説明

ストッパ付カーテンランナー

【課題】簡素且つコンパクトな構成であり、任意の位置で容易に固定可能なカーテンランナーを提供する。
【解決手段】ランナー本体10と、フック部材20と、ストッパ片30と、ストッパ片30を常時上方へ付勢する圧縮バネ31とを有する。フック部材20はフック部20aと軸部20bとを備え、軸部20bがランナー本体10に穿設された貫通孔11へ昇降自在に挿通されている。軸部20bはランナー本体10より長く、軸部20bの上端にストッパ片30が設けられている。貫通孔11は小径部11aと大径部11bとからなり、小径部11aとストッパ片30との間において、軸部20b周りに圧縮バネ31が巻装されている。軸部20bの下端部に規制片21を設け、貫通孔11の前後に左右一対のローラ12・12を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンレール内をスライド移動自在なカーテンランナーに関し、特に、任意の位置において固定可能とするストッパを備えるカーテンランナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カーテンの先端にマグネットを備えるカーテンランナーを設けて、カーテンを全閉位置で固定可能としたものはある。しかし、このようなマグネットランナーは、全閉位置以外の任意の位置で固定することはできない。したがって、カーテンを途中まで開いた状態で窓を開けると、風によってカーテンの位置が変動してしまうことがあった。また、カーテンの全開状態では、一般的にカーテンの上下中間部が結束帯によって結束固定されることが多い。しかし、このような状態でも、カーテンのキックバック(反発力)によってカーテンの上部がある程度閉まってしまい、大きく全開させることができない。さらに、室内意匠等の観点から、カーテンの上下中間部を結束帯で固定しながらも、カーテンの上部のみは大きく閉めた状態などカーテンレイアウトを種々変更したい場合でも、従来技術では不可能であった。そこで、任意の位置で固定可能なカーテンランナーとして、下記特許文献1や特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1では、カーテンレールに沿って走行可能に配設されるカーテンランナーと、カーテンレールの一端に配設される巻き取り部材とからなる。カーテンランナーは、出没可能に構成したストッパを組み込んだ係止具を備えている。係止具は、これの上端に押しボタンを備えると共に、これの内部にノック式ボールペンと同様の切替機構を備える。押しボタンの上端には、変換フックが取り付けられている。変換フックは、これの下端にカーテンフックを掛ける受け部を形成し、これの上端にストッパを備える。そして、カーテンを引き下げることによって係止具の押しボタンを押圧操作し、切替機構によってストッパの出没状態を交互に切り替えてカーテンランナーを任意の位置で固定可能となっている。
【0004】
特許文献2では、カーテンレール内をスライド移動可能なカーテンランナーにおいて、カーテンランナー本体の内部に、上下移動可能でバネにより上方向に常時付勢されたスライド部材を設け、該スライド部材が上方向に移動したときレールの下面に圧接するロック部材と、カーテンフックを掛けるためのフック孔と、スライド部材を上方向の開放位置及び下位置の二箇所の位置で交互に保持するラッチ機構とを有する。そして、カーテンを引き下げることによってラッチ機構を切り替え、カーテンランナーを任意の位置で固定可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−325310号公報
【特許文献2】特開2005−273436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2では、カーテンの引き下げ操作によって容易にカーテンランナーを任意の位置で固定可能となっている。しかし、特許文献1では押しボタンを備える切替機構を、特許文献2ではラッチ機構をそれぞれ備えており、カーテンランナーの部品点数が多く複雑且つ大型な構成となっている。これでは、製造コストが嵩むと共に、カーテンランナーが目立って意匠性にも課題を残す。
【0007】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、簡素且つコンパクトな構成であり、任意の位置で容易に固定可能なカーテンランナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、カーテンレール内をスライド移動自在なカーテンランナーであって、前記カーテンレール内に配されるランナー本体と、カーテンフックが掛け止められるフック部材と、前記カーテンレールに圧接して前記ランナー本体を任意の位置で固定可能なストッパ片とを有する。前記ランナー本体には、上下に貫通する貫通孔が穿設されている。前記フック部材は、フック部と、該フック部の上方に連続する軸部とを備え、前記軸部が前記ランナー本体の貫通孔へ昇降自在に挿通されている。前記フック部材の軸部の長さ寸法は前記ランナー本体の高さ寸法よりも大きく、該軸部の上端に前記ストッパ片が設けられている。前記貫通孔は、前記フック部材の軸部の挿通のみを許容する小径部と、該小径部の上方に連続し、前記フック部材の軸部の直径より大きな大径部とからなる。そして、前記小径部とストッパ片との間において、前記フック部材の軸部周りに圧縮バネが巻装され、前記フック部材及びストッパ片が常時上方へ付勢されていることを特徴とする。
