説明

スイッチギヤ

【課題】この発明は、ケーブル105の引き込み方向によって設計を変えることなく、同じ部材、同じユニットの組み替えのみで容易に製作できる前面操作、前面保守可能で小形のスイッチギヤを提供するものである。
【解決手段】母線が配置される母線室と、遮断器が配置される遮断器室を構成する遮断器室ユニットと、ケーブルが配置されるケーブル室とにより構成される筐体を備えたスイッチギヤであって、前記遮断器室ユニットは上板、床板、背板を有し、前記背板部には上部ブッシングおよび下部ブッシングの端子が配置され、前記遮断器室ユニットの前記上板から前記上部ブッシングの前記端子までの高さ寸法と前記遮断器室ユニットの前記床板から前記下部ブッシングの前記端子までの高さ寸法とを同一寸法にしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば電力の受配電設備に使用されるスイッチギヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、例えば実開平2−139403号公報に示された従来のスイッチギヤを示す側断面図で、図6はその正面断面図、図8は機器構成を示す単線結線図である。
【0003】
各図において、1はスイッチギヤの母線、2は遮断器、3は変流器、5はケーブル、1Aは一次側機器、3Aは二次側機器である。このものは、遮断器2をスイッチギヤの幅方向に複数台配置し、スイッチギヤ奥行き寸法を極少化した前面操作、前面保守可能のスイッチギヤが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−139403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の特許文献1に記載のスイッチギヤは、ケーブル5の引込がスイッチギヤの床方向からに限定されるため、例えばビルなどの受配電設備計画で、ケーブル5に繋がる機器がスイッチギヤの下階に配置する場合には最適であるが、ケーブル5で繋がる機器がスイッチギヤの上階にある場合には、スイッチギヤの上部にケーブルラックを設けてスイッチギヤの天上部からケーブル5を引き込むという比較的簡単な施工方法が採用出来ない。
【0006】
このため、上階からのケーブル5をスイッチギヤ設置室を通ってスイッチギヤ床下に設けたケーブルピットへケーブルを引き下ろすダクト及びスイッチギヤの床下にケーブルピットスペースを設け、ケーブル5をいったん床下のピットに入れて、スイッチギヤの床から引き込むことになり、ケーブル5の亘長が大きくなり不経済であった。
【0007】
また、ダクトや床下のピット形成のためのスペースと工事費用がケーブルラック設置に比べて割高であるなど、受配電設備工事全体の低コスト化を阻害するという問題があった。
【0008】
また、従来のスイッチギヤでは、受配電設備全体の配置計画の都合でケーブル5をスイッチギヤの天井(図で上側)から引き込む方が、設備全体に適している場合には、スイッチギヤの幅を広げて遮断器の側面にケーブル5の引き込みスペースを確保した構造の筐体とすることや、あるいは、前面保守性は犠牲とし、スイッチギヤの奥行きを大きくして、母線1の後ろ側スペースの天井部からケーブルを引き込む構造にするなど、スイッチギヤが大きくなり、設計が大幅に異なるものとなっていた。
【0009】
このため、小形化、短納期を阻害するなどの問題があり、ケーブル5引込の上下の方向に左右されずに、前面操作、前面保守性が良好で、短納期化に適した小形のスイッチギヤを提供することが課題であった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、同じ筐体、部材を使用してそれらを組替えるだけで、ケーブルの引込方向がスイッチギヤの床方向、天井方向の何れでも適合する、前面操作、前面保守可能で、短納期で製作できるコンパクトなスイッチギヤを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わるスイッチギヤは、母線が配置される母線室と、遮断器が配置される遮断器室を構成する遮断器室ユニットと、ケーブルが配置されるケーブル室とにより構成される筐体を備えたスイッチギヤであって、前記遮断器室ユニットは上板、床板、背板を有し、前記背板部には上部ブッシングおよび下部ブッシングの端子が配置され、前記遮断器室ユニットの前記上板から前記上部ブッシングの前記端子までの高さ寸法と前記遮断器室ユニットの前記床板から前記下部ブッシングの前記端子までの高さ寸法とを同一寸法にしたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係わるスイッチギヤによれば、同じ筐体、部材を使用してそれらを組替えるだけで、ケーブルの引込方向がスイッチギヤの床方向、天井方向の何れでも適合する、前面操作、前面保守可能で、短納期で製作できるコンパクトなスイッチギヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤにおける組替えた状態でケーブルを天井から引き込む状態を示す断面側面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤにおける遮断器室を示す断面部分側面図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。
