説明

スタングレネード

【課題】簡単な構成で確実に目的の場所で爆発薬を燃焼させるようにしたスタングレネードを提供する。
【解決手段】爆発薬を収容する円筒状ボディ3に取付ける信管4に軸部材18を設け、その軸部材18に撃鉄の上方を覆うように配置される安全レバー7の一端7aを回動自在で、且つ、撃鉄の作動によって離脱しないように連結し、投擲直後に撃鉄の作動により安全レバー7が信管4から離脱しないために、スタングレネード1が床や地面を転がることがないから、目的の場所で爆発薬2を燃焼させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暴徒の鎮圧、犯罪行為あるいはテロ行為等の制圧に使用されるスタングレネードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スタングレネードは、爆発薬を収容する円筒状ボディに取付ける信管に、爆発薬を点火させる雷管と、その雷管に衝撃を加える撃鉄と、撃鉄の作動を規制する安全レバーとを備え、規制が解除された撃鉄が雷管に衝突することで、雷管の発火により一定時間後に爆発薬を燃焼させ、円筒状ボディの表面に設けた複数の光放出孔から爆発音や閃光を放出させるようになっている。また、特許文献1〜3に記載のように安全レバー(安全クリップ)は、撃鉄の作動によって信管(点火構成部やヘッド部など)から離脱することが知られている。
【特許文献1】特開2002−107097号公報
【特許文献2】特表2001−503845号公報
【特許文献3】特開平9−196600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスタングレネードでは、撃鉄の作動の規制を解除した後、一定時間後に爆発薬が着火燃焼するようになっている。ところが、目的の場所の床や地面が傾いていると、特許文献1では、円筒状ボディにより前記一定時間中にスタングレネードが転がってしまい、目的の場所で爆発薬による爆発音や閃光を放出させることができない。そこで、特許文献2のように、円筒状ボディに多角形の端部材を備えたことで、スタングレネードを転がりにくくすることが提案されているが、加工コストが嵩む上にスタングレネード全体が重くなるおそれがあった。また、特許文献3のように、鋼線により安全クリップをヘッド部に固定することで抵抗を生じさせ、スタングレネードを転がりにくくすることが提案されているが、目的の場所が狭い空間であったり突起物がある空間に投擲しなければならない場合には、鋼線が引っかかり、スタングレネードを目的の場所に到達させることができないおそれがあった。
そこで本発明の課題は、上記問題点を解決するもので、簡単な構成で確実に目的の場所で爆発薬を燃焼させるようにしたスタングレネードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、爆発薬を収容する円筒状ボディに取付ける信管に、爆発薬に着火する雷管と、その雷管に衝撃を加える撃鉄と、撃鉄の作動を規制する安全レバーとを備えて成るスタングレネードにおいて、信管に設けた軸部材に、撃鉄の上方を覆うように配置される安全レバーの一端を回動自在で、且つ、撃鉄の作動により離脱しないように連結し、安全レバーの他端側が軸部材を支点に揺動することで、撃鉄が作動して雷管に衝突するようにしたことを特徴とする。具体的には、安全レバーの一端側の両端には取付け部が形成され、各取付け部に設けた孔に信管に設けた軸部材を挿入して、安全レバーを信管に回動自在に連結したことを特徴とする。更に、信管に、安全レバーの他端側を撃鉄の作動により揺動されて円筒状ボディの表面から遠ざかった位置に保持するようにした保持手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、投擲直後に撃鉄の作動により安全レバーが信管から離脱しないために、スタングレネードが床や地面を転がろうとしても数回転で止まることから、確実に目的の場所で爆発薬を燃焼させ爆発音や閃光を放出させることができる。また、従来の円筒状ボディに多角形のものを備えるものに比べて、スタングレネード全体が重くならないので、目的の場所に容易に投擲できる。