説明

ジュロリジン誘導体の製造方法

【課題】ジュロリジン(Julolidine、下式)誘導体の新規な合成法を提供する。
【解決手段】従来より多様なジュロリジン誘導体を合成することが可能になる。


溶媒中で、Sc(OTf)3などで表されるルイス酸金属触媒又はこの触媒を高分子に担持した触媒の存在下で、アニリン又はその誘導体、アルデヒド化合物、及びビニル化合物を混合することにより、ジュロリジン誘導体が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュロリジン誘導体の新規合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジュロリジン(Julolidine、下式)及びその誘導体は、蛍光物質、有機半導体、有機光発電素子等に応用可能な電子受容体−供与体化合物等において有効に機能することが知られている。
【化3】

しかし、ジュロリジン誘導体の合成法はこれまでに数例しか知られておらず(例えば、非特許文献1〜3など)、それらの方法では、きわめて単純な構造のジュロリジン誘導体しか合成することができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 5753-5757
【非特許文献2】J. Org. Chem. 1996, 61, 3117-3126
【非特許文献3】Org. Prep. Proc. Int, 2001, 33, 603-613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ジュロリジン誘導体の新規な合成法を提供するものであり、この方法によれば従来より多様なジュロリジン誘導体を合成することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本願発明は、液相で、ルイス酸金属触媒又はこの触媒を高分子に担持した触媒の存在下で、下式
【化1】

(式中、式中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基を表し、mは0〜3の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。)で表わされるアニリン又はその誘導体、
下式
−CHO
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表わされるアルデヒド化合物、及び
下式
−CH=CH−R
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。)で表わされるビニル化合物、
を混合することから成る、下式
【化2】

(式中、R〜Rは上記と同様を表す。)で表わされるジュロリジン誘導体(アニリン又はその誘導体が(1)の場合(3)又は(4)のジュロリジン誘導体が生成し、アニリン又はその誘導体が(2)の場合(5)のジュロリジン誘導体が生成する。)で表わされるジュロリジン誘導体の製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のジュロリジン誘導体の合成方法は、溶媒中で、ルイス酸金属触媒又はこの触媒(即ち、ルイス酸金属触媒)を高分子に担持した触媒の存在下で、アニリン又はその誘導体、アルデヒド化合物、及びビニル化合物を混合することから成る。
【0007】
このルイス酸金属触媒は、Mで表されるルイス酸金属化合物である。
はCu(2価)、Zn(2価)、Fe(2又は3価)、Sc(3価)又はランタノイド元素(57La〜71Lu)(3価)、好ましくはSc又はCuを表す。
nはMの原子価に相当する整数であり、2又は3を表す。
Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCF(OTf)、好ましくはOTfを表す。
【0008】
また、ルイス酸金属触媒を高分子に担持した触媒は、如何なる方法で上記ルイス酸金属化合物を高分子に担持させてもよいが、好ましくは、液相で、粒径が1〜10nmの金クラスター、ジスルフィドモノマー、ジスルフィドのスルホン酸塩、及びルイス酸金属化合物(上記で定義した。)を混合し、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより形成される。
【0009】
ここで用いる金クラスターは、通常溶媒又は有機物質中に粒径が1〜10nmの金クラスターとして分散しているものであれば特に限定されない。このような金クラスターの製法は公知であり、例えば、Tsukuda et al. JACS, 2005, 127, 13464.、Hutchison et al. J. Phys. Chem.B 2002, 106, 9979.、Murray et al. JACS, 2005, 127, 8126.等の文献に記載されている。
【0010】
ここで用いるジスルフィドモノマーは、下式
CH=CH−R10−S−S−R10−CH=CH
で表わされる。
式中、R10は、エーテル結合(−O−)を含んでもよい2価の炭化水素鎖を表す。この炭化水素鎖は、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基若しくはアルキレンオキシド、又はこれらのうち少なくとも2つがブロック状に結合した鎖であり、直鎖であっても分岐であってもよく、全体の炭素数は好ましくは5〜100程度である。アルキレン基としては、例えば、−(CH−(式中、oは全体の中のアルキレン基の炭素数に相当する数字を表す。)が挙げられ、アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレン基などが挙げられる。アルキレンオキシドとしては、例えば、−(CHCHO)−や−(CHO)−(式中、pは全体の中のアルキレンオキシドの炭素数に相当する数字を表す。)又はこれらが混在するアルキレンオキシド鎖などが挙げられる。
【0011】
ここで用いるジスルフィドのスルホン酸塩は、下式
S−R11−S−S−R11−SO
で表わされる。
式中、R11はエーテル結合を含んでもよい2価の炭化水素鎖を表し、R10と同様に定義される。
はアルカリ金属、例えば、Li、Na、K等を表す。
【0012】
ここで用いるルイス酸金属化合物は、Mで表され、上記で定義したとおりである。
ジスルフィドのスルホン酸塩のアルカリ金属(Mは溶液中で、ルイス酸金属化合物のMと置換され、ジスルフィドのスルホン酸塩はMの塩となる。
【0013】
これらを液相で混合すると、ジスルフィドモノマー及びジスルフィドのスルホン酸塩のジスルフィドが薄膜となって、優先的に金クラスターに結合し、金クラスターをジスルフィドモノマー及びジスルフィドのスルホン酸塩が内包する形態となる。
この混合物にスチレンモノマーを加えておいてもよい。
溶媒としては、特に限定されないが、極性溶媒であるTHF、ジオキサン、アセトン、DMF、NMP、メタノール、エタノール、ブタノール、アミルアルコールなど、非極性溶媒でるトルエン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが使用できる。
溶液中の、ジスルフィドモノマー濃度は0.1〜2M、好ましくは0.5〜1Mである。ジスルフィドのスルホン酸塩の配合量は、ジスルフィドモノマー1モルに対して0.05〜10モル、好ましくは0.1〜1モルであり、スカンジウムのルイス酸金属化合物の配合量はジスルフィドモノマー1モルに対して1〜10モル、好ましくは1〜5モルである。スチレンモノマーはジスルフィドモノマー1モルに対して0〜10モル、好ましくは1〜5モル加えてもよい。
【0014】
このように、金クラスターをジスルフィドモノマー及びジスルフィドのスルホン酸塩が内包し、更に3価のスカンジウムが担持されて、任意に更にスチレンモノマーを含有するミセル状混合物が形成される。
ジスルフィドモノマーに含有させたビニル基及び任意に混合したスチレンモノマーを架橋させて、このミセル状混合物を高分子化する。
重合反応は、過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤を用いて、慣用の方法で行うことができる。
重合させる際の温度は、通常50〜160℃、好ましくは60〜120℃程度である。
重合反応させる際の反応時間は、通常0.1〜100時間、好ましくは1〜10時間程度である。
【0015】
本発明で用いるアニリン又はその誘導体は、下式で表される。
【化1】

