説明

スチレン系樹脂発泡体、発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法

【課題】密度が低くても、十分な強度を有するスチレン系樹脂発泡体を提供することを課題とする。
【解決手段】スチレン系樹脂からなる気泡膜で囲まれた気泡と、前記気泡膜内に位置する鱗片状珪酸塩とを備え、前記気泡膜が、0.2〜2.0μmの平均気泡膜厚を有し、前記鱗片状珪酸塩が、前記平均気泡膜厚の0%より大きく、かつ50%以下の厚みを有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂発泡体、発泡性スチレン系樹脂粒子及びその製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、曲げ強度に優れたスチレン系樹脂発泡体、その発泡体の製造に使用できる発泡性スチレン系樹脂粒子及び発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂発泡体は、一般に発泡性スチレン系樹脂粒子を水蒸気等で加熱発泡して一旦予備発泡粒子とし、これを多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、発泡粒子間の空隙を埋めると共に、発泡粒子を相互に融着させた後、冷却し金型より取り出すことにより製造される。
上記発泡性スチレン系樹脂粒子は、通常、スチレン系モノマーを水中に懸濁して重合し、発泡剤を含浸して製造するか、特公昭49−2994号公報(特許文献1)に示されるように、スチレン系樹脂粒子を水中に懸濁させ、これにスチレン系モノマーを連続的もしくは断続的に供給して重合し、発泡剤を含浸させる方法(シード重合法)等により製造される。更には、スチレン系樹脂を押出機内で溶融し、発泡剤を混練した後に小孔を有する金型より加温加熱媒体中に押出すと共に、粒子状に切断して製造される。
【0003】
スチレン系樹脂発泡体は、例えば断熱材や緩衝材、構造部材として使用される。このような用途では、スチレン系樹脂発泡体に高い強度が要求される。従来、スチレン系樹脂発泡体には、密度10〜30kg/m3程度の発泡体が多用されているが、省資源化の観点から、より低密度化しても強度を維持できるスチレン系樹脂発泡体が望まれている。
よって、従来から低密度、高強度のスチレン系樹脂発泡体が求められており、強度アップの施策が考えられている。
【0004】
例えば、特公昭57−34296号公報(特許文献2)には、発泡剤と共に特定のチオ尿素系化合物をスチレン系樹脂粒子に含有させて微細な気泡が多数形成されたスチレン系樹脂発泡体を得る方法が記載されている。また、特公昭55−49631号公報(特許文献3)には、所定の発泡剤と共に特定のチオジプロピオン酸エステル又はチオジブチル酸エステルをスチレン系樹脂粒子に含有させて、上記と同様に、微細な気泡が多数形成されたスチレン系樹脂発泡体を得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭49−2994号公報
【特許文献2】特公昭57−34296号公報
【特許文献3】特公昭55−49631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の方法は気泡を細かくすることで、気泡膜数を増やし発泡体の強度向上を目指したものである。しかし、スチレン系樹脂発泡体は、前記方法等により気泡径を細かくした場合、密度が低くなると強度が急激に低下するという性質があり、従来の方法では十分な強度が得られていない。
そのため、密度が低くても、十分な強度を有するスチレン系樹脂発泡体を提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、特定の範囲の平均気泡膜厚の気泡膜と、気泡膜内に位置した特定の厚みの鱗片状珪酸塩とを含むスチレン系樹脂発泡体により、密度が低くても、十分な強度を有するスチレン系樹脂発泡体を提供できることを意外にも見出し本発明に至った。
かくして本発明によれば、スチレン系樹脂からなる気泡膜で囲まれた気泡と、前記気泡膜内に位置する鱗片状珪酸塩とを備え、
前記気泡膜が、0.2〜2.0μmの平均気泡膜厚を有し、
前記鱗片状珪酸塩が、前記平均気泡膜厚の0%より大きく、かつ50%未満の厚みを有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、上記スチレン系樹脂発泡体の製造に使用される発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
反応容器内で水性媒体中に分散させてなる鱗片状珪酸塩を含有するスチレン系樹脂種粒子に、スチレン系モノマーを含浸させた後に重合させるか又は含浸させつつ重合させることでスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
前記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させるか又は前記スチレン系モノマーの重合途上で発泡剤を含浸させる工程とを含み、
前記スチレン系モノマーの含浸及び重合が、15体積%以上の酸素濃度に保たれた反応容器内で行われ、
