説明

スケール除去用洗浄シート及びスケール除去方法

【課題】 ガラス面等の被洗浄面に付着したカルシウム等からなるスケールを効率的に、かつ確実に除去するためのスケール除去用洗浄シート及びスケール除去方法を提供する。
【解決手段】 界面活性剤及び酸成分を含む洗浄液と、前記洗浄液を含浸させたシートとから構成したものからスケール除去用洗浄シートを構成し、この洗浄シートをスケールが付着した被洗浄面に所定時間貼り付けるようにした。洗浄シートに含浸した洗浄液中の酸成分とスケールとが接触することで酸とスケールの間で化学反応が生じ、被洗浄面に付着したスケールを柔らかくでき、被洗浄面に付着したスケールの除去が容易に行える。また、洗浄シートを貼り付けることのみでスケールを軟らかくできるので、被洗浄面の傷つきやスケール除去時の手間などをなくすことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス面等の被洗浄面に付着したカルシウム等の硬度成分を洗浄するためのスケール除去用洗浄シート及びスケール除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、日常生活において利用されている水道水や井戸水などには、カルシウムやマグネシウムなどの硬度成分が含まれている。そのような水がガラスや鏡等の被洗浄面に付着すると、時間の経過と共に水分だけが蒸発し、硬度成分が結晶化して、スケールとして残存する。スケールは、ガラス面等に付着すると水を染み込ませた布等で拭き取るだけでは除去することができず、ペースト状の研磨剤を塗布したウエス等でスケールが付着した面を研磨することによって除去したり、樹脂に砥粒を固定したたわし又はパットやサンドペーパーなどでスケールが付着したガラス面等をこすることによって除去しなければならなかった。
【0003】
そのため、スケールを効率よく除去することに関しては従来から種々検討されている。例えば、特許文献1には、スケールの除去やバリ取りを容易に行うことを目的として、特定の配合比を有する研磨性材料、繊維成分および結合剤からなる研磨剤が記載されている。また、特許文献2には、スポンジ、布、不織布等を基材として用い、バインダー樹脂によってこれらに砥粒を固定した研磨たわしが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−246638号公報
【特許文献2】特開2003−145435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、研磨剤を塗布したウエス等で研磨する場合には、手や研磨用の装置でスケールが付着した面をこすることが必要になるため、非常に手間や時間がかかるという問題があった。また、不適切な研磨剤を用いた場合には被洗浄面を傷つけやすく、また砥粒にダイヤモンドの粒子を使用している場合には高価であるという問題もあった。
【0006】
また、研磨たわしやサンドペーパーは、安価で入手しやすいものの、目の粗さによって複数種類のものが存在するため、利用者が通常の研磨に用いるものよりも目の粗いもので誤ってこすってしまった場合には、被洗浄面を傷つけてしまう恐れがあるという問題もあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、スケールを確実に除去でき、研磨する際の手間を軽減するとともに、スケールの付着したガラス等の表面が傷つくのを防ぐことが可能な洗浄シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
(1)酸成分を含む洗浄液と、前記洗浄液を含浸させたシートとからなることを特徴とするスケール除去用洗浄シート、
(2)酸成分が、有機酸及び/又は無機酸である上記(1)のスケール除去用洗浄シート、
(3)酸成分が、洗浄液中に1〜60重量%含有する上記(1)又は(2)のスケール除去用洗浄シート、
(4)界面活性剤が、洗浄液中に含有する上記(1)〜(3)のいずれか1つのスケール除去用洗浄シート、
(5)シートには、1cmあたり0.164〜0.657gの洗浄液を含有する上記(1)〜(4)のいずれか1つのスケール除去用洗浄シート、
(6)上記(1)〜(5)のいずれか1つのスケール除去用洗浄シートを、スケールの付着した被洗浄面に貼り付け、貼り付けた状態で所定時間放置し、次いで、前記スケール除去用洗浄シートを取り除くことを特徴とするスケール除去方法、