式中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、好ましくは、ハロゲン原子、アシル基又はアルキル基を表す。mは0〜3の整数である。Rは、3,4,5位のいずれか又は複数についてもよい。
は、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは水素原子又はアルキル基を表す。
及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。
また、R及びRは、これらが結合するビニル基と一緒に、ヘテロ原子としてO、S又はNを含んでもよい脂肪族又は芳香族の5員環又は6員環を形成してもよい。
【0016】
上記各置換基において、
ハロゲン原子は、好ましくは塩素原子又は臭素原子ヨウ素、フッ素である。
アルキル基は、好ましくは炭素数が1〜4のアルキル基である。
アルコキシ基は、好ましくは炭素数が1〜4のアルコキシ基である。
アリール基は、好ましくはフェニル基又はα若しくはβ−ナフチル基である。
アラルキル基は、好ましくは−(CH12(式中、nは1〜4の整数を表し、R12はフェニル基又はα若しくはβ−ナフチル基を表す。)で表される。
なお、後述するように上記(2)アニリン誘導体(又はテトラヒドロキノリン誘導体)は、本願発明の方法において出発物質として(1)アニリンを用いた場合に生成されうる中間体であり、更に反応を進めて、目的とするジュロリジン誘導体を得ることができる。
【0017】
本発明で用いるアルデヒド化合物は、下式で表される。
−CHO
式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは水素原子又はアルキル基を表す。
アルキル基、アリール基及びアラルキル基は上記と同様に定義される。
【0018】
本発明で用いるビニル化合物は、下式で表される。
−CH=CH−R
式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。
これらアルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアラルキル基は上記と同様に定義される。
また、R及びRは、これらが結合するビニル基と一緒に、ヘテロ原子としてO、S又はNを含んでもよい脂肪族又は芳香族の5員環又は6員環を形成してもよい。
【0019】
これらアニリン又はその誘導体、アルデヒド化合物及びビニル化合物を、溶媒中で、上記触媒の存在下で混合する。
水、水溶性有機溶媒又はこれらの混合溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒としてはアセトニトリル、THFなどが挙げられ、アセトニトリルが好ましい。
この水溶性有機溶媒としては、メタノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、アセトニトリル、THFなどが挙げられる。
溶媒中の各反応基質の濃度は、通常0.1〜2M、好ましくは0.25〜1Mである。
触媒の濃度量は基質に対して通常1〜20mol%、好ましくは1〜10mol%である。
反応温度は、通常−20〜100℃、好ましくは0〜60℃である。
反応時間は、通常1〜72時間、好ましくは4〜24時間である。
【0020】
その結果、下式で表わされるジュロリジン誘導体が得られる(式中、R〜Rは上記と同様を表す。)。
【化2】

