説明

スタッドピンの封着方法及びスタッドピンの封着装置

【課題】陰極線管用ガラスパネルのコーナー部内側面にスタッドピンを封着する際に、スタッドピンを効率的に加熱可能で高周波誘導加熱用のコイルが内側面に接触しない封着方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明の封着方法は、ピン保持具11にスタッドピン13を保持し、スタッドピン13の挿入方向長さの0%を超え80%以下を包囲したコイル22により、スタッドピン13を加熱してコイル22とともに移動させてパネル1のコーナー部1aの内側面1bに挿入して封着する。本発明の装置は、ピン保持具11に保持したスタッドピン13をパネル1のコーナー部1aの内側面1bに挿入する移動機構部を具備するピン挿入手段23と、ピン保持具11に保持されたスタッドピン13を加熱するコイル22とを有し、コイル22のスタッドピン13挿入側がパネル1のコーナー部1aの内側面1bに接近可能な面取り形状部22cになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陰極線管用ガラスパネルにスタッドピンを封着するためのスタッドピンの封着方法及び封着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極線管用ガラスバルブは、図3に示すように、略矩形の画像表示部を有するガラスパネル(以下パネル1と記す)と、内部空間を電子ビームが通過する略漏斗状のガラスファンネル(以下ファンネル2と記す)と、小径円筒状のガラスネック(以下ネック3と記す)を主要部位とし、ファンネル2の大開口部2a及び小開口部2bにパネル1とネック3とをそれぞれシールして一体化されてなるものである。このパネル1は、画像を表示する有効面を備えた略矩形のフェース部4と、フェース部4の周縁にブレンドR部6を介して略直角に連なるスカート部5とを備えている。
【0003】
パネル1は、ゴブと呼ばれる溶融ガラス塊を上下の金型を用いて所定の形状にプレス成型された後、図4(A)に示すスタッドピンの封着装置に移載され、パネル1のスカート部5の内側面にスタッドピン13と呼ばれる略円筒状の金属部材が封着される。スタッドピンの封着装置は、先端にスタッドピン13を吸引保持する中空軸状の保持具(以下ピン保持具11と記す)と、ピン保持具11に保持されたスタッドピン13を包囲して高周波磁界によって加熱するワークコイル12と、ワークコイル12に高周波磁界を発生させるための高周波発生手段10と、ワークコイル12と高周波発生手段10とを一体に支持してパネル1のスカート部5の内側面に対して接近離反する方向にスライドベース7上を移動するコイルベース8と、コイルベース8を移動させる駆動装置9とからなる。
【0004】
スタッドピン13は、上記スタッドピンの封着装置を用いて次のような工程を経てパネル1のスカート部5の内側面に封着される。最初に、スタッドピン供給手段(図示省略)から、図4(A)、(B)に示されるスタッドピンの封着装置にスタッドピン13が供給され、ピン保持具11の先端に吸引保持される。次いで、高周波発生手段10を作動させてワークコイル12に高周波磁界を発生させ、スタッドピン13を間接的に加熱する。次に、駆動装置9を作動させて、ピン保持具11に保持されたスタッドピン13の先端とスタッドピン13が封着されるパネル1のスカート部5の内側面との距離が所定の距離になるまで、コイルベース8をパネル1のスカート部5の内側面に接近する方向に移動させる。スタッドピン13の先端が所定の位置に到達するとコイルベース8の移動を停止し、ピン保持具11がワークコイル12の先端から突出し、スタッドピン13の先端がパネル1のスカート部5の内側面に当接され、高温加熱されたスタッドピン13からの熱伝導によってパネル1のスカート部5の内側面が溶融軟化されてスタッドピン13が挿入される。この後、高周波発生手段10の作動を停止してスタッドピン13の加熱を停止し、ピン保持具11によるスタッドピン13の吸引を停止し、コイルベース8をパネル1のスカート部5の内側面から離反する方向に移動させると、ピン保持具11はスタッドピン13をパネル1のスカート部5の内側面に残して後退し、スタッドピン13の封着が完了する。
【0005】
このようなスタッドピンの封着に関連して、ワークコイルがパネルのスカート部の内側面に接触しないようにする工夫がなされている。例えば、特許文献1、2に示されているスタッドピンの封着装置では、スタッドピンの加熱時には、スタッドピンがワークコイルの先端から出ないように配置することによりスタッドピンが効率よく加熱され、スタッドピンをパネルのスカート部の内側面に封着する直前にワークコイルを後方に移動させてスタッドピンがワークコイルの先端から突出するようにし、ワークコイルの先端がパネルのスカート部の内側面に接触するのを防ぐというものである。
【0006】
また、特許文献3には、パネルのコーナー部を肉厚に形成することでパネルのコーナー部の内側面に平面を形成し、この平面にスタッドピンを封着する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平5−303941号公報