(7)スケール除去用洗浄シートを被洗浄面に貼り付けた後、フィルム状の部材で前記スケール除去用洗浄シートを覆う上記(6)のスケール除去方法、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の洗浄シートによれば、スケール除去用洗浄シートに含浸させた洗浄液に酸成分が含まれているため、酸成分とスケールとを接触させることにより、酸とスケールとの間で化学反応を生じさせて被洗浄面に付着したスケールを軟らかくすることができ、被洗浄面に付着したスケールを簡単に除去することが可能になる。
【0010】
また、本発明の洗浄方法によれば、スケール除去用洗浄シートをスケールの付着した被洗浄面上に貼り付けることのみによって被洗浄面に付着したスケールを軟らかくすることができ、スケールを除去する際の手間をかからなくすることが可能になり、また被洗浄面を傷つけることなく、スケールを確実かつ簡単に除去することが可能になる。
【0011】
また、本発明の洗浄方法において、スケール除去用洗浄シートを被洗浄面に貼り付けた後にフィルム状の部材でスケール除去用洗浄シートを覆うことにより、スケール除去用洗浄シートから水分が蒸発することを防止することができる。したがって、被洗浄面に貼り付けたスケール除去用洗浄シートが時間の経過に伴って乾燥し、被洗浄面から剥がれ落ちることの防止が可能になり、長時間に渡ってスケールを洗浄する効果を持続することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のスケール除去用洗浄シート(以下、「洗浄シート」ともいう)の構成について説明する。なお、本実施の形態においては、スケールの付着した基材としてガラスを用いた例について説明するが、本発明の洗浄シートは、鏡や浴槽の壁面等のような、水が飛散してスケールが付着するものについても適用することができる。
【0013】
また、本発明における洗浄液の溶媒としては、水、エチルアルコール等を挙げることができるが、これらのものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において公知の溶媒を適宜選択して、単独あるいは2以上の液体の組み合わせで用いることができる。
【0014】
本発明の洗浄シートは、酸成分を含む洗浄液と、この洗浄液を含浸するシート材とから構成されている。
【0015】
洗浄液は、上記溶媒に酸成分の溶質を攪拌させて構成されている。酸成分は、スケールを構成する結晶化したカルシウム等との間で化学反応を生じさせ、スケールを軟化させることができるものであれば特に限定されず、例えば無機酸と有機酸を混合したものや、無機酸又は有機酸をそれぞれ単独で用いたものが挙げられる。
【0016】
酸成分として使用される無機酸の例としては、例えば塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、スルファミン酸、ヨウ素酸などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の無機酸であれば適宜選択して、単独あるいは2以上の無機酸の組み合わせで用いることができる。また、有機酸の例としては、リンゴ酸、クエン酸、ギ酸、グリコール酸、酢酸、シュウ酸、酪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などを挙げることができるが、これらに限定されず、公知の有機酸であれば適宜選択して、単独あるいは2以上の有機酸の組み合わせで用いることができる。特に2以上の有機酸を混合して用いる場合には、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸を用い、これらの有機酸を混合したものを用いることが好ましく、グリコール酸及びクエン酸を混合したものを用いることがより好ましい。
【0017】
また、洗浄液中における酸成分は、洗浄液中における濃度が1〜60重量%の範囲内となるように調整されることが好ましい。具体的には、酸成分が無機酸のみから構成される場合には、用いられる無機酸の総量が1〜60重量%となるように調整され、酸成分が有機酸のみから構成される場合には、用いられる有機酸の総量が1〜60重量%となるように調整され、酸成分が無機酸と有機酸を組み合わせて構成される場合には、無機酸が1〜30重量%、有機酸が1〜30重量%となるように調整されることが好ましい。
【0018】
酸成分の濃度を1重量%以上とすることにより、スケールと酸成分の間で化学反応を充分に発生させることができ、一方、濃度を60重量%以下とすることにより、溶媒中に酸成分が溶解しにくくなり、洗浄液の製造コストが高くなってしまうことを適切に防止することができる。したがって、酸成分の濃度は、それぞれ1〜60重量%であることが好ましい。
【0019】
