説明

シート防水木質屋根構造

【課題】
本発明は、従来のスレート瓦等無機質の屋根材重量と比べその重量を約1/2にして建物への負荷を低減するとともに屋根材の滑落がなく、屋根材廃棄物の再生が可能であり、屋根勾配が緩勾配であっても防水性を確保でき、意匠的にも優れたシート防水木質屋根を提供することを目的とする。
【解決手段】
木質屋根下地上に、上側木質板の下端を下側木質板の上端に30〜60mmの幅で重ねるように固定して略階段的な防水下地を形成し、該防水下地上に防水シートを敷設するシート防水木質屋根構造としたことであり、上記上側木質板の下端に略L字形状の樹脂被覆鋼板を固定し、敷設する防水シートを該樹脂被覆鋼板に溶着するシート防水木質屋根構造としたことであり、木質屋根下地と防水下地との間に防水透湿シートを敷設するシート防水木質屋根構造としたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造に関し、更に詳しくは意匠性のあるシート防水木質屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の木造住宅の屋根は、屋根下地の野地板上にアスファルト、ゴムアスファルトからなる防水シートをタッカーで止めながら敷設した後、一定間隔で胴縁を打ち付けて、これにスレート瓦を重ね合わせながらビスや釘で野地板に止めつけている。スレート瓦には、屋根への重量負荷及び地震による滑落の問題、防水上、緩勾配にできないため屋根の意匠的制限を受ける等の問題、石綿入りの場合は廃棄処分の問題などを有している。
また、旧建築基準法では、屋根は不燃材で葺かなければならない等の制限があったが、新建築基準法では、防火上の技術的基準に合格すればよく、適用範囲が拡大して木質屋根でも可能となった。防火基準に合格する木質屋根のシート防水工法は既に本出願人が提案(特許文献1)しているが、意匠を考慮した木質屋根のシート防水工法は未だ開発されていない。
【特許文献1】特開2003−206598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、従来のスレート瓦等無機質の屋根材重量と比べその重量を約1/2にして建物への負荷を低減するとともに屋根材の滑落がなく、屋根材廃棄物の再生が可能であり、屋根が緩勾配であっても防水性を確保でき、意匠的にも優れたシート防水木質屋根を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために本発明の講じた手段は、木質屋根下地上に、上側木質板の下端を下側木質板の上端に30〜60mmの幅で重ねるように固定して略階段的な防水下地を形成し、該防水下地上に防水シートを敷設するシート防水木質屋根構造としたことであり(請求項1)、上記上側木質板の下端に略L字形状の樹脂被覆鋼板を固定し、敷設する防水シートを該樹脂被覆鋼板に溶着するシート防水木質屋根構造としたことであり(請求項2)、木質屋根下地と防水下地との間に防水透湿シートを敷設するシート防水木質屋根構造としたことである(請求項3)。
【発明の効果】
【0005】
本発明のシート防水木質屋根構造は、木質板を重ねて略階段的な防水下地としたことにより、軽量であって、擬スレート瓦状の外観を有し意匠性に優れており、また、防水シートを略L字形状の樹脂被覆鋼板に溶着するため防水性、耐久性に優れ、さらに防水透湿シートを使用することにより、さらに防水性、耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のシート防水木質屋根構造及びその施工手順について、図面を基に詳しく説明する。図1は、本発明のシート防水木質屋根構造の1例を示す模式断面図である。
屋根の骨組みである垂木に野地板などを取り付けて木質屋根下地1を形成する。木質屋根下地1には、通常、厚みが9〜28mmで、合板、杉板、集束材等が使用できる。
【0007】
次に、木質屋根下地1上に、長手方向を屋根に平行にして屋根勾配方向に見合った数の木質板を木質板の端部を重ねた状態でビスや釘で固定して略階段状の防水下地3を形成する。屋根の上側木質板の下端部分を下側木質板の上端部分に30〜60mmの幅で部分的に重ねて略階段状とする。
防水下地3の材料には、厚みが9〜15mm、通常12mmの針葉樹合板、南洋樹合板、
パーティクルボード、OSB等の合板もしくは集束板を使用することができる。防水下地3は、炎の貫通を防ぐためにも木質屋根下地1と目地が重ならないように張り合わせていくことが好ましく、防水下地3を構成する木質板の各段の幅は任意でよいが、作業性、デザイン性を考慮すると、300〜500mmがよい。
木質屋根下地1と防水下地3の接触部分の防水下地裏側に任意の間隔で凹凸を形成し、湿気の抜け道を作っても良い。
【0008】
