説明

スイミングゴーグル

【課題】着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みにもかかわらず、接顔パッドと着用者の眼部周囲の顔面との密着に影響を受けずに密閉性を完全に保つことができ、しかも装着感を悪くすることなく、水漏れすることのないスイミングゴーグルを提供する。
【解決手段】ゴーグル本体1に装着した接顔パッド11の着用者の眼部周囲の顔面に沿って接触するように形成した接顔部14に、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みに対応するようにした隆起面部15を設けたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、環状の接顔パッドを備えたスイミングゴーグルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスイミングゴーグルとしては、例えば図10〜13に示したように、左右一対のゴーグル本体21が、レンズ部22と、このレンズ部22の周縁より後退するスカート部23とを備え、このスカート部23の周縁に、着用者の眼部周囲の顔面に密着する環状の接顔パッド24が装着されたものが存在する(特許文献1)。
【0003】
前記接顔パッド24は、後面に全周に亘って環状に突出する環状突条25が設けられたものとしている。さらに、前記接顔パッド24は、図12、13に示したように、ゴーグル本体21に装着される前には、スカート部23の周縁の外周フランジ26に対応する平坦な環状に形成され、スカート部23の周縁に装着するには、この外側フランジ26の湾曲形状に沿って湾曲させ、この外周フランジ26の後面に貼着するようにしている。
【0004】
このように構成された従来のスイミングゴーグルは、締付バンド等の締付力が弱くても、接顔パッド24の環状突条25を小さな面積で顔面に強く圧接でき、接顔パッド24の顔面への密着度を効果的に高めることができるとしている。しかも、接顔パッド24を熱プレス成形その他によって簡単に製造でき、構成が簡単で製造が容易で安価に提供できるとしている。
【0005】
さらに、この種のスイミングゴーグルに使用される接顔パッド31として、例えば図14〜19に示したように、原形が平面状で成形されており、ゴーグル本体32の外周フランジ33に外嵌される環状の枠体34と、この枠体34の内側縁よりクッション周壁35を介して接顔部36が一体に成形されたものが存在する(特許文献2、3)。
【0006】
前記クッション周壁35及び接顔部36は、図17〜19に示したように、接顔パッド31の原形状態において、枠体34の内周縁から末広がりの薄肉に成形されており、このクッション周壁35の末広がりの形状は、図15に示したように、接顔パッド31が外周フランジ33に外嵌された状態、すなわち湾曲状に変形された状態であっても、クッション周壁35は末広がりの形状が依然として維持されるとしている。さらに、前記接顔部36は、顔面になじみ易いように、径外方向に湾曲されているとしている。
【0007】
このように構成された接顔パッド31を使用したスイミングゴーグルは、顔面に装着されると、接顔部36は顔面に沿わされ、クッション周壁35が径外方向に変形され、顔面とのフィット性の向上がはかられるとしている。また、接顔パッド31は、原形が平面状で成形されているので、このパッドの成形に使用される金型の製作が容易となるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平2−37669号公報
【特許文献2】実公平2−42306号公報
【特許文献3】実開平6−48715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、スイミングゴーグルの着用者において、眼部下方の鼻寄りの顔面には、場所こそ多少違えても、窪みが存在している。
【0010】
しかしながら、上記従来のスイミングゴーグルにおいては、いずれも接顔パッドが着用者の眼部周囲の顔面に密着するように工夫が凝らされているが、前記窪みが存在している部分においては対処しきれていなかった。すなわち、窪みが存在している部分においては、接顔パッドが着用者の眼部周囲の顔面に密着しているといっても、その密着力は弱く、接顔パッドに何らかの力が加わった場合には、その力の加わり具合によっては、わずかな隙間が生じてしまうことがあり、密閉性を完全に保つことができないという問題点を有していた。
【0011】
さらに、上記従来のスイミングゴーグルにおいて、接顔パッドは、原形が平面状で成形されているので、接顔パッドがゴーグル本体の外周フランジに装着された状態、すなわち湾曲状に変形された状態では、その湾曲した部分が不均衡になったり、わずかな皺が生じたりして、着用者の眼部周囲の顔面との間に、わずかな隙間が生じてしまうことがあり、密閉性を完全に保つことができないという問題点を有していた。
【0012】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みにもかかわらず、接顔パッドと着用者の眼部周囲の顔面との密着に影響を受けずに密閉性を完全に保つことができ、しかも装着感を悪くすることなく、水漏れすることのないスイミングゴーグルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのため、この発明のスイミングゴーグルは、ゴーグル本体1に装着した接顔パッド11の着用者の眼部周囲の顔面に沿って接触するように形成した接顔部14に、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みに対応するようにした隆起面部15を設けたものとしている。
