説明

スペクトラム拡散移動通信の通信中チャネル切替方法及びスペクトラム拡散移動通信の移動機

【目的】 2系統の受信機をもつことなく、また信号をバースト的とすることなく、通話中チャネル切替を可能とする。
【構成】 無線ゾーン2a〜2dにそのゾーントラヒックに応じた数の無線周波数を割り当て、そのうち1つの周波数f1 を全ゾーンに共通に割り当て、同一周波数についてはゾーンごとに異なる拡散コードを割り当てる。移動機に二つの相関器15,16を設け、例えばゾーン2aに在圈し、周波数f2 で通話している。移動機は、通話品質が低下すると、一旦共通周波数f1 に切替え、相関器15,16の一方で通話を継続すると共に、他方で拡散コードを走査して、下り信号の受信レベルを測定し、切替え先無線ゾーンを決定する。その決定されたゾーンが例えば2bである場合は、共通周波数f1 以外の周波数f2 又はf3 による通話に切替えて通信を継続する。f1 のみしか割り当てられているゾーン2d以外のゾーンでは共通周波数f1 は通信中チャネル切替と、発着信時の回線設定などにのみ使用する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はスペクトラム拡散方式を用いたセルラ移動通信方式における通信中チャネル切替方法及びスペクトラム拡散移動通信の移動機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】セルラ移動通信方式は現在デジタル自動車電話方式として実用化されている。即ち、デジタル自動車電話方式においては図2Aに示すようにサービスエリア1が複数の無線ゾーン2a,2b,2c…に分割され、これら各無線ゾーン2a,2b,2c…にゾーン毎に個別周波数の制御チャネル3a,3b,3c…がそれぞれ割当てられ、各無線ゾーン2a,2b,2c…にそれぞれ設置された無線基地局4a,4b,4c…からそれぞれ制御チャネル3a,3b,3c…が送信されている。移動機は通信中チャネル切替を行う際、図2Bに示すようにTDMAの空きスロットIを利用して前記無線ゾーン毎に設けられている個別周波数の制御チャネル3a,3b,3c…の受信レベルを順次測定し、それらの受信レベルを比較して切替先無線ゾーンを決定することにより通信中チャネル切替を行っている。
【0003】一方、スペクトラム拡散を用いた移動通信方式においては、全ての無線ゾーンに共通な無線周波数を1つだけ用意し、各無線ゾーンに異なる拡散コードを割り当て、通信中チャネル切替を行う際は、移動機内の相関器の1つで拡散コードを走査(スキャン)し、無線ゾーン毎の受信レベルを測定し比較することにより切替先の無線ゾーンを決定することにより通信中チャネル切替を行う方法が考えられる。しかし、このスペクトラム拡散移動通信方式では無線ゾーン毎にトラヒックのアンバランスがある場合、最大トラヒックの無線ゾーンにあわせて多数の拡散コードを使用可能にするため広帯域の無線チャネルを用意する必要がある。このためトラヒックの少ない無線ゾーンには過剰設計になる。
【0004】これを回避するために一定のトラヒックにあわせた帯域の無線チャネルを用意し、トラヒックの少ない無線ゾーンには前記無線チャネルを1チャネルのみ割り当て、トラヒックが多い無線ゾーンには前記無線チャネルを複数割り当てる構成が考えられる。つまり図3Aに示すように一般に、都市の中心部ではトラヒックが多く、郊外に行くに従って少なくなって行く傾向がある。この場合、トラヒックを扱うのに必要な無線チャネル数も図3Bに示すように都市の中心部では多く、郊外に行くに従って少なくする。しかし、このような構成で通信中チャネル切替を行った場合は、すべての無線ゾーンに共通の無線チャネルを用いて移動機が切替先無線ゾーンを決定することになり、複数の無線チャネルが割り当てられた無線ゾーンで前記共通無線チャネル以外の無線チャネルで通話中に、切替先無線ゾーンを決定するには、共通の無線チャネルに切り替えて受信レベルを測定する必要があるため通話を切断しないようにするには受信系を2系統用意しなければならなくなるため移動機の小型化には適さない。
