説明

スプレーガンの塗料供給ジョイント

【課題】 塗装用スプレーガンに塗料を供給する場合に、塗料ホース等を接続するためのジョイントを流路に段差の生じないものとする。これによって塗料の流れが安定し、塗装の品質向上につながる。
【解決手段】 スプレーガン本体に塗料を供給する時の接続口となるジョイントであって、スプレーガンとの取付け側をシート体とシート押さえで構成し、シート押えはシート体の外周に回動自在とし、そのシート押さえでスプレーガンにねじ込み固定する。シート体は本体側に設けられた塗料入り口通路と段差を生じない、互いに気密に接触するシート部を有して接続される。シート部はテーパ面で接触し、取付け位置は通路軸を中心に自由な角度で固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用スプレーガンに塗料を供給して噴霧塗装する場合に、安定した供給を可能にし、洗浄の容易化、噴霧性能の安定化を図るための塗料供給ジョイントに関するものである。

【背景技術】
【0002】
塗装用スプレーガンは、噴霧によって形成される塗面の仕上がり性が価値を決定する為、噴霧性能が重要視される。特に近年の高級志向からわずかな塗装むらが商品価値を低下させるため、噴霧性能の安定化が強く要求されてきている。これまでスプレーガンへの塗料供給は、最終的にスプレーガンから噴射される際の塗料ノズルで左右されるとされ、噴出口に至る塗料経路には技術的な考慮がされていなかった。
【0003】
塗料の供給は通常、別の塗料供給装置によって供給され、その安定化は供給圧力等の安定化制御によって行われており、スプレーガンへの導入における接続に特別な配慮がされていなかったが、スプレーガンに供給する際の塗料の流入の安定性が噴霧性能に影響することが確認され、その安定化を図ることが必要であることがわかった。
【0004】
これまでスプレーガンへ塗料供給ホース7を接続する塗料ジョイント30は、図3に示すように通路31の外側に形成されたねじ部32が本体1にねじ込まれて、スプレーガンの塗料通路11に接続されるのが最も一般的であって、接続部における通路のつながりは段差部分33ができ円滑ではなかった。したがって通路の段差部分33が塗料流れに影響し、最終的に噴霧のわずかな乱れを生じて噴霧パターンに悪影響を与えていた。またこの段差部分33の滞留やそれによる塗料のわずかな堆積が塗料自体の均一性を乱し、塗装不良の一因になることもある。さらに洗浄時にも困難性を伴う問題があった。
【0005】
特に前述の塗料供給の安定化として、供給時通路を絞りその流通を制限することによって、さらに高い安定性が得られることが分かり、噴霧性能の安定化による塗装品質の向上を目的にジョイントの内部通路径を細くすることが取り入れられ、その結果、前記の段差が大きくなるという問題が起きていた。
【0006】
流体管路の接続方法は用途によって種々の方法が使用され、通路の段差がない接続手段としては、ジョイントの先端部をたとえばテーパ状に形成し、同じ内径の通路に接続することが可能であり、スプレーガン側の接続通路をその方法で対応することが可能となるが、この場合テーパ部を付き合わせるため、ジョイントの取付け時におけるねじ込み回転角度が特定できず、横方向に取り出しコンパクトにまとめるためL形の管継手を使用したときに、任意の方向に取り出せない問題がある。
【0007】
管継手の取り付けに管用テーパねじを使用して、ねじ込み位置を調整できる手段も知られているが、この場合も通路と外側のねじとの段差は生じ、かつ内径にねじ部が残るため通路の円滑性は望めないため、前記塗料の流通における乱れを防止することができない。またねじ込み時の力を一定にすることができず、バラツキが出ることになり、緩みや漏れの原因ともなって製品の品質安定化を損なうことになる。
【0008】
これとは別に、取り出しを任意の方向にするために、固定位置が自在となる管継手40等を使用して、図4に示すように汎用的に使用されているジョイントを用いて接続すれば求める方向に取り出すことも可能であるが、管継手の組み合わせになり、全体が大きくなって、塗料ホース7をスプレーガンに沿って取付け、コンパクトにまとめる場合に不都合が生ずるなど、前記した装置のコンパクト化が難しくなる。特にスプレーガンを自動塗装機や塗装ロボットに搭載して自由に駆動する場合、また複数のスプレーガンを併設する場合などは、よりコンパクトに軽量化することが必要とされる。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スプレーガンによる噴霧塗装の噴霧化性能を向上安定化し、仕上げ品質を高めることを目的とし、スプレーガンに供給する塗料ジョイントを小形化、塗料の流通を円滑に行い均一で安定した流通が可能で洗浄が容易である、スプレーガンへの塗料供給に適した接続ジョイントを得る。
【0010】
接続ジョイントは、接続されたときに内部の通路に段差が無く、塗料溜りを生ずることがない構成で、塗料ホースの取り出し方向を限定されず、狭い範囲で自由に接続できることを課題とする。

【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題を解決するため、スプレーガン本体に塗料を供給する時の接続口となるジョイントとして、略L字形の本体を有し、スプレーガンとの取付け側をシート体とシート押さえで構成し、シート体の外周に回動自在としたシート押えでスプレーガン本体にねじ込み固定する。シート体は本体側に設けられた塗料入口通路と段差を生じない、互いに気密に接触するシート部を有して接続される。塗料ホース接続側はシート体の軸方向と交差する方向に通路を形成してその端部にホース接続手段を設ける。前記シート部はテーパ面で接触し、回動自在とされる。

