説明

シール除去工具

【課題】管又は丸棒の外周面に形成された雄ねじに付着したシールを容易に剥離・除去可能な工具を提供する。
【解決手段】シール除去工具1は、第1挟持部11と、第1挟持部11に対向して配置される第2挟持部21と、第1挟持部11と第2挟持部21との合わせ面に形成され、雄ねじ31の軸方向に異なる位置においてそれぞれ雄ねじ31の周方向に沿って噛み合う複数の噛み合い部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールを除去するシール除去工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配管設備部品の配管を被接続部位に接続する方法、2つの管を接続する方法として、管の端部に雄ねじ、管が接続される部位に雌ねじを形成し、雄ねじにシールテープ又はシール剤(以下、総称して「シール」という。)を付着させた状態で両者を螺合させる方法がある。この方法によれば、管を接続するとともに、接続部の気密性・液密性を確保することができる。
【0003】
このような方法で接続された管を取り外し再び接続する場合には、シールの密着度が低下するので、古いシールを除去し雄ねじに新しいシールを付着させる必要がある。また、シールが劣化し接続部の気密性・液密性が低下した場合にも、同様に古いシールを新しいシールに交換する必要がある。
【0004】
特許文献1は、開閉可能な先端の間に雄ねじを挟み込み、この状態で工具を回転させることで古いシールを除去するクリップ状の工具を開示している。この工具を用いれば、千枚通しのような工具を用いてシールを除去する場合と比較して、シールを容易に除去することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−105578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1が開示する工具は、先端と雄ねじとの接触面積が少なく、シールを完全に除去するためには、工具を順方向に回転させた後に一旦先端を開いて工具を逆方向に回転させ、再び先端を閉じて工具を順方向に回転させる「戻し回し動作」を繰り返す必要があり、作業効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、管又は丸棒の外周面に形成された雄ねじに付着したシールを容易に除去可能な工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、管又は丸棒の外周面に形成された雄ねじに付着したシールを除去するシール除去工具であって、第1挟持部と、前記第1挟持部に対向して配置される第2挟持部と、前記第1挟持部と前記第2挟持部との突き合わせ面に形成され、前記雄ねじの軸方向に異なる位置においてそれぞれ前記雄ねじの周方向に沿って噛み合う複数の噛み合い部と、を備えたことを特徴とするシール除去工具が提供される。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、雄ねじと噛み合い部との間で十分な接触面積を確保するとともに、雄ねじと工具とを一定方向に相対回転させれば、雄ねじに付着したシールに複数の噛み合い部を順次接触させることができるので、特許文献1に開示される工具と比較して、シールをより容易に剥離・除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るシール除去工具の全体図である。
【図2】図1の丸Aで囲んだ部分の拡大図である。
【図3】雄ねじにシールが付着した管を示した図である。
【図4】シールを除去する作業を示した図である。
【図5A】雄ねじに付着したシールが除去される様子を示した図である。
【図5B】雄ねじに付着したシールが除去される様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
シール除去工具1は、管3の端部に形成された雄ねじ31に付着したシール32(図3参照)を除去するために用いられる工具である。ここでいう「シール」には、雄ねじ31に巻き付けられたシールテープの他、雄ねじ31に塗布された液体パッキン、シリコンシール等が含まれる。
【0013】
シール除去工具1は第1回動部材10及び第2回動部材20を備える。第1回動部材10は、第1挟持部11と、これに接続する第1アーム12と、第1挟持部11と第1アーム12との間に形成される第1円形係合部13とを有している。同様に、第2回動部材20は、第2挟持部21と、これに接続する第2アーム22と、第2挟持部21と第2アーム22との間に形成される第2円形係合部23とを有している。第1回動部材10と第2回動部材20とは、第1円形係合部13と第2円形係合部23とを重ね合わせ、当該部位をピンで連結することによって回動可能に連結される。
【0014】
なお、以下の説明においては、第1挟持部11と第2挟持部21との距離を増大させることを「挟持部11、21を開く」と表現し、逆に、減少させることを「挟持部11、21を閉じる」と表現する。
【0015】
第1挟持部11及び第2挟持部21の対向面には、図2に示すように、雌ねじ形状を中心軸を通る面で分割して得られる形状の凹溝14、24がそれぞれ形成されている。第1挟持部11と第2挟持部21とが突き合わされると、凹溝14、24が組み合わされ、突き合わせ面Cに雌ねじ40が形成される。雌ねじ40は突き合わせ面Cに平行に、かつ、挟持部11、12の側面Sに対して直角な方向に延びる。また、この例では、異なる内径を有する雌ねじ40が4本形成されている。
【0016】
シール除去工具1は作業者がアーム12、22に作用させる力に応じて動作し、アーム12、22を握ると挟持部11、21が閉じられ、作業者がアーム12、22の把持を緩める又はアーム12、22に作用させている力を解放すると挟持部11、21が開かれる。
【0017】
続いて上記シール除去工具1を用いたシール除去手順について説明する。
【0018】
図3は、シール32が付着した雄ねじ31を示している。シール32は雄ねじ31の略全面に付着しており、これを千枚通しや特許文献1に開示されるクリップ状の工具を用いて剥離・除去するのは容易ではない。しかしながら、本実施形態に係るシール除去工具1を用いれば次の手順によりシール32を容易に剥離・除去することができる。