【0014】
そして、この発明のスイミングゴーグルは、前記隆起面部15を、接顔部14を上下に二等分したときの下方の部分に位置するようにしている。
【0015】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、前記隆起面部15を、接顔部14を上下左右に四等分したときの下方内側の部分に位置するようにしている。
【0016】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、着用者の瞳孔の中心線Lから前記隆起面部15の頂点tまでの距離Xを11±5mmとしている。
【0017】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、前記隆起面部15を、20〜40mmの曲率半径Rを有する曲面としている。
【0018】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、前記接顔部14の上面カーブ14aと前記隆起面部15の頂点tまでの差Zを3.4±3mmとしている。
【0019】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、着用者の瞳孔の中心Oから前記隆起面部15の頂点tまでの距離Yを12〜27mmとしている。
【0020】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、前記接顔パッド11を、ゴーグル本体1に装着する前に、その接顔パッド11の接顔部14が着用者の顔面に沿って接触するように形成している。
【発明の効果】
【0021】
この発明のスイミングゴーグルは、以上に述べたように構成されており、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みにもかかわらず、接顔パッドと着用者の眼部周囲の顔面との密着に影響を受けずに密閉性を完全に保つことができ、しかも装着感を悪くすることなく、水漏れすることのないものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るスイミングゴーグルの斜視図である。
【図2】この発明に係るスイミングゴーグルの平面図である。
【図3】この発明に係るスイミングゴーグルの底面図である。
【図4】ゴーグル本体の正面図である。
【図5】ゴーグル本体の平面図である。
【図6】ゴーグル本体の底面図である。
【図7】図4のA−Aによるゴーグル本体の断面図である。
【図8】ゴーグル本体から分離した接顔パッドを底面側から見た説明図である。
【図9】ゴーグル本体から分離した接顔パッドを正面側から見た説明図である。
【図10】従来のスイミングゴーグルの一例を示す断面図である。
【図11】図10に示すスイミングゴーグルのゴーグル本体から分離した接顔部の背面図である。
【図12】図11のB−B線による接顔パッドの断面図である。
【図13】図11のC−C線による接顔パッドの断面図である。
【図14】従来のスイミングゴーグルのゴーグル本体の他の例を示す正面図である。
【図15】図14に示すゴーグル本体の平面図である。
【図16】図14のD−D線によるゴーグル本体の断面図である。
【図17】図14に示すゴーグル本体から分離した接顔パッドの正面図である。
【図18】図17に示す接顔パッドの平面図である。
【図19】図17のE−E線による接顔パッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明のスイミングゴーグルを実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
この発明のスイミングゴーグルは、透明または半透明のポリカーボネート等の硬質合成樹脂からなる左右一対のゴーグル本体1を備えている。このゴーグル本体1は、レンズ部2と、レンズ部2の周縁より後退する周壁部3を有し、この周壁部3の後端側に、内方側に向けて周溝4を設け、この周溝4の後面を形成するようにして取付フランジ5が設けられている。
【0025】
前記各ゴーグル本体1の内端部には、貫通孔6を有したれブラケット7が、周壁部3から突出するようにして設けられている。さらに、各ゴーグル本体1の外端部には、周壁部3から外方向に突出すようにしてベルト取付部8が設けられている。
【0026】
前記ブラケット7の貫通孔6には、可撓性を有する連結体9の係合部9aが係合されることにより、一対のゴーグル本体1が連結されている。さらに、前記ベルト取付部8には、伸縮自在の締付バンド10の両端部がそれぞれ長さ調節可能に連結されている。
【0027】
前記各ゴーグル本体1の取付フランジ5には、弾性エラストマー等の軟質合成樹脂からなる接顔パッド11を装着している。この接顔パッド11は、前記取付フランジ5に外嵌される環状の枠体12と、この枠体12の内側縁よりクッション周壁13を介して接顔部14を一体に成形している。そして、この接顔部14は、着用者の眼部周囲の顔面に沿って接触するように形成している。なお、前記接顔パッド11は、枠体12を前記取付フランジ5に外嵌することにより、ゴーグル本体1に装着するものとしているが、枠体12を前記取付フランジ5に接着するなどして、ゴーグル本体1に装着するものとしてもよい。
【0028】
