説明

スタッキングボトル

【課題】積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有するスタッキングボトルを提供する。
【解決手段】(a)本体部1における側壁1aの上端肩部1bから、キャップ3aの装脱着が自在な口部3にわたって、上細りテーパ外周面を形成してなるボトルにおいて、前記テーパ外周面に、底面が当該ボトルの底部端面に平行な多角形状又は楕円形状を有する段差2が設けられていること、(b)当該ボトルの底部に、前記の多角形状又は楕円形状を有する段差2と、キャップ3aを装着した状態の口部3に対応する嵌合用凹部5が設けられていること、及び(c)前記嵌合用凹部の形状を、積み重ねられた複数のボトルそれぞれを取り外す操作において、上部に位置するボトルの嵌合用凹部端面の任意の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げ取り外す際に、前記キャップが該凹部内壁に接触しない構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスタッキングボトルに関し、さらに詳しくは、積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有すると共に、良好な意匠性を有し、かつ陳列棚に積み重ねられた場合の取り出し性に優れる、ガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなるスタッキングボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料や調味料が充填されたボトルを陳列や保管する場合、積み重ねておくと、スペースを節減できるので便利である。また、飲料や調味料が充填されたボトルを積み重ねて販売する場合、消費者は、例えば合計容量が一本分のボトルに相当する複数種類の飲料や調味料を購入することができるので、利便性が向上する。
しかしながら、ボトルをそのまま積み重ねると安定性が悪いので、従来、容器の底部に凹部を形成し、該凹部に蓋天部を嵌め込んで、積み重ねることが行われている(例えば特許文献1及び2参照)。
これらの技術では、安定して積み重ねることができ、また店頭においても商品を陳列スペースに効率よく並べることができるメリットがある。
しかしながら、前記凹部に蓋天部を嵌め込んで積み重ねて並べた場合、回り止め機能を有していないため、例えば店頭に商品を陳列する際にラベルが一定方向に並べにくく、ばらばらに並べられる傾向があり、消費者へのアピール力が低下するという問題があった。ばらばら方向のラベルを一定方向に並べるには、凹部に蓋天部を嵌め込んだのち、回して位置決めする必要があり、多大の労力を必要とする。また、一旦、正しく位置決めしても次第に方向がずれる欠点もある。
このような問題に対処するために、例えば口部にキャップを装着した容器において、該容器の底部に位置合わせ凹部が設けられ、かつ該キャップの上面に、前記位置合わせ凹部に嵌着されるスタック嵌着部が設けられてなる容器が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
この技術においては、位置合わせ凹部が十字状又はY字状、あるいは非対称の形状に形成され、そして該凹部に嵌着させるためのスタック嵌着部を、別途キャップ上面に設けることが必要であり、製造コストが高くつくのを免れないという問題があった。
また、従来積み重ねた際の回り止め機能(位置合わせ機能)として、びんの肩部に上向きに突出させた嵌合用凸条部(ラグ)を設け、びん底には該凸条部が嵌合するための凹部を設けることが行われていた。しかしながら、この場合、びんの肩部に本来の意匠以外の形状のものを付ける必要があるため、ボトル形状の意匠性に劣るという問題があった。
ところで、陳列棚に積み重ねられたボトルを取り外す場合、上部ボトルを上方に上げるか、あるいは前方に倒して取り出すが、陳列棚の上部空間が足りないと、前方に倒して取り出すしかない。しかしながら、従来のボトルの積み重ね技術においては、積み重ねられた上部ボトルを、前方に倒して取り出すことについては、ほとんど言及されていないのが実状であり、前方に倒して取り出す場合、ボトルのキャップがボトルの底に設けられた凹部内壁の一部に接触し、下方のボトルも上のボトルと同様に前方に傾斜させなければならないことになる。そのため、スタッキングボトルの積み重ねが不安定となり、最悪の場合下のボトルが棚から落ちることがあるなどの問題を有していた。
【特許文献1】実開平6−27522号公報
【特許文献2】特開2001−354242号公報
