説明

シールした再充電可能なバッテリー

【発明の詳細な説明】
発明の背景 固体電極を持つ再充電可能なバッテリー・セルには、一般に2つのタイプがある。(1)解放または開口された、“フラッデド(flooded)”とも呼ばれるタイプ、及び(2)シールした、通常は“スターブド(starved)”と呼ばれるタイプである。一般に、フラッデド・セルでは電極が電解液に浸漬されるが、スターブド・セルでは電極は電解液に浸漬されない。これら2つのタイプのバッテリーは、バッテリー・セル中で、充電の終了に向けてあるいは過充電の間に発生するガス、即ち酸素及び/または水素を取り扱う方法において主に相違している。
タイプ1は、ガスを大気中に排出し、タイプ2においては、ガス(主に酸素)がシールしたバッテリー・セル内部の水中に再結合される。使用者の立場から見れば、タイプ2が好ましい。シールしたセルは周期的な保守を必要とせず、プレート間の電荷均衡を維持し、任意の場所で操作でき、爆発性ガスを放出せず、さらに環境に腐食性の化合物を漏洩しないからである。
2種類の異なるシールしたセル(タイプ2)が工業的に知られている。一方は消費者に馴染みの深い設計の、円柱状、小型の角柱状または矩形のセルであり、Ni−Cdでは約50Ah、Pb−酸(acid)では約500Ahまでの容量を持つ。他方は(Ni−Cdバッテリーのみが商品化されているが)、組み替えプレート(recombination plate)を採用し、分割した負極プレートを使用し、100Ahまでの容量を得ることが可能である。構造及び性能は異なるが、これらのシールしたセルはともに、以下のような基本概念を共有する。
1.過剰な放電した負極材料を用いることにより水素発生を最小にすることを指向し、あらゆる時間において放電した負極材料を維持するための酸素サイクルによっている。
2.個々の容器設計が限定される、即ち、個々のセルは、密封シールされ、あるセル内で発生したすべての酸素は、そのセル内で再結合されるようにされている(但し、いくつかの例外があり、モノブロック(monoblock)Pb−酸では共通のガス空間が用いられることもある)。
3.負極に酸素を輸送するために、電極とスペーサーとの積層体内のスターブド電解液を用いている。このことは、電極の緊密な積層、小さな電極間隔、及びセル内の電解液レベルの綿密な制御を要求する。
4.多重セル・バッテリーに配置するときは、長寿命を保証し、セル反転、水素発生、過圧力及び過熱を避けるために、セル容量、充電効率、及び温度を正確に適合させることが必要とされる。
一方、開口したセルでは、より粗雑である。製造における綿密な制御は必要とされず、過充電及び過放電または深い放電(deep discharge)に対する感度が鈍く、セル温度及び圧力に対する注意が少なくて済む。これらは、一般に製造が安価であり、大きなセル及び大きなバッテリーに適用可能である。しかしながら、使用者にかなりの負担をかけ、周期的に保守を行い、環境に爆発性のガスを放出し、電解液が飛散し、セル内のプレート均衡が損なわれる。
上述の議論により、シールされて保守は不要であるが、設計、製造及び使用が荒くて済み、大きなセル及び大きな多重セル・バッテリーに適用でき、経済的なコストで容易に製造でき、エネルギー密度の向上をもたらすようなバッテリーの必要性が示されている。
これらの課題のいくつかを解決しようと試みた先の米国特許は、米国特許番号5,143,799であるが、ここで、そのすべてを参考文献として取り入れる。この特許は、シールした再充電可能なニッケル亜鉛または銀亜鉛セルを開示しており、それは、2つの区画に分割され、その一方は亜鉛電極及び第一の水素電極を有し、他方はニッケルまたは銀電極及び第一の水素電極と電気的に接続された第二の水素電極を有する。通常のガス空間が2つの区画に設けられ、水素及び酸素ガスが再結合して水となるようにされ、容器はシールすることができる。他の高価な特徴の中で、このバッテリーは各セルに水素電極を必要とし、よって非常にコストがかかり、また、セルはスターブドである必要がある。
