説明

ジェルマットの生産方法

【課題】製造プロセスが簡単で、低コストで、使用し易く、突き破りや押圧による破損の惧れのないジェルマットの生産方法を提供する。
【解決手段】表側面に、織布、又はフロック生地3からなる層を配置し、内側面に、PVC又はPE或いはPU若しくはTPU材料のうちのいずれかからなるプラスチック層4を配置し、これらの2層を積層して形成される密閉された袋中にジェル5が詰められているジェルマットの生産方法であって、A、薄片1を裁断するステップと、B、プラスチック層4を有する薄片1を向き合せて加熱し、注入口のみを残して周囲が密閉された袋につくるステップと、C、水と、モノマーと、架橋剤と、開始剤とを混合してモノマー溶液とし、注入口から袋内に流し込み、次に注入口を塞ぐステップと、D、モノマー溶液を流し込んだ袋を加熱し、モノマー溶液が袋内で完全に重合反応し薄片状のジェルを生成させるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造プロセスが簡単で、低コストで、使用し易く、突き破りや押圧による破損の惧れのないジェルマットの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、日常生活で使用するものとしてウォーターマットが市販されており、これをベッドやソファーなどの上に敷くと、快適さを与えてくれるだけでなく、理療の働きもする。このようなウォーターマットは通常2層の薄片からなる密閉空洞があり、空洞の中に水が注入されてウォーターマットの状態を構成している。
中には、空洞の中に加熱器又は冷却器を取り付けて、水を加熱して温湿布に用いたり、冷却して冷湿布に用いたりするものもある。例えば、特許文献1の超伝導温水マットなど。しかし、使用中にウォーターマットが尖ったものに突き破られたり、圧力が大きいと押し破られたりすることがあり、そうなると空洞の中の水が漏れて使えなくなるため、一般に使用寿命が短い。また、水の流動性のために、ウォーターマットの安定性がやや悪く、使用するときに揺れ動く感じがあって心地よくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第200720002744.2号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、既存製品に存在する欠点を克服して、製造プロセスが簡単で、低コストで、使用し易く信頼性があり、突き破りや押圧による破損の惧れのないジェルマットの生産方法を提供することである。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記要件を達成するために、本発明は以下の技術的方法によって実現する。
すなわち、本発明に係るジェルマットの生産方法は、表側面に、綿布又は化繊布或いは綿繊維と化繊との混紡布のうちのいずれかからなる織布、又はフロック生地からなる層を配置し、内側面に、PVC又はPE或いはPU若しくはTPU材料のうちのいずれかからなるプラスチック層を配置し、これらの2層を積層して形成される薄片からなる密閉された袋を備え、当該袋の中に薄片状のジェルが詰められていることを特徴とするジェルマットの生産方法であって、下記のA〜Eのステップを含むことを特徴とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記ジェルマットの生産方法は、順に以下のA〜Eのステップ、すなわち、
A、材料の準備:ジェルマットの外形寸法及び材料要件に基づいて薄片を裁断するステップと、
B、製袋:プラスチック層を有する薄片を向き合せて加熱し、プラスチック層の表面を溶解させ、向き合わせた薄片を、注入口のみを残して周囲が密閉された袋につくるステップと、
C、モノマー溶液流し込み:水と、モノマーと、架橋剤と、開始剤とを混合してモノマー溶液とし、注入口から袋内に流し込み、次に注入口を塞ぐステップと、
D、加熱固化:モノマー溶液を流し込んだ袋を加熱器の上に平らに置いて加熱し、モノマー溶液が袋内で完全に重合反応し薄片状のポリマー、すなわちジェルを生成させるステップと、
E、検査及び包装:加工品質を検査し、検査に合格した製品を包装して倉庫に入れるステップと
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記方法で製造されるジェルマットにおいて、従来の水の替りにジェルを使用して、外表面に袋のついた片状ジェルマットに製造するものであり、ジェルは有機物を重合反応によって得られたコロイドであり、そのうち、ジェルの成分の約70%が水であり、水に近い高い熱容量を有する。従って、ジェルマットでも変わりなく非常に良い吸熱性能を有する。
しかし、ジェルは水のような流動性がなく、安定使用でき、たとえ袋が尖ったものに突き破られたり、小さく破裂したりしても漏れることがなく、マットの使用寿命を大幅に延長可能になる。生産方法においては、重合反応を採用して袋内で平らに均し、外圧を加える条件下で行うため、出来上がったジェルマットは外形が平らかで美しい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ジェルマットの正面図。
【図2】図1のA−Aの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
