説明

スクリュー圧縮機

【課題】運転容量を調節するためのスライドバルブを備えるスクリュー圧縮機において、運転容量を小さい値に設定した場合の運転効率を改善する。
【解決手段】スクリュー圧縮機のケーシング内では、スクリューロータ(40)の側方にスライドバルブ(70)が配置される。ケーシングには、流体室(23)を低圧空間に連通させるためのバイパス通路(33)が形成される。スライドバルブ(70)がスライドすると、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の大きさが変化し、スクリュー圧縮機の運転容量が変化する。スライドバルブ(70)において、その先端面(P2)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜している。また、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と対向する円筒壁(30)のシート面(P1)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と平行になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機の性能向上策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒や空気を圧縮する圧縮機として、スクリュー圧縮機が用いられている。例えば、特許文献1や特許文献2には、1つのスクリューロータと2つのゲートロータとを備えたシングルスクリュー圧縮機が開示されている。
【0003】
このシングルスクリュー圧縮機について説明する。スクリューロータは、概ね円柱状に形成されており、その外周部に複数条の螺旋溝が刻まれている。ゲートロータは、概ね平板状に形成されており、スクリューロータの側方に配置されている。このゲートロータには、複数の長方形板状のゲートが放射状に設けられている。ゲートロータは、その回転軸がスクリューロータの回転軸と直交する姿勢で設置され、ゲートがスクリューロータの螺旋溝と噛み合わされる。
【0004】
このシングルスクリュー圧縮機では、スクリューロータとゲートロータがケーシングに収容されており、スクリューロータの螺旋溝と、ゲートロータのゲートと、ケーシングの内壁面とによって流体室が形成される。スクリューロータを電動機等で回転駆動すると、スクリューロータの回転に伴ってゲートロータが回転する。そして、ゲートロータのゲートが、噛み合った螺旋溝の始端(吸入側の端部)から終端(吐出側の端部)へ向かって相対的に移動し、閉じきり状態となった流体室の容積が次第に縮小する。その結果、流体室内の流体が圧縮される。
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されているように、スクリュー圧縮機には、容量調節用のスライドバルブが設けられている。スライドバルブは、スクリューロータの外周に臨む位置に設けられ、スクリューロータの回転軸と平行な方向へスライド自在となっている。一方、スクリュー圧縮機には、圧縮行程中の流体室と吸入側とを連通させるためのバイパス通路が形成されている。スライドバルブが移動すると、スクリューロータが挿入されるシリンダ部の内周面におけるバイパス通路の開口面積が変化し、バイパス通路を通じて低圧空間へ送り返される流体の流量が変化する。その結果、最終的に流体室から圧縮されて吐出される流体の流量が変化し、スクリュー圧縮機から吐出される流体の流量(即ち、スクリュー圧縮機の運転容量)が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−316586号公報
【特許文献2】特開平06−042474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来のスクリュー圧縮機では、スライドバルブを移動させることによってバイパス通路の開口面積を変化させ、流体室からバイパス通路へ流出する流体の流量を変化させることによって、スクリュー圧縮機の運転容量を調節している。ところが、従来のスクリュー圧縮機では、シリンダ部の内周面におけるバイパス通路の開口の形状が適切でなかったため、流体室からバイパス通路へ流体が流出する際の圧力損失が大きくなり、スクリューロータを駆動するのに必要な動力が嵩むおそれがあった。
【0008】
このような従来のスクリュー圧縮機の問題点について、図21及び図22を参照しながら詳細に説明する。なお、図21は、スクリューロータ(540)の展開図にゲートロータ(550)とスライドバルブ(570)を重ねて図示したものである。また、図22は、スクリューロータ(540)の展開図にゲートロータ(550)とバイパス通路(533)の開口部(534)だけを重ねて図示したものである。
【0009】
図21に示すように、スクリューロータ(540)の外周面は、ケーシングのシリンダ部(530)によって覆われている。同図では、スクリューロータ(540)の上側がケーシング内の低圧空間となり、スクリューロータ(540)の下側がケーシング内の高圧空間となっている。また、ゲートロータ(550)のゲートがスクリューロータ(540)の螺旋溝(541)に噛み合わされ、ゲートロータ(550)の側方にスライドバルブ(570)が配置されている。スライドバルブ(570)は、スクリューロータ(540)の回転軸と平行な方向(即ち、スクリューロータ(540)の回転方向と直交する方向)へ往復動自在となっている。
【0010】
スライドバルブ(570)の先端面(602)は、スライドバルブ(570)の移動方向と直交する平坦面となっている。また、シリンダ部(530)のうちスライドバルブ(570)の先端面(602)と対向する面であるシート面(601)も、スライドバルブ(570)の移動方向と直交する平坦面となっている。シリンダ部(530)の内周面では、スライドバルブ(570)の先端面(602)とシリンダ部(530)のシート面(601)に挟まれた部分が、バイパス通路(533)の開口部(534)となる。そして、シリンダ部(530)の内周面におけるバイパス通路(533)の開口部(534)は、これを展開してスクリューロータ(540)の展開図に重ねて図示すると、図22に示すような長辺がスクリューロータ(540)の回転方向と平行な長方形となる。
【0011】
図22は、一方のバイパス通路(533)の開口部(534)と、一方のゲートロータ(550)と、スクリューロータ(540)の螺旋溝(541)との相対的な位置の推移を図示している。ここでは、これら三つの相対的な位置の推移について、同図に太線で示した一つの螺旋溝(541)に着目して説明する。
【0012】
図22(a)は、螺旋溝(541)によって形成された流体室(523)にバイパス通路(533)の開口部(534)が連通し始める直前の状態を示している。この状態からスクリューロータ(540)が回転すると、バイパス通路(533)の開口部(534)が流体室(523)に連通し始める。流体室(523)がバイパス通路(533)と連通する期間の初期において、流体室(523)内の流体圧は、低圧空間内の流体圧と概ね等しくなる。その後、同図(b)の状態を経て同図(c)の状態に至ると、螺旋溝(541)により形成された流体室(523)が、ゲートロータ(550)のゲートによって低圧空間から仕切られる。ゲートロータ(550)によって低圧空間から仕切られた流体室(523)は、同図(d)及び同図(e)の状態を経て同図(f)に至る直前までの間に亘って、バイパス通路(533)に連通し続ける。その間は、低圧空間から流体室(523)へ流入した流体の一部がバイパス通路(533)へ押し出されてゆく。そして、同図(f)の状態になると、流体室(523)がバイパス通路(533)から遮断されて閉空間となり、流体室(523)内の流体が圧縮されてゆく。
【0013】
上述したように、図22(c)の状態から同図(f)の状態に至る直前までの期間には、流体室(523)内の流体が、ゲートによってバイパス通路(533)へ押し出されてゆく。従って、この期間中に流体室(523)からバイパス通路(533)へ流体が流入する際の圧力損失が大きいと、ゲートによって流体をバイパス通路(533)へ押し出すために必要な動力が嵩み、運転効率が低下してしまう。
【0014】
一方、図22(c)の状態から同図(f)の状態に至る直前までの期間には、バイパス通路(533)の開口部(534)の一部分だけが螺旋溝(541)と重複しており、螺旋溝(541)により形成された流体室(523)内の流体は、バイパス通路(533)の開口部(534)のうち螺旋溝(541)と重複した部分だけを通ってバイパス通路(533)へ流入する。従って、この期間には、バイパス通路(533)の開口部(534)のうち流体室(523)からの流体が通過する部分の面積が不充分となり、流体室(523)からバイパス通路(533)へ流体が流出する際の圧力損失が大きくなってしまう。その結果、従来のスクリュー圧縮機では、ゲートによって流体をバイパス通路(533)へ押し出すために必要な動力が嵩み、スクリュー圧縮機の運転容量を小さい値に設定しているにも拘わらず、スクリューロータ(540)を駆動するための動力を充分に削減できないという問題が生じていた。
【0015】
