説明

スキッドステアローダの車体構造

【課題】メインフレームによって形成したハウジング室の上方に補強用の部材を配設することなく、メインフレームの底部フレームから立設した左右一対のサイドフレームにおける剛性を高めた、スキッドステアローダにおける車体構造を提供する。
【解決手段】底部フレーム14から立設された左右一対のサイドフレーム13の下端部には、対向するサイドフレーム13の側面間に挿入され、各サイドフレーム13の後端面に当接する補強部材としての厚板板金15を設ける。各サイドフレーム13の下端部側におけるコーナー部において、コーナー部に配したL型ガセット17によって、厚板板金15の上面と各サイドフレーム13の側面側と固定する。これにより、従来、エンジン室23の上方に配していた補強用の部材を廃止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、スキッドステアローダの車体構造に関し、特に、スキッドステアローダのメインフレーム後端部における構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スキッドステアローダのメインフレームにおける底部フレームは、前端部側及び後端部側に向かって水平方向に延出した構成となっている。そして、底部フレームから立設した左右一対のサイドフレームは、底部フレームの左右両側縁部に沿って設けられている。また、先端部に作業具を設けた左右一対の作業ブームの基端部は、それぞれ車幅方向に配した水平支軸を介して回動自在となるように、ブーム支持部によって支持されている。ブーム支持部は、メインフレームの後端部側における左右のサイドフレームの部位に、それぞれ設けられている。
【0003】
このように、作業ブームの基端部は、メインフレームの後端部側における左右のサイドフレームの部位において回動自在に支持されている。このように作業ブームの基端部がサイドフレームに支持された構成となっているので、スキッドステアローダの走行時や作業ブームの先端部に設けた作業具を用いた積込み作業時等において、左右の作業ブームから左右のサイドフレームに対して捻じれ力が作用すると、左右のサイドフレームは捻じられてしまうことになる。そして、サイドフレームが捻じられることによって、メインフレーム全体に対しても捻じれ力が作用することになる。
【0004】
このような捻じれ力の作用に対して耐え得る強度を備えたサイドフレームを構成するため、従来からのスキッドステアローダでは、左右一対のサイドフレーム間を連結する補強部材を備えた構成としている。左右のサイドフレーム間を連結している補強部材を備えたスキッドステアローダの車体構造としては、作業用車両の車体フレーム(例えば、特許文献1参照。)やスキッドステアローダフレーム(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0005】
特許文献1に記載された車体フレームを、本願発明における従来例1として、図6には特許文献1の車体フレームにおける後方斜視図を示している。図6に示すように、メインフレーム41は、底部フレーム43及び先端部フレーム44並びに左右一対のサイド壁42によって構成されている。左右のサイド壁42は、その下端側が底部フレーム43の側縁部に沿って固定されるとともに、クロスメンバー45によって互いに連結されている。サイド壁42の後方上部には、図示せぬ水平支軸を介して作業ブーム(不図示)の基端部を回動自在に支持するアップライト46が設けられている。
【0006】
また、メインフレーム41の後端側には、左右のサイド壁42間を連結するタイバー47が設けられている。タイバー47は、図示せぬテールゲートと図示せぬボンネットとの間に配されており、固定ボルトを介して左右のサイド壁42に対して着脱自在に構成されている。このように構成されているので、特許文献1の発明では、図示せぬ作業ブームを介してアップライト46にかかる重作業の負荷を、タイバー47とクロスメンバー45とによって効果的に支持することができるとしている。
【0007】
特許文献2に記載されたスキッドステアローダフレームを、本願発明における従来例2として、図7には特許文献2のスキッドステアローダフレームの平面図を示し、図8には、後面図を示している。図7,図8に示すように、スキッドステアローダフレーム51は、ベース部材52と左右一対の側方部材56と前方部材57とを有する構成となっている。そして
、ベース部材52と左右一対の側方部材56と前方部材57とによって、ハウジング室58が形成されている。
【0008】
ベース部材52は、先端部エッジ53、後部エッジ54及び左右の側部エッジ55を有した構成となっている。また、左右の側方部材56は、それぞれの下側領域がベース部材52の側部エッジ55に沿って取着されており、前方部材57は、左右の側方部材56間を連結するように、ベース部材52の先端部エッジ53の下部及び左右の側方部材56に対して一体的に取着されている。
