説明

スターリング機関

【課題】小ロット生産の場合であってもコストダウンを図ることができるスターリング機関を提供すること。
【解決手段】スターリング機関本体としてのスターリング冷凍機本体2のケーシング5内に設けられたピストン組立体10の往復運動を機械的に制御する第一の板バネ部材12及びディスプレイサー組立体11の往復運動を機械的に制御する第二の板バネ部材13と、前記スターリング冷凍機本体2に取り付けられる振動吸収ユニット4をバランスウエイト38と共に構成する第三の板バネ部材37を、それぞれ共通の板バネ29を用いて構成したことで、前記板バネ29のみ設計すればよく、また、前記板バネ29のための金型のみ設計及び製作すればよいばかりでなく、前記板バネ29を多数製造することで、この板バネ29の単価を下げることができ、これによって、スターリング機関としてのスターリング冷凍機1を安価に構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリング機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のスターリング機関としては、ケーシング内にピストン及びディスプレイサーを設け、前記ピストンに第一の板バネを接続すると共に、ディスプレイサーの動作を制御するためのロッドに第二の板バネを接続したスターリングサイクル機関が知られている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このスターリングサイクル機関のケーシングには、板バネとバランスウエイトを有して構成される振動吸収ユニットが取り付けられている。
【特許文献1】特許第3769751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなスターリング機関においては、前記ピストンとディスプレイサー組立体の質量が異なる等の理由により、多くの場合、前記第一の板バネと第二の板バネではバネ定数が異なる。また、前記振動吸収ユニットで用いられる前記板バネのバネ定数は、通常、前記第一の板バネのバネ定数及び第二の板バネのバネ定数よりも大きくなる。このため、従来のスターリング機関では、前記第一の板バネと第二の板バネを個別に設計する必要があると共に、前記各板バネを製造するための金型も個別に製作する必要があるので、生産台数が多くならないと前記第一及び第二の板バネの数がまとめられず、小ロット生産の場合、前記第一及び第二の板バネ一枚当たりの単価を下げることが難しいという問題があった。そして、前記振動吸収ユニットを用いる場合、更に前記板バネの設計及び金型の製造を追加しなければならず、コストアップを招くという問題があった。
【0004】
本発明は以上の問題点を解決し、小ロット生産の場合であってもコストダウンを図ることができるスターリング機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載のスターリング機関は、ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体を有するスターリング機関において、前記各板バネ部材を、共通の板バネを用いて構成したものである。
【0006】
本発明の請求項2に記載のスターリング機関は、ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体と、第三の板バネ部材とバランスウエイトとを有して構成される振動吸収ユニットとを有するスターリング機関において、前記各板バネ部材のうち少なくとも二つの板バネ部材を、共通の板バネを用いて構成したものである。
【0007】
本発明の請求項3に記載のスターリング機関は、ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体と、第三の板バネ部材とバランスウエイトとを有して構成される振動吸収ユニットとを有するスターリング機関において、前記各板バネ部材を、全て共通の板バネを用いて構成したものである。
【0008】
更に、本発明の請求項4に記載のスターリング機関は、請求項1乃至3において、前記各板バネ部材のバネ定数を、前記板バネ単体を適宜積層することで調整したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1に記載のスターリング機関は、以上のように構成することにより、前記ピストン組立体の往復運動を機械的に制御するための前記第一の板バネ部材と、前記ディスプレイサー組立体の往復運動を機械的に制御するための前記第二の板バネ部材とが、共通の前記板バネによって構成されるので、前記第一及び第二の板バネ部材を個別に設計する必要がなく、単一の前記板バネのみ設計すればよく、また、前記第一及び第二の板バネ部材を製造するための金型を個別に設計及び製作する必要もなく、単一の前記板バネのための金型のみ設計及び製作すればよいばかりでなく、専用の板バネを少数ずつ製造するのではなく、共通の前記板バネを多数製造することで、この板バネの単価を下げることができ、これによって、スターリング機関全体を安価に構成することができる。