特に、従来のスクリュー圧縮機では、流体室(523)がバイパス通路(533)と連通している期間の終期に、バイパス通路(533)の開口部(534)のうち螺旋溝(541)と重複する部分の面積が急激に減少する。このため、スクリュー圧縮機の運転容量を小さい状態での運転効率の低下が一層深刻化していた。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、運転容量を調節するためのスライドバルブを備えるスクリュー圧縮機において、運転容量を小さい値に設定した場合の運転効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の発明は、流体室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、上記スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(30)を有するケーシング(10)と、上記ケーシング(10)内に形成されて圧縮前の低圧流体が流入する低圧空間(S1)と、上記シリンダ部(30)の内周面(35)に開口して上記流体室(23)を上記低圧空間(S1)に連通させるバイパス通路(33)と、上記スクリューロータ(40)の軸方向へスライドすることによって上記シリンダ部(30)の内周面(35)における上記バイパス通路(33)の開口面積を変化させるスライドバルブ(70)とを備えるスクリュー圧縮機を対象とする。そして、上記スライドバルブ(70)では、上記バイパス通路(33)に臨む先端面(P2)が上記螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜しているものである。
【0018】
第1の発明のスクリュー圧縮機(1)では、ケーシング(10)のシリンダ部(30)にスクリューロータ(40)が挿入される。スクリューロータ(40)が回転すると、螺旋溝(41)によって形成された流体室(23)へ流体が吸入されて圧縮される。このスクリュー圧縮機(1)において、スライドバルブ(70)をスライドさせると、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口面積が変化し、流体室(23)からバイパス通路(33)を通って低圧空間(S1)へ流出する流体の流量が変化する。つまり、スライドバルブ(70)をスライドさせると、単位時間当たりにスクリュー圧縮機(1)から吐出される流体の量(即ち、スクリュー圧縮機(1)の運転容量)が変化する。
【0019】
第1の発明のスライドバルブ(70)では、バイパス通路(33)に臨む端面が先端面(P2)となっており、この先端面(P2)がスクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜している。このため、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)が、スクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜した形状となる。その結果、このバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積が拡大し、流体室(23)内の流体がバイパス通路(33)へ流入する際の圧力損失が低減される。
【0020】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記スクリューロータ(40)の外周面(49)のうち隣接する二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が、上記シリンダ部(30)の内周面(35)と摺接して隣接する二つの螺旋溝(41)の間をシールする周方向シール面(45)となり、上記周方向シール面(45)の周縁のうち上記スクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する部分が、該周方向シール面(45)の前縁(46)となり、上記スライドバルブ(70)の先端面(P2)の周縁部のうち上記スクリューロータ(40)に隣接する部分がスクリュー側縁部(73)となり、上記スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)が、上記スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行になっているものである。
【0021】
第2の発明において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行な形状になっている。従って、スクリューロータ(40)の回転中において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)がスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と交差することはなく、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断される瞬間に、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)の全体がスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と重なり合う。つまり、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断される直前まで、その全体が流体室(23)に露出している。
【0022】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記スクリューロータ(40)の外周面(49)のうち隣接する二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が、上記シリンダ部(30)の内周面(35)と摺接して隣接する二つの螺旋溝(41)の間をシールする周方向シール面(45)となり、上記スライドバルブ(70)の先端面(P2)の周縁部のうち上記スクリューロータ(40)に隣接する部分がスクリュー側縁部(73)となっており、上記スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その全体が同時に上記周方向シール面(45)と重複可能な形状になっているものである。
【0023】
第3の発明において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に沿うように傾斜することによって、その全体が同時にスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)と重複可能になっている。つまり、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断された時点において、その全体が周方向シール面(45)と重複した状態となる。
【0024】
第4の発明は、上記第1〜第3の何れか一つの発明において、上記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数のゲート(51)が放射状に形成されたゲートロータ(50)を備える一方、上記シリンダ部(30)の内周面(35)における上記バイパス通路(33)の開口部(34)の全体が、上記ゲート(51)によって上記低圧空間(S1)から仕切られた流体室(23)に対して、上記スクリューロータ(40)が所定の角度だけ回転する間に亘って開口するものである。
【0025】
第4の発明では、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)にゲートロータ(50)のゲート(51)が噛み合わされる。この発明では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に沿うように傾斜することによって、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の全体が、ゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた流体室(23)に対し、所定の期間に亘って開口する。この期間において、流体室(23)内の流体は、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の全体を通ってバイパス通路(33)へ流出してゆく。
【発明の効果】
【0026】
