説明

スイッチ付き錠装置

【課題】 構造が簡単で且つ小型化でき、しかもスイッチ切替の際に、明確なクリック音が発せられてスイッチ感を得ることができるようにする。
【解決手段】 外筒3に回転自在に嵌挿し、頭部にキー溝4Aを有する内筒4の後部に固定したスイッチカム5と、キー溝4Aに差し込むキーkにより内筒4と一体にスイッチカム5を回転してスイッチの開閉を行うよう当該スイッチカム5の面側に対向配置したスイッチ片11Aを有するスイッチ機構部11とを備え、スイッチカム5の面側にスイッチ片11Aが当たることでスイッチ作動する少なくとも一対の凸面部23を設ける。スイッチカム5の互いに対称位置となる4箇所に形成した係合凹部を有するバネ嵌合部に対向して外筒3周面に形成した環状溝25内に、バネ21を嵌入し、環状溝25内の孔部を介してスイッチカム5のいずれか2つの係合凹部20にバネ21の係止凸部が係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーの差込み回転操作により扉の開閉や各種電気機器の接点の切替えが行えるスイッチ付き錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスイッチ付き錠装置としては、例えば特許文献1に開示されているように、スイッチカムの外周に形成した凹部に錠本体の解錠時は嵌合されており、錠本体の施錠時、これに連動するスイッチカムの外周面によって押下げられる押ボタンとから構成され、この押ボタンにより可動端子がバネ力に抗して押下げられることで一方の接続端子から離れて他方の接続端子と接触し、これによってスイッチの開閉が行なわれるものとしたスイッチ付き錠構造による技術が提供されている。
【特許文献1】実開平5−24834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来におけるスイッチ付き錠装置によれば、スイッチカムの外周面が押ボタンを押下げることでスイッチを作動させるため、スイッチの外に、内筒の回転角度規制用カム、スイッチカム、スイッチケース等の各部材が必要で構成自体が複雑である。しかも、スイッチがスイッチケース側面に突起した状態で取り付けられているため、装置自体が大型となってしまう。さらに、スイッチ切替の際に、例えば「カチッ」という明確なクリック音が発せられないので、スイッチが作動したか否かのスイッチ感が十分に得られない問題がある。
【0004】
そこで、本発明は叙上のような従来存した諸事情に鑑みなされたもので、構造が簡単で且つ小型化でき、しかもスイッチ切替の際に、明確なクリック音が発せられてスイッチ感が得られるものとしたスイッチ付き錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、外筒と、この外筒に回転自在に嵌挿され、頭部にキー溝を有する内筒と、該内筒の後部に固定されたスイッチカムと、キー溝に差し込まれたキーにより内筒と一体にスイッチカムを回転させてスイッチの開閉が行えるよう当該スイッチカムの面側に対向配置されたスイッチ片を有するスイッチ機構部とを備え、スイッチカムの面側にスイッチ片が当たることでスイッチ機構部を作動させる少なくとも一対の凸面部を設けたものである。
【0006】
また、スイッチカムと内筒後部との間に介在配置され、互いに対称位置となる4箇所に形成された係合凹部を有するバネ嵌合部と、該バネ嵌合部に対向して外筒周面に形成された環状溝と、C型開放部分を介して左右対称位置に内側へ向けて係止凸部が形成されたCリング状のバネとを備え、該バネのC型開放側から若干拡開させるようにして嵌入され、外筒の環状溝内に形成された左右一対の孔部を介して、スイッチカムのいずれか2つの係合凹部にバネの係止凸部がそれぞれ係合するものとした構成とさせることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、構造が簡単で且つ小型化でき、しかもスイッチ切替の際に、明確なクリック音が発せられて明確なスイッチ感を得ることができる。
【0008】
すなわち、スイッチカムの面側にスイッチ片が当たることでスイッチ機構部をON/OFF作動させる少なくとも一対の凸面部を設けたので、従来のように、スイッチの外に、内筒の回転角度規制用カム、スイッチカム、スイッチケース等の各部材が不要となり、コンパクトなスイッチ付き錠装置を形成することができる。
【0009】
また、バネのC型開放側から若干拡開させるようにして嵌入され、外筒の環状溝内に形成された左右一対の孔部を介して、スイッチカム外周のいずれか2つの係合凹部にバネの係止凸部がそれぞれ係合するものとしたので、スイッチカムを角度90度回転してスイッチ機構部のON−OFF操作を行なう毎に、スイッチカムの係合凹部にバネの係止凸部が係合して明確なクリック音を発することができ、且つスイッチ動作の手応えが容易に得られるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明すると、図において示される符号1は、キーkの差込み回転操作により扉の開閉や各種電気機器の接点の切替えが行えるようにしたスイッチ付き錠装置であり、本実施の形態においては、例えば内筒着脱式シリンダー構造のディスクタンブラー錠を採用してある。尚、このディスクタンブラー錠に替わって例えばピンシリンダー錠、レバータンブラー錠等の施解錠構造としても良い。
