説明

スクリーンおよび画像表示システム

【課題】光散乱特性を制御することによって、優れた表示特性(特に、明るさおよび視野角)を発揮することのできるスクリーンおよび画像表示システムを提供すること。
【解決手段】スクリーン2は、高分子252中に液晶分子253を分散させるとともに液晶分子253および高分子252を相分離させて形成してなる高分子分散型液晶層25を有し、高分子分散型液晶層25に電界が作用しない電界非発生状態では透過状態となり、高分子分散型液晶層25に電界が作用する電界発生状態では散乱状態となる。また、高分子252のツイスト角が180°以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンおよび画像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像を表示するスクリーンとして、高分子中に液晶を分散させた高分子分散型液晶(PDLC)を用いたものが注目されている(例えば、特許文献1)。このような表示素子は、液晶と高分子との屈折率の差を利用しており、例えば、電界非印加状態では透過(透明)状態となり、電界印加により散乱状態となる。そして、散乱状態としたところに映像光を投射することでスクリーンに所望の画像が表示される。
しかしながら、特許文献1に記載のスクリーンでは、明るさや視野角特性に影響を与える光散乱特性を制御する方法が不明であり、例えば、液晶表示素子に表示される画像の明るさが低かったり、視野角が狭かったりするといった問題が発生する。このような問題が発生することにより、スクリーンの表示特性が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2004/21079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、光散乱特性を制御することによって、従来よりも優れた表示特性(特に、明るさおよび視野角)を発揮することのできるスクリーンおよび画像表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のスクリーンは、高分子中に液晶分子が分散している高分子分散型液晶層を有し、前記高分子分散型液晶層に電界が作用しない状態では透過状態となり、前記高分子分散型液晶層に電界が作用する状態では散乱状態となるスクリーンであって、
前記高分子のツイスト角が180°以上であることを特徴とする。
これにより、優れた表示特性を有するクリーンを提供することができる。
【0006】
本発明のスクリーンでは、前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が等方性を有することが好ましい。
これにより、明るく、全角度方向に均一な光散乱強度を有する光散乱特性を発揮することができる。そのため、明るさおよび視野角に優れたスクリーンとなる。
本発明のスクリーンでは、前記高分子のツイスト角は、180°×n(ただし、nは1以上の整数。)なる関係を満足することが好ましい。
これにより、明るく、全角度方向に均一な光散乱強度を有する光散乱特性を発揮することができる。そのため、明るさおよび視野角に優れたスクリーンとなる。
【0007】
本発明のスクリーンでは、前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が異方性を有し、前記スクリーンの横方向への光散乱強度が、縦方向への光散乱強度よりも大きいことが好ましい。
これにより、横方向に広い視野角を有するスクリーンとなる。このような構成は、大型のスクリーンに適している。
【0008】
本発明のスクリーンでは、前記ツイスト角は、180°×n+α(ただし、nは1以上の整数、αは、0°<α<180°を満足する。)なる関係を満足し、前記αに含まれる所定の角度方向が前記スクリーンの縦方向に一致することが好ましい。
これにより、横方向に広い視野角を有するスクリーンを簡単に構成することができる。
本発明のスクリーンでは、前記αの角度を二等分する線分が、前記スクリーンの縦方向に一致することが好ましい。
これにより、横方向の視野角がより広くなる。
【0009】
本発明のスクリーンでは、前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が異方性を有し、前記スクリーンの縦方向への光散乱強度が、横方向への光散乱強度よりも大きいことが好ましい。
これにより、縦方向に広い視野角を有するスクリーンとなる。このような構成は、小型(パーソナルユース)のスクリーンに適している。
【0010】
本発明のスクリーンでは、前記ツイスト角は、180°×n+α(ただし、nは1以上の整数、αは、0°<α<180°を満足する。)なる関係を満足し、前記αに含まれる所定の角度方向が前記スクリーンの横方向に一致することが好ましい。