更に付図と実施例を結びつけて、本発明について以下に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1と図2はジェルマットの構造略図である。
ジェルマットは2層の薄片1からなる密閉された袋2を備え、前記薄片1が織布又はフロック生地3にプラスチックを塗布した2種類の材料層を積層してつくられ、プラスチック層4が袋2の内層に作られている。
前記織布とは綿布又は化繊布又は綿繊維と化繊の混紡布を指す。使用する化繊布はナイロンタフタなどである。プラスチックとはPVC又はPE又はPU又はTPU材料などを指し、通常プラスチック層4の厚さは0.05mmから0.45mmの間である。袋2の中にあるモノマー溶液が重合反応を起こして重合物ジェル5を生成し、袋の中で薄片状のジェル5を形成する。
ジェル5の厚さは通常0.8mmから5mmの間である。大面積の袋2の場合は2層の薄片1の分離面積が大きいためにジェル5が移動してしまうのを防ぐために、袋2を作るときに袋2の中間位置に、2層の薄片を直接粘着させる1本又は数本の補強筋6をつけてもよい。このようにすればジェルマットを補強筋6の位置で折り畳むことにも、使用時の通気にも便利である。
【0011】
上記ジェルマットの生産方法は、順に以下のステップを含む。
A、材料の準備:ジェルマットの外形寸法及び材料要件に基づいて薄片1を選定、裁断する。薄片1を裁断前又は薄片1に裁断後、加熱器の出力の大きさと生産効率に基づいて加熱温度100℃〜200℃の間、加熱時間5秒〜30秒の間にて薄片1を加熱することもできる。例えば、加熱温度150℃、加熱時間15秒で薄片1を前収縮させると、出来上がったジェルマットは平らかになる。
【0012】
B、製袋:プラスチック層の片面の2枚の薄片1を向き合せて加熱し、プラスチック層4の表面を溶解させ、向き合わせた薄片1を、注入口のみを残して周囲が密閉された袋2につくる。袋2の大きさにより袋2の中間位置に2層の薄片1を直接粘着させる1本又は数本の補強筋6をつけてもよい。
【0013】
C、モノマー溶液流し込み:水と、モノマーと、架橋剤と、開始剤と、更に顔料及び/又は香料を加えてもよく、これらを混合してモノマー溶液とし、注入口から袋2内に流し込む。流し込むときに空気が袋2に入った場合は必ず空気を排出してから注入口を塞ぐ。
【0014】
前記モノマーとは、アクリル酸とそのアルカリ金属塩、メタクリル酸とその金属塩、及び(メチル)アクリル酸生成のエステル類の中の1種類又は数種類などのポリアクリル酸系高吸水性樹脂の製造に用いる水溶性モノマー、若しくはアクリルアミド、メタアクリルアミドなどのポリアクリルアミド系高吸水性樹脂の製造に用いるモノマー、若しくは以上の2種類のモノマーの組合せを指す。
【0015】
前記架橋剤とは、ジビニル又はトリビニル化合物、不飽和モノカルボン酸又は多価カルボン酸と多価アルコールなどからなるポリアルコール、ジアクリルアミド、多価アルコールのジエーテル又はポリエーテルなどの非共役二重結合をもつ化合物、若しくはアルカリ土金属化合物、亜鉛化物、鉄化物、アルミニウム化物などの多価金属化合物、若しくはアクリル酸グリシジルエステル、エチレングリコール、エチレンジアミン、エチレングリオキサール、フェニル酢酸などの化合物を指す。
【0016】
前記開始剤は過酸化物又はアゾ類化合物などの熱分解体系、若しくは過酸化水素、イソプロピルベンゼン過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの酸化還元体系のグループと、F2+、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、一(多)価アミン、スルフィン酸類ヒドラジンなどのグループとの2グループ間の任意な組合せを有し、硝酸セリウムアンモニウム、三塩化鉄、五価アルミナ塩などの若干の金属化合物があってもよい。
【0017】
前記水、モノマー、架橋剤、開始剤の間の重量比は水60%〜80%、モノマー10%〜30%、架橋剤0.1%〜6%、開始剤0.1%〜6%である。
【0018】
D、加熱固化:モノマー溶液を流し込んだ袋2を加熱器の上に平らに置いて、通常加熱温度50℃〜80℃の間で加熱し、モノマー溶液が袋2内で完全に重合反応し薄片状のポリマー、すなわちジェル5を生成させると完了する。前記加熱器は、必要に応じて温度を30℃〜100℃間で調節可能な2層又は多層ヒートパネルを空気圧又は油圧により昇降自在に押圧する設備である。袋2はヒートパネルの間に挟んで加熱、加圧される。
【0019】
E、検査及び包装:加工品質を検査し、検査に合格した製品を包装して倉庫に入れる。
【符号の説明】
【0020】
1 薄片
2 袋
3 織布又はフロック生地
4 プラスチック層
5 ジェル
6 補強筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側面に、綿布又は化繊布或いは綿繊維と化繊との混紡布のうちのいずれかからなる織布、又はフロック生地からなる層を配置し、内側面に、PVC又はPE或いはPU若しくはTPU材料のうちのいずれかからなるプラスチック層を配置し、これらの2層を積層して形成される薄片からなる密閉された袋を備え、当該袋の中に薄片状のジェルが詰められていることを特徴とするジェルマットの生産方法であって、
順に以下のA〜Eのステップ、すなわち、
A、材料の準備:ジェルマットの外形寸法及び材料要件に基づいて薄片を裁断するステップと、
B、製袋:プラスチック層を有する薄片を向き合せて加熱し、プラスチック層の表面を溶解させ、向き合わせた薄片を、注入口のみを残して周囲が密閉された袋につくるステップと、