【0009】
当該カーテンランナーは、常時は前記ストッパ片がカーテンレールの天壁に圧接していることによって固定されているが、前記フック部材のフック部に掛け止められたカーテンを、前記圧縮バネの付勢力に抗して下方に引き下げるだけで前記ストッパ片をカーテンレールから離接させて固定状態を解除でき、このままカーテンランナーを前後にスライド移動させるだけで容易に任意の位置でカーテンランナーを固定できる。したがって、カーテンを途中まで閉めた(開いた)状態で窓やドアを開いても、風によってカーテンの位置が変位することがない。また、カーテンの全開状態でも、当該カーテンのキックバック力(反発力)に抗して大きく全開させることができる。また、任意の位置で固定可能なため、カーテン保持状態のレイアウト自由度も向上する。
【0010】
前記貫通孔の下端部にある小径部は、前記フック部材の軸部の挿通を許容するだけの直径であり、前記フック部材のフック部の大きさよりも小さい。したがって、上記最も基本的な構造では、前記フック部材の上方突出限界は、前記フック部がランナー本体の下面に当接する位置である。すなわち、前記フック部材は、これの下端部にある前記フック部によってランナー本体からの上方抜け外れが規制される。しかし、この場合、前記フック部材の昇降操作を繰り返すことによって、前記ランナー本体がフック部によって変形するなど損傷するおそれもある。そこで、必ずしも必要ではないが、前記フック部材の軸部の下端部に、前記貫通孔の小径部の直径より大きく、前記ランナー本体の下面に当接可能な規制片を設けることが好ましい。
【0011】
また、カーテンランナーには、カーテンレール内を円滑にスライド移動させるため、左右一対のローラを設けることが好ましい。この場合、ローラの配設位置や個数は特に限定されないが、前記貫通孔を前記ランナー本体の前後中央部に穿設したうえで、前記貫通孔の前後に、それぞれ前記カーテンレール内を転動可能な左右一対のローラを設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ランナー本体に穿設した貫通孔に、上端にストッパ片を備えるフック部材を挿通し、当該フック部材を圧縮バネによって常時上方へ付勢しただけの簡素な構造となっている。したがって、カーテンランナーの部品点数が少なく組み立ても容易であり、製造コストを低減できる。また、簡素な構造であることによってコンパクトであり、カーテンレールに装着してもカーテンランナーが目立つことなく、意匠性にも優れる。しかも、このような簡素な構造なので、既存のカーテンレールにも容易に装着でき、既存のカーテンランナーとの交換も容易である。
【0013】
フック部材の軸部の下端部に規制片を設けていれば、当該規制片によってフック部材がランナー本体から抜け外れることが規制される。これにより、フック部によってランナー本体が損傷することを防止できる。また、規制片を設ける位置によって、フック部材延いてはストッパ片の上方突出限界を設計できる。
【0014】
貫通孔をランナー本体の前後中央部に穿設したうえで、当該貫通孔の前後に左右一対のローラを設けていれば、カーテンランナーのスライド移動が円滑になるほか、フック部材の昇降操作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】カーテンランナーの側面図である。
【図2】カーテンランナーの平面図である。
【図3】カーテンレールに装着した状態の縦断正面図である。
【図4】カーテンレイアウトの一例を示す窓周りの正面図である。
【図5】カーテンの全開状態を示す窓周りの正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明に係るカーテンランナーの代表的な実施例について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。図1〜図3に示すように、カーテンランナー1は、カーテンレール40内にスライド移動自在に配されるランナー本体10と、ランナー本体10へ昇降自在に挿通されたフック部材20と、フック部材20の上端に設けられたストッパ片30と、ストッパ片30を付勢する圧縮バネ31とを有する。ストッパ片30は、カーテンレール40の内面に圧接することで、ランナー本体10すなわちカーテンランナー1を任意の位置で固定可能とするものである。
【0017】
