説明

スペアタイヤ搭載装置

【課題】作業の安全性を確保しつつ、2本のスペアタイヤ2,3を1本ずつ確実に着脱可能にする。
【解決手段】左右のサイドレール4a,4bに渡って架設したクロスメンバ5にスペアタイヤキャリア6を固定すると共に、上下に重ねた2本のタイヤ2,3のホイールディスク穴2a,3aにスペアタイヤキャリア6のチェーン9を通し、該チェーン9の先端部9aに取り付けた吊り板7で下側に位置するタイヤ3のホイールディスク3bの下面を吊り上げて2本のタイヤ2,3を搭載する。スペアタイヤキャリア6のチェーン9を挟んで離間した2位置で、上側に位置するタイヤ2を保持するように、左右のサイドレール4a,4bに両端部が回動可能に取り付けられる略コ字形状の一対のロッド20,21を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2本のスペアタイヤを重ねた状態で車体下面に搭載するスペアタイヤ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、荷物の積み降ろしに要する労力を軽減するために、前輪を大径タイヤにする一方、後輪を小径タイヤにすることで、荷台床面地上高を低くした低床トラックが実用化されている。このような低床トラックにおいては、タイヤのパンクチュアなどに備えて、径が異なる2本のスペアタイヤを搭載することが必要になる。
2本のスペアタイヤを車両に搭載する技術として、特許文献1に記載されているように、チェーンの先端部に取り付けられた吊り板でディスクホイール下面を受け、2本のスペアタイヤを水平に重ねた状態で車体下面に搭載するスペアタイヤ搭載装置が提案されている。かかるスペアタイヤ搭載装置では、スペアタイヤを1本ずつ搭載できるようにすべく、弾性部材からなる係止部材が取り付けられた支持部材により、上側に位置するスペアタイヤを着脱可能に弾性係止する構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭58−16465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスペアタイヤ搭載装置では、上側に位置するスペアタイヤを取り外すとき、これを手または足で下方に押して、係止部材の弾性力に抗して支持部材の係止状態を解かなければならなかった。このため、スペアタイヤ搭載装置の後方にリヤバンパが設置される車両では、スペアタイヤに手や足が届き難く、スペアタイヤ搭載装置をそのまま利用することはできなかった。また、スペアタイヤの着脱作業時には、上側に位置するスペアタイヤは弾性部材の弾性力のみにより係止されているため、例えば、予期しない外力が作用したときに外れてしまい、作業の安全性の観点から好ましいものではなかった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、作業の安全性を確保しつつ、2本のスペアタイヤを1本ずつ確実に着脱可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明においては、スペアタイヤキャリアのチェーンを挟んで離間した2位置で、上側に位置するタイヤを保持するタイヤ保持部材を設けた。
ここで、タイヤ保持部材は、左右のサイドレールに両端部が回動可能に取り付けられる略コ字形状の一対のロッドからなる。また、一対のロッドの一方を開操作すると、その他方を開動作させるリンク機構を設ける。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、上下に重ねた2本のスペアタイヤを取り外す場合には、先ず、下側に位置するタイヤを取り外す。この場合、スペアタイヤキャリアを操作してチェーンを繰り出すことで、上側に位置するタイヤをタイヤ保持部材により確実に保持しつつ、下側に位置するタイヤのみを地面に下降させることができる。そして、吊り板を下側に位置するタイヤのホイールディスク穴から取り外すことで、下側に位置するタイヤのみを取り外すことができる。
【0008】
これに続いて、下側に位置するタイヤを取り出した後にスペアタイヤキャリアを操作してチェーンを巻き上げ、吊り板を上側に位置するタイヤのホイールディスクに当接させ、タイヤ保持部材を取り外す。この後、スペアタイヤキャリアを操作してチェーンを繰り出すことにより、該タイヤを地面に下降させる。そして、吊り板をホイールディスク穴から取り外すことでタイヤを取り出すことができる。
【0009】
なお、タイヤの取り付けには、前述の取り外しの手順を逆にすればよい。
本発明では、弾性係止を行わずに、タイヤ保持部材により上側に位置するタイヤを保持して、タイヤの着脱作業を行うため、該作業中に予期しない外力が作用した場合であっても、タイヤがタイヤ保持部材から外れることがなく、作業の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】スペアタイヤ搭載装置を示す断面図
【図2】図1のA−A線から前方を見た図
【図3】スペアタイヤ搭載装置の斜視図
【図4】スペアタイヤ搭載装置の各部品の取り付け状態を示す斜視図
【図5】リンク機構の動きを示す断面図
【図6】ロッドで上側に位置するタイヤを保持する状態を示す断面図
【図7】上側に位置するタイヤを吊り上げた状態を示す断面図
【図8】上側に位置するタイヤを下降させた状態を示す断面図
【図9】上側に位置するタイヤを取り外す状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1〜図4は、前輪と後輪との径が異なるスペアタイヤを装着した低床トラックに対して、本発明に係るスペアタイヤ搭載装置1を適用した場合を示している。具体的には、図1は、上下に重ねた2本のスペアタイヤ2,3を搭載している状態を示している。図2は、図1のA−A線からトラックの前方を見た図である。図3は、スペアタイヤ搭載装置1の斜視図である。図4は、スペアタイヤ搭載装置1の各部品の取り付け状態を示す斜視図である。
【0012】