これにより、縦方向に広い視野角を有するスクリーンを簡単に構成することができる。
本発明のスクリーンでは、前記αの角度を二等分する線分が、前記横方向に一致することが好ましい。
これにより、縦方向の視野角がより広くなる。
【0011】
本発明の画像表示システムは、本発明のスクリーンと、
前記スクリーンに画像を表示するプロジェクターと、
前記スクリーンおよび前記プロジェクターの駆動を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
これにより、優れた表示特性を有する画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるスクリーンの断面図である。
【図2】図1に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図である。
【図3】図1に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフである。
【図4】図1に示すスクリーンを適用した画像表示システムの構成図である。
【図5】図4に示すプロジェクターの光学系の構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるスクリーンの断面図である。
【図7】図6に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図である。
【図8】図6に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフである。
【図9】図6に示すスクリーンの縦および横方向と高分子の配向方向ならびに光散乱特性の関係を示す平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかるスクリーンの断面図である。
【図11】図10に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図である。
【図12】図10に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフである。
【図13】図10に示すスクリーンの縦および横方向と高分子の配向方向ならびに光散乱特性の関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のスクリーンおよび画像表示システムを図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるスクリーンの断面図、図2は、図1に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図、図3は、図1に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフ、図4は、図1に示すスクリーンを適用した画像表示システムの構成図、図5は、図4に示すプロジェクターの光学系の構成を示す平面図である。
【0014】
1.スクリーン
図1に示すように、スクリーン2は、一対の透明基板20、21と、一対の透明電極22、23と、一対の配向膜241、242と、一対の透明基板20、21の間に設けられた高分子分散型液晶層25と、一対の透明基板20、21の間を封止する図示しない封止部(シール材)とを有している。なお、前記封止部は、一対の透明基板20、21間に高分子分散型液晶層25を形成するための空隙(空間)を形成するスペーサーとしても機能する。
【0015】
透明基板20、21は、透明電極22、23および後述する配向膜241、242を支持する機能を有している。このような透明基板20、21の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、石英ガラス等のガラスやポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料等が挙げられる。この中でも特に、石英ガラス等のガラスで構成されたものであるのが好ましい。これにより、反り、撓み等の生じにくい、より安定性に優れたスクリーン2を得ることができる。
【0016】
一対の透明電極22、23のうちの透明電極22は、透明基板20の下面(透明基板21側の面)に形成されており、透明電極23は、透明基板21の上面(透明基板20側の面)に形成されている。透明電極22、23は、導電性を有しており、例えば、インジウムティンオキサイド(ITO)、インジウムオキサイド(IO)、酸化スズ(SnO)等で構成されている。
【0017】