また、無機酸と有機酸を混合して用いる場合には、その組合せは限定されないが、特に、(i)無機酸としてスルファミン酸を用い、有機酸としてクエン酸及びグリコール酸を用いて、これらを混合したもの、(ii)無機酸として塩酸、リン酸及びスルファミン酸を用い、有機酸としてグリコール酸を用いて、これらを混合したものを用いることが好ましい。
【0020】
これらの中では、上記(i)の例によるものが最も好ましく、これらの洗浄液中における酸成分の濃度は1〜60重量%となることが好ましく、スルファミン酸からなる無機酸の濃度が1〜30重量%、クエン酸及びグリコール酸を組み合わせた有機酸全体としての濃度が1〜30重量%であることがより好ましい。これら無機酸及び有機酸を混合したものを酸成分として用いることで、スケールとの化学反応をより発生させやすくなり、スケールの洗浄力をより向上させることができるようになる。
【0021】
本発明において用いられるシート材は、前述した洗浄液を含浸することができる浸水性のあるものであればよく、不織布、布、紙又はフェルト等、特にコットン不織布であることが好ましい。
【0022】
例えば上記シート材としては、不織布により形成されたA3サイズ(297mm×420mm)のものを用いることができ、これを、2回折畳んでA5サイズにした状態でケースに収納できるように構成することができる。このシート材を構成する不織布の製法は、スパンレース法やサーマルボンド法、ケミカルボンド法、エアレイド法などのいずれの製法でもよい。
【0023】
上記シート材には、前述した洗浄液が含浸される。シート材に洗浄液を含浸させる際の重量としては、0.164〜0.657g/cmであることが好ましい。これは、洗浄シートをスケールの付着したガラス面に貼り付ける場合には、洗浄シート自体にある程度の湿り気があることが必要であり、シート材に含浸した洗浄液の濃度が0.164g/cmより少ないとガラス面にシート材が貼り付きづらくなるからである。また、この場合には、時間の経過とともに洗浄液の水が蒸発することによってシート材が乾燥してしまい、スケールと酸成分との化学反応が生じにくくなる。また、シート材に含浸した洗浄液の重量が0.657g/cmを超える場合には、シート材が飽和状態になってしまい、それ以上の洗浄液を吸収することができにくいため、上記範囲内の濃度であることが好ましい。
【0024】
なお、上記酸成分を含む洗浄液には、界面活性剤をさらに含有させることが好ましい。界面活性剤の存在により、スケールやシート材と酸成分とを馴染みやすくすることができる点で好ましく、界面活性剤としては、例えばアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれをも用いることができる。また、このような界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
洗浄液中における界面活性剤の濃度は、0.1〜1.0重量%となるように調整されることが好ましい。界面活性剤の濃度が0.1〜1.0重量%であるのは、濃度が0.1重量%未満である場合には、酸成分をスケールやシート材に馴染みやすくするという界面活性効果を得にくくなるからである。一方、このような界面活性効果は濃度が1.0重量%程度にまで達すると飽和してしまうため、これ以上界面活性剤の濃度を上げたとしてもそれ以上の界面活性効果が得られないからである。
【0026】
本発明の洗浄シートは、一般的には、内部が密閉あるいは、密閉に近い状態の容器に収納されていることが好ましい。シートに含浸された洗浄液の蒸発を防止するためである。そして、使用する時に必要な分だけケースから取り出される。この洗浄シートは、折畳んでケース内に収納されている場合には、一枚のシート状に伸ばしてスケールの付着した被洗浄面としてのガラス面に貼り付けて、洗浄シートの表面をガラス面に貼り付ける。
【0027】
上述する本発明に洗浄シートを用いる本発明のスケール除去方法では、ガラス面をいきなり上記洗浄シートでこするのではなく、スケールの付着したガラス面に貼り付け、貼り付けた状態で所定時間放置し、次いで、前記スケール除去用洗浄シートを取り除くことを特徴とする。即ち、スケールに洗浄シート中に含浸される洗浄液を時間をかけて除々に浸透されることによって、表面だけではなく、ガラス面とスケールとの境界付近まで洗浄液を浸透させることができ、これによって、スケールをガラス面に残さず除去することができるのである。また、本発明のスケール除去方法では、スケールと洗浄液中の酸成分との化学反応を時間をかけて行わせることができるため、洗浄液における酸成分の濃度を比較的低くすることができ、弱酸の酸を用いることもできる。したがって、スケールの付着したガラス面を洗浄液成分によって汚染し、傷める恐れがない。
【0028】
