説明

スプリンクラー用配管

【課題】火災時の送水機能を損なうことなく、ヘッド取付管への取付作業を容易にする巻出し管を備えたスプリンクラー用配管を提供する。
【解決手段】給水用主管と、該主管より分岐する複数の補助管と、天井に設置されるスプリンクラーヘッド13を備えたヘッド取付管14と、前記各補助管にそれぞれ1ないし複数設けられる多口継手と前記ヘッド取付管14を連結する、架橋ポリエチレン管よりなる巻出し管16とよりなるスプリンクラー用配管において、ヘッド取付管側のヘッド取付管14に接続される巻出し管16の一部21aを小径にして他の部分21より剛性を小さくし、前記一部21aの長さはスプリンクラーヘッド13より散布される散水距離以下にする。前記一部21aは、火災時には散水で保護されて温度上昇が制限され、中まで溶融し難くして送水機能を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井裏に配管されるスプリンクラー用配管に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー用配管は一般に給水用主管と、該主管に補助管又はヘッダー等を介して接続される巻出し管と、天井に設置されるスプリンクラーヘッドを備え、前記巻出し管の管端部に連結されるヘッド取付管とからなり、消防法の改正により近年、巻出し管に架橋ポリエチレン管等の樹脂管が多用されるようになって来ている。
【0003】
図1は、特許文献1に開示されるスプリンクラー用配管の一例を示すもので、給水用主管1と、該主管1に接続されるヘッダー2と、天井8(図2)に設置されるスプリンクラーヘッド3を備えたヘッド取付管4と、前記ヘッダー2とヘッド取付管4とを接続する、架橋ポリエチレン管よりなる巻出し管5とよりなり、ヘッド取付管4は図2に示すように、金属部分4aをインサート成形したエルボ継手状をなし、金属部分4aでスラブ6に取付金具7により支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−118219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻出し管に樹脂管を用いた場合、巻出し管は天井裏にそのまま置いて這わせておけばよく、金属管のように建物の躯体等に吊り金具で支持する必要がないこと、金属管の場合、天井裏への他の配管、例えば給水・給湯管、雑配水管、汚水管、空調ダクト、電気ケーブルのラック配管などを迂回し、或いは天井に取付けた前記ヘッド取付管に接続できるようにするためエルボ継手を用いて方向転換し、エルボ継手による接続作業のために寸法計測、管の切断、ネジ切り、捩じ込み作業等が必要であるのに対し、樹脂管は概して金属管に比べ可撓性を有するため、エルボ継手を用いなくても方向転換が可能であり、したがってエルボ継手を用いた場合のような前記作業が不要であること等により、施工が容易である利点があるが、火災が発生したとき、スプリンクラーヘッドから散水できるようにするため、巻出し管には、高熱で中までは容易に溶融しないような耐熱性が要求される。
【0006】
そこで従来は、巻出し管に中まで容易には溶融しない肉厚を有する口径の大きなものが用いられているが、肉厚が大で、口径の大きなものは剛性も大きく、曲げ難くなってヘッド取付管への取付作業が容易でない嫌いがあった。
【0007】
本発明は、火災時の送水機能を損なうことなく、ヘッド取付管への取付作業を容易にする巻出し管を備えたスプリンクラー用配管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係わる発明は、給水用主管と、該主管に補助管又はヘッダー等を介して接続される、可撓性のある樹脂製の巻出し管と、天井に設置されるスプリンクラーヘッドを備え、前記巻出し管の管端部に連結されるヘッド取付管よりなり、天井裏に配管されるスプリンクラー用配管において、前記巻出し管は全長のうち、ヘッド取付管側のヘッド取付管に接続される一部が他の部分に比べ、剛性が小さく形成され、しかも前記ヘッド取付管側の一部は、スプリンクラーヘッドからの散水距離以下の長さにされることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、剛性の小さな前記巻出し管の一部は他部より小径であることを特徴とし、
請求項3に係わる発明は、請求項1又は2に係わる発明において、剛性の小さな前記巻出し管の一部又は他部より硬度の低い材質で形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係わる発明によると、巻出し管はスプリンクラーヘッド側の一部が他の部分に比べ、剛性が小さいため、可撓性に富み、ヘッド取付管への取付作業が容易に行えること、剛性が小さくても規定の散水量を確保できること、巻出し管の前記一部はスプリンクラーヘッドからの散水範囲内にあるため、火災時には散水で保護されて中まで溶融しにくく、送水機能を維持できること等の効果を有する。
【0011】
