説明

ストレプトミセスから得られたワクチン組成物

本発明は免疫学の分野に関し、詳細には、ミクロバクテリアによって引き起こされる感染症を予防するためのワクチンの使用に基づく前記感染症の制御に関する。本発明のワクチンは、ヒト結核菌の抗原を発現し又は発現しない、さまざまな経路によって投与された後にBCG及びヒト結核菌の脅威に対するその防御能力を証明したストレプトミセスの生きた株を使用して開発された。本発明はさらに、ストレプトミセス株を使用して、関心のワクチンの異種抗原を発現させることに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免疫学の分野に関し、詳細には、ヒト結核菌(M.tuberculosis)の抗原を発現し又は発現しないストレプトミセス(Streptomyces)の生きた株から得られ、さまざまな経路によって投与された後にBCG及びヒト結核菌を用いたチャレンジに対するその防御能力を証明したワクチンを使用した、ミコバクテリア(mycobacteria)によって引き起こされる感染症の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
ミコバクテリアのうち、動物及びヒトに対する以下のような重要な病原体が見つかっている:結核を引き起こすヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、癩病の原因となる癩菌(Mycobacterium leprae)、免疫力の低下した患者において結核を引き起こすトリ結核菌(Mycobacterium avium)及びミコバクテリウム イントラセルラーレ(Mycobacterium intracelulare)、並びに程度は低いながらもヒトの病気を引き起こす他のミコバクテリア(Somner HM,Good RC,「ミコバクテリウム(Mycobacterium)」,Manual of clinical Microbiology,4 ed.Washington D.C:A Society for Microbiology;1985.p.216−248、Orme IM,「ミコバクテリアに対する免疫(Immunity to mycobacteria)」,Current Opinion in Immunology.1993;5:497−502)。
【0003】
動物の場合には、反芻動物のジョーンズ病(Jones Disease)を引き起こすミコバクテリウム アビウム subsp.パララツベルクロシス(Mycobacterium avium subsp.pararatuberculosis)、及びウシハイライトの結核を引き起こすウシ結核菌(Mycobacterium bovis)がある(Dannenberg Am.「結核の病因:動物及びヒトの天然及び獲得抵抗力(Pathogenesis of tuberculosis:native and acquired resistance in animals and humans)」,Microbiology,Leive L,Schelesinger D(eds),1984,p344−354)。
【0004】
結核(TB)はヒトの最も重要なミコバクテリウム疾患の1つである。結核は世界的な健康問題の1つであり、BCGワクチンの接種及び結核を制御するための多数の薬物の使用にもかかわらず、結核は感染症関連死の主要な原因である(Dolin PJ,Raviglione MK,Kochi A,「1990〜2000年における世界の結核の発生率及び死亡率(Global tuberculosis incidence and mortality during 1990−2000)」,Bull WHO,2001;72:213)。
【0005】
世界の人口の3分の1がヒト結核菌に感染していると推定される。世界中で毎年8百万人が活動性のTBを発病し、3百万人が死亡する。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)との共感染は全症例の3から5%にのぼる(Dolin PJ,Raviglione MK,Kochi A,「1990〜2000年における世界の結核の発生率及び死亡率(Global tuberculosis incidence and mortality during 1990−2000)」,Bull WHO,1994;72:213)。
【0006】
この病気が大きな広がりを見せているため、より優れた新しい診断方法、ワクチン製剤及び治療薬が求められている(Collins FM,「結核:宿敵の復活(Tuberculosis:The Return of an Old Enemy)」,Critical Reviews in Microbiology.1993;19:1−16)。
【0007】
治療は、比較的に高い投与量で長期間にわたって投与される薬物の組合せに基づき、これに関連した毒性が知られている。このことは、制御された治療のプログラムの実現を困難にする(McCarthy M,「専門家が見た結核との戦いの進捗(Experts see progress in fight against tuberculosis)」,Lancet.2002;359:2005)。この点に関しては、制御プログラムの適用及びその遂行を容易にし、耐性菌の出現を防ぐと考えられる治療回数の減少が望ましい。使用される薬剤の投与量を低減させることも、治療毒性を減らすための有用な要素であろう。