更に、安全レバーの一端が信管に連結されているので、目的の場所が狭い空間であったり突起部がある空間に投擲した場合でも、確実に目的の場所に到達させることができる。また、信管に、安全レバーの他端側を撃鉄の作動により揺動されて円筒状ボディの表面から遠ざかった位置に保持するようにした保持手段を備えたので、床や地面に着地したスタングレネードを目的の場所で直ちに止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1に示すスタングレネード1は、爆発薬2を収容する円筒状ボディ3に取付ける信管4に、爆発薬2に着火する雷管5と、その雷管5に衝撃を加える撃鉄6と、撃鉄6の作動を規制する安全レバー7とを備えて成る。前記円筒状ボディ3は、アルミニウム材等から成る円筒状のボディ本体8の下側開口部をキャップ部材9で塞いだものである。ボディ本体8の表面には複数の光放出孔8aが設けられ、その複数の孔8aを塞ぐようにボディ本体8の表面は、ポリエステル等の材質で熱収縮性を有する防湿フィルム10によって覆われている。円筒状ボディ3に爆発薬2(本実施形態では爆音薬)が収容されている。ボディ本体8の上部に形成したネジ部8bに信管4の点火構成部11を螺合し、円筒状ボディ3の上側開口部を塞いでいる。尚、本実施形態では、円筒状ボディ3はボディ本体8の下方をキャップ部材9で塞いだものとしたが、ステンレス製の平織り金網を底面を有する円筒体に成型したものであってもよい。
【0007】
前記信管4は、点火構成部11にヘッド部12が組付けられたものである。ヘッド部12の後端側に設けた第1軸部材13にコイルバネ14が取り付けられている。コイルバネ14の一端はヘッド部12に形成した壁部12aに当接し、他端は撃針6aを備えた撃鉄6に連結している。点火構成部11には衝撃を加えることで発火する雷管5が備えられている。この雷管5の上面に第1軸部材13を中心に回転する撃鉄6が衝突するように前記コイルバネ14の他端側の長さは調整されている。雷管5の下方には延期薬15が配置されている。前記撃鉄6の上方を覆うように金属製の板部材を略L字状に折り曲げた安全レバー7が配置されている。安全レバー7の一端側7aの両端には取付け部16が形成されている。各取付け部16a,16bに設けた孔17にヘッド部12の前端部に設けた第2軸部材18を挿入して、安全レバー7をヘッド部12(信管4)に回動自在で、且つ、撃鉄6の作動により離脱しないように連結されている。また、安全レバー7の各取付け部16a,16bには、安全レバー7の揺動を規制する規制孔19が設けられている。その孔19とヘッド部12に設けた貫通孔12bとの孔位置を一致させた状態でリング部材20を備えた安全ピン21を挿入することで、撃鉄6の作動を規制した安全レバー7の揺動を規制するようになっている。尚、本実施形態では信管4を点火構成部11とヘッド部12とから構成したが、ヘッド部12に雷管5と延期薬15などを備えたものであってもよい。
【0008】
次に、上記構成のスタングレネード1の作用について説明する。投擲者により安全レバー7と円筒状ボディ3を把持した状態で安全ピン21が抜き取られ、目的の場所に向かって投擲されると、安全レバー7による撃鉄6の作動の規制が解除され、撃鉄6の作動によって安全レバー7の他端側7bが円筒状ボディ3の表面に近い位置から遠ざかった位置へ第2軸部材18を支点に揺動すると共に、撃鉄6が雷管5に衝撃が加える。雷管5の発火により延期薬15に着火され延期薬15が一定時間燃焼する。延期薬15の近傍に爆発薬2が配置されているので、延期薬15が燃焼した後、爆発薬2に着火され爆発薬2が燃焼することで円筒状ボディ3の表面を覆っている防湿フィルム10を破り複数の光放出孔8aから爆発音や閃光が放出されるようになっている。この爆発音や閃光によって暴徒の鎮圧、犯罪行為あるいはテロ行為等を制圧することが可能となる。前記延期薬15が燃焼している間に、目的の場所の床や地面に着地したスタングレネード1は転がろうとするが、安全レバー7が図3(a)の状態で着地した場合にはスタングレネード1は数回転で止まり、図3(b)の場合には直ちに止まることになる。