、ホルダ21と、付勢部材40とを備える。また、図4に示すように、MP給紙部10は、支持部30L、30Rを備える。分離パッド20は、本発明の「分離部材」の一例である。
【0040】
図3及び図4に示すように、下側搬送面3Aにおける左右方向の中央には、略矩形状の凹部3Bが下方に凹むように形成されている。分離ローラ12は、ハウジング2内において、MP経路P1を挟んで凹部3Bの上方に位置している。なお、図4では、分離ローラ12は、凹部3Bに対して紙面手前側に位置しているので、二点鎖線で図示している。
【0041】
図3及び図4に示すように、分離ローラ12は、左右方向に延びる第1軸心X1を軸心とする駆動軸12Sに固定されている。駆動軸12Sは、ハウジング2内における右側面側、すなわち、図3において分離ローラ12に対して紙面奥側に延びて、駆動力伝達部M1に転結されている。駆動力伝達部M1は、画像形成動作の進行に応じて、ハウジング2内に設けられた図示しない駆動源から駆動軸12Sに対して駆動力を伝達又は遮断する。
【0042】
図3に示すように、駆動軸12Sには、ローラホルダ10Hが支持されている。ローラホルダ10Hは、分離ローラ12を左右から挟んだ状態で第1軸心X1周りに揺動可能とされている。ローラホルダ10Hは、駆動軸12Sに対して搬送方向D1の上流側に延びて、第1軸心X1と平行な左右方向に延びる回転軸11Sを回転可能に支持している。
【0043】
給紙ローラ11は、回転軸11Sに一体回転可能に固定されている。また、給紙ローラ11は、図示しない伝達ギヤにより、駆動軸12Sと連結されている。これにより、給紙ローラ11は、分離ローラ12と同期回転する。
【0044】
図3及び図4に示すように、凹部3B内には、分離パッド20と、分離パッド20を保持するホルダ21とが配設されている。
【0045】
分離パッド20は、矩形板形状とされた摩擦部材であり、例えば、ゴムやエラストマー等からなる。
【0046】
ホルダ21は、分離パッド20に対して前後方向に長い矩形板部材であり、例えば、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂の射出成型品である。ホルダ21の上面において、第1軸心X1の下方に位置する領域には、分離パッド20が貼り付けられている。ホルダ21における分離パッド20より後方の左右角部には、左右一対の凸部21L、21Rが後方に向けて突出するように形成されている。
【0047】
図4に示すように、両凸部21L、21Rにおいて、左右方向で互いに反対方向を向く側面には、互いに離間するように円柱状に突出する軸部22L、22Rが形成されている。また、両凸部21L、21Rにおいて、左右方向で互いに対向する側面には、互いに離間するように凹むコロ軸受穴23L、23Rが形成されている。軸部22L、22R及びコロ軸受穴23L、23Rは、同軸である。
【0048】
支持部30L、30Rは、凹部3Bの対向する左右の側壁から互いに離間する方向に凹むように形成された軸受穴である。支持部30L、30Rは、第1軸心X1と平行、かつ分離パッド20に対して搬送方向D1の下流側に位置する第2軸心X2を軸心としている。支持部30L、30Rには、ホルダ21の軸部22L、22Rが嵌入されている。これにより、支持部30L、30Rは、第2軸心X2周りにホルダ21を揺動可能に支持する。
【0049】
図3に示すように、付勢部材40は圧縮コイルバネであり、上下に起立した状態で凹部3B内に配設されている。付勢部材40の下端は、凹部3Bの底面に係合されている。その一方、付勢部材40の上端は、ホルダ21の裏面における分離パッド2の下方に位置する部位に係合されている。これにより、付勢部材40は、分離パッド20を分離ローラ12に押し付けるようにホルダ21を付勢する。そして、分離ローラ12に押し付けた分離パッド20は、分離ローラ12とシート99を挟む第1ニップ部N1を形成する。
【0050】
図3及び図4に示すように、ホルダ21には、コロ50が設けられている。コロ50は、左右方向に延びる円柱体であり、例えば、POM等の摺動性や耐摩耗性に優れた樹脂の射出成型品である。図4に示すように、コロ50の左右方向の長さは、分離パッド20の左右方向の長さに対して小さくされており、コロ50が分離パッド20に対して左右方向にはみ出さないような長さになっている。つまり、コロ50と分離パッド20とは、搬送方向D1(前後方向)からみたときに、重なるような位置に配置されている。コロ50の左右両端面には、互いに離間する方向に円柱状に突出するコロ軸部50L、50Rが形成されている。コロ軸部50L、50Rは同軸である。
【0051】
ホルダ21のコロ軸受穴23L、23Rには、コロ軸部50L、50Rが嵌入されている。これにより、コロ50は、支持部30L、30Rにより、ホルダ21が第2軸心X2周りに揺動可能に支持された状態において、ホルダ21により、第2軸心X2周りに回転可能に支持される。これにより、コロ50は、MP経路P1に沿って搬送されるシート99に対して下方から当接可能とされている。
【0052】
なお、コロ軸受穴23L、23Rに対するコロ軸部50L、50Rの嵌入は、例えば、ホルダ21の両凸部21L、21Rを互いに離間する方向に撓ませて、コロ軸受穴23L、23R同士の間隔を拡げることにより行える。
【0053】
図3に示すように、左右方向から見た場合、搬送ローラ対13A、13Bがシート99を挟む第2ニップ部N2は、コロ50のシート99に対する当接部50Aと、第1ニップ部N1とを結ぶ線L1よりも下側に位置している。これにより、MP経路P1は、上り傾斜した後に、略水平方向に向かって後方へ延びている。