【0008】
現在、多剤耐性を有する株の出現は、多くの感染者(5千万人)及び将来に生じるこれらの特徴を有する多くの患者に対して新たな代替治療の開発を要求する、ますます大きくなる問題である(McCarthy M,News,「専門家が見た結核との戦いの進捗(Experts see progress in fight against tuberculosis)」,Lancet.2002;359:2005、Hopewell PC,「結核の制御:1990年以降世界はどう変わったか(Tuberculosis Control:How the world has changed since 1990)」,Bull.World Health Org 2002,80:427、Freire M,Rosigno G,「TBと戦う武器を開発するために我々は力を合わせなければならない(Joining forces to develop weapons against TB:together we must)」,Bull.World Health Org 2002,80:429)。
【0009】
さらに、適当な治療法が見つかっていないヒトの病気を引き起こす複数のミコバクテリア種が存在する。
【0010】
BCGは、現在ヒトに対して使用可能な唯一の結核ワクチンである。世界中で既にほぼ30億用量分が投与されている。その効能は、使用される株、栄養状態、遺伝的背景、加齢及び介入性感染症の有無によって大きく変化する。BCGの使用は、唯一、乳児期における深刻な形態の結核(粟粒及び髄膜炎)の予防には有効だが、肺結核の予防には効果がないと考えられており、そのため新しいワクチン製剤の開発が急務である(Hirsch LS,Johnson−JL,Ellner JJ,「肺結核症(Pulmonary tuberculosis)」,Curr−Opin−Pulm−Med 1999;5(3):143−50、Jacobs GG,Johonson JL,Wallis RS,結核ワクチン:ヒトでの試験にどれだけ近づいたか(Tuberculosis vaccines:how close to human testing)」,Tuber Lung Did 1997;78:159−169、Ginsberg AM,「結核ワクチンの最新情報(What’s new in tuberculosis vaccines?)」,Bull.World Health Org 2002,80:483)。
【0011】
結核に対するワクチンを開発する最も重要な戦略には、不活性化株、遺伝子的に又は他の方法で弱毒化した株、核酸ワクチン、サブユニットワクチン、及びヒト結核菌の抗原を発現する弱毒化生株の使用が含まれる。
【0012】
不活性化ワクチンは死んだ微生物からなるため、in vivoで存続することができず、防御のための関連タンパクを分泌タンパクとして産生することができないことから、防御能力が低いという欠点を有する。
【0013】
弱毒化株は、投与後に毒力を取り戻す可能性を欠点として有し、このことはヒトの安全にとって重大である。
【0014】
核酸ワクチンは、有望な戦略であるにもかかわらず、これまでのところ、ヒトにおいて十分な免疫原性レベルを達成していない。
【0015】
サブユニットワクチンは、微生物由来の又は組換え法によって得られた精製された成分であり、このことが防御反応、主にT細胞タイプ、Tヘルパー細胞タイプ1(TH1)の細胞反応を達成することを困難にしているため、生きた微生物と同じ免疫原性ポテンシャルは持たないと考えられている。
【0016】
弱毒化生株において関心のワクチンの抗原を発現させる戦略は、結核に対する新世代ワクチンの分野における最も有望な戦略の1つである。この戦略の重要な1つの要素は発現ベクターの選択であり、選択される株によっては、この選択が、規制の観点から、弱毒化生株の使用で直面する問題と同様の問題を生起させる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ストレプトミセスとヒト結核菌が同じ綱に属し、多くの遺伝子及び抗原を共有すること、トレプトミセスはヒトに対して無害であることが証明されていること、ヒトに使用する薬剤の生産にこれらの細菌が幅広く使用されていること、及びこの系においてヒト結核菌のタンパクを含む異種タンパクを発現させる方法の開発が著しく進んでいることを考慮して、本発明は、粘膜を含むさまざまな経路によって投与された、ヒト結核菌の抗原を発現することができ又は発現しないストレプトミセスの生きた株を有効成分として使用する、結核に対するワクチンの開発を設計した。
【0018】
本発明のワクチン製剤は、微生物ストレプトミセスに由来するさまざまな有効成分を含む。これらのうち、我々は以下のものを使用する。
ストレプトミセス(野生株)
ヒト結核菌の抗原Apaを発現する組換えストレプトミセス
【0019】
本発明において使用される野生株は、ヒト用の薬剤の製造において広く使用されている非病原性の工業生産株である。
【0020】
さまざまな経路によって株を投与した後に意外にも、これらの株の著しい体液及び細胞免疫原性が観察された。得られた反応は、免疫感作において使用される株(ストレプトミセス)の抗原に対して、発現されたヒト結核菌の抗原(Apa)に対して、及びヒト結核菌及びBCGの他の抗原に対して向けられ(実施例1)、このことは、ストレプトミセスとミコバクテリアの間に存在する抗原コミュニティ及びそれらの幅広い交差反応性を裏付けた。このことは、ヒト結核菌に対するワクチンとしてこれらの株の使用を保証した。