【特許文献2】特開平9−326234号公報
【特許文献3】特公昭62−47355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2のように、パネルの長辺や短辺のスカート部のほぼ平らな内側面にスタッドピンを封着する場合には特に問題にならないが、特許文献3のような平面が形成されたコーナー部を有するパネルではなく、一般的な形状のパネルの対角軸に位置するコーナー部のスカート部の内側面(以下コーナー部の内側面と記す)にスタッドピンを封着する場合、図4(B)に示すように、スタッドピン13をワークコイル12とともにコーナー部に接近させていくと、ワークコイル12の先端12a、12aがパネル1のコーナー部の内側面に接触して傷つけるという問題がある。
【0008】
ワークコイル12の接触を回避するには、予めワークコイル12をパネル1のコーナー部の内側面に対して後方に位置するように後退させておく必要がある。即ち、スタッドピン13がワークコイル12の先端から大きく突出した状態になる。本来、スタッドピン13の高周波磁界による加熱(以下高周波加熱と記す)は、スタッドピン13がワークコイル12で包囲され高周波磁界内で行われるのが最も加熱効率が良いが、スタッドピン13がワークコイル12の包囲から遠ざかるに従ってスタッドピン13の加熱に関与する高周波磁界が減少し加熱効率が低下する。そこで、高周波磁界の減少に対応するため、大容量の電力を流してワークコイル12に発生する高周波磁界を増大させることも可能であるが、電力消費量が膨大となって現実的ではない。
【0009】
さらに、スタッドピン13がワークコイル12の先端から大きく突出すると、パネル1のコーナー部1aの内側面1bに最初に接触するスタッドピン13の先端を一定時間内に効率よく加熱できない。
【0010】
このようなところから、従来技術のスタッドピンの封着装置を用いてパネル1のコーナー部1aの内側面1bにスタッドピン13を封着する場合、封着部位の構造上、スタッドピン13がワークコイル12の先端から大きく突出した状態にならざるを得ず、スタッドピン13を所定の温度に達するまで高周波加熱するのに時間がかかる。
【0011】
さらに、パネル1の増産を行う場合やパネル1に封着するスタッドピン13の個数が増加した場合、これらの事態に対処するには、スタッドピン13の封着に要する時間を短縮する必要がある。しかし、スタッドピン13の封着時間を単に短くすると、スタッドピン13が十分に加熱されず、スタッドピン13の先端がパネル1のコーナー部の内側面に接触した際、スタッドピン13からパネル1のコーナー部の内側面に伝導される熱量が不足し、パネル1のコーナー部の内側面を軟化させるのが難しくなる。この結果、パネル1のコーナー部の内側面に歪みが発生するか、または、スタッドピン13の先端が変形屈曲するといった問題があった。
【0012】
また、特許文献3に示される2次コイルによる加熱では、スタッドピンを全く包囲していないため、スタッドピンを効率よく加熱できない上に、特許文献3のような平面が形成されたコーナー部を有するパネルは、肉厚差に起因する破損や、有効画面のサイズに比してパネルのサイズが大きくなる、コスト高等の問題があり現実的ではない。
【0013】
上記従来のスタッドピンの封着装置を、パネルのコーナー部の内側面へのスタッドピンの封着に適用する場合、パネルのコーナー部の内側面に封着する前にスタッドピンのほぼ全体がワークコイルから突出してしまうため、スタッドピンが急激に冷却されることになり、パネルのコーナー部の内側面に封着される際に、スタッドピンは所望の温度を保持することが困難になり、パネルのコーナー部の内側面をスタッドピンの挿入に適した状態に加熱軟化させるのに支障が生じるか、あるいは過大な電力消費が不可避となる。
【0014】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、陰極線管用ガラスパネルのコ−ナー部の内側面にスタッドピンを封着する際に、スタッドピンを効率的に加熱可能な状態に保ちつつ、ワークコイルの先端が、陰極線管用ガラスパネルのコ−ナー部の内側面に接触するのを防止することができるスタッドピンの封着方法及びスタッドピンの封着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達するために、本発明のスタッドピンの封着方法は、ピン挿入手段のピン保持具にスタッドピンを保持し、該スタッドピンを挿入方向長さの80%以下を包囲した高周波誘導加熱用のコイルにより加熱し、該スタッドピンをコイルとともに移動させて陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に挿入して封着するものである。
【0016】
本発明に用いる高周波誘導加熱用のコイルとしては、スタッドピンを挿入方向長さの0%を超えており、すなわち、スタッドピン全体が完全にコイル先端から突出しておらず、かつ80%以下を包囲した状態で、一般的な形状の陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に封着可能な形状であれば使用可能である。封着作業性を考慮すると、スタッドピンを挿入方向長さの50%から80%の範囲で包囲していることが好ましい。
