説明

ストロボ装置

【課題】導電性薄膜を利用しない場合はもちろん、導電性薄膜を利用する場合であっても、閃光放電管から放射される光の光量および配光のバラツキを抑制するストロボ装置を提供する。
【解決手段】両端にアノード5およびカソード6を有する閃光放電管2と、該閃光放電管2の外周面に当接して閃光放電管2の一部を内部に収納することで、閃光放電管2のトリガ外部電極として機能する導電性の反射傘3とを備え、該反射傘3は、アノード5およびカソード6間ならびにカソード6の焼結金属体8を少なくとも被覆するようにして閃光放電管2の外周面に当接する底部9を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば写真撮影に用いられるストロボ装置に関し、詳しくは、反射傘を利用して閃光放電管の光を被写体側に配光するストロボ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ストロボ装置は、光を放射する閃光放電管と、該閃光放電管から放射された光を被写体側に反射させる反射傘とを備える。
【0003】
閃光放電管には、点灯しやすさの観点から、管の周囲に導電性薄膜が設けられることがある。 導電性薄膜をトリガ電極として,トリガ電圧を印加することにより,放電管内部に放電路が形成され,閃光放電管は光を放射する
一方,導電性薄膜は閃光放電管から放射された光を吸収してしまうことが問題となっている。また、閃光放電管内での発光毎の放電路の移動が大きく、閃光放電管から放射される光の光量や配光のばらつきが発生することが問題となっている。そこで、これらの問題を解決する特許文献1に記載の閃光放電管が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の閃光放電管は、導電性薄膜を有しておらず、管表面を反射傘(導電性リフレクタ)に密着させ、反射傘にトリガーリード線を接続することで、反射傘をトリガ電極として利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−142152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近ではストロボ装置を短時間の間発光させて、小光量を得る、小光量発光のニーズが出てきている。閃光放電管を小光量で発光する場合、発光毎に放電路をより安定させることで、閃光放電管から放射される光の光量および配光のばらつきを抑える必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の閃光放電管であっても、小光量発光する場合には、無視できない程度に放電路のばらつきが発生し、そのため、閃光放電管から放射される光の光量および配光のばらつきが発生する。
【0007】
そこで、本発明は、導電性薄膜を利用しない場合はもちろん、導電性薄膜を利用する場合であっても、閃光放電管から放射される光の光量および配光のばらつきを抑制するストロボ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るストロボ装置は、両端にアノードおよびカソードを有する閃光放電管と、該閃光放電管の外周面に当接して閃光放電管の一部に接触させることで、閃光放電管のトリガ外部電極として機能する導電性の反射傘とを備え、該反射傘は、アノードおよびカソード間ならびにカソードの焼結金属体を覆うような閃光放電管の外周面に当接する底部を有する。
【0009】
このストロボ装置によれば、反射傘の底部が閃光放電管の外周面の少なくとも一部に当接することで、底部は、閃光放電管の発光において、トリガ電極として作用する。そして、底部は、カソードの焼結金属体を覆うように閃光放電管の外周面に当接しているので、励起は、焼結金属体付近で起こるようになる。したがって、閃光放電管において、発光毎の放電路のばらつきを抑えることができ、ストロボ装置から照射される光の光量および配光のばらつきを抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係るストロボ装置において、前記底部は、アノードおよびカソード間を覆うようにして閃光放電管の外周面に当接する基部と、該基部から閃光放電管の長手方向に延長され、カソードの焼結金属体を少なくとも覆うようにして閃光放電管の外周面に当接する延長部とを有するようにしてもよい。
【0011】
このストロボ装置によれば、閃光放電管のカソードの位置に合わせて反射傘そのものの幅を拡張するのではなく、底部に延長部を設けて対応するようにすることで、反射傘のサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0012】
また、本発明に係るストロボ装置において、前記底部は、閃光放電管の外周に沿うようにして湾曲していてもよい。
【0013】