発明の要旨 本発明は、ひとつまたはそれ以上の再充電可能な作動セルを有し、その再充電可能な作動セルを充電する間に、シールしたバッテリー内のガス空間にガスを発生することができるシールした再充電可能な貯蔵バッテリーに関する。バッテリー内には少なくともひとつの調整セルが設けられ、それは、そのガス空間と気体的に連通している。この調整セルは、ガス空間内のガス量を調整するための制御回路によって、充電及び放電が可能である。この制御回路は、前記バッテリーの外部にあるのが好ましい。過剰なガスとは、設定あるいは予め選択したガスの量または濃度または圧力を上回るガスの量または濃度または圧力のことである。典型的には、過剰なガス圧は、約1.5絶対気圧(atm absolute)(ata)より大きい。
本発明は、共通な容器構造を持つ再充電可能なシールしたバッテリーにも関する。そのようなバッテリーは、酸化ニッケル、酸化銀、または二酸化マンガンの正電極、及びカドミウム、鉄、水酸化金属、または亜鉛の負電極を有する。議論は、固体電極を持つ再充電可能なアルカリ・バッテリーに最も普通に用いられる酸化ニッケル正電極とカドミウム負電極との組み合わせに注目する。この組み合わせは、Ni−Cdバッテリーという一般名で知られ、しばしばニッカド(Nicad)と呼ばれる。しかしながら、この議論においては、ほとんどの場合、酸化ニッケルは酸化銀(AgO)及び二酸化マンガン(MnO2)に置き換えられ、カドミウムは亜鉛(Zn)、水素化金属(MHx)、または鉄(Fe)に置き換えられてもよい。従って、本発明を適用できる他のバッテリーの組み合わせは、Ni−Zn、Ni−Fe、Ni−MHx、Ag−MHx、Ag−Cd、Ag−Zn、Ag−Fe、及びMnO2−Znである。また、この基本概念は、(Pb酸として知られた)PbO2−Pbのような非−アルカリの再充電可能なバッテリー系にも適用できる。
本発明は、共通な容器のシールした再充電可能なバッテリーからなってもよく、それは、シールしたハウジング(housing)、そのシールしたハウジング内の複数の第1のタイプのセル、すべてのセルを連続的に接続する手段、シールしたハウジングの壁面を通して、接続された一連のセルの正極及び負極末端に接続された正極及び負極端子、前記シールした区画内にあり、互いに平行に接続され、水素を満たした即ち充填した前記第一のタイプのセルと共通のガス空間を有するひとつまたはそれ以上の第二のタイプのセル、前記第二のタイプのセル内の少なくともひとつの金属電極及び少なくともひとつの水素電極、シールしたハウジングの壁面を通って前記第二のタイプのセル内の水素電極に接続された水素端子、及び、前記第二のタイプのセルを前記負電極に外部接続をなす手段を組み合わせてなる。好ましくは、一般に1絶対気圧より低い正の水素ガス圧が、すべての時間においてバッテリー内で維持されている。
さらに本発明は、水素で満たされ即ち水素が充填されたシールした容器、そのシールした容器内の少なくともひとつの再充電可能なセル、容器内の圧力調節器、シールした容器内の圧力を検出するように実装された圧力検出器、前記容器内の前記少なくともひとつの再充電可能なセルと前記圧力調整器とに共通したガス空間、及び、シールされたまま容器を通って延設され、前記少なくともひとつの再充電可能なセル及び前記圧力調整器に接続された少なくとも3つの端子を有するシールした再充電可能な貯蔵バッテリーと要約することもできる。
さらにまた、本発明は、壁面を持つ容器、その容器内の複数の作動セル、、前記各作動セル中の負及び正電極、前記作動セルのセルを正極及び負極端子間に連続して接続する手段であって、その端子が前記接続された一連のセルを外部に接続するよう容器壁面を通って延設されたもの、前記シールした容器内のひとつまたはそれ以上の調整セル、前記シールした容器内のすべてのセルに共通した水素で満たされ即ち水素を充填したガス空間、前記調整セル中の水素電極及び金属電極、及び、前記調整セル中の前記電極を外部に接続する手段の組み合わせからなる再充電可能なバッテリーと要約することもできる。