本発明では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がスクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜しているため、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)も、スクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜した形状となる。このため、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積を拡大させることができ、流体室(23)内の流体がバイパス通路(33)へ流出する際の圧力損失を低減することができる。従って、本発明によれば、流体室(23)内の流体をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を削減することができ、シリンダ部(30)の内周面(35)にバイパス通路(33)が開口している状態(即ち、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大値未満に設定されている状態)におけるスクリュー圧縮機(1)の運転効率を向上させることができる。
【0027】
上記第2の発明では、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)が、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行な形状になっている。そのため、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断される直前まで、その全体が流体室(23)に露出することになる。従って、この発明によれば、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積を、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断される直前まで可能な限り大きくすることができ、流体室(23)内の流体をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を確実に削減することができる。
【0028】
上記第3の発明において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に沿うように傾斜することによって、その全体が同時にスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)と重複可能になっている。従って、この発明によれば、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積を、充分に確保することができる。
【0029】
上記第4の発明では、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の全体が、ゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた流体室(23)に対して一時的に開口する。このため、流体室(23)内の流体がゲート(51)によってバイパス通路(33)へ押し出されてゆく期間中に、シリンダ部(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積を最大にすることができ、流体室(23)内の流体をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を一層確実に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】シングルスクリュー圧縮機の要部の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A断面を示す横断面図である。
【図3】シングルスクリュー圧縮機の要部を抜き出して示す斜視図である。
【図4】スクリューロータの斜視図である。
【図5】スライドバルブの斜視図である。
【図6】スライドバルブの正面図である。
【図7】円筒部とスライドバルブとゲートロータを併せて図示したスクリューロータの展開図である。
【図8】シングルスクリュー圧縮機の圧縮機構の動作を示す平面図であり、(A)は吸入行程を示し、(B)は圧縮行程を示し、(C)は吐出行程示す。
【図9】バイパス通路の開口部と螺旋溝の相対位置の推移を示すスクリューロータの展開図である。
【図10】図9(b)の拡大図である。
【図11】バイパス通路の開口部とゲートロータを併せて図示したスクリューロータの展開図であって、(A)は図9(d)の拡大図であり、(B)は図9(e)の拡大図である。
【図12】図9(f)の拡大図である。
【図13】スクリューロータの回転角度と実バイパス面積の関係を示すグラフである。
【図14】スクリューロータの回転角度と流体室内の冷媒圧力の関係を示すグラフである。
【図15】実施形態の変形例1におけるスクリューロータの展開図であって、(A)は図7相当図であり、(B)は図12相当図である。
【図16】実施形態の変形例1におけるスクリューロータの展開図であって、流体室がバイパス通路から遮断される直前の状態を示すものである。
【図17】実施形態の変形例2におけるスクリューロータの展開図であって、(A)は図7相当図であり、(B)は図12相当図である。
【図18】実施形態の変形例2におけるスクリューロータの展開図であって、(A)は図7相当図であり、(B)は図12相当図である。
【図19】実施形態の変形例3におけるスクリューロータの展開図であって、(A)は図7相当図であり、(B)は図12相当図である。
【図20】実施形態の変形例3におけるスクリューロータの展開図であって、(A)は図7相当図であり、(B)は図12相当図である。
【図21】従来のシングルスクリュー圧縮機における図7相当図である。
【図22】従来のシングルスクリュー圧縮機における図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態のシングルスクリュー圧縮機(1)(以下、単にスクリュー圧縮機と言う。)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮するためのものである。
【0032】
図1,図2に示すように、スクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。このスクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(20)とそれを駆動する電動機とが金属製のケーシング(10)に収容されている。圧縮機構(20)は、駆動軸(21)を介して電動機と連結されている。図1において、電動機は省略されている。また、ケーシング(10)内には、冷媒回路の蒸発器から低圧のガス冷媒が導入されると共に該低圧ガスを圧縮機構(20)へ案内する低圧空間(S1)と、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒が流入する高圧空間(S2)とが区画形成されている。
【0033】
圧縮機構(20)は、ケーシング(10)内に形成された円筒壁(30)と、該円筒壁(30)に挿入された1つのスクリューロータ(40)と、該スクリューロータ(40)に噛み合う2つのゲートロータ(50)とを備えている。
【0034】
円筒壁(30)は、概ね円筒状に形成され、スクリューロータ(40)の外周面(49)を覆うように設けられている。この円筒壁(30)は、仕切り壁部を構成している。円筒壁(30)は、その一部分が切り欠かれており、この切り欠かれた部分が吸入用開口(36)となっている。
【0035】
スクリューロータ(40)には、駆動軸(21)が挿通されている。スクリューロータ(40)と駆動軸(21)は、キー(22)によって連結されている。駆動軸(21)は、スクリューロータ(40)と同軸上に配置されている。駆動軸(21)の先端部は、圧縮機構(20)の高圧側(図1における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側)に位置する軸受ホルダ(60)に回転自在に支持されている。この軸受ホルダ(60)は、玉軸受(61)を介して駆動軸(21)を支持している。
【0036】
図3,図4に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に回転可能に挿入されている。スクリューロータ(40)には、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びる螺旋溝(41)が複数(本実施形態では、6本)形成されている。各螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の外周部に形成された凹溝であって、流体室(23)を形成する。
【0037】
スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、図4における左端が始端となり、同図における右端が終端となっている。また、スクリューロータ(40)は、同図における左端部(吸入側の端部)がテーパー状に形成されている。図4に示すスクリューロータ(40)では、テーパー面状に形成されたその左端面に螺旋溝(41)の始端が開口する一方、その右端面に螺旋溝(41)の終端は開口していない。各螺旋溝(41)では、スクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する側壁面が前方壁面(42)となり、スクリューロータ(40)の回転方向の後方に位置する側壁面が後方壁面(43)となっている。
【0038】