このストロボ装置によれば、閃光放電管の外周に当接する底部の面積が広くなるので、閃光放電管を点灯しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導電性薄膜を利用しない場合はもちろん、導電性薄膜を利用する場合であっても、閃光放電管から放射される光の光量および配光のばらつきを抑制するストロボ装置を提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るストロボ装置であって、図1(a)は断面図、図1(b)は側面図
【図2】本発明に係る反射傘の展開図
【図3】本発明に係るストロボ装置および従来のストロボ装置において導電性薄膜を利用しない場合における発光量のばらつきであって、図3(a)は本発明に係るストロボ装置の光量のばらつき、図3(b)は従来のストロボ装置の光量のばらつき
【図4】本発明に係るストロボ装置および従来のストロボ装置において導電性薄膜を利用する場合における発光量のばらつきであって、図4(a)は本発明に係るストロボ装置の光量のばらつき、図4(b)は従来のストロボ装置の光量のばらつき
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るストロボ装置1の実施形態について、図1および図2を参照しながら説明する。
【0017】
図1(a)および図1(b)に示すように、ストロボ装置1は、光を放射する閃光放電管2と、閃光放電管2から放射された光を開口方向に存在する被写体に向けて配光する反射傘3とを備える。
【0018】
閃光放電管2は、内部にガスを封入するガラスバルブ4と、ガラスバルブ4の両端に設けられる棒状電極からなるアノード5およびカソード6とを有する。閃光放電管2は、管状に形成されており、その長手方向表面で反射傘3の一部に当接している。
【0019】
ガラスバルブ4は、管状に形成されており、内部にキセノン等の希ガスが所定圧力で封入されている。ガラスバルブ4は、たとえば、硼珪酸ガラス等の硬質ガラスで形成されており、封入されているガスに電子が衝突することで発生する光を外部に放射する。ここで、ガラスバルブ4は、アノード5およびカソード6間を覆うようにして外周面に導電性薄膜を有していても良い。
【0020】
アノード5は、ガラスバルブ4の一端部に設けられ、該一端部においてガラスビード(図示しない)を介してガラスバルブ4に挿通状態で固定される。より詳しくは、アノード5は、ガラスバルブ4の一端部にガラスビード(図示しない)を介して溶着されることで、ガラスバルブ4の一端部に挿通状態で固定される。
【0021】
アノード5は、たとえば、タングステン棒の端部にニッケル棒の端部を突き合わせて接合したものが用いられ、この場合、ニッケル棒がガラスバルブ4の外部に配置され、タングステン棒がガラスビードに挿通されてガラスバルブ4の内部に配置される。
【0022】
カソード6は、棒状電極7と、該棒状電極7の先端側に取り付けられる金属焼結体8とからなる。カソード6は、ガラスバルブ4の他端部に設けられ、該他端部においてガラスビード(図示しない)を介してガラスバルブ4に挿通状態で固定される。より詳しくは、カソード6は、ガラスバルブ4の他端部にガラスビード(図示しない)を介して溶着されることで、ガラスバルブ4の他端部に挿通状態で固定される。
【0023】
棒状電極7は、たとえば、タングステン棒の端部にニッケル棒の端部を突き合わせて接合したものが用いられ、この場合、ニッケル棒がガラスバルブ4の外部に配置され、タングステン棒がガラスビードに挿通されてガラスバルブ4の内部に配置される。
【0024】
金属焼結体8は、タングステンとタンタルの金属微粉末の混合物や、タンタルとニッケルの金属微粉末の混合物を形成して棒状電極7のガラスバルブ4内端部にかしめ等によって取り付けられた後、約600℃の温度で焼結することで棒状電極7と一体に形成される。
【0025】
反射傘3は、図2にも示すように、閃光放電管2と当接する底部9と、閃光放電管2から放射された光を開口方向に反射する側面反射部12と、閃光放電管2を挿通して側面反射部12内部に収納する装着孔部13とを有する。反射傘3は、図1に示す開口方向断面で凹形状を有し、その開口方向に、閃光放電管2から放射された光を反射して照射する。反射傘3は、導電性材料で形成され、凹形状内部の面が鏡面加工されることで、反射傘3内部に収納されている閃光放電管2によって放射される光を開口方向に反射する。また、反射傘3は、閃光放電管2のトリガ外部電極として機能すべく、凹形状内面で、閃光放電管2の長手方向に沿って、閃光放電管2の外周面の少なくとも一部に当接する。
【0026】
底部9は、アノード5およびカソード6間を覆うようにして閃光放電管2の外周面に当接する基部10と、基部10から閃光放電管2の長手方向に延伸される延長部11とを有する。底部9は、延長部11を有することにより、カソード6の焼結金属体8からガラスバルブ4内部におけるアノード5の全体乃至ほぼ全体を覆うようにして閃光放電管2の外周面に当接する。底部9は、閃光放電管2のトリガ電極として機能するが、ガラスバルブ4に導電性薄膜が形成されている場合には、導電性薄膜とともに閃光放電管2に対するトリガ電極として機能する。
【0027】