【0019】
まず、開かれた挟持部11、21の間に雄ねじ31を配置する。作業者がアーム12、22を握り、挟持部11、21を閉じると、図4に示すように、雄ねじ31が第1挟持部11と第2挟持部21との間に挟み込まれる。この時、雄ねじ31は雌ねじ40に螺合する。
【0020】
図5Aはこの時の挟持部11、21の断面図である。雄ねじ31と雌ねじ40は、軸方向に異なる複数の位置において噛み合っており、雄ねじ31の周方向に沿って噛み合う噛み合い部41が軸方向に複数形成される。噛み合い部41の内径(雌ねじの最小径)はいずれも等しい。
【0021】
次に、作業者がアーム12、22を握り、雄ねじ31を挟持部11、21で挟持したまま管3をシール除去工具1に対して回転させる。管3の回転方向は管3がシール除去工具1から繰り出される方向である。ここでは管3をシール除去工具1に対して回転させているが、シール除去工具1を管3に対して回転させてもよいし、管3とシール除去工具1を互いに逆方向に回転させてもよい。
【0022】
図5Bはシール除去工具1をある程度回転させた後の挟持部11、21の断面図である。シール除去工具1を回転させると、雌ねじ40とシール32との間の摩擦によって雄ねじ31の全面からシール32が剥離する。シール除去工具1を回転させている途中、仮にある噛み合い部41でシール32が除去されず残ったとしても、残ったシール32に別の噛み合い部41が続けて接触するので、シール除去工具1の回転角がある程度の角度に達すれば、シール32は全て除去される。
【0023】
雄ねじ31から剥離したシール32は第1挟持部11と第2挟持部21との間に残る。作業者がアーム12、22を握る力を緩め、又は、解放し、挟持部11、21を開くと、挟持部11、21の間に残ったシール32を取り出すことができる。
【0024】
続いて、上記実施形態の作用効果について説明する。
【0025】
上記実施形態では、第1挟持部11と第2挟持部21との突き合わせ面Cに形成され、雄ねじ31の軸方向に異なる位置においてそれぞれ雄ねじ31の周方向に沿って噛み合う複数の噛み合い部41を備えた。これにより、雄ねじ31と噛み合い部41との間で十分な接触面積を確保するとともに、雄ねじ31とシール除去工具1とを一定方向に相対回転させれば雄ねじ31に付着したシール32に複数の噛み合い部41を順次接触させることができ、シール32をより容易に剥離・除去することができる(請求項1に記載の発明に対応する効果)。
【0026】
複数の噛み合い部41は、個別に形成するよりも、上記実施形態のように、第1挟持部11と第2挟持部21との突き合わせ面Cに形成される雌ねじ40によってまとめて形成するのが好適である。これにより、複数の噛み合い部41を容易に形成することができる(請求項2に記載の発明に対応する効果)。
【0027】
また、上記実施形態では、径の異なる雄ねじ31に対応して複数の雌ねじ40を形成した。これにより単一のシール除去工具1で、径の異なる雄ねじ31に付着したシールを除去することができる。
【0028】
また、シール除去工具1を、第1挟持部11及び第1アーム12を有する第1回動部材10と、これに交差し、回動可能に連結される、第2挟持部21及び第2アーム22を有する第2回動部材20とで構成した。
【0029】
この構成によれば、作業者はアーム12、22に力を掛けやすく、したがって、雄ねじ31を挟持部11、21で強固に挟持して噛み合い部41をシール32に密着させ、シール32の剥離をより確実に行うことができる。
【0030】
また、仮にシール32が完全に除去しきれなかった場合であっても、アーム12、22の把持を緩める、又は、把持を解放すれば、挟持部11、21が開くので、工具を逆方向に回転させて雄ねじ31を挟持部11、21で再度挟み込み、シール32の除去をやり直す「戻し回し動作」も容易に行うことができる(請求項3に記載の発明に対応する効果)。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態では、管3の端部に形成された雄ねじ31に付着したシール32の除去にシール除去工具1を用いているが、シール除去工具は、丸棒の端部に形成された雄ねじに付着したシール、管又は丸棒の途中の外周面に付着したシールを除去するのにも用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 シール除去工具
10 第1回動部材
11 第1挟持部
12 第1アーム
20 第2回動部材
21 第2挟持部
22 第2アーム
3 管
31 雄ねじ
32 シール
40 雌ねじ
41 噛み合い部
C 突き合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管又は丸棒の外周面に形成された雄ねじに付着したシールを除去するシール除去工具であって、
第1挟持部と、
前記第1挟持部に対向して配置される第2挟持部と、
前記第1挟持部と前記第2挟持部との突き合わせ面に形成され、前記雄ねじの軸方向に異なる位置においてそれぞれ前記雄ねじの周方向に沿って噛み合う複数の噛み合い部と、
を備えたことを特徴とするシール除去工具。
【請求項2】
請求項1に記載のシール除去工具であって、
前記複数の噛み合い部は、前記第1挟持部と前記第2挟持部との突き合わせ面に形成される雌ねじによって形成される、
ことをと特徴とするシール除去工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシール除去工具であって、
前記第1挟持部及び前記第1挟持部に接続する第1アームを有する第1回動部材と、
前記第2挟持部及び前記第2挟持部に接続する第2アームを有し、前記第1回動部材と交差し、当該交差位置において前記第1回動部材に対して回動可能に連結される第2回動部材と、
を備えたことを特徴とするシール除去工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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