説明

スタッカークレーンにおける物品の出し入れ装置

【目的】 チェイン移送機構を持つスタッカークレーンにおいて、ハンドリングするパレットの長さが様々であってもラックに対する出し入れ作業が速やかに行えるようにすること。
【構成】 ラック1に沿って走行可能なフレーム3に昇降ベース4を備え、パレット7をラック2に対して出し入れ可能としたスタッカークレーンであって、昇降ベース4に、ラック2に対して進退動作可能な移動ベース5を備え、この移動ベース5にはその進退動作方向と同じ向きに走行駆動されるチェイン5eを設けると共にこのチェイン5eにはパレット7と係合可能なピッカーを設ける。ラック2内のパレット7に対して、チェイン5eの走行面がピッカーの突き出し量よりも短い範囲で上又は下のレベルとなるように昇降ベース4の高さを決めた後、チェイン5eを走行させることによってピッカーをパレット7に係合させ、このパレット7をラック2と昇降ベース4側との間で出し入れ可能とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば鋼材等を収納する立体自動倉庫に設備されるスタッカークレーンに係り、特にラックに対するパレットの入出庫のための出し入れ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼棒や鋼管等の各種のパイプ類の収納保管のための自動倉庫が従来から利用されている。この自動倉庫は、パレットやトレー等に品物を載せてこれらを一つのユニットとしてハンドリングするもので、ラックへのパレット又はトレーの出し入れのためのスタッカークレーンを備えたものがその一般的なものである。
【0003】このようなスタッカークレーンを備えた自動倉庫の例としては、たとえば特公昭60−42125号公報に記載されたものがある。
【0004】この自動倉庫におけるスタッカークレーンは、正面から見て左右の両側に配置した高層のラックの間に駆動機構によって昇降可能に配置され、ラックに対するパレットの出し入れのためのチェイン移送機構とパレットの引き出し及び押し込みのためのリンク機構とを備え、かつ昇降ベース上でパレットをシフトするための無端チェインと駆動ローラ及び駆動機構を備えたものである。そして、リンク機構はチェインに連接した走行台に備えられ、ループを描くチェインの搬送パスのストロークエンドにおいてリンク機構のフックによってパレットに自動的に係合及びその解離を可能とした構成である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、パレットをラックから引き出すときには、ラック側に近い走行台のリンク機構のフックがパレットに係合し、この係合が解かれるのは他方のラック側に近いストロークエンドに限られる。また、パレットを走行台からラック側に搬入するときも、同様に走行台が目的とするラック側に対応するストロークエンドに到達したときにフックとパレットが無縁になる。
【0006】このように、チェイン移送機構のストロークエンドでのみフックの係合及び解離が実現できないので、取り扱えるパレット自身に関係なくチェイン移送機構をストロークさせる必要がある。
【0007】このように、パレットの長さに関係なくフックの係合は両ストローク位置でしか行えないため、たとえば短い製品の長さに合わせたパレットの場合でも、実際にはパレット長さよりも長いストロークを毎回動作させざるを得ない。
【0008】本発明において解決すべき課題は、チェイン移送機構を持つスタッカークレーンにおいて、ハンドリングするパレットの長さが様々であってもラックに対する出し入れ作業が速やかに行えるようにすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、ラックに沿って走行可能なフレームと、該フレームに昇降可能に備えた昇降ベースとを備え、パレットを前記ラックに対して出し入れ可能としたスタッカークレーンであって、前記昇降ベースに前記ラックに対して進退動作可能な移動ベースを備え、該移動ベースはその進退動作方向と同じ向きに走行駆動されるチェインを備えると共に、該チェインに前記パレットに係合可能なピッカーを備えてなることを特徴とする。
【0010】
【作用】ラックに収納したパレットに対し、昇降ベースに備えたチェインの走行面が対象となるラックよりも少し高いか低いレベルとなるまで昇降ベースを移動させる。この後、移動ベースをラック側に移動させてチェインの走行面をラックの係合部の上方又は下方に設定する。一方、ピッカーはチェインの走行面から突き出たものとし、この突き出し量よりも短い距離となるようにチェインの走行面と係合部との距離を設定しておけば、チェインの走行によってピッカーがパレットに係合してラックから引き出される。