このうち(3)及び(4)のジュロリジン誘導体は、出発物質として(1)のアニリンを用いた場合に生成し、この場合、中間体として(2)アニリン誘導体(又はテトラヒドロキノリン誘導体)が生成されうる。(5)のジュロリジン誘導体は、出発物質として(2)アニリン誘導体を用いた場合に生成する。
【実施例】
【0021】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
また、各種の物性は以下の機器を用いて測定した。NMRスペクトル:JEOL-LA300、JEOL-LA400又はJEOL-LA500(日本電子(株)製)、IRスペクトル:JASCO FT/IR-610(日本分光(株)製)。
【0022】
製造例1
この製造例では、4-4'ジスルファンフェノール(4,4'-disulfanediyldiphenol)を合成した。
パラヒドロキシチオフェノール(25.0g, 和光純薬工業(株)製)をジメチルスルホキシド(100 mL、関東化学(株)製)に0℃で溶解させた。この反応溶液を65℃で24時間攪拌し、反応終了後0度に冷却し、ジエチルエーテル(100 mL、和光純薬工業(株)製)で希釈した。これに水を加え、水相をジエチルエーテル50 mL×3で抽出した。この有機相を硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)で乾燥させ、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)から再結晶して、4,4'-disulfanediyldiphenol (23.8 g, 96% Yield)を得た。以下生成物の分析結果を示す。
1H NMR (DMSO-d6) δ 6.75-6.77 (d, J=8.6 Hz, 4H), 7.26-7.28 (d, J=8.6 Hz, 4H) 9.86 (br s, 2H); 13C NMR (DMSO-d6) δ 116.4, 125.1, 133.1, 158.3; HIMS (m/z) calcd. for C12H10O2S2 (MH+): 250.01135, found: 250.01218.
【0023】
製造例2
この製造例では、1,2-bis(4-(4-vinylbenzyloxy)phenyl)disulfaneを合成した。
製造例1で得た4-4'ジスルファンフェノール(30.2 g)と炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製、50 g)をDMF(TCI特級200 mL)に室温で溶かし、1?クロロメチル4-ビニルベンゼン(アルドリッチ社製、40.5 g)を加え85℃に加熱した。反応溶液は24時間攪拌した。反応溶液を0℃に冷却しジクロロメタン(関東化学(株)製、100 mL)で希釈し、水でクエンチした。水相をジクロロメタン(100 mL)で注油津市、あわせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機溶媒を留去しヘキサンで洗浄し1,2-bis(4-(4-vinylbenzyloxy)phenyl) disulfane (50.2 g, 86%)を得た。以下生成物の分析結果を示す。
1H NMR (CDCl3) δ 5.03 (s, 4H), 5.25-5.27 (d, J=10.9 Hz, 2H) 5.75-5.78 (d, J=17.8 Hz, 2H), 6.69-6.75 (dd, J=6.3 Hz, 11.5 Hz, 11.5 Hz, 2H), 6.88-6.90 (d, J=9.2 Hz, 4H), 7.36-7.44 (m, 12H); 13C NMR (CDCl3) δ 69.8, 114.2, 115.5, 126.4, 127.7, 128.7, 132.4, 136.0, 136.3; DART-MS (m/z) calcd. for C30H26O2S2 (MH+): 482.13742, found: 482.13608.
【0024】
製造例3
この製造例では、lithium 3,3'-(4,4'-disulfanediylbis(4,1-phenylene)bis(oxy))dipropane-1-sulfonateを合成した。
製造例1で得た4-4'ジスルファンフェノール(6.47 g)をエタノール(和光純薬工業(株)製100 mL)に溶かし、0℃に冷却した。リチウムヒドロキシド(TCI特級2.58 g)をゆっくり加えた。混合溶液を室温まで昇温し一時間攪拌した。反応溶液を0度に冷却し、スルトン(和光純薬工業(株)製7.89 g)を加えた。反応溶液を室温に昇温し24時間攪拌した。反応終了後生じた固体をエタノール(和光純薬工業(株)製100 mL)で洗浄して lithium 3,3'-(4,4'-disulfanediylbis(4,1-phenylene)bis(oxy))dipropanme-1-sulfonate(11.6 g, 85% Yield)を得た。以下生成物の分析結果を示す。
1H NMR (D2O) δ 2.01-2.04 (m, 4H), 2.89-2.91 (t, J=7.6 Hz, 8.2 Hz, 4H), 3.94-3.96 (t, J=6.2 Hz, 6.9 Hz, 4H), 6.75-6.77 (d, J=8.3, 4H), 7.26-7.27 (d, J=8.9 Hz, 4H); 13C NMR (D2O) δ 24.9, 48.5, 67.2, 116,0, 128.6, 132.5, 158.9. .
【0025】
製造例4
この製造例では、文献(JACS, 2005, 127, 13464-13465)記載の方法で金クラスターを用意した。
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3、和光純薬工業(株)製、76 mg)をクロロトリフェルホスフィン金(AuClPPh3、1.0g)のエタノール(和光純薬工業(株)製、55 mL)溶液に15分かけて添加した。室温で2時間攪拌した後、ヘキサン(1 L)に注ぎ、20時間攪拌した。メンブレンフィルターにて濾過し茶色の固体を得た。メンブレンフィルターの上で得られた固体はヘキサン(100 mL)、ジクロロメタン/ヘキサン(1:1, 4X15 mL)、ジクロロメタン/ヘキサン(3:1、10mL)で洗浄した。メンブレンフィルターの上に残った固体をジクロロメタン(50 mL)に溶解し、ジクロロメタンを留去することで金クラスター(382 mg) を得た。
【0026】
製造例5
この製造例では、製造例2〜4で得た原料を用いて、金−高分子ナノ構造体担持スカンジウム触媒を合成した。
DMF (和光純薬工業(株)製、3 mL)に、製造例4で得た金クラスター(0.4 mmoL as Au)を溶解させ70℃に加熱した。そこに、スチレン(東京化成工業(株)製、3.42 mmol)、製造例2で得た1,2-bis(4-(4-vinylbenzyloxy)phenyl) disulfane、42 mmol)、製造例3で得たlithium 3,3'-(4,4'-disulfanediylbis(4,1-phenylene) bis(oxy))dipropane-1-sulfonate(3.42 mmol)、スカンジウムトリフラート(Sc(TOf)3、和光純薬工業(株)製、2.4 mmol)、12-クラウン4-エーテル(東京化成工業(株)製、1.92 mmol)、AIBN(和光純薬工業(株)製0.034 mmol)を加え、70℃で8時間加熱した。生じた固体をジクロロメタン(50 mL)、メタノール(和光純薬工業(株)製、50 mL)水で洗浄し、スカンジウム触媒を得た(以下「GS Y触媒」という。)。このスカンジウム触媒中の各金属の含有量は、Sc 0.0804 mmol/g、Au 0.132 mmol/g、Li 0.0303 mmol/gであった。
【0027】
実施例1
この実施例では、製造例5で合成したGS Y触媒を用いて、下式に従ってジュロリジン誘導体を合成した。構造式の下の番号は化合物の番号を示す。
【化4】