【0009】
スキッドステアローダフレーム51には、着脱可能な補強手段59が設けられている。補強手段59は、後部板60と横軸のバー61とを備えた構成となっている。スキッドステアローダフレーム51の後端側に設けられた後部板60は、図8に示すように、ベース部材52に対して直立した配置構成となっている。そして、後部板60によって左右の側方部材56間を連結しておくことで、左右の側方部材56に対する補強を行っている。また、後部板60は、左右の側方部材56に対して着脱可能に取着けられている。
【0010】
スキッドステアローダフレーム51の中央部寄りに設けた横軸のバー61も、左右の側方部材56間を連結するのに用いられている。そして、横軸のバー61によっても、左右の側方部材56に対する補強を行うことができる。また、横軸のバー61は、ハウジング室58の上方の部位に配されており、左右の側方部材56に対して着脱可能に取着けられている。
【0011】
このように構成された特許文献2のスキッドステアローダフレームでは、スキッドステアローダフレーム51に対して着脱可能に配した補強手段59によって、左右一対の側方部材56に対する補強を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−322133号公報
【特許文献2】特開2002−294751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
左右の作業ブームからの捻じれ力に耐え得る強度をサイドフレームに備えさせるため、特許文献1の車体フレームでは、クロスメンバー45とタイバー47とを用いている。また、特許文献2のスキッドステアローダフレームでは、後部板60と横軸のバー61とを備えた着脱可能な補強手段59が用いられている。
【0014】
しかし、特許文献1におけるクロスメンバー45及びタイバー47は、メインフレーム41によって形成されたエンジン室48の上方に配されている。また、特許文献2における横軸のバー61は、ハウジング室58のほぼ上方に配されており、後部板60は、ベース部材52に対して直立した配置構成となっている。
【0015】
このため、特許文献1の車体フレームでは、エンジン室48の上方に配したクロスメンバー45及びタイバー47によって、エンジン室48の上部空間を使用する際に制限が加わってしまうことになる。しかも、クロスメンバー45及びタイバー47を配設した高さ位置によって、運転席からの後方視界にも影響を与えてしまうことになる。特に、クロスメンバー45は、車両の前後方向に対して幅を有した構成のため、運転席からの後方視界に対する影響は、大きなものとなっている。
【0016】
また、修理点検時等において、エンジン室48に装着した部品を着脱するときには、クロ
スメンバー45やタイバー47が着脱作業の妨げとなってしまう。特許文献1の車体フレームでは、エンジン室48内での修理点検等の作業が、車両の後方側から行い易くするため、タイバー47を着脱自在に構成している。しかし、クロスメンバー45を着脱できる構成に関しては、特許文献1には開示されていない。また、タイバー47は着脱自在に構成されているが、修理点検等の作業を行う度ごとに、タイバー47の着脱作業を行うことになり、作業効率の上から解決すべき問題となっている。
【0017】
特許文献2のスキッドステアローダフレームでは、車両の前後方向における横軸のバー61の横幅は、特許文献1におけるクロスメンバー45の横幅よりも短く構成されている。このため、特許文献2における横軸のバー61が及ぼす運転席からの後方視界に対する影響は、特許文献1の発明に比べて小さくなっており、改善されている。しかし、運転席からの後方視界に対する横軸のバー61の影響は、依然として残っている。
【0018】
また、特許文献2の後部板60は、左右の側方部材56における下端部側において、ベース部材52に対して直立した配置関係に構成されている。このため、運転席からの後方視界に対して、後部板60が及ぼす影響は、殆ど無視できる状態になっている。
【0019】
しかも、特許文献2のスキッドステアローダフレームでは、横軸のバー61及び後部板60は、左右の側方部材56に対して着脱自在に構成されているので、車両の後方側からの修理点検時には、横軸のバー61及び後部板60を左右の側方部材56から取り外すことができる。そして、ハウジング室58の上方における作業空間を開放させることができる。しかし、ハウジング室58の上方における作業空間を開放させるためには、横軸のバー61及び後部板60を左右の側方部材56から取り外す作業を行わなければならない。
【0020】
本願発明では、これらの問題点を解決し、メインフレームによって形成したハウジング室の上方に補強用の部材を配設することなく、メインフレームの底部フレームから立設した左右一対のサイドフレームにおける剛性を高めた、スキッドステアローダにおける車体構造を提供することを本願発明の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明の課題は、次に記載する各発明により達成することができる。