C、モノマー溶液流し込み:水と、モノマーと、架橋剤と、開始剤とを混合してモノマー溶液とし、注入口から袋内に流し込み、次に注入口を塞ぐステップと、
D、加熱固化:モノマー溶液を流し込んだ袋を加熱器の上に平らに置いて加熱し、モノマー溶液が袋内で完全に重合反応し薄片状のポリマー、すなわちジェルを生成させるステップと、
E、検査及び包装:加工品質を検査し、検査に合格した製品を包装して倉庫に入れるステップと、
を含むことを特徴とするジェルマットの生産方法。
【請求項2】
前記ステップAにおいて、前記薄片に裁断前又は薄片に裁断後、薄片を加熱温度100℃〜200℃の間、加熱時間5秒〜30秒の間にて加熱して薄片を前収縮させることを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。
【請求項3】
前記モノマー溶液の中に、顔料及び/又は香料を更に有することを特徴とする請求項1又は2記載のジェルマットの生産方法。
【請求項4】
前記ステップCにおける前記モノマーとは、ポリアクリル酸系高吸水性樹脂の製造に用いる水溶性モノマー又はポリアクリルアミド系高吸水性材料の製造に用いるモノマーを指すことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のジェルマットの生産方法。
【請求項5】
前記ポリアクリル酸系高吸水性樹脂の製造に用いる水溶性モノマーとは、アクリル酸とそのアルカリ金属塩又はメタクリル酸とその金属塩又はメタクリル酸生成のエステル類の中の1種類又は数種類、若しくはアクリル酸生成のエステル類の中の1種類又は数種類を指すことを特徴とする請求項4記載のジェルマットの生産方法。
【請求項6】
前記ポリアクリルアミド系高吸水性樹脂の製造に用いるモノマーとは、アクリルアミド及び/又はメタアクリルアミドを指すことを特徴とする請求項4記載のジェルマットの生産方法。
【請求項7】
前記架橋剤とは、非共役二重結合をもつ化合物若しくは多価金属化合物若しくはアクリル酸縮水グリシジルエステル又はエチレングリコール又はエチレンジアミン又はエチレングリオキサール又はフェニル酢酸を指すことを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。
【請求項8】
前記非共役二重結合の化合物とは、ジビニル又はトリビニル化合物又は不飽和モノカルボン酸又は多価カルボン酸と多価アルコールからなるポリアルコール又はジアクリルアミド又は多価アルコールのジエーテル又はポリエーテルを指すことを特徴とする請求項7記載のジェルマットの生産方法。
【請求項9】
前記多価金属化合物とは、アルカリ土金属化合物又は亜鉛化物又は鉄化物又はアルミニウム化物を指すことを特徴とする請求項7記載のジェルマットの生産方法。
【請求項10】
前記開始剤は、熱分解体系又は酸化還元体体系又は若干の金属化合物を有することを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。
【請求項11】
前記熱分解体系とは、過酸化物又はアゾ類化合物を指すことを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。
【請求項12】
前記酸化還元体体系とは、過酸化水素及び/又はイソプロピルベンゼン過酸化水素及び/又は過硫酸アンモニウム及び/又は過硫酸カリウムのグループと、F2+及び/又は亜硫酸塩及び/又はチオ硫酸塩及び/又は一(多)価アミン及び/又はスルフィン酸類ヒドラジンのグループとの2グループ間の任意な組合せを指すことを特徴とする請求項10記載のジェルマットの生産方法。
【請求項13】
前記金属化合物とは、硝酸セリウムアンモニウム又は三塩化鉄又は五価アルミナ塩を指すことを特徴とする請求項10記載のジェルマットの生産方法。
【請求項14】
前記加熱器は、必要に応じて温度を30℃〜100℃間で調節可能な2層又は多層ヒートパネルを空気圧又は油圧により昇降自在に押圧する設備であることを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。
【請求項15】
前記水と、モノマーと、架橋剤と、開始剤との間の重量比は、水60%〜80%、モノマー10%〜30%、架橋剤0.1%〜6%、開始剤0.1%〜6%であることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のジェルマットの生産方法。
【請求項16】
前記薄片状ジェルの厚さは、2mm乃至5mmの間であることを特徴とする請求項1記載のジェルマットの生産方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−46805(P2013−46805A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−240164(P2012−240164)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【分割の表示】特願2009−61334(P2009−61334)の分割
【原出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(592103349)株式会社ヒラカワコーポレーション (12)
【出願人】(509073822)
【Fターム(参考)】