【0054】
このような構成であるMP給紙部10は、画像形成装置1がMPトレイ81上のシート99に画像を形成する場合に以下のように動作する。まず、図示しない制御部がMPトレイ81上のシート99に画像を形成する指令を受けると、図示しない駆動源、駆動伝達部M1及び画像形成部5等に対する制御を開始する。そうすると、駆動伝達部M1が駆動軸12Sに駆動力を伝達するので、分離ローラ12が駆動軸12Sと一体に第1軸心X1周りに回転し、給紙ローラ11も分離ローラ12と同期回転する。これにより、MPトレイ81上のシート99に対して上方から給紙ローラ11及び分離ローラ12が順次当接して、シート99に搬送力を付与し、シート99を搬送方向D1に送り出す。この際、第1ニップ点N1において、分離パッド20がシート99を一枚ずつに分離する。
【0055】
そして、シート99がMP経路P1に沿って搬送され、シート99の先端縁が略水平経路P2に沿って進んで第2ニップ部N2に到着すると、シート99の重送を防止するために、駆動伝達部M1が駆動軸12Sへの駆動力の伝達を遮断する。よって、分離ローラ12が従動回転に切り替わる。これにより、シート99は、搬送ローラ対13A、13B等により略水平経路P2及び排出経路P3に沿って搬送され、上述した画像形成動作が行われる。
【0056】
<作用効果>
実施例の画像形成装置1では、図3に示すように、ホルダ21に設けられたコロ50が分離パッド20に対して搬送方向D1の下流側に位置する第2軸心X2周りに回転し、搬送されるシート99に当接できる。このため、搬送方向D1における分離ローラ12及び分離パッド20より下流側において、MP経路P1を構成する下側搬送面3Aにシート99が擦れ難くなり、シート99の搬送抵抗を小さくできる。
【0057】
また、ホルダ21とコロ50とは、同じ第2軸心X2周りに揺動又は回転可能に支持されている。このため、ホルダ21及び分離パッド20が揺動しても、搬送されるシート99に対するコロ50の位置が変化しないので、シート99の搬送が常に一定であり、コロ50とシート99との接触が安定する。
【0058】
したがって、実施例の画像形成装置1は、一枚ずつに分離されて搬送されるシート99の搬送抵抗を安定して小さくできる。また、搬送されるシート99が詰まることも防止できる。
【0059】
また、この画像形成装置1では、図3に示すように、左右方向から見た場合、搬送ローラ対13A、13Bがシート99を挟む第2ニップ部N2は、コロ50のシート99に対する当接部50Aと、第1ニップ部N1とを結ぶ線L1よりも下側に位置していることから、MP経路P1は、上り傾斜した後に、当接部50A付近において搬送方向を変更し、略水平方向に向かって後方へ延びている。このため、MPトレイ81に載置されたシート99も、上り傾斜した後に、当接部50A付近において搬送方向を変更し、略水平方向に向かって後方へ搬送される。このように、傾斜方向から略水平方向に搬送経路が屈曲するような場合でも、コロ50がシート99に対して下方から当接して回転するので、シート99が下側搬送面3Aに擦れ難くなり、シート99の搬送抵抗を確実に小さくできる。その結果、この画像形成装置1は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0060】
さらに、この画像形成装置1では、分離ローラ12により送り出されたシート99の先端が第2ニップ部N2に到達して、搬送ローラ対13A、13Bがシート99をニップして搬送するようになった後、シートの重送を防止するために分離ローラ12に対する駆動力の伝達が遮断されて、分離ローラ12が従動回転に切り替えられる。そうすると、シート99は、分離ローラ12及び分離パッド20と、搬送ローラ対13A、13Bとの間で引っ張られた状態になる。この場合でも、コロ50が引っ張られた状態のシート99に当接して回転するので、シート99が下側搬送面3Aに擦れ難くなり、シート99の搬送抵抗を確実に小さくできる。その結果、この画像形成装置1は、本発明の作用効果を確実に奏することができる。
【0061】
また、この画像形成装置1において、コロ50は、図4に示すように、搬送方向D1から見て、分離パッド20と重なっている。つまり、コロ50の左右方向の長さは、分離パッド20の左右方向の長さに対して小さくされており、コロ50が分離パッド20に対して左右方向にはみ出さない。この構成により、コロ50の左右方向のスペースを小さくでき、部品の小型化を実現できる。
【0062】
さらに、この画像形成装置1において、シートカセット82から搬送されるシート99は、上方にUターンするUターン経路P4に沿って搬送された後、略水平経路P2に沿って搬送される。また、MPトレイ81は、ハウジング2の前面側に配置される。また、MP経路P1は、Uターン経路P4に合流するような配置に設けられている。さらに、第1ニップ部N1は、略水平経路P2よりも下側に位置している。このような具体的構成である場合、MPトレイ81から第1ニップ部N1を介して画像形成部5に至るMP経路P1が屈曲又は湾曲し易いので、本発明の作用効果を確実に享受できる。
【0063】
また、画像形成部5を構成するプロセスカートリッジ6は、略水平経路P2に沿って、ハウジング2の前面側から着脱可能に設けられている。この構成により、プロセスカートリッジ6をMPトレイ81により開放されるハウジング2の前面側から着脱できる。この場合において、第1ニップ部N1が略水平経路P2よりも下側に位置することで、分離ローラ12等を有するMP給紙部10をハウジング2内の下方にレイアウトし易くなるので、プロセスカートリッジ6を着脱する際に、分離ローラ12等が邪魔になり難い。