【発明の効果】
【0012】
本発明の前記構成によれば、スプレーガン本体の塗料入口通路に一致し、接続部に段差が生じないシート面によるシート体を設け、このシート体をその外側に配置したシート押さえでスプレーガン本体に接続されるため塗料の流通路はジョイントからスプレーガンに送り込まれるにあたって円滑な流れとなり、塗料溜りが無く、均一で安定した流れを得ることが出来る。これによって塗料ノズルから噴出する塗料の均一化が図れ、わずかな塗料流れの不均一による塗装むらを防止し、と巻く品質の優れた塗装を可能とする。
【0013】
ジョイントはL字形として本体の接続とは交差する方向にホース接続口を設けているがスプレーガンとの接続が回動自在となるためにホースの取り合いが容易になりコンパクトにまとめられ、作動やスプレーガン併設時の障害を軽減することが出来る。またL字形のジョイント本体により、塗料ホースの接続が外側に大きく飛び出ることなく、スプレーガン本体に沿って近い位置で行うことができ、小形軽量化を図ることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施した例として、図1に自動スプレーガンの断面図を示している。スプレーガンには塗料をスプレーガンに供給する時の接続口となるジョイントが設けられているが直接塗料容器を接続する場合と、塗料ホースを接続する場合があり、本発明は塗料ホースを接続して供給装置からの塗料を供給する場合に適用される。
【0015】
スプレーガン1は、塗料を噴出する塗料ノズル2と圧縮エアにより噴出する塗料を噴霧化する空気キャップ3からなる霧化装置を備え、塗料及び圧縮エアの導入されるそれぞれの接続口が設けられている。図の例は自動スプレーガンを示し、外部から供給される圧縮エアによって作動するエアピストン4により、前記塗料ノズル2の噴出口を開閉するニードル弁5が引かれ塗料が噴出する。この図では圧縮エアの通路が示されていないが、図示されない位置に作動エア及び噴霧エアの接続口が設けられ、外部の供給制御装置からそれぞれのエアが送り込まれる。このようなスプレーガンの構成自体は広く知られており、説明の詳細は省略する。
【0016】
本発明に係る塗料ジョイントは、図2に詳細を示すように、前記塗料ノズル2に連通する入口通路6に設けられ、塗料ホース7に取り付けられたホースジョイント8を取り付けて接続するもので、ジョイント本体10は略L字で一方はスプレーガン本体側に、他方はホースジョイント側に開口する通路11を形成している。
【0017】
スプレーガン本体10への接続側は、シート体12とその外周に回動自在に配置されたシート押えで構成され、前記シート体12は前記スプレーガン本体1の塗料入口通路と同じ内径の出口端部15を先端に有し、外側をテーパ状のシート面16で形成したシート部17を持っている。これによってスプレーガン本体1の塗料入口通路14とシート体12の出口端部15とは段差を形成しないで接続されることになる。
【0018】
図の例では通路11が特別細く形成されているため、出口端部15において大きくなるように拡開するテーパ面18を形成し、塗料入口通路14と同じ内径の出口端部15にして通路の段差を解消している。この塗料入口通路14は前記塗料ノズル2に接続され、通常のスプレーガンではそのまま噴出口から噴射される構成となっており、前記塗料入口通路14に前記シート体12の出口端部14を合わせて組み合わせれば、通常一般のスプレーガンでも使用可能となる。
【0019】
スプレーガン本体1への接続は、シート押え13に形成されたねじ19を締めこむことによってシート部17を押し付け、固定させるもので、自由な回転位置で固定することができ、L形に構成したジョイント本体10であっても、塗料ホース7の接続側を任意に設定でき、不都合な方向に塗料ホースが来るのを防止することができる。またL形ジョイントのホース接続側に曲げる位置は、塗料ホース7の接続手段を考慮し、可能な範囲で小形化することが望ましい。
【0020】
通常自動スプレーガンでは、噴霧の方向と反対側にスプレーガン本体と平行にホース類を配置することによってコンパクトにまとまり、スプレーガンを移動操作する際の弊害を防止することができる。またいくつかのスプレーガンを近い位置で併設し塗装効果を挙げる場合にも邪魔にならず、最小限の間隔で配置することが可能になる。
【0021】
塗料ホース接続側は内管20とスリーブ21間にホースが嵌め込まれ、袋ナット22で締め付けられる接続方法が採られている。ホースの接続手段はいくつかの例が知られているが、図の締め付け方法によってホースは確実に接続される。

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例を用いた自動スプレーガンの断面図である。
【図2】本発明の塗料供給ジョイント取り付け部分を示す断面図である。
【図3】従来の塗料供給ジョイント取り付け部分を示す断面図である。
【図4】従来の塗料供給ジョイントに汎用的な管継手を用いて塗料ホースを取り付けた場合に接続例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1、スプレーガン
2、塗料ノズル
3、空気キャップ
4、エアピストン
5、ニードル弁
6、入口通路
8、ホースジョイント
10、ジョイント本体
11、通路
12、シート体
13、シート押え
14、塗料入口通路
15、出口端部
17、シート部
16、シート面
18、テーパ面
19、ねじ
20、内管
21,スリーブ
22,袋ナット



【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーガン本体に装着され、塗料を供給する塗料ホースを接続する塗料ジョイントとして、略L字形の本体を有し、スプレーガンとの取付け側をシート体と、該シート体の外周に回動自在としたシート押えで構成し、シート体は本体側に設けられた塗料入口通路と段差を生じない出口端部と、その外側に本体側と互いに気密に接触するシート部を形成し、シート押えはスプレーガン本体に設けた接続口に螺入して前記シート体を固定するねじを外周に設けてなるスプレーガン用塗料供給ジョイント。

【請求項2】
前記シート体の通路は細径の絞り通路を形成し、出口端部にてスプレーガンの入口通路と略同径に拡開されるテーパ部を設けた請求項1の塗料供給ジョイント。






















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290020(P2008−290020A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138994(P2007−138994)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(390028495)アネスト岩田株式会社 (224)
【Fターム(参考)】