基部10は、円弧状に形成されて、アノード5およびカソード6間を覆うようにしてガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部に面接触する。基部10の内周面は、ガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部に面接触すべく、ガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部の径と同径に形成される。基部10は、閃光放電管2から放射された光を反射する反射板として機能するとともに、閃光放電管2のトリガ外部電極としても機能する。
【0028】
延長部11は、基部10と同径で円弧状に形成されて、基部10からガラスバルブ4の長手方向に延伸される。延長部11の内周面は、基部10と同径で基部10から延伸されるので、基部10の内周面と同様に、ガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部に面接触する。延長部11は、基部10の両端部から、ガラスバルブ4内部におけるアノード5の全体乃至ほぼ全体およびカソード6の金属焼結体8を覆うようにしてガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部まで延長されて、その内周面でガラスバルブ4の外周面の少なくとも一部に面接触する。延長部11は、基部10から延長されることで、基部10と同様に、閃光放電管2のトリガ外部電極として機能する。
【0029】
側面反射部12は、開口方向における断面凹形状の反射傘3において側壁をなす部分であり、長筒状に形成される。そして、側面反射部12は、基部10に対して、図1(a)に示す開口方向に向けて次第に矩形状の開口を広げるように設けられる。側面反射部12の内面は、閃光放電管2から放射される光が照射範囲外となる方向(所望の照射範囲から外れる方向)へ反射するのを防止すべく、自由曲線により設計される。
【0030】
装着孔部13は、長筒状に形成される側面反射部12の一部を開口するように、基部10に隣接して設けられる。そして、装着孔部13は、閃光放電管2の軸心方向を開口方向に対して垂直な方向に向ける位置に設けられる。装着孔部13は、閃光放電管2と同じ径を有し、閃光放電管2の外周面の一部に密着することで、装着孔部13に挿通される閃光放電管2を底部9に当接させる。なお、装着孔部13は、挿通される閃光放電管2との間に図示しないブッシングを利用して、閃光放電管2を底部9に当接させてもよい。
【0031】
本実施形態に係るストロボ装置1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るストロボ装置1の作用について説明する。
【0032】
まず、本実施形態に係る閃光放電管2においては、外径が1.50mmであるガラスバルブ4を採用している。そして、ガラスバルブ4の外周の少なくとも一部に面接触する底部9は、ガラスバルブ4の周方向において約100°の部位に当接している。すなわち、ガラスバルブ4に面接触する底部9の幅は、1.49mmである。
【0033】
このような閃光放電管2を利用して、少光量発光をする場合、底部9に光量に応じたトリガパルスが印加される。底部9にトリガパルスが印加されることで、底部9に当接するガラスバルブ4の外周面付近でガラスバルブ4に封入されているガスが活性化されて電離する。より詳しくは、基部10および延長部11に当接するガラスバルブ4の内周付近でガラスバルブ4に封入されているガスが活性化されて電離する。ガラスバルブ4に導電性薄膜が設けられている場合には、導電性薄膜にもトリガパルスが印加される。導電性薄膜にもトリガパルスが印加されることで、カソード5およびカソード6間を覆うガラスバルブ4の内周付近のガスも活性化されて電離する。
【0034】
そして、アノード5およびカソード6に電圧が印加されていることで、ガラスバルブ4内で電子の流れが起きる。閃光放電管2は、電子の衝突によるガスの励起により、光をガラスバルブ4の外部に放射する。反射傘3は、放射された光を反射して、図1(a)に示す開口方向に光を照射する。
【0035】
ここで、トリガパルスが延長部11に印加されると、当接する閃光放電管2の外周付近でガラスバルブ4に封入されているガスが活性化される。これにより、カソード6から放出される電子は、カソード6の近辺から放電路を形成しやすくなる。カソード6の近辺で放電路を形成しやすくなることで、発光毎の放電路の位置が安定し、放電路のばらつきを防止できる。
【実施例】
【0036】
<実施例1>
本実施形態に係る導電性薄膜を備えないストロボ装置1に対する第1の実施例(以下、「実施例1」とする)について説明する。具体的には、本実施形態に係る導電性薄膜を備えないストロボ装置1をNo.1として、5μsecのトリガパルスを底部9に印加した。トリガパルスを10回印加することで、ストロボ装置1(No.1)を10回発光させて、それぞれにおける光量を測定した。そして、ストロボ装置1(No.1)に期待される光量GN(ガイドナンバー)に対する、10回の光量のそれぞれの比を算出することで、ばらつきを見た。
【0037】