前記接顔パッド11は、ゴーグル本体1に装着する前に、接顔部14が着用者の顔面に沿って接触するように、クッション周壁13が枠体12の内側縁から末広がりの薄肉に成形されており、外方寄りになるにしたがって薄肉の末広がりになった部分が広くなるように形成している。さらに、前記接顔部14は、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みに対応するようにした隆起面部15を設けている。この隆起面部15は、図示したものでは接顔部14を外側に湾曲させて隆起させたものとしているが、この部分の接顔部14を分厚くして外側に隆起させたものとしてもよい。なお、前記接顔パッド11の接顔部14が着用者の顔面に沿って接触するように形成するには、着用者の顔面を三次元スキャンし、得られたデータを元に顔面形状を分析して、各部位の形状の変化に合わせ、その接顔部14の形状を決定している。
【0029】
前記隆起面部15は、接顔部14を上下に二等分したときの下方の部分に位置するようにしており、好ましくは接顔部14を上下左右に四等分したときの下方内側の部分に位置するようにしている。さらに、前記隆起面部15は、20〜40mmの曲率半径Rを有する曲面としており、好ましくは28〜32mmの曲率半径Rを有する曲面としている。また、前記隆起面部15は、図8に示したように着用者の瞳孔の中心線Lからその隆起面部15の頂点tまでの距離Xを11±5mmとするのが好ましく、図9に示したように着用者の瞳孔の中心Oからその隆起面部15の頂点tまでの距離Yを12〜27mm、好ましくは21〜23mmとしている。さらにまた、前記隆起面部15は、接顔部14の上面カーブ14aとその隆起面部15の頂点tまでの差Zを3.4±3mmとするのが好ましい。なお、前記隆起面部15における曲率半径R、距離X、距離Yおよび差Zの値は、これらのうち少なくとも何れかを満足するものであればよいが、より多くを満足するものであるのが好ましいことは勿論であり、すべてを満足するものであるのがより好ましい。
【0030】
以上のように構成されたこの発明のスイミングゴーグルは、着用時に接顔パッド11の接顔部14が着用者の眼部周囲の顔面を押圧し、さらにその接顔部14に設けた隆起面部15が着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みを押圧するので、接顔パッド11は着用者の眼部周囲の顔面との間にわずかな隙間も生じることなく、密閉性を完全に保つことができ、水漏れすることがないものとなる。
【0031】
さらに、この発明のスイミングゴーグルは、接顔パッド11がゴーグル本体1に装着する前に、その接顔パッド11の接顔部14が着用者の顔面に沿って接触するように形成しているので、着用者の顔面へのフィット性がより向上し、装着感を悪くするようなことがない。
【0032】
また、この発明のスイミングゴーグルは、接顔パッド11がゴーグル本体1に装着する前に、その接顔パッド11の接顔部14が着用者の顔面に沿って接触するように形成しているので、接顔パッド11をゴーグル本体1に装着した後にも、その接顔パッド11の接顔部14の形状が変化することなく、接顔部14が不均衡になったり、わずかな皺が生じたりすることもないので、密閉性を完全に保つことができるものとなる。
【符号の説明】
【0033】
1 ゴーグル本体
11 接顔パッド
14 接顔部
14a 上面カーブ
15 隆起面部
L 着用者の瞳孔の中心線
t 隆起面部の頂点
X Lからtまでの距離
R 曲率半径
O 着用者の瞳孔の中心
Y Oからtまでの距離
Z 14aとtまでの差


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴーグル本体(1)に装着した接顔パッド(11)の着用者の眼部周囲の顔面に沿って接触するように形成した接顔部(14)に、着用者の眼部下方の鼻寄りの顔面に存在する窪みに対応するようにした隆起面部(15)を設けたことを特徴するスイミングゴーグル。
【請求項2】
前記隆起面部(15)を、接顔部(14)を上下に二等分したときの下方の部分に位置するようにしたことを特徴する請求項1記載のスイミングゴーグル。
【請求項3】
前記隆起面部(15)を、接顔部(14)を上下左右に四等分したときの下方内側の部分に位置するようにしたことを特徴する請求項1記載のスイミングゴーグル。
【請求項4】
着用者の瞳孔の中心線(L)から前記隆起面部(15)の頂点tまでの距離(X)を11±5mmとしたことを特徴する請求項1〜3の何れかに記載のスイミングゴーグル。
【請求項5】
前記隆起面部(15)を、20〜40mmの曲率半径(R)を有する曲面としたことを特徴する請求項1〜4の何れかに記載のスイミングゴーグル。
【請求項6】
前記接顔部(14)の上面カーブ(14a)と前記隆起面部(15)の頂点(t)までの差(Z)を3.4±3mmとしたことを特徴する請求項1〜5の何れかに記載のスイミングゴーグル。
【請求項7】
着用者の瞳孔の中心(O)から前記隆起面部(15)の頂点(t)までの距離(Y)を12〜27mmとしたことを特徴する請求項1〜6の何れかに記載のスイミングゴーグル。
【請求項8】
前記接顔パッド(11)を、ゴーグル本体(1)に装着する前に、その接顔パッド(11)の接顔部(14)が着用者の顔面に沿って接触するように形成したことを特徴する請求項1〜7の何れかに記載のスイミングゴーグル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−178794(P2010−178794A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22714(P2009−22714)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)