また、信管4に、安全レバー7の他端側7bを円筒状ボディ3の表面から遠ざかった位置に保持するようにした保持手段22を備えることで、目的の場所の床や地面に着地したスタングレネード1を直ちに止めることが確実に行える。前記保持手段22は、図4(a)に示すように、第2軸部材18に取り付けたコイルバネである。そのコイルバネ22の一端22aをヘッド部12に係合させ、他端22bを安全レバー7の一端側7aに当接させてある。よって、コイルバネ22の付勢力で安全レバー7の他端側7bを円筒状ボディ3の表面から遠ざかった位置で保持することができる。また、前記保持手段22を、図4(b)に示すように、信管4のヘッド部12に設けた係合部22Aとし、その係合部22Aを、他端側7bが円筒状ボディ3の表面から遠ざかった位置の安全レバー7の一端側7aに係合させることで、安全レバー7を保持するようにしてもよい。
【0009】
従って、投擲直後に撃鉄6の作動により安全レバー7が信管4(ヘッド部12)から離脱しないために、スタングレネード1が床や地面を転がろうとしても、安全レバー7が抵抗となり数回転で止まることから、確実に目的の場所で爆発薬2を燃焼させ爆発音や閃光を放出させることが可能となる。また、従来の円筒状ボディに多角形のものを備えるものに比べて、スタングレネード1全体が重くならないので、目的の場所に容易に投擲させることが可能となる。更に、安全レバー7の一端側7aが信管4(ヘッド部12)に連結されているので、目的の場所が狭い空間であったり突起部がある空間に投擲した場合でも、確実に目的の場所に到達させることが可能となる。また、使用したスタングレネード1を回収し、再び爆発薬2を収容した円筒状ボディ3に信管4を取付けることで再投擲の準備が速やかに行える。更に、信管4に、安全レバー7の他端側7bを円筒状ボディ3の表面から遠ざかった位置に保持するようにしたコイルバネ22を備えることで、目的の場所の床や地面に着地したスタングレネード1を直ちに止めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のスタングレネードであって、フィルムの一部を省略した図である。
【図2】スタングレネードの縦断面図である。
【図3】目的の場所に着地した状態を示す図である。
【図4】信管に備えた保持手段による安全レバーの保持状態を示す図である。
【符号の説明】
【0011】
1 スタングレネード
2 爆発薬
3 円筒状ボディ
4 信管
5 雷管
6 撃鉄
7 安全レバー
7a 一端
7b 他端
16 取付け部
17 孔
18 第2軸部材
22 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
爆発薬を収容する円筒状ボディに取付ける信管に、爆発薬を点火させる雷管と、その雷管に衝撃を加える撃鉄と、撃鉄の作動を規制する安全レバーとを備えて成るスタングレネードにおいて、信管に設けた軸部材に、撃鉄の上方を覆うように配置される安全レバーの一端を回動自在で、且つ、撃鉄の作動によって離脱しないように連結し、安全レバーの他端側が軸部材を支点に揺動することで、撃鉄が作動して雷管に衝突するようにしたことを特徴とするスタングレネード。
【請求項2】
安全レバーの一端側の両端には取付け部が形成され、各取付け部に設けた孔に信管に設けた軸部材を挿入して、安全レバーを信管に回動自在に連結したことを特徴とする請求項1記載のスタングレネード。
【請求項3】
信管に、安全レバーの他端側を撃鉄の作動により揺動されて円筒状ボディの表面から遠ざかった位置に保持するようにした保持手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のスタングレネード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−292142(P2008−292142A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110805(P2008−110805)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)