説明

シールドトンネルにおける搬送システム。

【課題】狭いシールドトンネルの空間で、経済的にセグメント台車が往復可能である搬送システムを提供する。
【解決手段】車輪を備えた軌道搭載台車と、設備・軌道搭載台車を使用し、あるいは、軌道搭載台車と転用長枕木を使用する。設備・軌道搭載台車、あるいは転用長枕木の上には、インバート軌道と同一径間の軌道と後続設備とを並列に設置する。台車上軌道は、その一端はインバート軌道と接合し、その他端は設備・軌道搭載台車上の軌道、あるいは転用長枕木上の長枕木上軌道と接続するように勾配部分を設けて設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後続設備が配置されて利用空間が狭くなっているシールドトンネルにおいて、経済的にセグメントの搬送などが可能となる搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特に断面の小さいシールドトンネルにおいて、後続設備が配置されていると、利用空間が狭くなり、セグメントなどの搬送に支障が生じる。
そのために従来のシールドトンネルにおける搬送システムでは、次のような構成を採用して解決を図っていた。
1) 断面がほぼ円形のシールドトンネルにおいては、横断距離は中心に近づくほど長くなる。そこで後続設備の側面を、セグメント台車を通過させるために、長い枕木を使用して通過を可能とする構造が開発されている。(A構造)この構造では全線にわたって幅員が広くなるため安全性の高い構造である。
2) インバート軌道の外側に別の軌道を設置し、セグメント台車の上部空間をまたぐ門型の台車に後続設備を搭載させる構造。(B構造)この構造では、長い枕木を全線に敷設、撤去するA構造と比較して仮設費用を大幅に削減できる効果があった。
3) 後続設備をシールド掘進機の内部に組み込んで、後続設備を搭載する台車を不要とする構造。(C構造)後続設備が運搬経路の途中にないから、セグメント台車の通過には問題がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記した従来のシールドトンネルにおける搬送システムにあっては、次のような問題がある。
1) A構造にあっては、利用可能な幅員を拡大する必要のない位置を含めて全線にわたって長い枕木を設置する必要があり、その材料費、敷設費および撤去費が必要となり、不経済なものである。
2) B構造にあっては、外側に受け台が設置してあるために、利用できる空間には制限があった。また外側軌道とその受け台を順次前方に移設する必要があり、人力移設の限界から大きな断面のシールドトンネルには適用しにくかった。
3) C構造は、シールド掘進機それ自体の改良であって、後続設備をシールド掘進機にビルトインするものであるから、シールド掘進機の価格が高騰するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために、本発明のひとつのシステムは、ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、車輪などを備えた軌道搭載台車と、設備・軌道搭載台車を使用し、インバート軌道の上を走行する軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道を設置し、インバート軌道を跨いでその外側を走行する設備・軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道と後続設備とを並列に設置し、台車上軌道は、その一端はインバート軌道と接合し、その他端は設備・軌道搭載台車上の台車上軌道と接続するように勾配部分を設けて設置したシールドトンネルにおける搬送システムを特徴としたものである。
【0005】
本発明の他のシステムは、ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、車輪などを備えた軌道搭載台車と、インバート部の横断寸法よりも長い転用長枕木を使用し、インバート軌道の上を走行する軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道を設置し、インバート軌道を跨いでその上部空間に掛け渡す転用長枕木には、その上面に、インバート軌道と同一径間の長枕木上軌道と、後続設備の移動のための後続設備用軌道とを並列に設置し、転用長枕木は、シールド掘進機の前進とともに、坑口側の転用長枕木をシールド掘進機側へ転用して、インバート軌道の上部空間に掛け渡し、台車上軌道は、その一端はインバート軌道と接合し、その他端は転用長枕木上の長枕木上軌道と接続するように勾配部分を設けて設置したシールドトンネルにおける搬送システムを特徴とするものである。
【0006】