スペアタイヤ搭載装置1は、トラックの前後方向に平行に延びて車台フレームを構成する左右のサイドレール4a,4bの後部に設けられている。左右のサイドレール4a,4bの後端には、バンパブラケット11を介して、車幅方向に延びるリヤバンパ12が取り付けられている。
スペアタイヤ搭載装置1は、クロスメンバ5、スペアタイヤキャリア6およびタイヤ保持部材としての一対のロッド20,21を含んで大別構成されている。
【0013】
クロスメンバ5は、左右のサイドレール4a,4bの後部において、左右のサイドレール4a,4bに渡って車幅方向に平行に2本架設されている。クロスメンバ5の両端は、左右のサイドレール4a,4bの上端面に固定されている。
スペアタイヤキャリア6は、2つのクロスメンバ5の略中央位置に固定されている。スペアタイヤキャリア6には、チェーン9の繰り出しおよび巻き上げが可能な駆動装置が内蔵されている。チェーン9の先端部9aには、スペアタイヤ2,3のディスクホイール穴2a,3aを挿通可能で、ディスクホイール3bの下面からスペアタイヤ2,3を吊り上げ可能な吊り板7が取り付けられている。
【0014】
スペアタイヤキャリア6のチェーン9を挟んで離間した2位置には、上側に位置するタイヤ2を保持する一対のロッド20,21が配置されている。ロッド20,21は、左右のサイドレール4a,4bに両端部が回動可能に取り付けられている。
ロッド20は、スペアタイヤキャリア6のチェーン9よりトラックの前方に配置される一方、ロッド21は、該チェーン9よりトラックの後方に配置されている。
【0015】
これらのロッド20,21は、棒状の部材が車幅方向に延び、中央部がトラックの下方に向けて凹状に窪んだ略コ字形状をしている。これにより、タイヤ2の下面を受けるタイヤ保持部20a,21aが形成される。ロッド20,21の両端部は、それぞれ左右のサイドレール4a,4bに形成された貫通孔22,23に挿通された後に、例えば車幅方向の移動を規制するピンが取り付けられる。
【0016】
ここで、ロッド20,21の少なくとも一端にはアームが固定されている。図では、ロッド20の一端に、該一端から上方に向かって延びるアーム20bが固定される一方、ロッド21の一端に、該一端から下方に向かって延びるアーム21bが固定されている。
これらのアーム20b,21bには、リンク部材25の端部25a,25bが回転可能に取り付けられている。これにより、リンク機構が構成され、一対のロッド20,21を連動させることが可能となる。
【0017】
例えば、図5に示すように、ロッド21のタイヤ保持部21aをトラックの後方に引くことで、その両端部を回転中心としてアーム21bが回転され、リンク部材25がトラックの後方に引かれる。これにより、ロッド20の両端部を回転中心としてアーム20bが回転され、保持部20aがトラックの前方に開かれる。
次に、上下に重ねた2本のスペアタイヤ2,3を1本ずつ取り外す場合について説明する。
【0018】
図1の状態から、スペアタイヤキャリア6を操作してチェーン9を繰り出すことで、図6に示すように、上側に位置するタイヤ2の下面がロッド20,21の保持部20a,21aに受けられ、下側に位置するタイヤ3のみが地面まで下降される。
この後に、図7に示すように、吊り板7を下側に位置するタイヤ3のホイールディスク穴3aから取り外し、スペアタイヤキャリア6の操作によりチェーン9を巻き上げて、上側に位置するタイヤ2のディスクホイール2bの下面に吊り板7を当接させた後、ロッド20,21を上側に位置するタイヤ2の下方位置から外す開操作を行う。また、下側に位置するタイヤ3を取り出す。
【0019】
そして、図8に示すように、スペアタイヤキャリア6を操作してチェーン9を繰り出す。これにより、タイヤ2を地面に下降させる。
その後、図9に示すように、吊り板7を該タイヤ2のディスクホイール穴2aから取り外し、タイヤ2を取り出すと共に、スペアタイヤキャリア6の操作によりチェーン9を巻き上げる。
【0020】
以上により、上下に重ねた2本のスペアタイヤ2,3を一本ずつ確実に取り外すことができる。
なお、スペアタイヤ2,3を取り付ける場合には、前述のタイヤ取り外しの逆の手順で行えばよい。
【符号の説明】
【0021】
1 スペアタイヤ搭載装置
2,3 タイヤ
2a,3a ホイールディスク穴
4a,4b サイドレール
5 クロスメンバ
6 スペアタイヤキャリア
7 吊り板
9 チェーン
20,21 ロッド
25 リンク部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドレールに渡って架設したクロスメンバにスペアタイヤキャリアを固定すると共に、上下に重ねた2本のタイヤのホイールディスク穴にスペアタイヤキャリアのチェーンを通し、該チェーンの先端部に取り付けた吊り板で下側に位置するタイヤのホイールディスクの下面を吊り上げて2本のタイヤを搭載するスペアタイヤ搭載装置において、
前記スペアタイヤキャリアのチェーンを挟んで離間した2位置で、上側に位置するタイヤを保持するように、前記左右のサイドレールに両端部が回動可能に取り付けられる略コ字形状の一対のロッドからなるタイヤ保持部材を設けたことを特徴とするスペアタイヤ搭載装置。
【請求項2】
前記一対のロッドには、その一方を開操作すると、その他方を開動作させるリンク機構が設けられていることを特徴とする請求項1記載のスペアタイヤ搭載装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−136694(P2011−136694A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53324(P2011−53324)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【分割の表示】特願2005−373858(P2005−373858)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)