【0010】
また、本発明の請求項2に記載のスターリング機関は、以上のように構成することにより、前記ピストン組立体の往復運動を機械的に制御するための前記第一の板バネ部材と、前記ディスプレイサー組立体の往復運動を機械的に制御するための前記第二の板バネ部材と、前記振動吸収ユニットを構成する第三の板バネ部材のうち、少なくとも二つの板バネ部材が、共通の前記板バネによって構成されるので、前記各板バネ部材のうちの少なくとも二つの板バネ部材を個別に設計する必要がなく、また、前記各板バネ部材のうちの少なくとも二つの板バネ部材を製造するための金型を個別に設計及び製作する必要もないばかりでなく、専用の板バネを少数ずつ製造するのではなく、共通の前記板バネを多数製造することで、この板バネの単価を下げることができ、これによって、スターリング機関全体を安価に構成することができる。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載のスターリング機関は、以上のように構成することにより、前記第一、第二、第三の板バネ部材を全て同一の板バネを用いて構成することができるので、前記各板バネ部材を個別に設計する必要がなく、また、前記各板バネ部材を製造するための金型を個別に設計及び製作する必要もなく、専用の板バネを少数ずつ製造するのではなく、共通の前記板バネを多数製造することで、この板バネの単価を大きく下げることができ、これによって、スターリング機関全体を更に安価に構成することができる。
【0012】
更に、前記各板バネ部材において必要なバネ定数を、単一の前記板バネを適宜積層することで調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図1及び図2に基づいて説明する。1はスターリング機関としてのフリーピストン型スターリング冷凍機である。このスターリング冷凍機1は、スターリング機関本体としてのスターリング冷凍機本体2と、このスターリング冷凍機本体2に取り付けられた取付部3と、この取付部3に取り付けられた振動吸収ユニット4とを有して構成されている。
【0014】
前記スターリング冷凍機本体2は、基端ケーシング部5A、胴ケーシング部5B及び図示しない肩ケーシング部と円筒ケーシング部等から構成されるケーシング5を有する。そして、前記基端ケーシング部5Aの外周部近傍には、前記胴ケーシング部5Bの基端側が挿入される環状の溝部6が形成されていると共に、前記基端ケーシング部5Aの中央には雌螺子7が形成されている。なお、この雌螺子7は、前記ケーシング5の中心軸とほぼ一致するように形成されている。また、前記胴ケーシング部5Bは、その基端側が前記溝部6に挿入された状態で、前記基端ケーシング部5Aに熔接等によって固定されている。そして、前記ケーシング5の内部には、シリンダ8と、駆動装置9と、ピストン組立体10と、ディスプレイサー組立体11と、第一の板バネ部材12と、第二の板バネ部材13と、これら第一及び第二の板バネ部材12,13を取り付けるための腕部材14等が収容されている。
【0015】
前記シリンダ8は、アルミニウム等の金属を用いてダイカスト等の鋳造を行った後、内外周などを切削加工することによって形成されていると共に、その基端側には、フランジ状のマウント15が前記シリンダ8と一体に形成されている。そして、前記マウント15には、複数の貫通孔16と複数の第一雌螺子17と、図示しない複数の第二雌螺子が形成されている。なお、前記貫通孔16同士はそれぞれ等角度間隔で形成されており、前記第一雌螺子17同士もそれぞれ等角度間隔で形成されており、前記第二雌螺子同士もそれぞれ等角度間隔で形成されている。そして、前記シリンダ8は、前記貫通孔16に通されたボルト18を図示しない前記肩部ケーシング部の螺子孔に螺合させて締め付けることで、前記ケーシング5に対して固定されている。なお、前記シリンダ8は、その中心軸が前記ケーシング5の中心軸と一致するように、前記ケーシング5の内部に固定されている。また、前記シリンダ8の先端は、図示しない前記円筒ケーシング部の内部まで延びている。
【0016】
前記駆動装置9は、後述する取付部25によって後述するピストン24の基端側に取り付けられた永久磁石19と、この永久磁石19の外周に近接して設けられた環状の電磁コイル20と電磁コア21を有する固定子22と、前記永久磁石19の内側に設けられた図示しない導磁部とで構成されている。そして、前記駆動装置9は、前記電磁コア21の一端が前記マウント15の基端側に当接するように構成されている。また、前記電磁コア21の他端には固定リング23が当接している。そして、この固定リング23と前記マウント15とで前記電磁コア21を挟持し、図示しないビスを図示しない前記第二雌螺子に螺合させて締め付けることによって、前記電磁コア21、ひいては前記固定子22全体が前記ケーシング5の内部で前記マウント15に固定される。なお、前記駆動装置9の固定子22は、その中心軸が前記ケーシング5の中心軸と一致するように、前記ケーシング5の内部に固定されている。
【0017】