即ち、本願発明のスキッドステアローダの車体構造では、前端部、後端部及び左右の側縁部を有する、メインフレームにおける底部フレームと、前記各側縁部に沿って前記底部フレームから立設した、メインフレームにおける左右一対のサイドフレームと、先端部に作業具を設けた左右一対の作業ブームの基端部を、それぞれ車幅方向に配した水平支軸を介して回動自在に支持するブーム支持部と、を有し、前記ブーム支持部を、前記メインフレームの後端側における前記一対のサイドフレームの部位にそれぞれ設けたスキッドステアローダの車体構造であって、
前記底部フレームに対して平行に配され、前記メインフレームの後端側において、前記一対のサイドフレームの下端部間を連結固定する補強部材と、前記メインフレームの後端側における前記一対のサイドフレームの下端部側でのコーナー部において、前記補強部材と前記サイドフレームとの間を連結固定するL型ガセットと、を備えたことを最も主要な特徴としている。
【0022】
また、本願発明では、前記補強部材が、前記底部フレームの後端部及び前記一対のサイドフレームの下端部に連結固定された厚板板金であることを主要な特徴としている。
更に、本願発明では、前記補強部材の後端部が、スキッドステアローダのリアカバー後端よりも車両の後方側に出張っていることを主要な特徴としている。
更にまた、本願発明では、前記補強部材の後端部側における左右両側端部が、前記リアカバーの後端部を車両の左右方向に抱き込んでいることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本願発明では、補強部材によって一対のサイドフレームの下端部間を連結固定している。しかも、補強部材が底部フレームに対して平行に配された構成となっているので、一対のサイドフレームの下端部側におけるコーナー部では、L型ガセットを用いることができるようになり、L型ガセットによる補強効果も併せて有効に利用することができる。
【0024】
このように、一対のサイドフレームの下端部間を補強部材とL型ガセットとによって、強固に連結固定することができるので、一対のサイドフレームにおける剛性を高めることができる。そして、左右一対の作業ブームからの捻じれ力が作用した場合に耐え得る強度を、一対のサイドフレームに備えさせることができる。
【0025】
しかも、メインフレームによって形成したハウジング室の上方には、一対のサイドフレームを補強するための補強用の部材を配設しておかなくてすむ。そのため、ハウジング室内での修理点検時等において、補強部材を取り外す作業を行う必要が無く、修理点検等の作業効率を大いに高めることができる。
【0026】
このように、ハウジング室の上方に配していた補強用の部材を廃止できるので、ハウジング室の上方における作業空間を開放させておくことができる。そして、ハウジング室内に設置した部品の装着、取外しを行い易くすることができ、ハウジング室内での部品の整備が行い易くなる。また、従来のスキッドステアローダにおいてハウジング室の上方に配していた補強用の部材を廃止できるので、補強用の部材が影響していた運転席からの後方視界を広げることができる。
【0027】
本願発明では、補強部材を厚板板金によって構成しておくことができる。そして、補強部材とした厚板板金を、底部フレームの後端部及び一対のサイドフレームの下端部に溶接等によって連結固定しておくことができる。厚板板金による補強部材を用いることで、従来のスキッドステアローダに用いられていた補強部材に比べて、部品点数を減らすことができ、従来の補強部材を用いていた場合に比べて軽量化することができる。
【0028】
このように、補強部材における重量を減少させることができ、しかも、メインフレームの後端部側における厚みを大きく増大させずに、一対のサイドフレームに対する補強を行わせることができる。
【0029】
本願発明では、補強部材として用いた厚板板金をメインフレームの後端部側に配したときに、厚板板金の後端縁が、スキッドステアローダのリアカバー後端よりも車両の後方側に張り出すように出張らせておくことができる。このように構成しておくことにより、リアカバー後端よりも車両の後方側に出張らせた厚板板金の後端縁によって、バンパー機能を持たせることができる。そして、バンパーとして機能させた厚板板金の後端縁によって、リアカバーなどの損傷を防止できる。
【0030】
また、本願発明では、補強部材として用いた厚板板金の後端部側における左右両側端部を利用して、リアカバーの後端部を車両の左右方向に抱き込むようにして配設することができる。このように構成することによって、バンパーとして機能させた厚板板金の後端縁によって、更に広範囲に亘ってリアカバーなどの損傷を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】スキッドステアローダを前方から見た斜視図である。(実施例)
