説明

スポンジたわし及び該スポンジたわし用の軟質スポンジの製造方法

【課題】使用し続けても変形しにくく、使用感や水切れ性の悪化および不織布等との接着劣化を防ぐことができるスポンジたわしを提供することを課題としている。
【解決手段】軟質スポンジを少なくとも一部分の構成要素とするスポンジたわしであって、前記軟質スポンジは、24時間水漬け後の線膨張率が0〜1.5%である。前記軟質スポンジは少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器、調理器具、洗面台、浴室、トイレなどの洗浄に用いられるスポンジたわしに関するものである。
【背景技術】
【0002】
食器洗いなどに使用されるスポンジたわしの構造としては、例えば実開平7−9247号公報(特許文献1)に示されているように、軟質スポンジ層と表面を凸凹に形成したゴムもしくはプラスチックプレートやごわごわした乾式の不織布とを積層したものが最も多い。
【0003】
【特許文献1】実開平7−9247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のスポンジたわしでは、使用してゆくと軟質スポンジが水で膨れ、変形がおこり、その結果不織布等との接着劣化が起こったり、水切れ性が極度に悪化する問題がある。
【0005】
本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、使用し続けても変形しにくく、使用感や水切れ性の悪化および不織布等との接着劣化を防ぐことができるスポンジたわしを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、軟質スポンジを少なくとも一部分の構成要素とするスポンジたわしであって、

前記軟質スポンジは、24時間水漬け後の線膨張率が0〜1.5%であることを特徴とするスポンジたわしを提供している。
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するためには軟質スポンジにおいて架橋を十分に効かせて軟質スポンジの水による膨れを抑えばよいことを知見し、その知見に基づき軟質スポンジの水による膨れについて鋭意検討したところ24時間水漬け後の線膨張率を指標にしてその値を0〜1.5%に制御することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明のスポンジたわしを構成する軟質スポンジについては、24時間水漬け後の線膨張率が0〜1.5%であることが必須条件である。
24時間水漬け後の線膨張率が1.5%を越えると、一定形状を保つ不織布等に対して軟質スポンジの膨れが大きくなるためスポンジたわしが横方向から見て扇形に曲がってしまい、使い勝手が低下してくる。また、この水による膨れによって洗剤を含む水の切れが悪くなり不衛生になるとともに、不織布等と軟質スポンジの間の接着にも悪影響を及ぼす。
【0009】
軟質スポンジの24時間水漬け後の線膨張率は次のように測定する。
軟質スポンジから10mm×10mm、長さ約200mmの角棒状の試験片を切取り、長さを0.5mm単位で測定する。
次に、常温の水道水を前記試験片が十分につかる量入れたバットに前記試験片を浸し、よく揉んで試験片に含まれる空気を追い出す。そのまま水中に試験片を24時間静置後、濡れたままの試験片を取出し、そのまますばやく長さを0.5mm単位で測定する。
初期長さ(L1)と24時間水漬け後の長さ(L2)の値から、下記式に基づき線膨張率を算出することができる。
線膨張率(%)={(L2/L1)−1}×100
【0010】
本発明のスポンジたわしを構成する軟質スポンジにおいては、前記要件を備えていればその素材は特に限定されず、公知の組成物を用いて良い。なかでも、架橋によりゴム様の弾性を付与しうるゴムラッテクスやウレタンフォームなどの材料が柔軟で良好な洗浄力を有するために好ましい。これらゴム弾性を有する材料のなかではゴムラッテクスが前記線膨張率の調整が容易なため特に好適である。
【0011】
ゴムラッテクスとしては、天然ゴムラテックス、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)ラテックス、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)ラテックス、BR(ポリブタジエンゴム)ラテックス、IIR(ブチルゴム)ラテックス、IR(イソプレンゴム)ラテックス、CR(クロロプレンゴム)ラテックス、アクリルエマルジョンなどが挙げられる。ゴムラテックスは、官能基で変性されたものであってもよく、2種以上のゴムラテックスを混合したものであってもよい。
【0012】
なかでも、柔軟性に富みかつ強度特性とのバランスに優れた天然ゴムラテックスを用いることが好ましい。天然ゴムラテックスは、ゴム樹液として得られるフィールドラテックスまたは高アンモニア保存ラテックスのいずれであってもよい。
天然ゴムラテックスは、単独で用いても良いし、SBRラテックスまたはNBRラテックス等の他のゴムラテックスと組み合わせて用いて良い。他のゴムラテックスと組み合わせる場合は、天然ゴムラテックス中のゴム成分が全ゴムラテックスのゴム成分に対して50質量%以上となるようにすることが好ましく、70質量%以上となるようにすることがより好ましい。
【0013】
前記ゴムラテックスを用いる場合、本発明の軟質スポンジは少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物からなることが好ましい。
このような組成物からなる軟質スポンジは公知の方法に従って製造することができるが、24時間水漬け後の線膨張率が本発明に規定の条件を確実に満たすためには次記方法で製造することが好ましい。すなわち、少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物を起泡させ、成形したのち加硫することによって得られるラテックススポンジを乾燥後さらに100〜120℃で加熱して後加硫するという製造方法が好ましい。
