説明

ジイソシアナート、ジウレタン及びジウレア並びにその製造法

【課題】2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸から誘導されるアジド誘導体及びイソシアナート誘導体、これらの誘導体から得られるウレタン及びウレア、並びにその製造法を提供する。
【解決手段】式(I)、式(II)及び(III)で表わされる化合物、並びにその製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸の誘導体、特に、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド、-ジイソシアナート、-ジウレタン及び-ジウレア、並びにそれらの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物由来の原料や微生物による代謝を介して得られる植物由来のポリマーが注目されている。なぜなら、これらのポリマーは、石油を原料としない環境循環型の素材であり、植物に固定された二酸化炭素を大気中に戻すことになるという意味で、焼却しても大気中の二酸化炭素を増加させない。また、焼却せずに埋立て処分しても、土壌中の微生物により分解されるため、環境破壊を招く虞がない。かかる植物由来のポリマーとして、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸等が挙げられ、将来性のある生物分解性である環境循環型の素材として、各種成形品への用途開発が進められている。しかしながら、かかる植物由来のポリマーは、澱粉等を含む穀物である食物を原料とする場合には、供給において食物と競合するという問題がある。これは、人類に対する食料の安定供給の観点から問題である。
【0003】
ところで、植物由来の芳香族高分子化合物であるリグニンは、植物細胞壁に普遍的に含まれているバイオマス資源であるが、その化学構造が多様な成分で構成されていることや複雑な高分子構造であるため、未だ有効な利用技術が開発されていない。そのため、例えば、製紙産業において大量に副生するリグニンは有効利用されずに、重油の代替燃料として焼却処分されている。
【0004】
近年、リグニン等の植物由来芳香族成分が、加水分解、酸化分解、加溶媒分解等の化学的分解法、又は超臨界水や超臨界有機溶媒による物理化学的分解法により、数種の低分子化合物の混合物に変換されて単一の化合物である2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸(以下、「PDC」と言うことがある)を製造する方法が開発されてきた。例えば、特許文献1には、リグニンを含む植物原料を低分子化技術により得たバニリン、シリンガアルデヒド、バニリン酸、シリンガ酸、プロトカテク酸等を含む低分子混合物から多段階の酵素反応を介して単一の化合物である2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸を発酵生産技術により製造する方法が開示されている。また、特許文献2には、微生物により生産された2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸を含む発酵液に、陽イオンの塩を存在させて2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸を精製する方法や遊離2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸を抽出する方法が報告されている。
【0005】
このようにして得られた単一の化合物である2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸を、生物分解性のプラスチックや各種化学製品の原料として使用することができれば、供給において、食物と競合しない、リグニン含有植物原料(バイオマス)を有効利用することができることになる。しかしながら、リグニン含有バイオマスに由来する2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸の利用方法は未だ確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−278549号公報
【特許文献2】特開2008−79603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸から誘導されるアジド誘導体及びイソシアナート誘導体、これらの誘導体から得られるウレタン誘導体及びウレア誘導体、並びにその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、斯かる現状に鑑み鋭意検討した結果、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸からアジド誘導体及びイソシアナート誘導体を実際に製造し、かかる誘導体にアルコール又はアミンを反応させてそれぞれウレタン、ウレアを実際に製造し、その製造方法を確立し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、(1)本発明は、下記式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
で表わされる化合物を提供する。
(2)本発明は、下記式(II):
【0012】
【化2】

【0013】
で表わされる化合物を提供する。
(3)本発明は、下記一般式(III):
【0014】
【化3】

【0015】
[式中、R1及びR2は共に、-O-R3、又は-NH-R3を示し;R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる化合物を提供する。
【0016】
(4)本発明は、下記一般式(IV):
【0017】
【化4】

【0018】
[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる、(3)3記載の化合物を提供する。
(5)本発明は、下記一般式(V):
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる、(3)記載の化合物を提供する。
(6)本発明は、前記R3が、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜24の飽和又は不飽和炭化水素の一価残基である、(3)〜(5)のいずれか1記載の化合物を提供する。
(7)本発明は、前記R3が、炭素数1〜24の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数3〜8の環状アルカンの一価残基、又は炭素数7〜32の芳香族炭化水素もしくは複素環基を含む炭化水素の一価残基である、(3)〜(6)のいずれか1記載の化合物を提供する。
(8)本発明は、前記R3が、炭素数7〜32のアラルキル基である、(3)〜(7)のいずれか1記載の化合物を提供する。
(9)本発明は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化することを特徴とする、下記式(I):
【0021】
【化6】