【0021】
これらの株の使用を保証する他の事実は、これらの株に、宿主の中でコロニーを形成し、組織病理学的な病変を生じさせる能力がないことであり、このことは、それらの無害性を再び支持する(実施例2)。
【0022】
これらの株は結核を防ぐために予防的に適用可能である。ヒト結核菌及びBCGに対する防御状態の誘導は、使用された全ての投与経路で示された(実施例3)。
【0023】
本発明の組成物は、マウスの感染モデルにおいて、BCG及びヒト結核菌の肺感染レベルの重大な低下を生み出した(実施例3)。
【0024】
本発明は、ミコバクテリアによって引き起こされる病気、特に結核の予防に、ストレプトミセス株に基づくワクチンを使用する新規の方法で取り組む。特にストレプトミセス株の使用は新規であり、従来技術では全く知られていない。さらに、これらの株が、粘膜経路による投与と腸管外経路による投与の両方で有効であったことも新規である。
【0025】
ストレプトミセス株を、関心のワクチンの抗原を発現する生きたベクトルとして使用することができることは重要であり、このことは従来技術において報告されていない。このことは、これらの株を使用して非ミコバクテリア抗原を発現させる可能性を広げ、このことは、アレルギー性、腫瘍性及び自己免疫性疾患を予防及び治療、並びに妊娠の予防にこれらを使用することを可能にする。
【0026】
次に、以下の特定の実施例によって本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(実施例1)
免疫原性の研究
動物:
この実験では、CENPALAB(キューバ)によって供給された8〜10週齢の雄のBalb/cマウスを使用した。
【0028】
BCG
凍結乾燥された弱毒化生BCG。InterVax,Biological Limited社(カナダ)。
【0029】
ストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)
この実験では、遺伝子的に形質転換されていない株1326、及び遺伝子的に形質転換され、ヒト結核菌のApAタンパクを発現する株1326を使用した。
【0030】
免疫感作スケジュール
30匹のBalb/cマウスを10匹ずつ4つのグループに分けた(表1)。
【0031】
グループ2のマウスは、ストレプトミセス リビダンス10CFUを3週間間隔で3回、IPによって受け取った。グループ3のマウスは、ヒト結核菌のApAタンパクを発現するストレプトミセス リビダンスを受け取った。
【0032】
グループ4のマウスも同じスケジュールで免疫したが、それぞれの免疫感作ではBCG 10を使用した。
【0033】
グループ1はSSを受け取り、コントロールとして使用した。
【0034】
最後の免疫から21日後に、それぞれのマウスから血液試料を採取した。
【0035】
【表1】

【0036】
ウエスタンブロット
ストレプトミセス リビダンス及びBCGのタンパク抽出物、並びにヒト結核菌の組換えApaタンパクをSDS−PAGEによって分離し(Laemmli A,UK.Nature 1970;227(6):680−685)、これらを、半乾燥システム(NovaBlot II、Pharmacia社(スウェーデン))を使用して、0.45mcmニトロセルロース膜にブロットした。
【0037】
これらの膜を、PBSに溶解した2%BSAを用いて、37で、2時間ブロッキングし、洗浄し、次いでPBSで1.150に希釈したグループ2、3及び4のマウスの血清のプールと共に、37で1時間培養した。
【0038】
洗浄後、これらの膜を、1.1500に希釈した多価抗マウスペルオキシダーゼ抱合体(Sigma社)と共に、37℃で、1時間培養し、ジアミノベンジジン及びHを基質として用いて現像した。
【0039】
この免疫原性の研究から得られた結果は、ストレプトミセス リビダンスで免疫されたマウスにおけるこの微生物の抗原に対する特異抗体反応の誘導を証明した(図1)。
【0040】
さらに、免疫されたマウスはBCGのタンパクを認識し、誘導された免疫反応のミコバクテリアとの交差反応性を証明した(図1)。この結果は非常に有意義であり、ミコバクテリアに対するストレプトミセスの免疫ポテンシャルを証明する。BCGに対して誘導された反応のストレプトミセスに対する交差反応性も証明された(図2)。食塩水で免疫にされたマウス血清は、ストレプトミセス又はBCGの抗原に対して反応性でなかった(図3)。
【0041】
ヒト結核菌のApaタンパクを発現するストレプトミセスで免疫されたマウスのグループは、形質転換していないストレプトミセスで免疫されたマウスと同様の反応を示した(データは示さない)。このマウスのグループでは、ウエスタンブロットによって、Apaタンパクに対する特異免疫反応が証明された(データは示さない)。この結果は、異種抗原の発現、特にヒト結核菌の異種抗原の発現の生きたベクターとして使用されるストレプトミセスの能力を証明した。
【0042】
(実施例2)
生体内分布の研究
動物:
この実験では、CENPALAB(キューバ)によって供給された8〜10週齢の雄のBalb/cマウスを使用した。
【0043】
BCG
