説明

スペアタイヤ搭載装置

【課題】スペアタイヤを傾斜状態で搭載するスペアタイヤ搭載装置において、チェーンが弛む方向へのスペアタイヤの移動を抑制する。
【解決手段】スペアタイヤキャリア46のチェーン46bをスペアタイヤ44のホイールディスク穴44dに挿通し、チェーン46bの先端部46cに取り付けられた吊り板46dでホイールディスク44cの下面を吊り上げるときに、スペアタイヤ44の側面の一部がガイド50に接触してスペアタイヤ44が回転する。このとき、タイヤストッパ52が、吊り板46dとホイールディスク穴44dの内周との間に存在する2つの隙間に挿通される。さらに、チェーン46bを巻き上げると、スペアタイヤ44は、その側面が当接部材48に当接しつつ、当接部材48上を上方に移動した後、タイヤストッパ52がホイールディスク穴44dの内周に接触してその移動を停止する。この状態でスペアタイヤ44を搭載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後車軸から車体フレーム後端までの間(リヤオーバーハング)において、スペアタイヤを搭載するスペアタイヤ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック用のスペアタイヤ搭載装置として、リヤオーバーハングに、チェーンを用いたスペアタイヤキャリアでスペアタイヤを搭載するものが知られている。このスペアタイヤ搭載装置は、スペアタイヤをチェーンで巻き上げ、その側面を車体に当接させることでスペアタイヤを保持している。
【0003】
ところで、車体フレームの後部に、リヤゲートリフターなどの架装物を取り付けると、これとスペアタイヤとが干渉してしまうことがある。そこで、スペアタイヤを下方に移設し、これと架装物との干渉を回避する方法があるが、車両の最低地上高が低くなって輪止めのような道路構造物と接触する可能性があるので、容易に採用し得るものではない。このため、発明の目的が異なる特許文献1に記載されるように、リヤオーバーハングにスペアタイヤを傾斜状態で搭載するスペアタイヤ搭載装置を適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−1074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のスペアタイヤ搭載装置は、スペアタイヤを傾斜状態で搭載するため、車両走行によりスペアタイヤに加速度が作用すると、チェーンが弛む方向にスペアタイヤが移動し、その保持が不完全になってしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は従来技術の問題点に鑑み、搭載状態におけるスペアタイヤの移動を抑制することで、架装物との干渉を回避しつつ、スペアタイヤの保持を確実ならしめたスペアタイヤ搭載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明においては、車両のリヤオーバーハングにおいて左右のサイドレールに渡って架設したクロスメンバに固定されるスペアタイヤキャリアと、スペアタイヤキャリアのチェーンをスペアタイヤのホイールディスク穴に挿通し、チェーンの先端部に取り付けられた吊り板でホイールディスクの下面を吊り上げた搭載状態において、スペアタイヤが車両前後方向に傾斜しつつそのホイールディスクの側面が当接する当接部材と、スペアタイヤキャリアのチェーンを巻き上げてスペアタイヤを搭載位置に吊り上げるときに、スペアタイヤの軸方向と垂直な面が当接部材の傾斜角度になるように、スペアタイヤを回転させるタイヤ回転手段と、スペアタイヤが搭載位置まで吊り上げられたときに、スペアタイヤキャリアのチェーンが弛む方向へのスペアタイヤの移動を抑制する移動抑制手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペアタイヤ搭載状態において、スペアタイヤキャリアのチェーンが弛む方向へのスペアタイヤの移動が抑制されるので、架装物との干渉を回避するためスペアタイヤの傾斜搭載を適用しても、スペアタイヤの保持を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るスペアタイヤ搭載装置をトラックに適用した平面図である。
【図2】スペアタイヤ搭載装置を、図1のA方向から見た状態を示す後面図である。
【図3】スペアタイヤ搭載装置を、図1のB方向から見た状態を示す側面図である。
【図4】スペアタイヤ搭載装置を、図2のC方向から見た状態を示す平面図である。
【図5】スペアタイヤ搭載装置の詳細を示す説明図である。
【図6】スペアタイヤ搭載手順の第一工程の説明図である。
【図7】スペアタイヤ搭載手順の第二工程の説明図である。
【図8】スペアタイヤ搭載手順の第三工程の説明図である。
【図9】スペアタイヤ搭載手順の第四工程の説明図である。
【図10】スペアタイヤ搭載手順の第五工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、リヤオーバーハングに架装物を取り付けるようなトラックに対して、本発明に係るスペアタイヤ搭載装置10を適用した一実施形態を示す。
【0011】