前記スチレン系モノマーは、前記スチレン系モノマーの含浸始期から重合終期までの間のスチレン系成長途上樹脂粒子中における前記スチレン系モノマー量が40質量%以下となるように、前記水性媒体中に供給されることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られる発泡性スチレン系樹脂粒子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低密度化しても発泡成形性に優れるばかりか、曲げ強度も優れるスチレン系樹脂発泡体を提供できる。これは、鱗片状珪酸塩で気泡膜が強化されているためである、と発明者は考えている。
また、鱗片状珪酸塩が10〜1000のアスペクト比を有し、スチレン系樹脂発泡体が10〜30kg/m3の密度を有する場合、低密度化しても発泡成形性に優れ、かつより曲げ強度に優れたスチレン系樹脂発泡体を提供できる。
更に、鱗片状珪酸塩が、天然雲母、合成雲母又はセリサイトである場合、低密度化しても発泡成形性に優れ、かつより曲げ強度に優れたスチレン系樹脂発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の発明者は、スチレン系樹脂発泡体(以下発泡体ともいう)を低密度化と高強度化させるために、以下に示すように発泡体の構成を見直した。
即ち、一般に発泡体の強度は、発泡体を形成する気泡径、気泡膜厚、気泡密度、連続気泡率及び発泡体密度に大きく影響される。その中でも、気泡径を小さくすること(微細気泡とすること)で、気泡膜数を増やすことが強度の向上に有効であると従来考えられていた。
しかし、気泡径を小さくすると、気泡膜厚が小さくなり、成形時の加熱により気泡に破れが生じることで、成形性及び強度の低下がおきやすい。このように、低密度化と高強度化の両立は非常に困難であった。
そこで、本発明者が検討した結果、平均気泡膜厚を0.5〜2.0μmに調製し、かつ気泡膜内に存在する鱗片状珪酸塩の厚みを気泡膜厚の0%より大きく、50%以下に調製することで、低密度化しても曲げ強度の低下が非常に少ない発泡体が得られることを突き止めた。
【0011】
(発泡体)
本発明の発泡体は、0.5〜2.0μmの平均気泡膜厚のスチレン系樹脂からなる気泡膜で囲まれた気泡を備えている。
平均気泡膜厚が、0.5μm未満の場合、気泡膜が成形時に破れやすく強度が低下するばかりか、発泡体に収縮が発生しやすくなる。更に、2.0μmより大きい場合、発泡体中の気泡数が少なくなりすぎる為に、強度低下を起こすことがある。平均気泡膜厚は、0.7〜1.5μmであることが好ましい。
【0012】
発泡体は、10〜30kg/m3の密度を有することが好ましい。この特定の範囲の密度を有することで、より曲げ強度の高い発泡体を提供できる。より好ましい密度は、12.5〜20.0kg/m3である。
発泡体は、家電製品のような緩衝材(クッション材)、電子部品、各種工業資材、食品等の搬送容器等の用途に用いることができる。また、車輛用バンパーの芯材、ドア内装緩衝材等の衝撃エネルギー吸収材として好適に用いることもできる。
【0013】
(1)スチレン系樹脂
発泡体は、スチレン系樹脂からなる気泡膜を含む。スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン等のスチレン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。スチレン系樹脂は、スチレン由来の成分を50質量%以上含有していることが好ましく、ポリスチレンからなることがより好ましい。
【0014】
また、スチレン系樹脂としては、スチレン系モノマーと、このスチレン系モノマーと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体の場合、スチレン系モノマー由来の成分が主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは99.8〜99.9質量%)を占めることが好ましい。このようなビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜8のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー、無水マレイン酸、N−ビニルカルバゾール等が挙げられる。
【0015】
(2)鱗片状珪酸塩
鱗片状珪酸塩は、平均気泡膜厚の0%より大きく、かつ50%以下の相対的な厚みを有することで、低密度化と高強度化を実現できる。鱗片状珪酸塩の厚みが平均気泡膜厚の50%以上の場合、発泡成形時に気泡膜が破れやすくなり、発泡成形性が低下して低密度化が困難となり、強度も低下する。
更に、鱗片状珪酸塩は、10〜1000のアスペクト比を有していることが好ましい。この範囲のアスペクト比を有することで、低密度化と高強度化を実現できる。アスペクト比が10未満の場合、鱗片状珪酸塩添加の効果が低くなることがある。一方、アスペクト比が1000より大きい場合、発泡成形時に気泡膜が破れやすくなる。そのため、発泡成形性が低下して低密度化が困難となり、強度も低下することがある。
【0016】
鱗片状珪酸塩としては、天然雲母、合成雲母、セリサイト等が挙げられる。なお、合成雲母は、天然雲母とは異なり、天然雲母の結晶構造中の全ての−OH基が−F基で置換された組成を有する人工的に作られた雲母であり、KMg3AlSi3102を理想組成とするものである。
