説明

ストロボ装置

【課題】簡素な構成で小型化が可能であり、かつ光学設計の容易なストロボ装置を提供すること。
【解決手段】ストロボ装置(1)は、発光素子(12)と、発光素子を駆動する第1駆動手段(15)と、発光素子の上方に配置された集光手段(14)と、発光素子と集光手段との間に配置された光制御手段(13)と、光制御手段を駆動する第2駆動手段(16)と、を含んで構成される。集光手段は、少なくとも第1フレネルレンズと第2フレネルレンズとを混在して構成されており、第1フレネルレンズと第2フレネルレンズとは互いのF値が異なる。第2駆動手段は、第1駆動手段によって発光素子が駆動され、当該発光素子から光が出力されたときに、光制御手段を、例えば第1フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に高く第2フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に低くなるように駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばデジタルスチルカメラ等の撮像装置と組み合わせて用いられるストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロボ装置に関する先行例としては、集光パネル、ストロボ放電管および反射鏡で構成されたストロボ装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。かかる先行例のストロボ装置は、集光パネルの外面がシリンドリカル面、内面がフレネルレンズ面となっており、ストロボ放電管および反射鏡と集光パネルとの距離を変化させることでストロボ配光を変化させることができる。
【0003】
また、ストロボ装置に関する他の先行例としては、フレネルレンズ、遮光用光学素子、発光管、反射鏡で構成されるものが知られている(例えば特許文献3)。かかる先行例のストロボ装置は、遮光用光学素子をエリア毎に分け、予備発光の反射光を検出し、検出結果に基づいて遮光用光学素子によって本発光照射エリアを絞ることにより本発光の照射光量を調節するものである。
【0004】
しかし、上記した特許文献1、2に開示される先行例においては、ストロボ放電管と反射鏡からなる発光部を物理的に移動させる必要があるため、カメラ組みつけの際、カム機構のような移動機構が必要となり、機構が複雑になるという点で改良の余地がある。また、発光部が移動するための移動スペースを装置内に設けておかなければならないため、装置の小型化が困難であるという点でも改良の余地がある。
【0005】
また、上記した特許文献3に開示される先行例においては、本発光前に予備発光の測光をフィードバックする制御機構が必要となるため、動作の制御機構が複雑になるという点で改良の余地がある。さらに、フレネルレンズの光学性能と遮光性能が独立であることから、発光部の照射エリアを限定してしまうため、配光(上下、左右、対角)の光学設計が困難であるという点でも改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−180471号公報
【特許文献2】特開2001−100282号公報
【特許文献3】特開平5−165084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に係る具体的態様は、簡素な構成で小型化が可能であり、かつ光学設計の容易な配光可変式ストロボ装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一態様のストロボ装置は、(a)発光素子と、(b)発光素子を駆動する第1駆動手段と、(c)発光素子の上方(光の出射方向)に配置された集光手段と、(d)発光素子と集光手段との間に配置された光制御手段と、(e)光制御手段を駆動する第2駆動手段と、を含む。集光手段は、少なくとも第1フレネルレンズと第2フレネルレンズとを混在して構成されており、第1フレネルレンズと第2フレネルレンズとは互いのF値が異なる。第2駆動手段は、第1駆動手段によって発光素子が駆動され、当該発光素子から光が出力されるときに、光制御手段を、第1フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に高く第2フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に低くなるように駆動し、若しくは第2フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に高く第1フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に低くなるように駆動する。
【0009】
上記ストロボ装置では、複数のフレネルレンズを混在させたレンズと光制御手段とを組み合わせ、かつ発光素子の発光動作に対応して光制御手段を駆動し、発光素子から出力される光の透過量を制御している。このため、予備発光とその検出機構、あるいは発光部の移動機構などの複雑な構成を用いることなく、F値の異なる複数のフレネルレンズを選択的に利用して配光調整を実現できる。よって、ストロボ装置の小型化が可能となる。また、フレネルレンズからなる集光手段は概略平板状であり、光制御手段としてもエレクトロクロミックデバイスや液晶デバイス等の概略平板状のものを用いることができるため、ストロボ装置の薄型化が可能となる。
【0010】
上述した集光手段は、例えば以下のような構成を備える。すなわち、第1フレネルレンズは複数の第1レンズ片を有し、第2フレネルレンズは複数の第2レンズ片を有する。そして、複数の第1レンズ片は、少なくとも一部の第1レンズ片同士の相互間に間隙を設けて間欠的に配置されており、複数の第2レンズ片は、複数の第1レンズ片の上記した間隙に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態のストロボ装置の構成を示す模式的な断面図である。