【0011】
このディスクタンブラー錠によるスイッチ付き錠装置1は、図1、図2に示すように、頭部にフランジ部2が形成されている外筒3と、この外筒3に回転自在に嵌挿され、頭部にキー溝4Aを有する内筒4と、内筒4の後部に固定されたスイッチカム5と、キー溝4Aに差し込まれたキーkにより内筒4と一体にスイッチカム5を回転させてスイッチの開閉が行えるよう当該スイッチカム5の面側に対向配置されたスイッチ片11Aを有するスイッチ機構部11とを備えている。尚、外筒3は、錠前取付部に穿設された若干縦長で略八角形状の貫通孔に対応して縦長八角形状に形成してある。
【0012】
また、図2に示すように、外筒3に嵌着され、相対向した複数箇所に外側へ若干開いたプッシュストッパー6を連設して成る留め具8を備え、これによって錠前取付部の貫通孔に挿入されたスイッチ付き錠装置1を抜脱阻止された状態となってしっかりと固定するものとしてある。すなわち、留め具8は、これの2個でもって外筒3を両面から挟み込んでから当該外筒3に設けられた固定手段9によって係止されるようそれぞれに環状半割型に形成された取付枠部7を備え、該取付枠部7の左右側面部が当接配置される外筒3の溝部10における左右対称位置に上下一対となって突設された三角形斜面状の突起12が、取付枠部7の相対向する両端の左右側面部の略中央にそれぞれ形成された角孔部13に係合保持されるようにしてある。
【0013】
また、ディスクタンブラー錠によるスイッチ付き錠装置1は、図4に示すように、外筒3の上下内壁に複数のディスクタンブラー16A、16B、16C…の上端、下端を進出可能にさせる溝17を形成し、内筒4にはスイッチ開閉のためのスイッチカム5を一端に備えて外筒3へ回動自在に挿入され、内部に形成されている上下開口した中空部内に前記複数のディスクタンブラー16A、16B、16C…が列設した状態で収納されている。
【0014】
各ディスクタンブラー16A、16B、16C…は、その二枚一組が互いに摺動自在に密接され、一側方の凸部の下部、他側方の凸部の上部相互間に不図示のコイルスプリングが斜めに介装されて互いに上下へ反発することにより、一方のディスクタンブラー16Aの上端、他方のディスクタンブラー16Bの下端が外筒3の溝17に別々に進出して内筒4が廻らないようにしてある。そして、ディスクタンブラー16A、16B、16C…は、その中央にキーkの探り溝に係合する鍵穴が各穿孔されて、当該キーkを差し込むことで内筒4に対しディスクタンブラー16A、16B、16C…の各組二枚がそれぞれ別々に移動できるものとし、これによって、外筒2に対して内筒3が回転可能となってスイッチ開閉に伴う解錠が行われ、施錠後にはディスクタンブラー16A、16B、16C…の各鍵穴からのキーkの引き抜きが可能となるようにしてある
【0015】
スイッチカム5は、図5、図6に示すように、円板の一側面中央に矩形状の嵌合凸部14が形成されて成り、この嵌合凸部14に対向して内筒4の後部に形成された矩形状の嵌合凹部15に当該嵌合凸部14を嵌着することでスイッチカム5自体を内筒4の後部に固定するようにしてある。
【0016】
また、嵌合凸部14側の円板周縁は、内側に段差状に起立した円形状の周壁面によってバネ嵌合部18が形成され、このバネ嵌合部18の互いに対称位置となる4箇所には円弧凹状に切欠された係合凹部19が形成されている。すなわち、スイッチカム5を内筒4の後部に固定した際には、当該スイッチカム5と内筒4後部との間に環状のバネ嵌合部18が介在配置されるものとしてある。
【0017】
そして、スイッチカム5を固定した内筒4を外筒3内に挿入してから、前記バネ嵌合部18に対向して外筒3の周面に形成された環状溝25に、C型開放部分を介して左右対称位置に内側へ向けて係止凸部20が形成されたCリング状のバネ21が当該C型開放側から若干拡開させるようにして嵌入され、外筒3の環状溝25内に形成された左右一対の孔部26(図3に示す)を介して、スイッチカム5のいずれか2つの係合凹部19にバネ21の係止凸部20がそれぞれ係合するようにしてある。
【0018】
こうすることで、図3に示すように、キー溝4Aに差し込まれたキーkにより内筒4と一体にスイッチカム5を角度90度回転してスイッチ機構部11のON−OFF操作を行なう毎に、スイッチカム5の係合凹部19にバネ21の係止凸部20が係合してクリック音が発せられ且つスイッチ動作の手応えが得られるようにしている。
【0019】
また、スイッチカム5は、図7、図8に示すように、円板の他側面において、互いに対向する扇型対称形状の凹面部22を介して一対の凸面部23が対向形成され、さらにスイッチカム5の回転方向に沿って、凸面部23のいずれかの縁端側と凹面部22との間を傾斜面部24によって連絡させてある。例えば、この傾斜面部24はスイッチカム5が回転する方向にある凸面部23の縁端側と凹面部22との間を連絡するものである。そして、外筒3の後部開口側には、複数の接続端子11Bを後部に備え、且つ前部には押圧式のスイッチ片11Aを備えたスイッチ機構部11が嵌め込まれ、当該スイッチ片11Aをスイッチカム5の凸面部23、凹面部22それぞれに対向配置するようにしてある。
【0020】
