説明

スペアタイヤキャリア

【課題】スペアタイヤキャリアへのスペアタイヤの取り付けおよび取り外しの作業中の安全性を向上させることが可能なスペアタイヤキャリアを提供する。
【解決手段】スペアタイヤキャリア1を支持フレーム2と架台3から構成し、支持フレーム2の上部にスペアタイヤ20のホイールディスクを受けるためのホイールディスク受け面4とホイールディスクを固定するためのホイールディスク固定部8とを形成し、下部にスペアタイヤ20のゴム部分の干渉を防止するための切り欠き部5を形成している。そして、前記ホイールディスク受け面4を前方側が斜め上を臨むように傾斜させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にスペアタイヤを保持するためのスペアタイヤキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのパンク時等の緊急時に交換して使用するためのスペアタイヤを、車体に保持するスペアタイヤキャリアが知られている。このようなスペアタイヤキャリアには、例えば、大型のスペアタイヤの脱着が可能なスペアタイヤキャリアがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−1620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、クレーン車やトラクタ、トラック等の車体にスペアタイヤを保持する場合、当該スペアタイヤは大型であり重量があるため、プラットフォーム上にスペアタイヤを立てた状態で支持する。このとき、ホイールディスクを支持フレームにボルト締めすることで、スペアタイヤをスペアタイヤキャリアに固定するのが一般的である。
しかしながら、ホイールディスクの取付穴(ディスク孔)をボルトが挿入できる位置に移動させるためにスペアタイヤの位置や姿勢を調整するとき、ホイールディスクを支持フレームにボルト締めしているとき、およびボルトを弛めているときなどは、スペアタイヤの安定性が損なわれやすい。
【0005】
そのため、スペアタイヤをスペアタイヤキャリアに取り付けたり、スペアタイヤキャリアから取り外したりするときには、スペアタイヤの転倒や転落の虞があり、作業の安全性の観点から好ましくない。特に、大型のスペアタイヤが転倒等した場合の危険性はより高いといえる。
【0006】
そこで、本発明は、スペアタイヤキャリアへのスペアタイヤの取り付けおよび取り外しの作業中の安全性を向上させることが可能なスペアタイヤキャリアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係るスペアタイヤキャリアは、車体に取り付けられ、スペアタイヤを着脱可能に支持する支持フレームを備えたスペアタイヤキャリアであって、前記支持フレームは、所定の載置面に載置された状態のスペアタイヤのホイールディスクを固定するホイールディスク固定部と、該ホイールディスク固定部に固定されたホイールディスクが当接するホイールディスク受け面と、前記ホイールディスク固定部にホイールディスクが固定された状態のスペアタイヤの側面外周部に隣接する位置に、少なくとも前記ホイールディスク受け面よりも凹んだ切り欠き部とを有し、前記ホイールディスク受け面は、斜め上方を臨むように傾斜していることを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明に係るスペアタイヤキャリアは、第1の発明に係るスペアタイヤキャリアであって、前記所定の載置面が設けられたタイヤ載置台を備え、前記載置面は、前記ホイールディスク受け面に対して略直角であることを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明に係るスペアタイヤキャリアは、第2の発明に係るスペアタイヤキャリアであって、前記タイヤ載置台には、スペアタイヤの接地面を上下方向に向けた姿勢で前記タイヤ載置台に降ろしたときに、スペアタイヤの重心よりも前記支持フレーム側と反対側の接地面と接触することで、該スペアタイヤを前記支持フレーム側に傾倒させる傾倒部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ホイールディスク受け面にホイールディスクが当接することで、スペアタイヤキャリアに固定されていない状態であってもスペアタイヤが安定するので、スペアタイヤキャリアへのスペアタイヤの取り付けおよび取り外しの作業中の安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車体にスペアタイヤキャリアを設置したクレーン車の側面図である。