【0005】また、これを避けるためにデジタル自動車電話方式で採用しているように、前記スペクトラム拡散移動通信においてもTDMA的に無線チャネルを構成し、TDMAの空きスロットを利用して切替先無線ゾーンを検出する方法が考えられるが、信号がバースト的になることにより電磁環境問題(EMC)を考慮する必要があること、ガードビット・同期ビットが必要になりチャネル使用効率が損なわれるという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】この発明の目的はトラヒックの少ない無線ゾーンに過剰設計とならず、受信系を2系統用意する必要がなく、電磁環境の問題をおこすおそれがなく、通信中チャネル切替を可能とするスペクトラム拡散移動通信の通信チャネル切替方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明によれば、サービスエリア内の全ての無線ゾーンに共通な無線周波数を設け、無線ゾーンごとに前記共通な無線周波数に異なる制御用拡散コードを割り当て、移動機には2つの相関器を用意し、通信中にチャネル切替えを行う際には、1つの相関器で拡散コードを走査して受信レベルを測定することにより切り替え先無線ゾーンを決定すると共に他の相関器で通信を継続する。
【0008】
【実施例】図1Aにこの発明の方法における無線ゾーンに対する無線周波数の割り当て例を示す。各無線ゾーン2a〜2dにそのトラヒック数に応じた数の無線周波数を割り当てる。図1Aでは最もトラヒックが多い無線ゾーン2bには3つの周波数f1 ,f2 ,f3 を割り当て、次にトラヒックが多い無線ゾーン2a,2cにはそれぞれ2つの周波数f1 ,f2 を割り当て、最もトラヒックが少ない無線ゾーン2dには1つの周波数f1 を割り当てる。同一周波数については、干渉上影響があるおそれがある領域では無線ゾーンごとに異なる拡散コードを割り当てる。
【0009】この発明ではサービスエリア内の全ての無線ゾーンに共通な無線周波数を割り当てる。図1Aでは無線ゾーン2a〜2dに共通な無線周波数f1 を割り当て、その無線周波数f1 に対し、各無線ゾーン2a〜2dごとに異なる制御用拡散コードを割り当てる。この場合も、無線ゾーン2aと2dとのように干渉上影響がない距離だけ離れている無線ゾーン内では同一の拡散コード、この例ではコード1を繰り返して使用する。
【0010】無線ゾーン2b,2cにはそれぞれ共通周波数f1 に対して制御用拡散コード2,3が割り当てられている。請求項1の発明の方法には請求項2の発明の移動機が用いられる。この移動機は例えば図1Bに示すように、アンテナ11は送受共用器12に接続され、送受共用器12に高周波受信増幅器13及び高周波送信増幅器14が接続されている。高周波受信増幅器13の出力側にこの発明では二つの相関器15,16が接続され、相関器15,16の出力側に変復調部17が接続され、変復調部17から変調信号は送信増幅器14へ供給される。相関器15,16でそれぞれ設定された拡散コードと一致した受信信号が選出されて変復調部17で復調され、拡散逆拡散処理部18でスペクトラム逆拡散され、更に信号処理部19で信号処理され、音声コーディック21で復号され、音声信号としてハンドセット22へ供給される。ハンドセット22よりの送話音声信号は音声コーディック21で符号化され、信号処理部19で信号処理され、拡散逆拡散処理部19でスペクトラム拡散処理され、変復調部17で搬送波を変調し、その変調出力が送信増幅器14へ供給される。制御部23で発着信処理、通話中チャネル切替などを行う。
【0011】移動機にはあらかじめ共通の周波数f1 を示すコードが設定されており、移動機が発信を行う際は、相関器15,16の両者を用いて各無線基地局からの下り共通周波数信号の受信レベルを測定することにより最寄りの無線ゾーンを決定し、その無線ゾーンのコードを用いて接続を行う。この無線ゾーン決定は相関器15,16の一方を用いて行ってもよい。
