説明

スイッチ装置

【課題】 ロック操作およびロック解除操作が容易にできるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】 腕時計ケース1の貫通孔10に取り付けられた円筒部材7と、この円筒部材7に挿入される操作軸部22および外端部の操作頭部21を有する操作部材8と、この操作部材8に取り付けられ、径方向に弾性変位する変位部28を有するばね部材9とを備え、円筒部材7の外周面には、軸方向に沿って形成された案内溝16と、この案内溝16を除く位置に形成された突起部17とが設けられている。従って、操作部材8をロックする際に、操作部材8を押し込むと、ばね部材9の変位部28が弾力的に円筒部材7の突起部17を乗り越えて円筒部材7の突起部17に係止されるので、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に対応していても、ばね部材9の変位部28を円筒部材7の突起部17に係止させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの時計に用いられるスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、腕時計ケースに竜頭などの操作部材が引き出し可能に設けられたスイッチ装置を備えたものが知られている。この種のスイッチ装置は、腕時計ケースから外部に突出した操作部材を引き出し、この状態で操作部材を回転させることにより、時刻を修正するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−194834号公報
【0004】
このようなスイッチ装置は、腕時計ケースの貫通孔に巻真パイプが取り付けられ、この巻真パイプ内に操作部材の軸部が挿入され、この操作部材の軸部に巻真の外端部が取り付けられた構成になっている。この場合、操作部材には、複数の係合凸部を有するリング部材が取り付けられている。また、巻真パイプは、腕時計ケースの貫通孔に取り付けられる小径部と、腕時計ケースの外部に突出する大径部とを有し、この大径部の外周面にリング部材の係合凸部を係脱可能に係止する複数の係止溝部が設けられている。
【0005】
この複数の係止溝部は、リング部材の係合凸部を巻真パイプの軸方向に移動させて係止溝部から離脱可能に案内する着脱用の案内溝と、リング部材の係合凸部における軸方向への移動を規制してロックするロック溝と、リング部材の係合凸部を案内溝とロック溝とのいずれか一方に導く連続溝とを備えている。
【0006】
このため、このスイッチ装置では、リング部材の係合凸部を案内溝に挿入して押し込み、この状態で操作部材を回転させると、リング部材の係合凸部が案内溝から連続溝を経てロック溝に移動して、巻真パイプの軸方向への移動が規制され、これにより操作部材が押し込まれた状態でロックされる。また、このスイッチ装置では、操作部材を回転させてリング部材の係合凸部をロック溝から連続溝を経て案内溝に移動させると、操作部材のロックが解除され、リング部材の係合凸部が案内溝に沿って移動して案内溝から離脱することにより、操作部材が引き出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなスイッチ装置では、操作部材をロックする際に、操作部材を回転させてリング部材の係合凸部を巻真パイプの案内溝に対応させ、この状態で操作部材を押し込んだ後、再び回転させなければ、リング部材の係合凸部を巻真パイプのロック溝に配置させてロックすることができないため、操作部材をロックする際における操作部材の操作が煩雑で面倒であり、操作部材の操作性が悪いという問題がある。
【0008】
この発明が解決しようとする課題は、ロック操作およびロック解除操作が容易にできるスイッチ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、貫通孔を有するケースと、このケースの前記貫通孔に取り付けられた円筒部材と、この円筒部材に挿入される軸部および外端部の操作部を有する操作部材と、この操作部材に取り付けられ、径方向に弾性変位する変位部を有するばね部材と、を備え、
前記円筒部材の外周面には、軸方向に沿って形成されて前記ケースの外側に位置する端部が開口され、且つ前記ばね部材の前記変位部が挿脱可能に挿入して移動する複数の案内溝と、この複数の案内溝を除く位置に形成され、前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも外側に位置した状態で、前記操作部材を軸方向の内側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が弾力的に乗り越え、且つ前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも内側に位置する状態で、前記操作部材を前記軸方向の外側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が当接して前記ばね部材の移動を阻止する突起部と、が設けられていることを特徴とするスイッチ装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、操作部材をロックする際に、操作部材の操作部に設けられたばね部材の変位部が円筒部材の外周面に設けられた突起部に対応していても、操作部材を押し込むと、ばね部材の変位部が弾力的に円筒部材の突起部を乗り越えた後に、ばね部材の変位部が円筒部材の突起部に係止され、ばね部材の移動を阻止することができるので、簡単に操作部材をロックすることができる。また、操作部材を回転させて、ばね部材の変位部を円筒部材の外周面に設けられた案内溝に対応させるだけで、簡単に操作部材のロックを解除することができる。これにより、ロック操作およびロック解除操作が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明を腕時計に適用した第1実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1に示された腕時計のA−A矢視における要部の拡大断面図である。
【図3】図2に示されたスイッチ装置の円筒部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大左側面図、(c)はその拡大右側面図である。
【図4】図3に示された円筒部材を示し、(a)は図3(c)のB−B矢視における拡大断面図、(b)は図3(a)のC−C矢視における拡大断面図、(c)は図3(a)のD−D矢視における拡大断面図である。