【0017】
また、本発明のスタッドピンの封着方法は、スタッドピンを保持したピン挿入手段を陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近させる際に、スタッドピンとコイルの相対位置を固定した状態でスタッドピンをコーナー部の内側面に挿入して封着することを特徴とする。
【0018】
本発明は、スタッドピンを挿入方向長さの0%を超え80%以下、好ましくは50%から80%の範囲で包囲した状態で、スタッドピンとコイルの相対位置を固定し、スタッドピンをパネルのコーナー部の内側面に挿入して封着するものである。このようにスタッドピンとコイルの相対位置を固定することで、スタッドピンの封着装置の簡素化も図ることが可能となる。
【0019】
本発明に係るスタッドピンの封着装置は、スタッドピンを保持するピン保持具及びピン保持具を陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に移動させて保持したスタッドピンを挿入する移動機構部を具備するピン挿入手段と、ピン保持具に保持したスタッドピンを加熱する高周波誘導加熱用のコイルとを有し、コイルのスタッドピン挿入側が陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近可能な面取り形状部となっていることを特徴とするものである。また、スタッドピンを挿入方向長さの80%以下、好ましくは50%から80%の範囲で包囲した高周波誘導加熱用のコイルにより加熱する上で、コイルのスタッドピン挿入側は、陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に1mm以内まで接近可能な形状となっていることが好ましい。
【0020】
本発明のスタッドピンの封着装置は、高周波誘導加熱用のコイルのスタッドピン挿入側が陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近可能な面取り形状部になっているので、スタッドピンをコイルの先端から大きく突出させることなく、陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に封着する直前まで、スタッドピンを高温に保持しておくことができ、かつ、スタッドピンをパネルのコーナー部の内側面に封着する際にコイルが陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近したときに、コイルの先端が陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接触するのを回避することができる。
【0021】
本発明に係る陰極線管用ガラスパネルのスタッドピンの封着装置を構成する高周波誘導加熱用のコイルのスタッドピン挿入側の面取り形状部は、スタッドピンの加熱に支障がなければ、必ずしも陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に沿った形状であることを要しない。コイルのスタッドピン挿入側と陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面との距離が1mm以内に接近可能であれば、コイルのスタッドピン挿入側の面取り形状部は曲面であってもよいし、平面であってもよい。
【0022】
本発明に係る陰極線管用ガラスパネルのスタッドピンの封着装置を構成する高周波誘導加熱用のコイルを得るには、従来技術のコイルのスタッドピン挿入側を切削加工して所望の面取り形状部を形成してもよく、新たにスタッドピン挿入側に所望の面取り形状部が形成されたコイルを作製してもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明のスタッドピンの封着方法によれば、ピン挿入手段のピン保持具に保持した該スタッドピンの80%以下を包囲した高周波誘導加熱用のコイルにより加熱し、スタッドピンをコイルとともに移動させて陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に挿入して封着するので、スタッドピンの加熱状態を良好に維持して従来にない高い作業効率で陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面にスタッドピンを封着することが可能となる。
【0024】