凍結乾燥された弱毒化生BCG。InterVax,Biological Limited社(カナダ)。
【0044】
ストレプトミセス リビダンス
この実験では、遺伝子的に形質転換されていない株1326、及び遺伝子的に形質転換され、ヒト結核菌のApAタンパクを発現する株1326を使用した。
【0045】
この研究は、6匹ずつ8つのグループに分けられた48匹のマウスを用いて設計した(表2)。
【0046】
グループ2、3及び4のマウスはそれぞれ、蒸留水200μlに懸濁させたストレプトミセス リビダンス10、10及び10を、腹腔内経路(IP)によって受け取った。
【0047】
グループ6、7及び8のマウスは、蒸留水50μlに懸濁させたストレプトミセス リビダンス10、10及び10を、鼻腔内経路(IN)によって受け取った。
【0048】
このグループのマウスは、食塩水(0.9%NaCl)(SS)200μlをIPによって受け取り、グループ5のマウスは、食塩水50μlをINによって受け取った。
【0049】
30日後、マウスを死亡させ、心臓、肺、肝、脾臓及び腎臓を、微生物学的研究(3匹のマウス)及び組織病理学的研究に(3匹のマウス)に供した。
【0050】
組織病理学的研究は、ヘマトキシリン及びエオシンで染色した組織試料を用いて実施した。
【0051】
微生物学的研究はYEME培地を用いて実施した(Tobias Kieser,Mervyn J.Viv.,Mark J.Buttner,Perth F.Charter,David A.Hopwood,「実践ストレプトミセス遺伝学(Practical Streptomyces Genetics)」,Crowes,Norwich.England.2000)。
【0052】
【表2】

【0053】
この体内分布研究では、研究した器官内のこの微生物の存在が明らかでなかった。
【0054】
組織病理学的研究は、研究した器官の病変を証明しなかった。ヒト結核菌のApaタンパクを発現するストレプトミセスの研究でも同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0055】
これらの結果を考慮すれば、ストレプトミセスは安全であり、このことは、ストレプトミセスを有害作用なく生ワクチンとして使用することの実現可能性を証明していると、我々は結論することができる。
【0056】
試験した株が安全であるにもかかわらず、それらの株が良好な免疫反応を誘導した(図1)ことを強調することには意義がある。
【0057】
(実施例3)
チャレンジ実験
動物:
この実験では、CENPALAB(キューバ)によって供給された8〜10週齢の雄のBalb/cマウスを使用した。
【0058】
BCG
凍結乾燥された弱毒化生BCG。InterVax,Biological Limited社(カナダ)。
【0059】
ストレプトミセス リビダンス
この実験では、遺伝子的に形質転換されていない株1326、及び遺伝子的に形質転換され、ヒト結核菌のApAタンパクを発現する株1326を使用した。
【0060】
3グループに分けた26匹のマウスを研究した(表3)。
【0061】
マウスは2週間間隔で3回、IPによって免疫し、グループ1はSS、グループ2はストレプトミセス リビダンス10CFU、グループ3はBCG 10CFUで免疫した。
【0062】
最後の免疫から3週間後、チャレンジとしてマウスに、BCG 0.5×10CFUをIN経路によって投与した。24時間後、マウスを死亡させ、微生物学的研究用の肺を得た。
【0063】
微生物学的研究
肺を解離させ、Ogawa培地中(Manual de la OXID.Cuarta Edicion.1981 Editado por OXID Limited,England)で平板培養し、37で28日間賠償した。培養期間終了後、CFUを計数し、肺組織のCFU数/mgを求めた。
【0064】
統計的処理
グループ間の統計的比較は、クルスカル−ウォリス(Kruskal−Wallis)検定を用いて実施し、自由分布の多重比較検定を補完的な検定として使用した。
【0065】
【表3】

【0066】
ストレプトミセスで免疫されたグループでは、BCGで免疫されたマウス及びコントロールグループに比べて、肺のBCGのCFU数の統計的減少が見られた(図4)。同様の結果が、ヒト結核菌のApaタンパクを発現するストレプトミセスで免疫されたグループでも得られた(データは示さない)。
【0067】
形質転換されたストレプトミセスで免疫されたマウスのグループ及び形質転換されていないストレプトミセスで免疫されたマウスのグループは、ヒト結核菌でのチャレンジから保護された(データは示さない)。
【0068】
以上の結果は、ミコバクテリアに対するストレプトミセスの防御能力を証明し、ミコバクテリア感染を予防するためのワクチンとしてストレプトミセスを使用することを支持している。
【産業上の利用可能性】
【0069】
提案の解決策の利点
ミコバクテリウム感染症、特に結核に対するワクチンとしてこの種の株を使用する利点は、非病原性株を使用することであり、このことは生きた株をヒトに使用することを可能にし、このことは、十分な免疫原性及び防御のための免疫反応の十分な刺激を保証する。
【0070】
他の利点は、これらの株を使用してヒトに対して使用する薬剤を工業的に生産することに関して幅広い経験があることであり、このことは、これらのワクチンの工業生産を保証する。
【0071】