【図5】図2に示されたスイッチ装置の操作部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大左側面図である。
【図6】図5に示された操作部材の断面を示し、(a)は図5(b)のE−E矢視における拡大断面図、(b)は図5(a)のF−F矢視における拡大断面図である。
【図7】図2に示されたスイッチ装置のばね部材を示し、(a)はその拡大右側面図、(b)はその拡大左側面図である。
【図8】図7に示されたばね部材を示し、(a)はその拡大側面図、(b)は図7(a)のG−G矢視における拡大断面図、(c)は図7(a)のH−H矢視における拡大断面図である。
【図9】図2に示されたスイッチ装置において、操作部材を回転させてばね部材の変位部を円筒部材の案内溝に対応させた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図10】図9に示されたスイッチ装置において、操作部材がコイルばねのばね力によって押し出された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図11】図10に示されたスイッチ装置において、操作部材を回転させて押し込む際に、ばね部材の変位部が円筒部材の突起部に外側から接近して接触した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図12】図11に示されたスイッチ装置において、操作部材が更に押し込まれて、ばね部材の変位部が径方向に押し広げられるように弾性変位して円筒部材の突起部を乗り越える状態を示した要部の拡大断面図である。
【図13】この発明を腕時計のスイッチ装置に適用した第2実施形態を示した要部の拡大断面図である。
【図14】図13に示されたスイッチ装置の円筒部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大右側面図である。
【図15】図13に示されたスイッチ装置のばね部材を示し、(a)はその拡大正面図、(b)はその拡大側面図、(c)は(a)のI−I矢視における拡大断面図である。
【図16】図13に示されたスイッチ装置の操作部材を示し、(a)はその拡大左側面図、(b)はそのJ−J矢視における拡大断面図である。
【図17】図13に示されたスイッチ装置の押え板を示し、(a)はその拡大側面図、(b)はそのK−K矢視における拡大断面図である。
【図18】図13に示されたスイッチ装置において、操作部材を回転させてばね部材の変位部を円筒部材の案内溝に対応させた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図19】図18に示されたスイッチ装置において、操作部材がコイルばねのばね力によって押し出された状態を示した要部の拡大断面図である。
【図20】図19に示されたスイッチ装置において、操作部材を回転させて押し込む際に、ばね部材の変位部が弾性変形して円筒部材の突起部を乗り越える状態を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図1〜図12を参照して、この発明を腕時計に適用した第1実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上側開口部には、時計ガラス2が取り付けられており、この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が取り付けられている。
【0013】
また、この腕時計ケース1の内部には、図2に示すように、時計モジュール4が設けられている。さらに、この腕時計ケース1の3時に位置する側部には、図1および図2に示すように、スイッチ装置5が設けられている。このスイッチ装置5は、時計モジュール4のモード切替や時刻修正などを行うためのものであり、巻真6と、円筒部材7と、操作部材8と、ばね部材9とを備えている。
【0014】
この場合、腕時計ケース1の3時に位置する側部には、図2に示すように、腕時計ケース1の内部と外部とに貫通する貫通孔10が設けられている。この貫通孔10は、腕時計ケース1の内部側に位置する四角形状の小径孔部10aと、腕時計ケース1の外部側に位置する円形状の大径孔部10bとを有する段差状に形成されている。この貫通孔10内には、スイッチ装置5の円筒部材7が嵌め込まれている。
【0015】
この円筒部材7は、図2〜図4に示すように、貫通孔10の小径孔部10a内に装着して腕時計ケース1の内部に突出する小径筒部7aと、貫通孔10の大径孔部10b内に装着して腕時計ケース1の外部に突出する大径筒部7bとを備えている。この円筒部材7の小径筒部7aは、図3(b)および図4(b)に示すように、貫通孔10の小径孔部10a内に配置される箇所がほぼ四角形の角筒状に形成されている。
【0016】
これにより、円筒部材7は、図2に示すように、小径筒部7aが貫通孔10の小径孔部10aに装着されることにより、腕時計ケース1に対して回転することなく取り付けられている。また、この小径筒部7aは、図3(a)および図3(b)に示すように、腕時計ケース1の内部に突出する箇所が円筒状に形成されている。この小径筒部7aの円筒状の箇所には、Eリングなどの抜止めリング11が取り付けられるリング取付溝12が設けられている。これにより、円筒部材7は、図2に示すように、腕時計ケース1の外部に抜け出すことなく取り付けられている。
【0017】
また、この円筒部材7の大径筒部7bにおける貫通孔10内に位置する箇所の外周面には、図2〜図4に示すように、防水パッキン13がそれぞれ取り付けられる複数のパッキン溝14が設けられている。この大径筒部7bにおける腕時計ケース1から外部に突出した箇所の外周面には、腕時計ケース1の外側面に当接する鍔部15が設けられている。これにより、円筒部材7は、大径筒部7bの鍔部15が腕時計ケース1の外面に当接し、小径筒部7aの抜止めリング11が腕時計ケース1の内面に当接することにより、腕時計ケース1に対する出没方向の動きが規制されている。
【0018】
さらに、大径筒部7bにおける鍔部15よりも腕時計ケース1の外部側に位置する外周面には、図3および図4に示すように、一対の案内溝16が軸方向に沿って設けられており、この大径筒部7bの外周面における腕時計ケース1の外部側に位置する外端部には、案内溝16が位置する箇所を除いて、抜止め用の突起部17が環状に沿って間欠的に設けられている。
【0019】