図3(a)に示すように、ストロボ装置1(No.1)は、GNに対して、最大で1.9%の誤差、最小で0.4%の誤差の発光量を得られた。ストロボ装置1(No.1)を10回発光させた場合における標準偏差は、1.2%の誤差であった。
<実施例2>
次に、本実施形態に係る導電性薄膜を備えないストロボ装置1に対する第2の実施例(以下、「実施例2」とする)について説明する。具体的には、実施例1と同一の構成で異なる個体の導電性薄膜を備えないストロボ装置1(No.2)を用意して、実施例1と同条件でばらつきを見た。
【0038】
図3(a)に示すように、ストロボ装置1(No.2)は、GNに対して、最大で1.7%の誤差、最小で0.1%の誤差の発光量を得られた。ストロボ装置1(No.2)を10回発光させた場合における標準偏差は、1.2%の誤差であった。
<実施例3>
次に、本実施形態に係る導電性薄膜を備えないストロボ装置1に対する第3の実施例(以下、「実施例3」とする)について説明する。具体的には、実施例1および2と同一の構成で異なる個体の導電性薄膜を備えないストロボ装置1(No.2)を用意して、実施例1および2と同条件でばらつきを見た。
【0039】
図3(a)に示すように、ストロボ装置1(No.3)は、GNに対して、最大で2.0%の誤差、最小で0.1%の誤差の発光量を得られた。ストロボ装置1(No.3)を10回発光させた場合における標準偏差は、1.1%の誤差であった。
<比較例1>
次に、従来の導電性薄膜を備えないストロボ装置に対する第1の比較例(以下、「比較例1」とする)について説明する。具体的には、本願発明のストロボ装置1に対して、延長部11を有しないストロボ装置を従来のストロボ装置(No.1)として、実施例1乃至3と同条件でばらつきを見た。
【0040】
図3(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.1)は、GNに対して、最大で2.4%の誤差、最小で0.3%の誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.1)を10回発光させた場合における標準偏差は、1.5%の誤差であった。
<比較例2>
次に、従来の導電性薄膜を備えないストロボ装置に対する第2の比較例(以下、「比較例2」とする)について説明する。具体的には、比較例1と同一の構成で異なる個体の従来の導電性薄膜を備えないストロボ装置(No.2)を用意して、実施例1乃至3および比較例1と同条件でばらつきを見た。
【0041】
図3(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.2)は、GNに対して、最大で4.6%の誤差、最小で0.2%の誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.2)を10回発光させた場合における標準偏差は、3.0%の誤差であった。
<比較例3>
次に、従来の導電性薄膜を備えないストロボ装置に対する第3の比較例(以下、「比較例3」とする)について説明する。具体的には、比較例1および2と同一の構成で異なる個体の従来の導電性薄膜を備えないストロボ装置(No.3)を用意して、実施例1乃至3ならびに比較例1および2と同条件でばらつきを見た。
【0042】
図3(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.3)は、GNに対して、最大で3.2%の誤差、最小で0.1%の誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.3)を10回発光させた場合における標準偏差は、1.7%の誤差であった。
【0043】
実施例1乃至3および比較例1乃至3に示すように、本発明のストロボ装置1によれば、従来のストロボ装置に比べて、標準偏差を小さくすることに成功している。すなわち、本発明のストロボ装置1によれば、従来のストロボ装置に比べて、光量のばらつきを抑えることに成功している。また、光量のばらつきを抑えることに成功しているので、閃光放電管2内の安定した位置から光の放射を開始することに成功しており、放電路のばらつきを抑えることに成功していると言える。したがって、配光のばらつきも抑えることに成功している。
【0044】
ところで、導電性薄膜には、閃光放電管2を点灯しやすくするという機能がある。しかしながら、導電性薄膜には、ガラスバルブ4内の放電路が安定せず、閃光放電管2から放射される光を遮ってしまうという問題がある。そこで、次に、本願発明のストロボ装置1が導電性薄膜を備える場合における発光のばらつきに関するテストを行った。
<実施例4>
本実施形態に係る導電性薄膜を備えるストロボ装置1に対する第4の実施例(以下、「実施例4」とする)について説明する。具体的には、本実施形態に係る導電性薄膜を備えるストロボ装置1をNo.1として、15μsecのトリガパルスを底部9に印加した。トリガパルスを10回印加することで、ストロボ装置1(No.1)を10回発光させて、それぞれにおける光量を測定した。そして、ストロボ装置1(No.1)に期待される光量GN(ガイドナンバー)に対する、10回の光量のそれぞれの比を算出することで、ばらつきを見た。