スクリューロータ(40)の外周面(49)では、隣り合う二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が周方向シール面(45)を構成している。周方向シール面(45)では、その周縁のうちスクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する部分が前縁(46)となり、その周縁のうちスクリューロータ(40)の回転方向の後方に位置する部分が後縁(47)となっている。また、スクリューロータ(40)の外周面(49)では、螺旋溝(41)の終端に隣接する部分が軸方向シール面(48)を構成している。この軸方向シール面(48)は、スクリューロータ(40)の端面に沿った円周面となっている。
【0039】
上述したように、スクリューロータ(40)は、円筒壁(30)に挿入されている。そして、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)は、円筒壁(30)の内周面(35)と摺接する。
【0040】
なお、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)と円筒壁(30)の内周面(35)とは、物理的に接触している訳ではなく、両者の間にはスクリューロータ(40)をスムーズに回転させるために必要な最小限のクリアランスが設けられている。そして、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)及び軸方向シール面(48)と円筒壁(30)の内周面(35)との間には冷凍機油からなる油膜が形成され、この油膜によって流体室(23)の気密性が確保される。
【0041】
各ゲートロータ(50)は、長方形板状に形成された複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた樹脂製の部材である。各ゲートロータ(50)は、円筒壁(30)の外側に、スクリューロータ(40)の回転軸に対して軸対称となるように配置されている。つまり、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)では、二つのゲートロータ(50)が、スクリューロータ(40)の回転中心軸周りに等角度間隔(本実施形態では180°間隔)で配置されている。各ゲートロータ(50)の軸心は、スクリューロータ(40)の軸心と直交している。各ゲートロータ(50)は、ゲート(51)が円筒壁(30)を貫通してスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合うように配置されている。
【0042】
スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)は、その両側部が螺旋溝(41)の前方壁面(42)又は後方壁面(43)と摺接し、その先端部が螺旋溝(41)の底壁面(44)と摺接する。なお、螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)とスクリューロータ(40)との間には、スクリューロータ(40)をスムーズに回転させるために必要な最小限のクリアランスが設けられている。螺旋溝(41)に噛み合ったゲート(51)とスクリューロータ(40)との間には冷凍機油からなる油膜が形成され、この油膜によって流体室(23)の気密性が確保される。
【0043】
ゲートロータ(50)は、金属製のロータ支持部材(55)に取り付けられている(図2,3を参照)。ロータ支持部材(55)は、基部(56)とアーム部(57)と軸部(58)とを備えている。基部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。アーム部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数だけ設けられており、基部(56)の外周面から外側へ向かって放射状に延びている。軸部(58)は、棒状に形成されて基部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、基部(56)の中心軸と一致している。ゲートロータ(50)は、基部(56)及びアーム部(57)における軸部(58)とは反対側の面に取り付けられている。各アーム部(57)は、ゲート(51)の裏面に当接している。
【0044】
ゲートロータ(50)が取り付けられたロータ支持部材(55)は、円筒壁(30)に隣接してケーシング(10)内に区画形成されたゲートロータ室(90)に収容されている(図2を参照)。図2におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が下端側となる姿勢で設置されている。一方、同図におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたロータ支持部材(55)は、ゲートロータ(50)が上端側となる姿勢で設置されている。各ロータ支持部材(55)の軸部(58)は、ゲートロータ室(90)内の軸受ハウジング(91)に玉軸受(92,93)を介して回転自在に支持されている。なお、各ゲートロータ室(90)は、低圧空間(S1)に連通している。
【0045】
スクリュー圧縮機(1)には、容量調節用のスライドバルブ(70)が設けられている。このスライドバルブ(70)は、スライドバルブ収納部(31)内に設けられている。スライドバルブ収納部(31)は、円筒壁(30)がその周方向の2カ所において径方向外側に膨出した部分であって、吐出側の端部(図1における右端部)から吸入側の端部(同図における左端部)へ向かって延びる概ね半円筒形状に形成されている。スライドバルブ(70)は、円筒壁(30)の軸心方向にスライド可能に構成されており、スライドバルブ収納部(31)へ挿入された状態でスクリューロータ(40)の周側面と対面する。スライドバルブ(70)の詳細な構造は後述する。
【0046】
ケーシング(10)内には、円筒壁(30)の外側に連通路(32)が形成されている。連通路(32)は、各スライドバルブ収納部(31)に対応して1つずつ形成されている。連通路(32)は、円筒壁(30)の軸方向へ延びる通路であって、その一端が低圧空間(S1)に開口し、その他端がスライドバルブ収納部(31)の吸入側の端部に開口している。円筒壁(30)のうち連通路(32)の他端(図1における右端)に隣接する部分は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)が当接するシート部(11)を構成している。また、シート部(11)では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と向かい合う面がシート面(P1)を構成している。この円筒壁(30)のシート面(P1)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)に対応した形状となっており、その全体がスライドバルブ(70)の先端面(P2)と密着し得る。
【0047】
スライドバルブ(70)が高圧空間(S2)寄り(図1における駆動軸(21)の軸方向を左右方向とした場合の右側寄り)へ移動すると、スライドバルブ収納部(31)の端面(P1)とスライドバルブ(70)の端面(P2)との間に軸方向隙間が形成される。この軸方向隙間は、流体室(23)から低圧空間(S1)へ冷媒を戻すためのバイパス通路(33)を、連通路(32)と共に構成している。つまり、バイパス通路(33)は、その一端が低圧空間(S1)に連通し、その他端が円筒壁(30)の内周面(35)に開口可能となっている。スライドバルブ収納部(31)の端面(P1)とスライドバルブ(70)の端面(P2)とが互いに離れた状態では、両者の間に形成された開口が、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)となる。そして、スライドバルブ(70)が移動すると、バイパス通路(33)の開口部(34)の面積が変化し、圧縮機構(20)の容量が変化する。
【0048】
上記スクリュー圧縮機(1)には、スライドバルブ(70)を駆動するためのスライドバルブ駆動機構(80)が設けられている(図1を参照)。このスライドバルブ駆動機構(80)は、軸受ホルダ(60)に固定されたシリンダ(81)と、該シリンダ(81)内に装填されたピストン(82)と、該ピストン(82)のピストンロッド(83)に連結されたアーム(84)と、該アーム(84)とスライドバルブ(70)とを連結する連結ロッド(85)と、アーム(84)を図1の右方向(アーム(84)をケーシング(10)から引き離す方向)に付勢するスプリング(86)とを備えている。
【0049】
図1に示すスライドバルブ駆動機構(80)では、ピストン(82)の左側空間(ピストン(82)のスクリューロータ(40)側の空間)の内圧が、ピストン(82)の右側空間(ピストン(82)のアーム(84)側の空間)の内圧よりも高くなっている。そして、スライドバルブ駆動機構(80)は、ピストン(82)の右側空間の内圧(即ち、右側空間内のガス圧)を調節することによって、スライドバルブ(70)の位置を調整するように構成されている。
【0050】
スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)では、その軸方向の端面の一方に圧縮機構(20)の吸入圧が、他方に圧縮機構(20)の吐出圧がそれぞれ作用する。このため、スクリュー圧縮機(1)の運転中において、スライドバルブ(70)には、常にスライドバルブ(70)を低圧空間(S1)側へ押す方向の力が作用する。従って、スライドバルブ駆動機構(80)におけるピストン(82)の左側空間及び右側空間の内圧を変更すると、スライドバルブ(70)を高圧空間(S2)側へ引き戻す方向の力の大きさが変化し、その結果、スライドバルブ(70)の位置が変化する。
【0051】
スライドバルブ(70)の詳細な構造と、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の詳細な形状について、図5〜図7を適宜参照しながら説明する。
【0052】
図5,図6に示すように、スライドバルブ(70)は、弁体部(71)と、ガイド部(75)と、連結部(77)とによって構成されている。このスライドバルブ(70)において、弁体部(71)とガイド部(75)と連結部(77)とは、1つの金属製の部材で構成されている。つまり、弁体部(71)とガイド部(75)と連結部(77)とは、一体に形成されている。
【0053】
弁体部(71)は、中実の円柱の一部を削ぎ落としたような形状となっており、削ぎ落とされた部分がスクリューロータ(40)を向く姿勢でケーシング(10)内に設置されている。弁体部(71)において、スクリューロータ(40)と向かい合う対向面(72)は、その曲率半径が円筒壁(30)の内周面(35)の曲率半径と等しい円弧面となっており、弁体部(71)の軸方向へ延びている。この弁体部(71)の対向面(72)は、スクリューロータ(40)と摺接する。
【0054】
弁体部(71)では、両方の端面が弁体部(71)の軸方向に対して傾斜した傾斜面となっている。この傾斜面となった弁体部(71)の端面の傾きは、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の傾き概ね一致している。図6における弁体部(71)の左端面は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)を構成している。つまり、スライドバルブ(70)の先端面(P2)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜している。この先端面(P2)は、弁体部(71)の対向面(72)と直交している。また、スライドバルブ(70)の先端面(P2)では、その周縁部のうちスクリューロータ(40)に隣接する部分(即ち、先端面(P2)と対向面(72)の境界を形成する縁部)が、スクリュー側縁部(73)となっている。
【0055】
ガイド部(75)は、断面がT字形の柱状に形成されている。このガイド部(75)において、T字形の横棒に対応する側面(即ち、図5において手前側を向いている側面)は、その曲率半径が円筒壁(30)の内周面(35)の曲率半径と等しい円弧面となっており、軸受ホルダ(60)の外周面と摺接する摺動面(76)を構成している。スライドバルブ(70)において、ガイド部(75)は、その摺動面(76)が弁体部(71)の対向面(72)と同じ側を向く姿勢で、弁体部(71)との間に間隔をおいて配置されている。
【0056】
連結部(77)は、比較的短い柱状に形成され、弁体部(71)とガイド部(75)を連結している。この連結部(77)は、弁体部(71)の対向面(72)やガイド部(75)の摺動面(76)とは反対側にオフセットした位置に設けられている。そして、スライドバルブ(70)では、弁体部(71)とガイド部(75)の間の空間とガイド部(75)の背面側(即ち、摺動面(76)とは反対側)の空間とが吐出ガスの通路を形成し、弁体部(71)の対向面(72)とガイド部(75)の摺動面(76)との間が吐出口(25)となっている。高圧空間(S2)は、この吐出口(25)を介して流体室(23)に連通する。
【0057】
図7に示すように、スライドバルブ(70)の先端面(P2)が円筒壁(30)のシート面(P1)から離れた状態では、円筒壁(30)の内周面(35)にバイパス通路(33)が開口する。つまり、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と円筒壁(30)のシート面(P1)に挟まれている。
【0058】
上述したように、スライドバルブ(70)の先端面(P2)では、その周縁部のうちスクリューロータ(40)に隣接する部分がスクリュー側縁部(73)となっている。このスクリュー側縁部(73)は、それを平面上に展開した形状が、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)及び後縁(47)に沿うように傾斜した直線(即ち、螺旋溝(41)の伸長方向へ沿うように、スクリューロータ(40)の周方向に対して所定の角度をなす方向へ延びる直線)となっている。また、このスクリュー側縁部(73)は、その全体がスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)と重複し得るような形状となっている。
【0059】
また、上述したように、円筒壁(30)のシート面(P1)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)に対応した形状となっており、その全体がスライドバルブ(70)の先端面(P2)と密着し得る。具体的に、円筒壁(30)のシート面(P1)は、円筒壁(30)の内周面(35)と直交している。また、円筒壁(30)のシート面(P1)では、その周縁部のうちスクリューロータ(40)に隣接する部分(即ち、シート面(P1)と内周面(35)の境界を形成する縁部)が、スクリュー側縁部(13)となっている。このスクリュー側縁部(13)は、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)と平行になっている。つまり、円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)とスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)とを平面上に展開すると、両者は互いに平行な直線となる。従って、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)は、それを平面上に展開した形状が平行四辺形となる。
【0060】
−運転動作−
先ず、スクリュー圧縮機(1)の全体的な運転動作について、図8を参照しながら説明する。
【0061】
スクリュー圧縮機(1)において電動機を起動すると、駆動軸(21)が回転するのに伴ってスクリューロータ(40)が回転する。このスクリューロータ(40)の回転に伴ってゲートロータ(50)も回転し、圧縮機構(20)が吸入行程、圧縮行程および吐出行程を繰り返す。ここでは、図8においてドットを付した流体室(23)に着目して説明する。
【0062】
図8(A)において、ドットを付した流体室(23)は、低圧空間(S1)に連通している。また、この流体室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の下側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされている。スクリューロータ(40)が回転すると、このゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって相対的に移動し、それに伴って流体室(23)の容積が拡大する。その結果、低圧空間(S1)の低圧ガス冷媒が流体室(23)へ吸い込まれる。
【0063】
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図8(B)の状態となる。同図において、ドットを付した流体室(23)は、閉じきり状態となっている。つまり、この流体室(23)が形成されている螺旋溝(41)は、同図の上側に位置するゲートロータ(50)のゲート(51)と噛み合わされ、このゲート(51)と円筒壁(30)によって低圧空間(S1)から仕切られている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、流体室(23)の容積が次第に縮小する。その結果、流体室(23)内のガス冷媒が圧縮される。
【0064】
スクリューロータ(40)が更に回転すると、図8(C)の状態となる。同図において、ドットを付した流体室(23)は、吐出口(25)を介して高圧空間(S2)と連通した状態となっている。そして、スクリューロータ(40)の回転に伴ってゲート(51)が螺旋溝(41)の終端へ向かって移動すると、圧縮された冷媒ガスが流体室(23)から高圧空間(S2)へ押し出されてゆく。
【0065】
次に、スライドバルブ(70)を用いた圧縮機構(20)の容量調節について、図1を参照しながら説明する。なお、圧縮機構(20)の容量は、スクリュー圧縮機(1)の運転容量と同義であって、“単位時間当たりに圧縮機構(20)から高圧空間(S2)へ吐出される冷媒の量”を意味する。