【図2】メインフレームの後端部における要部斜視図である。(実施例)
【図3】厚板板金の平面図である。(実施例)
【図4】スキッドステアローダの後部における要部斜視図である。(実施例)
【図5】スキッドステアローダの後部を下方から見たときの要部斜視図である。(実施例)
【図6】車体フレームの後方斜視図である。(従来例1)
【図7】スキッドステアローダフレームの平面図である。(従来例2)
【図8】スキッドステアローダフレームの後面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明のスキッドステアローダの車体構造としては、以下で説明する構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0033】
スキッドステアローダ1は、図1に示すように、例えば、ローダ本体2と、走行体3と、運転席4と、リフトアーム6と、リフトアーム6を回動自在に支持するブーム支持部5と、アームシリンダ7とバケット9を回動させる作業機用シリンダ29等を備えた構成となっている。
【0034】
ローダ本体2は、スキッドステアローダ1の車体を構成しており、車体の左右には一対の走行体3が設けられている。図1では、走行体3として、車体の前側に左右一対の前輪3Aを設け、その後側に左右一対の後輪3Bを設けた構成を示している。しかし、走行体としては、図示は省略しているが車体の左右に一対の履帯を設けた構成としておくこともできる。
【0035】
左右一対の前輪3Aは、それぞれ独立して回転駆動可能に設けられており、左右一対の後輪3Bも、それぞれ独立して回転駆動可能に設けられている。走行体として左右一対の履帯を設けた場合には、左右の履帯はそれぞれ独立して回転駆動可能に設けておくことができる。そして、運転席4に配した図示せぬ操作レバー装置によって、左右の前輪3A及び後輪3Bの回転数及び回転方向をそれぞれ変えることができ、あるいは、左右の履帯の回転数及び回転方向をそれぞれ変えることができる。
【0036】
このように左右の走行体3におけるそれぞれの回転速度及び回転方向を変更することで、ローダ本体2の姿勢を制御することができる。即ち、スキッドステアローダ1の前後進方向における直進走行や方向変更、スピン旋回等を行わせることができる。
【0037】
運転席4は、ローダ本体2の前寄りに位置しており、ローダ本体2の上部に搭載されている。運転席4は、前面を除く他の3面(左右の両面及び後面)が図示せぬネットガードによって覆われている。オペレータは、開口している運転席4の前面から運転席4内への乗降を行うことができる。また、運転席4の天井面には、少なくとも一部が格子状に形成された天井部4Aが構成されている。
【0038】
尚、運転席4の前面以外の3面を、全てネットガードで覆っておく必要はなく、側方視界や後方視界を確保することができ、かつ、オペレータが乗降可能な構成であれば、運転席4の構成としては他の構成を採用することもできる。例えば、前面を除く他の3面を硬質ガラス等の窓として構成しておき、天井に鋼板等を用いて構成しておくこともできる。また、前面にガラス窓付きの開閉扉等を設けることもできる。
【0039】
ローダ本体2の後部には図示せぬエンジン等が、エンジンカバー(不図示)内に格納されている。また、ローダ本体2の左右両側には、一対のサイドフレーム13(図3参照)が
上方に立設されて設けられている。そして、ローダ本体2の左右後部における各サイドフレーム13には、一対のリフトアーム6の基端部6aを支承する一対のブーム支持部5が設けられている。各ブーム支持部5の上端側では、リフトアーム6の基端部6aがピン等を介して回動可能に支承されている。
一対のブーム支持部5を、図6に示したように、各サイドフレームの後方上部に配設したアップライトに設けておく構成とすることもできる。
【0040】
一対のリフトアーム6は、それぞれのアームシリンダ7の伸縮動作によって一体的に上下方向に回動する。アームシリンダ7の基端側は、各ブーム支持部5の下側におけるサイドフレーム13にピン等を介して回動可能に支持されており、アームシリンダ7の先端側は、リフトアーム6を構成している補強用板状体25A,25Bに形成したシリンダ取付部28に、ピン等を介して回動可能に支承されている。
【0041】
アームシリンダ7が伸張することにより、リフトアーム6は、上方に向けて回動しながら上昇する。アームシリンダ7が縮退することにより、リフトアーム6は、下方に向けて降下し、図1で示す位置に戻ることができる。
【0042】
リフトアーム6の先端側は、ローダ本体2の前方において下向きに屈曲しており、下向きに屈曲したリフトアーム6の先端部には、作業具を着脱可能に取り付けることができる。即ち、リフトアーム6の先端部には、図示せぬアタッチメントカプラ等が設けられている。アタッチメントカプラ等を介して、例えば、バケット9やフォーク、スイーパ等の各種作業具を、着脱可能に取り付けることができる。図示例では、作業具として、バケット9を取り付けた構成を示しているが、バケット9は、作業具の一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0043】
