説明

シート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法

【課題】本発明は、シート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造を可能と成し、且つ、得られた成形飯が、シート状米飯と同様に広い用途を得ることが可能となり、更に冷めても固くならず、ボソボソしないで食べ易いものとなると共に手軽に食べることが出来るシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】炊き立ての玄米飯或いは麦飯を、製麺機4に入れて麺線用の多数の細ノズルから押出して飯粒をバラバラの大きさにさせ、それを所定の厚さに伸ばしてシート状に形成し、且つ、所定の大きさに形成させて成形飯1と成し、該成形飯1を包装して成す。また前記成形飯1を透明な包装材で包装すると良く、前記成形飯1の形状として、四角形或いは円形とするのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンバーガーの如く具材をその中に入れたり或いは食パンの如く具材を挟んだりすることが出来るシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄米は蛋白質や糖質の他に、約40種類以上の栄養成分が含まれており、現代人に不足しがちなビタミン,ミネラル,植物繊維が豊富に含まれている。このように玄米は栄養価が高い食べ物であるが、玄米飯は食べにくいものであるにもかかわらず、噛めば噛むほど甘味が出るので、注目されている。このため、玄米の美味しい炊き方などがインターネット等で多く掲載されている。特に一つまみの塩を入れると炊き上がった時に甘味が出て、美味しく食べられることが掲載されている。しかしながら、玄米飯は炊き方が種々工夫され、炊き立ての玄米飯を食べると美味しいが、歯の悪い人には非常に食べにくいものであった。又、玄米飯は冷めるとかたく且つボソボソして食べにくいものとなるため、食べる量だけを炊くのが一般的であり、玄米飯は手間の掛る食品であった。
【0003】
また麦飯は米飯と異なり、独特な香りや、やや固めで粘り気の少ない食感を持っている。特に麦飯は白米に比べて、現代人に不足しがちなビタミンB,ミネラル,植物繊維が豊富に含まれている。このように麦飯は栄養価が高い食べ物であるが、消化が良くないので、とろろ汁を掛けたりして食べる場合が多い。一般に麦飯としては、白米に2割〜3割の麦を混ぜる場合が多い。この場合、麦が多くなると歯ごたえが有り過ぎて固い食感となってしまうため、3割以上混ぜた麦飯は殆ど見かけない。
【0004】
一方、米飯の需要を拡大するために、シート状米飯が種々提案されている。例えば、特開2005−168432号公報では、ふっくらした食感や滑らかな表面形状を維持し、適度な強度や柔軟性を備えた厚さ10mm以下の薄いシート状米飯の製造方法が提案されている。この製造方法は、原料米を熱湯又は蒸気で加熱して、表層部分が糊化し、中心部分が糊化していない表面糊化米飯を得る第1加熱工程と、該第1加熱工程後の表面糊化米飯を水冷して、表面の糊化した部分が水を吸って柔らかくなった後に水切りする浸漬・水切り工程と、該浸漬・水切り工程後の表面糊化米飯を計測して分別する計量工程と、該計量工程で分別した表面糊化米飯を軽く捏ねることによって表面の糊化した部分が米粒間を繋ぐ糊層となって剥れて米粒間を接着した状態にてシート状に成形する成形工程と、該成形工程でシート状に成形されたシート状表面糊化米飯を炊き上げる第2加熱工程と、該第2加熱工程とを含むことを特徴とするものであった。
【0005】
又、特許第3668707号では、ふっくらした食感と外観を有し、スナック感覚で手軽に喫食することが出来る成型米飯が提案されている。この製造方法は、包装容器内に米および炊き水を充填し、最終的に得られる成型米飯の空隙率が5容量%〜30容量%になるようにヘッドスペースの量を調整して前記包装容器を密封した後、加熱し、当該包装容器内で炊飯およびに成型を行うものであった。この成型米飯は、米飯粒で構成されたシート状成型米飯であり、その空隙率が5容量%〜30容量%で、シート厚が5mm〜15mmである。また米飯粒以外の食品原料として、炊飯した玄米,麦,栗,稗等の穀物類が記載されている。更に、この成型米飯は、多数の米飯粒が互いに結着することにより形状が維持されるものであると明記されていると共に、ふっくらした食感及び外観は、米飯粒がバラバラの大きさではなく、きれいに大きさが揃うことにより、見た目が良いものとなっているため、本発明とは製造方法が異なると共に製造された製品も異なる。
【0006】