本発明のさらに他のシステムは、ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、車輪を備えてインバート軌道の上を走行可能な移動桟橋を使用し、移動桟橋の上面はインバートの幅よりも広い幅を備え、この上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道、および後続設備を設置し、さらに移動桟橋は両側に傾斜部を設け、台車上軌道は、両側の傾斜部の下端がインバート軌道と接合するように構成した、シールドトンネルにおける搬送システムを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシールドトンネルにおける搬送システムは以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 本発明のシステムは、局部的に軌条のレベルを上げて、そこだけ利用可能な幅員を増加させ、その他の場所では従来のインバート軌道を利用するものであるから、拡幅が不要な位置まで全線にわたって長い枕木を設置する構造と比較してきわめて経済的である。
<2> 局部的に幅員を拡大させた部分を、シールド掘進機の前進とともに前進させるものである。したがって、一定量の資材だけで、長いシールドトンネルのすべての掘進に対応することができ、きわめて経済的である。
<3> 工事の終了時に、仮設資材の撤去を全線に渡って行う必要がなく、撤去工程が短縮するから、工期が短縮し、コストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
<1>前提条件。
本発明は、断面がほぼ円形のシールドトンネルAにおいて利用する搬送システムである。
そのようなシールドトンネルAでは、その横断距離は中心に近づくほど長くなり、それだけ利用可能な幅員が広くなる。
さらにシールドトンネルAの床面には、全線にわたってインバート軌道1が単線の状態で敷設されていることが前提である。
インバート軌道1とは、シールドトンネルAの床面、すなわちインバートに2本のレールを設置した軌道であり、基本的にはこのインバート軌道1を利用して、切羽までのセグメントなどの資材の運搬を行う。
【0010】
<2>使用する台車。
本実施例の構成では、下記の二種類の台車を利用する。
すなわち、軌道搭載台車2と、設備・軌道搭載台車3の二種類である。
各台車とも、複数の台車で構成し連結して使用する。
切羽、シールド掘進機A1の近い位置には、複数台の設備・軌道搭載台車3を配置し、その坑口側には複数台の軌道搭載台車2を連結する。
そして、すべての軌道搭載台車2と設備・軌道搭載台車3とを、シールド掘進機A1に連結しておく。
すると、シールド掘進機A1の前進にしたがって軌道搭載台車2も設備・軌道搭載台車3も前進するので、あえて別の移動手段、移動作業を採用する必要がない。
【0011】
<3>軌道搭載台車。
【0012】
<3−1>軌道搭載台車の構造。
軌道搭載台車2は、その下に車輪21を備え、その上面のほぼ中央にはインバート軌道1と同一径間の台車上軌道22を設置してある。
軌道搭載台車2の車輪の間隔は、インバート軌道1の径間と等しく、車輪をインバート軌道1に搭載して移動が可能である。
軌道搭載台車2の上面に搭載した台車上軌道22は、やはりインバート軌道1と等しい径間を介して設置した2本のレールで構成する。
【0013】
<3−2>台車上軌道の傾斜。
台車上軌道22の設置高さは、軌道搭載台車2の床の厚さによって異なり、軌道搭載台車2の床面の厚さ次第で、インバート軌道1の位置からの高さを決定することができる。
たとえば高さの高いH鋼を配置すれば、その上に設置した台車上軌道22の設置高さは、インバート軌道1から離れる位置に設定することができ、低いH鋼などを配置すれば、台車上軌道22の設置高さはインバート軌道1の設置高さに接近する。
そして、複数の軌道搭載台車2において、徐々に設置高さを変更して台車上軌道22に傾斜を設ける。
さらに最も坑口に近い位置に配置する軌道搭載台車2では、台車の端部からはね出したレールの端を、インバート軌道1に擦り付ける状態で設置しておく。
その結果、台車上軌道22をインバート軌道1に接合することができる。
すると、インバート軌道1上を走行してきた資材運搬用の台車、例えばセグメント台車を、インバート軌道1上の走行から、軌道搭載台車2上の台車上軌道22の上の走行へと移すことができる。
【0014】
<4>設備・軌道搭載台車(図4)。
設備・軌道搭載台車3は、インバート軌道1を跨いでその外側を走行する台車である。
インバート軌道1を跨いでその外側を走行できるために、設備・軌道搭載台車3の下面に設置した車輪32などの間隔は、インバート軌道1の径間よりも広く配置する。
その結果、設備・軌道搭載台車3の床面は高い位置となり、広い幅員の台車を構成することができる。
この設備・軌道搭載台車3には、その上面にインバート軌道1と同一径間の台車上軌道31と、後続設備33とを並列に設置する。