図2には、エンジン等の部材も取り外した状態におけるメインフレーム12の後端部側での要部斜視図を示している。尚、図2では、ブーム支持部5の一部がサイドフレーム13の後端面よりも車体の後方側に突出した形状を図示している。しかし、図1に示しているように、ブーム支持部5をサイドフレーム13の後端面よりも車体の後方側には突出させない形状に構成しておくこともできる。
【0044】
また、図2では、走行体3として履帯を用いた構成例を示しているために、各サイドフレーム13の側部にトラックフレーム20を設けた構成を図示している。しかし、トラックフレーム20を設けずに走行体3として、図1に示したように車輪を用いた構成にすることもできる。
【0045】
図2に示すように、メインフレーム12は、車両の前後方向に設けられた底部フレーム14と、底部フレーム14の両側縁部に沿って底部フレーム14から立設された左右一対のサイドフレーム13とを備えた構成となっている。底部フレーム14と左右一対のサイドフレーム13とによって囲まれるメインフレーム12の後部側には、エンジン室23を形成しておくことができる。
【0046】
図1に示したリフトアーム6のように、先端部に作業具を設けた左右一対の作業ブームの基端部は、各サイドフレーム13の上端部に設けたブーム支持部5によって回動自在に支持されている。即ち、各作業ブームの基端部は、車幅方向に配した図示せぬ水平支軸を介して、ブーム支持部5によって回動自在に支持されている。
【0047】
また、図1に示したアームシリンダ7のように、作業ブームを回動させるブームシリンダの基端を回動可能に支持するシリンダ支持部7aは、各サイドフレーム13の下端部側に設けられている。そして、各サイドフレーム13の後端面13a及び後端面13aに連接した各サイ
ドフレーム13の側面部の一部は、リアカバー18として構成されている。
【0048】
即ち、図示例では、各サイドフレーム13の後部外面には外板18が設けられ、外板18は後部で折り曲げられてリアカバー18として構成されている。そして、リアカバー18の車両後部側が、サイドフレーム13における後端面13aとなっている。
【0049】
左右一対のサイドフレーム13の下端部には、対向するサイドフレーム13の側面間に挿入され、各サイドフレーム13の後端面に当接する補強部材としての厚板板金15が設けられている。
即ち、厚板板金15は、図3にその平面図を示すように、横向きのT字状の形状に構成されている。厚板板金15における左右の挿入部15cを、対向するサイドフレーム13の側面間に挿入することができる。そして、対向するサイドフレーム13の側面間に挿入した厚板板金15は、底部フレーム14に対して平行な状態に配しておくことができる。
【0050】
即ち、例えば、厚板板金15の上面が車体に対して水平な配置関係となるように、厚板板金15を配しておくことができる。あるいは、例えば、底部フレーム14の後端部側が、上方に傾斜した形状に構成されている場合には、厚板板金15の上面が車体に対して傾斜した配置関係となるように、厚板板金15を配設しておくこともできる。
【0051】
また、図4,図5に示すように、厚板板金15の後端部15aは、各サイドフレーム13の後端面13aによって形成されているリアカバーに対して、車両の後方側に出張った形状に構成されている。また、厚板板金15の両側端部15bは、各サイドフレーム13の後端面13aを車両の左右方向に抱き込むことができる形状に構成されている。
【0052】
尚、図4,図5では、エンジン室23(図2参照)の後部を覆うエンジンカバーの一部としてのテールゲート10を示している。テールゲート10の高さとしては、エンジン室23の上方に一対のサイドフレーム13を補強する補強部材が設けられていないので、運転席からの後方視界を広げることができる高さ位置とすることができる。
【0053】
このように構成されている厚板板金15を対向するサイドフレーム13の側面間に挿入した後に、厚板板金15を溶接等によって底部フレーム14の後端部側に固定することができる。また、厚板板金15の挿入部15cと各サイドフレーム13の側面との間を溶接等によって固定することができる。更に必要に応じて、厚板板金15の両側端部15bを、各サイドフレーム13の後端面13aに溶接等によって固定することができる。
【0054】
このように構成することによって、厚板板金15を一対のサイドフレーム13に対する補強部材として構成するとともに、サイドフレーム13の後端面13a等を損傷から保護するバンパーとしての機能をもたせておくことができる。
【0055】