前記ピストン組立体10は、ピストン24と、このピストン24の基端側にピストン24に対して同軸状に取り付けられた取付部25と、この取付部25に固定された前記永久磁石19とを有して構成されている。即ち、前記ピストン組立体10の一部が前記駆動装置9の可動子となる。そして、前記ピストン24と永久磁石19と取付部25は、それぞれ円筒状に形成されていると共に、前記永久磁石19と取付部25の外径がほぼ等しく形成されており、前記ピストン24の外径が前記永久磁石19と取付部25の外径よりも小さく形成されている。また、前記ピストン組立体10の中央には、図示しない貫通孔が軸方向に形成されている。そして、前記ピストン組立体10は、その中心軸が前記ケーシング5の中心軸と一致するように、前記ケーシング5内に収容されている。詳述すると、前記ピストン組立体10のピストン24は、前記ケーシング5と同軸に設けられた前記シリンダ8に対して、軸方向に摺動可能に収容されていると共に、前記ピストン組立体10の永久磁石19は、前記ケーシング5と同軸に設けられた前記駆動装置9の固定子22の内側に、この固定子22と対向して軸方向に往復動自在に収容されている。
【0018】
前記ディスプレイサー組立体11は、図示しないディスプレイサーと、このディスプレイサーに先端側が接続されたロッド26とを有して構成されている。なお、前記ディスプレイサーは、前記ピストン組立体10の往復動に伴って、このピストン組立体10に対して所定の位相差をもって前記シリンダ8内で軸方向に往復動するものである。また、前記ロッド26は、前記ディスプレイサーの動作を機械的に制御するためのものであり、前記ピストン組立体10の中央に形成された図示しない貫通孔に通されている。そして、前記ロッド26の基端側には、取付板27がビス28によって取り付けられている。
【0019】
前記第一の板バネ部材12は、前記ピストン組立体10の動作を機械的に制御するものであり、必要なバネ定数を得るために、板バネ29を複数枚(本実施形態の場合、2枚)重ねて構成されている。そして、前記第一の板バネ部材12は、その中央部が前記ピストン組立体10の取付部25に対して複数のビス30によって固定されている。なお、これらのビス30は、後述する中央部貫通孔49を通して、前記取付部25の図示しない複数の雌螺子に螺合されている。また、前記第一の板バネ部材12は、その外周部が複数の前記腕部材14に対して固定されている。なお、これらの腕部材14は、基端に形成された雄螺子部31Aが前記マウント15に形成された第一雌螺子17に螺合することで前記マウント15に取り付けられる前記第一雌螺子17と同数の取付腕部31と、基端に形成された雄螺子部32Aが前記各取付腕部31の先端に形成された雌螺子部31Bに螺合することで前記取付腕部31に取り付けられる前記取付腕部31と同数のスペーサ32と、これらのスペーサ32の先端に形成された雌螺子部32Bに螺合する前記スペーサ32と同数のボルト33とで構成されている。そして、前記取付腕部31の雌螺子部31Bに、後述する外周部貫通孔46を通して、前記スペーサ32の雄螺子部32Aを螺合させて締め付けることで、前記第一の板バネ部材12の外周部が前記腕部材14に固定される。これによって、前記ピストン組立体10は、前記第一のバネ部材12及び腕部材14を介して、前記シリンダ8のマウント15に取り付けられることになる。
【0020】
前記第二の板バネ部材13は、前記ディスプレイサー組立体11の動作を機械的に制御するものであり、必要なバネ定数を得るために、前記板バネ29を複数枚(本実施形態の場合、3枚)重ねて構成されている。なお、これらの板バネ29は、前記第一の板バネ部材12を構成する前記板バネ29と同じものである。そして、前記第二の板バネ部材13は、その中央部が前記ロッド26の基端側にビス28によって取り付けられた取付板27に対して複数のビス34によって固定されている。なお、これらのビス34は、後述する中央部貫通孔49を通して、前記取付板27の図示しない雌螺子に螺合している。また、前記第二の板バネ部材13は、その外周部が前記腕部材14に固定されている。詳述すると、前記スペーサ32の雌螺子部32Bに、後述する外周部貫通孔46を通して、前記ボルト33を螺合させて締め付けることで、前記第二の板バネ部材13の外周部が前記腕部材14に固定される。これによって、前記ディスプレイサー組立体11は、前記第二のバネ部材13及び腕部材14を介して、前記シリンダ8のマウント15に取り付けられることになる。
【0021】
前記取付部3は、中央部に貫通孔35が形成されている。そして、この貫通孔35を通してビス36を前記基端ケーシング部5Aの中央に形成された雌螺子7に螺合させて締め付けることで、前記取付部3が前記基端ケーシング部5Aに対して仮止めされ、この仮止めされた取付部3を前記基端ケーシング部5Aに熔接することで、前記取付部3が前記基端ケーシング部5Aに対して固定される。なお、前記ビス36は、前記取付部3を前記基端ケーシング5Aに熔接した後、取り外してもよい。
【0022】