鱗片状珪酸塩は、その表面が金属酸化物によって被覆されていてもよい。このような金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄が挙げられる。具体的な表面が被覆された鱗片状珪酸塩は、酸化チタンで表面が被覆された天然雲母又は合成雲母、酸化鉄で表面が被覆された天然雲母又は合成雲母等が挙げられる。
【0017】
金属酸化物の含有量は、金属酸化物によって表面が被覆された鱗片状珪酸塩中、10〜70質量%が好ましく、20〜60質量%がより好ましく、30〜60質量%が特に好ましい。
更に鱗片状珪酸塩の表面はスチレン系樹脂との相溶性を向上する目的で、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、他表面処理剤にて処理されていることが好ましい。
鱗片状珪酸塩の含有量としては、3〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは5〜15質量%である。3質量%未満では効果が低く、20質量%より多い場合、発泡成形性、強度が低下することがある。
【0018】
更に、鱗片状珪酸塩の具体的な厚みは、薄いと発泡体の製造時までに破砕され、所望する強度を発泡体が発揮し得ないことがある。一方、厚いと、発泡体の気泡膜が破れ易くなって、高発泡倍率の発泡体を得られ難いことがある。従って、鱗片状珪酸塩の厚みは、1.0μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が特に好ましい。加えて、鱗片状珪酸塩の厚みは、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましい。
【0019】
(3)発泡体の製造方法
発泡体は、例えば、スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させて発泡性スチレン系樹脂粒子を得、次いで、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて予備発泡粒子を得た後、これを金型内に充填し、加熱発泡させることにより製造できる。
発泡性スチレン系樹脂粒子は、例えば、
(i)水性媒体中にスチレン系樹脂種粒子(以下種粒子)を分散させ、これにスチレン系モノマーを連続的又は断続的に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆるシード重合法によって得られた粒子、あるいは
(ii)スチレン系モノマーを連続的又は断続的に水性媒体中に供給して重合開始剤の存在下で懸濁重合し、発泡剤を含浸させる方法、いわゆる懸濁重合法によって得られた粒子等を使用できる。
【0020】
特にシード重合法は、懸濁重合法で得られたものよりも気泡径の調製が行いやすいため、本発明の特定の範囲の平均気泡径を有する発泡体を得る上で好ましい。
シード重合法による発泡性スチレン系樹脂粒子は、例えば、以下の工程を経ることで製造できる。
(A)反応容器内で水性媒体中に分散させてなる鱗片状珪酸塩を含有するスチレン系樹脂種粒子に、スチレン系モノマーを含浸させた後に重合させるか又は含浸させつつ重合させることでスチレン系樹脂粒子を得る工程
(B)スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させるか又はスチレン系モノマーの重合途上で発泡剤を含浸させる工程
平均気泡膜厚0.5〜2.0μmへの調製は、以下で説明するように、例えば、界面活性剤の種類を選択する方法、気泡調製効果のある添加剤(例えば、ステアリン酸塩、硫黄化合物、低分子量ポリエチレン類)を添加する方法、重合温度を調製する方法、重合開始剤の種類を選択する方法、発泡剤の種類を選択する方法、発泡剤の含浸量を調製する方法、シード重合法にあってはモノマーの供給速度を調製する方法等、一般にスチレン系樹脂発泡体の気泡調製に使用されている方法で行うことができる。
【0021】
(a)種粒子
種粒子を得るためのモノマーには、上記発泡体の欄で挙げたスチレン系モノマー及びビニルモノマーをいずれも使用できる。種粒子を構成しているスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量は、小さい場合、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡体の機械強度を低下させることがある。一方、大きいと、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下することがある。好ましい平均分子量は、12万〜60万である。
【0022】
種粒子の粒子径は、ある狭い範囲内にあれば、発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径もよく揃ったものとできる。そこで、通常、種粒子として、懸濁重合法によって得られた粒子を一旦ふるい分級し、粒径が平均粒子径の±20%の範囲になるように調製した粒子を使用できる。塊状重合法により種粒子を得る場合には、所望の粒径にペレタイズしたものを使用できる。従って、シード重合法によれば、用途に応じた所望の粒径範囲の発泡性スチレン系樹脂粒子をほぼ100%の収率で製造できる。例えば、0.3〜0.5mm、0.5〜0.7mm、0.7〜1.2mm、1.2〜1.5mm、1.5〜2.5mmのように区分した粒子を、所望する発泡性スチレン系樹脂粒子の平均粒子径に合わせて選択できる。
【0023】
種粒子は、スチレン系樹脂と鱗片状珪酸塩とを含むことが好ましい。