【0066】
スライドバルブ(70)が図1の左側へ最も押し込まれた状態では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がシート部(11)のシート面(P1)に押し付けられ、圧縮機構(20)の容量が最大となる。つまり、この状態では、バイパス通路(33)がスライドバルブ(70)の弁体部(71)によって完全に塞がれ、低圧空間(S1)から流体室(23)へ吸入された冷媒ガスの全てが高圧空間(S2)へ吐出される。
【0067】
一方、スライドバルブ(70)が図1の右側へ退き、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がシート面(P1)から離れると、円筒壁(30)の内周面(35)にバイパス通路(33)が開口する。この状態において、低圧空間(S1)から流体室(23)へ吸入された冷媒ガスは、その一部が圧縮行程途中の流体室(23)からバイパス通路(33)を通って低圧空間(S1)へ戻り、残りが最後まで圧縮されて高圧空間(S2)へ吐出される。そして、スライドバルブ(70)の先端面(P2)とスライドバルブ収納部(31)のシート面(P1)との間隔が広がると、それにつれてバイパス通路(33)を通って低圧空間(S1)へ戻る冷媒の量が増大し、高圧空間(S2)へ吐出される冷媒の量が減少する(つまり、圧縮機構(20)の容量が減少する)。
【0068】
なお、流体室(23)から高圧空間(S2)へ吐出される冷媒は、先ずスライドバルブ(70)に形成された吐出口(25)へ流入する。その後、この冷媒は、スライドバルブ(70)のガイド部(75)の背面側に形成された通路を通って高圧空間(S2)へ流入する。
【0069】
−実バイパス面積の変化−
上述したように、スライドバルブ(70)の先端面(P2)が円筒壁(30)のシート面(P1)から離れた状態では、円筒壁(30)の内周面(35)にバイパス通路(33)の開口部(34)が現れる。一方、スクリューロータ(40)の回転中には、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)がスクリューロータ(40)の周方向へ移動してゆく。そして、流体室(23)内の冷媒は、バイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)とオーバーラップしている部分を通ってバイパス通路(33)へ流出してゆく。
【0070】
ここでは、スクリューロータ(40)に形成された一つの螺旋溝(41a)に着目し、バイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41a)とオーバーラップする部分の面積(以下では、「実バイパス面積」という)の変化について、図9〜図13を適宜参照しながら説明する。
【0071】
なお、図9〜図12は、スクリューロータ(40)の展開図に、一方のゲートロータ(50)と、それに対応するスライドバルブ(70)によって形成されたバイパス通路(33)の開口部(34)とを図示したものである。また、図9〜図12に図示されたバイパス通路(33)の開口部(34)は、スライドバルブ(70)の先端面(P2)と円筒壁(30)のシート面(P1)の距離が最大となった状態(即ち、圧縮機構(20)の容量が最小となった状態)におけるものである。更に、図9〜図12では、従来のバイパス通路の開口部(534)が破線で図示されている。この従来のバイパス通路の開口部(534)も、圧縮機構の容量が最小となった状態におけるものである。
【0072】
図9(a)は、従来のバイパス通路の開口部(534)が螺旋溝(41a)と重複する直前の状態を示している。この状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図9(b)に示す状態となる。図10にも拡大して図示するが、この図9(b)に示す状態は、本実施形態のバイパス通路(33)の開口部(34)が螺旋溝(41a)と重複する直前の状態である。
【0073】
この図9(b)に示す状態からスクリューロータ(40)が回転すると、螺旋溝(41a)の前方に位置する周方向シール面(45a)の後縁(47a)が円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)を過ぎり、バイパス通路(33)の開口部(34)の一部分が螺旋溝(41a)と重複する。その結果、螺旋溝(41a)により形成された流体室(23a)がバイパス通路(33)と連通し、この流体室(23a)からバイパス通路(33)へ冷媒が流出し始める。そして、実バイパス面積は、後述する図9(d)に示す状態に至るまでの間に次第に拡大してゆく。
【0074】
図9(b)の状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図9(c)に示す状態となる。この図9(c)に示す状態は、螺旋溝(41a)によって形成される流体室(23a)が、この螺旋溝(41a)の始端へ進入してきたゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた時点の状態である。つまり、図9(c)の状態に至る直前までにおいて、螺旋溝(41a)によって形成される流体室(23a)は、螺旋溝(41a)の始端側において低圧空間(S1)と連通している。従って、図9(c)の状態に至る直前までにおいて、流体室(23a)内の冷媒圧力は、低圧空間(S1)内の冷媒圧力とほぼ同じ値に保たれる。また、図9(c)の状態に至った直後からは、流体室(23a)内の冷媒がバイパス通路(33)だけを通って低圧空間(S1)へ送り返される。
【0075】
図9(c)の状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図9(d)に示す状態となる。図11(A)にも拡大して図示するが、この図9(d)に示す状態は、螺旋溝(41a)の前方に位置する周方向シール面(45a)の後縁(47a)がスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)を過ぎる直前の状態である。図9(d)の状態からスクリューロータ(40)が回転すると、図9(e)に示す状態となる。図11(B)にも拡大して図示するが、この図9(e)に示す状態は、螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)の前縁(46b)が円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)と交差し始めた時点の状態である。図9(d)の状態から図9(e)に示す状態に至るまでの間は、バイパス通路(33)の開口部(34)の全体が螺旋溝(41a)と重複し続け、実バイパス面積がバイパス通路(33)の開口部(34)の面積Aと同じ値に保たれる。
【0076】
図9(e)の状態からスクリューロータ(40)が回転すると、実バイパス面積が次第に縮小してゆき、やがて図9(f)に示す状態となる。図12にも拡大して図示するが、この図9(f)に示す状態は、螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)の前縁(46b)がスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)を過ぎる直前の状態である。この図9(f)に示す状態において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その全体が周方向シール面(45b)と重複している。
【0077】
この図9(f)に示す状態となった時点では、螺旋溝(41a)によって形成される流体室(23a)がバイパス通路(33)から遮断され、この流体室(23a)が低圧空間(S1)から完全に遮断された閉空間となる。そして、図9(f)に示す状態からスクリューロータ(40)が回転すると、ゲート(51)が移動することによって流体室(23a)の容積が縮小し、流体室(23a)内の冷媒が圧縮される。
【0078】
上述した実バイパス面積の変化をグラフに示すと、図13に示すようになる。この図13に実線で示すように、本実施形態における実バイパス面積は、図9(b)に示す状態から次第に拡大してゆき、同図(d)に示す状態において最大値(即ち、バイパス通路(33)の開口部(34)の面積Aと同じ値)となる。その後、実バイパス面積は、同図(e)に示す状態になるまでの間に亘って最大に保たれ、同図(f)の状態に至るまでの間に次第に縮小してゆく。
【0079】
なお、図13には、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積の変化が破線で示されている。図9(a)に示すように、従来のバイパス通路の開口部(534)は、本実施形態のバイパス通路(33)の開口部(34)よりも早い時期に螺旋溝(41a)と重複し始める。このため、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積は、本実施形態の場合よりもスクリューロータ(40)の回転角度が小さい時期から拡大し始める。
【0080】