また巻出し管の一部を請求項2及び3に係わる発明のように構成すると、該巻き出し管の一部について、その剛性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】スプリンクラー用配管の概略図。
【図2】ヘッド取付管に接続される巻出し管の一部を示す正面図。
【図3】スプリンクラー用配管の別の例の概略図。
【図4】ヘッド取付管に接続される、本発明に係わる巻出し管の一部を示す正面図。
【図5】同巻出し管の一部の別の例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態のスプリンクラー用配管について図面により説明する。図中、図1及び図2に示すものと同一構造部分には同一符号を付した。
【0014】
図1は、本発明が適用されるスプリンクラー用配管の一例であり、図3は、別の例を示すもので、この例のスプリンクラー用配管は、給水用主管11と、該主管11より分岐する複数の補助管12と、天井に設置されるスプリンクラーヘッド13を備えたヘッド取付管14と、前記各補助管12にそれぞれ1ないし複数設けられる多口継手15(ヘッダーでもよい)と前記ヘッド取付管14を連結する、架橋ポリエチレン管よりなる巻出し管16とよりなっている。
【0015】
本発明が適用されるスプリンクラー用配管は、図1及び図3に例示されるものに限らず、給水用主管と該主管に補助管又はヘッダーを介して接続される、可撓性のある樹脂製の巻出し管と、天井に設置されるスプリンクラーヘッドを備え、前記巻出し管の管端部に連結されるヘッド取付管よりなるスプリンクラー用配管を備えたものであればどのような構造のものでもよい。
【0016】
巻出し管についても前記した架橋ポリエチレン製のものに限らず、例えば内層が架橋ポリエチレン、外層が非架橋ポリエチレンよりなる2層架橋ポリエチレン管、単なるポリエチレン管或いはポリブテン管等を用いることができる。
【0017】
図4は、図1及び図3に示すスプリンクラー用配管における、図2に対応するヘッド取付管4、14に接続される巻出し管21について示すもので、該巻出し管21は、ヘッド取付管側のヘッド取付管4、14に接続される一部21aが小径にされ、他の部分21より剛性が小さくされ、撓み易くなっている。
【0018】
前記一部21aの長さはスプリンクラーヘッド13より散布される散水範囲に収まる長さ、すなわち散水距離以下にされ、火災時には散水で保護されて、温度上昇が制限され、これにより中まで溶融し難くなって、送水機能が維持できるようにしてある。
【0019】
本発明者らは、20mmφの2層架橋ポリエチレン管において、端からの一部の長さ200cmを16mmφとして放水実験を行ったところ、規定放水量の80l/minを確保することができ、20mmφの2層架橋ポリエチレン管とほぼ同等の放水量を確保することができた。
【0020】
図5に示す別の実施形態の巻出し管23は端からの一部23aの長さを他部より硬度の低い材質(同材質であっても異種の材質であってもよい)で形成し、剛性を小さくしたものである。
【0021】
巻出し管の一部の剛性を他部より小さくするには、以上の手段のほか、一部の肉厚を他部より薄くしてもよいし、以上の複数の手段のうち、二以上の手段を組合わせてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1、11・・給水用配管
2・・ヘッダー
3、13・・スプリンクラーヘッド
4、14・・ヘッド取付管
5、16、21、23・・巻出し管
6・・スラブ
7・・取付金具
12・・補助管
15・・多口継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水用主管と、該主管に補助管又はヘッダー等を介して接続される、可撓性のある樹脂製の巻出し管と、天井に設置されるスプリンクラーヘッドを備え、前記巻出し管の管端部に連結されるヘッド取付管よりなり、天井裏に配管されるスプリンクラー用配管において、前記巻出し管は全長のうち、ヘッド取付管側のヘッド取付管に接続される一部が他の部分に比べ、剛性が小さく形成され、しかも前記ヘッド取付管側の一部は、スプリンクラーヘッドからの散水距離以下の長さにされることを特徴とするスプリンクラー用配管。
【請求項2】
剛性の小さな前記巻出し管の一部は他部より小径であることを特徴とするスプリンクラー用配管。
【請求項3】
剛性の小さな前記巻出し管の一部又は他部より硬度の低い材質で形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のスプリンクラー用配管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−110487(P2012−110487A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261443(P2010−261443)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000175021)三井化学産資株式会社 (47)
【Fターム(参考)】