【0011】また、昇降ベースからラック側に移載するときは、逆の動作によって同様に可能となる。
【0012】
【実施例】図1は本発明のスタッカークレーンを備えた自動倉庫の概略正面図、図2は左側のラックとスタッカークレーンの配置を示す概略平面図である。
【0013】図において、左右に間隔を開けて配置した高層のラック1,2の間にスタッカークレーンのフレーム3が構築されている。ラック1,2はそれぞれ奥行きを長くしてその方向にパレットを多数配列して収納可能な空間を持ち、パレットを受けるためのハンガー1a,2aを一定のピッチで設けている。また、フレーム3にはレール3a上を転動する電動機駆動による車輪3bを設け、これらのラック1,2の奥行き方向(図面と直交する方向)に移動可能とする。
【0014】フレーム3には上下に移動可能な昇降ベース4を設ける。この昇降ベース4は、フレーム3に対してガイド機構によって水平姿勢に維持されながら移動可能とし、電動機(図示せず)等の駆動系によって動作可能としたものである。この昇降ベース4の上面には、パレットを載せてこれを支持するためのローラ4aを図2に示すように一定の間隔で両端部に2列配置する。
【0015】昇降ベース4の上面には、ローラ4aの列の外側に2台の移動ベース5,6を備える。これらの移動ベース5,6は、昇降ベース4の上面に対して図2において左右方向に摺動可能であり、その作動は基端を昇降ベース4側に連接したシフトシリンダ5a,6aによって行われる。なお、一方の移動ベース5は、左配置のラック1に対してパレットを出し入れ操作し、他方の移動ベース6は右配置のラック2に対する出し入れ操作を行う。このため、シフトシリンダ5a,6aのそれぞれのロッドが逆向きの姿勢となるように昇降ベース4に連接する。
【0016】左配置のラック1に対応する移動ベース5には、図1に示すように移動ベース5よりもその移動方向に長くしたブラケット5bを設け、その両端にスプロケット5cを取り付ける。スプロケット5cの一方は、ブラケット5bに固定したモータ5dによって回転駆動可能とし、これらのスプロケット5cにはチェイン5eを巻回する。そして、このチェイン5eには外側に突き出るピッカー5fを設ける。
【0017】右配置のラック2に対応する移動ベース6も同様の構成を持ち、図2に示すようにブラケット6bの両端に設けたスプロケット6cにピッカー6f付きのチェイン6eを巻回し、モータ6dによって駆動可能としたものである。
【0018】ラック1,2の中に収納保管される製品を載せるパレット7は、ハンガー1a,2aの上に載ってスライド可能であり、水平材や垂直材を適切に組み合わせたものである。そして、パレット7の正面には、左側の下部に位置する部分にフック7aを側方に突き出して設ける。このフック7aは、図3に示すように、昇降ベース4を対象となるパレット7に対して位置合わせしたとき、ブラケット5bのスプロケット5cの下方に位置するように設ける。
【0019】以上の構成において、ラック1からパレット7を引き出す作業は、次の要領によって行う。
【0020】まず、移動ベース5,6のそれぞれを昇降ベース4の中央に合わせた位置に待機させ、ブラケット5b,6b及びスプロケット5c,6cがそれぞれ左右のラック1,2に干渉しないように設定する。この後、対象となるパレット7のフック7aに対応してチェイン5eの走行面が位置するようにフレーム3を移動させて設定する。
【0021】次いで、パレット7のレベルに対して、チェイン5eの走行面がフック7aよりも少し高くなるまで昇降ベース4を移動させる。このときの高さの設定は、図1に示すように、チェイン5eがフック7aに干渉せず、チェイン5の走行によってピッカー5fがフック7aに引っ掛かる程度とする。すなわち、フック7aの突き出し量よりも短い距離だけチェイン5eの走行面をフック7aよりも上側となるように昇降ベース4のレベルを設定する。この状態ピッカー5fは図1に示すように、チェイン5eのループの上側であってラック1側に近い位置に設定しておき、この状態でシフトシリンダ5aによって移動ベース5をラック1側に移動させる。このときの移動量は、図1及び図4の概略図に示すように、スプロケット5cがパレット7のフック7aよりもラック1の奥側に入り込むまでとする。
【0022】次いで、モータ5dを作動させてチェイン5eを図1中の矢印方向に走行させると(図4の(a))、スプロケット5cを通過してきたピッカー5fがフック7aに引っ掛かる(図4の(b))。そして、走行するチェイン5と共にピッカー5fが昇降ベース4側に移動していくので、ラック1内のパレット7が引き出されてローラ4a上に移載される。
【0023】チェイン5eによってパレット7を引き出した後又は引き出し操作と同時にシフトシリンダ5aによって移動ベース5をラック1側から昇降ベース4の中央側の元の位置に戻す。
