説明

ストラップの製造方法

【目的】本発明は、鮮明な模様を紐部に施すことができ、しかも、携帯電話、携帯ゲーム機等の画面やメガネ拭きとしても用いることができる紐部を備えたストラップの製造方法の提供。
【解決手段】本発明のストラップの製造方法は、マイクロファイバーを素材とする紐部を成形し、前記紐部の表面に昇華性染料インクを用いた熱転写手段によって模様を施すことを特徴とする。
又、紐部は帯状であり、当該帯状の紐部の表面又は表面と裏面とに熱転写手段によって模様を施すことを特徴とする。
又、熱転写手段は、搬送装置によって平らに伸展させた帯状の紐部と転写紙とを重ねた状態で転写台に平面移動させつつ、加圧加熱ローラ装置によって加圧加熱させることによって前記転写紙に描画された昇華性染料パターンの模様を帯状の紐部に熱転写させる手段であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話、携帯ゲーム機や鍵等の小物類(以下、対象物ともいう)に付けて、対象物の落下や紛失防止或いは装飾のための提げ紐として用いるストラップの製造方法に関し、詳しくは、対象物に係脱自在に係止する係止部と手や指に通したり首に掛けたりする紐部とで一般に構成されるこの種のストラップ(提げ紐)の紐部の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のストラップは、例えば、特許文献1で提案されているように、樹脂成型金型を用いて製造されていたが、樹脂成型金型によるストラップ、殊に、紐部の製造方法では、施す色は一色で、図柄等の模様を施すことは困難であった。
又、紐部が図柄印刷が可能な平面部分を有する場合、当該平面部分に印刷インクを用いて印刷することはできるが、印刷インクを用いると印刷インクの浸透によって模様に滲みが生じてしまい、鮮明な模様の印刷は困難であった。
尚、比較的鮮明な印刷手段としては特許文献2に示すような熱転写手段がある。
【0003】
又、従来のこの種のストラップの紐部は、ビニール、ポリエステル或いは革等の素材が用いられているが、これ等の素材は何れも、専ら、対象物の落下紛失の防止や装飾用のためという従来の用法に止まるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−209525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、鮮明な模様を紐部に施すことができ、しかも、携帯電話、携帯ゲーム機等の画面やメガネ拭きとしても用いることができる紐部を備えたストラップの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のストラップの製造方法は、マイクロファイバーを素材とする紐部を成形し、前記紐部の表面に昇華性染料インクを用いた熱転写手段によって模様を施すことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1のストラップの製造方法において、紐部は帯状であり、当該帯状の紐部の表面又は表面と裏面とに熱転写手段によって模様を施すことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2のストラップの製造方法において、熱転写手段は、搬送装置によって平らに伸展させた帯状の紐部と転写紙とを重ねた状態で転写台に平面移動させつつ、加圧加熱ローラ装置によって加圧加熱させることによって前記転写紙に描画された昇華性染料パターンの模様を帯状の紐部に熱転写させる手段であることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項乃至請求項3の何れかに記載のストラップの製造方法において、マイクロファイバーは、少なくとも転写される表面側においてポリエステル混合比が70%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至請求項4の各発明によれば、何れも、紐部がマイクロファイバー製であるので、従来のような落下紛失の防止や装飾用のためのみならず、携帯電話、携帯ゲーム機等の画面やメガネ拭きとしても活用することができる。
【0011】
請求項2や請求項3の発明によれば、模様が熱転写された汚れ拭き用を兼ね備えた紐部を量産することができ、安価なストラップを提供することができる。
【0012】
請求項4の発明によれば、色柄等の模様が極めて鮮明な汚れ拭き用を兼ね備えたストラップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ストラップの外観斜視図である。
【図2】熱転写手段の構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態として、携帯電話や携帯ゲーム機用のストラップの製造方法の実施例を図1及び図2に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1において、符号1は携帯電話や携帯ゲーム機用のストラップであり、このストラップ1は、U字状に曲げられた帯状の紐部2と、当該紐部2のU字状の両端を重ね合わせて綴じる固着部3及び当該固定部3から延在する細紐4から成る係止部5とで、構成されている。
係止部5の細紐4は、携帯電話や携帯ゲーム機の所定箇所に直接絡みつけるための強靭な紐であり、固着部3は帯状に長い紐部2を輪状とするための連結具である。
【0016】
図示の紐部2は、U字状に曲げた帯状の輪としてあるが、この実施例の形状に限らず、例えば、直線状の単なる短冊状としてもよいし、或いは、円形や角形としてもよい(図示せず)。
又、図示の係止部5もまた、この実施例に限らず、例えば、細紐4に代えてリング或いはフックとしてもよい(図示せず)。
【0017】
帯状の紐部2は、マイクロファイバーを素材としており、ポリエステルファイバー70%、ナイロンファイバー30%のロール状マイクロファイバー材を適当に裁断して成形したものである。