【0022】
で表わされる化合物の製造法を提供する。
(10)本発明は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、下記式(I):
【0023】
【化7】

【0024】
で表わされる化合物を得、次いで該化合物を加熱処理することを特徴とする、下記式(II):
【化8】

【0025】
で表わされる化合物の製造法を提供する。
(11)本発明は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、下記式(I):
【0026】
【化9】

【0027】
で表わされる化合物を得、該化合物をアルコール:R3-OH、又はアミン:R3-NH2(式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。)と反応させることを特徴とする、あるいは、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、該式(I)で表わされる化合物を得、これを加熱処理して下記式(II):
【0028】
【化10】

【0029】
で表わされる化合物に変換し、次いで該化合物をアルコール:R3-OH、又はアミン:R3-NH2(R3は、前記定義のとおりである)と反応させることを特徴とする、下記一般式(III):
【0030】
【化11】

【0031】
[式中、R1及びR2は共に、-O-R3、又は-NH-R3を示し;R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる化合物の製造法を提供する。
(12)前記加熱温度が80〜140℃であることを特徴とする、(10)又は(11)記載の製造法を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボン酸から、そのアジド誘導体及びイソシアナート誘導体を容易に製造でき、また、かかる誘導体を用いればウレタン誘導体及びウレア誘導体を高収率で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の式(I)で表わされる2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(I)(以下、「PDCアジド」と称する)は、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライド(VI)(以下、PDCハライド」と称する)にアジド化試薬を加えることにより、Sn2型反応によって製造できる。
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、Xは、F、Cl、Br又はI原子を示す。)
【0036】
PDCハライドとしては、PDCの塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ素化物等が挙げられるが、その中で、PDCの塩化物又は臭化物が好ましく、PDCの塩化物がより好ましい。PDCハライドは、例えば、WO99/54384に記載の方法によって合成できる。PDCハライドの他に、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニル-O-R4(R4は、C1〜C6アルキル、フェニル、ベンジル、C1〜C6アルキルカルボニル、C1〜C6アルコキシカルボニル、フェノキシカルボニル又はベンゾイルを示す)も使用できる。
アジド化試薬としては、アジド化に最もよく使用されているナトリウムアジド、アジ化カリウム、アジ化カルシウム等の他に、アジ化水素、アジ化鉛、ジフェニルリン酸アジド等が使用できる。PDCハライド(VI)とアジド化試薬との混合比は特に限定されないが、モル比で、約1:2〜約1:6が好ましく、約1:5〜約1:6がより好ましい。
【0037】
また、アジド化には、求核反応を促進するために少量の相関移動触媒を添加してもよい。相関移動触媒の添加量は、PDCハライド(VI)1モルに対して、通常、約0.01〜約0.2モルである。
【0038】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸エステル等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量は、PDCハライド(VI)100重量部に対して、通常20〜1,000重量部の量である。反応は、通常、0℃〜室温の反応温度で、場合により加熱して、約1時間〜約数時間行えばよい。
【0039】
次いで、PDCアジト(I)を加熱処理するとクルチウス転位が起こり、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルイソシアナート(II)(以下、「PDCイソシアナート」と称する)が容易に得られる。
【0040】
【化13】

【0041】
加熱温度は使用する溶媒によって異なるが、通常、80℃から溶媒の沸点の温度であり、80〜140℃の範囲が好ましく、100〜140℃の範囲がより好ましい。反応溶媒は特に制限されないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒などが使用できる。反応時間は、約1時間〜数時間程度である。
【0042】
PDCイソシアナート(II)は、PDCアジド(I)が非常に安定なため、上記のように、PDCハライド(VI)からPDCアジド(I)を単離し、次いでこれを加熱処理して得てもよいが、PDCアジド(I)を単離することなく、PDCハライド(VI)からインサイチューで得てもよい。
【0043】
また、本発明は、一般式(III):
【0044】
【化14】

【0045】
[式中、R1及びR2は共に、-O-R3、又は-NH-R3を示し;R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる化合物にも関する。
【0046】
上記式(III)で表わされる化合物は、具体的には、下記一般式(IV):
【0047】
【化15】

