説明

スイッチギヤ

【課題】天井に放圧板を持つアークプルーフ構造のスイッチギヤにおいて、防滴構造を要求された際に、放圧板とスイッチギヤ天井との隙間から進入してくる水に対する保護が困難であった。
【解決手段】天井部に形成する放圧開口部1bの形状を立上り壁が上方へ突出する煙突形状とするとともに、上面に開口を持つ容器を逆さにした形状の放圧板17bにて、放圧開口部1bを覆い被せ、かつ、放圧板17bと天板101とを放圧板17bの天井部から上方への一定の距離以上の移動を制限する紐状などの連結部材18で結合することで、防滴構造とし、内部短絡事故発生時に放圧板開放に要する時間を短縮するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、盤内に遮断器等を収納し電気を安全に配電するための金属閉鎖形のスイッチギヤに関し、特にその放圧および防滴構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遮断器などの引出形機器を具備し、かつ筐体内部が遮断器室、制御室、制御機器室、共通放圧室、変流器室、母線室、縦母線室及びケーブル室等の各コンパートメントに区画されたアークプルーフ構造のスイッチギヤとしては、実開昭62−098402号公報(特許文献1)のように天井部に放圧板が設けられたスイッチギヤが知られている。特許文献1の実施例では、内部短絡事故が発生した際には、アークにより加熱膨張された空気の圧力が一端を固定された放圧板に加わり、放圧板を曲げて放圧口を開放させ、放圧口よりスイッチギヤの外部へ放圧されるようになっている。
【0003】
また、この種のスイッチギヤにおいては、水滴や塵が天井板の隙間から機器の内部に侵入しやすく、この対策が必要となっている。この一対策として、天井へ落下してくる水滴に考慮した放圧板の例として、実開昭61−007203号公報(特許文献2)が知られている。特許文献2では、天井板の開口部の周囲に防滴枠を取り付けるとともに、防滴枠の上部に開口部を覆う放圧板を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−098402号公報 (第1図)
【特許文献2】実開昭61−007203号公報 (第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すようなスイッチギヤは、内部の短絡事故などによりアークが発生すると、事故発生コンパートメントの内部圧力が上昇し、その圧力で事故発生コンパートメントに設けられた放圧板が開放し、スイッチギヤの外部へ高温高圧ガスの放圧を行うことで、スイッチギヤ内部の圧力上昇を抑制する。
しかしながら、スイッチギヤの天井へ落下してくる水滴に対する保護を要求された場合、放圧板を天井板と固定している箇所、切欠孔部ならびに天井板と放圧板の隙間から進入してくる水に対する保護が困難となる問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に示されるようなスイッチギヤにおいては、天井へ落下してくる水滴に考慮した構造となっているが、放圧板と天井との間には、水が進入可能な隙間が存在する為、完全な防滴効果が得られないという問題点があった。
この発明の目的は、上記の問題点を簡単な構成で解決し、優れた防滴性能と確実な放圧効果を得ることができるスイッチギヤを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるスイッチギヤは、機器本体天井部の放圧用の開口部を立上り壁が上方へ突出する煙突形状とするとともに、上記開口部を上面に開口を持つ容器を逆さにした構造の放圧板で覆い被せ、かつ、上記放圧板と上記天井部は、機器の内部短絡事故発生時に発生する内部からの圧力で開放可能で、かつ飛散防止できるように、上記放圧板の上記天井部から上方への一定の距離以上の移動を制限する連結部材で結合するようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、スイッチギヤの内部短絡事故発生時に放圧板が飛散することを防止でき、また、スイッチギヤの天井へ水滴が落下した場合、水滴は容器状の放圧板の外側を伝わって、天井板に落下する為、放圧板と天井部の隙間に追加の防滴施策を施す必要が無くなる。その為、アークプルーフ構造で、かつ、防滴構造を要求された場合の、スイッチギヤの放圧部の構造が安価にできるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1を示すスイッチギヤの側面縦断面を示す図。
【図2】図1で示すスイッチギヤの天井部の一部を示す斜視図。
【図3】図2において、内部短絡事故発生時の放圧板開放時の状態を示す斜視図。
【図4】この発明の実施の形態2を示すスイッチギヤの天井部の一部を示す斜視図。
【図5】図4において、内部短絡事故発生時の放圧板開放時の状態を示す斜視図。
【図6】この発明の実施の形態3を示すスイッチギヤの天井部の一部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施形態1によるスイッチギヤの側面縦断面を示す図であり、内部短絡事故の発生していない正常運転中の状態を示している。
まず図1によりスイッチギヤの内部構成について説明する。