GS Y触媒(Scで0.02 mmol)をアセトニトリル(2 mL)に入れ、37%ホルムアルデヒド水溶液(150μL)とパラクロロアニリン(和光純薬工業(株)製、51.0 mg)、2,3ジヒドロフラン(東京化成工業(株)製、90.4μL)を加えて、室温でアルゴン雰囲気下48時間攪拌した。CS Y触媒を濾過によって取り除き、溶媒を留去し、薄層クロマトグラフィー(pTLC)で精製し、ジュロリジン誘導体を得た(全収率98%、Trans体54%、Cis体44%)。なおスカンジウムの漏出はICP分析において観測されなかった。結果を下表に示す。
【表1】

【0028】
以下生成物の分析結果を示す。
Julolidine 1a (Trans体):
1H NMR (CDCl3) δ 1.89-1.92 (m, 2H), 2.15-2.18 (m, 2H), 2.60 (m, 2H), 2.80-2.83(m, 2H), 2.97-3.00 (m, 2H), 3.77-3.82 (m, 2H), 3.86-3.90 (m, 2H), 4.68-4.70 (d, J=6.3 Hz, 2H), 7.22 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 24.8, 29.3, 36.1, 51.1, 65.9, 74.5, 123.0, 123.9, 130.1, 142.3; DART-MS (m/z) calcd. for C16H18NO2Cl(MH+): 291.10261, found: 291.10343. CCDC 762699.
Julolidine 1b (Cis体):
1H NMR (CDCl3) δ 1.70-1.74 (m, 2H), 2.24-2.29 (m, 2H), 2.50 (m, 2H), 2.59 (m, 2H), 2.93-2.96 (m, 2H), 3.79-3.84 (m, 2H), 3.93-3.98 (m, 2H), 4.47-4.48 (d, J=4.6, 2H), 7.28 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 30.0, 30.9, 35.4, 51.0, 66.0, 123.6, 127.9, 132.3, 142.8; DART-MS (m/z) calcd. for C16H18NO2Cl(MH+): 291.10261, found: 291.10343. CCDC 762698.
【0029】
実施例2
この実施例では、GS Y触媒に代えてイッテルビウムトリフラート(Yb(OTf)3、和光純薬工業(株)製)及びスカンジウムトリフラート(Sc(OTf)3、和光純薬工業(株)製)を用いて、Sc量を0.02 mmolに合わせて、実施例1と同様の反応を行なった。
その結果、実施例1と同じジュロリジン誘導体を得た。結果を下表に示す。
【表2】

【0030】
実施例3
この実施例では、表3に示すアニリン又はアニリン誘導体を用いて、実施例1と同様の反応を行なった。
その結果、実施例6と同じジュロリジン誘導体を得た。結果を下表に示す。構造式の下の番号は化合物の番号を示す。
【表3】

これらの基質を用いた場合においても、ジュロリジン誘導体を得た。
【0031】
以下生成物の分析結果を示す。
Julolidine 2a (Trans体):
1H NMR (CDCl3) δ 1.93 (m, 2H), 2.14-2.17 (m, 2H), 2.60 (m, 2H), 2.80-2.84 (m, 2H), 2.96-3.00 (m, 2H), 3.78 (m, 2H), 3.86 (m, 2H), 4.75-4.76 (d, J=6.4 Hz, 2H), 6.77-6.81 (t, J=7.2 Hz, 8.0 Hz, 1H), 7.25-7.27 (d, J=6.8 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 23.9, 29.3, 34.2, 50.6, 64.5, 74.2, 124.0, 127.3, 132.8, 143.4; DART-MS (m/z) calcd. for C16H19NO2 (MH+): 257.14158, found: 257.14037.
Julolidine 2b (Cis体):