その後、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積は、スクリューロータ(40)の回転に伴って次第に拡大してゆくが、その拡大割合は本実施形態の場合よりも緩やかである。そして、スクリューロータ(40)が更に回転すると、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積は、やがて最大値に達してから次第に縮小し始め、図9(f)の状態に達した時点でゼロになる。
【0081】
また、図9(c)及び同図(d)から明らかなように、従来のバイパス通路の開口部(534)は、常にその一部分が螺旋溝(41a)から外れており、その全体が同時に螺旋溝(41a)と重複することはない。このため、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積は、その最大値が開口部(534)の面積Aよりも小さくなる。
【0082】
このように、本実施形態では、従来に比べて実バイパス面積の最大値が大きくなる。特に、本実施形態では、螺旋溝(41a)によって形成される流体室(23a)がゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた後の所定期間に亘って、実バイパス面積がバイパス通路(33)の開口部(34)の面積Aと同じ値に保持される。従って、本実施形態では、流体室(23a)がゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた後に冷媒がバイパス通路(33)の開口部(34)を通過する際の圧力損失が、可能な限り低く抑えられる。
【0083】
また、本実施形態では、バイパス通路(33)の開口部(34)が螺旋溝(41a)と重複している期間の終盤における実バイパス面積が、従来のバイパス通路の開口部(534)に関する実バイパス面積に比べて大きくなっている(図13を参照)。このため、冷媒がバイパス通路(33)の開口部(34)を通過する際の圧力損失が低く抑えられ、それに起因する流体室(23a)の内圧の上昇が低く抑えられる。
【0084】
−実施形態の効果−
本実施形態では、スライドバルブ(70)の先端面(P2)がスクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜しているため、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)も、スクリューロータ(40)に形成された螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜した形状となる。このため、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41)と重複する部分の面積(即ち、実バイパス面積)を拡大させることができ、流体室(23)内の冷媒がバイパス通路(33)へ流出する際の圧力損失を低減することができる。従って、本実施形態によれば、流体室(23)内の冷媒をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を削減することができ、円筒壁(30)の内周面(35)にバイパス通路(33)が開口している状態(即ち、スクリュー圧縮機(1)の運転容量が最大値未満に設定されている状態)におけるスクリュー圧縮機(1)の運転効率を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)に沿うように傾斜することによって、その全体が同時にスクリューロータ(40)の周方向シール面(45)と重複可能になっている。従って、本実施形態によれば、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)を、確実にスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の伸長方向に沿った形状にすることができ、その結果、実バイパス面積を充分に確保することができる。
【0086】
また、本実施形態では、円筒壁(30)の内周面(35)におけるバイパス通路(33)の開口部(34)の全体が、ゲート(51)によって低圧空間(S1)から仕切られた流体室(23)に対して一時的に開口する(図11を参照)。このため、流体室(23)内の冷媒がゲート(51)によってバイパス通路(33)へ押し出されてゆく期間中に実バイパス面積を最大にすることができ、流体室(23)内の流体をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を一層確実に削減することができる。
【0087】
上述したように、本実施形態では、流体室(23)内の冷媒がバイパス通路(33)へ流出する際の圧力損失を従来よりも低く抑えることができる。このため、本実施形態によれば、流体室(23)内の冷媒がバイパス通路(33)へ流出する際の圧力損失に起因する流体室(23)内の冷媒圧力の上昇を抑えることができ、過圧縮による損失を削減することができる。以下では、この点について、図14を参照しながら説明する。
【0088】
先ず、従来のスクリュー圧縮機における流体室(523)内の冷媒圧力の変化について説明する。図14に破線で示すように、従来のスクリュー圧縮機における流体室(523)内の冷媒圧力は、この流体室(523)がゲートによって閉じきられるまでは低圧空間内の冷媒圧力LPとほぼ同じ値に保たれる。一方、流体室(523)がゲートによって閉じきられた後は、流体室(523)がバイパス通路(533)に連通している状態においても、流体室(523)内の冷媒圧力は徐々に上昇してゆく。これは、流体室(523)内の冷媒がバイパス通路(533)へ流出する際に圧力損失が生じるため、流体室(523)内の冷媒圧力が低圧空間内の冷媒圧力LPより高くならないと、流体室(523)からバイパス通路(533)へ冷媒が流出してゆかないからである。その後、流体室(523)がバイパス通路(533)から遮断されて閉空間になると、流体室(523)内の冷媒圧力は、急速に上昇してゆき、一旦高圧空間の冷媒圧力HPよりも高い値になる。流体室(523)内の冷媒は、その後に高圧空間へ流出し始め、流体室(523)内の冷媒圧力が高圧空間の冷媒圧力HPに近付いてゆく。
【0089】
次に、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)における流体室(23)内の冷媒圧力の変化について説明する。図9(a)及び(b)に示すように、本実施形態の流体室(23)にバイパス通路(33)が連通し始める時期は、従来の流体室(523)にバイパス通路(533)が連通し始める時期よりも遅い。このため、本実施形態の流体室(23)内の冷媒圧力は、図14に実線で示すように、最初のうちは従来よりも高くなる。ところが、図13に示すように、本実施形態では、実バイパス面積が従来よりも急激に拡大する。このため、流体室(23)内の冷媒圧力は、従来よりも緩やかに上昇してゆき、流体室(23)がバイパス通路(33)から遮断された時点では、従来よりも低くなる。つまり、本実施形態では、流体室(23)が低圧空間(S1)から完全に遮断された時点における流体室(23)内の冷媒圧力が、従来に比べて低くなる。このため、本実施形態では、流体室(23)内の冷媒圧力の最高値が従来に比べて低くなる。
【0090】
このように、本実施形態によれば、流体室(23)内の冷媒が高圧空間(S2)へ吐出され始める直前における流体室(23)内の冷媒圧力を、従来に比べて低く抑えることができる。従って、本実施形態によれば、スクリューロータ(40)を回転させて流体室(23)内の冷媒を圧縮するのに必要な動力を削減することができ、いわゆる過圧縮損失を低減することができる。
【0091】
−実施形態の変形例1−
図15に示すように、本実施形態において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行な形状に形成されていてもよい。同図(B)に示すように、本変形例において、流体室(23a)がバイパス通路(33)から遮断された時点では、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)の全体が、流体室(23a)の後方に位置する周方向シール面(45b)の前縁(46b)と重なり合う。
【0092】
本変形例において、円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)は、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)に対応した形状となっている。つまり、本変形例では、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)だけでなく、円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)も、スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行な形状に形成される。
【0093】