よって本発明の目的は、開口したバッテリー及びシールしたバッテリーの利点を持つ再充電可能なシールしたバッテリーを提供することにある。
本発明の他の目的は、周期的な保守を必要とせず、プレート間の電荷均衡を維持し、爆発性ガスを放出せず、腐食性化合物を環境に漏洩しないシールしたバッテリーを提供することにある。
本発明の他の目的は、個々のセルをシールするのとは異なるシールが可能な再充電可能なバッテリーを提供することである。
本発明の他の目的は、再充電可能な調整器を有するシールした再充電可能なバッテリーを提供することにあり、その調整器の放電は水素を発生し、調整器の放電は水素を消費し、開回路において化学量論的な水素及び酸素が消費される。このことにより、個々のセルは開口設計(フラッデド)であり、酸素及び水素両方の発生を処理することのできるシールしたバッテリーを作動させるという特異な可能性が提供される。
本発明の他の目的及び十分な理解は、添付した図面を考慮しながら以下の説明及び請求の範囲を参照することによって得られる。
図面の簡単な説明 図1は、本発明のシールした再充電可能なバッテリーを示す図である。
図2は、充電及び放電におけるバッテリー電圧及び圧力の変化を示すグラフである。
図3も、充電及び放電におけるバッテリー電圧及び圧力の変化を示すグラフである。
図4は、試験バッテリーの140サイクル以上に渡るバッテリー容量の変化を示すグラフである。
図5は、調整器の充電及び放電における調整器電圧及びバッテリー圧力の変化を示すグラフである。
好ましい実施態様の説明 図1は、シールした再充電可能なバッテリー10を模式的に示しており、密封シールされた容器即ちケース様ハウジング12を形成する壁面11を有している。このバッテリーは、少なくともひとつの第一のタイプの作動セル13を備えている。通常このバッテリーは、そのようなセル13を複数備えているが、ここでは10個のセル13が示されている。液体不透過性の障壁14が、各セル間を分離し、各セルは少なくともひとつの正電極15及び少なくともひとつの負電極16を有している。例示したバッテリーにおいては、各セルにおいて、2本の負電極16と1本の正電極15が示されている。本発明を、Ni−Cdセル及びCd−H2調整器を用いて説明するが、原理的には、作動Ni−Cdバッテリー(Ni−Fe、Ni−Zn、Ag−Zn、Pb−PbO2、Ni−MHx、等)を、数種のM−H2型の調整セルと組み合わせて用いることが可能であることを記しておく。ここで、MはCd、Zn、Fe、Pb、等といった任意の適当な可逆的金属電極を表している。
作動セル13は、数個の開口した、僅かにフラッデドなNi−Cdセルを導体17で連続的に接続したものを並べた連続体であり、その一端はシールを保ったまま容器12の壁面を通して外部正極端子18に接続されている。連続体の他端は、容器12の壁面を通して外部負極端子19に接続されている。
本発明によれば、シールしたケース12の内部に、作動セルのための調整器が備えられている。この調整器は、水素を発生または消費でき、酸素を消費することができる。この好ましい実施態様では、調整器は補助セル22である。これは、シールされたケース12内にはあるが、液体不透過性障壁23によって、作動セルからは電気化学的に分離されている。調整セル22は、少なくともひとつの金属電極24及び少なくともひとつの水素電極25を有している。この水素電極25は、導体26によって、容器12の壁面を通って外部水素端子27に接続されている。調整器の主要な機能は、水素を発生または逆に水素を消費して、作動セル13の均衡を保つことにあるので、この端子27を“水素”端子と呼ぶ。この調整セル22と作動セル13とは、共通のガス空間28を共有し、水素と酸素は自由に混合して結合する。逆に、各セルが、その上部に個々のガス空間を有し、これらガス空間のすべてが互いに気体的に連通するようにしても良い。水素電極25は、この分野において、燃料電池即ちニッケル−水素電池から、触媒電極として知られている。