【0048】
[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされるウレタン誘導体;又は、下記一般式(V):
【0049】
【化16】

【0050】
[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされるウレア誘導体である。
【0051】
上記式中、R3は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜24の飽和又は不飽和炭化水素の一価残基が好ましく、炭素数1〜24の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数3〜8の環状アルカンの一価残基、又は炭素数7〜32の芳香族炭化水素もしくは複素環基を含む炭化水素の一価残基がより好ましく、炭素数6〜26の芳香族炭化水素と炭素数1〜6のアルキル基とからなる炭素数7〜32のアラルキル基が最も好ましい。
【0052】
式(III)で表わされるウレタン誘導体又はウレア誘導体は、PDCアジド(I)を、直接、アルコール:R3-OH、又はアミン:R3-NH2(式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す)と反応させることによって製造してもよく(製造例1)、あるいは、PDCアジド(I)をPDCイソシアナート(II)に変換して、これを上記アルコール又は上記アミンと反応させることによって製造してもよい(製造例2)。以下にそれぞれの製造例を式で示す。
【0053】
製造例1:
【化17】

【0054】
製造例2:
【化18】

【0055】
ウレタン誘導体(IV)を製造するためのアルコール:R3-OHとしては、R3が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基等を示す脂肪族アルコール、R3が炭素数6〜26の芳香族基を示す芳香族アルコール等が挙げられる。炭素数6〜26の芳香族基は、炭素数7〜26のアラルキル基(炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜20の芳香族基とからなる)を含む。また、上記のアルキル基、アルケニル基、及び芳香族基は、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシル基、塩素、臭素等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基等の置換基によって更に置換されていてもよい。好ましいアルコールとしては、フェニルメチルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール等;フェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−ニトロフェノール、2−ヒドロキシフェノール、2−アミノフェノール、2,6−ジクロロフェノール、4−メトキシフェノール、4−エトキシフェノール、4−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、4−カルボキシフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、4−スルホニルフェノール等を挙げることができる。
【0056】
一般式(III)で表わされるウレア誘導体を製造するために使用されるアミン:R3-NH2としては、R3が炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基等を示す脂肪族アミン、R3が炭素数6〜26の芳香族基を示す芳香族アミン等が挙げられる。炭素数6〜26の芳香族基は、炭素数7〜26のアラルキル基(炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜20の芳香族基とからなる)を含む。また、上記のアルキル基、アルケニル基、及び芳香族基は、メチル基、エチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の低級アルコキシル基、塩素、臭素等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基等の置換基によって更に置換されていてもよい。好ましいアミンとしては、フェニルメチルアミン、2−フェニルエチルアミン、3−フェニルプロピルアミン等;アニリン、2−クロロアニリン、3−クロロアニリン、4−クロロアニリン、2−ニトロアニリン、2−ヒドロキシアニリン、2−アミノアニリン、2,6−ジクロロアニリン、4−メトキシアニリン、4−エトキシアニリン、4−メチルアニリン、2,6−ジメチルアニリン、4−カルボキシアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、4−スルホニルアニリン等を挙げることができる。
【0057】
上記のPDCアジド(I)又はPDCジイソシアナート(II)と、R3-OH又はR3-NH2との混合比は特に限定されないが、モル比で、約1:2〜約1:3が好ましく、約1:2〜約1:2.2がより好ましい。
【0058】
反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、シクロヘキサノン等の脂環式炭化水素系溶媒;酢酸エステル等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を組み合わせて使用することもできる。溶媒の使用量は、PDCハライド(VI)100重量部に対して、通常20〜1,000重量部の量である。
【0059】
本発明のPDCアジド及びPDCイソシアナートは、上記のようにウレタン誘導体やウレア誘導体を製造するために使用できるだけでなく、例えば、PDCイソシアナートは、ジカルボン酸、ジアミンとの反応によりそれぞれポリウレタン、ポリウレアを製造するための原料としても使用できる。また、PDCウレタンは、布地のパーマネントプレス用の架橋剤の原料、PDCウレアは、肥料や、尿素樹脂の原料としての用途が期待できる。
【実施例】
【0060】
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0061】
製造例1:2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジドの合成
【0062】
【化19】