【0064】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0065】
例えば、実施例では軸受穴である支持部30L、30Rによりホルダ21の軸部22L、22Rを支持する構成に限定されず、例えば、ホルダ21に軸受穴を設け、支持部を軸部としてもよい。
【0066】
また、例えば、シートカセット給紙部19に対して、MP給紙部10のコロ50と同様の構成のものを設けてもよい。
【0067】
また、実施例では、分離部材として分離パッド20を採用したが、本発明はこれに限らず、例えばリタードローラを採用してもよい。
【0068】
また、例えば、実施例の画像形成部5は電子写真方式を採用しているが、この構成に限定されず、例えば、インクジェット方式等の他の画像形成方式を採用してもよい。また、例えば、画像を形成しないような読取装置に適応してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は画像形成装置、画像読取装置又は複合機等に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…シート搬送装置(画像形成装置)、5…画像形成部
81…第1載置部(マルチパーパストレイ)、82…第2載置部(シートカセット) 99…シート、X1…第1軸心、X2…第2軸心、D1…搬送方向
12…分離ローラ、20…分離部材(分離パッド)、21…ホルダ
30L、30R…支持部
40…付勢部材、50…コロ、13A、13B…搬送ローラ対
N1…第1ニップ部、N2…第2ニップ部、50A…コロのシートに対する当接部
L1…当接部と第1ニップ部とを結ぶ線、P4…Uターン経路、P2…略水平経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
前記装置本体に設けられ、シートが載置される第1載置部と、
前記装置本体内において前記第1載置部に載置された前記シートに対して上方から当接可能に設けられ、搬送される前記シートの幅方向に延びる第1軸心周りに回転して、前記シートを搬送方向に送り出す分離ローラと、
前記装置本体内において前記分離ローラと前記シートを挟む第1ニップ部を形成するように設けられ、前記分離ローラによって送り出される前記シートを一枚ずつに分離する分離部材と、
前記装置本体内に設けられ、前記分離部材を保持するホルダと、
前記装置本体内に設けられ、前記第1軸心と平行、かつ前記分離部材に対して前記搬送方向の下流側に位置する第2軸心周りに前記ホルダを揺動可能に支持する支持部と、
前記装置本体内に設けられ、前記分離部材を前記分離ローラに押し付けるように前記ホルダを付勢する付勢部材とを備え、
前記ホルダには、前記第2軸心周りに回転し、搬送される前記シートに当接可能とされたコロが設けられていることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記搬送方向における前記コロより下流側に設けられ、一枚ずつに分離された前記シートを搬送する搬送ローラ対を備え、
前記幅方向から見た場合、前記搬送ローラ対が前記シートを挟む第2ニップ部は、前記コロの前記シートに対する当接部と、前記第1ニップ部とを結ぶ線よりも下側に位置している請求項1記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記分離ローラにより送り出された前記シートの先端が前記第2ニップ部に到達した後、前記分離ローラに対する駆動力の伝達が遮断される請求項2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記コロは、前記搬送方向から見て、前記分離部材と重なっている請求項1乃至3のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記装置本体内において前記搬送方向における前記第1載置部より下流側に設けられ、搬送される前記シートに画像を形成する画像形成部と、
前記装置本体内において、前記画像形成部の下方に設けられ、前記シートが載置される第2載置部とを備え、
前記第2シート載置部から搬送される前記シートは、上方にUターンするUターン経路に沿って搬送された後、前記装置本体の一方の側面側から他方の側面側に向かって略水平に延びて前記画像形成部に至る略水平経路に沿って搬送され、
前記第1シート載置部は、前記第1シート載置部から送り出される前記シートが前記Uターン経路に合流するように前記装置本体の一方の側面側に配置され、
前記第1ニップ部は、前記略水平経路よりも下側に位置している請求項1乃至4のいずれか1項記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記画像形成部の少なくとも一部は、前記略水平経路に沿って、前記装置本体の一方の側面側から着脱可能に設けられている請求項5記載のシート搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−95518(P2013−95518A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236563(P2011−236563)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】