この電極は、水素に対して高い活性を持たなければならず、低圧で作動しなければならず、アルカリ性電解液中で安定でなければならない。好ましいアルカリ性電解液は、この分野で良く知られているように、水酸化リチウム及び/または水酸化ナトリウムを幾分加えた水酸化カリウムである。作動セルの電解液は、調整器の電解液と異なっていても良いが、すべてのセルが共通の蒸気圧下にあるので、2つの電解液の全活量は等しくするのが好ましい。調節セルは“スターブド”であり、電解液はプレートを濡らすのに十分なだけで、セパレーターは、水素電極への効率的なガス拡散を保証している。
シールした容器12は、調整器の金属電極に接続される第4の端子を有していても良い。しかし、バッテリー及び調節器の負電極を、図1に示すように共通にする方が経済的である。
作動 バッテリーが放電しているときは、このバッテリーは、通常の開口したバッテリーのように作動し、開口したフラッデド電解液バッテリーのすべての利点を有しているが、環境からはシールされている。
充電状態では、このバッテリーは、ガス発生が始まるまでは通常の開口バッテリーのように作動する。
調整器における反応ケース1:酸化ニッケル電極での好ましい酸素の発生 酸素はニッケル電極上で生成され、調整器セル中で、バッテリー内のH2と化学的に再結合して水を生成する。
1.1 水素電極における化学反応:(1.1) H2+1/2O2−−H2O これは、バッテリー内の圧力を低減させ、再結合反応の発熱性によって急激な温度上昇を起こす。水素圧力を回復させるために、我々は調整器を以下の反応1.2に従って活動させる。
1.2 調整器の電気化学的放電:(1.2a) Cd−2e-+2(OH)−−Cd(OH)(カドミウム電極)
(1.2b) 2H2O+2e-−−H2+2(OH)(水素電極)
1.2aと1.2bを加えると(1.2c)となる。
(1.2c) Cd+2H2O−−Cd(OH)+H2 もし、バッテリー内のすべての水素が反応(1.1)によって消費され、反応(1.2)が活動されないと、反応(1.3)が起こる。
1.3 カドミウム電極での化学反応:(1.3) Cd+1/2O2+H2O−−Cd(OH)ケース2:好ましい過充電におけるカドミウム電極 このケースでは、セル内のH2圧力及びバッテリー電圧が上昇する。水素圧力を維持するために、水素は調整器内で反応2.aに従って消費される。
2.a 調整器セルの充電:(2.a) Cd(OH)+H2−−Cd+2H2O(水素圧力減少)
これは、逆反応(1.2c)と等価である。
ケース3:過充電におけるニッケル及びカドミウム このケースでは、酸素及び水素が生成され、調整器セルの水素電極で化学的に再結合されて水と大量の熱を生成し(反応1.1)、調整器は不活性(開回路)モードにある。
圧力の増大、圧力の低下、電圧の上昇、及び温度の上昇は、すべてが過充電状態を示すものであり、充電速度を低下させたり充電を終了させたりする信号をトリガー(trigger)する。充電におけるバッテリー電圧の上昇は、セル当たり300ミリボルトのオーダーである。充電中の温度上昇は、5−10℃のオーダーである。好ましくは、約0.1気圧の全ガス圧力の上昇が、充電速度の変化をトリガーする。好ましくは、約1気圧の全ガス圧力の上昇により、充電が終了される。本発明によるバッテリーは、過充電状態がガス圧力の変化を通して即座に検出されるので、高速で充電することができる。熱発生のほとんどは、調整器において水素と酸素が再結合して水を生成するときに生ずる。
図1において、制御回路30が示されているが、これには、圧力トランスデューサ31、好ましくは調整器セル22に配置された温度プローブ32、及び端子18及び19との間の電圧が、導体33を介して入力される。これらが制御回路に入力されることにより、制御回路が選択スイッチ34を制御して、充電器35、負荷36、あるいは実際にはバッテリーの作動セルを開回路37状態にするよう選択することができる。制御回路は、他の選択スイッチ40を制御して、調整器セル22を充電器41、放電器即ち負荷42、または開回路端子43に選択的に切り換えることができる。