前記振動吸収ユニット4は、第三の板バネ部材37とバランスウエイト38とを有して構成されている。そして、前記第三の板バネ部材37は、必要なバネ定数を得るために、前記板バネ29を複数枚(本実施形態の場合、15枚)重ねて構成されている。なお、これらの板バネ29は、前記第一及び第二の板バネ部材12,13を構成する前記板バネ29と同じものである。そして、前記バランスウエイト38に形成された複数の雌螺子39に、後述する外周部貫通孔46を通して、複数のビス40を螺合させて締め付けることで、前記第三の板バネ部材37の外周部が前記バランスウエイト38に固定される。そして、前記第三の板バネ部材37は、その中央部が前記取付部3に対して複数のビス41によって固定されている。なお、これらのビス41は、後述する中央部貫通孔49を通して、前記取付部3の図示しない複数の雌螺子に螺合している。また、前記バランスウエイト38の中央部には、前記板バネ29の後述する中央部44の外径よりも大きな内径を有する貫通孔42が形成されており、前記各ビス41を締め付けるための工具が前記貫通孔42を通される。
【0023】
前記板バネ29について詳述する。この板バネ29は、図2に示すように、略円形に形成された外周部43と、この外周部43と同心に設けられた中央部44と、これら外周部43と中央部44とを接続する複数(本実施形態では3本)の腕部45とを有して一体に構成されている。なお、複数の前記腕部45は等角度間隔(本実施形態では120度間隔)で設けられていると共に、渦巻き状に形成されている。また、前記腕部45自体の太さXは、前記腕部45同士の間隔Yよりも細くなるように形成されている。そして、前記外周部43には、複数(本実施形態では6個所)の外周部貫通孔46が等角度間隔(本実施形態では60度間隔)で形成されており、この外周部貫通孔46を通して前記板バネ29を螺子止めすることができるようになっている。また、前記外周部43には、複数(本実施形態では2個所)の切欠部47が等角度間隔(本実施形態では180度間隔)で形成されている。そして、前記中央部44には、径大な中心貫通孔48と、この中心貫通孔48を囲むように複数(本実施形態では6個所)の中央部貫通孔49が等角度間隔(本実施形態では60度間隔)で形成されている。そして、前記中央部貫通孔49を通して前記板バネ29を螺子止めすることができるようになっている。なお、前記中心貫通孔48の内径は、前記ロッド26、前記ビス28の頭部及び前記ビス36の頭部の外径よりも大きく形成されている。
【0024】
そして、図3に示すように、前記板バネ29の一方の切欠部47A及び他方の切欠部47Bが、それぞれ隣り合う前記板バネ29の他方の切欠部47B及び一方の切欠部47Aと重なるように、複数の前記板バネ29は、これらの板バネ29の中央を通る軸Z回りに180度ずつずらして重ねられる。なお、このように複数の前記板バネ29を重ねる際、前記切欠部47に対応する図示しないガイドを用いて前記板バネ29を重ねてゆけば、これらの板バネ29同士の位置合わせを簡単に行うことができる。そして、このように前記板バネ29を重ねた場合、前記外周部貫通孔46が60度間隔で6個所、即ち180度間隔で2個所形成された前記切欠部47の倍数形成されているため、前記板バネ29同士が軸Z回りに180度ずつずれていたとしても、外周部貫通孔46A,46B,46C,46D,46E,46Fが、それぞれ隣り合う前記板バネ29の貫通孔46D,46E,46F,46A,46B,46Cと重なることになる。同様に、中央部貫通孔49A,49B,49C,49D,49E,49Fも、それぞれ隣り合う前記板バネ29の貫通孔49D,49E,49F,49A,49B,49Cと重なることになる。従って、前記板バネ29を軸Z回りに180度ずつずらして重ねたとしても、前記第一及び第二の貫通孔46,49でビス止めが可能となる。
【0025】
また、このように前記板バネ29を重ねた場合、腕部45A,45B,45Cが、それぞれ隣り合う前記板バネ29の腕部45B−45C間の中央、45C−45A間の中央、45A−45B間の中央に位置することになる。従って、このように重ねられた複数の前記板バネ29は、軸Z方向から見て、60度間隔で腕部45が配されることになる。そして、この際、前記板バネ29は、隣接する前記板バネ29に対してスペーサの役割を果たすことになる。即ち、前記板バネ29が上下に隣接する前記板バネ29に対してスペーサの役割を果たすことで、これらの板バネ29が撓む際に、上下の前記板バネ29同士の腕部45が接触することを防止することができる。同様に、上下の前記板バネ29も、それらの更に上下に隣接する前記板バネ29に対してスペーサの役割を果たすことになる。また、前述したように、前記腕部45A,45B,45Cが、それぞれ隣り合う板バネ29の前記腕部45B−45C間の中央、45C−45A間の中央、45A−45B間の中央に位置することで、前記板バネ29の腕部45と隣接する前記板バネ29の腕部45との間隔を充分に確保することができるので、前記腕部45同士の接触を確実に防ぐことができる。
【0026】