【図2】車体にスペアタイヤキャリアを設置したクレーン車の平面図である。
【図3】スペアタイヤキャリアの斜視図である。
【図4】スペアタイヤを取り付けたスペアタイヤキャリアの斜視図である。
【図5】スペアタイヤを取り付けたスペアタイヤキャリアの後方斜視図である。
【図6】スペアタイヤを取り付けたスペアタイヤキャリアの右側面図である。
【図7】スペアタイヤをスペアタイヤキャリアに取り付ける説明図である。
【図8】スペアタイヤを取り付けたスペアタイヤキャリアの右側面部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図8は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0013】
本発明のスペアタイヤキャリア1を備えるクレーン車30は、図1および図2に示すように、走行する車両31と、クレーン装置32と、を備えている。
【0014】
車両31は、前部及び後部のそれぞれに左右一対の車輪を有し、エンジンを動力源として走行する。
【0015】
クレーン装置32は、車両31に水平方向に旋回可能に設けられた旋回台34と、旋回台34に対して起伏可能に設けられるとともに、伸縮可能に設けられたブーム33と、を有している。
【0016】
旋回台34は、ボールベアリング式やローラーベアリング式の図示しない旋回ベアリングによって車両31に対して旋回自在に設けられている。また、ブーム33は、複数のブーム部材からなり、ブーム部材の内部に先端側に隣り合うブーム部材が収納可能に設けられている。
【0017】
次に、本発明のスペアタイヤキャリア1の構成について、図6に示す右側面図における左側の方向をスペアタイヤキャリア1の前方向として説明する。
本発明のスペアタイヤキャリア1は、図1および図2に示すように、車両31のプラットフォーム上に設置される。また、図3に示すように、スペアタイヤキャリア1は、車両31のプラットフォーム上に固定され、スペアタイヤ20のトレッド部を支持する架台3と、架台3の後端部上に立設され、スペアタイヤ20のホイールディスクを支持する支持フレーム2とから構成されている。
【0018】
架台3は、タイヤ載置台6と架台フレーム13から構成され、架台フレーム13が車両のプラットフォームに複数のボルトによって固定される。このタイヤ載置台6は、架台フレーム13の前部付近に設けられている。すなわち、架台フレーム13の後部上には支持フレーム2が設けられ、前部にはタイヤ載置台6が設けられている。そして、タイヤ載置台6は、左右方向に延びる四角柱形状となっており、上面が載置面7を形成している。
【0019】
この載置面7は、スペアタイヤキャリア1にスペアタイヤ20を取り付ける際に、当該スペアタイヤ20のトレッド部が当接する部分である。また、載置面7は、後方斜め上方を臨むように傾斜しており、傾斜上側端部(載置面7の前側縁部)が傾倒部12を形成している。すなわち、載置面7は、後側が下がった傾斜となっている。
【0020】
なお、載置面7の奥行きは、スペアタイヤ20のタイヤ幅よりも狭く形成されている。そのため、載置面7にスペアタイヤ20が載置されたとき、当該スペアタイヤ20のトレッド部は、載置面7から幅方向にはみ出ることになる。さらに、図7に示すように、載置面7の傾倒部12は、トレッド部を上下方向にして垂直に降ろしたスペアタイヤ20の重心よりも前側に位置するようになっている。
【0021】
支持フレーム2は、図3に示すように、それぞれ上下方向に延びる幅方向一対の支持部材14からなり、上方に向かって互いの幅が狭くなっている。そして、支持部材14の前面上部側にホイールディスク受け面4が形成され、前面下部側に切り欠き部5が形成されている。さらに、支持部材14の間に、ホイールディスク固定部8を有している。
【0022】
ホイールディスク受け面4は、スペアタイヤキャリア1の前方斜め上方を臨むように傾斜している。すなわち、図7および図8に示すように、ホイールディスク受け面4は、下部よりも上部が後方になるように傾斜している。このホイールディスク受け面4には、図4および図5に示すように、スペアタイヤ20のホイールディスクが当接する。なお、ホイールディスク受け面4の傾斜は、載置面7と直角をなす角度となっている。
【0023】
また、切り欠き部5は、図3に示すように、円弧状に凹んでいる。この切り欠き部の上下方向の距離は、スペアタイヤ20のサイドウォールの幅よりも広くなっている(図5参照)。
【0024】