この場合、一対の案内溝16は、図3および図4に示すように、腕時計ケース1から外部に突出した大径筒部7bの外周面における上下に位置する箇所に、鍔部15から外端部(図3(a)では右端部)に亘って開口された状態で形成されている。また、抜止め用の突起部17は、図2〜図4に示すように、腕時計ケース1の外側に位置する外側面(図4(a)では右側面)が傾斜面17aに形成されていると共に、腕時計ケース1の内側に位置する内側面(図4(a)では左側面)が軸方向に対して直交する垂直面17bに形成されている。
【0020】
また、この円筒部材7の内部には、図2〜図4に示すように、小径筒部7aに設けられた小径孔部18と、大径筒部7bに設けられた大径孔部19とが設けられている。この場合、小径孔部18は、巻真6が挿入する部分であり、大径孔部19は、後述する操作部材8の操作軸部22が挿入する部分である。この大径孔部19の内周面には、防水パッキン13がそれぞれ取り付けられる複数のパッキン溝20が設けられている。
【0021】
操作部材8は、図2、図5、図6に示すように、大径の円筒状に形成された操作頭部21と小径の円筒状に形成された操作軸部22とを備えている。操作頭部21は、その内部が中空状に形成されている。すなわち、この操作頭部21の内部は、その内径が円筒部材7の鍔部15の外径よりも大きく形成されていると共に、軸方向における内部の長さ(深さ)が円筒部材7の大径筒部7bにおける腕時計ケース1から外部に突出した部分の長さ、つまり鍔部15から外端部までの長さよりも少し長く形成されている。
【0022】
また、この操作頭部21における腕時計ケース1の外部側に位置する外端部には、図2および図6(a)に示すように、頭壁部23が設けられている。この頭壁部23の内面における中心部には、操作軸部22が腕時計ケース1側に向けて突出して設けられている。この操作軸部22は、図2に示すように、円筒部材7の大径筒部7bに設けられた大径孔部19内に挿入する部分であり、円筒部材7の大径筒部7bの大径孔部19とほぼ同じ長さで形成されている。
【0023】
これにより、操作軸部22は、図2に示すように、円筒部材7の大径筒部7bが腕時計ケース1の貫通孔10内に挿入された部分の長さだけ、円筒状の操作頭部21から腕時計ケース1側に向けて突出するように形成されている。この操作軸部22の内部には、図6(a)および図6(b)に示すように、操作頭部21から突出す箇所に設けられた断面四角形状の角孔部22aと、この角孔部22aよりも操作頭部21側に設けられて角孔部22aに連続し、且つこの角孔部22aの内面に内接する断面円形状の円形孔部22bとが軸方向に沿って設けられている。
【0024】
この場合、操作軸部22の角孔部22aにおける腕時計ケース1の内部側に位置する端部の内周面には、図2および図6(a)に示すように、リング取付溝24が設けられている。このリング取付溝24には、ガイドリング25が取り付けられている。このガイドリング25は、円板の中心に角孔部22aよりも少し小さい角孔を設けたものであり、この角孔の内端が角孔部22a内に少し突出するように形成されている。
【0025】
この操作軸部22には、図2に示すように、巻真6の外側に位置する端部が取り付けられている。すなわち、巻真6は、円筒部材7の小径孔部18を通過した先端部に設けられて操作軸部22の角孔部22a内、つまりガイドリング25の角孔内に移動可能に挿入する角棒状の連動軸部6aと、この連動軸部6aの先端に設けられて操作軸部22の円形孔部22b内に移動可能に挿入するガイド軸部6bとを備えている。
【0026】
この場合、巻真6の連動軸部6aにおける先端側に位置する端部の外周面には、図2に示すように、ストッパ部6cが径方向に突出して設けられている。このストッパ部6cは、図10に示すように、角孔部22a内に突出したガイドリング25の角孔の内縁部が当接することにより、操作部材8が腕時計ケース1の外部側に抜け出さないように構成されている。
【0027】
また、巻真6のガイド軸部6bは、図2に示すように、円形孔部22bの内径よりも十分に細く形成されている。このガイド軸部6bの外周面と円形孔部22bの内周面との間には、コイルばね26が配置されている。このコイルばね26は、図2に示すように、一端部が巻真6の連動軸部6aの端面に弾接し、他端部が操作軸部22の円形孔部22bの奥部(図2では右端部)に弾接し、この状態で操作軸部22を円筒部材7内から押し出す方向に向けて付勢するように構成されている。
【0028】
これにより、操作部材8は、コイルばね26のばね力に抗して操作頭部21を押し込むと、コイルばね26が圧縮されて巻真6の連動軸部6aが操作軸部22の角孔部22a内に相対的に押し込まれると共に、巻真6のガイド軸部6bが操作軸部22の円形孔部22b内に相対的に押し込まれ、操作頭部21が腕時計ケース1に接近し、この状態で操作頭部21から外力を取り除くと、コイルばね26のばね力によって操作軸部22が押し出されて操作頭部21が腕時計ケース1から離れるように構成されている。
【0029】
また、この操作部材8は、図2および図10に示すように、操作頭部21が押し込まれた状態においても、また操作頭部21が押し出された状態においても、操作頭部21を回転させると、これと共に操作軸部22が回転し、この回転が操作軸部22の角孔部22aに挿入された巻真6の連動軸部6aに伝達され、この連動軸部6aによって巻真6が連動して回転するように構成されている。
【0030】
一方、操作部材8の操作頭部21内には、図2に示すように、ばね部材9が配置されている。このばね部材9は、図7および図8に示すように、全体がほぼリング状に形成された合成樹脂製のリング部27を備えている。このリング部27は、図7(a)および図7(b)に示すように、左右方向の両側部における径方向の肉幅およびこれと直交する方向の肉厚(高さ)が、上下方向の両側部における径方向の肉幅およびこれと直交する方向の肉厚よりも小さく形成され、図2に示すように、操作部材8の操作頭部21内に配置されるように構成されている。
【0031】
すなわち、このリング部27は、図2に示すように、その内径が円筒部材7における抜止め用の突起部17の外径よりも少し大きく形成されている。また、このリング部27の内周面における左右の両側には、図7(a)および図7(b)に示すように、一対の変位部28が互いに対向した状態で内側に向けて突出して設けられている。この一対の変位部28は、図2に示すように、その円周方向の長さ(幅)が円筒部材7の案内溝16における円周方向の長さ(幅)よりも少し小さく形成されている。
【0032】
また、この一対の変位部28は、図2に示すように、互いに対向する先端面間の長さが、円筒部材7の大径筒部7bにおける外周面の直径と同じか、それよりも少し小さく形成されている。さらに、この一対の変位部28における各先端下部には、図2および図8(b)に示すように、円筒部材7の抜止め用の突起部17における傾斜面17aに対面する面取り部28aが設けられている。この面取り部28aは、突起部17の傾斜面17aと同じ角度で傾斜する傾斜面に形成されている。