一対の配向膜241、242のうちの配向膜241は、透明電極22の下面(透明基板21側の面)に形成されており、配向膜242は、透明電極23の上面(透明基板20側の面)に形成されている。配向膜241、242は、例えば、ポリイミド、ポリビニルアルコール等からなる膜にラビング処理等の配向処理を施したものである。
【0018】
高分子分散型液晶層25は、PDLC(高分子分散型液晶)251を含んでいる。このような高分子分散型液晶層25は、透過(透明)状態と散乱状態とを印加電界の強度により切替えることができる。PDLC251は、高分子252と液晶分子253とを含んでいる。例えば、液晶性モノマー等の高分子前駆体と液晶分子との混合物により形成することができる。PDLC251を形成するには、混合物を配向膜241、242により配向させた状態で、混合物に紫外線光等のエネルギーを照射して液晶性モノマーを重合させる。すると、液晶性モノマーは、配向を保持したまま重合し、配向規制力を有する高分子252になる。液晶分子253は、高分子252から相分離され、高分子252の配向規制力により配向する。
【0019】
高分子前駆体としては、液晶分子253に溶解し、その混合液が液晶性を有するものであればよく、例えば、高分子中にベンゼン骨格、好ましくはビフェニル骨格が導入されているものが挙げられる。また、ベンゼン骨格を有しなくても、液晶分子253とともに配向する高分子であれば同様に使用することができる。高分子252および高分子前駆体の具体例としては、例えば、ビフェニルメタノールもしくはナフトールのメタクリル酸エステルもしくはアクリル酸エステル、または、これらの化合物の誘導体がある。また、これらに、ビフェノールのメタクリル酸エステルもしくはアクリル酸エステル誘導体を混合して用いてもよい。また、その他の例として、α−メチルスチレン、エポキシ樹脂等を用いることもできる。
一方、液晶分子253としては、屈折率異方性および誘電異方性を有するものであればよく、例えばネマティック液晶を用いることができる。
【0020】
本実施形態のPDLC251は、いわゆる「リバース型」である。そのため、高分子分散型液晶層25は、一対の透明電極22、23間に電圧を印加していない電圧非印加状態(高分子分散型液晶層25に電界が作用していない電界非発生状態)において透過性を有する透過状態となり、一対の透明電極22、23間に電圧を印加している電圧印加状態((高分子分散型液晶層25に電界が作用している電界発生状態))において拡散性を有する散乱状態となる。
【0021】
具体的に説明すれば、電圧非印加状態においては、液晶分子253が高分子252と同一方向に配向しているため、液晶分子253と高分子252との間で屈折率が連続しており、PDLC251に入射した光はほとんど拡散されずに射出され、透過状態となる。反対に、電圧印加状態では、高分子252に方位角が変化しないのに対して、液晶分子253の方位角が電界に応じて変化し、これにより、高分子252と液晶分子253との間で屈折率が不連続に変化することにより入射した光が散乱されて射出され、光散乱状態となる。
【0022】
なお、前記「電界非発生状態」とは、高分子分散型液晶層25に電界が全く作用していない状態のみならず、一対の透明電極22、23間に、電界発生状態にて印加される電圧よりも弱い電圧が印加され、電界発生状態と比較して強度の小さい電界が発生している場合も含むものとする。
このような構成のスクリーン2によれば、スクリーン2を使用しない場合には、スクリーン2を透過状態とすることにより透明とすることができる。そのため、例えば、スクリーン2を生活空間にて使用する場合には、スクリーン2が与える圧迫感を低減することができる。このようなスクリーン2は、リバース型のPDLC251を有するため、スクリーン2に画像を表示している時間(散乱状態の時間)が、スクリーン2に画像を表示しない時間(透過状態の時間)よりも短い用途に用いるのが好ましい。これにより、スクリーン2の省電力駆動が可能となる。
以上、スクリーン2の基本的な構成について説明した。
【0023】
次いで、本発明の特徴でもある高分子分散型液晶層25中の高分子252のツイスト角について詳細に説明する。スクリーン2に形成された高分子分散型液晶層25においては、透明基板20側では配向膜241の配向方向Aに沿って高分子252および液晶分子253が配向しており、透明基板21側では配向膜242の配向方向Bに沿って高分子252および液晶分子253が配向している。スクリーン2では、配向膜241、242の配向方向が互いに異なっており、透明基板20側から透明基板21側へ、高分子252および液晶分子253の配向方向が時計回りに回転し、所定のツイスト角を有する捩じれ構造が形成されている。なお、配向方向の回転方向は、特に限定されず、反時計回りに回転していてもよい。
【0024】