また、ホイールディスク固定部8は、図3に示すように、ハンドルレンチ付ボルト9、ホイールディスク固定板10,およびボルト支持板11から構成される。ハンドルレンチ付ボルト9は、端部に作業者が把持可能なハンドル型のレンチを有するボルトであり、ハンドルを回転させることによりボルトを締め付けたり弛めたりすることができる。また、ホイールディスク固定板10は、中心部にボルト挿通用の孔が設けられた板状部材である。なお、ホイールディスク固定板10の背面側にクッション部材を有しても良い。また、ボルト支持板11は、支持部材14の上部側に溶接されており、中心部にボルト挿通用の孔を有している。そして、ハンドルレンチ付ボルト9は、ホイールディスク固定板10のボルト挿通孔、スペアタイヤ20のホイールディスクのディスク孔、およびボルト支持板11のボルト挿通孔に挿入可能となっている。
【0025】
次に、図7および図8を用いて、スペアタイヤ20をスペアタイヤキャリア1へ取り付ける手順を説明する。
まず、図7に示すように、スペアタイヤ20を、トレッド部を上下方向に向け、かつ、ホイールディスク面を後方側に向けて、架台3の真上から略垂直に降ろす。降ろされたスペアタイヤ20の下面となるトレッド部の一部は、載置面7に設けられた傾倒部12に最初に当接する。この最初に傾倒部12に当接するトレッド部は、上記のようにスペアタイヤ20の重心よりも前側であるため、トレッド部の一部が傾倒部12に当接したスペアタイヤ20は、傾倒部12に当接している部分を軸として、後側に傾倒する。
なお、図7に示すように、本実施形態においては、載置面7の奥行き(前後方向幅)がスペアタイヤ20の幅よりも小さく形成されていることにより、傾倒部12に接した部分を軸にスペアタイヤ20は傾倒しやすくなっている。しかし、傾倒部12がスペアタイヤ20の重心よりも前側となっていれば、載置面7の奥行きがスペアタイヤの幅よりも大きく形成されていてもよい。例えば、タイヤ載置台6自体が前側に位置する場合などは、載置面7の奥行きがスペアタイヤ20の幅よりも大きくても、降ろしたスペアタイヤ20は傾倒部12に接した部分を軸に後傾する。
【0026】
傾倒部12に接しているトレッド部を軸に傾倒したスペアタイヤ20のホイールディスクは、ホイールディスク受け面4に乗りかかるように当接するとともに、スペアタイヤ20のトレッド部が載置面7に当接する。このとき、ホイールディスク受け面4と載置面7とは、互いに直角をなすように傾斜しているため、スペアタイヤ20は、下部を載置面7、中心部付近をホイールディスク受け面4にそれぞれ自重を預けるようになる。そのため、上側が後方に傾いたスペアタイヤ20は、安定した状態で保持される(図4および図5参照)。
【0027】
次いで、スペアタイヤ20のホイールディスクをホイールディスク固定部8に固定する作業を行う。ホイールディスク受け面4にホイールディスクが当接すると、ホイールディスクのディスク孔とボルト支持板11のボルト挿通孔が相対する位置になり、ホイールディスクとホイールディスク固定部との位置決めを容易にできるようになっている。なお、ディスク孔とボルト支持板11の開口部とが相対していない場合は、位置合わせの調整を行う。
【0028】
そして、ホイールディスク固定板10のボルト挿通孔をディスク孔に合わせ、ホイールディスク固定板10とボルト支持板11とでホイールディスクを挟み込む。これにより、ホイールディスク固定板10のボルト挿通孔から、スペアタイヤ20のホイールディスクのディスク孔を経てボルト支持板11のボルト挿通孔まで貫通することになり、当該貫通部にハンドルレンチ付ボルト9を挿入する。こうして挿入したハンドルレンチ付ボルト9を締め付けることにより、ホイールディスクがホイールディスク固定部8に固定される(図8参照)。
【0029】
ここで、スペアタイヤ20のホイールディスク面がゴム部分(側面外周部)よりも内側にある場合、ホイールディスクがホイールディスク受け面4に当接すると、ゴム部分の一部がホイールディスク面よりも奥側に入り込む。しかし、当該ゴム部分と隣接する位置の支持フレーム2には、サイドウォールよりも幅広に形成された切り欠き部が設けられているため、当該ゴム部分と支持フレーム2とが接触しないようになっている(図5参照)。
【0030】
このように、スペアタイヤキャリア1に載置したスペアタイヤ20は、ホイールディスク固定部8に固定しない状態であっても、ホイールディスク受け面4に寄りかかることにより、安定して載置面7に載置されることになる。そのため、スペアタイヤキャリア1への着脱作業中に、スペアタイヤ20が転倒したり転落したりすることの危険性が抑止され、作業の安全性が向上する。また、スペアタイヤ20を人力で支えながら着脱作業を行う必要がなく、作業利便性が向上する。