【0033】
これにより、一対の変位部28は、図11および図12に示すように、その先端の面取り部28aが抜止め用の突起部17の傾斜面17aに沿って乗り越えるように移動する際に、リング部27の左右方向に位置する両側部を径方向に押し広げる方向に弾性変形させるように構成されている。また、このリング部27の外周面における左右方向の両側部と上下方向の両側部との境界部分には、図7および図8に示すように、半円形状の回転規制部29がそれぞれ外側に突出して設けられている。
【0034】
すなわち、操作頭部21の内部には、図2に示すように、リング部27が操作頭部21の開口側から軸方向に沿って挿入することにより、リング部27を収納するリング収納部31と、回転規制部29が操作頭部21の開口側から軸方向に沿って挿入する複数の位置規制溝30とが設けられている。この複数の回転規制部29は、ばね部材9のリング部27を操作部材8の操作頭部21内に挿入した際に、図5(b)および図6(a)に示すように、操作頭部21内に設けられた複数の位置規制溝30に係合して回転方向の位置が規制されるように構成されている。
【0035】
この場合、リング収納部31は、図2および図6(a)に示すように、その内径がリング部27の外径よりも大きい円形状、つまり複数の回転規制部29の最外周とほぼ同じ大きさの円形状に形成されている。これにより、リング収納部31は、図2に示しように、リング部27を収納した状態で、リング部27を径方向に広げる方向に弾性変形させるために、リング部27の外周面とリング収納部31の内周面との間に隙間をもって配置されるように構成されている。
【0036】
このため、このばね部材9は、図2に示すように、リング部27が操作頭部21内のリング収納部31内に配置され、且つ複数の回転規制部29が操作頭部21内の複数の位置規制溝30内に配置され、この状態でリング部27の変位部28が円筒部材7の抜止め用の突起部17の内側に位置する垂直面17bに当接した際に、コイルばね26を操作部材8と巻真6とで圧縮させて、操作部材8の操作頭部21を腕時計ケース1の外面に接近させた状態でロックするように構成されている。
【0037】
また、このばね部材9は、図9に示すように、操作部材8の操作頭部21を回転させると、これに伴ってリング部27が回転し、リング部27の一対の変位部28が円筒部材7の案内溝16に対応すると、操作部材8のロックが解除され、図10に示すように、コイルばね26のばね力によって操作部材8の操作軸部22が押し出され、リング部27の一対の変位部28が案内溝16に沿って移動して円筒部材7の抜止め用の突起部17の外側に移動するように構成されている。
【0038】
また、このばね部材9は、図10に示す状態で、操作部材8の操作頭部21が回転されてリング部27の一対の変位部28が案内溝16から円周方向にずれ、この状態で操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して押し込まれると、図11に示すように、リング部27の一対の変位部28が円筒部材7の抜止め用の突起部17に接近して、変位部28の面取り部28aが突起部17の傾斜面17aに対面するように構成されている。
【0039】
さらに、このばね部材9は、図11に示すように、変位部28の面取り部28aが突起部17の傾斜面17aに対面し、この状態で操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して更に押し込まれると、変位部28の面取り部28aが突起部17の傾斜面17aに沿って移動し、図12に示すように、変位部28が突起部17を乗り越えるときに、変位部28によってリング部27が押し広げられる方向に弾性変形するように構成されている。
【0040】
ところで、操作部材8に連結された巻真6は、図2に示すように、腕時計ケース1内に設けられた時計モジュール4内に延出されて配置されている。この巻真6は、図2に示すように、操作部材8の操作頭部21が押し込まれて、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の抜け止め用の突起部17に当接して、操作部材8がロックされた状態、およびこのロック状態が解除されて、図10に示すように、操作部材8の操作頭部21がコイルばね26のばね力によって押し出された状態のときに、時計モジュール4のスイッチが動作しないように構成されている。
【0041】
また、この巻真6は、図10に示す状態で、操作部材8の操作頭部21が更に引き出されると、図示しないが、操作頭部21の引き出し操作に伴って引き出される方向に移動し、これにより通常の時計モードを時刻修正モードに切り替え、この状態で操作頭部21を回転させると、その回転に伴って回転し、この回転に応じて時刻修正を行うように構成されている。
【0042】
次に、このような腕時計のスイッチ装置5の作用について説明する。
このスイッチ装置5を使用する場合には、図2に示す状態で、操作部材8の操作頭部21を回転させると、これに伴ってばね部材9のリング部27が回転する。すなわち、ばね部材9は、そのリング部27が操作頭部21内のリング収納部31に収納され、回転規制部29が操作頭部21内の位置規制溝30内に挿入されているので、操作頭部21を回転させると、これに伴ってばね部材9のリング部27が回転する。
【0043】
このばね部材9のリング部27が操作頭部21と共に回転して、図9に示すように、リング部27に設けられた一対の変位部28が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた一対の案内溝16にそれぞれ対応すると、図10に示すように、操作部材8のロックが解除され、コイルばね26のばね力によって操作部材8の操作軸部22が腕時計ケース1の外側に向けて押し出される。これにより、リング部27の一対の変位部28が一対の案内溝16に沿って移動して円筒部材7の抜止め用の突起部17の外側に移動する。
【0044】
このときには、巻真6は軸方向に移動しない。また、この状態で操作頭部21を回転させて巻真6を回転させても、時計モジュール4のスイッチは動作しない。そして、操作頭部21を更に引き出すと、巻真6が引き出される。このときには、巻真6の引き出し動作によって、時計モジュール4のスイッチが動作し、時計モードが通常の時計モードから時刻修正モードに切り替わる。この状態で、操作頭部21を回転させると、その回転に伴って巻真6が回転し、この回転に応じて時刻修正が行われる。
【0045】