本発明のスケール除去方法において洗浄シートをガラス面に貼り付けた状態を放置する所定時間とは、特に限定されず、スケールの規模、程度などを勘案して、適宜決定することができるが、例えば上記所定時間としては、5分〜60分程度とすることができる。このように洗浄シートをガラス面に貼り付けた状態で放置している間に、洗浄液中の酸成分とスケールを構成するカルシウム等の間では化学反応が発生しており、酸成分によってスケールを軟らかくすることができる。洗浄シートを所定時間貼り付けた後は、ガラス面から洗浄シートを取り除き、その取り除いた洗浄シートや、別の布等によってガラス面を拭き取ることにより、ガラス面に付着したスケールを簡単に除去することが可能になる。
【0029】
また、洗浄液にさらに界面活性剤を含有させることにより、シート材へ洗浄液を含有した際に、シート材と酸成分とを馴染みやすくすることができて、シート材に洗浄液を満遍なく染み込ませることができる。また、このように洗浄液を染み込ませることにより、洗浄シートをガラス面に貼り付けた際にも、スケールと酸成分とを馴染みやすくすることができて、スケールに対して酸成分を満遍なく接触させることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0030】
このように、本発明の洗浄シートあるいは、これを用いる本発明のスケール除去方法においては、除去しにくいスケールに対する洗浄効果が高く、かつ使用方法が簡単で手間がかからず、ガラス面を傷つけることもない新しいタイプの洗浄シートを提供することができる。
【0031】
尚、本発明のスケール除去方法においては、洗浄シートをガラス面に貼り付けた後、洗浄シートを覆うようにフィルム状のシートを貼り付けてもよい。このフィルムは、洗浄シートに含浸した洗浄液、特に水分が蒸発するのを防止して、洗浄シートのガラス面からの剥がれ落ちを防止し、スケールと酸成分との化学反応を長時間に渡り効率的に生じさせるようにするためのものである。このフィルムには、例えば、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム等を用いることができ、特に薄物のポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0032】
このように、ガラス面に貼り付けた洗浄シート全体をフィルムで覆うことによって、洗浄液中における溶媒の蒸発及び洗浄シートの乾燥によるガラス面からの剥がれ落ちを防止してスケールと酸成分との化学反応を効率的に行うことができ、スケールに対して洗浄液をより効率的に浸透させることができる。したがって、乾燥した環境下では、洗浄シート全体をフィルムで覆った場合の方が、洗浄シートをフィルムで覆わない場合に比べてガラス面に貼り付けた洗浄シートの剥がれ落ちを防止することができ、洗浄シートによる洗浄効果を長時間に渡って維持することが可能になる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を用いて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
実施例1において用いたシート材は、297×420mmの大きさの不織布からなるもので、このシート材を2回折畳んだ状態でシートに収納した。このケースには、同様の方法により折畳んだシートを50枚重ねて収納した。洗浄液には、酸成分として、5重量%のクエン酸、5重量%のグリコール酸を水に溶かして攪拌させた水溶液を2kg作り、ケース内に収納した各シートに、均一になるように含浸させて洗浄シートとした。
【0035】
被洗浄物としては、温泉施設の浴場においてスケールが付着した鏡を用いた。なお、このスケールは、爪で引っかいた程度では除去することができないものであった。
【0036】
実施例1では、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付けた。そして、この状態で30分間放置し、次いで洗浄シートをガラス面から取り除いた。洗浄シートを取り除いたガラス面には、軟化したスケールが残存していたものの、取り除いた洗浄シートでこすることにより、ガラス面に付着したスケールは容易に除去することができた。
【0037】
(実施例2)
実施例2において用いたシート材及び洗浄液の成分や製法、並びに被洗浄物については、実施例1と同様とした。
【0038】
実施例2では、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付け、その貼り付けた洗浄シート全体を覆うようにポリエチレン製のフィルム(350mm×450mm)で覆い、この状態で30分間放置し、次いでフィルムを洗浄シート表面から取り除いた後に洗浄シートをガラス面から取り除いた。洗浄シートを取り除いたガラス面には軟化したスケールが残存していたものの、取り除いた洗浄シートでこすることにより、ガラス面に付着したスケールは容易に除去することができた。