接地金属製の筐体1の内部は、複数のコンパートメントに区画されている。図の左方(機器の正面側)には、引出形遮断器2が収納される遮断器コンパートメント3が配置されており、この遮断器2は正面側から引き出し可能となっている。遮断器コンパートメント3の後壁には上下に所定の間隔を隔てて主回路の断路部4a、4bが固設してあり、遮断器2の後面(図で右方)に突出した接続端子と着脱できるようになっている。そして断路部4a、4bには、断路端子5a、5bが設けられている。遮断器コンパートメント3の上方は制御器具(図示省略)が収納される制御機器コンパートメント6となっている。
【0011】
遮断器コンパートメント3の背面側上方は、三相の母線7が支持碍子8に支持されて配設された母線コンパートメント9となっており、遮断器2の一端側に接続された断路部4aの主回路端子5aと母線7とが分岐導体10で接続されて収納されている。母線コンパートメント9の後方及び下方は負荷側のケーブル11が収納されるケーブルコンパートメント12となっている。
また、断路端子5bと変流器14とは負荷側導体13で接続されており、主回路断路部4bの下方には接地開閉器15が設置されている。
【0012】
筐体1の正面側にはヒンジにより開閉する扉16が設けられており、遮断器コンパートメント3、制御機器コンパートメント6、ケーブルコンパートメント12の各コンパートメントは独立した室を構成している。主回路部品が収納されるコンパートメント、すなわち、遮断器コンパートメント3、母線コンパートメント9及びケーブルコンパートメント12は、各々筐体1の天井部の天板101に連通している。各コンパートメントの天板101に設けられた放圧開口部1a、1b、1cは、四辺の立上り壁を有し煙突状にスイッチギヤの筺体外部に向かって突出した構造となっている。そして、放圧開口部1a、1b、1cには放圧板17a、17b、17cが各々設けられている。放圧板は、代表例として放圧板17bを図2に示すように、上面を開口した四角形状の容器を逆さにした形状となっており、放圧開口部1bを覆うように設置する。
【0013】
この放圧板17bの大きさは、放圧開口部1bの立上り壁の大きさより少し大きめにしてあり、また、放圧板17bは筐体1の天板101と紐18、または、鎖などの連結部材によって結合されている。放圧開口部1a、1cと放圧板17a、17cとの関係も、放圧開口部1bと放圧板17bの関係と同様な構成となっている。
【0014】
なお、図1に示す筐体1の内部構成は、一例を示すものであり、図の配置構成に限定するものではない。通常は、引出形機器を収納するコンパートメント、母線コンパートメント、ケーブルコンパートメント及び制御機器コンパートメントで構成されるが、ケーブルコンパートメントが無い場合もあり、またこれら以外の構成でも良い。
【0015】
図2は、図1の天井部の一部を示す斜視図である。便宜上、母線コンパートメント9の天井部の放圧開口部1bと放圧板17b及びその関連部分のみを示している。
図3は、図2において内部短絡事故発生時に、内部圧力が上昇して放圧板17bが開放した際の状態を示す図である。内部短絡事故発生時には、同図の如く放圧板17bが上部に持ち上げられ、高温高圧ガスが放圧開口部1bよりスイッチギヤの外部へ放出される。放圧板17bの開放は、放圧板17bが放圧開口部1bを塞いでいる面に、放圧板17bの重量以上の圧力が印加された時から始まる。これは、特許文献1で示されるような、内部短絡事故の際に、放圧板の部分的な塑性変形により放圧板を開放する構造と比べて、放圧板の開放が早くなり、結果として、スイッチギヤ内部の圧力上昇を抑制する効果が期待できる。
さらに、放圧板17a、17b、17cと筐体1の天板101とを連結する紐18の全長を伸ばすことで、内部短絡事故の際の放圧をより促進し、結果としてスイッチギヤ内部の圧力上昇をさらに抑制することが可能となる。
また、放圧板の一辺にヒンジを設けて、そのヒンジを中心に放圧板が回動して放圧板を開放する構造と比べて、放圧板の開放初期の開口面が大きくなるので、内部短絡事故の際の放圧をより促進し、結果としてスイッチギヤ内部の圧力上昇をさらに抑制することが可能となる。
【0016】
なお、図2、図3で示す例では、放圧板17bと天井部の天板101を4箇所の紐18で結合しているが、ここでの紐18は内部短絡事故時に放圧板17bが飛散していくことを防止する為のものであるので、紐18の結合部は、内部短絡事故の際に切断さえしなければ、4箇所未満でも良く、1箇所でも構わない。また、紐18を取付ける箇所は、放圧板17bにおいて、上部より落下してくる水滴の進入に影響を与えなければ、取り付け位置を変更しても構わない。さらに、ここでは放圧板17bと天板101との結合手段として紐18を用いているが、紐状のものであれば鎖のようなものを用いても構わない。
また、図2、図3で示す例では、放圧開口部1b、放圧板17bを四角形状にしているが、機器の構成によっては、四角形状以外の形状でも実施が可能である。
そして、紐18の長さを所定の値とすることにより、放圧板17bは天井部を構成する天板101から上方へ一定の距離以上の移動を行うことが制限され、内部短絡事故発生時に放圧板17bが開放した際に放圧板17bの飛散を防止することができる。
【0017】
実施の形態2.