一方、このスイッチ装置5を使用しない場合には、図11に示すように、操作部材8の操作頭部21をコイルばね26のばね力に抗して押し込んで腕時計ケース1の外面に接近させる。すると、操作頭部21内のリング収納部31内に配置されたばね部材9のリング部27における一対の変位部28が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた抜止め用の突起部17に接近する。
【0046】
このときには、リング部27の変位部28の面取り部28aが円筒部材7の抜止め用の突起部17の傾斜面17aに対面する。この状態で、図12に示すように、操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して更に押し込まれると、変位部28の面取り部28aが突起部17の傾斜面17aに沿って移動する。すると、変位部28がリング部27を押し広げるように弾性変形させながら、変位部28が突起部17を乗り越える。
【0047】
このように、リング部27の変位部28が円筒部材7の突起部17を乗り越えると、図2に示すように、リング部27の変位部28が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に位置する。この状態で、操作頭部21の押し込み操作を解除すると、操作部材8がコイルばね26のばね力によって押し出されるように付勢されるので、リング部27の変位部28が円筒部材7の突起部17における内面である垂直面17bに当接する。これにより、操作部材8が押し込まれた状態でロックされる。
【0048】
また、操作部材8を押し込んでロックする際に、図9に示すように、ばね部材9のリング部27における変位部28が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた案内溝16に対応している場合には、操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して更に押し込まれると、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の案内溝16にガイドされて腕時計ケース1の側面に接近する。このときには、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に対面していないので、操作部材8が突起部17によってロックされない。
【0049】
このため、この状態で、操作部材8を回転させてばね部材9の変位部28を案内溝16から離脱させると、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に対面する。これにより、図2に示すように、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17における内面である垂直面17bに当接し、これにより操作部材8が押し込まれた状態でロックされる。
【0050】
このように、このスイッチ装置5によれば、腕時計ケース1の貫通孔10に取り付けられた円筒部材7と、この円筒部材7に挿入される操作軸部22および外端部の操作頭部21を有する操作部材8と、この操作部材8に取り付けられ、径方向に弾性変位する変位部28を有するばね部材9とを備え、円筒部材7の外周面には、軸方向に沿って形成された案内溝16と、この案内溝16を除く位置に形成された突起部17と、が設けられているので、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の外端部よりも外側に位置した状態で、操作部材8を軸方向の内側に移動させた際に、ばね部材9の変位部28が弾力的に乗り越えた後に、ばね部材9の変位部28が突起部17に当接して、ばね部材9の移動を阻止することができ、これによりロック操作が容易にできる。
【0051】
すなわち、この腕時計のスイッチ装置5では、操作部材8を押し込んでロックする際に、操作部材8の操作頭部21に設けられたばね部材9の変位部28が円筒部材7の外周面に設けられた突起部17に対応していても、操作部材8を押し込むと、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17を弾力的に乗り越えた後に、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に係止されるので、ばね部材9の移動を確実に阻止することができ、これにより簡単に操作部材8をロックすることができる。
【0052】
このとき、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の案内溝16に対応している場合には、操作頭部21を押し込んでばね部材9の変位部28を円筒部材7の案内溝16に沿って移動させた後に、操作部材8を回転させてばね部材9の変位部28を円筒部材7の案内溝16から離脱させるだけで、ばね部材9の変位部28を円筒部材7の突起部17に当接させて、ばね部材9の移動を確実に阻止することができ、これにより簡単に操作部材8をロックすることができる。
【0053】
このため、操作部材8を押し込んでロックする際に、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に対応していても、また円筒部材7の突起部17に対応していなくても、ばね部材9の変位部28を円筒部材7の突起部17に容易に係止させることができるので、簡単に操作部材8をロックすることができる。また、ロックされた状態の操作部材8を回転させて、ばね部材9の変位部28を円筒部材7の外周面に設けられた案内溝16に対応させるだけで、簡単に操作部材8のロックを解除することができる。これにより、ロック操作およびロック解除操作が容易にできる。
【0054】
この場合、ばね部材9は、径方向に弾性変位可能なリング部27を有し、このリング部27の内周部に変位部28がリング部27の中心側に向けて突出する突起状に設けられた構成であるから、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に対応している状態で、操作部材8を押し込んでばね部材9の変位部28を円筒部材7の突起部17に当接させると、円筒部材7の突起部17によってばね部材9の変位部28が径方向に押されるので、リング部27が押し広げられるように弾性変形し、これによりばね部材9の変位部28が弾力的に円筒部材7の突起部17を乗り越えることができる。
【0055】