素材としてのマイクロファイバーは、後述する熱転写手段によって模様を鮮明に転写させるためには、ポリエステルファイバーの混合比が高い方がよく、実施例のように70%以上が好適である。
【0018】
又、紐部2をマイクロファイバー製とすることによって、当該紐部2を汚れ拭きとり用として用いることができる。
マイクロファイバーは、文字通り極細或いは超極細といわれる繊維であるから、通常の繊維素材に比べて、汚れ拭き取り作用が極めて高い。
【0019】
従って、マイクロファイバー製の紐部2を備えたストラップ1を、常時携帯するであろう携帯電話や携帯ゲーム機用のストラップとしておくと、ハンカチやテッシュペーパー等の拭き取り具が手許に無くても、即座に、備え付けのストラップの紐部2で、携帯電話や携帯ゲーム機の画面の汚れを即座に拭き取ることができる。
又、眼鏡のレンズも同様に拭き取ることもできる。
【0020】
尚、この実施例では、紐部2を拭き取り用具として利用し易いように帯状としたが、
が、必ずしも帯状とする必要はなく、例えば、丸紐状としてもよい。丸紐状とする場合には、後述の熱転写手段による模様転写の際には素材としての帯状のマイクロファイバーを平たく平面状に伸展させた状態(以下、平面状態ともいう)で転写した後、平面状のマイクロファイバーを適宜手段により丸めて、転写面が周面となるように丸め加工することになる。
【0021】
次に、図2に基づいて、帯状の紐部を平面状態として当該帯の表面に昇華性染料インクを用いて熱転写手段によって模様を施す方法を説明する。
図2において、10は熱転写手段であり、この熱転写手段10は、平らに伸展させた紐部2と転写紙6とを重ねた状態で上下一対の転写台11、11に各々平面移動させる搬送装置12、12と、上下の転写台11の間に平行移動して送り込まれる紐部2及び当該紐部2の上下(表裏)に各々重ねられた転写紙6とを、重ねた状態のままで上下方向から加圧しながら加熱する加圧加熱ローラ装置13、13とを備えている。
上下に配された一対の加圧加熱ローラ装置13、13による加圧と過熱とによって、前記転写紙6、6に描画された昇華性染料パターンの模様が帯状の紐部2の両面即ち表裏に熱転写される。
【0022】
この実施例の熱転写手段10は、平らに伸展させた帯状の紐部2の表面と裏面とに同時に熱転写(印刷)する手段であるが、必ずしも両面転写(両面印刷)する必要はなく、片面転写(片面印刷)だけでもよい。一方側の面だけの片面転写をする場合には、転写されない他方側の転写紙は無用であり、且つ、加熱の必要もないから当該側の加圧加熱ローラ装置13の加熱電源を切って稼働させることになる。
この熱転写手段10は、紐部2と転写紙6とを重ねた状態で水平移動方向に連続的に複数並べた状態で連続転写できる。この場合、転写用紙はロール状でもシート状でもよい。
【0023】
加圧加熱ローラ装置13は内部にヒータ(図示せず)を備えており、加熱温度は、転写に用いる昇華性染料インクの種類(組成)により異なるが、概ね摂氏130℃〜250℃、より好ましくは160℃〜200℃の範囲で、180℃が最適である。
この加圧加熱ローラ装置13によって、重ねられた転写紙に描画された模様(パターン)の昇華性染料インク(昇華性染料)が昇華(気化)して、染料そのものが紐部2の繊維そのものに浸透する。
【0024】
従って、このような昇華性染料インクによるマイクロファイバー素材の紐部2への転写方法によれば、通常の印刷や染色のように繊維と繊維との間の繊維間に染料が入り込まないので、滲みのない鮮やかな模様を施すことができるだけでなく、マイクロファイバー自体の拭き取り作用をも妨げることなく、マイクロファイバーの素材が持つ拭き取り作用をより効果的に発揮させることができる。
尚、熱転写手段(10)はこの実施例に示す手段に限らず、他の適当な熱転写手段を用いてもよい(図示せず)。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、小物類等の対象物の落下や紛失防止や装飾のためにのみ用いられていた従来のストラップに、汚れ拭き取り用という新たに用途を与えることができ、携帯電話等に限らず、汚れ拭き取り用のストラップとして広く産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ストラップ
2 紐部
5 係止部
10 熱転写手段
11 転写台
12 搬送装置
13 加圧加熱ローラ装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロファイバーを素材とする紐部を成形し、前記紐部の表面に昇華性染料インクを用いた熱転写手段によって模様を施すことを特徴とするストラップの製造方法。
【請求項2】
紐部は帯状であり、当該帯状の紐部の表面又は表面と裏面とに熱転写手段によって模様を施すことを特徴とする請求項1のストラップの製造方法。
【請求項3】
熱転写手段は、搬送装置によって平らに伸展させた帯状の紐部と転写紙とを重ねた状態で転写台に平面移動させつつ、加圧加熱ローラ装置によって加圧加熱させることによって前記転写紙に描画された昇華性染料パターンの模様を帯状の紐部に熱転写させる手段であることを特徴とする請求項1又は請求項2のストラップの製造方法。
【請求項4】
マイクロファイバーは、少なくとも転写される表面側においてポリエステル混合比が70%以上であることを特徴とする請求項乃至請求項3の何れかに記載のストラップの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−210297(P2012−210297A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77027(P2011−77027)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(503212571)楽プリ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】