説明

スクリーン循環式除塵機

【課題】水流の屈曲による損失を小さくし、上流部等への背水の影響を少なくするようにしたスクリーン循環式除塵機を提供すること。
【解決手段】無端状スクリーン1を構成するスクリーンプレート3を、その流入側が水路Sの上流側に傾斜するよう斜めに配列するとともに、スクリーン1の下流側で水流を遮る背面板5を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理及び河川排水処理において使用されるスクリーン循環式除塵機に関し、特に、水流の屈曲による損失を小さくし、上流部等への背水の影響を少なくするようにしたスクリーン循環式除塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン循環式除塵機は、例えば、図3に示すように、無端状スクリーン1を水路Sと平行に、かつスクリーン1の下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーン1を回転駆動し、水上にてスクリーン1の外側から加圧水を噴霧することにより、捕捉した夾雑物をスクリーン1から脱荷し、シュート4に回収するようにしている。
【0003】
ところで、スクリーン循環式除塵機は、水路と平行にスクリーンを設置することから、スクリーン長さが水路幅に制限されないという利点がある。
また、このスクリーン循環式除塵機は、水の通水面が左右及び下面の3面で確保できることから、ろ過水量が大きいという利点もある。
【0004】
しかしながら、このスクリーン循環式除塵機は、水路の水流と直角になるようにスクリーンが設置されるため、一般的なバースクリーン式のスクリーンと比較し、同じ通水面積で考えた場合、その損失水頭は大きくなるといえる。
【0005】
スクリーン循環式除塵機の損失水頭は、入口部の断面急縮による損失、スクリーン面通過時の屈曲と通過による損失、及び出口部の断面急拡による損失の3つに大きく分けられる。
この中で、スクリーン通過時の屈曲による損失は、図4に示すように、スクリーン1の上流側と下流側とで水の流れが2度に亘って約90度変化するため、その損失は大きいものとなる。
【0006】
このように、スクリーン循環式除塵機は、損失水頭が大きくなることが一般的であることから、その設置に際しては、上流部等への背水の影響を検討する必要があり、場合によってはその設置が不可能となることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来のスクリーン循環式除塵機が有する問題点に鑑み、水流の屈曲による損失を小さくし、上流部等への背水の影響を少なくするようにしたスクリーン循環式除塵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のスクリーン循環式除塵機は、無端状スクリーンを水路と略平行に、かつスクリーンの下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーンを回転駆動し、スクリーンにて捕捉した夾雑物を除去するようにしたスクリーン循環式除塵機において、スクリーンを構成するスクリーンプレートを、その流入側が水路の上流側に傾斜するよう斜めに配列したことを特徴とする。
【0009】
この場合において、スクリーンの下流側で水流を遮る背面板を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスクリーン循環式除塵機によれば、無端状スクリーンを水路と略平行に、かつスクリーンの下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーンを回転駆動し、スクリーンにて捕捉した夾雑物を除去するようにしたスクリーン循環式除塵機において、スクリーンを構成するスクリーンプレートを、その流入側が水路の上流側に傾斜するよう斜めに配列することから、スクリーンプレートの向きを水流の方向に近づけて、水流の屈曲による損失水頭を小さくすることができ、これにより、上流部等への背水の影響が問題であった箇所へもスクリーン循環式除塵機を設置することができる。
【0011】
この場合、スクリーンの下流側で水流を遮る背面板を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成することにより、水流を左右斜め方向に振り分けて、スクリーンプレートと略平行となし、水流の屈曲による損失水頭を設備全体でさらに小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のスクリーン循環式除塵機の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図3に、本発明のスクリーン循環式除塵機の一実施例を示す。
このスクリーン循環式除塵機は、無端状スクリーン1を水路Sと平行に、かつスクリーン1の下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーン1を回転駆動し、水上にてスクリーン1の外側からノズル2で加圧水を噴霧することにより、捕捉した夾雑物をスクリーン1から脱荷し、シュート4に回収するようにしている。
そして、このスクリーン循環式除塵機は、無端状スクリーン1を構成するスクリーンプレート3を、その流入側が水路Sの上流側に傾斜するよう斜めに配列するとともに、スクリーン1の下流側で水流を遮る背面板5を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成している。
【0014】
スクリーン1は、例えば、図2〜図3に示すように、多数のスクリーンプレート3を櫛歯状に並設することによりスクリーンパネル6を形成し、このスクリーンパネル6をリンクすることにより無端状のスクリーン1を形成している。
