説明

シート

【課題】 シートを地面に敷設する際に、固定具の施工位置を決める位置決めマークが用いられるが、地面の地質に応じて固定具による固定間隔が異なるため、汎用性を高めるために位置決めマークはもっとも短い間隔で設けられる。そのため、固定力の強い土質に敷設する場合は固定具を施工しない位置決めマークが残ることとなり、工事施工後の美観を損ねる問題があった。
【解決手段】 シート表面に形成する位置決めマークを自然環境化で溶出或いは脱色する材料を用いる事で、固定に使用されなかった位置決めマークは溶出または脱色、分解され美観を損ねる事を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに関する。本発明のシートは雑草の生育を防止するため地上に敷設して利用される防草シートとして好ましい。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の土手、田畑の畦畔、或いは鉄道、道路の盛土法面等では、雑草が繁茂すると病害虫発生などの恐れが生じることから、頻繁に刈り取り、或いは雑草の発育防止を目的に除草剤の散布等が必要とされている。しかし、草の刈り取り作業は多大な労力が必要であり、また除草剤の散布は環境破壊の面から好ましいものでない。
【0003】
このような課題を解決する方法として、防草シートを地面上に敷設することが提案されている。防草シートは市販される際、ロール状に巻回、或いは、つづら折りに折り畳まれている。これを河川の土手、田畑の畦畔等の地面、あるいは、鉄道、道路の盛土法面等に敷設する際は、複数の防草シートを幅方向に並べて固定する方法が採られる。
【0004】
しかしながら、防草シートは長尺であり、場合によっては50mを越える長尺ともなるため、多数の防草シートを隙間無く整然と並べる作業は決して容易ではない。もし、防草シートの途中に隙間や皺が生じると雑草が生えてくる原因となる。
【0005】
このような不具合を避けるために、防草シートを地面に固定する際はピン、杭等の固定具を打ち込むが、その打ち込む位置を決めるための位置決めマークは、予め防草シート表面に等間隔に設け、その位置決めマークに従って固定具を打ち込むことにより防草シートを地面に固定する工程が採用されている。
【0005】
防草シートを地上に固定するには、シートを敷設する地面の地質に応じて必要とする間隔で固定具により固定することが必要なため、目印となる位置決めマークは、予め必要な間隔で防草シート表面に設けている。
【0006】
すなわち、河川の土手、田畑の畦畔等の地面、あるいは、鉄道、道路の盛土法面等は地質によって固定具による固定力が異なるため、固定の間隔によっては風等の影響を受け防草シートが吹き上がったり、捲れ上がったりするため、敷設する地面の地質に応じた間隔で固定する必要がある。
【0007】
この間隔は地質によりかなりの差が生じる。つまり、柔らかい地質の場合はより短い間隔で固定が必要な反面、地質が硬い場合は固定具による固定力が強くなるので、比較的長い間隔で固定しても防草シートを充分に地上へ固定する事が可能となる。また、このような観点から、防草シートに設ける位置決めマークは、種々の敷設面の地質に広く対応できるように、より短い間隔で設けることで汎用性を持たせている。
【0008】
防草シート表面に位置決めマークを設ける方法としては、所定間隔で切り込みを入れる方法や、表面に色彩の異なる延伸糸を織り込む方法、またマークを印刷する方法等が提案されている。
【0009】
これらの方法により防草シート表面に位置決めマークを設ける際は、防草シートを色々な敷設面の地質に対応可能な汎用性を持たせるために、固定具による固定力が弱い地質でも固定ができるような短い間隔で位置決めマークを設けておくことが好ましい。しかし、その半面、短い間隔で位置決めマークを設けると、固定具による固定力の高い地質の地面へ敷設する場合は、長い間隔で固定すれば足りるので、位置決めマーク全てに固定具は使用しない。そのため、防草シートの敷設後、固定具を使用しなかった位置決めマークが残る事となる。
【0010】
固定具を使用しなかった位置決めマークが防草シート上に残ると、防草シート表面に切り込みを入れたものの場合は、切り込み部から雨などが防草シートの下に浸み込むと共に、切り込み部から差し込む日光により雑草が生えてくる原因となる。さらに固定具で固定されていない切り込み部に敷設時の張力が作用する結果、機械的強度が低下して破れなどの原因となる問題が生じる。