図16に示すように、本変形例において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、流体室(23a)がバイパス通路(33)から遮断される直前まで流体室(23a)に露出し続ける。従って、本変形例によれば、流体室(23a)がバイパス通路(33)と連通している期間の終盤においても、バイパス通路(33)の開口部(34)のうち螺旋溝(41a)と重複する部分の面積(即ち、実バイパス面積)を可能な限り大きな値にすることができる。その結果、流体室(23a)内の冷媒がバイパス通路(33)へ流出する際の圧力損失を確実に低減することができ、流体室(23a)内の流体をバイパス通路(33)へ押し出すために必要な動力を確実に削減することができる。
【0094】
−実施形態の変形例2−
図17,図18に示すように、本実施形態において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)の形状は、その伸長方向とスクリューロータ(40)の周方向(即ち、スクリューロータ(40)の回転方向)のなす角度が図7に示す場合よりも若干小さくなる形状であってもよい。図17及び図18の何れに示すものにおいても、円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)は、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)と平行になっている。
【0095】
図17に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、同図(B)に示すように、螺旋溝(41a)がバイパス通路(33)から完全に遮断された時点において、その全体が螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)と重複する。この時点において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その一端が周方向シール面(45b)の前縁(46b)と重なり、その他端が周方向シール面(45b)の後縁(47b)と重なる。
【0096】
図18に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その伸長方向とスクリューロータ(40)の周方向のなす角度が、図17に示すものよりも更に小さくなっている。この図18に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、同図(B)に示すように、螺旋溝(41a)がバイパス通路(33)から完全に遮断された時点において、その一部分だけが螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)と重複する。
【0097】
−実施形態の変形例3−
図19,図20に示すように、本実施形態において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)の形状は、その伸長方向とスクリューロータ(40)の周方向(即ち、スクリューロータ(40)の回転方向)のなす角度が図7に示す場合よりも若干大きくなる形状であってもよい。図19及び図20の何れに示すものにおいても、円筒壁(30)のスクリュー側縁部(13)は、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)と平行になっている。
【0098】
図19に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、同図(B)に示すように、螺旋溝(41a)がバイパス通路(33)から完全に遮断された時点において、その全体が螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)と重複する。この時点において、スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その一端が周方向シール面(45b)の後縁(47b)と重なり、その他端が周方向シール面(45b)の前縁(46b)と重なる。
【0099】
図20に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その伸長方向とスクリューロータ(40)の周方向のなす角度が、図19に示すものよりも更に大きくなっている。この図20に示すスライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、同図(B)に示すように、螺旋溝(41a)がバイパス通路(33)から完全に遮断された時点において、その一部分だけが螺旋溝(41a)の後方に位置する周方向シール面(45b)と重複する。
【0100】
−実施形態の変形例4−
上記実施形態は、シングルスクリュー圧縮機に本発明を適用したものであるが、ツインスクリュー圧縮機(いわゆるリショルム圧縮機)に本発明を適用してもよい。
【0101】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
以上説明したように、本発明は、容量調節用のスライドバルブを備えるスクリュー圧縮機について有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 シングルスクリュー圧縮機(スクリュー圧縮機)
10 ケーシング
23 流体室
30 円筒壁(シリンダ部)
33 バイパス通路
34 開口部
35 内周面
40 スクリューロータ
41 螺旋溝
45 周方向シール面
46 前縁
50 ゲートロータ
51 ゲート
70 スライドバルブ
73 スクリュー側縁部
P2 先端面
S1 低圧空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体室(23)を形成する複数の螺旋溝(41)が形成されたスクリューロータ(40)と、
上記スクリューロータ(40)が挿入されるシリンダ部(30)を有するケーシング(10)と、
上記ケーシング(10)内に形成されて圧縮前の低圧流体が流入する低圧空間(S1)と、
上記シリンダ部(30)の内周面(35)に開口して上記流体室(23)を上記低圧空間(S1)に連通させるバイパス通路(33)と、
上記スクリューロータ(40)の軸方向へスライドすることによって上記シリンダ部(30)の内周面(35)における上記バイパス通路(33)の開口面積を変化させるスライドバルブ(70)とを備えるスクリュー圧縮機であって、
上記スライドバルブ(70)では、上記バイパス通路(33)に臨む先端面(P2)が上記螺旋溝(41)の伸長方向に沿うように傾斜している
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1において、
上記スクリューロータ(40)の外周面(49)のうち隣接する二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が、上記シリンダ部(30)の内周面(35)と摺接して隣接する二つの螺旋溝(41)の間をシールする周方向シール面(45)となり、
上記周方向シール面(45)の周縁のうち上記スクリューロータ(40)の回転方向の前方に位置する部分が、該周方向シール面(45)の前縁(46)となり、
上記スライドバルブ(70)の先端面(P2)の周縁部のうち上記スクリューロータ(40)に隣接する部分がスクリュー側縁部(73)となり、
上記スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)が、上記スクリューロータ(40)の周方向シール面(45)の前縁(46)と平行になっている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1において、
上記スクリューロータ(40)の外周面(49)のうち隣接する二つの螺旋溝(41)に挟まれた部分が、上記シリンダ部(30)の内周面(35)と摺接して隣接する二つの螺旋溝(41)の間をシールする周方向シール面(45)となり、
上記スライドバルブ(70)の先端面(P2)の周縁部のうち上記スクリューロータ(40)に隣接する部分がスクリュー側縁部(73)となっており、
上記スライドバルブ(70)のスクリュー側縁部(73)は、その全体が同時に上記周方向シール面(45)と重複可能な形状になっている
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1,2又は3において、
上記スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と噛み合わされる複数のゲート(51)が放射状に形成されたゲートロータ(50)を備える一方、
上記シリンダ部(30)の内周面(35)における上記バイパス通路(33)の開口部(34)の全体が、上記ゲート(51)によって上記低圧空間(S1)から仕切られた流体室(23)に対して、上記スクリューロータ(40)が所定の角度だけ回転する間に亘って開口する
ことを特徴とするスクリュー圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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