また、種粒子は、発泡体に含有させる量の鱗片状珪酸塩を予め含んでいることが好ましい。例えば、鱗片状珪酸塩を1.2〜40質量%含む種粒子を使用することが好ましい。種粒子中の鱗片状珪酸塩が1.2質量%未満の場合、強度の向上が顕著でないことがある。また、40質量%を超えると種粒子が製造し難くなることがある。種粒子中の鱗片状珪酸塩の含有量は、3〜30質量%であることがより好ましい。
【0024】
(b)水性媒体
水性媒体としては、水、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
(c)スチレン系モノマー
スチレン系モノマーとしては、上記発泡体の欄で挙げたスチレン系モノマーを使用できる。また、スチレン系モノマーに上記発泡体の欄で挙げたビニルモノマーを加えてもよい。
【0025】
(d)重合開始剤
重合開始剤としては、いずれも通常のスチレンの懸濁重合において用いられるラジカル発生型重合開始剤を用いることができる。例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−t−ブチルパーオキシブタン、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。分子量を調製し、残存モノマーを減少させるために、10時間の半減期を得るための分解温度が50〜80℃の範囲にある重合開始剤と、分解温度が80〜120℃の範囲にある異なる重合開始剤を併用することが望ましい。
【0026】
(e)種粒子の使用量
種粒子の使用量は、重合終了時の樹脂粒子全量に対して、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは15〜50質量%である。種粒子の使用量が10質量%未満ではスチレン系モノマーを供給する際に、粒子の重合率を適正範囲に制御することが困難となり、得られる粒子が高分子量化したり、微粉末が多量に発生することで製造効率が低下したりする等、工業的に不利となる。また90質量%を越えると優れた発泡成形性が得難くなる。
【0027】
(f)他の成分
スチレン系モノマーの液滴及び種粒子の分散性を安定させるために懸濁安定剤を用いてもよい。
懸濁安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機化合物等が挙げられる。ここで、難溶性無機化合物を用いる場合には、アニオン界面活性剤が通常、併用される。
【0028】
アニオン界面活性剤は、上記懸濁安定剤による分散を安定化させるための補助安定剤として機能すると共に、一部がスチレン系重合体粒子内に溶け込んだり、あるいは巻き込まれたりすることによって、得られる発泡体内の気泡径の大きさに影響することがある。従って、所望の気泡膜厚の範囲内に入るようにアニオン界面活性剤の種類を選択すればよい。
【0029】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルアミノ酸又はその塩、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0030】
更に、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡体の平均気泡径を調製するために、前記シード重合の終了の5〜10分前、シード重合終了直後、又は、スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後に、気泡調製剤をスチレン系樹脂粒子中に0.01〜0.8質量%となるように添加してもよい。このような気泡調製剤としては、エチレンビスステアリン酸アマイドのようなステアリン酸塩、トリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0031】
(g)重合条件
重合は、使用するモノマー種、重合開始剤種、重合雰囲気種等により異なるが、通常、60〜150℃の加熱を、1〜10時間維持することにより行われる。
重合雰囲気としては、重合反応中での反応容器内の酸素濃度を15体積%以上に保持した雰囲気が挙げられる。この特定の酸素濃度は、発泡体が鱗片状系酸塩を含む場合、有用である。即ち、酸素濃度が15体積%未満の場合、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に鱗片状珪酸塩が多量に含有されやすくなる。そのため発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させて得られる予備発泡粒子を二次発泡させた際に、予備発泡粒子の表面部の気泡が鱗片状珪酸塩によって破泡することがある。その結果、発泡体の高発泡倍率化が妨げられることがある。加えて、破泡することによって予備発泡粒子同士が充分に熱融着一体化するための発泡圧を得ることができず、その結果、発泡粒子同士の熱融着一体化が不充分となり、得られる発泡体の機械的強度が低下することがある。より好ましい酸素濃度は、15〜21体積%の範囲である。
【0032】
スチレン系樹脂種粒子の使用量及び分散液中へのスチレン系モノマーの供給総量は、種粒子に含まれる鱗片状珪酸塩が、得られるスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、3〜10質量部の範囲となるように、調製することが好ましい。