開回路では、バッテリーは好ましい作動方法における、名ばかりの(nominal)水素圧で作動する。酸化ニッケル電極が開回路で酸素を発生するときは、その酸素はセル内の水素と反応して水を生成する。このことは、セル内の圧力を低減させる。この効果に中和するために、調整器を放電(反応1.2c)して水素を発生させる、または酸素発生を最小にするため、高抵抗38のような外部負荷を介して作動セルを低電圧に維持することができる。酸素ガスは、水素電極を不活性化即ちそれに悪影響を与えるので、ガス空間の酸素ガスは最小にするのが好ましい。
Ni−Cdセルは、通常の開口設計と同様に作動する。原理的には、あらゆるタイプのNi及びCd電極を用いることができるが、過剰の電解液は極めて少なくできる。これにより、作動セルは僅かにフラッデド設計となる。
調整器セル22は、全バッテリーの過充電を留保するように、十分なカドミウム容量を持たなければならない。例えば、バッテリーが、各々が100Ahの10個の連続したNi−Cdセルと1個の調整器セルから構成されるとき、そして水素発生無しで酸素を発生させるために合計10%の正電極容量を望む場合は、補助セルの金属Cd容量は少なくとも:100×10×10%=100Ahでなければならない。
バッテリーの均衡をとることは、設計基準の一部である。化学的な及び圧力の均衡を得るために、調整器セルは、過充電緩衝材及び充電検出器の末端として提供する。セルに、部分的に充電したカドミウム電極及び中間の水素圧力を組み込んだ名ばかりの作動ウインドウ(window)に戻るのが好ましい。調整器のカドミウム電極の充電状態、及びセルのガス圧力は、調整器を充電または放電することによって、バッテリーの寿命の間に渡って調節することができる。
典型的には、深く放電されたバッテリーは、いくらかの時間の後、不均衡になり、弱いセルは反転してH2ガスを発生する。本願のバッテリーでは、共通のガス空間での圧力増大は圧力検出器で検出可能であるので、このことも検出することができる。従って、深い放電も検出することができ、電気自動車や他の牽引バッテリーのような応用において、信号または表示器を活動させ、バッテリーが再充電を必要としていることを知らせることができる。また、調整器セルは、H2ガスを消費するために活性化することもできる。さらに、調整器セルは、バッテリーの作動セルの充電または放電とは無関係に充電または放電すること、及びその逆も可能である。
電解液及び水の均衡も、バッテリーの均衡の一部である。過充電の間、ガスは作動電極で発生し、補助セル内で水を生成する。これにより、作動セルにおける電解液の濃度の上昇と、補助セルにおける電解液の濃度の低下をもたらす。しかし、すべてのセルは共通のガス空間28を共有している。希釈電解液の蒸気圧は濃縮電解液の蒸気圧より高いので、水は補助セルから蒸発して作動セル内で凝集する。これは、電解液の活量が等しくなるまで起こる。その結果、過充電の間に補助セルに移動したすべての水は、時間に渡って、作動セルに逆戻りし、結果的に、水即ち電解液の移動はゼロになる。このことは、自己均衡状態をもたらす。
本発明のこの態様の利点は、以下の通りである。
1.重量、容量及びコストを削減する。
a.過剰のCdOが無い。
b.過剰の電解液が無い(開口設計に比較して)。
c.10個のセルに対して単一の低圧の容器。
d.10個のセルに対して、わずか3つの端子。
2.圧力変動及び温度の急上昇を介して過充電が検出される。
3.大きな多量セルバッテリーに適用可能である。過充電または反転した第1のセルは、バッテリーの全圧力及び温度の均衡に影響を与え、電気的状態を変更すべき信号を発生する。
4.許容される製造に対する要求が低い。
5.開口セル・バッテリーの欠点を持たない。
6.バッテリー内の水素雰囲気が、電極及びセパレーターを保護し、シールしたNi−Cd電池に典型的な酸素雰囲気に比較して部材の寿命が長くなる。