本発明のスクリーンは、高分子分散型液晶層中の高分子のツイスト角θが180°以上であることを特徴としている。このような特徴を有することにより、後述するように、優れた表示特性を発揮することのできるスクリーンが得られる。
特に、本実施形態のスクリーン2では、高分子分散型液晶層25中の高分子252のツイスト角θが180°の整数倍(ただし、0倍を除く)に設定されている。言い換えれば、ツイスト角θは、180°×n(ただし、nは1以上の整数)なる式を満足するように設定されている。このようなツイスト角θとすることにより、明るく、全角度方向に均一な視野角を有するスクリーンを実現することができる。以下、この理由について詳細に説明する。
【0025】
高分子分散型液晶層25中の高分子252は、透明基板20側にて配向膜241の配向方向Aに沿って配向している。そのため、スクリーン2が散乱状態のとき、高分子252は、透明基板20側にてその配向軸(配向方向A)と同一方向の回折格子と同様の機能を発揮することとなり、スクリーン2の平面視にて、配向方向Aと直交する方向により強い散乱を示すこととなる。このような高分子251は、180°のツイスト角を有する捩じれ構造をなしているため、この捩じれに対応するように、透明基板21側に向けて強い散乱を示す方向も回転する。
【0026】
ここで、図2は、透明基板20側から見た高分子252の模式図であり、図3は、スクリーン2の光散乱特性(光散乱強度の角度分布)を示すグラフである。なお、図3のグラフに示す光散乱特性は、透明基板20の表面に対する法線方向から、透明基板20上に平行光線(可視光)を照射し、透明基板20の上方の法線上の位置にて散乱光を測定して得られたデータである。グラフの外側に記載されている0、90、180、270は入射光の方位角φを示したものであり、この方位角と光散乱特性との関係は、そのままスクリーン2の視野角特性を示すものとなる。
【0027】
図2に示すように、高分子252のツイスト角が180°であると、高分子252の捩じれ中心Oから全角度方向に高分子252の配向軸が均一に存在することとなる。そのため、図3に示すように、捩じれ中心Oから全角度方向に均一な強い散乱強度を示すことができる。言い換えれば、全角度方向に対して視野角依存のない強い配光分布を示すことができ、明るく、全角度方向に広い視野角を有するスクリーン2となる。このように、スクリーン2の光散乱特性を制御することによって、優れた表示特性を発揮することができる。
【0028】
なお、高分子252のツイスト角θとしては、前述したように180°×nなる関係を満足していればよく、180°以外にも、360°、540°、720°、900°等であってもよい。しかしながら、ツイスト角θが大きくなるに連れて、配向規制力が強まるなどの理由から、散乱状態とするために透明電極22、23間に印加する電圧の大きさが大きくなる。すなわち、ツイスト角θが大きくなるに連れて消費電力が大きくなる。そのため、省電力駆動の観点から、ツイスト角θとしては、180°または360°であるのが好ましく、180°であるのがより好ましい。
【0029】
2.画像表示システム
次に、スクリーン2を適用した画像表示システム100について説明する。
図4に示すように、画像表示システム100は、スクリーン2と、スクリーン2に画像を表示するプロジェクター300と、スクリーン2およびプロジェクター300の駆動を制御する制御部400とを有している。このような画像表示システム100では、スクリーン2の観察者と反対側からスクリーン2の背面(観察者と反対側の面)へ画像を投射する。なお、スクリーン2の観察者の側からスクリーン2の表面(観察者側の面)へ画像を投射してもよい。
【0030】
プロジェクター300としては、スクリーン2に画像を表示することができれば、特に限定されないが、空間光変調装置に形成した像をスクリーン2に拡大投射する照明投射型のプロジェクターや、スクリーン2に光を走査して画像を形成する走査型のプロジェクターであってもよい。以下に、プロジェクター300の一例を示す。
図5は、プロジェクター300の光学系の構成を示す平面図である。図5に示すように、プロジェクター300は、照明光学系310と、色分離光学系320と、平行化レンズ330R、330G、330Bと、空間光変調装置340R、340G、340Bと、光合成部であるクロスダイクロイックプリズム350とを備えている。
【0031】
照明光学系310は、光源311と、リフレクタ312と、第1のレンズアレイ313と、第2のレンズアレイ314と、偏光変換素子315と、重畳レンズ316とを有している。