【0012】いま、移動機が図1Aの無線ゾーン2aに在圈している場合、移動機はf1 の周波数の制御用拡散コード1で発信接続を行った後でf2 の周波数で通話を行う。この通話チャネルの指定、つまり周波数、拡散コードの指定は基地局を通じて制御局により指定されることは通常の移動通信と同様である。通話中に受信レベルが低下するあるいは干渉等で通話品質が悪くなると、移動機は一旦、周波数を共通周波数f1 に切り替え、相関器15,16の1つで通信を継続すると共に、もう1つの相関器で拡散コードをスキャン(走査)して下り信号の受信レベルを測定することにより切り替え先無線ゾーンを決定し、例えば、無線ゾーン2bが切替先の無線ゾーンであれば無線周波数f2 の拡散コード2のチャネルか無線周波数f3 の拡散コード1のチャネルに切り替えて通信を継続する。この周波数及び拡散コードの指定は制御局から受ける。
【0013】このように全ての無線ゾーンに共通な無線周波数f1 のチャネルは、通信中チャネル切替を行う時に頻繁に使用されるため、無線ゾーンで使用できる無線周波数が1つしかない場合あるいは無線ゾーンに複数の無線周波数が割り当てられていてもf1 以外の無線周波数を割り当てる余裕がない場合のみ使用し、通常は通信中チャネル切替用に空けておくと共に、発着信時の回線設定等を行うための制御チャネルとして使用する。
【0014】
【発明の効果】以上述べたようにして、この発明を用いればスペクトラム拡散を用いたセルラ移動通信方式において、全ての無線ゾーンに共通な無線周波数を設け、また移動機に2つの相関器を設け、通信中チャネル切替時に移動機がこの共通な無線周波数に切り替えて二つの相関器の一方で通信を継続しながら、他方の相関器で切替先無線ゾーンを決定するため、切替先ゾーン決定のために移動機に受信機を2系統持つ必要がないこと、TDMA的に無線チャネルを構成しなくてもよいという効果がある。
【0015】また請求項2の発明によれば、相関器が複数設けられているため、その一つの相関器を用いて通信を継続しながら、他の相関器を用いて切替先ゾーンを決定することができ、かつ発信時の在圏ゾーンの決定を、これら複数の相関器で同時に拡散コードを走査することにより、短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aは請求項1の発明を適用した無線ゾーンに対する無線周波数、拡散コードの割り当ての例を示す図、Bは請求項1の発明に用いられる請求項2の発明による移動機の構成例を示すブロック図である。
【図2】Aはセルラ移動通信方式のゾーン構成の例を示す図、BはTDMA方式での空きスロットを利用した受信レベル測定を示す図である。
【図3】Aは地域によるトラヒック分布を示す図、Bはこの分布と対応した無線チャネルの割り当てを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 無線ゾーン毎に1つ以上の無線周波数が割り当てられているスペクトラム拡散方式を用いたセルラ移動通信方式の通信中チャネル切替方法において、サービスエリア内の全ての無線ゾーンに共通な無線周波数を設け、無線ゾーンごとに前記共通な無線周波数に異なる制御用拡散コードを割り当て、移動機には2つの相関器を用意し、通信中にチャネル切替を行う際には、移動機は通信中の無線周波数から全ての無線ゾーンに共通な無線周波数に周波数を切り替え、1つの相関器で拡散コードを走査して受信レベルを測定することにより切り替え先無線ゾーンを決定すると共に他の相関器で通信を継続することを特徴とするスペクトラム拡散移動通信の通信中チャネル切替方法。
【請求項2】受信したスペクトラム拡散信号と局部拡散コードとの相関を相関器でとって、拡散コードで分割されたチャネルを検出する移動機において、上記相関器が複数設けられ、これら相関器が独立に動作するようにされていることを特徴とするスペクトラム拡散移動通信の移動機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平6−326653
【公開日】平成6年(1994)11月25日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−110545
【出願日】平成5年(1993)5月12日
【出願人】(392026693)エヌ・ティ・ティ移動通信網株式会社 (5,876)