説明

スタンプ装置

【課題】 個人情報が記載されている部分に押印することによって個人情報の記載を容易に隠すことができるスタンプ装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、下面を印面7aとした方形状のゴム印字体7と、該ゴム印字体7の上面に積層されインクが浸透されたインク吸蔵マット8と、該ゴム印字体7及びインク吸蔵マット8を有する印判本体2とを備え、印面7aを転写対象に押しつけることにより印面7aのパターン形状を転写するスタンプ装置1において、印面7aが、図柄絵柄文字や図柄又は絵柄或いは直線や曲線が間隙の面積を小さくするように密集して配置されたパターン形状を備えるものであり、紙葉等に記載された文字上に押印することにより記載された文字を隠すことができ、個人情報の保護が図れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉等に記載された個人情報等を見え難くするための浸透印等のスタンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔性のゴム印字体にインキを内蔵させることにより、押印の都度スタンプ台を使用することなく連続押印可能な印判である浸透印等のスタンプ装置は、現在の生活又はビジネスにおいて欠かせないものとなっており、この浸透印等のスタンプ装置に関して多くの提案がなされている。
【0003】
例えば、特開2005−96154号公報(特許文献1)では、多孔性のゴム印字体である多孔質印字体を枠や短筒体の内面に圧入し、該多孔質印字体の弾性を利用して固定する浸透印において、押印時にムラの無い濃く鮮明な印影を得ることができる浸透印の提案がなされている。
【特許文献1】特開2005−96154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、個人情報保護法の施行等によって個人情報の保護が注目されており、ビジネスにおいても個人情報の保護が重要な課題となっている。一般的には、個人情報が記載された紙葉等は、シュレッダーにかけて処分することにより個人情報の保護を行なうが、例えば、個人情報が記載されている部分以外の複写が必要な時等には、個人情報が記載されている部分を修正テープやペン等で隠した後に複写するという手間をかけていた。
【0005】
本発明は、このような手間を解決するために成されたものであり、個人情報が記載されている部分に押印することによって個人情報の記載を容易に隠すことができるスタンプ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一面を印面とした印字体を備え、印面を転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写するスタンプ装置において、該印面は、文字や図柄又は絵柄或いは直線や曲線が間隙の面積を小さくするように密集して配置されたパターン形状を備えることを特徴とするものである。
【0007】
又、前記印面は、不規則に形成された間隙を有するパターン形状を備えるものである。
【0008】
更に、前記印面は、様々な太さの線を用いて形成されたパターン形状を備えるものである。
【0009】
又、前記印面は、大小様々な大きさの文字が間隙を埋めるように不規則に散りばめて配置されたパターン形状を備えることを特徴とするものである。
【0010】
そして、前記印面は、図柄の中に文字を埋め込むことによって形成されたパターン形状を備えることもある。
【0011】
又、本発明のスタンプ装置は、下面を印面とした方形状の前記印字体と、該印字体の上面に積層されインクが浸透されたインク吸蔵マットと、該印字体及びインク吸蔵マットを有する印判本体とを備え、印面を転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写する浸透印タイプであることを特徴とする。
【0012】
更に、一面を印面とした方形状の前記印字体と、該印字体の印面にインクを付着させるインクパッドを備え、前記印字体を回転させて転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写するタイプのスタンプ装置とすることもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印面のパターン形状を図柄及び絵柄が密集して配置された形状とすることにより、個人情報の保護が図れると共に業務効率の改善も図れるスタンプ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の形態のスタンプ装置1は、所定の一面を印面7aとする長方形状のゴム印字体7と、該ゴム印字体7における印面7aの裏面に積層されインクが浸透されたインク吸蔵マット8と、該ゴム印字体7及びインク吸蔵マット8を有する印判本体2とを備え、印面7aを転写対象に押しつけることにより印面7aのパターン形状を転写するものである。