【0045】
図4(a)に示すように、ストロボ装置1(No.1)は、GNに対して、最大で5.0%の誤差、最小で0.1%の誤差の発光量を得られた。導電性薄膜を備えるストロボ装置1(No.1)を10回発光させた場合における標準偏差は、2.4%の誤差であった。
<実施例5>
次に、本実施形態に係る導電性薄膜を備えるストロボ装置1に対する第5の実施例(以下、「実施例5」とする)について説明する。具体的には、実施例4と同一の構成で異なる個体の導電性薄膜を備えるストロボ装置1(No.2)を用意して、実施例4と同条件でばらつきを見た。
【0046】
図4(a)に示すように、ストロボ装置1(No.2)は、GNに対して、最大で8.1%の誤差、最小で0.1%の誤差の発光量を得られた。ストロボ装置1(No.2)を10回発光させた場合における標準偏差は、4.5%の誤差であった。
<実施例6>
次に、本実施形態に係る導電性薄膜を備えるストロボ装置1に対する第6の実施例(以下、「実施例6」とする)について説明する。具体的には、実施例4および5と同一の構成で異なる個体の導電性薄膜を備えるストロボ装置1(No.3)を用意して、実施例4および5と同条件でばらつきを見た。
【0047】
図4(a)に示すように、ストロボ装置1(No.3)は、GNに対して、最大で3.2%の誤差、最小で0.5%の誤差の発光量を得られた。ストロボ装置1(No.3)を10回発光させた場合における標準偏差は、2.2%の誤差であった。
<比較例4>
次に、従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置に対する第4の比較例(以下、「比較例4」とする)について説明する。具体的には、導電性薄膜を備える本願発明のストロボ装置1に対して、延長部11を有しないストロボ装置を、導電性薄膜を備える従来のストロボ装置(No.1)として、実施例4乃至6と同条件でばらつきを見た。
【0048】
図4(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.1)は、GNに対して、最大で6.6%の誤差、最小で0.2%の誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.1)を10回発光させた場合における標準偏差は、3.9%の誤差であった。
<比較例5>
次に、従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置に対する第5の比較例(以下、「比較例5」とする)について説明する。具体的には、比較例4と同一の構成で異なる個体の導電性薄膜を備える従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置(No.2)を用意して、実施例4乃至6および比較例4と同条件でばらつきを見た。
【0049】
図4(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.2)は、GNに対して、最大で6.2%誤差、最小で0.1%誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.2)を10回発光させた場合における標準偏差は、4.2%の誤差であった。
<比較例6>
次に、従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置に対する第6の比較例(以下、「比較例6」とする)について説明する。具体的には、比較例4および5と同一の構成で異なる個体の従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置(No.3)を用意して、実施例4乃至6ならびに比較例4および5と同条件でばらつきを見た。
【0050】
図4(b)に示すように、従来のストロボ装置(No.3)は、GNに対して、最大で8.2%の誤差、最小で0.2%の誤差の発光量を得られた。従来のストロボ装置(No.3)を10回発光させた場合における標準偏差は、4.9%の誤差であった。
【0051】
実施例4乃至6および比較例4乃至6に示すように、本発明の導電性薄膜を備えるストロボ装置1によれば、従来の導電性薄膜を備えるストロボ装置に比べて、標準偏差を小さくすることに成功している。すなわち、本発明の導電性薄膜を備えるストロボ装置1によれば、導電性薄膜を備える従来のストロボ装置に比べて、光量のばらつきを抑えることに成功している。光量のばらつきを抑えることに成功しているので、ガラスバルブ4内の安定した位置から光の放射を開始することに成功しており、放電路のばらつきを抑えることに成功していると言える。したがって、本発明の導電性薄膜を備えるストロボ装置1において、配光のばらつきも抑えることに成功している。
【0052】