光源311は、超高圧水銀ランプであり、リフレクタ312は、放物面鏡を有して構成されている。光源311から射出された放射状の光束は、リフレクタ312で反射されて略平行光束となり、第1のレンズアレイ313へと射出される。なお、光源311としては、超高圧水銀ランプに限らず、例えばメタルハライドランプ等を採用してもよい。また、リフレクタ312としては、放物面鏡に限らず、楕円面鏡からなるリフレクタの射出面に平行化凹レンズを配置した構成を採用してもよい。
【0032】
第1のレンズアレイ313および第2のレンズアレイ314は、小レンズをマトリクス状に配列して形成されている。光源311から射出された光束は、第1のレンズアレイ313によって複数の微小な部分光束に分割され、各部分光束は、第2のレンズアレイ314および重畳レンズ316によって照明対象である3つの空間光変調装置340R、340G、340Bの表面で重畳される。
【0033】
偏光変換素子315は、ランダム偏光の光束を一方向に振動する直線偏光(S偏光若しくはP偏光)に揃える機能を有しており、本実施形態では、色分離光学系320での光束の損失が少ないS偏光に揃えている。
色分離光学系320は、照明光学系310から射出された光束(S偏光)を、赤色(R)光、緑色(G)光、青色(B)光の3色の色光に分離する機能を有しており、B光反射ダイクロイックミラー321、RG光反射ダイクロイックミラー322、G光反射ダイクロイックミラー323、および反射ミラー324、325を備えている。
【0034】
照明光学系310から射出された光束のうち、B光の成分は、B光反射ダイクロイックミラー321によって反射され、さらに反射ミラー324、361によって反射されて平行化レンズ330Bに至る。一方、照明光学系310から射出された光束のうち、G光、R光の成分は、RG光反射ダイクロイックミラー322によって反射され、さらに反射ミラー325によって反射されてG光反射ダイクロイックミラー323に至る。その中のG光の成分は、G光反射ダイクロイックミラー323および反射ミラー362に反射されて平行化レンズ330Gに至り、R光の成分は、G光反射ダイクロイックミラー323を透過して、反射ミラー363に反射されて平行化レンズ330Rに至る。
【0035】
平行化レンズ330R、330G、330Bは、照明光学系310からの複数の部分光束を、空間光変調装置340R、340G、340Bをそれぞれ照明するように各部分光束が、それぞれ略平行な光束となるように設定されている。
平行化レンズ330Rを透過したR光は、空間光変調装置340Rに至り、平行化レンズ330Gを透過したG光は、空間光変調装置340Gに至り、平行化レンズ330Bを透過したB光は、空間光変調装置340Bに至る。
【0036】
空間光変調装置340Rは、R光を画像信号に応じて変調する空間光変調装置であって、透過型液晶表示装置である。空間光変調装置340Rに設けられた図示しない液晶パネルは、2つの透明基板の間に、光を画像信号に応じて変調するための液晶層を封入している。空間光変調装置340Rで変調されたR光は、色合成光学系であるクロスダイクロイックプリズム350へ入射する。なお、空間光変調装置340G、340Bの構成および機能は、空間光変調装置340Rと同様である。
【0037】
クロスダイクロイックプリズム350は、三角柱状の4つのプリズムを貼り合わせることにより、略正方形断面の角柱状に形成されたものであり、X字状の貼り合わせ面に沿って誘電体多層膜351、352が設けられている。誘電体多層膜351は、G光を透過してR光を反射し、誘電体多層膜352は、G光を透過してB光を反射する。そして、クロスダイクロイックプリズム350は、空間光変調装置340R、340G、340Bから出射された各色光の変調光をそれぞれ入射面350R、350G、350Bから入射して合成し、カラー画像を表す画像光を形成し、投写光学部360に射出する。
これにより、プロジェクター300から、直線偏光である映像光Lが出射される。
【0038】
図4に示すように、制御部400は、プロジェクター300へ画像信号を出力する画像信号出力部410と、スクリーン2の駆動(ON/OFF)を制御するスクリーン制御部420とを有している。信号出力部410からの画像信号を受けたプロジェクター300は、その画像信号に基づく映像光Lを出射する。
このような制御部400は、画像信号出力部410からプロジェクター300へ画像信号を出力するのに対応させて、スクリーン制御部420によってスクリーン2の駆動を制御するように構成されている。具体的には、制御部400は、画像信号出力部410から画像信号を出力していない状態では、スクリーン制御部420によってスクリーン2を透過(透明)状態とする。反対に、制御部400は、画像信号出力部410から画像信号を出力している状態では、スクリーン制御部420によってスクリーン2を散乱状態とする。
【0039】