【0015】
又、印面7aは、大小様々な大きさの大文字及び小文字のアルファベットが間隙を埋めるように不規則に散りばめて配置され、不規則に形成された間隙を有するパターン形状を備えるものであり、紙葉等に記載された文字上に押印することにより記載された文字を隠すことができ、個人情報の保護が図れるものである。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。本発明のスタンプ装置1は、図1に示すように、所定の一面(下面)を印面7aとする長方形状のゴム印字体7と、ゴム印字体7における印面7aの裏面(上面)に積層されインクが浸透されたインク吸蔵マット8と、ゴム印字体7及びインク吸蔵マット8を有する印判本体2と、を備える浸透印タイプのスタンプ装置1である。この印判本体2は、鞘体3と、鞘体3に可動に収納され下端近傍にインク吸蔵マット8及びゴム印字体7を保持する印字部保持部材4と、鞘体3の上方に配置され印字部保持部材4を下方に押し込むハンドル部材5とを有する。そして、スタンプ装置1は、鞘体3の下端を転写対象に接触させた状態でハンドル部材5を押し下げると、印字部保持部材4がハンドル部材5によって押し下げられて鞘体3の内部を降下し、印面7aが転写対象と接触して印面7aのパターン形状を転写対象に転写するものである。
【0017】
又、鞘体3と印字部保持部材4の間には弾性体6が配置され、印字部保持部材4を鞘体3の内部において上方に付勢しており、ハンドル部材5に力が加わっていない状態においては、弾性体6の弾性力により印字部保持部材4は鞘体3の内部に収納されているものである。更に、印字部保持部材4は、インク供給穴4aを備えており、このインク供給穴4aからインクを注入することによりインク吸蔵マット8にインクを供給することができるものである。
【0018】
ゴム印字体7は、連続気孔を有する多孔質のゴム材で形成された方形状の板であり、下面に印面7aのパターン形状を形成する所定のパターン形成突起を備えるものである。又、ゴム印字体7は、パターン形成突起が印字部保持部材4の下端から僅かに下方に突出するように印字部保持部材4に保持され、印面保持枠9によって印字部保持部材4との間で外周縁近傍を挟持されている。
【0019】
そして、このゴム印字体7の印面7aは、図2(a)に示すように、縦13mm横42mmの長方形状の領域内に、6ポイント(point)の大文字アルファベットであって、所定の傾きを有したものと傾きが無いものとが縦横に均等な間隔で密集して配置されたパターン形状を備えるものである。尚、1ポイント(point)は一般的に縦横の長さが1/72インチとされており、1インチ(in)を25mmとすると、1ポイントは縦横の長さが0.35mmとなり、本実施例における印面7aを形成するアルファベットの縦横の長さは2.1mmとなる。
【0020】
又、この印面7aのパターン形状は、6ポイントという小さなポイントの大文字アルファベットを密集して配置させることにより形成されているため、文字間の間隙が小さく形成されているものである。尚、6ポイントのアルファベットを用いているが、この6ポイントに限定されるものではない。
【0021】
インク吸蔵マット8は、ゴム印字体7よりも硬質で浸透性の高い熱可塑性樹脂によって形成された方形状の板であって、インクが浸透されており、スタンプ装置1の使用に伴ってゴム印字体7にインクを供給すると共に、押印時に柔軟なゴム印字体7を平面で押しつける基板の役目を果たすものである。
【0022】
そして、本実施例におけるスタンプ装置1は、図2(b)に示すような郵便番号や住所等の個人情報が記載されている箇所に押印することによって印面7aのパターン形状を転写すると、図2(c)に示すように、押印された箇所が印面7aのパターン形状によって隠され、記載されていた個人情報等を読み取り不可能或いは読み取り難くすることができるものである。
【0023】
又、本実施例のスタンプ装置1は、図2(a)に示したように、6ポイントの大文字アルファベットが縦横に均等な間隔で密集して配置されたパターン形状を備えるため、文字間の間隙の面積を小さく保つことができ、よって、18ポイント以下つまり縦横が6.3mm以下の比較的小さな文字を読み取り難くすることができるものである。
【0024】
これにより、従来のように、転写対象上の個人情報等が記載された箇所を修正テープやペン等で隠す等の作業をしなくとも、転写対象上の個人情報等が記載された箇所に押印するだけで個人情報を隠すことができ、個人情報の保護が図れると共に業務効率の改善を図ることもできる。
【0025】
尚、文字等を消すために印面7aを平面にして全面にインクを乗せることも考えられるが、この場合、印面7aを紙葉等に押しつけたとき、印面7aが変形しにくくなるため、均一な転写をすることができないという問題が発生する。又、転写対象にプリントされている文字だけインクをはじいてしまい、逆に文字が浮き上がって見えてしまうという問題点もある。よって、本実施例では小さな面積の間隙を作ることによってインクをはじく部分を少なくし、隠したい文字を見え難くしているものである。