台車上軌道31と後続設備33を並列して設置できるのは、上記したように床面の高さが高くなり、広い幅員が利用可能となるからである。
したがって設備・軌道搭載台車3の上面の台車上軌道31の位置は、中心ではなく一方の側面に偏った位置に配置されることになる。
ただし幅員に余裕がある場合には台車上軌道31を中心に配置し、両サイドに後続設備33を配置することもできる。
その場合には台車上軌道31が、インバート軌道1と同一直線上に配置することができ、後続設備33の延長を短縮できるという利点がある。
設備・軌道搭載台車3上の台車上軌道31の高さは、前記のように傾斜させた軌道搭載台車2上の台車上軌道31とは異なり、すべて一体の高さに維持してある。
【0015】
<5>台車上軌道の位置の調整。
前記したように軌道搭載台車2のほぼ中央には台車上軌道22が設置してある。
一方、通常は設備・軌道搭載台車3の上面の台車上軌道31は、一方に偏った位置に設置してある。
したがって、軌道搭載台車2の上の台車上軌道22と、設備・軌道搭載台車3の上の台車上軌道31とはそのままでは接合しない。
そこで1台、あるいは複数台の軌道搭載台車2の上の台車上軌道22は、徐々に中心からずらした曲線状に配置し、軌道搭載台車2上の台車上軌道31と、設備・軌道搭載台車3上の台車上軌道31とがスムーズに接合できるように構成する。
【0016】
<6>台車上軌道の接合。
複数台の軌道搭載台車2上の台車上軌道22と、複数台の設備・軌道搭載台車3上の台車上軌道31とは、すべて1本の軌道として接続する。
軌道搭載台車2のもっとも坑口よりの台車上軌道22は、インバート軌道1と接合し、もっともシールド掘進機A1よりの台車上軌道22は設備・軌道搭載台車3上の台車上軌道31に接続する。
【0017】
<7>作動。
坑口からインバート軌道1上を走行してきた資材運搬用のセグメント台車などは、軌道搭載台車2に至って、その上の台車上軌道22に乗り移る。
そして台車上軌道22の傾斜の沿って昇り、一定の高さにある台車上軌道22の上を走行する。
そのまま走行して設備・軌道搭載台車3の上の台車上軌道31を走行する。
設備・軌道搭載台車3の上では、後続設備33は台車上軌道31と平行して設置してあるから、セグメント台車は、後続設備33の側面をスムーズに移動してシールド掘進機A1に至る。
シールド掘進機A1においてセグメントなどを降ろし、再度台車上軌道31、22上を走行して坑口までもどる。
このように、長いシールドトンネルAの一部の床だけを高い位置に設置してセグメント台車の回避走行を可能として、その他の位置におけるセグメント台車の走行はインバート軌道1によって行うものである。
そして高い位置に設置した設備・軌道搭載台車3、その設備・軌道搭載台車3に勾配をもって台車上軌道31を接続するための軌道搭載台車2は、シールド掘進機A1の前進にひきづられて前進するから、特別な作業を必要とせずに常にセグメント台車は後続設備33の存在によって影響を受けることがなく、スムーズに搬送作業を行うことができる。
【0018】
<8>ソリの使用。
以上の記載は、軌道搭載台車2、設備・軌道搭載台車3ともに車輪21、32を使用する場合について説明した。
しかし車輪21、32に代わってソリを使用することも可能である。
この場合にソリとは、先端に曲面を形成した鋼製の部材であり、その曲面によってインバートの上を滑動してゆくことができる。
したがって「車輪など」という表現はソリなどの公知の滑動手段を含む意味であり、他の実施例においても同様である。
【0019】
次に他の実施例について図5,6において説明する。
【実施例2】
【0020】
<1>前提条件。
本実施例も、断面がほぼ円形のシールドトンネルAにおいて利用する搬送システムである。
そのようなシールドトンネルAでは、その横断距離は円の中心に近づくほど長くなり、それだけ利用可能な幅員が広くなる。
さらにシールドトンネルAの床面には、全線にわたってインバート軌道1が単線の状態で敷設されていることが前提である。
インバート軌道1とは、シールドトンネルAの床面、すなわちインバートに2本のレールを設置した軌道であり、基本的にはこのインバート軌道1を利用して、切羽までのセグメントなどの資材の運搬を行う。
【0021】
<2>軌道搭載台車。
本発明の構成では、軌道搭載台車2だけを利用する。
この軌道搭載台車2の構成は、前記で詳細に説明してあるとおりのものであり、車輪21を備えてインバート軌道1の上を走行する台車であり、その上面には、台車上軌道22を搭載してある。
この台車上軌道22の径間は、インバート軌道1と同一である。
複数の軌道搭載台車2において、徐々に設置高さを変更して台車上軌道22に傾斜を設ける。
さらに最も坑口に近い位置に配置する軌道搭載台車2では、台車の端部からはね出したレールの端を、インバート軌道1に擦り付ける状態で設置しておく。
その結果、台車上軌道22をインバート軌道1に接合することができる。