また、円筒部材7の外周面に設けられた抜け止め用の突起部17は、その外側面が傾斜面17aに形成され、且つ内側面が軸方向と直交する垂直面17bに形成されているので、操作部材8が押し込まれてばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に当接する際に、ばね部材9の変位部28が突起部17の傾斜面17aに沿って移動するので、リング部27を確実に且つ良好に押し広げるように弾性変形させることができ、これによりばね部材9の変位部28が弾力的に円筒部材7の突起部17を円滑に乗り越えることができる。
【0056】
この場合、ばね部材9の変位部28には、面取り部28aが設けられているので、操作部材8が押し込まれてばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に当接する際に、変位部28の面取り部28aが突起部17の傾斜面17aに対面し、この状態で変位部28の面取り部28aを突起部17の傾斜面17aに沿って移動させることができ、これによりリング部27を円滑に且つ良好に押し広げるように弾性変形させることができるので、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17を、より一層、円滑に乗り越えることができる。
【0057】
また、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17を弾力的に乗り越えた後に、コイルばね26のばね力によって操作部材8が押し出されて、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17に当接する際には、ばね部材9の変位部28が円筒部材7の突起部17の垂直面17bに当接するので、リング部27が押し広げるように弾性変形することがなく、ばね部材9の変位部28を円筒部材7の突起部17で確実に係止することができ、これによりばね部材9の移動を阻止することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、図13〜図20を参照して、この発明を適用した腕時計の第2実施形態について説明する。なお、図1〜図12に示された第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
この腕時計のスイッチ装置40は、図13に示すように、操作部材8の操作頭部21内に設けられたばね部材41が第1実施形態と異なる構成であり、これ以外は第1実施形態とほぼ同じ構成になっている。
【0059】
この場合、円筒部材7は、図14(a)および図14(b)に示すように、その大径筒部7bの外周面に4つの案内溝16が第1実施形態と同様に形成されている。この大径筒部7bの外周面における外側端部には、4つの案内溝16を除いて、抜け止め用の突起部17が設けられている。この突起部17も、第1実施形態と同様に、腕時計ケース1の外側に位置する外側面が傾斜面17aに形成されていると共に、腕時計ケース1の内側に位置する内側面が軸方向に対して直交する垂直面17bに形成されている。
【0060】
一方、ばね部材41は、図15(a)〜図15(c)に示すように、ステンレスなどの金属板からなるリング部42を備えている。このリング部42は、その内径が円筒部材7における抜止め用の突起部17の外径よりも少し大きく形成されている。また、このリング部42の内周面における左右の両側には、一対の変位部43が互いに対向して設けられている。この一対の変位部43は、図13に示すように、腕時計ケース1の外側(図15(b)では斜め下側)に向けて板ばね状に折り曲げられている。
【0061】
この場合、一対の変位部43は、図13および図15に示すように、リング部42の内側に向けて斜めに傾斜して折り曲げられ、この折り曲げられた先端部が径方向に弾性変位(つまり撓み変形)するように構成されている。また、この一対の変位部43は、図13に示すように、その円周方向の長さ(幅)が円筒部材7の案内溝16における円周方向の長さ(幅)よりも少し小さく形成されている。さらに、この一対の変位部43は、互いに対向する先端面間の長さが、自然状態において円筒部材7の大径筒部7bにおける外周面の直径と同じか、それよりも少し小さく形成されている。
【0062】
このばね部材41は、図13に示すように、操作部材8の操作頭部21内に押え板44によって取り付けられている。すなわち、操作頭部21内には、図16(a)および図16(b)に示すように、ばね部材41のリング部42および押え板44が配置される装着溝45が設けられていると共に、この装着溝45から奥側(図16(b)では右側)に向けて一対の変位部43がそれぞれ挿入する一対の回転規制溝46が設けられている。
【0063】
この場合、押え板44は、図13および図17に示すように、その外径がばね部材41のリング部42の外径よりも少し大きく形成され、内径がリング部42の外径よりも少し小さく形成されている。また、この押え板44の内周面には、ばね部材41のリング部42を押え付けるための一対の押え片44aが設けられている。
【0064】
これにより、ばね部材41は、図13に示すように、一対の変位部43が操作頭部21内の回転規制溝46内に挿入されて、リング部42が操作頭部21の装着溝45内に配置され、この状態で押え板44が装着溝45に嵌め込まれることにより、操作頭部21内に取り付けられて操作頭部21と共に回転するように構成されている。
【0065】
次に、このような第2実施形態のスイッチ装置40の作用について説明する。
このスイッチ装置40を使用する場合には、図13に示す状態で、操作部材8の操作頭部21を回転させると、これに伴ってばね部材41のリング部42が回転する。すなわち、ばね部材41は、そのリング部42が操作頭部21内の装着溝45に配置された状態で、一対の変位部43が操作頭部21内の回転規制溝46内に挿入されているので、操作頭部21を回転させると、これに伴ってばね部材41が回転する。
【0066】
このばね部材41のリング部42が操作頭部21と共に回転して、図18に示すように、リング部42に設けられた一対の変位部43が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた4つの案内溝16のいずれか2つに対応すると、図19に示すように、操作部材8のロックが解除され、コイルばね26のばね力によって操作部材8の操作軸部22が押し出される。これにより、リング部42の一対の変位部43が2つの案内溝16に沿って移動して円筒部材7の抜止め用の突起部17の外側に移動する。
【0067】