【0024】以上により、ラック1内のパレット7は昇降ベース4側に移載され、フレーム3をパレットの回収先側に移動させ、昇降ベース4を床レベルまで下げることによってパレット7を外部に搬出することができる。
【0025】また、昇降ベース4上のパレット7をラック1へ移すときは、先と同じ要領によって昇降ベース4のレベルを対象となるラック1のハンガー1aに対応させる。そして、シフトシリンダ5aによって移動ベース5を図1のようにラック1側に移動させ、モータ5dによってチェイン5eをパレット7の引き出し時とは逆向きに走行させる。
【0026】このチェイン5eの走行初期では、ピッカー5fがループの下側にあってローラ4a上のパレット7のフック7aに当たるように予め設定しておく。これにより、チェイン5eの走行によって、移動ベース5側のパレット7はラック1側に押し出されて移載され、移載完了後はモータ5dの作動を停止させると共にシフトシリンダ5dによって移動ベース5を昇降ベース4の中央側に戻す。
【0027】なお、他方の移動ベース6の作動も同様であり、右配置のラック2に対するパレット7の出し入れが可能である。
【0028】以上のように、移動ベース5の左配置のラック1側へのシフト及び他方の移動ベース6の右配置のラック2へのシフトによって、パレット7のフック7aにピッカー5f,6fを掛ける操作を最初に行うことで、パレット7のラック1,2からの引き出しが可能である。また、移動ベース5,6上のパレット7をラック1,2側へ移載するときも、走行するチェイン5e,6eのピッカー5f,6fをフック7aに掛けさえすればよい。このため、従来では搬送チェイン機構のストロークエンドでのみのパレットへのチェイン機構の係合及び離脱が可能であったのに対し、任意の位置でパレット7へのチェイン5e,6eの連接及び解除が可能であり、この操作に必要なフック7aの位置は限定されることがない。したがって、パレット7の長さが様々に変わっても、これをラック1,2に対して出し入れすることが可能である。
【0029】なお、実施例では、図1に示したようにループの下側のチェイン5eの走行面においてピッカー5fがフック7aに係合するようにしているが、昇降ベース4を取り扱いの対象となるパレット7よりも低いレベルとし、ループの上側の走行面でピッカー5fがブック7aに係合するような操作とすることも無論可能である。
【0030】
【発明の効果】本発明では、昇降ベースに設けた移動ベースにパレットのチェイン搬送機構を設け、移動ベースをラックに対して進退動作可能としているので、チェインのピッカーをパレットのフックに掛ける位置に制限を受けない。このため、従来技術のようにパレットの長さをチェイン移送機構のストロークに合わせる必要がなくなり、各種の仕様のパレットを用いた倉庫に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスタッカークレーンの物品の出し入れ装置の一実施例であってその概要を示す正面図である。
【図2】図1における左配置のラックを含めて示すスタッカークレーンの概略平面図である。
【図3】ラック内のパレットのフックと移動ベース側のチェインの位置関係を示すための要部の概略正面図である。
【図4】パレットのフックに対するピッカーの移動を示す概略図であって、同図の(a)はチェインの走行面とパレットの位置関係を示し、同図の(b)はピッカーがフックに係合した状態を示す。
【符号の説明】
1 ラック
2 ラック
3 フレーム
4 昇降ベース
5 移動ベース
5a シフトシリンダ
5e チェイン
5f ピッカー
6 移動ベース
6a シフトシリンダ
6e チェイン
6f ピッカー
7 パレット
7a フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラックに沿って走行可能なフレームと、該フレームに昇降可能に備えた昇降ベースとを備え、パレットを前記ラックに対して出し入れ可能としたスタッカークレーンであって、前記昇降ベースに前記ラックに対して進退動作可能な移動ベースを備え、該移動ベースはその進退動作方向と同じ向きに走行駆動されるチェインを備えると共に、該チェインに前記パレットに係合可能なピッカーを備えてなるスタッカークレーンにおける物品の出し入れ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平6−255716
【公開日】平成6年(1994)9月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−45547
【出願日】平成5年(1993)3月5日
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)