また、防水下地3を形成する前に、予め、木質屋根下地1の上に防水透湿シート2を敷設することが好ましい。これによって、防水性が向上するばかりでなく防水透湿シート2は透湿性を有するため野地板等の屋根下地1の水分を透過させることができ木質屋根下地1を湿気劣化から保護し、屋根下地1の耐久性が向上する。さらに改修時には、木質屋根下地1は残して、防水下地3のみを交換取付けることで、リニューアルが可能となる。
防水透湿シート2はタッカーやアクリル樹脂系、ブチル系両面粘着テープで部分的に張り合わせながら木質屋根下地1に敷設することができる。
上記防水透湿シート2には、厚みが0.1〜0.6mm、耐水圧が0.1〜1mのポリエステル繊維、ポリプロピレン樹脂などからなる単層または複層の不織布が使用でき、ジュポン社製「タイペック」、A PROCTER社製「ルーフシールド」などが例示される。
さらに、上記防水透湿シート2の表面に厚み10〜50ミクロンのアルミ箔が積層または蒸着されているか、赤外線反射性顔料が配合された塗料が塗布されていることが好ましく、このことにより、輻射熱を反射し屋根裏の温度上昇を低減することができる。
【0009】
防水下地3の上側木質板と下側木質板の段差が小さい場合、段差部分に接する防水シート5を充分に接着固定できないため、経年で防水シート5が突っ張ってフクれが発生すると、水溜まりやゴミ溜まり等の外観及び防水上好ましくなくなる。そこで、このような場合、上側木質板の下端部分にビス、接着剤等で略L字形状の樹脂被服鋼板4を取り付けることが好ましく、このことにより、防水シート5を略L字形状の樹脂被服鋼板4に溶着し、防水シート5の角のフクレ又は浮きをなくすことができ、仕上がりも綺麗になる。
【0010】
防水シート5を、段の幅に段差分、下段シートとのラップ代を加えた長さにカットし、略階段状防水下地3の下段側から各段ごとに敷設する。隣り合う上段及び下段の防水シート5を熱または溶剤で溶着接合する。防水シート5の敷設は、エポキシ樹脂、二トリルゴム系、ウレタン樹脂系などの接着剤で防水下地3に接着しながら行なう。また、屋根下端の軒先部分には樹脂で被覆された軒先金物7をビス、接着剤等で防水下地3に固定して軒先金物7と最下端の防水シート5とを溶着して仕上げるとよい。
【0011】
本発明で使用する防水シート5は単色でもよいが、表層を同系色の濃淡または異色の2色以上で帯状に積層してデザイン性を付与することにより景観を良くすることができる。
或いは防水シート上に、厚みが1.5〜2.5mmで、表層が多色で型押した意匠シート6をウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系等の接着剤で接着し、意匠付与してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0012】
上述の通り本発明により、木質板を重ねて略階段的な防水下地としたことにより、軽量であって、擬スレート瓦状の外観を有し意匠性に優れており、また、防水シートを略L字形状の樹脂被覆鋼板に溶着するため防水性、耐久性に優れ、加えて防水透湿シート使用することにより、さらに防水性、耐久性が向上するため、シート防水木質屋根構造として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるシート防水木質屋根構造の模式断面図
【符号の説明】
【0014】
1 木質屋根下地
2 防水透湿シート
3 防水下地
4 略L字形状の樹脂被覆鋼板
5 防水シート
6 意匠シート
7 軒先金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質屋根下地上に、上側木質板の下端を下側木質板の上端に30〜60mmの幅で重ねるように固定して略階段的な防水下地を形成し、該防水下地上に防水シートを敷設することを特徴とするシート防水木質屋根構造。
【請求項2】
上記上側木質板の下端に略L字形状の樹脂被覆鋼板を固定し、敷設する防水シートを該樹脂被覆鋼板に溶着することを特徴とする請求項1に記載のシート防水木質屋根構造。
【請求項3】
木質屋根下地と防水下地との間に防水透湿シートを敷設することを特徴とする請求項1または2に記載のシート防水木質屋根構造。





























【図1】
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【公開番号】特開2007−154551(P2007−154551A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352707(P2005−352707)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000010010)ロンシール工業株式会社 (84)