【特許文献3】特開2005−247334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、このような事情のもとで、積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有すると共に、良好な意匠性を有し、かつ陳列棚に積み重ねられた場合の取り出し性に優れる、ガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなるスタッキングボトルを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有するスタッキングボトルを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、本体部における側壁の上端肩部から口部にわたって、上細りテーパ外周面を形成しているボトルにおいて、前記テーパ外周面に、底面が多角形状又は楕円形状を有する段差を設けると共に、当該ボトルの底部に、前記段差とキャップを装着した状態の口部に対応する嵌合用凹部を設け、さらに、該凹部形状を特定の嵌合構造とすることにより下方のボトルの垂直状態を維持しながら、スタッキングボトルの積み重ね状態の積み重ね位置から上方のボトルを折り曲げることが可能な特有の積み重ね構造を採用することによって、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1]積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能をもたせたガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなるスタッキングボトルであって、
(a)本体部における側壁の上端肩部から、キャップの装脱着が自在な口部にわたって、上細りテーパ外周面を形成してなるボトルにおいて、前記テーパ外周面に、底面が当該ボトルの底部端面に平行な多角形状又は楕円形状を有する段差が設けられていること、
(b)当該ボトルの底部に、前記の多角形状又は楕円形状を有する段差と、キャップを装着した状態の口部に対応する嵌合用凹部が設けられていること、及び
(c)前記嵌合用凹部の形状を、積み重ねられた複数のボトルそれぞれを取り外す操作において、上部に位置するボトルの嵌合用凹部端面の任意の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げ取り外す際に、前記キャップが該凹部内壁に接触しない構造とすること、
を特徴とするスタッキングボトル、
[2]多角形状を有する段差が、正方形、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形又は長方形の形状を有する段差である上記[1]項に記載のスタッキングボトル、
[3]嵌合用凹部天面に、彫刻又は加飾を施してなる上記[1]又は[2]項に記載のスタッキングボトル、及び
[4]ガラス製ボトルからなるスタッキングボトルである上記[1]、[2]又は[3]項に記載のスタッキングボトル、
を提供するものである。
また、所望によって、好ましい態様となるものとして、
[5]重ねられたスタッキングボトルの上のボトルの嵌合用凹部端面の特定の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げて傾けて取り外す際に、キャップが凹部の内壁に接触しない構造とし、かつ、その他の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げて傾けて取り外す際に、キャップが凹部内壁に当り、その方向には傾けられない構造とすることもできる。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有すると共に、良好な意匠性を有し、かつ陳列棚に積み重ねられた場合の取り出し性に優れる、ガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなるスタッキングボトルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のスタッキングボトルは、積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能をもたせたガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなり、下記の(a)、(b)及び(c)の3つの要件を満たすことが必要である。
次に、要件(a)、(b)及び(c)について添付図面に従って説明する。
図1は、本発明のスタッキングボトルの一例の側面図(a)及び底面図(b)である。この図1は、本体部1がほぼ正方形の横断面を有する四角柱である場合の例である。
要件(a)においては、本体部1における側壁1aの上端肩部1bから、キャップ3aの装脱着が自在な口部3にわたって、上細りテーパ外周面を形成してなるガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルにおいて、前記テーパ外周面に、底面が当該ボトルの底部端面4に平行な多角形状又は楕円形状(図1では正方形状)を有する段差2が設けられていることを要す。