【0039】
(実施例3)
実施例3において用いたシート材は実施例1と同様とした。また、実施例3において用いた洗浄液は、界面活性剤としてナロアクティー(三洋化成社製)を0.1重量%、酸成分として、5重量%のスルファミン酸、5重量%のクエン酸、5重量%グリコール酸を水に溶かして攪拌させた水溶液を2kg作り、ケース内に収納した各シートに、均一になるように含浸させて洗浄シートとした。
【0040】
被洗浄物としては、実施例1と同じ温泉施設の浴場においてスケールが付着した鏡を用いた。なお、実施例1と同様に、このスケールは、爪で引っかいた程度では除去することができないものであった。
【0041】
実施例3では、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付けた。そして、この状態で30分間放置し、次いで洗浄シートをガラス面から取り除いた。洗浄シートを取り除いたガラス面には、軟化したスケールが残存していたものの、取り除いた洗浄シートでこすることにより、ガラス面に付着したスケールは容易に除去することができた。
【0042】
(実施例4)
実施例4において用いたシート材及び洗浄液の成分や製法、並びに被洗浄物については、実施例3と同様とした。
【0043】
実施例4では、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付け、その貼り付けた洗浄シート全体を覆うようにポリエチレン製のフィルム(350mm×450mm)で覆い、この状態で30分間放置し、次いでフィルムを洗浄シート表面から取り除いた後に洗浄シートをガラス面から取り除いた。洗浄シートを取り除いたガラス面には軟化したスケールが残存していたものの、取り除いた洗浄シートでこすることにより、ガラス面に付着したスケールは容易に除去することができた。
【0044】
[洗浄シートの付着力試験]
以下、参考までに、洗浄シートの付着力試験を行った。本試験では、実施例1及び実施例3で用いた洗浄シートを使用した。
【0045】
被洗浄物としては、温泉施設の浴場においてスケールが付着した鏡を用いた。なお、このスケールは、爪で引っかいた程度では除去することができないものであった。なお、本実施例における実験では、被洗浄面にスケールが付着した鏡を4枚用いた(以下、鏡1〜4のように言う)。
【0046】
本試験では、実施例1で用いた洗浄シートをケースから1枚取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、鏡1の被洗浄面に貼り付けた。また、実施例3で用いた洗浄シートをケースから1枚取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、鏡2の被洗浄面に貼り付けた。
【0047】
次に、実施例1で用いた洗浄シートをケースから1枚取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして鏡3の被洗浄面に貼り付け、その貼り付けた洗浄シートを覆うようにポリエチレン製のフィルム(350mm×450mm)を貼り付けた。また、実施例3で用いた洗浄シートをケースから1枚取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして鏡4の被洗浄面に貼り付け、その貼り付けた洗浄シートを覆うように、上記と同様の寸法のポリエチレン製のフィルムを貼り付けた。
【0048】
このように、鏡1〜4に貼り付けた各洗浄シートを湿度30%の状況下において6時間放置し、6時間経過後における各洗浄シートの被洗浄面からの剥がれ落ち具合を目視により観察した。
【0049】
この結果、鏡1及び鏡2の被洗浄面に貼り付けた各洗浄シートは、貼り付けから6時間経過後には洗浄シートの上部が一部剥がれ落ちていたものの、鏡3及び鏡4の被洗浄面に貼り付けた各洗浄シートは、貼り付けから6時間経過後であっても、洗浄シートの剥がれ落ちは確認できず、貼り付けた当初の状態を維持していた。
【0050】
(比較例1)
比較例1において用いたシート材は実施例1と同じものを用いているものの、洗浄液の代わりとして、2kgの水をケース内に収納した各シートに均一になるように含浸させたシートを用いた。被洗浄物は、実施例1と同様のものを用いた。
【0051】
比較例1では、実施例1と同様に、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付けた。そして、この状態で30分間放置し、次いで洗浄シートをガラス面から取り除いた。洗浄シートを取り除いたガラス面には硬化したままのスケールが残存しており、実施例1と同様に、取り除いたシートでこすったところ、ガラス表面に付着したスケールはほとんど除去することができなかった。