【0031】
また、傾倒部12に載置したスペアタイヤ20は自重により傾倒して、ホイールディスクがホイールディスク受け面4に当接するので、ホイールディスク固定部8にホイールディスクを合わせる作業が容易になる。
【0032】
さらに、スペアタイヤ20のゴム部分と支持フレーム2とが接触しないように切り欠き部5が形成されているため、スペアタイヤキャリア1にスペアタイヤ20を取り付けたときにおけるスペアタイヤ20のゴム部分の損傷や摩耗を防止することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、支持フレーム2は一対の部材から構成されているが、このような形状に限られるものではなく、例えば、支持フレーム2は、一枚の板状に形成されていてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、載置面7は、ホイールディスク受け面4と直角になるように傾斜しているが、例えば水平に形成されていてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、載置面7の奥行きは、スペアタイヤ20のタイヤ幅よりも小さく形成されているが、垂直に降ろしたスペアタイヤ20の重心が傾倒部12よりも後側であれば、タイヤ幅よりも大きく形成するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施形態では、スペアタイヤ20をタイヤ載置台6に載置させてから、支持フレーム2に固定しているが、スペアタイヤキャリア1はタイヤ載置台6を有さない構成であってもよい。この場合は、スペアタイヤ20を直接車体上に載せてから傾倒させ、支持フレーム2に固定するようにする。
【0037】
また、スペアタイヤ20のホイールディスクをホイールディスク固定部8に固定する方法は、本実施形態のようなボルト締めに限らず、例えば、ホイールディスク固定部に磁石を用いて磁力によってホイールディスクを固定してもよいし、ホイールディスク固定部に突起部を設け、当該突起部をディスク孔に引っ掛けて固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 スペアタイヤキャリア
2 支持フレーム
3 架台
4 ホイールディスク受け面
5 切り欠き部
6 タイヤ載置台
7 載置面
8 ホイールディスク固定部
9 ハンドルレンチ付ボルト
10 ホイールディスク固定板
11 ボルト保持板
12 傾倒部
13 架台フレーム
14 支持部材
20 スペアタイヤ
30 クレーン車
31 車両
32 クレーン装置
33 ブーム
34 旋回台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられ、スペアタイヤを着脱可能に支持する支持フレームを備えたスペアタイヤキャリアであって、
前記支持フレームは、
所定の載置面に載置された状態のスペアタイヤのホイールディスクを固定するホイールディスク固定部と、
該ホイールディスク固定部に固定されたホイールディスクが当接するホイールディスク受け面と、
前記ホイールディスク固定部にホイールディスクが固定された状態のスペアタイヤの側面外周部に隣接する位置に、少なくとも前記ホイールディスク受け面よりも凹んだ切り欠き部とを有し、
前記ホイールディスク受け面は、
斜め上方を臨むように傾斜していることを特徴とするスペアタイヤキャリア。
【請求項2】
前記所定の載置面が設けられたタイヤ載置台を備え、
前記載置面は、前記ホイールディスク受け面に対して略直角であることを特徴とする請求項1に記載のスペアタイヤキャリア。
【請求項3】
前記タイヤ載置台には、
スペアタイヤの接地面を上下方向に向けた姿勢で前記タイヤ載置台に降ろしたときに、スペアタイヤの重心よりも前記支持フレーム側と反対側の接地面と接触することで、該スペアタイヤを前記支持フレーム側に傾倒させる傾倒部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のスペアタイヤキャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−75631(P2013−75631A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217520(P2011−217520)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)