また、スチレン系モノマーは、スチレン系モノマーの含浸始期から重合終期までの間のスチレン系成長途上樹脂粒子中におけるスチレン系モノマー量が40質量%以下となるように、水性媒体中に供給されることが好ましい。このスチレンモノマー量を重合中維持することで、本発明で所望する平均気泡膜厚を得ることができる。
【0033】
(h)スチレン系樹脂粒子
スチレン系樹脂粒子の粒子径は、後述する予備発泡粒子の成形型内への充填性の点から、0.3〜2.0mmであることが好ましく、0.3〜1.4mmであることがより好ましい。
更に、スチレン系樹脂粒子を構成するスチレン系樹脂のスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、小さいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られる発泡体の機械的強度が低下することがある。一方、大きいと、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡性が低下し、高発泡倍率の発泡体を得ることができないことがある。好ましい重量平均分子量は、通常の発泡成形に適した100000〜700000であり、より好ましくは150000〜400000の範囲である。また、種粒子の重量平均分子量も上記の発泡成形に適合した範囲に調製することが好ましい。
【0034】
重量平均分子量を、通常の発泡成形に適合した範囲に調製するには、重合開始剤を効率よく働かせることが重要であり、無駄な分解を防ぎ重合工程全域でラジカル発生するよう、重合開始剤の配分、重合温度プログラム、シード重合法においては更にモノマーの供給速度、重合時の重合率等を調製し制御することが好ましい。
【0035】
(i)含浸工程
発泡剤の含浸は、スチレン系モノマーの重合後の粒子に行ってもよく、成長途上粒子に発泡剤を含浸させてもよい。重合の途中での含浸は、水性媒体中で含浸させる方法(湿式含浸法)により行うことができる。重合後の含浸は、湿式含浸法か、又は媒体非存在下で含浸させる方法(乾式含浸法)により行うことができる。また、重合の途中での含浸は、通常重合後期に行うことが好ましい。
【0036】
発泡剤としては、沸点が重合体の軟化点以下である易揮発性を有する、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、シクロペンタジエン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル等の低沸点のエーテル化合物、HCFC−141b、HCFC−142b、HCFC−124、HFC−134a、HFC−152a等のハロゲン含有炭化水素、炭酸ガス、窒素、アンモニア等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。この内、炭化水素を使用するのが、オゾン層の破壊を防止する観点、及び空気と速く置換し、発泡体の経時変化を抑制する観点で好ましい。炭素水素の内、ブタンを使用するのがより好ましい。
発泡剤の使用量は、発泡性スチレン系樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは2〜7質量部である。
【0037】
(j)その他
発泡性スチレン系樹脂粒子に溶剤や可塑剤を添加してもよい。
溶剤としては、スチレン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族有機化合物、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリントリステアレート、ジアセチル化グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル、ジイソブチルアジペートのようなアジピン酸エステル等が挙げられる。
【0038】
発泡性スチレン系樹脂粒子中における溶剤及び可塑剤の含有量は、それぞれ、少ない場合、溶剤及び可塑剤を添加した効果が発現しないことがある。一方、含有量が多い場合、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られた発泡体に収縮や溶けが発生して外観が低下することがある。好ましい含有量は、発泡性スチレン系樹脂粒子の全量の0.1〜1.5質量%であり、0.2〜1.0質量%がより好ましい。
溶剤及び可塑剤の含浸は、スチレン系モノマーの重合後の粒子又は成長途上粒子に対して行うことができる。更に、種粒子に予め溶剤や可塑剤を添加しておいてもよい。
【0039】
溶剤及び可塑剤のスチレン系樹脂粒子、種粒子又は成長途上粒子への含浸温度が低い場合、含浸に時間を要し、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造効率が低下することがある。一方、高い場合、発泡性スチレン系樹脂粒子同士の合着が多量に発生することがある。含浸温度は、60〜120℃が好ましく、70〜100℃がより好ましい。
【0040】
更に、本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子は、物性を損なわない範囲内において、発泡セル造核剤、充填剤、難燃剤、難燃助剤、滑剤、着色剤等の他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤は、溶剤や可塑剤と同様の要領で発泡性スチレン系樹脂粒子に含ませることができる。