1H NMR (CDCl3) δ 1.71-1.76 (m, 2H), 2.26-2.32 (m, 2H), 2.52 (m, 2H), 2.59-2.63 (m, 2H), 2.92-2.95 (m, 2H), 3.80-3.85 (m, 2H), 3.94-3.99 (m, 2H), 4.53-4.54 (d, J=5.2 Hz, 2H), 6.79-6.82 (t, J=7.5 Hz, 8.0 Hz, 1H), 7.31-7.33 (d, J=7.5 Hz, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ23.9, 30.0, 33.9, 50.2, 64.3, 73.6, 124.5, 127.2, 132.9, 143.6; DART-MS (m/z) calcd. for C16H19NO2 (MH+): 257.14158, found: 257.14037.
Julolidine 3a (Trans体):
1H NMR (CDCl3) δ1.90-1.93 (m, 2H), 2.12-2.15 (m, 2H), 2.60 (m, 2H), 2.71-2.75 (m, 2H), 2.87-2.90 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.74-3.84 (m, 2H), 3.85-3.89 (m, 2H), 4.71-4.72 (d, J=6.9 Hz, 2H), 6.86 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ23.8, 31.0, 32.9, 50.1, 54.1, 64.2, 73.3, 123.5, 127.1, 132.6, 143.5; DART-MS (m/z) calcd. for C17H21NO3 (MH+): 287.15214, found: 287.15311.
Julolidine 3b (Cis体):
1H NMR (CDCl3) δ 1.71 (m, 2H), 2.10-2.15 (m, 2H), 2.24 (m, 2H), 2.51 (m, 2H), 2.88-2.89 (m, 2H), 3.72 (s, 3H), 3.74-3.81 (m, 2H), 3.91-3.94 (m, 2H), 4.50-4.51 (d, J=4.6 Hz, 2H), 6.92 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ23.8, 31.2, 32.8, 50.3, 54.3, 64.1, 73.2, 123.4, 127.4, 132.5, 143.6; DART-MS (m/z) calcd. for C17H21NO3 (MH+): 287.15214, found: 287.15311.
Julolidine 4a (Trans体):
1H NMR (CDCl3) δ1.90 (m, 2H), 2.11-2.15 (m, 2H), 2.21 (s, 3H), 2.59 (m, 2H), 2.73-2.77 (m, 2H), 2.89-2.92 (m, 2H), 3.75-3.78 (m, 2H), 3.84-3.98 (m, 2H), 4.66-4.71 (d, J=6.9 Hz, 2H), 7.06 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 20.2, 29.6, 36.4, 51.7, 65.8, 122.4, 127.7, 131.1, 141.7; DART-MS (m/z) calcd. for C17H21NO2 (MH+): 271.15723, found: 271.15854
Julolidine 3b (Cis体):
1H NMR (CDCl3) δ1.70-1.75 (m, 2H), 2.25 (s, 3H), 2.28 (m, 2H), 2.52-2.57 (m, 4H), 2.91-2.92 (m, 2H), 3.79-3.84 (m, 2H), 3.94-3,99 (m, 2H), 4.51-4.52 (d, J=4.0 Hz, 2H), 7,15 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3) δ 20.2, 30.2, 35.6, 51.5, 65.2, 121.7, 127.4, 131.6, 141.9; DART-MS (m/z) calcd. for C17H21NO2 (MH+): 271.15723, found: 271.15854.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相で、ルイス酸金属触媒又はこの触媒を高分子に担持した触媒の存在下で、下式
【化1】