このような制御によれば、プロジェクター300から映像光Lが出射されていないとき、すなわちスクリーン2に表示する画像が存在しないときには、スクリーン2を透過状態とすることができる。また、プロジェクター300から映像光Lが出射されているときは、スクリーン2を散乱状態とすることができ、スクリーン2に画像光Lに対応する画像を表示することができる。すなわち、簡単な制御によって、スクリーン2に画像が表示されているとき以外は、スクリーン2を透明とすることができ、省電力化を図ることができるとともに、生活空間へ与える圧迫感を低減することができる。
【0040】
<第2実施形態>
次に、本発明のスクリーンの第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態にかかるスクリーンの断面図、図7は、図6に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図、図8は、図6に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフ、図9は、図6に示すスクリーンの縦および横方向と高分子の配向方向ならびに光散乱特性の関係を示す平面図である。
【0041】
以下、第2実施形態のスクリーンについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第2実施形態にかかるスクリーンは、高分子のツイスト角が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0042】
本実施形態のスクリーン2が有する高分子分散型液晶層は、その平面視にて光散乱強度の異方性を有し(光散乱強度の角度分布が異方性を有し)、スクリーン2の横方向への光散乱強度が縦方向への光散乱強度よりも大きい。これにより、スクリーン2の横方向の明るさおよび視野角を高く(大きく)することができ、スクリーン2の横方向の広い範囲から、スクリーン2上に表示された明るい画像を観察することができるようになる。そのため、本実施形態のスクリーン2は、例えば、街角、店舗等に設置された大型スクリーンのように、異なる位置にいる大勢の人間に同時に画像を観察させるためのスクリーンとして好適に用いることができる。以下、本実施形態のスクリーン2について詳細に説明する。
【0043】
本実施形態のスクリーン2では、透明基板20側から透明基板21側へ、高分子252および液晶分子253の配向方向が時計回りに回転している。なお、配向方向の回転方向は、特に限定されず、反時計回りに回転していてもよい。
また、高分子252のツイスト角θは、180°以上であり、かつ、180°×n(ただし、nは1以上の整数)以外の角度である。すなわち、高分子252のツイスト角θは、180°×n+α°(ただし、0°<α°<180°を満足する。)なる関係を満足している。このようなツイスト角θとしては、例えば、270°、450°、630°等が挙げられるが、省電力駆動の観点からツイスト角θは、小さい方が好ましく、具体的には、180°<θ≦270°なる範囲を満足していることが好ましい。
【0044】
図6に示すように、本実施形態のスクリーン2では、高分子252のツイスト角θは、270°に設定されている。これにより、前述した実施形態1と同様に、全角度方向に強い散乱強度を示すことができる。さらに、次のような効果を発揮することができる。
図7に示すように、スクリーン2の平面視にて、方位角が0°以上90°以下および180°以上270°以下の第1領域S1では、複数の高分子252が配向方向(配向軸)を同じにして厚さ方向に重なり合っている。これに対して、方位角が90°超180°未満および270°超360°未満の第2領域S2では、高分子252が重なり合っていない。このような状態では、第1領域S1が第2領域S2よりも多く光を散乱するため、第1領域S1に直交する方向への光散乱強度が第2領域S2に直交する方向への光散乱強度よりも大きくなる。したがって、本実施形態のスクリーン2は、図8に示すように、異方性を有する光散乱強度を有する。
【0045】
そのため、スクリーン2の横方向の明るさおよび視野角を高くするためには、図9に示すように、スクリーン2の縦方向に沿って、光散乱強度の強い領域である第1領域S1が並ぶように、配向膜241、242の配向方向A、Bを規定すればよい。すなわち、前記α°に含まれる所定の角度方向、より具体的には各第1領域S1の一端同士である方位角0°、180°を結ぶ線分L1、各第1領域S1の他端同士である方位角90°、270°を結ぶ線分L2、または、線分L1、L2の間にある多数の線分L3のいずれかが、スクリーン2の縦方向に沿うように、配向膜241、242の配向方向A、Bを規定すればよい。これにより、横方向への光散乱強度が縦方向への光散乱強度よりも大きく、横方向の明るさおよび視野角が高いスクリーン2が得られる。