スクリーン1を構成する各スクリーンプレート3は、その流入側が水路S内で上流側に傾斜するように、本実施例では、水路Sの方向に対して約45度の角度をもってスクリーンパネル6に斜めに配列されている。
なお、スクリーン1は、スプロケット71によりレール72に沿って駆動するコンベアチェーン7によって循環させている。また、スクリーンプレート3の内側に突設した爪により大きめの夾雑物も上まで掻き揚げることが可能である。
【0015】
また、スクリーンプレート3は、図2に示すように、その両端部が、互いに対向して配設されたプレート支持枠61の間に掛け渡すようにして、斜めに形成したスリット62に挿入掛止されている。
これにより、複数枚のスクリーンプレート3は所定の目幅間隔wに保持されるとともに、所定の角度で傾斜するよう配列した状態でプレート支持枠61により一体化される。
また、プレート支持枠61は、スクリーンプレート3をスリット62に挿入した状態で外枠63に挿入され、さらに、この外枠63をサイド枠64で連結することにより、スクリーンパネル6として組み立てられている。
なお、スクリーンプレート3の組立は、図2に示した組立方法のほか、溶接による方法、ボルト締結による方法等を採用することもできる。
【0016】
一方、スクリーン循環式除塵機は、水路Sを整流板8で区画することにより、水路Sの水をスクリーン1の内部に導入するとともに、スクリーン1の奥に、水流を遮る背面板5を配設することにより、導入した水がスクリーン1を通過するようにしている。
本実施例では、この背面板5を、水路S内で幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成している。
この場合、背面板5の高さ方向を含めた略中心を、上流側に突出する山形に形成することもでき、これにより、水流を左右斜め方向と下斜め方向とに振り分けて、左右及び下部のスクリーンプレート3と略平行にすることができる。
【0017】
従来は、図4に示すように、スクリーン1の上流側と下流側とで水の流れが2度に亘って約90度変化していたが、本実施例では、スクリーンプレート3を斜めに傾斜させるとともに、背面板5を山形に形成したことにより、図1に示すように、この流れの角度変化をそれぞれ半分程度に緩和し、損失係数を従来の約1.4から約0.2まで軽減することができた。
【0018】
かくして、本実施例のスクリーン循環式除塵機は、無端状スクリーン1を水路Sと略平行に、かつスクリーン1の下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーン1を回転駆動し、スクリーン1にて捕捉した夾雑物を除去するようにしたスクリーン循環式除塵機において、スクリーン1を構成するスクリーンプレート3を、その流入側が水路Sの上流側に傾斜するよう斜めに配列することから、スクリーンプレート3の向きを水流の方向に近づけて、水流の屈曲による損失水頭を小さくすることができ、これにより、上流部等への背水の影響が問題であった箇所へもスクリーン循環式除塵機を設置することができる。
【0019】
また、スクリーン1の下流側で水流を遮る背面板5を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成することにより、水流を左右斜め方向に振り分けて、スクリーンプレート3と略平行となし、水流の屈曲による損失水頭を設備全体でさらに小さくすることができる。
【0020】
以上、本発明のスクリーン循環式除塵機について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、実施例に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のスクリーン循環式除塵機は、水流の屈曲による損失を小さくし、上流部等への背水の影響を少なくするという特性を有していることから、例えば、下水処理・浄水処理の除塵設備や河川用の除塵設備をはじめとして、一般産業・食品関連の除塵設備の用途にも好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のスクリーン循環式除塵機の一実施例を示す断面平面図である。
【図2】同スクリーン循環式除塵機のスクリーンパネルを示す分解斜視図である。
【図3】スクリーン循環式除塵機の全体図である。
【図4】従来のスクリーン循環式除塵機を示す断面平面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 無端状スクリーン
2 ノズル
3 スクリーンプレート
4 シュート
5 背面板
6 スクリーンパネル
61 プレート支持枠
62 スリット
63 外枠
64 サイド枠
7 コンベアチェーン
71 スプロケット
72 レール
8 整流板
S 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状スクリーンを水路と略平行に、かつスクリーンの下部が水路水面下に没するように張架配設するとともに、この無端状スクリーンを回転駆動し、スクリーンにて捕捉した夾雑物を除去するようにしたスクリーン循環式除塵機において、スクリーンを構成するスクリーンプレートを、その流入側が水路の上流側に傾斜するよう斜めに配列したことを特徴とするスクリーン循環式除塵機。
【請求項2】
スクリーンの下流側で水流を遮る背面板を、幅方向略中央部が上流側に突出する山形に形成したことを特徴とする請求項1記載のスクリーン循環式除塵機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−106445(P2008−106445A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−287571(P2006−287571)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)