前記段差の底面形状は、多角形状又は楕円形状であり、多角形状としては、正方形、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形又は長方形を好ましく挙げることができる。九角形以上になると円形に近づき、積み重ねた場合の回り止め機能が十分に発揮されないおそれが生じる。
本体部1の形状に特に制限はなく、円柱状、断面が正方形又は長方形である四角柱状、正五角柱状、正六角柱状、正七角柱状、正八角柱状、楕円柱状などを用いることができるが、意匠性の点から、前記段差2の底面形状と、本体部1の横断面形状が相似形であり、かつ同一方向であることが好ましい。
前記段差2の高さは、通常1.5〜10mm程度、好ましくは2〜4mmである。なお、符号7は梨地部を示す。
【0007】
次に、要件(b)においては、当該ボトルの底部に、前記の多角形状又は楕円形状を有する段差2と、キャップ3aが装置した状態の口部3に対応する嵌合用凹部5が設けられていることを要す。
このように、前記要件(a)及び(b)をみたすボトルを積み重ねる場合、安定した積み重ね機能が発揮されると共に、回り止め機能が効果的に発揮される。
前記嵌合用凹部5の形状は、それに嵌合させる段差2の底面形状に左右される。すなわち、凹部5の形状は、段差2の底面形状が正方形又は長方形の場合は、横断面が正方形又は長方形の四角錐台となり、正五角形の場合は、正五角錐台となり、正六角形の場合は、正六角錐台となり、正七角形の場合は、正七角錐台となり、正八角形の場合は、正八角錐台となり、楕円形である場合は、楕円錐台となる。
また、凹部5の天面6の形状に特に制限はなく、凹部5の横断面形状と相似形であってもよいし、円形状であってもよい。
なお、凹部天面6には、必要に応じ、マークや模様などの彫刻、あるいは色付けによる加飾を施すことができる。これにより積み重ねる場合の方向性が容易となる。また、凹部天面6には、下方のボトルのキャップが丁度嵌合する浅い凹部を設けて、スタッキング状態を安定させることができる。
【0008】
次に、添付図面に従い、要件(c)について説明する。図2は、積み重ねられた本発明のスタッキングボトルを取り外す場合の一例の側面説明図である。この図2は、本体部1がほぼ正方形の横断面を有する四角柱で、段差2の底面形状が正方形である場合の例である。
要件(c)においては、前記の嵌合用凹部形状5を、積み重ねられた複数のボトル(図においては、ボトルA、B)それぞれを取り出す操作において、上部に位置するボトルBの嵌合用凹部5端面の任意の一辺を支点Pとし、対向する凹部端辺8をもち上げ取り外す際に、キャップ3aが凹部5の内壁に接触しない構造とすることを要す。このような構造とするには、特に制限はないが、例えば凹部内壁のテーパ角度を調整する方法を用いることができる。
陳列棚に積み重ねられたボトルを取り出す場合、上部ボトルを上方にもち上げるか、あるいは前方に倒して取り出すが、陳列棚の上部空間が足りないと、前方に倒して取り出すしかない。しかしながら、従来のボトルの積み重ね技術においては、前方に倒して取り出す場合、ボトルのキャップがボトルの底に設けられた凹部内壁の一部に接触し、不安定となり、最悪棚から落ちることがあるなどの問題を有していた。これに対し、前記要件(c)を満たす本発明のスタッキングボトルを用いることにより、前記問題を回避することができる。
なお、段差の底面形状が長方形の場合、積み重ねられたボトルを取り出す際の支点となる任意の一辺は、短辺及び長辺のいずれでもよいが、陳列棚にボトルを並べる場合、通常長手方向を正面に向けるので、短辺を支点として取り出すことが好ましい。また、段差の底面形状が楕円である場合、支点となる任意の一辺は、長径と円弧との接点近傍の円弧及び短径と円弧との接点近傍の円弧のいずれであってもよいが、陳列棚にボトルを並べる際には、前記長方形の場合と同様に、通常長手方向を正面に向けるので、長径と円弧との接点近傍の円弧を支点として取り出すことが好ましい。
また、重ねられたスタッキングボトルの上のボトルの嵌合用凹部端面の特定の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げて傾けて取り外す際に、キャップが凹部の内壁に接触しない構造とし、かつ、その他の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げて傾けて取り外す際に、キャップが凹部内壁に当り、傾けられない構造とすることもできる。このような構造にすることによって、重ねられたスタッキングボトルは、特定の方向を除き傾けることができないので、スタッキング安定性を増大させることができる。
【0009】