【0011】
また防草シート表面に色彩の異なる延伸糸を織り込んだ位置決めマークを設けたものでは、その製造工程が複雑となる。また長い間隔で位置決め固定した場合は、固定具と固定具の間に位置決めマークが残ることとなり、敷設後に位置決めマークが目立って、敷設後の美観を損ねるといった問題が生じる。
【0012】
位置決めマークを印刷する方法は、色彩の異なる延伸糸を織り込む方法に比べると製造は容易な反面、色彩の異なる延伸糸を織り込んだ場合と同様に、長い間隔で固定した場合は敷設後に位置決めマークが残るため、位置決めマークが目立って美観を損ねるといった問題は残ることとなる。特に河川の土手等に防草シートを敷設する工事は公共事業が多く、工事完了後の美観は重要な要素となり無視することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】 特開2003−52254号公報
【特許文献2】 特開2004−113101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような従来の欠点に鑑み、シートを敷設した後に、使用されなかった位置決めマークにより美観を損なう事のないシートを提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、シートに設けた位置決めマークを自然環境で溶出或いは脱色する材料で形成することにより解決される。
【0016】
請求項1の発明は、シート表面に所要の間隔で位置決めマークを設け、固定具により地面に固定するシートにおいて、シート表面に設ける位置決めマークを経時変化で消える部材で形成したことを特徴とする。
【0017】
請求項2の発明は、消える部材が水溶性の部材であることを特徴とする。
【0018】
請求項3の発明は、消える部材が、色素および光触媒からなる部材であることを特徴とする
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明では、シート表面に設ける位置決めマークを経時変化で消える材料で形成したので、シートを敷設後、固定具の位置決めに用いられなかった位置決めマークは、経時変化で消えるため、シート表面に不要な位置決めマークが残ることなく美観を損ねる事がない。
【0020】
請求項2の発明では、シート表面に設ける位置決めマークを水溶性の部材で形成したので、シートを敷設後、固定具の位置決めに用いられなかった位置决めマークは、位置決めマークが水溶性であることから、自然環境における雨により溶出するため、シート表面に不要な位置決めマークが残ることなく美観を損ねる事がない。
【0021】
請求項3の発明では、シート表面に設ける位置決めマークを色素および光触媒からなる部材で形成したので、シートを敷設後、固定具による固定に用いられなかった位置決めマークは、位置決めマーク材料に含まれる光触媒の効果により、色素の分解が促進され、位置決めマーク材料自体の自然分解によりシート表面に不要な位置決めマークが残らないので美観を損ねる事がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】 シート表面に位置決めマークが設けられた状態を表した図である。
【図2】 シートを地面へ敷設する状態を表した図である。
【図3】 シートを地面に固定具で固定する様子を表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1において、シート1の幅方向の両端となる端部4には、地面に複数のシート1を敷設する際に、シート1とシート1の端部4を重ねるための重ね合わせ部3に、その長手方向に沿って位置決めマーク2が形成されている。またシート1の幅方向中央面には、重ね合わせ部3の位置決めマークの2倍の間隔で、位置決めマーク2を長手方向に沿って3列に設けている。
【0025】
幅方向中央に設ける位置決めマークは、2倍間隔の3列に限定されるものでなく、シート1の幅が広い場合は列数を3列以上に増やしたり、逆にシート1の幅が狭い場合は位置決めマーク2の表示列数を1列だけにしてもよい。
【0026】