このときには、巻真6は軸方向に移動しない。また、この状態で操作頭部21を回転させて巻真6を回転させても、時計モジュール4のスイッチは動作しない。そして、操作頭部21を更に引き出すと、第1実施形態と同様、巻真6が引き出される。このときには、巻真6の引き出し動作によって、時計モジュール4のスイッチが動作し、時計モードが通常の時計モードから時刻修正モードに切り替わる。この状態で、操作頭部21を回転させると、その回転に伴って巻真6が回転し、この回転に応じて時刻修正が行われる。
【0068】
一方、このスイッチ装置40を使用しない場合には、図20に示すように、操作部材8の操作頭部21をコイルばね26のばね力に抗して押し込んで腕時計ケース1の外面に接近させる。すると、操作頭部21内の回転規制溝46内に配置されたばね部材41の一対の変位部43が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた抜止め用の突起部17に接近して乗り上げる。
【0069】
このときには、リング部42の変位部43が円筒部材7の抜止め用の突起部17の傾斜面17aに対面し、この状態で図20に示すように、操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して更に押し込まれると、変位部43が突起部17の傾斜面17aに沿って移動する。すると、変位部43が押し広げられように撓み変形しながら突起部17を乗り越える。
【0070】
このように、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17を乗り越えると、図13に示すように、変位部43が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に位置する。この状態で、操作頭部21の押し込み操作を解除すると、操作部材8がコイルばね26のばね力によって押し出されるように付勢されるので、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17における内面である垂直面17bに当接し、これにより操作部材8が押し込まれた状態でロックされる。
【0071】
また、操作部材8を押し込んでロックする際に、図19に示すように、ばね部材41のリング部42における変位部43が円筒部材7の大径筒部7bの外周面に設けられた案内溝16に対応している場合には、操作頭部21がコイルばね26のばね力に抗して更に押し込まれると、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の案内溝16にガイドされて腕時計ケース1の側面に接近する。このときには、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に対面していないので、操作部材8が突起部17によってロックされない。
【0072】
このため、この状態で、操作部材8を回転させてばね部材41の変位部43を案内溝16から離脱させると、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に対面する。これにより、図13に示すように、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17における内面である垂直面17bに当接し、これにより操作部材8が押し込まれた状態でロックされる。
【0073】
このように、この腕時計のスイッチ装置40によれば、操作部材8を押し込んでロックする際に、操作部材8の操作頭部21に設けられたばね部材41の変位部43が円筒部材7の外周面に設けられた突起部17に対応していても、操作部材8を押し込むと、ばね部材41の変位部43が弾力的に円筒部材7の突起部17を乗り越えて円筒部材7の突起部17に係止されるので、ばね部材41の移動を確実に阻止することができ、これにより簡単に操作部材8をロックすることができる。
【0074】
また、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の案内溝16に対応している場合には、操作頭部21を押し込んでばね部材41の変位部43を円筒部材7の案内溝16に沿って移動させた後に、操作部材8を回転させてばね部材41の変位部43を円筒部材7の案内溝16から離脱させるだけで、ばね部材41の変位部43を円筒部材7の突起部17に当接させて、ばね部材41の移動を阻止することができ、これにより簡単に操作部材8をロックすることができる。
【0075】
このように、操作部材8を押し込んでロックする際に、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に対応していても、また円筒部材7の案内溝16に対応していても、ばね部材41の変位部43を円筒部材7の突起部17に容易に係止させることができるので、簡単に操作部材8をロックすることができる。また、ロックされた状態の操作部材8を回転させて、ばね部材41の変位部43を円筒部材7の外周面に設けられた案内溝16に対応させるだけで、簡単に操作部材8のロックを解除することができる。これにより、ロック操作およびロック解除操作が容易にできる。
【0076】
この場合、ばね部材41は、リング部42を有し、このリング部42の内周部に変位部43がリング部42の中心側に向けて斜め傾斜した状態で弾性変形する板ばね状に設けられた構成であるから、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に対応している状態で、操作部材8を押し込んでばね部材41の変位部43を円筒部材7の突起部17に当接させると、円筒部材7の突起部17によってばね部材41の変位部43が径方向に押し広げられるので、変位部43が押し広げられるように弾性変形し、これによりばね部材41の変位部43が弾力的に円筒部材7の突起部17を乗り越えることができる。
【0077】
また、円筒部材7の外周面に設けられた抜け止め用の突起部17は、その外側面が傾斜面17aに形成され、且つ内側面が軸方向と直交する垂直面17bに形成されているので、操作部材8が押し込まれてばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に当接する際に、ばね部材41の変位部43が突起部17の傾斜面17aに沿って移動するので、変位部43を確実に且つ良好に押し広げるように撓み変形させることができ、これによりばね部材41の変位部43が弾力的に円筒部材7の突起部17を円滑に乗り越えることができる。
【0078】
また、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17を弾力的に乗り越えた後に、コイルばね26のばね力によって操作部材8が押し出されて、ばね部材41の変位部43が円筒部材7の突起部17に当接する際には、ばね部材41の変位部43の先端が円筒部材7の突起部17の垂直面17bに当接するので、変位部43が弾性変形することがなく、ばね部材41の変位部43を円筒部材7の突起部17で確実に係止することができ、これによりばね部材41の移動を阻止することができる。