【0063】
氷浴下でNaN3 1.78 g(27.4 mmol, 6.00 eq.)、H2O(20 ml)、BnMe3NCl(0.170 g,0.914 mmol, 0.200 eq.)、及びCH2Cl2(20 ml)から成る二相系を穏やかに氷冷下で攪拌した。20 mlのCH2Cl2に溶解した2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルクロリド(1.00 g,4.57 mmol, 1.00 eq.)を加え、同温で1時間激しく攪拌した。次いで、有機層を分離し、水相を20 mlのCH2Cl2で抽出した。この抽出層を分離した有機相に加え、20 mlのH2Oによって洗浄した。洗浄後の有機層を硫酸マグネシウムで30分間乾燥した後に濾去し、溶媒を留去して標題化合物(0.984 g,4.20 mmol)を得た。収率92%、薄茶色固体。
【0064】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.53 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 7.19 (1H, d, J4.00, −CH=-O)。13C-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):168.51, 164.37, 158.44, 149.80, 142.68, 123.38, 107.79。
FT-IR(ν,cm-1):3093, 2157, 1749, 1697, 1636, 1558, 1407, 1327, 1243, 1214, 1137,1061, 871, 738。
【0065】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.53 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 7.19 (1H, d, J4.00, −CH=-O)。13C-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):168.51, 164.37, 158.44, 149.80, 142.68, 123.38, 107.79。
FT-IR(ν,cm-1):3093, 2157, 1749, 1697, 1636, 1558, 1407, 1327, 1243, 1214, 1137,1061, 871, 738。
【0066】
製造例2:2-ピラン-2-オン-4,6-ジイソシアナートの合成
【0067】
【化20】

【0068】
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(1.00 g,4.27 mmol)をトルエン(100 ml)に溶解し、90℃で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去して標題化合物(0.730 g,4.10 mmol)を得た。収率96%、淡黄色固体。
【0069】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):5.85 (1H, d, J=4.00, =CH−C=O), 5.66 (1H, d, J=4.00, −CH=-O)。13C-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):168.51, 164.37, 158.44, 149.80, 142.68, 123.38, 107.79。
FT-IR(ν,cm-1):2259, 1695, 1214。
【0070】
製造例3:2-ピラン-2-オン-4,6-ジフェネチルウレタンの合成−1
【0071】
【化21】

【0072】
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(1.47 g,6.25 mmol, 1 eq.)と2-フェニルエタノール(1.50 ml,12.5 mmol, 1 eq.)を15 mlのトルエンに溶解し、90℃で1.5時間攪拌した。反応後に系を冷蔵し、析出した固体を濾集して標題化合物(2.58 g)を得た。収率97%。薄褐色固体。
【0073】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.62 (1H, s, O-C-NH), 7.25 (12H, m, −C6H6), 6.80 (1H, s, =CH-CO=), 6.51 (1H, s, =C-C-NH), 6.29 (1H, s, O-C=CH), 4.38 (4H, m, O-CH2), 2.97 (4H, m, O-C-CH2)。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):9.99 (1H, s, ピロン6位-NH), 9.24 (1H, s, ピロン4位-NH-), 7.17〜7.26 (フェニル-H), 6.48 (1H, d, ピロン5位-CH), 6.30 (1H, d, ピロン3位-CH), 4.31〜4.36 (4H, t+t, -O-CH2-), 2.94〜2.97 (4H, t+t, -OCH2CH2-)。
FT-IR(ν,cm-1):3214, 3024, 2964, 2891, 1749, 1691, 1226;(δ,cm-1):1524, 697。
【0074】
製造例4:2-ピラン-2-オン-4,6-ジフェネチルウレタンの合成−2
【0075】
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(1.47 g,6.25 mmol, 1 eq.)をトルエン(100 ml)に溶解し、90℃で1時間攪拌して反応を完結させ、対応するジイソシアナートに変換した。溶液を減圧濃縮して全量を15 mlとし、2-フェニルエタノール(1.50 ml,12.5 mmol, 1 eq.)を加えて90℃で1.5時間攪拌した。反応後に系を冷蔵し、析出した固体を濾集して標題化合物(2.53 g)を得た。収率95%。薄褐色固体。
【0076】
製造例5:2-ピラン-2-オン-4,6-ジフェネチルウレアの合成−1
【0077】
【化22】