トラックの骨格となるフレーム12は、車両前後方向の延びる左右一対のサイドレール14と、これらを車両左右方向に亘って相互に連結する複数のクロスメンバ16〜28と、を含んで構成される。フレーム12の前部には、エンジン30、クラッチ32、及び変速機34が搭載され、変速機34の出力が、プロペラシャフト36及びディファレンシャルギヤ38を介して、駆動輪たる後輪40に伝達される。また、エンジン30が搭載されるフレーム12の近傍には、ステアリングホイール42により操舵される前輪44が取り付けられる。
【0012】
フレーム12のリヤオーバーハングには、少なくともタイヤ44aとホイール44bからなるスペアタイヤ44を搭載するためのスペアタイヤ搭載装置10が設けられる。
スペアタイヤ搭載装置10は、図2〜図5に示すように、リヤオーバーハングに位置するクロスメンバ28に取り付けられるスペアタイヤキャリア46と、スペアタイヤ44の側面(搭載状態において上方に位置する面)を当接する一対の当接部材48と、スペアタイヤ44を吊り上げるときにこれを回転させるガイド50(タイヤ回転手段)と、スペアタイヤ44の搭載状態においてその移動を抑制するタイヤストッパ52(タイヤ移動抑制手段)と、を含んで構成される。
【0013】
スペアタイヤキャリア46は、図5に示すように、着脱可能に接続されるハンドルにより駆動される減速機が内蔵され、かつ、クロスメンバ28にブラケット54を介して固定されるキャリア本体46aと、減速機の駆動に伴って巻き取り又は繰り出されるチェーン46bと、その先端部46cに取り付けられた吊り板46dと、を含んで構成される。ここで、吊り板46dは、スペアタイヤ44のホイールディスク44cの下面を支持する一方、斜めに傾斜させることで、そのホイールディスク穴44dに挿通可能な形状に形成される。また、チェーン46bと吊り板46dの結合方法は、吊り板46dにUボルト46eを摺動可能に取り付け、その先端部46cにチェーン46bを結合すると共に、吊り板46dとUボルト46dの基部46fとの間に圧縮コイルばねのような弾性部材46gを介在させる。
【0014】
当接部材48は、スペアタイヤキャリア46のチェーン46bをスペアタイヤ44のホイールディスク穴44dに挿通し、チェーン46bの先端部46cに取り付けられた吊り板46dでホイールディスク44cの下面を吊り上げた搭載状態において、スペアタイヤ44が車両前後方向に傾斜、例えば、車両後方が低位になるように傾斜しつつスペアタイヤ44の側面が当接するものである。当接部材48は、具体的には、図2〜図5に示すように、横断面が略L字形状をなす一対のアングル材からなり、スペアタイヤキャリア46のチェーン46bを挟んだ2位置で車両前後方向に材軸が延びつつ、ブラケット56を介してクロスメンバ28に取り付けられる。
【0015】
ガイド50は、スペアタイヤキャリア46のチェーン46bを巻き上げてスペアタイヤ44を搭載位置に吊り上げるときに、スペアタイヤ44の軸方向と垂直な面が当接部材48の下面と平行になるように、スペアタイヤ44を回転させるものである。ガイド50は、具体的には、図2〜図5に示すように、略く字形状をなす一対の棒部材からなり、スペアタイヤキャリア46によりスペアタイヤ44が吊り上げられるときに、その側面の一部が棒部材の屈曲部に当たり、ここを回転中心としてスペアタイヤ44を回転させるように、ブラケット58を介してクロスメンバ28の下面に取り付けられる。
【0016】
タイヤストッパ52は、スペアタイヤ44が搭載位置まで吊り上げられたときに、スペアタイヤキャリア46のチェーン46bが弛む方向へのスペアタイヤ44の移動を抑制するものである。タイヤストッパ52は、具体的には、図5に示すように、略く字形状をなす一対の棒部材からなり、ガイド50によってスペアタイヤ44が回転するときに、吊り板46dとホイールディスク穴44dの内周との間に存在する2つの隙間に棒部材が挿通される一方、スペアタイヤ44が搭載位置になったときに、ホイールディスク穴44dの内周に棒部材が接触するようにブラケットに溶接などで固定される。また、タイヤストッパ52の先端部は、タイヤストッパ52が吊り板46dとホイールディスク穴44dの内周との間に存在する2つの隙間に挿通する位置において、ホイールディスク穴44dの内周及び吊り板46dの少なくとも一方に対面する部分が斜めになっている。なお、タイヤストッパ52は、直線状をなす一対の棒部材からなっていてもよい。
【0017】
このようなスペアタイヤ搭載装置10によれば、スペアタイヤ搭載状態において車両に加速度が作用した場合には、タイヤストッパ52がホイールディスク穴44dの内周に接触しているので、チェーン46bの弛む方向へのスペアタイヤ44の移動が抑制される。このため、リヤオーバーハングにおける架装物とスペアタイヤ44との干渉を回避するために傾斜搭載を適用しても、スペアタイヤ44の保持を確実にすることができる。
【0018】
また、ガイド50は、スペアタイヤ44を吊り上げるときにスペアタイヤ44を回転させるので、スペアタイヤ44の移動を抑制するタイヤストッパ52を、吊り板46dとホイールディスク穴44dの内周との間に存在する2つの隙間へ容易に挿通することができる。加えて、タイヤストッパ52の先端部が前記のように斜めになっていることにより、タイヤストッパ52の挿通時、ホイールディスク穴44dの内周及び吊り板46dの少なくとも一方と多少の接触が生じても、タイヤストッパ52の挿通を容易に行うことができる。
【0019】
さらに、搭載状態において弾性部材46gでスペアタイヤ44を当接部材48に向けて付勢するので、スペアタイヤ44を安定的に保持することができる。