ランナー本体10は樹脂成形品であり、ランナー本体10の平面方向(前後及び左右方向)中央部には、上下に貫通する貫通孔11が穿設されている。なお、本発明における前後左右とは、図2に示す方向を基準としており、前後方向はカーテンレールの軸方向と一致し、左右方向はカーテンレールの幅方向に一致する。貫通孔11は、ランナー本体10の下面に臨む小径部11aと、該小径部11aの上方に連続し、ランナー本体10の上面まで至る大径部11bとからなる。貫通孔11の前後には、左右一対のローラー12・12が設けられている。各ローラー12は、軸ピン13を中心に回動自在であり、ランナー本体10の左右側面に設けられている。ランナー本体10の下端部には、左右方向中央部から左右両外方に向けて突出するフランジ部10aが形成されている。フランジ部10aの幅寸法は、カーテンレール40のスライド溝41の幅寸法より大きい。
【0018】
フック部材20は、これの下端部にあるフック部20aと、該フック部20aの上方に一体的に連続する軸部20bとを備え、軸部20bがランナー本体10の貫通孔11へ下方から挿通されている。軸部20bの長さ寸法はランナー本体10の高さ寸法(貫通孔11の長さ寸法)よりも大きく、その上端はランナー本体10(貫通孔11)の上方へ突出している。貫通孔11の小径部11aの直径は、軸部20bの直径と略同一(僅かに大きい程度)であり、軸部20bの挿通のみを許容する。一方、貫通孔11の大径部11bの直径は、軸部20bの直径より一回り大きい。フック部20aは、ランナー本体10の下方に位置しており、当該フック部20aに図外のカーテンフックが掛け止められる。なお、カーテンフックは、図外のカーテンに係着されている。なお、本実施例におけるフック部20aは円環リング形状であるが、カーテンフックを掛け止め可能な形状であれば、その形状は特に限定されない。
【0019】
また、軸部20bの下端部(本実施例ではフック部20aの直上)には、円環リング状の規制片21が設けられている。規制片21は、貫通孔11(特に小径部11a)の直径より大きく、当該規制片21がランナー本体10のフランジ部10aの下面に当接することで、フック部材20の上方移動限界、延いては後述のストッパ片30の上方突出限界が規制される。また、規制片21によってランナー本体10の損傷を防止するワッシャーとしての機能も兼ね備える。規制片21は、軸部20bに挿通するのみでもよいが、軸部20bに接着・溶接・圧入・螺合等によって接合固定することが好ましい。特に、軸部20bに固定していれば、規制片21の配設位置によってフック部材20及びストッパ片30の上方突出限界を設計できる。
【0020】
フック部材20の軸部20bの上端には、円盤状のストッパ片30が設けられている。ストッパ片30は、フック部材20の軸部20bの直径より大きい。ストッパ片30は、軸部20bに接着・溶接等によって接合することもできるし、螺合することもできる。ストッパ片30は、一定の剛性を有する素材であれば金属、合成樹脂、セラミックス、又は木材など特に限定されないが、ストッパ効果を向上させるため、上面に摩擦係数の高いゴム材を配しておくことが好ましい。なお、本実施例ではゴム材を配していない。また、ストッパ片30の上面は平坦でもよいが、複数の突条や突起などを設けることも好ましい。
【0021】
貫通孔11の大径部11bを含めて貫通孔11の小径部11aの上面とストッパ片30の下面との間には、フック部材20の軸部20b周りに圧縮バネ31が巻装されている。これにより、フック部材20及びストッパ片30は、常時上方へ付勢されている。圧縮バネ31の外径と貫通孔11の大径部11bの直径は、略同一である。
【0022】
このような構成のカーテンランナー1を組み立てる場合、ランナー本体10の貫通孔11に、これの下方からフック部材20の軸部20bを相通する。このとき、軸部20bには、予め規制片21を挿通しておく。次いで、軸部20bの上方から圧縮バネ31を嵌装したうえで、軸部20bの上端にストッパ片30を接合する。これに前後して、各ローラー12を軸ピン13によって回動自在に軸支することで完成である。このように、本発明のカーテンランナー1は、固定機構を有しながらも部品点数が少なく構造が簡素なため、製造も容易である。
【0023】
カーテンランナー1は、従来のカーテンランナーと同様に、カーテンレール40の一端から挿通すればよい。その上で、フック部材20のフック部20aにカーテンフックを掛け止める。なお、本発明のカーテンランナー1は、少なくともカーテンの先端に配せばよいが、カーテンの中間部や基端に配すことも好ましい。カーテンの基端に配しておけば、ランナーストッパーが不要となるメリットがある。また、カーテンの中間部に複数個配しておけば、カーテンレイアウトの自由度が向上する。
【0024】
カーテンランナー1をカーテンレール40に装着したとき、図3に示すように、各ローラー12がカーテンレール40の下壁上に転動可能に載置され、ランナー本体10の左右中央部はスライド溝41内に位置している。このとき、フランジ部10aはカーテンレール40の下面に位置しており、カーテンレール40の下壁が各ローラー12とフランジ部10aの間に挟まれた状態となっている。そして、ストッパ片30が圧縮バネ31によって上方へ付勢されていることによって、当該ストッパ片30がカーテンレール40の天壁に圧接し、カーテンランナー1の位置が固定される。