本発明の封着装置によれば、高周波誘導加熱用のコイルのスタッドピン挿入側をパネルのコーナー部の内側面に接近可能な面取り形状部としたので、スタッドピンとコイルの位置関係を、スタッドピンを効率的に加熱可能な状態に保ちつつ、スタッドピンの封着が可能で、かつコイルの先端がパネルのコーナー部の内側面に接触することによる傷不良の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のスタッドピンの封着装置の実施形態を、図面を参照して説明する。本発明のスタッドピン封着装置の構成は、特徴部以外は先出の図4に示す構成と基本的に同じ構成である。即ち、先端にスタッドピン13を吸引保持する中空軸状のピン保持具11、ピン保持具11に保持されたスタッドピン13の挿入方向長さの0%を超え80%以下を周りから包囲しスタッドピン13を高周波磁界によって加熱するワークコイル22、ワークコイル22に高周波磁界を発生させる高周波発生手段10、ピン保持具11とワークコイル22と高周波発生手段10とを一体に支持してパネル1のスカート部5の内側面に対して接近離反する方向にスライドベース7上を移動するコイルベース8、コイルベース8を移動させる駆動手段9とからなるピン挿入手段23を備えるものである。
【0026】
本発明のスタッドピンの封着装置は、図1(A)に示すように、ワークコイル22のスタッドピン挿入側の形状がパネル1のコーナー部1aの内側面1bに沿った面取り形状部22cとした。
【0027】
本発明のスタッドピンの封着装置は、スタッドピン13の加熱効率を良くするため、スタッドピン13がワークコイル22の先端から僅かに突出するような位置に来るように、図1(A)、(B)に示すように、ピン保持具11をワークコイル22の先端から中央部に向かって後退させた位置に固定している。
【0028】
次に、図2に基づいて、スタッドピン13をパネル1のコーナー部1aの内側面1bに封着する際の、ワークコイル22、スタッドピン13、パネル1のコーナー部1aの内側面1bの位置関係を説明する。ここで、ピン保持具11によって保持されたスタッドピン13の先端とワークコイル22の先端との距離をa、ワークコイル22の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離をb、ワークコイル22の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離をcとして、スタッドピン13の加熱時、スタッドピン13のパネル1のコーナー部1aの内側面1bへの封着完了時のそれぞれの位置関係を示して以下に説明する。
【0029】
図2(A)は、スタッドピン13の加熱時におけるa、b、cの関係を示し、a≧0、b≧c>0となっている。即ち、スタッドピン13の先端が、パネル1のコーナー部1aの内側面1bに接触しない位置にあることを示している。ここで、ワークコイル22の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離cは、加熱されたスタッドピン13の先端からの放射熱により、パネル1のコーナー部1aの内側面1bに熱的な影響が出ない距離にすることが望ましい。
【0030】
図2(B)は、パネル1のコーナー部1aの内側面1bへのスタッドピン13の封着完了時におけるa、b、cの関係を示し、c<0、a≧b>0となっている。即ち、スタッドピン13の先端はパネル1のコーナー部1aの内側面1bに、ある深さで挿入され、かつワークコイル22の先端がパネル1のコーナー部1aの内側面1bに接触しない位置にあることを示している。
【実施例】
【0031】
本実施例では、挿入方向長さで全長16mmのスタッドピン13を用い、スタッドピン13の全長に対する、ワークコイル22がスタッドピン13を包囲する長さの割合を、−1%、5%、50%、80%及び90%の場合とし、スタッドピン13の封着時におけるスタッドピン13の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離bが一定に保持されるように、それぞれの場合の突出量aにおけるワークコイル22の先端の形状をパネル1の内側面1bにほぼ平行な面を有するように面取り形状部22cを形成している。ここで、前記包囲する割合が−1%とは、スタッドピン13がワークコイル22に内包されず1%の長さ分だけ飛び出している状態を示している。
【0032】
上記のように構成したスタッドピンの封着装置を用い、32インチ型の陰極線管用ガラスパネル1のコーナー部1aの内側面1bにスタッドピン13を封着した。以下にその封着工程を説明する。
【0033】
まず、スタッドピン供給手段(図示省略)からスタッドピン13を供給し、ピン保持具11の先端に吸引して保持する。次いで、スタッドピン封着装置の所定位置にパネル1を所定の姿勢で載置した後、駆動装置9を作動させて、スタッドピン13の先端のワークコイル22の先端からの突出量aに対応した位置にワークコイル22を移動させて高周波発生手段10の作動によりピン保持具11に保持されたスタッドピン13を高周波加熱する。
【0034】
次に、駆動装置9の作動により、ピン保持具11とワークコイル22と高周波発生手段10とを一体に支持するコイルベース8をパネル1のコーナー部1aの内側面1bに向かって接近移動させ、ピン保持具11に保持されたスタッドピン13がパネル1のコーナー部1aの内側面1bの所定位置に到達すると封着が開始される。スタッドピン13の先端がパネル1のコーナー部1aの内側面1bに深さ1mmまで挿入されると、制御装置(図示省略)により駆動装置9の作動が停止し、コイルベース8が移動を停止する。このとき、ピン保持具11及びワークコイル22は、図2(B)に示す位置にある。