より好ましい配置としては、各第1領域S1に含まれる方位角の中央値(中間値)である45°、135°を結んだ線分(角度α°を二等分する線分)L3が、スクリーン2の縦方向に沿う配置が挙げられる。これにより、スクリーン2の横方向の明るさおよび視野角をより高くすることができる。
【0046】
<第3実施形態>
次に、本発明のスクリーンの第3実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態にかかるスクリーンの断面図、図11は、図10に示すスクリーンが有する高分子の捩じれ構造を示す平面図、図12は、図10に示すスクリーンの光散乱特性を示すグラフ、図13は、図10に示すスクリーンの縦および横方向と高分子の配向方向ならびに光散乱特性の関係を示す平面図である。
【0047】
以下、第3実施形態のスクリーンについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第3実施形態にかかるスクリーンは、配向膜の配向方向が異なる以外は、前述した第2実施形態と同様である。なお、前述した第2実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0048】
本実施形態のスクリーン2が有する高分子分散型液晶層は、その平面視にて光散乱強度の異方性を有し(光散乱強度の角度分布が異方性を有し)、スクリーン2の縦方向への光散乱強度が横方向への光散乱強度よりも大きい。これにより、スクリーン2の縦方向の明るさおよび視野角を高く(大きく)することができ、スクリーン2の縦方向の広い範囲から、スクリーン2上に表示された明るい画像を観察することができるようになる。そのため、本実施形態のスクリーン2は、例えば、フォトフレームやパソコン用モニタ等、比較的小型で一個人が視認するようなパーソナルユースのスクリーンとして好適に用いることができる。このようなパーソナルユースのスクリーン2では、通常、1人の観察者が正面からスクリーン2に表示された画像を観察するため、横方向の視野角は重要でない。一方、観察者の伸長や体位(座っているのか立っているの)などによって、スクリーン2と観察者の顔(目)の位置とが縦方向にずれるため、縦方向の視野角が広いことが重要となる。以下、本実施形態のスクリーン2について詳細に説明する。
【0049】
本実施形態のスクリーン2では、透明基板20側から透明基板21側へ、高分子252および液晶分子253の配向方向が時計回りに回転している。なお、配向方向の回転方向は、特に限定されず、反時計回りに回転していてもよい。
また、高分子252のツイスト角θは、180°以上であり、かつ、180°×n(ただし、nは1以上の整数)以外の角度である。すなわち、高分子252のツイスト角θは、180°×n+α°(ただし、0°<α°<180°を満足する。)なる関係を満足している。このようなツイスト角θとしては、例えば、270°、450°、630°等が挙げられるが、省電力駆動の観点からツイスト角θは、小さい方が好ましく、具体的には、180°<θ≦270°なる範囲を満足していることが好ましい。
【0050】
図10に示すように、本実施形態のスクリーン2では、高分子252のツイスト角θは、270°に設定されている。これにより、前述した実施形態1と同様に、全角度方向に強い散乱強度を示すことができる。さらに、次のような効果を発揮することができる。
図11に示すように、スクリーン2の平面視にて、方位角が0°以上90°以下および180°以上270°以下の第1領域S1では、複数の高分子252が配向方向(配向軸)を同じにして厚さ方向に重なり合っている。これに対して、方位角が90°超180°未満および270°超360°未満の第2領域S2では、高分子252が重なり合っていない。このような状態では、第1領域S1が第2領域S2よりも多く光を散乱するため、第1領域S1に直交する方向への光散乱強度が第2領域S2に直交する方向への光散乱強度よりも大きくなる。したがって、本実施形態のスクリーン2は、図12に示すように、異方性を有する光散乱強度を有する。
【0051】
そのため、スクリーン2の縦方向の明るさおよび視野角を高くするためには、図13に示すように、スクリーン2の横方向に沿って、光散乱強度の強い領域である第1領域S1が並ぶように、配向膜241、242の配向方向A、Bを規定すればよい。すなわち、前記α°に含まれる所定の角度方向、より具体的には各第1領域S1の一端同士である方位角0°、180°を結ぶ線分L1、各第1領域S1の他端同士である方位角90°、270°を結ぶ線分L2、または、線分L1、L2の間にある多数の線分L3のいずれかが、スクリーン2の横方向に沿うように、配向膜241、242の配向方向A、Bを規定すればよい。これにより、縦方向への光散乱強度が横方向への光散乱強度よりも大きく、縦方向の明るさおよび視野角が高いスクリーン2が得られる。