従って、特開2005−168432や特許第3668707号は、本発明のように飯粒を小さな穴に通過させて細かくするものとは異なると共に、玄米飯や麦飯を薄いシート状にして冷ましたものを製造する記載やそのような発想はないものであった。尚、従来、玄米飯や麦飯を薄いシート状に形成する際、玄米飯や麦飯には粘着力が極めて小さいため、薄いシート状に形成してもポロポロと形が崩れて形状維持が困難であった。しかも、本発明方法によって得られた玄米飯や麦飯が、玄米或いは麦が10割であってもシート状に形成することが可能となり、そのようなものは従来にはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−168432号公報
【特許文献2】特許第3668707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、シート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造を可能と成し、且つ、得られた成形飯が、シート状米飯と同様に広い用途を得ることが可能となり、更に冷めても固くならず、ボソボソしないで食べ易いものとなると共に手軽に食べることが出来るシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、炊き立ての玄米飯或いは麦飯を、製麺機に入れて麺線用の多数の細ノズルから押出して飯粒をバラバラの大きさにさせ、それを所定の厚さに伸ばしてシート状に形成し、且つ、所定の大きさに形成させて成形飯が形成できる製造方法と成す。又、形成したシート状のものを、所定の大きさに整形させて成形飯と成し、該成形飯を透明な包装材で包装すると良く、前記成形飯の形状として、四角形或いは円形とするのが好ましい。尚、本発明で言う「製麺機」とは、麺線が形成される一般的な機械を指すが、炊かれた飯粒が粉砕されてバラバラの大きさになれば、他の機械でも良いため、製麺機の機能と同等の機能を持った機械も含むものとする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のように炊き立ての玄米飯或いは麦飯を、製麺機(4)に入れて多数の細ノズルから押出して飯粒をバラバラの大きさにすることにより、食感が従来の炊き立ての玄米飯或いは麦飯に比べて、固さやボソボソした感じがなくなり、誰でも米飯と同様に食べ易いものとなり、栄養価が高い食べ物として気軽に食べられて、現代人に不足しがちなビタミン,ミネラル,植物繊維が確実に摂取出来るものとなるのである。この時、玄米或いは麦を10割にしても、誰でも米飯と同程度に食べ易いものとすることが可能となる。また押出された玄米飯或いは麦飯を所定の厚さに伸ばしてシート状に形成すことにより、単に茶碗に盛って食べるだけでなく、パン食感覚で種々の具材(3)を挟んだり或いは巻いたりして食べることが出来るため、用途が広くなり、且つ、気軽に食べることが出来るものとなる。
【0011】
請求項2のように形成したシート状のものを、所定の大きさに整形させて成形飯(1)と成し、該成形飯(1)を透明な包装材(2)で包装することにより、本発明方法によって得られた成形飯(1)は、パン食感覚で種々の具材(3)を挟んだり或いは巻いたりして食べられるものとなると共に寿司感覚で魚介類などの具材(3)を巻いて食べることが出来るため、用途が広がり、且つ、気軽に成形飯(1)を食べることが出来る。更に成形飯(1)を包装することにより、商品化することが可能となるため、従来食べにくかった玄米或いは麦の需給を増加させ、且つ健康に良い食品として提供できるものとなる。
【0012】
請求項3に示すように成形飯(1)の形状を四角形に形成すると、食パンやのり巻き感覚で使用できるものとなる。また成形飯(1)を円形に形成することにより、丸パン感覚で種々の具材(3)を挟んで楽しむことが出来るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明方法の実施形態の要部を示す説明図である。
【図2】本実施形態によって得られた成形飯の包装状態の断面を示す説明図である。
【図3】本実施形態によって得られた成形飯の使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
玄米飯或いは麦飯に粘り気を持たせてシート状に形成するという目的を、製麺機(4)に入れて麺線用の多数の細ノズルから押出して飯粒をバラバラの大きさにさせることにより、実現した。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明方法の実施形態を示す図であり、この図に基づいて説明する。予め玄米飯或いは麦飯を炊いて置くと共に製麺機(4)も用意しておく。又、製麺機用手動式カッター部材(43)を製麺機(4)の下部に取付けておき、且つ、受板(5)もカッター部材(43)の下方に配置させておく。この時の製麺機用手動式カッター部材(43)としては、本発明者が特願2009−284642で提案したものを使用するのが好ましい。また前記製麺機(4)のノズルの大きさとしては1.4mm〜4.0mmのものを用いるのが良い。