【図2】レンズの詳細構成を説明するための模式的な断面図である。
【図3】エレクトロクロミックデバイスの部分的な拡大断面図を示す図である。
【図4】ストロボ装置の動作を説明するための概略図である。
【図5】ストロボ装置の動作を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施形態のストロボ装置の構成を示す模式的な断面図である。図1に示すストロボ装置1は、基板10上に搭載されたLED(発光素子)12と、このLED12を囲むように設けられた反射傘11と、反射傘11およびLED12の上部(LED12の光の出射方向)に配置されたエレクトロクロミックデバイス(光制御手段)13と、エレクトロクロミックデバイス13を挟んでLED12の上部に配置されたレンズ14と、LEDを駆動する駆動回路(第1駆動手段)15と、エレクトロクロミックデバイスを駆動する駆動回路(第2駆動手段)16と、を含んで構成されている。このストロボ装置1は、例えば図示のようにカメラ2と接続して用いられる。本実施形態のストロボ装置1は直接駆動方式もしくは充放電方式のいずれにも適用できる。図示のように基板10とエレクトロクロミックデバイス13との間は電気的に接続されている。具体的には、接地端子を共通化するための配線が設けられている。
【0014】
LED12は、駆動回路16によって駆動され、光を出力する。LED12から放出される光はエレクトロクロミックデバイス13に入射する。なお、LED12は発光素子の一例であり、これに限定されない。また、LED12は複数搭載されていてもよい。
【0015】
エレクトロクロミックデバイス13は、LED12から入射する光を部分的に透過させ、又は遮断するための光制御手段として機能する。本実施形態のエレクトロクロミックデバイス13は、駆動回路16から供給される電圧信号に応じて、青色と透明色とに可逆的な変化をする無機系の材料(酸化タングステン)を用いて構成されている。エレクトロクロミックデバイス13の構造の詳細についてはさらに後述する。
【0016】
レンズ(集光手段)14は、相互に異なるF値を有する複数のフレネルレンズを混在させて構成されている。本実施形態のレンズ14は、第1のF値を有するフレネルレンズA(第1フレネルレンズ)と、第2のF値を有するフレネルレンズB(第2フレネルレンズ)の2種類を混在させて構成される。
【0017】
図2は、レンズ14の詳細構成を説明するための模式的な断面図である。レンズ14は、F値の異なる2つのフレネルレンズA、Bの各々のレンズ片が中心から同心円状に(またはリニア状に)交互に並んでいる。詳細には、レンズ14は、フレネルレンズAのレンズ片(便宜上、図中これを「A」と示す)と、フレネルレンズBのレンズ片(便宜上、図中これを「B」と示す)とを交互に並べて構成されている。すなわち、フレネルレンズAの各レンズ片は、相互間に間隙を設けて間欠的に配置されており、フレネルレンズBのレンズ片は、フレネルレンズAの各レンズ片の相互間の間隙に配置されている。なお、フレネルレンズAのレンズ片とフレネルレンズBのレンズ片の並び順は逆でも構わない。
【0018】
レンズ14の中心部は、各フレネルレンズA、Bに共有される部分であり、図示のように略平坦な形状としておくことがより好ましい。なお、各フレネルレンズA、Bの各レンズ片のカット面は、内面、外面のいずれであってもよい。また、3つ以上のフレネルレンズを混在させてレンズ14を形成してもよい。
【0019】
図2に示したように、レンズ14の下側に配置されているエレクトロクロミックデバイス13は、各フレネルレンズA、Bの各レンズ片に対応付けて設けられた複数のエレクトロクロミック素子を有している。本実施形態では、複数のエレクトロクロミック素子は、各フレネルレンズA、Bの各レンズ片の配置間隔(ピッチ)とほぼ同じ幅・同じ数に設けられている。
【0020】
図3は、エレクトロクロミックデバイス13の部分的な拡大断面図を示す図である。図示のようにエレクトロクロミックデバイス13は、例えばフレネルレンズA、Bの各レンズ片に対応づけて形成された電極20、21と、これらの電極20、21を支持する基板22、23と、基板22、23の間に介在するエレクトロクロミック材料層24とを備えている。そして、一対の電極20、21とこれらの間に介在するエレクトロクロミック材料層24によって1つのエレクトロクロミック素子が構成される。なお、図3に示す構成は一例に過ぎず、これに限定されない。
【0021】
本実施形態のストロボ装置1は上記のような構成を備えており、次のその動作について詳細に説明する。本実施形態のストロボ装置1は、カメラ2によってストロボ撮影を行う際に、エレクトロクロミックデバイス13を部分的に有色又は透明色に変化させることにより、レンズ14へ入射する光を制御する。それにより、レンズ14のF値を変化させることができるので、ストロボ装置1からの配光を変化させることができる。
【0022】
かかる構成のストロボ装置において、第1のF値に対応する配光を得たいときには、図4に示すように、フレネルレンズAの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子には逆方向電圧が印加され、フレネルレンズBの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子には順方向電圧が印加されるように、駆動回路16によってエレクトロクロミックデバイス13を駆動する。それにより、フレネルレンズAの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子は透明色に変化し、フレネルレンズBの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子は有色(本例では青色)に変化する。これにより、実質的にフレネルレンズAの各レンズ片にのみLED12から放射される光が通過するので、レンズ14の実効的なF値はフレネルレンズAに対応する第1のF値となる。