実施例及び試験例 本発明の基本的概念を、0.4Ahの容量を持つ5−セルのNi−Cdのシールした再充電可能なバッテリーを用いて確認した。
作動セル13には、繊維状のニッケル及びカドミウム電極を、調整器22には、カドミウム及び水素電極を採用した。調整器のカドミウム電極の容量は0.40Ahであった。
水素電極は、この分野で知られているニッケル−水素電池で用いられるのと同様の設計にした。活性層は、白金(4mg/cm2)と、テフロンとして知られデュポン社から市販されているテトラフルオロエチレンポリマーとの混合物を持ち、それらがニッケル・スクリーンに圧着されている。また、低圧で水素の早い拡散を可能にするように、テトラフルオロエチレンポリマーのみからなる拡散層も有している。
セルは連続的に接続され、1個の調整器セルとともに容器に収納された。容器は0.5気圧の水素で満たした。このバッテリーは3個の端子を持ち、ひとつは作動セルの正電極、ひとつは調整器の正電極、他のひとつは作動セルと調整器に共通の負電極である。上記のバッテリーを、図2−5に示す試験に使用した。
この設計のものを、図2−4に示すように、室温で充電及び放電の両方のモードで、0.5A(1.25C5)でサイクルさせることによって試験した。充電は、圧力が0.1気圧変化することによって停止し、放電は5Vまで低下することにより停止した。これらの条件は図2−4に適用した。
図2は、室温における充電及び放電中のバッテリー電圧及び圧力の変化を示す。酸素発生による幾分の圧力増加の後、水素電極において酸素と水素とが再結合して水を生成する結果圧力が減少する。この圧力減少が充電器をトリガーし、充電速度を低下させるか充電を停止する。充電は、1.8Vよりわずかに上昇し、約0.1気圧圧力が低下することによって停止される。水素圧は、調整器を放電することによって回復する。このとき、調整器は活性である。
図3も、室温における充電及び放電中のバッテリー電圧及び圧力の変化を示す。過充電が起こってO2及びH2が発生し、圧力上昇を招く。充電中の圧力上昇は、放電中の圧力減少と同様である。このとき調整器は不活性であり、水素及び酸素の化学量論的量の消費に用いられる。これは、酸素と水素の全発生量が化学量論的であることを示している。図3において調整器は電気的に不活性であり、それは、酸素と水素を再結合させるが、充電または放電ではない。
図4は、図3と同様な試験によるものであり、上記のバッテリーが140を越えるサイクルのバッテリー容量を持つことを示す。全ガス発生量が化学量論的であるので、調整器は不活性である。図から明らかなように、このバッテリーは安定した性能を有している。
図5は、本発明によれば、調整器が、バッテリー内のガス圧を効果的に制御するために、また、非常にわずかなエネルギー消費によってバッテリーないのガス圧変化を大いに変化させるために、室温で充電及び放電することができることを示している。
上述したように、本発明は、Ni−Cdバッテリー以外にも適用できる。それらのうちのいくつかの性能及び特徴を以下に説明する。
1.Zn−H2調整器を持つNi−Zn a.このバッテリーは、個々のセルを分割することなく、酸素及び水素を消費する手段を提供する。これは、米国特許番号5,143,799に記載されたものとは反対である。
b.この系では、よりよい過充電回復を得るためのフラッデド電解質設計と、亜鉛イオン(ZnO2-2)泳動を最小にするためのスターブド電解質とを交換してもよい。
c.この設計では、水素圧を回復させるために、正のセル電圧においてニッケル電極で水素を生成することができる。
2.Ag−Zn 直前に記載したa、b、及びcの議論がここでも適用される。さらに、両方の電極が非常にわずかな過充電しか要求しないので、調整器の使用、即ちその容量(過充電回復)を極めて低減できる。
3.Ni−MHx(ニッケル金属水素化物)
a.この系は、一般に水素圧で作動する。しかし、平衡圧は温度依存性である。よって、充電調節及び停止は、圧力信号ではなく温度信号によって行われなければならない。