すると、インバート軌道1上を走行してきたセグメント台車を、インバート軌道1上の走行から、軌道搭載台車2上の台車上軌道22の上の走行へと移すことができる。
【0022】
<3>転用長枕木。
本実施例では、設備・軌道搭載台車3を使用せず、それに代わってインバート部の横断寸法よりも長い転用長枕木4を使用する。
この転用長枕木4は、インバートの横断寸法よりも長い寸法を有するから、シールドトンネルAの軸方向と直交する横断方向に設置すると、インバートよりも高い位置に、インバート軌道1を跨いでその上部空間に掛け渡すことができる。
この転用長枕木4にも、その上面にインバート軌道1と同一径間の長枕木上軌道41を搭載する。
さらに転用長枕木4の上には、長枕木上軌道41と平行して、後続設備42用の軌道43を敷設する。
【0023】
<4>後続設備。
シールド掘進機A1の掘削に要する装置、機器を搭載した後続設備42は、台車形式に車輪などを取り付けて移動、滑動可能に構成する。
そのために後続設備42用の軌道43を、転用長枕木4の上に敷設する。
この後続設備42用軌道も、転用長枕木4の転用に伴って、簡単に設置、解体して前方へ移動敷設できる構成を採用する。
【0024】
<4>長枕木上軌道の位置の調整。
前記したように軌道搭載台車2のほぼ中央には台車上軌道22が設置してある。
一方、転用長枕木4上ではその上面の長枕木上軌道41は、一方に偏った位置に設置してある。
したがって、軌道搭載台車2の上の台車上軌道31と、転用長枕木4の上の長枕木上軌道41とはそのままでは接合しない。
そこで長枕木上軌道41の途中の箇所では、徐々に中心からずらした曲線状に配置し、軌道搭載台車2上の台車上軌道22と、転用長枕木4上の長枕木上軌道41とがスムーズに接合できるように構成する。
【0025】
<5>転用長枕木の転用。
転用長枕木4は、シールド掘進機A1の前進とともに、坑口側の転用長枕木4をシールド掘進機A1側へ転用して、インバート軌道1の上部空間に掛け渡して使用する。
ここで転用とは、坑口側に配置してあった転用長枕木4を持ち上げて取り外し、人力あるいは簡単な台車で、もっともシールド掘進機A1寄りに運搬し、これをトンネル横断方向に設置する作業をいう。
転用作業の結果、シールド掘進機A1の前進にともなって、転用した転用長枕木4の上に長枕木上軌道41と後続設備42を移動して、尺取虫状に前方に少しづつ前進させることができる。
【0026】
<6>作動。
坑口からインバート軌道1上を走行してきたセグメント台車などは、軌道搭載台車2に至って、その上の台車上軌道22に乗り移る。
そして台車上軌道31の傾斜の沿って昇り、一定の高さにある台車上軌道22の上を走行する。
そのまま走行して長枕木上軌道41の上を走行する。
長枕木上軌道41の上では、後続設備42は長枕木上軌道41と平行して設置してあるから、セグメント台車は、後続設備42の側面をスムーズに移動してシールド掘進機A1に至る。
シールド掘進機A1においてセグメントなどを降ろし、再度長枕木上軌道41と、台車上軌道22上を走行して坑口までもどる。
このように、長いシールドトンネルAの一部の床だけを、転用長枕木4を使用して高い位置に設置してセグメント台車の回避走行を可能として、基本的なセグメント台車の走行はインバート軌道1によって行うものである。
【0027】
<7>転用長枕木の転用。
シールド掘進機A1が一定量だけ掘進して前進したら、最も掘進機寄りの長枕木上軌道41とシールド掘進機A1の間に間隔ができる。
すると、最も坑口寄りの転用長枕木4を取り外し、最もシールド掘進機A1寄りの位置において、横断方向に掛け渡す。これが転用長枕木4の転用である。
数スパンの転用長枕木4の設置がおわったら、それらの上に、やはり坑口寄りから取り外した長枕木上軌道41と後続設備用軌道43を、最もシールド掘進機A1寄りに運搬して敷設する。
こうして長枕木上軌道41と後続設備用軌道43を尺取虫状に前進させる。
【0028】
<8>軌道搭載台車の前進。
長枕木上軌道41を前方へ移し変えると、長枕木上軌道41の最後部と、軌道搭載台車2の最前部との間に間隔が発生する。
そこで後続設備42の一部に設置してあるウインチなどを利用して、軌道搭載台車2を長枕木上軌道41側へ引き寄せる。
すべての軌道搭載台車2は順次連結しているから、全体がシールド掘進機A1側へ引き寄せられ、全システムの前進が完了する。
【0029】
さらに他の実施例について、図7、8を使用して説明する。
【実施例3】
【0030】
<1>前提条件。
本実施例も、断面がほぼ円形のシールドトンネルAにおいて利用する搬送システムである。
そのようなシールドトンネルAでは、その横断距離は中心に近づくほど長くなり、それだけ利用可能な幅員が広くなる。
さらにシールドトンネルAの床面には、全線にわたってインバート軌道1が単線の状態で敷設されていることが前提である。