図3は、本発明のスタッキングボトルを3段に積み重ねた状態の一例を示す側面図である。この図3は、各ボトルの本体部がほぼ正方形の横断面を有する四角柱で、各ボトルの段差の底面形状が正方形である場合の例である。図3における各符号は、図1、図2の場合と同様である。
このように積み重ねて販売する場合、消費者は例えば合計容量が1本分のボトルに相当する複数種類の飲料や調味料を購入することができるので、利便性が向上する。なお、本発明のスタッキングボトルの容量に特に制限はないが、通常100〜300ml程度である。
本発明のスタッキングボトルは、以下に示す効果を奏する。
(1)積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有し、安定して積み重ねることができると共に、ラベルなどの方向性を容易に確保することができる。
(2)肩部の上に突出した凸状部を設けていないので意匠性が良好である。
(3)陳列棚に積み重ねられた場合、上部ボトルを前に倒して容易に取り出すことができる。
(4)ボトルを積み重ねて販売する場合、消費者は合計容量が1本分のボトルに相当する複数種類の飲料や調味料を購入することができるので、利便性が向上する。
(5)特に、ガラス製ボトルの場合は、高級感を有し、中身が消費されて殆ど空の状態であっても、重量があるので、安定して積み重ねることができる。例えば、合成樹脂製のペットボトル又は薄い金属製ボトルの場合は、高級感がなく、上のボトルが空に近くなった場合に、簡単な振動で、転げ落ちる危険性が高くなる。ガラス製ボトルは、酒等の高級飲料を棚に飾って、多種の飲料の中から時々の好みに応じて選択して嗜むという本願発明のスタッキングボトルの最適の需要形態に要求される高級感のある意匠性及び地震等に対する耐振動安定性に適したスタッキングボトルである。
【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明のスタッキングボトルは、ガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなり、積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能を有すると共に、良好な意匠性を有し、かつ陳列棚に積み重ねられた場合の取り出し性に優れている。特に、ガラス製ボトルのスタッキングボトルが有効である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のスタッキングボトルの一例の側面図(a)及び底面図(b)である。
【図2】積み重ねられた本発明のスタッキングボトルを取り外す場合の一例の側面説明図である。
【図3】本発明のスタッキングボトルを3段に積み重ねた状態の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 本体部
1a 側壁
1b 上端肩部
2 段差
3 口部
3a キャップ
4 底部端面
5 嵌合用凹部
6 天面
7 梨地
8 凹部端辺
A、B ボトル
P 支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ね用機能と、積み重ねた場合の回り止め機能をもたせたガラス製ボトル、合成樹脂製ボトル又は金属製ボトルからなるスタッキングボトルであって、
(a)本体部における側壁の上端肩部から、キャップの装脱着が自在な口部にわたって、上細りテーパ外周面を形成してなるボトルにおいて、前記テーパ外周面に、底面が当該ボトルの底部端面に平行な多角形状又は楕円形状を有する段差が設けられていること、
(b)当該ボトルの底部に、前記の多角形状又は楕円形状を有する段差と、キャップを装着した状態の口部に対応する嵌合用凹部が設けられていること、及び
(c)前記嵌合用凹部の形状を、積み重ねられた複数のボトルそれぞれを取り外す操作において、上部に位置するボトルの嵌合用凹部端面の任意の一辺を支点とし、対向する凹部端辺をもち上げ取り外す際に、前記キャップが該凹部内壁に接触しない構造とすること、
を特徴とするスタッキングボトル。
【請求項2】
多角形状を有する段差が、正方形、正五角形、正六角形、正七角形、正八角形又は長方形の形状を有する段差である請求項1に記載のスタッキングボトル。
【請求項3】
嵌合用凹部天面に、彫刻又は加飾を施してなる請求項1又は2に記載のスタッキングボトル。
【請求項4】
ガラス製ボトルからなるスタッキングボトルである請求項1、2又は3に記載のスタッキングボトル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−100729(P2008−100729A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284977(P2006−284977)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
【Fターム(参考)】