【図6】従来のスイッチギヤを示す正面図である。
【図7】従来のスイッチギヤを示す断面側面図である。
【図8】従来のスイッチギヤの単線接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1ないし図3に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤにおける組替えた状態でケーブルを天井から引き込む状態を示す断面側面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係わるスイッチギヤにおける遮断器室を示す断面部分側面図である。
【0015】
図1に基づき構成を説明する。101は母線室100に配置された母線、102は遮断器で、この場合は引出形遮断器であり、図の実線で示す状態が接続位置である。102−1は遮断器102が断路位置の状態であり破線で示している。102aは遮断器102の上部ジャンクション、102bは遮断器102の下部ジャンクションで、102−1aは遮断器102が断路位置にある状態の上部ジャンクション、102−1bは下部ジャンクションである。103は変流器であり、図では貫通形変流器を示している。105はケーブル室500に配置されたケーブルであり、スイッチギヤの床から引き込んでいる状態を示す。107はスイッチギヤの筐体であり、接地金属性である。
【0016】
108はスイッチギヤの正面扉であり、詳細は図示しないが、例えば正面から見て左側にヒンジ、右側にハンドルがあり、スイッチギヤ据付、ケーブル接続作業やスイッチギヤ内部の保守点検の際にこれを開いて作業を行なう。
【0017】
109は遮断器102の接続位置の状態で、母線101から遮断器102の上部ジャンクション102aに通電接触する端子間の接続導体、110は遮断器102の接続位置の状態で、遮断器102の下部ジャンクション102bと通電接続する端子からケーブル105が繋がる端子部までの接続導体を示す。111は遮断器室200を構成する遮断器室ユニットを示す。112は制御機器室である。113は筐体107の天井、114は筐体107の床である。
【0018】
図2は、この実施の形態1のスイッチギヤを組替えてケーブルをスイッチギヤの天井から引き込む形態としたもので、図1と同一番号のものは、同一の部品或いはユニットを示す。なお、115は筐体107の天井、116は筐体107の床である。
【0019】
図3は実施の形態1に示す遮断器室ユニット111の断面側面図である。111aは遮断器室ユニット111の床板で、ケーブル室500との区画仕切り板を兼ねた構造である。111bは遮断器室ユニット111の背板で、遮断器102の接続位置で遮断器102の上部ジャンクション102a及び下部ジャンクション102bと通電接続する端子を形成した上部ブッシング111cおよび下部ブッシング111dの支えと遮断器室200とケーブル室500および母線室100の区画仕切り板を兼ねた構造である。111eは遮断器室ユニット111の上板で、遮断器室200と母線室100の区画仕切り板であり、111fは仕切り板で、遮断器102が接続位置の状態で遮断器室200と制御機器室112の区画仕切りを構成する。
【0020】
図1から図3において、遮断器室ユニット111の上板111eから上部ブッシング111cの端子111c1間の寸法をA、遮断器室ユニット111の床板111aから下部ブッシング111dの端子111d1間の寸法をBとして、A=Bとしている。
【0021】
図1に示すスイッチギヤは、ケーブル105をスイッチギヤの床(図1で下側)方向から引き込む場合のものであり、遮断器室ユニット111の上部ブッシング111cの端子111c1の位置をスイッチギヤの筐体107の天井113からCの位置にしたものである。
【0022】
図2は、図1のスイッチギヤを上下逆に回転して置いたものであるが、引出形機器である遮断器102は、逆転して使用する事が出来ないので、遮断器室ユニット111は、図1と同じ方向(上下逆にしない)に組み込んだスイッチギヤである。また、正面扉108と制御機器室112内の機器も、上下左右が逆転すると操作保守に不便となるので図1と同じ方向(上下逆転しない)としている。
【0023】