【0014】
本発明は、スポンジたわし用の軟質スポンジの製造方法を提供しており、該製造方法は、少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物を起泡、成形、加硫してラテックススポンジを取得し、その後、乾燥後に加熱して後加硫していることを特徴とする。
前記本発明のスポンジたわし用の軟質スポンジの製造方法では、後加硫を行うことにより加硫を十分に進行させているため、軟質スポンジの水による膨れが抑えられ、24時間水漬け後の線膨張率を本発明に規定の低い範囲に制御することがより容易になる。
前記後加硫の加熱温度は、特に限定されないが、100〜120℃であることが好ましい。これは、後加硫温度が100℃未満では後加硫の効果が現れにくく、24時間水漬け後の線膨張率が本発明に規定の範囲に達しない可能性がある。一方、後加硫温度が120℃を越えると、オーバーキュアーになりやすく、熱劣化により強度の低下や変色が起こりやすくなる。
後加硫時間は、軟質スポンジの組成および後加硫温度などにより異なるので一概には言えないが、10分〜4時間、好ましくは30分〜3時間である。
後加硫の方法は特に限定されないが、熱空気による加熱処理方法が好適である。この加熱処理は熱風オーブンや加硫缶など公知の装置を用いて容易に行うことができる。
【0015】
本発明の軟質スポンジの製造方法についてさらに詳述すると、加硫剤に代表される架橋剤、加硫促進剤および起泡剤などの各種配合剤を前記ゴムラテックスに添加した配合ラテックスを撹拌装置などで起泡させ、ここにゲル化剤を添加してスポンジの形態を固定し、加熱により架橋させる。ついで、洗浄し、乾燥させたのち後加硫を行うことがより好ましい。
【0016】
前記配合ラテックスを作製する際には、これらの配合剤の添加にあたって、非水溶性の液状配合剤は水中乳化し、非水溶性の固形粉末は水中分散体として、ゴムラテックスに添加し配合物とすることが好ましい。
前記配合剤としては本発明の目的に反しないかぎり当該技術分野における公知の配合剤を用いることができ、軟質スポンジの物性やゴムラテックスの種類等に応じて配合剤の種類および添加量を適宜選択することができる。
具体的に、配合剤としては、前記した加硫剤に代表される架橋剤、加硫促進剤および起泡剤の他に、老化防止剤、充填剤、軟化剤、着色剤、気泡安定剤、金属不活性剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、防菌剤、付香剤等が挙げられる。
【0017】
架橋剤としては、硫黄、有機過酸化物または樹脂架橋剤などが挙げられる。なかでも、本発明においては架橋剤として硫黄を用いることが好ましい。
硫黄による架橋、すなわち加硫の場合、コロイド状硫黄および微粉末硫黄のほか、二塩化硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドまたはジチオモルフォリンなどの硫黄化合物などを用いることができる。
有機過酸化物としては、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m−トルイルペルオキシドなどのアシルペルオキシド;t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブトキシペルオキシ)ヘキサンなどのアルキルペルオキシド;t−ブトキシペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノアート、t−ブトキシペルオキシベンゾアートなどのペルオキシエステル;1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブトキシペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのペルオキシケタール;t−ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t−ブトキシペルオキシ−2−エチルヘキシルカルボナートなどのペルオキシカルボナートなどが挙げられる。
樹脂架橋剤としては、例えばフェノール樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、トリアジン・ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル・メラミン樹脂等が挙げられる。なかでも、フェノール樹脂を用いることが好ましく、フェノール樹脂としてはアルキルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化−p−第三ブチルフェノール樹脂およびアルキルフェノール・スルフィド樹脂等が挙げられる。
【0018】
架橋剤として硫黄を用いる場合、加硫促進剤、加硫促進助剤または加硫遅延剤を配合することができる。本発明においては、硫黄とともに加硫促進剤および加硫促進助剤を配合することが好ましい。