そして、このように共通の前記板バネ29を用いて、前記第一、第二、第三の板バネ部材12,13,37を構成することで、部品の種類を減らすことができる。例えば、本発明のスターリング冷凍機1を1000台製造する場合、従来の構造では、第一の板バネ部材のための板バネと、第二の板バネ部材のための板バネと、第三の板バネ部材のための板バネを少なくとも1000枚ずつ製造する必要があるため、三種類の板バネの設計をする必要があり、三種類の板バネを製造するための金型も三種類製作する必要があるばかりでなく、複数種類の板バネを比較的少数ずつ製造することになるため、それぞれの板バネの単価を安くしにくいという問題があるが、本発明の構造では、共通の前記板バネ29を20000枚製造することになり、部品数が増えるものの、スケールメリットにより前記板バネ29の単価を低く抑えることができるばかりでなく、金型製作費用や設計費用を考慮すれば、総合的に従来の構造よりも安価に製造することができることになる。
【0027】
以上のように、本発明のスターリング冷凍機は、スターリング冷凍機本体2のケーシング5内に設けられたピストン組立体10の往復運動を機械的に制御する第一の板バネ部材12及びディスプレイサー組立体11の往復運動を機械的に制御する第二の板バネ部材13と、前記スターリング冷凍機本体2に取り付けられる振動吸収ユニット4をバランスウエイト38と共に構成する第三の板バネ部材37を、それぞれ共通の板バネ29を用いて構成したことで、単一の前記板バネ29のみ設計すればよく、また、単一の前記板バネ29のための金型のみ設計及び製作すればよいばかりでなく、専用の板バネを少数ずつ製造するのではなく、単一の前記板バネ29を多数製造することで、この板バネ29の単価を下げることができ、これによって、前記スターリング冷凍機1全体を安価に構成することができる。更に、前記板バネ29を適宜積層することで、前記各板バネ部材12,13,37で必要なバネ定数を得るように調整したことで、第一の板バネ部材12と第三の板バネ部材37のように、必要なバネ定数が大きく異なるような場合であっても、共通の板バネ29を用いることができる。
【0028】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上記実施形態では、第一から第三の板バネ部材を全て同一の板バネによって構成しているが、第一から第三の板バネ部材のうち、二つを同一の板バネによって構成してもよい。この場合、コストダウンの効果は上記実施形態の場合よりも劣ることになるが、従来の構造の場合よりもややコストダウンできる可能性がある。また、上記実施形態では、スターリング機関として逆スターリングサイクルを応用したスターリング冷凍機を用いて説明したが、スターリングサイクルを応用したスターリングエンジンに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態を示す要部の拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す板バネの外観図であり、(a)は軸Z方向から見た図、(b)はA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す板バネの重ね方を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 スターリング冷凍機(スターリング機関)
2 スターリング冷凍機本体(スターリング機関本体)
4 振動吸収ユニット
5 ケーシング
10 ピストン組立体
11 ディスプレイサー組立体
12 第一の板バネ部材
13 第二の板バネ部材
29 板バネ
37 第三の板バネ部材
38 バランスウエイト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体を有するスターリング機関において、
前記各板バネ部材を、共通の板バネを用いて構成したことを特徴とするスターリング機関。
【請求項2】
ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体と、第三の板バネ部材とバランスウエイトとを有して構成される振動吸収ユニットとを有するスターリング機関において、
前記各板バネ部材のうち少なくとも二つの板バネ部材を、共通の板バネを用いて構成したことを特徴とするスターリング機関。
【請求項3】
ケーシング内にピストン組立体及びディスプレイサー組立体を有し、これらピストン組立体及びディスプレイサー組立体の往復運動をそれぞれ第一の板バネ部材及び第二の板バネ部材によって機械的に制御するように構成されたスターリング機関本体と、第三の板バネ部材とバランスウエイトとを有して構成される振動吸収ユニットとを有するスターリング機関において、
前記各板バネ部材を、全て共通の板バネを用いて構成したことを特徴とするスターリング機関。
【請求項4】
前記各板バネ部材のバネ定数を、前記板バネ単体を適宜積層することで調整したことを特徴とする請求項1乃至3記載のスターリング機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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