次に、スペアタイヤ搭載装置10を使用して、路面に置かれたスペアタイヤ44を搭載する手順について説明する。
【0020】
図6に示すように、スペアタイヤ搭載装置10のスペアタイヤキャリア46のキャリア本体46aを操作することによりチェーン46bを繰り出して、チェーン46bの先端部46cに取り付けられた吊り板46dを斜めにしてスペアタイヤ44のホイールディスク穴44dに挿通する。図7は、吊り板46dをスペアタイヤ44のホイールディスク穴44dに挿通した状態を示している。そして、スペアタイヤキャリア46のキャリア本体46aを操作してチェーン46bを巻き上げることにより、吊り板46dの上面でホイールディスク44cの下面を吊り上げると、スペアタイヤ44は略水平に上昇し、図8に示すように、その側面の一部がガイド50を構成する棒部材の屈曲部に接触する。
【0021】
引き続きチェーン46bを巻き上げると、図9に示すように、スペアタイヤ44は、この接触部を回転中心として反時計方向であるD方向に回転する。そして、タイヤストッパ52が、吊り板46dとホイールディスク穴44dの内周との間に存在する2つの隙間に挿通される。
【0022】
さらに、チェーン46bを巻き上げると、図10に示すように、スペアタイヤ44の側面が当接部材48に当接しつつ、スペアタイヤ44は当接部材48上を上方に移動するが、タイヤストッパ52がホイールディスク穴44dの内周に接触すると、その移動を停止する。以上により、スペアタイヤ44をスペアタイヤ搭載装置10に搭載することができる。
【0023】
スペアタイヤ搭載手順は以上のようであるが、スペアタイヤ44を取り外す場合には、逆の手順で行えばよい。
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々変形させることができる。例えば、スペアタイヤキャリア46、当接部材48、ガイド50及びタイヤストッパ52は、ブラケットを介さずボルト及びナットなどの締結部材や溶接などによって直接クロスメンバ28などに固定されていてもよい。
【0024】
ガイド50は一対の棒部材である必要はなく、板状部材から構成されていてもよい。また、略く字形状をなす棒部材ではなく、直線状の棒部材であってもよい。さらに、ガイド50を設けず、当接部材48の下方端でスペアタイヤ44を回転させることもできる。
【0025】
タイヤストッパ52は、略く字形状をなす棒部材ではなく、直線状の棒部材であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 スペアタイヤ搭載装置
14 サイドレール
28 クロスメンバ
44 スペアタイヤ
44c ホイールディスク
44d ホイールディスク穴
46 スペアタイヤキャリア
46a キャリア本体
46b チェーン
46c 先端部
46d 吊り板
48 当接部材
50 ガイド
52 タイヤストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のリヤオーバーハングにおいて左右のサイドレールに渡って架設したクロスメンバに固定されるスペアタイヤキャリアと、
前記スペアタイヤキャリアのチェーンをスペアタイヤのホイールディスク穴に挿通し、該チェーンの先端部に取り付けられた吊り板でホイールディスクの下面を吊り上げた搭載状態において、前記スペアタイヤが車両前後方向に傾斜しつつその側面が当接する当接部材と、
前記スペアタイヤキャリアのチェーンを巻き上げてスペアタイヤを搭載位置に吊り上げるときに、前記スペアタイヤの軸方向と垂直な面が当接部材の傾斜角度になるように、該スペアタイヤを回転させるタイヤ回転手段と、
前記スペアタイヤが搭載位置まで吊り上げられたときに、前記スペアタイヤキャリアのチェーンが弛む方向へのスペアタイヤの移動を抑制する移動抑制手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするスペアタイヤ搭載装置。
【請求項2】
前記タイヤ回転手段は、前記スペアタイヤの側面が接触したときに、その接触箇所を回転中心としてスペアタイヤを回転させることを特徴とする請求項1記載のスペアタイヤ搭載装置。
【請求項3】
前記移動抑制手段は、前記タイヤ回転手段によりスペアタイヤが回転するときに、前記吊り板とホイールディスク穴の内周との間に存在する2つの隙間に挿通すると共に、前記スペアタイヤが搭載位置になったときに、ホイールディスク穴の内周に接触してチェーンが弛む方向へのスペアタイヤの移動を抑制する一対の棒部材からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスペアタイヤ搭載装置。
【請求項4】
前記棒部材の先端部は、前記吊り板とホイールディスク穴の内周との間に存在する2つの隙間に挿通する位置において、前記ホイールディスク穴内周及び吊り板の少なくとも一方に対面する部分が斜めになっていることを特徴とする請求項3記載のスペアタイヤ搭載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−234887(P2010−234887A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83181(P2009−83181)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)