【0078】
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(0.927 g,3.96 mmol, 1 eq.)と2-フェニルエチルアミン(1.00 ml,7.92 mmol, 1 eq.)を10 mlのトルエンに溶解し、9 ℃で1.5時間攪拌した。反応後に系を冷蔵し、析出した固体を濾集することにより標題化合物(1.61 g)を得た。収率96%。桜色固体。
【0079】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ(ppm):7.27 (1H, s, C=CH-CO), 7.27 (12H, m, −C6H6), 6.90 (1H, s, C-C-NH), 6.72 (1H, s, O-C=CH), 6.27 (1H, s, O-C-NH), 3.66 (5H, m, s, O-CH2, N-CO-NH ), 2.89 (5H, m, s, N-C-CH2, N-CO-NH)。
1H-NMR (400 MHz, THF-d8) δ(ppm):8.34 (1H, s, ピロン6位-NH), 8.18 (1H, s, ピロン4位-NH-), 7.32 (1H, d, ピロン5位C-H), 7.12〜7.26 (フェニル-H), 6.74 (1H, d, ピロン3位-CH), 3.51〜3.55 (4H, t+t, -O-CH2-), 2.85〜2.88 (4H, t+t, -OCH2CH2-)。
FT-IR(ν,cm-1):3315, 3074, 3024, 2941, 2864, 1726, 1657, 1301;(δ,cm-1):1537, 697。
【0080】
製造例6:2-ピラン-2-オン-4,6-ジフェネチルウレアの合成−2
製造例1で得た2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルアジド(0.927 g,3.96 mmol, 1 eq.)をトルエン(75 ml)に溶解し、90℃で1時間攪拌して反応を完結させ、対応するジイソシアナートに変換した。溶液を減圧濃縮して全量を10 mlとし、2-フェニルエチルアミン(1.00 ml,7.92 mmol, 1 eq.)を加えて90℃で1.5時間加熱した。反応後に系を冷蔵し、析出した固体を濾集することにより標題化合物(1.54 g)を得た。収率92%。桜色固体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】

で表わされる化合物。
【請求項2】
下記式(II):
【化2】

で表わされる化合物。
【請求項3】
下記一般式(III):
【化3】

[式中、R1及びR2は共に、-O-R3、又は-NH-R3を示し;R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる化合物。
【請求項4】
下記一般式(IV):
【化4】

[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
下記一般式(V):
【化5】

[式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
前記R3が、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜24の飽和又は不飽和炭化水素の一価残基である、請求項3〜5のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
前記R3が、炭素数1〜24の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、炭素数3〜8の環状アルカンの一価残基、又は炭素数7〜32の芳香族炭化水素もしくは複素環基を含む炭化水素の一価残基である、請求項3〜6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
前記R3が、炭素数7〜32のアラルキル基である、請求項3〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化することを特徴とする、下記式(I):
【化6】

で表わされる化合物の製造法。
【請求項10】
2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、下記式(I):
【化7】

で表わされる化合物を得、次いで該化合物を加熱処理することを特徴とする、下記式(II):
【化8】

で表わされる化合物の製造法。
【請求項11】
2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、下記式(I):
【化9】

で表わされる化合物を得、該化合物をアルコール:R3-OH、又はアミン:R3-NH2(式中、R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す)と反応させることを特徴とする、あるいは、2-ピラン-2-オン-4,6-ジカルボニルハライドをアジド化して、該式(I)で表わされる化合物を得、これを加熱処理して下記式(II):
【化10】

で表わされる化合物に変換し、次いで該化合物をアルコール:R3-OH、又はアミン:R3-NH2(R3は、前記定義のとおりである)と反応させることを特徴とする、下記一般式(III):
【化11】

[式中、R1及びR2は共に、-O-R3、又は-NH-R3を示し;R3は、その構造中に活性水素を有さないヘテロ原子を含んでもよい炭化水素系の一価残基を示す。]
で表わされる化合物の製造法。
【請求項12】
前記加熱温度が80〜140℃であることを特徴とする、請求項10又は11記載の製造法。

【公開番号】特開2010−275211(P2010−275211A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127836(P2009−127836)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、農林水産省、「バイオマス・マテリアル製造技術の開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【出願人】(501186173)独立行政法人森林総合研究所 (91)
【Fターム(参考)】