【0025】
この固定状態から、圧縮バネ31の付勢力に抗してカーテンを下方へ引き下げると、フック部材20が下方へ牽引される。すると、ストッパ片30も下方へ移動してカーテンレール40の天壁から離接し、固定解除状態となる。このとき、フック部材20の前後に左右一対のローラー12・12が配されていることで、フック部材20の昇降動作は安定して行われる。そして、当該カーテンを下方へ引き下げた固定解除状態のままカーテンを前後へ移動させると共に、カーテンランナー1を任意の位置へスライド移動させる。カーテンランナー1を任意の位置へ移動できたら、カーテンを放せばよい。すると、フック部材20及びストッパ片30が圧縮バネ31の付勢力によって上方へ移動し、ストッパ片30がカーテンレール40の天壁に圧接することで、再度固定状態となる。このように、本発明のカーテンランナー1は、切替機構やラッチ機構を有さずとも、カーテンを下方へ引き下げながら移動させ、任意の位置でカーテンを放すだけで容易に固定できる。
【0026】
このようなカーテンランナー1を使用していれば、例えば図4に示すように、カーテン45の上下中間部を結束帯47によって結束保持しながら、カーテン45の上部のみは、仮想線(二点差線)で示す通常の全開状態よりもある程度閉めた位置にて保持させることができ、カーテンレイアウトによって室内意匠を向上させるなどが可能となる。なお、符号46は窓である。
【0027】
また、図5の仮想線(二点鎖線)で示すように、一般的にはカーテン45を結束帯で結束しなければ、全開状態でもカーテン45のキックバック(反発力)によって若干カーテン45が閉まってしまう。しかし、本発明のカーテンランナー1を使用していれば、図5の実線で示すように、結束帯を使用せずとも、キックバックに抗してカーテン45を大きく全開できる。もちろん、カーテン45を中間位置まで閉めた状態で窓46を開けたとしても、風によってカーテン45の位置が変動することはない。
【符号の説明】
【0028】
1 カーテンランナー
10a フランジ部
10 ランナー本体
11 貫通孔
11a 小径部
11b 大径部
12 ローラー
13 軸ピン
20 フック部材
20a フック部
20b 軸部
21 規制片
30 ストッパ片
31 圧縮バネ
40 カーテンレール
41 スライド溝



【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンレール内をスライド移動自在なカーテンランナーであって、
前記カーテンレール内に配されるランナー本体と、カーテンフックが掛け止められるフック部材と、前記カーテンレールに圧接して前記ランナー本体を任意の位置で固定可能なストッパ片とを有し、
前記ランナー本体には、上下に貫通する貫通孔が穿設されており、
前記フック部材は、フック部と、該フック部の上方に連続する軸部とを備え、前記軸部が前記ランナー本体の貫通孔へ昇降自在に挿通されており、
前記フック部材の軸部の長さ寸法は前記ランナー本体の高さ寸法よりも大きく、該軸部の上端に前記ストッパ片が設けられており、
前記貫通孔は、前記フック部材の軸部の挿通のみを許容する小径部と、該小径部の上方に連続し、前記フック部材の軸部の直径より大きな大径部とからなり、
前記小径部とストッパ片との間において、前記フック部材の軸部周りに圧縮バネが巻装され、前記フック部材及びストッパ片が常時上方へ付勢されていることを特徴とする、カーテンランナー。
【請求項2】
前記フック部材の軸部の下端部には、前記貫通孔の小径部の直径より大きく、前記ランナー本体の下面に当接可能な規制片が設けられている、請求項1に記載のカーテンランナー。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記ランナー本体の前後中央部に穿設されており、
前記貫通孔の前後には、それぞれ前記カーテンレール内を転動可能な左右一対のローラが設けられている、請求項1または請求項2に記載のカーテンランナー。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−67525(P2011−67525A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222799(P2009−222799)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【特許番号】特許第4418026号(P4418026)
【特許公報発行日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(509269403)
【出願人】(504393839)有限会社メイナン (2)
【Fターム(参考)】