シート1の表面に位置決めマーク2を形成する方法としては、シート1を製造する際、製造ラインにおいて公知の印刷法や転写法を用いて所要の間隔で設けることができる。
【0027】
位置決めマーク2の間隔は、前述した如く、シート1を固定具で地面に固定する際に風等で捲れ上がらないように固定可能な間隔で設けられているが、敷設する地面の地質によって固定具の固定力が異なるため、最も固定力が弱い地面でも固定できる間隔で設けられる。本発明においては最低間隔を50センチとして重ね合わせ部3に形成することにより汎用性を持たせている。
【0028】
位置決めマーク2の形状としては、丸型、多角形型、方形、楕円型等の任意の形状が選択可能で有るが、敷設工事後に残る位置決めマークの美観に対する影響を考慮して、対角寸法7ミリ程度のものが適当である。
【0029】
またシート1の表面上に設けた位置決めマーク2の膜厚は、0.02ミリから1.0ミリ程度が好ましく、更に好ましくは0.05ミリから0.1ミリである。位置決めマーク2の膜厚が厚すぎると、雨による溶出が進みにくいため位置決めマーク2の消失に要する時間が長くなる。逆に位置決めマーク2の膜厚が薄すぎると、シート1の敷設前にシート1の摩擦等により位置決めマーク2が消えてしまい、固定具5を打ち込む際の位置が不明瞭になるため、これらの問題を生じない膜厚として、前記の膜厚となるように位置決めマーク2を設けることが好ましい。
【0030】
シート1を敷設する地面の地質によっては、一般的な地質より固定力の弱い地面もあるため、そのような地面への対応が必要な場合は、特殊な地面向けに位置決めマーク2の間隔をより短い間隔で設けたものを準備する事で対応できる。
【0031】
シートを地面へ敷設する工程としては、図2に示すように、予め位置決めマークを設けて巻回した50メートル程度の長さのシート1を、敷設する地面上で敷設方向に沿って展開し載置する。次に同様に巻回された別のシート1を準備し、シート1の幅方向端部4に設けられた重ね合わせ部3同士が重なるように展開する。次に図3に示すように、重ね合わせ部3に設けられた位置決めマーク2に固定具5を打ち込み固定する事でシート1を地面に固定する。敷設する地面の幅方向長さに応じて、複数のシート1を地面に重ねて展開する事により地面全体を覆うように敷設する。シート1を地面に固定する固定具5としては、杭や固定ピン等を使用することができる。
【0032】
シート1を地面に固定する際に使用する位置決めマーク2は、敷設する地面の地質に応じて、固定力の弱い柔らかい地質の場合は最も短い位置決めマーク2の間隔でシート1を固定具5で地面に打ち込む事により固定する。また地質が硬く固定力が強い地質の場合は、位置決めマーク2全てに固定具5を打ち込むのではなく、位置決めマーク2を一つおき、又は2つおきに固定具を打ち込む事によりシート1を敷設する際の固定作業を減らす事ができる。
【0033】
消える部材としては、水溶性の部材や、色素および光触媒からなる部材が含まれる。
水溶性の部材としては、水溶性材料であれば制限なく、染料系、顔料系の色素材料が含まれ、たとえば、絵具(株式会社サクラクレパス社のサクラ「マット水彩(登録商標)」)、ポスターカラー等が挙げられる。
【0034】
色素および光触媒からなる部材のうち、色素としては、染料系、顔料系の色素材料が含まれる。また、光触媒としては、酸化チタン微粒子、酸化亜鉛微粒子が含まれる。
色素および光触媒からなる部材は、色素および光触媒を含有すればその形態に制限はない。
【実施例1】
【0035】
本実施例では、位置決めマーク2の水溶性材料として、株式会社サクラクレパス社のサクラ「マット水彩(登録商標)」の白色を1重量部に対し、水1重量部を溶媒として、重量比1:1で混合し、位置決めマーク用材料を準備し、公知の印刷法によりシート1の表面に塗布して位置決めマーク2を形成した(膜厚0.1ミリメートル)。当該材料は、シート1が遮光性を高めるため濃暗色材料(ダークグリーン)を用いている事から、視認性を良くするために白色の材料を選択して使用している。
【0036】
位置決めマーク2の間隔は、シート1の重ね合わせ部3の中央に、長手方向に沿って50センチ間隔で形成すると共に、シート1の幅寸法2メートルに対して、幅方向に50センチ間隔で、また長手方向に1メートル間隔で、3列の位置決めマーク2を重ね合わせ部3に設けた位置決めマーク2と平行になるように塗布して形成した。
【0037】