インバート軌道1とは、シールドトンネルAの床面、すなわちインバートに2本のレールを設置した軌道であり、基本的にはこのインバート軌道1を利用して、切羽までのセグメントなどの資材の運搬を行う。
【0031】
<2>移動桟橋。
インバート軌道1には移動桟橋5を移動可能に搭載する。
この移動桟橋5は、底部に車輪54を備え、インバート軌道1上を走行可能な枠体である。
移動桟橋5の高さは、インバートよりも高い位置にあるので、ほぼ円形のシールドトンネルAでは、インバートの幅よりも十分に広い幅を確保することができる。
その広い幅を利用して、移動桟橋5の上面の片側には、インバート軌道1と同一径間の桟橋上軌道51を設置する。
さらに移動桟橋5の上には、桟橋上軌道51と平行して後続設備52を設置する。
かつ移動桟橋5は両側に傾斜路53を設ける。
この傾斜路53の上の桟橋上軌道51は、その両側がインバート軌道1と接合可能に構成してある。
【0032】
<3>作動。
断面がほぼ円形のシールドトンネルAであるから、移動桟橋5の上面はインバート部におけるトンネルの横断幅よりも十分に広い幅を備えている。
そのために移動桟橋5の上に桟橋上軌道51と後続設備52を平行して設置することが可能である。
したがってシールド掘進機A1にセグメントなどを供給するセグメント台車は、インバート軌道1と、桟橋上軌道51とを通って、後続設備52の側面を通過して往復することができる。
シールド掘進機A1が前進したら、移動桟橋5もウインチなどで牽引して、インバート軌道1の上を前進させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1の搬送システムにおける配置の平面図。
【図2】実施例1、2で使用する軌道搭載台車の正面図。
【図3】図2の軌道搭載台車の斜視図。
【図4】実施例1で使用する設備・軌道搭載台車の正面図。
【図5】実施例2の搬送システムにおける配置の平面図。
【図6】実施例2で使用する長枕木上軌道の上の配置図。
【図7】実施例3で使用する移動桟橋の斜視図。
【符号の説明】
【0034】
1:インバート軌道
2:軌道搭載台車
22:台車上軌道
3:設備・軌道搭載台車
31:台車上軌道
4:転用長枕木
41:長枕木上軌道
5:インバート桟橋
51:台車上軌道

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、
車輪などを備えた軌道搭載台車と、設備・軌道搭載台車を使用し、
インバート軌道の上を走行する軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道を設置し、
インバート軌道を跨いでその外側を走行する設備・軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道と後続設備とを並列に設置し、
台車上軌道は、その一端はインバート軌道と接合し、
その他端は設備・軌道搭載台車上の台車上軌道と接続するように勾配部分を設けて設置した、
シールドトンネルにおける搬送システム。
【請求項2】
ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、
車輪などを備えた軌道搭載台車と、インバート部の横断寸法よりも長い転用長枕木を使用し、
インバート軌道の上を走行する軌道搭載台車には、その上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道を設置し、
インバート軌道を跨いでその上部空間に掛け渡す転用長枕木には、
その上面に、インバート軌道と同一径間の長枕木上軌道と、
後続設備の移動のための後続設備用軌道とを並列に設置し、
転用長枕木は、シールド掘進機の前進とともに、坑口側の転用長枕木をシールド掘進機側へ転用して、インバート軌道の上部空間に掛け渡し、
台車上軌道は、その一端はインバート軌道と接合し、
その他端は転用長枕木上の長枕木上軌道と接続するように勾配部分を設けて設置した、
シールドトンネルにおける搬送システム。
【請求項3】
ほぼ円形のシールドトンネルの床面に単線のインバート軌道を敷設したシールドトンネルにおいて、
車輪を備えてインバート軌道の上を走行可能な移動桟橋を使用し、
移動桟橋の上面はインバートの幅よりも広い幅を備え、
この上面にインバート軌道と同一径間の台車上軌道、および後続設備を設置し、
さらに移動桟橋は両側に傾斜部を設け、
台車上軌道は、両側の傾斜部の下端がインバート軌道と接合するように構成した、
シールドトンネルにおける搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−31557(P2010−31557A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195149(P2008−195149)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)