【0026】
次に本発明における他の実施例について述べる。本実施例に係るスタンプ装置1におけるゴム印字体7の印面7aは、図3(a)に示すように、縦17mm横52mmの長方形状の領域内に、大小様々なポイントとされ所定の傾きを有した或いは傾きがない大文字及び小文字のアルファベットが密集して配置されたパターン形状を備え、その他の形状は上述した実施例におけるスタンプ装置1と同一とされているものである。
【0027】
又、印面7aのパターン形状は、10ポイント(縦横3.5mm)から22ポイント(縦横7.7mm)の大きさとされた大小様々なアルファベットが間隙を埋めるように不規則に散りばめて配置されているものであり、大小様々な大きさのアルファベットが不規則に散りばめられることによって、不規則な間隙を備えているものである。尚、印面7aを形成するアルファベットの大きさは10ポイントから22ポイントまでのものを用いているが、このポイントに限定されるものではない。
【0028】
そして、本実施例におけるスタンプ装置1は、図3(b)に示すような個人情報の記載の上に押印することによってパターン形状を転写すると、図3(c)に示すように、パターン形状が個人情報の記載を隠すため、個人情報を読み難くすることができるものである。
【0029】
又、大小様々な大きさの大文字及び小文字のアルファベットを不規則に散りばめて配置することによって不規則な間隙を形成することにより、隠したい個人情報の所定の文字が丁度間隙に位置してしまった場合でも、その文字の前後は必ず隠されることになるため、個人情報を読み取ることができず、個人情報を隠す効果を高めることができるものである。
【0030】
又、大小様々なポイントのアルファベットを印面7aに用いることにより、大きなポイントのアルファベットは文字を形成する線が太いため、図3(b)に示したような16pt(縦横5.6mm)の文字であっても32pt(縦横11mm)の大きな文字であっても隠すことができ、上述した6ポイントのアルファベットを用いる場合よりも比較的大きなポイントの文字を隠すことができるものである。尚、本実施例におけるスタンプ装置1を用いることによって36pt(縦横13mm)以下の比較的大きな文字を消すことができる。よって、葉書の宛名書等のポイント数が大きな文字でも隠すことができるため、上述した実施例と同様に容易に個人情報を隠すことができ、業務効率の改善を図ることができる。
【0031】
尚、上述した実施例においては、印面7aのパターン形状としてアルファベットを用いているが、印面7aが間隙の面積が小さいパターン形状を備えていれば文字を隠すことができるため、アルファベット以外の文字として、数字、漢字、ロシア語、アラビア語等を用いても同様の効果を得ることができる。又、印面7aが様々な太さの線によって形成された不規則な間隙を有するパターン形状を備えることにより、小さな文字から大きな文字まで隠すことができる。
【0032】
又、印面7aは、文字が密集して配置されたパターン形状に限らず、菱形、花模様等の絵柄や図柄が密集して配置されたパターン形状とする場合や、様々な太さの直線や波形線を交差させることにより間隙の面積を小さくしたパターン形状とする場合もある。又、QRコードと文字を組み合わせたり、図柄の中に文字を埋め込むことによってパターン形状を形成することもできる。尚、ゴム印字体7を長方形状としているが、この形状に限定されるものではない。
【0033】
更に、上述したスタンプ装置1は、浸透印タイプのスタンプ装置であったが、ゴム印字体の印面をインクパッドと当接させることにより印面にインクを補充するタイプのスタンプ装置とすることもある。以下に、ゴム印字体の印面をインクパッドと当接させるタイプのスタンプ装置について述べる。
【0034】
図4は、上述した実施例とは異なる外形とされた回動式のスタンプ装置1の断面図である。このスタンプ装置1は、ゴム印字体7を備えた印字部保持部材4と、交換可能なインクパッド12と、印判本体2と、から構成される。又、印判本体2は、印字部保持部材4を回動可能に収納する鞘体3と、ハンドル部材5と、から構成される。
【0035】
この印字部保持部材4は、回動可能及び摺動可能な状態で鞘体3の内部に収納されると共に、鞘体3を介してハンドル部材5の内側に軸着されている。又、鞘体3は、弾性体6により下方に付勢された状態でハンドル部材5の内側に配置されている。そして、このスタンプ装置1は、ハンドル部材5を押し下げると、鞘体3に対してハンドル部材5が下方に移動し、印字部保持部材4も半転(180度回転)して印面7aが下方を向き、鞘体3内を下方に摺動して押印が可能となる。又、ハンドル部材5を開放すると、弾性体6に付勢されてハンドル部材5が上昇し、印字部保持部材4も元の位置に復帰する。尚、このスタンプ装置では、元の位置に復帰した状態において、ゴム印字体7の印面7aとインクパッド12とが当接している。