難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA等が挙げられる。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子中における難燃剤の含有量が少ない場合、発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られる発泡体の難燃性が不充分となることがある。一方、多い場合、発泡性スチレン系樹脂粒子の成形性が低下することが。難燃剤の含有量は、0.5〜1.5質量%が好ましい。
【0041】
また、難燃助剤としては、例えば、ジクミルパーオキサイドのような有機過酸化物が挙げられる。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子中における難燃助剤の含有量が少ない場合、難燃助剤を添加した効果が発現しないことがある。一方、多い場合、発泡性スチレン系樹脂粒子の発泡成形性が低下することがある。難燃助剤の含有量は、0.05〜0.5質量%が好ましい。
【0042】
(k)予備発泡粒子
発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡機で水蒸気等を用いて予備発泡されて多数の小孔を有する予備発泡粒子とされる。予備発泡粒子の嵩倍数は、30〜100倍の範囲である。予備発泡粒子の嵩倍数が100倍より大きい場合、得られる発泡体に収縮が発生して外観性が低下することがある。加えて発泡体の断熱性能及び機械的強度が低下することがある。一方、嵩密度が30倍未満の場合、発泡体の軽量性が低下するばかりか、鱗片状珪酸塩を添加する効果が少なくなることがある。
【0043】
(l)発泡体の成形
予備発泡粒子を多数の小孔を有する閉鎖金型内に充填し、再び加圧水蒸気等で加熱発泡させ、予備発泡粒子間の空隙を埋めると共に、予備発泡粒子を相互に融着させることにより、発泡体が製造できる。その際、発泡体の密度は、例えば、金型内への予備発泡粒子の充填量を調製する等して調製できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各種測定法を下記する。
<鱗片状珪酸塩の厚み>
鱗片状珪酸塩の平均粒径の測定方法にはマイクロトラックレーザー回折法やマイクロシーブ網篩法により平均粒子径を求める方法や電子顕微鏡の観察によって求める方法等がある。測定方法によって粒子径の数値に差があるが、マイクロシーブ網篩法と電子顕微鏡が実際の粒径に近く、マイクロトラックレーザー回折法では実際よりやや大きい値となる。本明細書の平均粒子径は、測定のしやすさ及び再現性の高さ等から、マイクロトラックレーザー回折法により測定する。
【0045】
鱗片状珪酸塩のアスペクト比の測定は、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製走査電子顕微鏡S−2400、以下SEMと称す)による観察下で行なう。具体的には、SEMの試料台に固着させた試料を、一つの粒子が視野に入る最大限まで観察倍率を高くして、劈開面(平滑面)、もしくは積層断面(破断面)の方向から、画像を取り込む(撮影する)。次に、試料台を回転させて、先程とは異なる方向から、画像を取り込む(撮影する)。このようにして得られた画像(写真)から、劈開面の最大長さと積層断面の厚さを計測する。劈開面の計測値を積層断面の計測値で除して、試料毎のアスペクト比を求める。この操作を、任意に抽出した100個の雲母フレークに対して行なう。100個のアスペクト比の平均値を、本明細書のアスペクト比とする。
【0046】
<スチレン系モノマー量>
スチレン系樹脂成長途上粒子(以下、成長途上粒子という)中におけるスチレン系モノマー量の測定方法は、下記要領で測定されたものをいう。
即ち、成長途上粒子を分散液中から取り出し、表面に付着した水分をガーゼにより拭き取り除去する。成長途上粒子を0.08g採取し、この採取した成長途上粒子をトルエン24ミリリットル中に溶解させてトルエン溶液を作製する。次に、このトルエン溶液中に、ウイス試薬10ミリリットル、5質量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1質量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを加える。得られた溶液を、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果を試料の滴定数(ミリリットル)とする。なお、ウイス試薬は、氷酢酸2リットルにヨウ素8.7g及び三塩化ヨウ素7.9gを溶解してなるものである。
【0047】
一方、成長途上粒子を溶解させることなく、トルエン24ミリリットル中に、ウイス試薬10ミリリットル、5質量%のヨウ化カリウム水溶液30ミリリットル及び1質量%のでんぷん水溶液30ミリリットルを加える。得られた溶液を、N/40チオ硫酸ナトリウム溶液で滴定した結果をブランクの滴定数(ミリリットル)とする。
得られた滴定数から、成長途上粒子中におけるスチレン系モノマー量を下記式に基づいて算出する。
成長途上粒子中のスチレン系モノマー量(質量%)
=0.1322×(ブランクの滴定数−試料の滴定数)/試料の滴定数
【0048】
<重量平均分子量>
重量平均分子量は、下記の要領で測定されたスチレン換算重量平均分子量をいう。
即ち、スチレン系樹脂30mgをクロロホルム10ミリリットルで溶解する。得られた溶液を、非水系0.45μmのクロマトディスクで濾過した後、クロマトグラフを用いて平均分子量を下記条件にて測定する。