【0016】
先ず始めに、炊き立ての玄米飯或いは麦飯を製麺機(4)の容器部(41)に適宜量入れる。次に図中の矢印のように押圧部(42)を図示しない駆動手段で下方へ移動させると、多数の細ノズルから麺線状になって図1(a)のように押出されてくる。そして、受板(5)の上に図1(b)のように盛られる。この時、飯粒はバラバラの大きさに潰されることによって、全体に粘りを生じるものとなる。その後、所定量或いは全て押出された時点で押圧部(42)を止める。そしてカッター部材(43)を水平移動させて、麺線状のものを容器部(41)から切断する。すると、麺線状の玄米飯或いは麦飯は図1(c)に示すように山状に盛り上げられる。この盛られたものをローラや押圧板などを利用して、図1(d)に示すように薄く伸ばし、所定厚さのシート状に形成させる。
【0017】
更に、そのシート状のものを所定形状で、且つ、所定大きさに切断し分離させると共にその形を整えることで、図1(e)のように成形飯(1)が得られる。更にそれを適宜方法で包装することで図2に示すように完成品となるのである。この時の成形飯(1)の形状としては、四角形或いは円形が好ましく、その大きさとしては、一辺或いは直径が70mm〜150mm前後で、厚が5mm〜15mm前後が良いが、目安としては、食パンや円形パンと略同等の大きさや厚さのものとするのが良い。又、前記成形飯(1)を包装した透明な包装材(2)としては、プラスチックフィルム,ビニールシート或いはその袋,ポリエチレンシート或いはその袋などを用いるのが好ましい。
【0018】
尚、前記成形飯(1)の包装方法としては、図2(a)に示すように成形飯(1)を一枚のフィルムやシートの包装材(2)で、薄切りチーズの包装の如く包装すると良い。また図2(b)に示すように成形飯(1)の上下面に各一枚のフィルムやシートの包装材(2)で包み、成形飯(1)の周囲を熱溶着し密閉させて完成品としても良い。更に図2(c)のように成形飯(1)を袋の包装材(2)に入れ、これを真空機に掛けて真空包装させたものとしても良い。
【0019】
図3は成形飯(1)の使用例を示す図であり、これについて説明する。図3(a)は成形飯(1)の間に、ハンバーグ,ソーセージ,天ぷら,肉製品,かにやエビなどの具材(3)を挟んでサンドイッチ風に食べる場合を示す。また図3(b)は成形飯(1)の上に、味付き海苔,薄切りハム,薄切りチーズ,スープ,ふりかけ,目玉焼き,ハムエッグなどの具材(3)を載せたトースト風に食べる場合を示す。又、図3(c)は手巻き寿司に用いる種々の具材(3)を成形飯(1)で巻いてのり巻き風にして食べる場合を示し、図3(d)はウインナーソーセージ,かに,エビなどの具材(3)を成形飯(1)で手軽に包んで食べる場合を示す。尚、前記成形飯(1)の食べ方は上記に限定されるものではない。
【0020】
このように本発明によって得られた成形飯(1)は、従来のシート状の米飯と同様に食べることが出来るものとなった。尚、炊き立ての玄米飯或いは麦飯が製麺機(4)に入れられて麺線用の多数の細ノズルから押出したものを食べてみると、玄米飯或いは麦飯の特有な固さやボソボソ感は殆どなく、食べ易いものであった。又、冷めたものを食べても食べ易いものであった。更に包装した成形飯(1)を、冷蔵庫で1週間保管し、電子レンジでそれを温めて食べたところ、殆ど味や食感に変化がなかった。
【符号の説明】
【0021】
1 成形飯
2 包装材
4 製麺機


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊き立ての玄米飯或いは麦飯を、製麺機(4)に入れて多数の細ノズルから押出して飯粒をバラバラの大きさにさせ、それを所定の厚さに伸ばしてシート状に形成させたことを特徴とするシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法。
【請求項2】
形成したシート状のものを、所定の大きさに整形させて成形飯(1)と成し、該成形飯(1)を透明な包装材(2)で包装させた請求項1記載のシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法。
【請求項3】
前記成形飯(1)が、四角形或いは円形である請求項2記載のシート状玄米飯或いはシート状麦飯の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−254735(P2011−254735A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130676(P2010−130676)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(310013772)技術研究組合 農畜産工業雇用推進機構 (1)
【Fターム(参考)】