【0036】
更に、インクパッドを用いたタイプのスタンプ装置1として以下の構成とすることもできる。図5は、更に異なる形状とされたスタンプ装置1の閉状態時における縦断面図であり、図6は、このスタンプ装置1の開状態時における縦断面図である。このスタンプ装置1は、図5に示すように、ゴム印字体7を収納した閉状態から図6に示した開状態として使用するものである。
【0037】
又、このスタンプ装置1は、ゴム印字体7を備えた印字部保持部材4と、交換可能とされたインクパッド12と、ハンドル部材5と、摺動部材14と、操作部材15と、から構成される。そして、スタンプ装置1は、図5に示したように、印字部保持部材4及びインクパッド12が、摺動部材14に軸着された状態でハンドル部材5内に収納されており、摺動部材14と連結された操作部材15を下方に摺動させると、図6に示したように、印字部保持部材4及びインクパッド12がハンドル部材5から突出して回動(略90度)し、押印が可能となる回動式のスタンプ装置1である。尚、このスタンプ装置1では、閉状態時において、ゴム印字体7の印面7aとインクパッド12とが当接している。
【0038】
尚、本発明は、上述した実施例等に記載されたスタンプ装置1の形状の限定されるものでなく、様々な形状のスタンプ装置において転用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に係るスタンプ装置の断面図。
【図2】本発明の実施例に係るスタンプ装置の印面のパターン形状に関する参考図。
【図3】本発明の他の実施例に係るスタンプ装置の印面のパターン形状に関する参考図。
【図4】本発明の形状が異なるスタンプ装置の断面図。
【図5】本発明の更に形状が異なるスタンプ装置の閉状態時の縦断面図。
【図6】本発明の更に形状が異なるスタンプ装置の開状態時の縦断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 スタンプ装置 2 印判本体
3 鞘体 4 印字部保持部材
4a インク供給穴
5 ハンドル部材 6 弾性体
7 ゴム印字体 7a 印面
8 インク吸蔵マット
9 印面保持枠 12 インクパッド
14 摺動部材 15 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を印面とした印字体を備え、印面を転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写するスタンプ装置において、
該印面は、文字や図柄又は絵柄或いは直線や曲線が間隙の面積を小さくするように密集して配置されたパターン形状を備えることを特徴とするスタンプ装置。
【請求項2】
前記印面は、不規則に形成された間隙を有するパターン形状を備えることを特徴とする請求項1に記載のスタンプ装置。
【請求項3】
前記印面は、様々な太さの線を用いて形成されたパターン形状を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスタンプ装置。
【請求項4】
前記印面は、大小様々な大きさの文字が間隙を埋めるように不規則に散りばめて配置されたパターン形状を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスタンプ装置。
【請求項5】
前記印面は、図柄の中に文字を埋め込むことによって形成されたパターン形状を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスタンプ装置。
【請求項6】
下面を印面とした方形状の前記印字体と、該印字体の上面に積層されインクが浸透されたインク吸蔵マットと、該印字体及びインク吸蔵マットを有する印判本体とを備え、印面を転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写する浸透印タイプであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のスタンプ装置。
【請求項7】
一面を印面とした方形状の前記印字体と、該印字体の印面にインクを付着させるインクパッドを備え、前記印字体を回転させて転写対象に押しつけることにより印面のパターン形状を転写するタイプであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか記載のスタンプ装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−255515(P2009−255515A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311132(P2008−311132)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(301033282)プラスステーショナリー株式会社 (24)