図4は、この発明を実施するための実施形態2によるスイッチギヤの天井部の一部を示す斜視図である。便宜上、母線コンパートメント9の天井部の放圧開口部1bと放圧板17b及びその関連部分のみを示している。
この実施の形態2では、放圧板17bと天井部の天板101との結合手段として、ばね19を用いている。図5は、内部短絡事故発生時に、放圧板17bが開放した際の状態を示す斜視図である。
【0018】
紐18の代わりにばね19を用いることで、放圧時の放圧板の開放が実施の形態1に比べて遅くなるものの、放圧板17bを天井部に荷重を与えて固定することになり、スイッチギヤの輸送時などで、放圧板17bが天井部から外れてしまうことを防止できる。
また、ばね荷重を上昇させることで、内部短絡事故発生時に、スイッチギヤの内部圧力がある閾値以上に上昇した時に放圧板17bを開放させ、スイッチギヤの内部圧力が閾値以下まで減少すると、放圧板17bを閉鎖する機能を付加することができ、スイッチギヤ内部から放出される高圧高温ガスにおける拡散抑制の効果が得られる。
また、伸縮自在なものであれば、ばね19に代えてゴム紐などを使用することも可能である。
そして、ばね19やゴム紐の伸びきったときの全長を所定の値とすることにより、放圧板17bは天井部を構成する天板101から上方へ一定の距離以上の移動を行うことが制限され、内部短絡事故発生時に放圧板17bが開放した際に放圧板17bの飛散を防止することができる。
【0019】
実施の形態3.
図6は、この発明を実施するための実施形態3によるスイッチギヤの天井部の一部を示す斜視図である。便宜上、図3〜5と同様に、母線コンパートメント9の天井部の放圧開口部1bと放圧板17b及びその関連部分のみを示している。
この実施の形態3では、天井部を構成する天板101と放圧板17bとを連結する連結部材として、天板101に放圧板17bの四隅に対応して植接された4本の連結ポール21と放圧板17bの四隅に水平に延在して固着された4個の連結リング22とを用いている。放圧板17bの四隅に設けた4個の連結リング22を天板101に立てた4本の連結ポール21のそれぞれに各別に通し嵌装することで、放圧板17bが上下に円滑に移動することができる。なお、連結ポール21の最上部には止め具23が設けてあり、内部短絡事故の際に、放圧板17bが飛散していくことを防止している。
【0020】
放圧板17bは、正常運転時には、自重によって下降状態にあり放圧開口部1bを閉塞している。内部短絡事故発生時には、スイッチギヤの内部圧力が閾値を超えて上昇すると、図6に示すように、放圧板17bが上部に持ち上げられ、高温高圧ガスが放圧開口部1bよりスイッチギヤの外部へ放出される。放圧板17bは連結ポール21に沿って上方へ移動し、放圧板17bが連結ポール21の最上部に設けられた止め具23に当接して係止されることにより、放圧板17bは天井部を構成する天板101から上方へ一定の距離以上の移動を行うことが制限され、内部短絡事故発生による内部圧力の上昇によって放圧板17bが開放した際に放圧板17bの飛散を防止することができる。
そして、高圧ガスの外部への放出によりスイッチギヤの内部圧力が閾値以下まで低下すると、放圧板17bは自重により降下して放圧開口部1bを閉塞する。
【符号の説明】
【0021】
1 筐体、 101 天板、 1a、1b、1c 筐体の天板に設けた放圧開口部、 2 遮断器、 3 遮断器コンパートメント、 4a、4b 主回路断路部、 5a、5b 断路端子、 6 制御機器コンパートメント、 7 母線、 8 支持碍子、 9 母線コンパートメント、 10 分岐導体、 11 ケーブル、 12 ケーブルコンパートメント、 13 負荷側導体、 14 変流器、 15 接地開閉器、 16 扉、 17a、17b、17c 放圧板、 18 紐、 19 ばね、 21 連結ポール、 22 連結リング、 23 止め具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体天井部の放圧用の放圧開口部形状を、立上り壁が上方へ突出する煙突形状とするとともに、上面に開口を持つ容器を逆さにした構造の放圧板で上記放圧開口部を覆い被せ、かつ、上記放圧板と上記天井部は、上記放圧板の上記天井部から上方への一定の距離以上の移動を制限する連結部材で結合するようにしたことを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項2】
上記天井部と上記放圧板とは、機器の内部短絡事故発生時に発生する内部からの圧力で開放可能で、かつ飛散防止できるように連結部材で結合されたことを特徴とする請求項1記載のスイッチギヤ。
【請求項3】
上記天井部と上記放圧板が紐状の連結部材で結合されており、機器の内部短絡事故発生時に上記放圧板が開放した際に、上記紐状の連結部材で上記放圧板の飛散を防止するようにしたことを特徴とする請求項2記載のスイッチギヤ。
【請求項4】
上記天井部と上記放圧板が伸縮性の連結部材で結合されており、内部短絡事故発生時には、上記伸縮性の連結部材が延びることによって上記放圧板を開放させるようにしたことを特徴とする請求項2記載のスイッチギヤ。
【請求項5】
上記天井部と上記放圧板が上記天井部に設けられた連結ポールと上記放圧板に設けられ上記連結ポールに嵌装される連結リングとで構成される連結部材で結合されており、内部短絡事故発生時には、上記連結リングが上記連結ポールに沿って移動することによって上記放圧板を開放させるようにしたことを特徴とする請求項2記載のスイッチギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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