【0035】
その後、高周波発生手段10の作動を停止してスタッドピン13の加熱を停止し、さらにピン保持具11によるスタッドピン13の吸引を停止し、コイルベース8をパネル1のコーナー部1aの内側面1bから離反する方向へ移動させ、図2(A)に示す位置まで後退させると、スタッドピン13がパネル1のコーナー部1aの内側面1bに固定されて封着を完了する。このとき、スタッドピン13のパネル1のコーナー部1aの内側面1bへの封着時におけるワークコイル22の先端部からパネル1のコーナー部1aの内側面1bまでの距離bは最小で2mmであった。
【0036】
ワークコイル22の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離bは、上記の数値に限られるものではなく、パネル1の大きさ、スタッドピン13のパネル1のコーナー部1aの内側面1bへのワークコイル22の先端とパネル1のコーナー部1aの内側面1bとの距離cを考慮して適宜設定すればよい。
【0037】
上記の本発明の実施の結果を表1に示す。実施結果においてスタッドピン13の封着評価は、封着完了後のパネル1のコーナー部1aの内側面1bにおけるスタッドピン13の封着部位の品位を、同じ箇所を従来技術によって封着したスタッドピン13の封着部位の品位と比較して行った。
【0038】
スタッドピン13の全長に対してワークコイル22が包囲するスタッドピン13の長さの割合が50%、80%の場合、スタッドピンの封着部位の品位は、従来技術によるものよりも良好であった。前記包囲する長さの割合が5%の場合、従来技術によるものと大差がなく、−1%、90%では従来技術より品位が劣った。このことから、前記包囲する長さの割合が50%〜80%の範囲において従来技術によるものよりも良好な結果が得られるものと考えられる。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のスタッドピンの封着方法及びスタッドピンの封着装置は、陰極線管用パネルのコーナー部の内側面へのスタッドピンの封着以外に、同様な形状を有するガラス物品に金属部品等を封着する工程にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のスタッドピンの封着装置の説明図であって、(A)は要部平面図、(B)は要部縦断面図。
【図2】本発明のスタッドピンの封着方法の説明図であって、(A)はスタッドピンの封着前の状態を表す平面図、(B)はスタッドピン封着時の状態を表す平面図。
【図3】陰極線管用ガラスバルブの模式図。
【図4】従来技術のスタッドピンの封着装置の説明図であって、(A)は要部縦断面図、(B)は要部平面図。
【符号の説明】
【0042】
1 パネル
2 ファンネル
3 ネック
4 フェース部
5 スカート部
6 ブレンドR部
7 スライドベース
8 コイルベース
9 駆動手段
10 高周波加熱手段
11 ピン保持具
12、22 ワークコイル
22c 面取り形状部
13 スタッドピン
23 ピン挿入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン挿入手段のピン保持具にスタッドピンを保持し、該スタッドピンを挿入方向長さの80%以下を包囲した高周波誘導加熱用のコイルにより加熱し、該スタッドピンをコイルとともに移動させて陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に挿入して封着するスタッドピンの封着方法。
【請求項2】
スタッドピンを保持したピン挿入手段を陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近させる際に、スタッドピンとコイルの相対位置を固定した状態でスタッドピンを陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に挿入して封着する請求項1に記載のスタッドピンの封着方法。
【請求項3】
スタッドピンを保持するピン保持具及び該ピン保持具を陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に移動させて保持したスタッドピンを挿入する移動機構部を具備するピン挿入手段と、該ピン保持具に保持したスタッドピンを加熱する高周波誘導加熱用のコイルとを有し、該コイルのスタッドピン挿入側が陰極線管用ガラスパネルのコーナー部の内側面に接近可能な面取り形状となっていることを特徴とするスタッドピンの封着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−286467(P2006−286467A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106420(P2005−106420)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】