【0079】
なお、上述した第1、第2の実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。
【0080】
以上、この発明のいくつかの実施形態について説明したが、この発明は、これらに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0081】
(付記)
請求項1に記載の発明は、貫通孔を有するケースと、このケースの前記貫通孔に取り付けられた円筒部材と、この円筒部材に挿入される軸部および外端部の操作部を有する操作部材と、この操作部材に取り付けられ、径方向に弾性変位する変位部を有するばね部材と、を備え、
前記円筒部材の外周面には、
軸方向に沿って形成されて前記ケースの外側に位置する端部が開口され、且つ前記ばね部材の前記変位部が挿脱可能に挿入して移動する複数の案内溝と、
この複数の案内溝を除く位置に形成され、前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも外側に位置した状態で、前記操作部材を軸方向の内側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が弾力的に乗り越え、且つ前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも内側に位置する状態で、前記操作部材を前記軸方向の外側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が当接して前記ばね部材の移動を阻止する突起部と、
が設けられていることを特徴とするスイッチ装置である。
【0082】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスイッチ装置において、前記円筒部材の外周面に設けられた前記突起部は、その外側面が傾斜面に形成され、且つ内側面が軸方向と直交する垂直面に形成されていることを特徴とするスイッチ装置である。
【0083】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置において、前記ばね部材は、径方向に弾性変位可能なリング部を有し、このリング部の内周部に前記変位部が前記リング部の中心側に向けて突出する突起状に設けられていることを特徴とするスイッチ装置である。
【0084】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のスイッチ装置において、前記変位部には、前記円筒部材の前記突起部にその外側から接近する箇所に面取り部が設けられていることを特徴とするスイッチ装置である。
【0085】
請求項5に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置において、前記ばね部材は、リング部を有し、このリング部に前記変位部が前記リング部の内周部から中心側に向けて斜めに傾斜した状態で弾性変形する板ばね状に設けられていることを特徴とするスイッチ装置である。
【符号の説明】
【0086】
1 腕時計ケース
5、30 スイッチ装置
6 巻真
7 円筒部材
7a 小径筒部
7b 大径筒部
8 操作部材
9、41 ばね部材
10 貫通孔
16 案内溝
17 突起部
17a 傾斜面
17b 垂直面
21 操作頭部
22 操作軸部
26 コイルばね
27、42 リング部
28、43 変位部
28a 面取り部
29 回転規制部
30、46 回転規制溝
31 リング収納部
44 押え板
45 装着溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するケースと、
このケースの前記貫通孔に取り付けられた円筒部材と、
この円筒部材に挿入される軸部および外端部の操作部を有する操作部材と、
この操作部材に取り付けられ、径方向に弾性変位する変位部を有するばね部材と、
を備え、
前記円筒部材の外周面には、
軸方向に沿って形成されて前記ケースの外側に位置する端部が開口され、且つ前記ばね部材の前記変位部が挿脱可能に挿入して移動する複数の案内溝と、
この複数の案内溝を除く位置に形成され、前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも外側に位置した状態で、前記操作部材を軸方向の内側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が弾力的に乗り越え、且つ前記ばね部材の前記変位部が前記円筒部材の外端部よりも内側に位置する状態で、前記操作部材を前記軸方向の外側に移動させた際に、前記ばね部材の前記変位部が当接して前記ばね部材の移動を阻止する突起部と、
が設けられていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置において、前記円筒部材の外周面に設けられた前記突起部は、その外側面が傾斜面に形成され、且つ内側面が軸方向と直交する垂直面に形成されていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置において、前記ばね部材は、径方向に弾性変位可能なリング部を有し、このリング部の内周部に前記変位部が前記リング部の中心側に向けて突出する突起状に設けられていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ装置において、前記変位部には、前記円筒部材の前記突起部にその外側から接近する箇所に面取り部が設けられていることを特徴とするスイッチ装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載のスイッチ装置において、前記ばね部材は、リング部を有し、このリング部に前記変位部が前記リング部の内周部から中心側に向けて斜めに傾斜した状態で弾性変形する板ばね状に設けられていることを特徴とするスイッチ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−104709(P2013−104709A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247221(P2011−247221)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)