ストレプトミセスの遺伝子的性質について幅広い知識があること、並びにストレプトミセスの形質転換及び異種抗原の高レベル発現のための遺伝学的方法が使用可能であることは、弱毒化組換え生ベクターとしてストレプトミセスを使用する追加の利点である。
【0072】
粘膜投与経路は、感染の遮断、したがって予防作用に好都合なミコバクテリアの侵入部位での容易で汎用的な投与方法を保証する。
【0073】
BCG及びヒト結核菌に対して証明された幅広い交差防御能力は、いくつかのミコバクテリア感染症に対するワクチンとしてストレプトミセスを使用するための重要な利点である。
【0074】
関心の非ミコバクテリアワクチンの抗原を発現する遺伝子的に形質転換されたストレプトミセス株は、非ミコバクテリア感染性、自己免疫性、アレルギー性及び腫瘍性疾患の予防又は治療、並びに妊娠の予防のために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ウエスタンブロット。ストレプトミセス リビダンス(1)及びBCG(2)の抽出物を含むニトロセルロースストリップを、ストレプトミセス リビダンスで免疫されたマウス(グループ2)の血清のプールに対して研究した。
【図2】ウエスタンブロット。BCG(1)及びストレプトミセス リビダンス(2)の抽出物を含むニトロセルロースストリップを、BCGで免疫されたマウス(グループ3)の血清のプールに対して研究した。
【図3】ウエスタンブロット。BCG(1)及びストレプトミセス リビダンス(2)の抽出物を含むニトロセルロースストリップを、食塩水で免疫されたマウス(グループ1)の血清のプールに対して研究した。
【図4】BCGを用いたチャレンジ実験。値は、肺組織のCFU/mgの平均対数を表す。ストレプトミセス(ストレプトミセス リビダンス)で免疫されたグループと食塩水(CN)で免疫されたコントロールグループとの間には統計的な差(p<0.05)が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトミセスの1種又は数種の野生株、或いは前記株に由来する突然変異株又は組換え株を有効成分として有し、さらに適当な添加剤を有することを特徴とするストレプトミセスから得られたワクチン組成物。
【請求項2】
ストレプトミセスの前記株が生きた株であることを特徴とする、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
ストレプトミセスの前記株が、ストレプトミセス リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトミセス コエリコロール(Streptomyces coelicolor)及びストレプトミセス Sp.(Streptomyces Sp.)であることを特徴とする、請求項1及び2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
ストレプトミセスの前記組換え株が、関心のワクチンの1種又は数種の異種抗原を発現することを特徴とする、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
ストレプトミセスの前記組換え株が、ミコバクテリウムの1種又は数種の異種抗原を発現することを特徴とする、請求項4に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
感染症の予防又は治療のための請求項1から5のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
【請求項7】
ミコバクテリアによって引き起こされる感染の予防又は治療のための請求項6に記載の使用。
【請求項8】
結核の予防又は治療のための請求項7に記載の使用。
【請求項9】
腫瘍性疾患の予防又は治療のための請求項1から5のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
【請求項10】
自己免疫性疾患の予防又は治療のための請求項1から5のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
【請求項11】
アレルギー性疾患の予防又は治療のための請求項1から5のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。
【請求項12】
妊娠の予防のための請求項1から5のいずれかに記載のワクチン組成物の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−529432(P2007−529432A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503180(P2007−503180)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/CU2005/000002
【国際公開番号】WO2005/087259
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505353445)インスティテュート フィンライ. セントロ デ インベスティガシオン − プロデュクシオン デ バクナス イ スエロス (2)
【出願人】(506315594)
【Fターム(参考)】