位置決めマーク2は、速乾性の材料を選択していると共に、印刷後の乾燥が完了した時点で巻回できるように、シート製造装置の搬送速度を調整しているが、熱風等を使用すれば乾燥時間を短縮する事ができる。
【0038】
上記のように位置決めマーク2を形成したシート1を地面に敷設したところ、降雨量により左右されるが、3回程度の降雨により、位置決め固定に使用されなかった位置決めマーク2は、シート1の表面から流出して、位置決めマーク2が目立つ事による違和感で美観を損ねることがなくなった。
【0039】
このように位置決めマーク2に用いる材料を水溶性材料で形成した事により、自然環境における数回の降雨で位置決めマーク2が雨で溶けて目立つことを防止できる。また、施工後の自然降雨を待つことなく、シート1の表面を手作業で水洗いし位置決めマーク2を流出させても良い。また、降雨量が台風時のように多い場合は1回の降雨で位置決めマーク2が流出する反面、春雨程度の極めて少ない降雨量の場合は6回程度の降雨がなければ目立たない程度まで流出しない場合も有る。
【0040】
上記実施例では、位置決めマーク2用の材料の一例を示したが、上記材料に限定されるものではなく、水溶性材料であれば染料系、顔料系等のインキ類を含め種々の材料が選択できることはもちろんである。
【0041】
また、水溶性であることのほかに、シート1の色に合わせ、視認性が高まる色の材料を選択することが好ましい。更に印刷性を向上させるために、流動性や乾燥性に優れた材料を選択することが更に好ましい。更に、位置決めマーク2は微量であるため流出による環境への影響は極めて少ないが、流出しても環境に影響が少ない材料を選択することがより好ましい。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、位置決めマーク2の水溶性材料として、株式会社サクラクレパス社のサクラ「マット水彩(登録商標)」の白色0.3重量部、水1重量部、酸化チタン0.3重量部を均一混合して位置決めマーク用材料を準備し、公知の印刷法によりシート1の表面に塗布して位置決めマーク2を形成した(膜厚0.05ミリメートル)。当該材料は、シート1が遮光性を高めるため濃暗色材料(茶色)を用いている事から、視認性を良くするために白色の材料を選択して使用している。
【0043】
位置決めマーク2の間隔は、シート1の重ね合わせ部3の中央に、長手方向に沿って50センチ間隔で形成すると共に、シート1の幅寸法2メートルに対して、幅方向に50センチ間隔で、また長手方向に1メートル間隔で、3列の位置決めマーク2を重ね合わせ部3に設けた位置決めマーク2と平行になるように塗布して形成した。
【0044】
位置決めマーク2は、速乾性の材料を選択していると共に、印刷後の乾燥が完了した時点で巻回できるように、シート製造装置の搬送速度を調整しているが、熱風等を使用すれば乾燥時間を短縮する事ができる。
【0045】
上記のように位置決めマーク2を形成したシート1を地面に敷設したところ、天候などにより左右されるが、晴天日の3日間程度で、位置決め固定に使用されなかった位置決めマーク2は消色して、位置決めマーク2が目立つ事による違和感で美観を損ねることがなくなった。
【符号の説明】
【0046】
1 シート
2 位置決めマーク
3 重ね合わせ部
4 シート端部
5 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート表面に所要の間隔で位置決めマークを設け、固定具により地面に固定するシートにおいて、シート表面に設ける位置決めマークを経時変化で消える部材で形成したことを特徴とするシート。
【請求項2】
消える部材が水溶性の部材であることを特徴とする請求項1に記載のシート。
【請求項3】
消える部材が、色素および光触媒からなる部材であることを特徴とする請求項1に記載のシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−17469(P2013−17469A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172349(P2011−172349)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(511192894)株式会社イトウニット (1)
【Fターム(参考)】