b.作動セルの水素化金属電極が酸素還元を補助する必要がないので、水素化金属電極の寿命は、通常の設計のNi−MHxセルに比較して著しく向上する。後者の反応は水素化金属を劣化させることが知られている。
c.本発明は、通常のシールしたセル設計において作動させるのが実用的ではない大きなニッケル水素化金属セルを構成することを可能にする。
d.作動圧は、Ni−Cdモノブロックよりも、数気圧ほど高いように思われる。
e.容積をほとんど損なうことなく、円筒型の容器とすることが可能であると思われる。円筒型容器は、角型容器より高い圧力に耐えるので有利である。
4.Cd−H2またはFe−H2調整器を持つニッケル鉄(Ni−Fe)
a.この設計は、この分野でまだ知られていないニッケル鉄バッテリーを可能にする。
b.鉄電極は充電効率が低いので、調整器の容量は、Ni−Cdバッテリーの調整器よりも大きくすべきである。
5.Pb酸(Pb−酸)
このバッテリーでは、調整器の反応は以下のようである。
PbSO4+H2−−Pb+H2SO4 Pb−酸バッテリーはフラッデドで得られ、VRLAで知られる半シールしたバルブ調節Pb酸構造である。
VRLAバッテリーの寿命は、フラッデド・バッテリーの寿命よりもかなり短い。これは、VRLAバッテリーのバルブが時々開き、過剰のガスを逃してスターブド・セルを乾燥させるからである。本発明は、フラッデド・セルを用いたシールしたバッテリーを提供する。よって、個々のセルは過剰の電解液を有しているので、乾燥前の寿命は著しく長くなる。
この開示は、次の請求の範囲の開示及びこれまでの説明を含んでいる。本発明を、有る程度または特に好ましい形態によって説明したが、これらの好ましい形態の開示は、例として示したにすぎず、後に請求する本発明の思想及び範囲から離れることなく、回路や回路部品の組み合わせ及び変更といった詳細における多くの変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ひとつまたはそれ以上の再充電可能な作動セルを有し、前記再充電可能な作動セルを充電する間に、シールしたバッテリー内のガス空間にガスを発生することができるシールした再充電可能な貯蔵バッテリーにおいて、前記バッテリー内に、前記ガス空間と気体的に連通した少なくともひとつの調整セルが設けられ、前記調整セルが、前記ガスの量を調整するための制御回路によって充電及び放電されることを特徴とするバッテリー。
【請求項2】前記調整セルが、前記ガス空間内の水素ガスを消費または生成することのできる金属水素セルであり、それによってガス空間内のガス量を調整することを特徴とする請求項1記載のバッテリー。
【請求項3】前記ガス空間が、前記再充電可能な作動セルのすべて及び前記調整セルに共通であり、前記ガス空間が水素で充填されることを特徴とする請求項1記載のバッテリー。
【請求項4】バッテリーを電気回路に接続するための少なくとも3つの電気的端子を有し、それらの端子の少なくとも1つが、前記金属水素セルの水素電極に接続され、それを介して、前記調整セルが、前記再充電可能な作動セルの充填及び放電とは無関係に充電及び放電可能であることを特徴とする請求項2記載のバッテリー。
【請求項5】前記ガス空間内のガス圧を検出する手段を有し、その検出されたガス圧が、前記調整セルの充電及び放電を制御するために用いられることを特徴とする請求項1記載のバッテリー。
【請求項6】前記バッテリーの温度を検出する手段を有し、その検出された温度が、前記調整セルの充電及び放電を制御するために用いられることを特徴とする請求項1記載のバッテリー。
【請求項7】シールしたハウジング;
シールしたハウジング内の、複数の再充電可能な作動セル;
前記作動セルを、互いに電気的に連続した関係に接続する手段;
シールしたハウジングの壁面を通して、連続して接続された作動セルの正極末端及び負極末端に各々接続された正極端子及び負極端子;
前記シールしたハウジング内にあり、前記作動セルと共通のガス空間を有する少なくともひとつの調整セル;
前記調整セル内の金属電極及び水素電極;