こうすることで、図7(a)、図8(a)に示すように、スイッチ片11Aがスイッチカム5の凹面部22に位置する状態では、スイッチがOFFの状態であり、この位置からスイッチカム5を反時計方向に回転させると、スイッチ片11Aが先ず傾斜面部24に当ってからこれに沿って相対移動して行き、図8(b)に示すように、スイッチ片11Aが凸面部23に到達した状態では、スイッチ片11Aが奥まで押されてスイッチがON状態となるものとしている。
【0021】
次に、以上のように構成された最良の形態についての使用、動作の一例について説明する。先ず、キーkをキー溝4Aに差し込み、内筒4に対しディスクタンブラー16A、16B、16C…の各組二枚がそれぞれ別々に移動し、外筒2に対して内筒3が回転可能となる。このキーkの回転によって内筒4と一体にスイッチカム5が回転する。このとき、スイッチカム5を角度90度回転させる毎に、スイッチカム5のいずれか2つの係合凹部19にバネ21の係止凸部20がそれぞれ係合するため「カチッ」というクリック音が発せられる。
【0022】
このとき、図8(a)に示すように、スイッチ片11Aがスイッチカム5の凹面部22に位置するスイッチOFFの状態から、キーkによりスイッチカム5を後方側から見て反時計方向に角度90度回転させると、スイッチ片11Aが先ず傾斜面部24に当ってからこれに沿って相対移動して行き、図8(b)に示すように、スイッチ片11Aが凸面部23に到達した状態でスイッチ片11Aがスイッチ機構部11の奥まで押されてスイッチONの状態となる。
【0023】
また、キーkによりスイッチカム5を後方側から見て反時計方向に更に角度90度回転させると、スイッチカム5の他の2つの係合凹部19にバネ21の係止凸部20がそれぞれ係合する。このとき、スイッチ片11Aはスイッチカム5の傾斜面部24に位置して当該スイッチ片11Aの押圧が解放されるため、スイッチ機構部11はスイッチOFFの状態となる。こうして、キーkによりスイッチカム5を角度90度回転させる毎に、「カチッ」というクリック音が発せられると同時に、スイッチ機構部11のスイッチON・OFF状態が交互に切り替わる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を実施するための最良の形態を示すスイッチ付き錠装置の正面図である。
【図2】同じくスイッチ付き錠装置の側面図である。
【図3】図2におけるA−A断面図であり、(a)はスイッチOFFの状態の断面図、(b)はスイッチONの状態の断面図である。
【図4】図1におけるB−B断面図である。
【図5】同じくスイッチ付き錠装置の前方側から見た分解斜視図である。
【図6】同じくスイッチ付き錠装置の後方側から見た分解斜視図である。
【図7】スイッチカムの一例を示すもので、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図8】同じくスイッチカムの回転によるスイッチ動作を説明するもので、(a)はスイッチOFFの状態の断面図、(b)はスイッチONの状態の断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 スイッチ付き錠装置
2 フランジ部
3 外筒
4 内筒
4A キー溝
5 スイッチカム
6 プッシュストッパー
7 取付枠部
8 留め具
9 固定手段
10 溝部
11 スイッチ機構部
11A スイッチ片
11B 接続端子
12 突起
13 角孔部
14 嵌合凸部
15 嵌合凹部
16A、16B、16C ディスクタンブラー
17 溝
18 バネ嵌合部
19 係合凹部
20 係止凸部
21 バネ
22 凹面部
23 凸面部
24 傾斜面部
25 環状溝
26 孔部
k キー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、この外筒に回転自在に嵌挿され、頭部にキー溝を有する内筒と、該内筒の後部に固定されたスイッチカムと、キー溝に差し込まれたキーにより内筒と一体にスイッチカムを回転させてスイッチの開閉が行えるよう当該スイッチカムの面側に対向配置されたスイッチ片を有するスイッチ機構部とを備え、スイッチカムの面側にスイッチ片が当たることでスイッチ機構部を作動させる少なくとも一対の凸面部を設けたことを特徴とするスイッチ付き錠装置。
【請求項2】
スイッチカムと内筒後部との間に介在配置され、スイッチカム外周の互いに対称位置となる4箇所に形成された係合凹部を有するバネ嵌合部と、該バネ嵌合部に対向して外筒周面に形成された環状溝と、C型開放部分を介して左右対称位置に内側へ向けて係止凸部が形成されたCリング状のバネとを備え、該バネのC型開放側から若干拡開させるようにして嵌入され、外筒の環状溝内に形成された左右一対の孔部を介して、スイッチカムのいずれか2つの係合凹部にバネの係止凸部がそれぞれ係合して成るようにしたことを特徴とする請求項1記載のスイッチ付き錠装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−265910(P2006−265910A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84217(P2005−84217)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(591225109)ジーエスケー販売株式会社 (14)