【0052】
より好ましい配置としては、各第1領域S1に含まれる方位角の中央値(中間値)である45°、135°を結んだ線分(角度α°を二等分する線分)L3が、スクリーン2の横方向に沿う配置が挙げられる。これにより、スクリーン2の縦方向の明るさおよび視野角をより高くすることができる。
以上、本発明のスクリーンおよび画像表示システムについて、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100……画像表示システム 2……スクリーン 20…透明基板 21…透明基板 22…透明電極 23…透明電極 241、242…配向膜 25…高分子分散型液晶層 251……PDLC 252……高分子 253……液晶分子 300……プロジェクター 310……照明光学系 311……光源 312……リフレクタ 313……レンズアレイ 314……レンズアレイ 315……偏光変換素子 316……重畳レンズ 320……色分離光学系 321……B光反射ダイクロイックミラー 322……RG光反射ダイクロイックミラー 323……G光反射ダイクロイックミラー 324……反射ミラー 325……反射ミラー 330B……平行化レンズ 330G……平行化レンズ 330R……平行化レンズ 340B……空間光変調装置 340G……空間光変調装置 340R……空間光変調装置 350……クロスダイクロイックプリズム 350B……入射面 350G……入射面 350R……入射面 351……誘電体多層膜 352……誘電体多層膜 360……投写光学部 362……反射ミラー 363……反射ミラー 400……制御部 410……画像信号出力部 420……スクリーン制御部 S1……第1領域 S2……第2領域 L1、L2、L3……線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子中に液晶分子が分散している高分子分散型液晶層を有し、前記高分子分散型液晶層に電界が作用しない状態では透過状態となり、前記高分子分散型液晶層に電界が作用する状態では散乱状態となるスクリーンであって、
前記高分子のツイスト角が180°以上であることを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が等方性を有する請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記高分子のツイスト角は、180°×n(ただし、nは1以上の整数。)なる関係を満足する請求項2に記載のスクリーン。
【請求項4】
前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が異方性を有し、前記スクリーンの横方向への光散乱強度が、縦方向への光散乱強度よりも大きい請求項1に記載のスクリーン。
【請求項5】
前記ツイスト角は、180°×n+α(ただし、nは1以上の整数、αは、0°<α<180°を満足する。)なる関係を満足し、前記αに含まれる所定の角度方向が前記スクリーンの縦方向に一致する請求項4に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記αの角度を二等分する線分が、前記スクリーンの縦方向に一致する請求項4に記載のスクリーン。
【請求項7】
前記高分子分散型液晶層は、前記散乱状態における光散乱強度の角度分布が異方性を有し、前記スクリーンの縦方向への光散乱強度が、横方向への光散乱強度よりも大きい請求項1に記載のスクリーン。
【請求項8】
前記ツイスト角は、180°×n+α(ただし、nは1以上の整数、αは、0°<α<180°を満足する。)なる関係を満足し、前記αに含まれる所定の角度方向が前記スクリーンの横方向に一致する請求項7に記載のスクリーン。
【請求項9】
前記αの角度を二等分する線分が、前記横方向に一致する請求項4に記載のスクリーン。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載のスクリーンと、
前記スクリーンに画像を表示するプロジェクターと、
前記スクリーンおよび前記プロジェクターの駆動を制御する制御部と、を有することを特徴とする画像表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−83760(P2013−83760A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222914(P2011−222914)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】