【0023】
また、第2のF値に対応する配光を得たいときには、図5に示すように、フレネルレンズBの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子には逆方向電圧が印加され、フレネルレンズAの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子には順方向電圧が印加されるように、駆動回路16によってエレクトロクロミックデバイス13を駆動する。それにより、フレネルレンズBの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子は透明色に変化し、フレネルレンズAの各レンズ片に対応する各エレクトロクロミック素子は青色に変化する。これにより、実質的にフレネルレンズBの各レンズ片にのみLED12から放射される光が通過するので、レンズ14の実効的なF値はフレネルレンズBに対応する第2のF値となる。
【0024】
さらに、すべてのエレクトロクロミック素子が透明色となるように駆動回路16によってエレクトロクロミックデバイス13を駆動した場合には、フレネルレンズA、Bの重ね合わせによる高い中心光量を得ることも可能である。すなわち、本実施形態のストロボ装置1は、フレネルレンズA、Bを選択的に用いることによる2段階の配光可変モードと、フレネルレンズA、Bのいずれも用いることによる高光量モードと、を実現することもできる。
【0025】
以上の本実施形態においては、複数のフレネルレンズを混在させたレンズとエレクトロクロミックデバイスとを組み合わせてLEDからの光を制御しているため、予備発光とその検出機構、あるいは発光部の移動機構などの複雑な構成を用いることなく光量調整を実現できる。このため、ストロボ装置の小型化が可能となる。また、フレネルレンズからなるレンズ、エレクトロクロミックデバイスはともに概略平板状の構成であるため、ストロボ装置の薄型化が可能となる。
【0026】
また、本実施形態において光制御手段として用いているエレクトロクロミックデバイスは、基本的に各エレクトロクロミック素子の色を変化させるときだけ駆動電圧を供給すればよいため、ストロボ撮影時および待機時には消費電力を抑えられる。これにより、カメラ2のバッテリーを長持ちさせることができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態においてはデジタルスチルカメラ等の撮像装置に本発明のストロボ装置を適用した例を説明していたが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、例えばデジタルビデオカメラ、撮像機能付きの携帯電話、一般照明用の照明モジュール等に幅広く適用することが可能である。
【0028】
また、上記した実施形態では互いにF値の異なる2つのフレネルレンズを組み合わせてレンズ14を構成していたが、3つ以上のフレネルレンズを組みあわせてもよい。また、上記した実施形態では、フレネルレンズAのレンズ片とフレネルレンズBのレンズ片とが交互に配置されていたが、各レンズ片の配置は必ずしもこのような規則的配置でなくてもよい。例えば、フレネルレンズAのレンズ片が2つ又はそれ以上続いた後にフレネルレンズBのレンズ片が配置されるなど、適宜に配置を変更し得る。
【0029】
また、上記した実施形態では光制御手段の一例としてエレクトロクロミックデバイスを挙げていたが、これに代えて、液晶デバイスを用いてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ストロボ装置、 2…カメラ、 10…基板、 11…反射傘、 12…LED(発光素子)、 13…エレクトロクロミックデバイス、 14…レンズ、 15…駆動回路(第1駆動回路)、 16…駆動回路(第2駆動回路)、 20、21…電極、 22、23…基板、 24…エレクトロクロミック材料層、 A、B…フレネルレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子を駆動する第1駆動手段と、
前記発光素子の上方に配置された集光手段と、
前記発光素子と前記集光手段との間に配置された光制御手段と、
前記光制御手段を駆動する第2駆動手段と、
を含み、
前記集光手段は、少なくとも第1フレネルレンズと第2フレネルレンズとを混在して構成されており、
前記第1フレネルレンズと前記第2フレネルレンズとは互いのF値が異なり、
前記第2駆動手段は、前記第1駆動手段によって前記発光素子が駆動され、当該発光素子から光が出力されるときに、前記光制御手段を、前記第1フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に高く前記第2フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に低くなるように駆動し、若しくは前記第2フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に高く前記第1フレネルレンズに対応する部分の光透過度が相対的に低くなるように駆動する、
ストロボ装置。
【請求項2】
前記第1フレネルレンズは複数の第1レンズ片を有し、
前記第2フレネルレンズは複数の第2レンズ片を有し、
前記複数の第1レンズ片は、少なくとも一部の第1レンズ片同士の相互間に間隙を設けて間欠的に配置されており、
前記複数の第2レンズ片は、前記複数の第1レンズ片の前記間隙に配置されている、
請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記光制御手段がエレクトロクロミックデバイスである、
請求項1又は2に記載のストロボ装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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