本願発明では、一対のサイドフレーム13に対する補強効果を高めるため、各サイドフレーム13の下端部側におけるコーナー部には、L型ガセット17を配している。コーナー部に配したL型ガセット17によって、厚板板金15の上面と各サイドフレーム13の側面側とを溶接等によって固定しておくことができ、一対のサイドフレーム13に対する補強効果を高めている。
【0056】
また、各サイドフレーム13における底部フレーム14側の内面には、内部補強壁24が取り付けられており、内部補強壁24には、ラジエータ等を取り付ける取付片25が設けられている。対向する内部補強壁24間に取付片25を介してラジエータ等を取り付けることによって、ラジエータ等を壁構造として利用してサイドフレーム13間の強度を向上させることができる。
【0057】
例えば、ラジエータやオイルクーラー等を筐体内に収納し、この筐体を対向する内部補強壁24間に取付片25を介して取り付けることで、内部補強壁24間を連結した壁構造を構成することができる。このように、ラジエータやオイルクーラー等を収納した筐体によって構成した壁構造で内部補強壁24間を連結することによって得られる補強構造と、厚板板金15とL型ガセット17とを用いたことによる補強構造とによって、一対のサイドフレーム13に対する補強効果を大いに高めることができる。
【0058】
また、本願発明では、厚板板金15の両側端部15bを各サイドフレーム13の後端面13aに配した構成としているので、厚板板金15の両側端部15bによって、各サイドフレーム13が前後方向に捻じれたりするのを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本願発明は、立設した一対のサイドフレームに対する補強部材として好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1・・・スキッドステアローダ、3・・・走行体、3A・・・前輪、5・・・ブーム支持部、6・・・リフトアーム、6a・・・基端部、7a・・・シリンダ支持部、12・・・メインフレーム、13・・・サイドフレーム、13a・・・後端面、14・・・底部フレーム、15・・・厚板板金、15a・・・後端部、15b・・・側端部、15c・・・挿入部、17・・・L型ガセット、18・・・外板(リアカバー)、20・・・トラックフレーム、23・・・エンジン室、25A,25B・・・補強用板状体、29・・・作業機用シリンダ、41・・・メインフレーム、42・・・サイド壁、43・・・底部フレーム、44・・・先端部フレーム、45・・・クロスメンバー、46・・・アップライト、47・・・タイバー、48・・・エンジン室、51・・・スキッドステアローダフレーム、52・・・ベース部材、53・・・先端部エッジ、54・・・後部エッジ、55・・・側部エッジ、56・・・側方部材、57・・・前方部材、58・・・ハウジング室、59・・・補強手段、60・・・後部板、61・・・横軸のバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部、後端部及び左右の側縁部を有する、メインフレームにおける底部フレームと、
前記各側縁部に沿って前記底部フレームから立設した、メインフレームにおける左右一対のサイドフレームと、
先端部に作業具を設けた左右一対の作業ブームの基端部を、それぞれ車幅方向に配した水平支軸を介して回動自在に支持するブーム支持部と、
を有し、
前記ブーム支持部を、前記メインフレームの後端側における前記一対のサイドフレームの部位にそれぞれ設けたスキッドステアローダの車体構造であって、
前記底部フレームに対して平行に配され、前記メインフレームの後端側において、前記一対のサイドフレームの下端部間を連結固定する補強部材と、
前記メインフレームの後端側における前記一対のサイドフレームの下端部側でのコーナー部において、前記補強部材と前記サイドフレームとの間を連結固定するL型ガセットと、
を備えたことを特徴とするスキッドステアローダの車体構造。
【請求項2】
前記補強部材が、前記底部フレームの後端部及び前記一対のサイドフレームの下端部に連結固定された厚板板金であることを特徴とする請求項1記載のスキッドステアローダの車体構造。
【請求項3】
前記補強部材の後端部が、スキッドステアローダのリアカバー後端よりも車両の後方側に出張っていることを特徴とする請求項2記載のスキッドステアローダの車体構造。
【請求項4】
前記補強部材の後端部側における左右両側端部が、前記リアカバーの後端部を車両の左右方向に抱き込んでいることを特徴とする請求項3記載のスキッドステアローダの車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−12858(P2012−12858A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151277(P2010−151277)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)