図1と図2に示すスイッチギヤでは、図3の遮断器室ユニット111は、相対的に上下が逆転して取り付けてあるが、遮断器室ユニット111の上板111eから上部ブッシング111cの端子111c1間の寸法Aと床板111aから下部ブッシング111dの端子111d1間の寸法Bが同じであるので、遮断器室ユニット111以外の組立品を上下逆転させても、遮断器室ユニット111は、そのままの状態で組み込む事が出来る。
【0024】
従い、図2でスイッチギヤの筐体107の床116から遮断器室ユニット111の下部ブッシング111dの端子111d1までの高さはCで、図1のCと同じである。
【0025】
また、詳細な図示による説明は割愛しているが、筐体107は、遮断器室ユニット111及び正面扉108が相対的に上下逆転した場合でも、同じ遮断器室ユニット111、及び同じ正面扉108が取り付け可能に形成されたものである。
【0026】
また、制御機器室112内の制御機器及び配線なども、筐体107と相対的に上下逆転した場合でも同じものが取り付く筐体構成とするだけでなく、制御機器と配線をモジュール化やカセット化するなどしておくほうが良い。この場合に、正面扉及び制御機器一式は筐体の上下逆転に対しても同じ方向で取扱いが可能となるよう、筐体は正面扉のヒンジ及び扉掛け金部が両方で取り付けられるように構成してあり、制御機器一式は、モジュール或いはユニット化して筐体を逆転させても、視認性、操作性、点検性が同じ方向になるようにしておいたほうが良い。
【0027】
この発明の実施の形態1によると、次のような効果を奏することができる。ケーブル105の引き込み方向によって設計を変えることなく、同じ部材、同じユニットの組み替えのみで容易に製作できる前面操作、前面保守可能で小形のスイッチギヤが得られる効果がある。
【0028】
このため、受配電設備全体の配置計画や変圧器や負荷機器などとスイッチギヤ間のケーブルルートなどが決らない場合でも事前にスイッチギヤの部材製作が先行できるので、仕込み生産化が可能で、低コスト化、短納期化が図れる効果がある。
【0029】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2を図4および図5に基づいて説明するが、各図において、同一、または相当部材、部位については同一符号を付して説明する。図4はこの発明の実施の形態2に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。図5はこの発明の実施の形態2に係わるスイッチギヤを示す断面側面図である。
【0030】
図4において、117は母線101、遮断器102、変流器103及び接続導体109、接続導体110などのスイッチギヤの主回路機能機器一式を搭載可能な最小高さ寸法で構成したスイッチギヤの筐体である。118は引込ケーブルの端末処理寸法確保や遮断器102、あるいは正面扉119に搭載した操作機器や計器類(図示なし)の操作性、視認性確保のために必要に応じて取り付ける接地金属からなるケーブル処理箱で、118aは取り外し可能としたカバーである。120は母線室100と制御機器室112の区画仕切りで、121はケーブル室500の保護カバーである。
【0031】
この発明の実施の形態2のスイッチギヤでは、スイッチギヤの筐体117を母線101、遮断器102、変流器103及び接続導体9、接続導体10などの、スイッチギヤの主回路機能機器一式を搭載可能な最小高さ寸法(約1900mm以下となる)で構成し、必要に応じてスイッチギヤ高さを上げる為の接地金属からなるケーブル処理箱118を備えたものである。
【0032】
図4において、遮断器室ユニット111の上板111eから上部ブッシング111cの端子111c1までの寸法Aと遮断器室ユニット111の床板111aから下部ブッシング11dの端子111d1までの寸法Bは、上述した実施の形態1で説明した通り、同一寸法であり、A=Bとしている。
【0033】
更に、この実施の形態2では筐体117の天井113から遮断器室ユニット111の上部ブッシング11cの端子111c1までの寸法Cと筐体117の床114から遮断器室ユニット111の下部ブッシング11dの端子111d1までの寸法を同じCとしている。このC寸法を同一にすることによって、例えば、仕切り板120と保護カバー121を同一部品で共用化ができるなど、上述した実施に形態1の効果に加え、更なる部品の共用化が得られる効果があり、また、スイッチギヤの組立治具の共用化など更に生産効率向上を図るスイッチギヤが得られる。
【0034】