ガスクロマトグラフ:Water社製商品名「Detector 484,Pump 510」
カラム:昭和電工社製
商品名「Shodex GPC K−806L(φ8.0×300mm)」2本
カラム温度:40℃
キャリアーガス:クロロホルム
キャリアーガス流量:1.2ミリリットル/分
注入・ポンプ温度:室温
検出:UV254nm
注入量:50マイクロリットル
検量線用標準ポリスチレン:昭和電工社製商品名「shodex」重量平均分子量:1030000及び東ソー社製の重量平均分子量:5480000,3840000,355000,102000,37900,9100,2630,495のポリスチレン
【0049】
<鱗片状珪酸塩含有量>
発泡性スチレン系樹脂粒子を150℃×3時間処理して発泡剤を逸散させる。逸散後の残留物1.0g(灰化前試料の質量)を容量30mLの磁性ルツボに入れる。残量物を電気炉(マッフル炉STR−15K(いすず社製))にて550℃で5時間加熱することで灰化する。磁性ルツボをデシゲーター内で室温(25℃)まで放冷する。放冷後の磁性ルツボ内の灰化後試料の質量を測定する。灰化前後の試料の質量を次式に代入することで、スチレン系樹脂100質量部に対する鱗片状珪酸塩含有量(質量部)を算出する。
鱗片状珪酸塩含有量(質量部)=灰化後試料質量/灰化前試料質量
【0050】
<嵩倍数>
予備発泡粒子の嵩倍数は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。具体的は、まず、予備発泡粒子を測定試料としてWg採取し、この測定試料をメスシリンダー内に自然落下させる。メスシリンダー内に落下させた測定試料の体積Vcm3をJIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定する。Wg及びVcm3を下記式に代入することで、予備発泡粒子の嵩密度を算出する。
予備発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=測定試料の質量(W)/測定試料の体積(V)
嵩倍数は、嵩密度の逆数である。
【0051】
<発泡体の密度>
発泡体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡体の密度(kg/m3)を求める。
【0052】
<曲げ強度>
密度16kg/m3の発泡体から縦200mm×横75mm×厚さ30mmの直方体形状の試験片を切り出す。そして、この試験片の曲げ強度をJIS A−9511に準拠し、スパン100mm、ヘッドスピード10mm/分で測定する。得られた曲げ強度が0.12MPa以上の場合を○評価(強度良好)、0.12MPa未満の場合を×評価(強度不良)とする。
【0053】
<平均気泡膜厚>
発泡体の切断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真から、気泡膜の厚みを測定する。測定数を50箇所とし、その平均を平均気泡膜厚とする。
【0054】
<成形性>
予備発泡粒子間の接着強度が弱く発泡体として形状を維持できない場合を×とし、形状を維持できる場合を○とする。
【0055】
<総合評価>
成形性及び曲げ強度の評価が○の発泡体は、総合評価を○とする。1つでも×の評価がある発泡体は、総合評価を×とする。
【0056】
(実施例1)
スチレン換算重量平均分子量が25万であるスチレン系樹脂(A)(積水化成品工業社製MS−100)8000質量部と、予めシランカップリング剤(信越化学社製 シランカップリング剤KBE−503)にて表面処理した厚みが0.3μm、アスペクト比が170の天然雲母(山口雲母工業社製A−61)2000質量部とを二軸押出機に供給して230℃にて溶融混練して押出機からストランド状に押出し、このストランドを所定長さ毎に切断して、鱗片状珪酸塩を20質量%含有する円柱状スチレン系樹脂種粒子(直径:1.0mm、長さ:1.5mm)を作製した。
【0057】
次に、攪拌機付き重合容器に、水2000質量部、種粒子500質量部、ピロリン酸マグネシウム6質量部及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.3質量部を供給して攪拌しつつ70℃に加熱して分散液を作製した。
続いて、ベンゾイルパーオキサイド4.5質量部及びt−ブチルパーオキシベンゾエート1.1質量部をスチレンモノマー200質量部に溶解させ、このスチレンモノマーを全て上記分散液中に攪拌しつつ供給した。
【0058】
そして、分散液中にスチレンモノマーを供給し終えてから30分経過後に分散液を90℃に加熱し、この分散液中に更にスチレンモノマー1300質量部を3.5時間かけて一定の供給速度で供給して、シード重合を行なって、全てのスチレンモノマーを供給し終えてから125℃に加熱して2時間に亘って放置した後に冷却してスチレン系樹脂粒子(B)を得た。なお、分散液中にスチレンモノマーを供給し始めてから10分間隔毎に、成長途上にあるスチレン系樹脂成長粒子中のスチレンモノマー量を測定したところ、最高値は22.5質量%であった。重量平均分子量は、31.1万であった。
【0059】