【0052】
(比較例2)
比較例2において用いたシート材等の構成としては、洗浄液の代わりに2kgの水を用いたこと以外は実施例2と同様である。また、被洗浄物も実施例2と同様のものを用いた。
【0053】
比較例2では、ケースから1枚の洗浄シートを取り出し、折畳んだ状態から1枚のシート状に伸ばして、スケールが付着した被洗浄面であるガラス面に貼り付け、その貼り付けた洗浄シートをポリエチレン製のフィルムで覆い、この状態で30分間放置し、次いでフィルムを洗浄シート表面から取り除いた後に洗浄シートをガラス面から取り除いた。シートを取り除いたガラス面には硬化したままのスケールが残存しており、実施例2と同様に取り除いた洗浄シートでこすったところ、ガラス表面に付着したスケールはほとんど除去することができなかった。
【0054】
このように、酸成分を含む洗浄液を含浸させた洗浄シートを用いることによって、スケールと酸成分との間で化学反応を生じさせることができ、ガラス面に付着したスケールを軟らかくすることができ、その後の拭き取りでスケールを簡単に除去することが可能になる。また、酸成分を含む洗浄液に、さらに界面活性剤を含有することで、シート材の繊維と酸成分とを馴染みやすくして洗浄液を万遍なくシート材に染み込ませることができ、このように洗浄液を染み込ませることにより、洗浄シートをガラス面に貼り付けた際にも、スケールと酸成分とを馴染みやすくすることができて、スケールに対して酸成分を満遍なく接触させることができ、洗浄効果を高めることができる。
【0055】
また、洗浄シートをガラス表面に貼り付け、所定時間経過後にその洗浄シートを取り除き、その取り除いた洗浄シートで数回ガラス面をこするだけでスケールを完全に除去することができるので、スケールを除去する際の手間がさらに省略され、好ましいことが示された。
【0056】
また、洗浄シートを覆うようにフィルムを貼り付けることによって、洗浄シートに含有された洗浄液中の溶液が蒸発せずに洗浄シートがガラス面に張り付いた状態を維持できる程度の適度に湿った状態を維持することが可能になる。したがってフィルムを貼り付けない場合に対してほとんど剥がれ落ちが生じず、洗浄シートによるスケールの洗浄力を長時間に渡って維持することが可能になる。
【0057】
したがって、スケールの層が厚く形成されているために洗浄シートを長時間貼り付けておかなければスケールを容易に除去することができない場合や、被洗浄面を構成するものの材質によって酸成分の濃度を低くしなければならず、スケールの洗浄時間を確保しなければならない場合等のように、洗浄シートの洗浄力を長時間洗浄力を必要な場合においても、本発明の洗浄シートを有効に利用することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸成分を含む洗浄液と、
前記洗浄液を含浸させたシートとからなることを特徴とするスケール除去用洗浄シート。
【請求項2】
酸成分が、有機酸及び/又は無機酸である請求項1記載のスケール除去用洗浄シート。
【請求項3】
酸成分が、洗浄液中に1〜60重量%含有する請求項1又は2記載のスケール除去用洗浄シート。
【請求項4】
界面活性剤が、洗浄液中に含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のスケール除去用洗浄シート。
【請求項5】
シートには、1cmあたり0.164〜0.657gの洗浄液を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載のスケール除去用洗浄シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のスケール除去用洗浄シートを、スケールの付着した被洗浄面に貼り付け、貼り付けた状態で所定時間放置し、次いで、前記スケール除去用洗浄シートを取り除くことを特徴とするスケール除去方法。
【請求項7】
スケール除去用洗浄シートを被洗浄面に貼り付けた後、フィルム状の部材で前記スケール除去用洗浄シートを覆う請求項6記載のスケール除去方法。

【公開番号】特開2010−253191(P2010−253191A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109733(P2009−109733)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(509054670)ニューサンライト株式会社 (1)
【Fターム(参考)】