シールしたハウジングの壁面を通して、前記調整セル内の水素電極に接続された水素端子;及び前記調整セルの前記金属電極を外部接続させる手段からなることを特徴とするシールした再充電可能な貯蔵バッテリー。
【請求項8】前記各セルに電解液を有し、前記作動セルと前記調整セルの電解液の混合を防止する手段を備えることを特徴とする請求項7記載のバッテリー。
【請求項9】前記シールしたハウジングの、前記共通のガス空間内の圧力に応答するように接続された圧力検出器を有することを特徴とする請求項7記載のバッテリー。
【請求項10】前記調整セルが、前記共通のガス空間内の水素を生成または消費することができることを特徴とする請求項7記載のバッテリー。
【請求項11】調整セルが、バッテリーの作動セルの充電または放電とは無関係に充電または放電できることを特徴とする請求項7記載のバッテリー。
【請求項12】シールしたハウジング;
前記シールしたハウジング内部の少なくともひとつの再充電可能なセル;
前記シールしたハウジング内部の圧力調整セル;
前記シールしたハウジング内部の圧力を検出するために設けられた圧力検出器;
前記シールしたハウジング内部の、前記再充電可能なセルの少なくともひとつと前記調整セルに共通したガス空間;及びシールされた状態でハウジングを通って延設され、前記再充電可能なセルの少なくともひとつと、前記圧力調整セルとに接続された少なくとも3つの端子の組み合わせからなることを特徴とするシールした再充電可能な貯蔵バッテリー。
【請求項13】前記シールしたハウジングの共通ガス空間が水素を含むことを特徴とする請求項12記載のバッテリー。
【請求項14】前記共通ガス空間内のガス圧が、前記圧力検出器に応じて前記調整セルを充電または放電することによって調整されることを特徴とする請求項12記載のバッテリー。
【請求項15】前記3つの端子のひとつが、前記圧力調整セルにのみ接続されることを特徴とする請求項12記載のバッテリー。
【請求項16】バッテリーの充電が、共通ガス空間の圧力が所定の範囲を上回るか下回るか、温度が所定の値を越えるか、バッテリーの電圧が所定の値を越えたときに停止されることを特徴とする請求項14記載のバッテリー。
【請求項17】再充電可能なセルが、ニッケル−カドミウム、ニッケル−亜鉛、銀−亜鉛、ニッケル−水素化金属、ニッケル−鉄、マンガン−亜鉛、及び鉛−酸(Pb−PbO2)のいずれかであることを特徴とする請求項12記載のバッテリー。
【請求項18】調整セルが、金属−水素可逆セルからなることを特徴とする請求項12記載のバッテリー。
【請求項19】調整セルが、カドミウム−水素、、鉄−水素、亜鉛−水素、水素化金属−水素、及び鉛−水素セルのいずれかの再充電可能なセルであることを特徴とする請求項18記載のバッテリー。

【第2図】
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【第1図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【特許番号】特許第3454510号(P3454510)
【登録日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【発行日】平成15年10月6日(2003.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−520060
【出願日】平成6年2月16日(1994.2.16)
【公表番号】特表平8−509835
【公表日】平成8年10月15日(1996.10.15)
【国際出願番号】PCT/US94/02018
【国際公開番号】WO94/021000
【国際公開日】平成6年9月15日(1994.9.15)
【審査請求日】平成13年1月29日(2001.1.29)
【出願人】(999999999)アクミ エレクトリック コーポレーション
【参考文献】
【文献】特開 昭64−67878(JP,A)
【文献】特開 平5−36442(JP,A)