次に、スチレン系樹脂粒子(B)が分散した分散液を70℃に加熱した後、難燃剤としてテトラブロモシクロオクタン23.4質量部及び難燃助剤としてジクミルパーオキサイド5.4質量部を分散液中に供給した上で重合容器を密閉して90℃に加熱した。続いて、重合容器内にブタン162質量部を圧入して6時間に亘って保持し、スチレン系樹脂粒子(B)中にブタンを含浸させた後、重合容器内を30℃に冷却して発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。なお、得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、その天然雲母の含有量が5.0質量%であった。
【0060】
上記発泡性スチレン系樹脂粒子の表面に帯電防止剤としてポリエチレングリコールを塗布した後、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面にステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドを塗布した。なお、ステアリン酸亜鉛及びヒドロキシステアリン酸トリグリセリドはそれぞれ、発泡性スチレン系樹脂粒子中、0.05質量%となるように調製した。
しかる後、発泡性スチレン系樹脂粒子を13℃の恒温室にて5日間に亘って放置した。そして、発泡性スチレン系樹脂粒子を加熱して嵩密度16.0kg/m3に予備発泡させて予備発泡粒子を得た。この予備発泡粒子を20℃で24時間に亘って熟成させた。次に、上記予備発泡粒子を金型内に充填して加熱発泡させて、縦400mm×横300mm×厚さ30mmの板状発泡体を得た。なお、平均気泡膜厚は1.1μmであった。
【0061】
(実施例2)
厚み0.40μm、アスペクト比120の鱗片状珪酸塩を使用した以外は、実施例4と同様にしてスチレン系樹脂発泡体を得た。その天然雲母の含有量が4.9質量%であった。なお、重合中のスチレンモノマー量の最高値は21.0質量%であった。なお、発泡体の平均気泡膜厚は1.0μmであった。
(実施例3)
発泡剤としてブタンの変わりにN−ペンタンを使用した以外は実施例1と同様にしてスチレン系樹脂発泡体を得た。天然雲母の含有量が4.9質量%、重合中のスチレンモノマー量の最高値は21.5質量%であった。なお、発泡体の平均気泡膜厚は1.7μmであった。
【0062】
(比較例1)
鱗片状珪酸塩を添加しなかった他は実施例と同様にして、スチレン系樹脂発泡体を得た。発泡体の平均気泡膜厚は1.0μmであった。しかし、曲げ強度に劣るものであった。
(比較例2)
厚みが0.8μm、アスペクト比69の鱗片状珪酸塩を使用する以外は、実施例と同様にして、スチレン系樹脂発泡体を得た。発泡体の平均気泡膜厚は1.0μmであった。しかし、成形性、曲げ強度に劣るものであった。
表1に発泡体の各種測定値をまとめて示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1から、特定の範囲の平均気泡膜厚の気泡膜と、気泡膜内に位置した特定の厚みの鱗片状珪酸塩とを含むスチレン系樹脂発泡体は、密度が低くても、十分な強度を有していることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂からなる気泡膜で囲まれた気泡と、前記気泡膜内に位置する鱗片状珪酸塩とを備え、
前記気泡膜が、0.2〜2.0μmの平均気泡膜厚を有し、
前記鱗片状珪酸塩が、前記平均気泡膜厚の0%より大きく、かつ50%以下の厚みを有することを特徴とするスチレン系樹脂発泡体。
【請求項2】
前記鱗片状珪酸塩が10〜1000のアスペクト比を有し、前記スチレン系樹脂発泡体が10〜30kg/m3の密度を有する請求項1に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項3】
前記鱗片状珪酸塩が、天然雲母、合成雲母又はセリサイトである請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂発泡体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂発泡体の製造に使用される発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法であり、
反応容器内で水性媒体中に分散させてなる鱗片状珪酸塩を含有するスチレン系樹脂種粒子に、スチレン系モノマーを含浸させた後に重合させるか又は含浸させつつ重合させることでスチレン系樹脂粒子を得る工程と、
前記スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させるか又は前記スチレン系モノマーの重合途上で発泡剤を含浸させる工程とを含み、
前記スチレン系モノマーの含浸及び重合が、15体積%以上の酸素濃度に保たれた反応容器内で行われ、
前記スチレン系モノマーは、前記スチレン系モノマーの含浸始期から重合終期までの間のスチレン系成長途上樹脂粒子中における前記スチレン系モノマー量が40質量%以下となるように、前記水性媒体中に供給されることを特徴とする発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の製造方法により得られる発泡性スチレン系樹脂粒子。

【公開番号】特開2012−72314(P2012−72314A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219446(P2010−219446)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】