(式中、式中、Rは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アシル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基を表し、mは0〜3の整数を表す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、好ましくは水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。)で表わされるアニリン又はその誘導体、
下式
−CHO
(式中、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。)で表わされるアルデヒド化合物、及び
下式
−CH=CH−R
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、−SR(式中、Rはアルキル基又はアリール基を表す。)又はアミノ基を表す。)で表わされるビニル化合物、
を混合することから成る、下式
【化2】

(式中、R〜Rは上記と同様を表す。)で表わされるジュロリジン誘導体(アニリン又はその誘導体が(1)の場合(3)又は(4)のジュロリジン誘導体が生成し、アニリン又はその誘導体が(2)の場合(5)のジュロリジン誘導体が生成する。)で表わされるジュロリジン誘導体の製造方法。
【請求項2】
上記ルイス酸金属触媒が、M(式中、MはCu、Zn、Fe、Sc、又はランタノイド元素を表し、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCFを表し、nは2又は3の整数を表す。)で表されるルイス酸金属化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ルイス酸金属触媒を高分子に担持した触媒が、液相で、粒径が1〜10nmの金クラスター、ジスルフィドモノマー、ジスルフィドのスルホン酸塩、及びScY(式中、Yはハロゲン原子、OAc、OCOCF、ClO、SbF、PF又はOSOCFを表す。)で表されるルイス酸金属化合物を混合し、ラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより形成された金−高分子ナノ構造体担持スカンジウム触媒であって、
該ジスルフィドモノマーが下式
CH=CH−R10−S−S−R10−CH=CH
(式中、R10はエーテル結合を含んでもよい2価の炭化水素鎖を表す。)で表わされ、
該ジスルフィドのスルホン酸塩が下式
S−R11−S−S−R11−SO
(式中、R11はエーテル結合を含んでもよい2価の炭化水素鎖を表し、Mはアルカリ金属を表す。)で表わされる、金−高分子ナノ構造体担持スカンジウム触媒である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
重合する際に更にスチレンモノマーを混合する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
用いた溶媒が、水、水溶性有機溶媒又はこれらの混合溶媒である請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−184382(P2011−184382A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52763(P2010−52763)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】