加硫促進剤としては、チアゾール類、ジチオカルバミン酸類、スルフェンアミド類、チオウレア類、チウラム類、グアニジン類、アルデヒド−アニリン類、アミン類が挙げられる。より具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール(M)、2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(MZ)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(EZ)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(BZ)、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸亜鉛(PX)、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(PZ)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(CZ)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、テトラエチルチウラムモノスルフィド(TS)、ジエチルチオウレア、ヘキサメチレンテトラミン(H)、ブチルアルデヒドアニリン縮合物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
加硫促進助剤としては、例えば亜鉛華等が挙げられる。
【0019】
前記起泡剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油カリ石鹸、やし油カリ石鹸などの脂肪酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウムなどのサルコシン塩;やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどの硫酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤などが挙げられる。
【0020】
なかでも、起泡剤としては脂肪酸塩系のアニオン界面活性剤が好ましい。
前記アニオン界面活性を有する脂肪酸塩を構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれであってもよく、また、直鎖状または分岐状のいずれであってもよい。さらに、脂肪酸の種類は1種に限定されず、2種以上の脂肪酸を混合したものであってもよい。脂肪酸の炭素数は14〜22であることが好ましく、具体的にはミリスチン酸(C=14)、パルミチン酸(C=16)、ステアリン酸(C=18)、アラキン酸(C=20)もしくはベヘン酸(C=22)等の飽和脂肪酸;オレイン酸(C=18)、エライジン酸(C=18)、リシノール酸(C=18)、リノール酸(C=18)、リノレン酸(C=18)、アラキドン酸(C=20)、セトレイン酸(C=22)、エルカ酸(C=22)もしくはブラシジン酸(C=22)等の不飽和脂肪酸が挙げられる。
これらの脂肪酸塩のうちで、オレイン酸塩およびリシノール酸塩を用いるのが特に好ましい。
なお、前記炭素数が14〜22の脂肪酸塩系アニオン界面活性剤に加えて、さらに炭素数が13以下の脂肪酸塩系アニオン界面活性剤を併用してもよい。特に炭素数が12のラウリン酸塩はラテックスの安定性を向上させる効果が特に優れているため、炭素数が14〜22のものと併用することでラテックスの機械的安定性とゲル化性とのバランスをより一層向上させることができる。
【0021】
前記老化防止剤としては、N−フェニル−N’−(p−トルエンスルホニル)−p−フェニレンジアミンなどのジフェニルアミン系化合物;芳香族アミンと脂肪族ケトンの縮合物;2−メルカプトベンゾイミダゾールやその亜鉛塩などのイミダゾール系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)もしくは2,2’−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)などのフェノール系化合物などが挙げられる。なかでも、老化防止剤としてはフェノール系化合物を用いることが好ましく、ビスフェノール系化合物を用いることがより好ましい。
前記充填剤としては、例えば酸化チタン、カオリンクレー、ハードクレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0022】
前記軟化剤としては、例えば、炭化水素系プロセス油もしくは流動パラフィンのなどの炭化水素油;植物油および動物油、ならびにそれらを脱水または水素化して得られる脂肪酸エステル油などの生物起源脂肪酸エステル油(例えば脱水ひまし油など);アジペート系可塑剤もしくはフタレート系可塑剤などの可塑剤などが挙げられる。
ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対する軟化剤の配合量は、軟質スポンジに適度な柔軟性を与えるため、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上、特に好ましくは1.0質量部以上であり、軟化剤がブリードして周辺を汚染することを防ぐため、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
【0023】
前記気泡安定剤としては、ポリアミン等のアミノ化合物やアミンオキサイドが挙げられる。これらの内で好適なものを例示すると、ジフェニルグアニジン、トリエチルトリメチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、n−ヘキサデシルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
また、塩化エチルなどの塩化アルキルをホルムアルデヒドおよびアンモニアと反応させて得られる、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物も、本発明の気泡安定剤として使用できる。この反応生成物のアルキルの炭素数は4以下が好ましい。このような反応生成物として、例えばエチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物が挙げられる。