筐体117の床114の下部側に設置した接地金属からなるケーブル処理箱118は上面がケーブル105の貫通用で対地絶縁距離以上の開口を形成し、正面側にケーブル施工作業用の開口を形成し、底部にケーブルグランドなどのケーブル貫通部の水密を確保する水密構造部材122を設けてあり、スイッチギヤの据付とケーブル引込施工作業完了後にカバー118aを水密取付することで、上面以外は水密桶構造となり、接地金属からなるケーブル処理箱118の高さ以下の浸水があった場合でも、スイッチギヤの機能の健全性が確保できるものである。尚、ケーブル105の端末処理を屋外仕様のものにしておけば、接地金属からなるケーブル処理箱118及びカバー118aの水密構造は不要であるのは言うまでも無い。
【0035】
また、筐体117の床114の下部側に水密構造のケーブル処理箱118を備えたので、電気室への一定の高さの浸水事故の場合でもスイッチギヤの機能の健全性が確保できる効果がえられる。
【0036】
図5は、実施の形態2の筐体117を上下逆転させて、ケーブル105を筐体117の天井115から引き込む形に組替えたものである。具体的な組替の方策は、前述、実施の形態1で説明した通りである。
【0037】
図5では、ケーブル10の端末処置部の必要に応じて設ける接地金属からなるケーブル処理箱123を筐体117の天井115の上部側に設置しているため、作業時の便益を考慮して扉124を設けている。これは勿論、ネジ止めカバーであっても良い。
【0038】
また、遮断器102や扉面取り付けの操作機器、計器の操作性、視認性の向上や、電気室での浸水対策などで、筐体117の高さを嵩上げする必要がある場合は、125の箱あるいは架台を設けても良い。
【0039】
この実施の形態2に示すスイッチギヤは、上述した実施の形態1に示したスイッチギヤの諸効果に加え、部品共用が増加し、更なる製造効率向上となるほか、スイッチギヤの全ての機能を搭載した筐体部の高さが低くなり、人の乗用エレベータ及び人の通行用通路での搬送が可能となるので、専用の搬入出通路や大型貨物用エレベータなどが不要になる効果がある。
【0040】
なお、この発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、ケーブルの引き込み方向によって設計を変えることなく、同じ部材、同じユニットの組み替えのみで容易に製作できる前面操作、前面保守可能で小形のスイッチギヤの実現に好適である。
【符号の説明】
【0042】
100 母線室
101 母線
102 遮断器
102−1 遮断器の断路位置
102a 上部ジャンクション
102b 下部ジャンクション
105 ケーブル
107 筐体
111 遮断器室ユニット
111a 床板
111b 背板
111c 上部ブッシング
111c1 端子
111d 下部ブッシング
111d1 端子
111e 上板
113 天井
114 床
115 天井
116 床
117 筐体
118 ケーブル処理箱
123 ケーブル処理箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線が配置される母線室と、遮断器が配置される遮断器室を構成する遮断器室ユニットと、ケーブルが配置されるケーブル室とにより構成される筐体を備えたスイッチギヤであって、前記遮断器室ユニットは上板、床板、背板を有し、前記背板部には上部ブッシングおよび下部ブッシングの端子が配置され、前記遮断器室ユニットの前記上板から前記上部ブッシングの前記端子までの高さ寸法と前記遮断器室ユニットの前記床板から前記下部ブッシングの前記端子までの高さ寸法とを同一寸法にしたことを特徴とするスイッチギヤ。
【請求項2】
前記筐体の天井から前記上部ブッシングの端子までの高さ寸法と前記筐体の床から前記下部ブッシングの端子までの高さ寸法とを同一寸法にしたことを特徴とする請求項1に記載のスイッチギヤ。
【請求項3】
前記遮断器室ユニットの上部側に前記母線室が配置され、前記遮断器室ユニットの下部側に前記ケーブル室が配置され、前記筐体の下部側にケーブル処理箱を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチギヤ。
【請求項4】
前記遮断器室ユニットの下部側に前記母線室が配置され、前記遮断器室ユニットの上部側に前記ケーブル室が配置され、前記筐体の天井上部側にケーブル処理箱を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスイッチギヤ。
【請求項5】
前記ケーブル処理箱は水密構造であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のスイッチギヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−110845(P2013−110845A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253609(P2011−253609)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】