実施例1乃至3と実施例4乃至6を比較すると、実施例4乃至6に示す、本発明の導電性薄膜を備えるストロボ装置1に比べて、実施例1乃至3に示す、本発明の導電性薄膜を備えないストロボ装置1よりも、標準偏差を小さくすることに成功している。すなわち、実施例1乃至3に示すストロボ装置1は、実施例4乃至6に示すストロボ装置1に比べて、光量のばらつきをより抑えることに成功している。光量のばらつきをより抑えることに成功しているので、ガラスバルブ4内の安定した位置から光の放射を開始することに成功しており、放電路のばらつきをより抑えることに成功していると言える。したがって、本発明の導電性薄膜を備えないストロボ装置1において、配光のばらつきをより抑えることに成功している。
【0053】
以上の実施例および比較例により、ストロボ装置1は、導電性薄膜を備えず、底部9に閃光放電管2を当接させることで、光量および配光の安定性についてより良好な結果を得ることができた。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るストロボ装置1によれば、少光量発光する場合であっても、光量および配光のばらつきを抑えることができる。特に、従来のストロボ装置で利用されている反射傘の光の照射方向における開口サイズを維持しつつ、光量および配光のばらつきを抑えることができる。また、延長部は、反射傘から突出する閃光放電管の外周面に当接するので、トリガパルスを発生するトリガコイルの接続を容易にすることができ、ストロボ装置の製作コストを削減することができる。
【0055】
なお、本発明に係るストロボ装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
例えば、上記実施形態に係るストロボ装置1において、反射傘3は、ガラスバルブ4全体を内部に収納しても良く、ガラスバルブ4のカソード6側の端部から、アノード5およびカソード68間を覆うようにしてガラスバルブ4までを内部に収納しても良い。これにより、ストロボ装置1は、閃光放電管2から放射される光を、より有効に開口方向に向けて照射することができる。
【0057】
また、上記実施形態に係るストロボ装置1において、延長部11は、ガラスバルブ4の外周面において、軸心から120°以下の部位に当接していてよい。延長部11がガラスバルブ4の外周面において軸心からより鋭角の部位に当接することで、閃光放電管2は点灯しづらくなるが、ガラスバルブ4内の放電路が安定することで光量および配光のばらつきを抑えることができる。
【0058】
また、上記実施形態に係るストロボ装置1において、延長部11は、ガラスバルブ4の外周に沿って全体がガラスバルブ4に当接しなくともよい。すなわち、延長部11は、平板状またはガラスバルブ4の外周方向に湾曲することで、一部をガラスバルブ4の外周面に当接する形状であってもよい。これにより、延長部11の全体をガラスバルブ4に当接させる工程を簡略化またはなくすことができるので、ストロボ装置1の製作コストを削減することができる。
【0059】
また、上記実施形態に係るストロボ装置1において、延長部11は、カソード6側にのみ設けるようにしてもよい。これにより、アノード5側に延長される延長部11を設けずとも良いので、ストロボ装置1の製作コストを削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るストロボ装置は、写真撮影に用いられるストロボ装置として有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ストロボ装置
2 閃光放電管
3 反射傘
4 ガラスバルブ
5 アノード
6 カソード
7 棒状電極
8 金属焼結体
9 底部
10 基部
11 延長部
12 側面反射部
13 装着孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にアノードおよびカソードを有する閃光放電管と、該閃光放電管の外周面に当接して閃光放電管の一部を内部に収納することで、閃光放電管のトリガ外部電極として機能する導電性の反射傘とを備え、該反射傘は、アノードおよびカソード間ならびにカソードの焼結金属体を少なくとも被覆するようにして閃光放電管の外周面に当接する底部を有することを特徴とするストロボ装置。
【請求項2】
前記底部は、アノードおよびカソード間を被覆するようにして閃光放電管の外周面に当接する基部と、該基部から閃光放電管の長手方向に延長され、カソードの焼結金属体を少なくとも被覆するようにして閃光放電管の外周面に当接する延長部とを有することを特徴とする請求項1に記載のストロボ装置。
【請求項3】
前記底部は、閃光放電管の外周に沿うようにして湾曲していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のストロボ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−220604(P2012−220604A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84283(P2011−84283)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】