さらに、アルキル第四級アンモニウムクロリド、アルキルアリールスルホン酸塩および高級脂肪酸アンモニウムなども、本発明の気泡安定剤として使用できる。前記化合物におけるアルキルの炭素数も4以下が好ましい。
気泡安定剤の配合量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
【0024】
前記工程で得られた配合ラテックスをフォーミングマシーンやミキサーなどの撹拌装置で起泡させる。配合ラテックスに含まれる成分は全てを一度に撹拌してもよいし、一部を予め撹拌したのち残りの成分を添加して撹拌してもよい。
配合ラテックスを起泡させるための撹拌時間および撹拌速度は、本発明のスポンジたわしに要求される物性に応じて適宜選択することができるが、例えば起泡後の配合ラテックスの容量が初めの容量の3〜20倍、好ましくは5〜15倍となるよう調整することが好ましい。
【0025】
ここにゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にさせると共にゲル化させ、ゲル状物を得る。ゲル化剤を混合し発泡したラテックス組成物をゲル化させるには化学的に行う方法と熱的に行う方法があるが、本発明はいずれの方法を用いてもよい。
前記ゲル化剤としては、金属酸化物、無機塩類、酸、有機酸の塩類などが挙げられる。より具体的には、例えばケイフッ化ナトリウム(珪弗化ソーダ)、ケイフッ化カリウムもしくはケイフッ化カルシウムなどのヘキサフルオロケイ酸塩;シクロヘキシルアミンの酢酸塩もしくはスルファミン酸塩などのシクロヘキシルアミン塩;硫酸アルミニウム;酢酸アンモニウムなどが挙げられる。これらは通常水に分散または溶解された液状物の状態で使用される。
なかでも、ゲル化剤としては前記のヘキサフルオロケイ酸塩、特にケイフッ化ナトリウムが、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であることから好適に使用される。
【0026】
ゲル化剤とともにゲル化調整剤を併用することができる。ゲル化調整剤としてはアルキルアミン類、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤などが挙げられる。
また、前記に例示した配合剤は、前行程においてゴムラテックスに配合せずに本工程においてゲル化剤とともに添加することとしてもよい。
【0027】
ついで、前記ゲル状物を、流延、注型または押出し成形などの方法によって所望の形状に加工し、ついで架橋剤の種類に応じて50〜200℃に加熱して充分に架橋反応を進行させる。ここでの加熱方法はゲル化原料を架橋させ得るものであれば特に制限されない。
【0028】
ついで、得られた軟質スポンジを洗浄する。洗浄は通常の天然ゴムラテックススポンジの洗浄工程に従ってよい。具体的には、洗浄液にスポンジを浸漬し、スポンジ内部の気泡の空気を洗浄液と置換し、液を行き渡らせる。その後、スポンジは浸漬静置してもよく、洗濯機等を使用し機械的に撹拌してスポンジ内部の液を入れ替えてもよい。また遠心脱水機にて重力をかけつつ液を通流してもよい。
洗浄液としては通常水が使用されるが、洗浄液には界面活性剤、ビルダー、水溶性樹脂、膨潤剤、金属イオン封止剤、柔軟仕上げ剤、親水化処理剤、蛍光漂白剤、帯電防止剤、pH調整剤、アルコールなどを配合することができ、洗浄効果を高めたりスポンジの仕上げ処理と兼ねることもできる。
【0029】
洗浄を行ったスポンジは濯ぎ、乾燥を行い、後加硫に付される。さらにリーチング処理や酸化漂白処理等の後処理を行ってもよい。
さらに、必要に応じて裁断などをして、本発明の軟質スポンジとなる。
このようにして得られる本発明の軟質スポンジは、独立気泡、連続気泡またはその両方を有していてよいが、連続気泡を有していることが好ましい。
【0030】
本発明のスポンジたわしは種々の形態を取っていてよい。
例えば、前記のようにして得られる軟質スポンジを必要に応じて一定の厚みに切断し、ついで接着剤を介して不織布シートを貼り合わせて接着し、最後に所定形状に打抜き加工して成形することにより得られる。
また、前記のようにして得られる軟質スポンジを打抜き加工し、そのまま単独でスポンジたわしとすることもできる。さらに、打抜き加工したスポンジ片をポリエステル繊維などからなるネットに封入した構造のスポンジたわしとすることもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のスポンジたわしは、水による膨れが少なく、そのため使用し続けても変形しにくく、耐久性に優れている。
さらに、本発明のスポンジたわしは優れた水切れ性を有し、使用によっても水切れ性が悪化しにくいことから、スポンジたわし内部で保持された水による雑菌の増殖が抑えられ、スポンジたわしを清潔に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明のスポンジたわしの実施形態を説明する。
図1に第一実施形態のスポンジたわし10は、不織布シート1と軟質スポンジ2とを接着したものである。不織布シート1と軟質スポンジ2との接着方法としては、接着剤で接着する方法が主流であるが、不織布シート1と軟質スポンジ2とを熱溶着させてもよい。接着剤の種類は不織布シート1や軟質スポンジ2の材質等を鑑み適宜選択することができるが、不織布シート1がナイロン製の場合ウレタン系接着剤を用いることが好ましい。
【0033】
スポンジたわし10は、図1に示すように平面視で長円形状としているが、直方体形状であってもよい。また、不織布シート1を軟質スポンジ2の一側面のみに接着しているが、不織布シート1を軟質スポンジ2の一側面と向かい合う側面との二つの側面に接着してもよく、また一側面と垂直に接する一つ以上の側面とに接着しても良い。
図2に示すスポンジたわし10’は軟質スポンジ2のみから形成し、その一面に凹凸2aを設けている。
【0034】
以下に、本発明のスポンジたわしを構成する軟質スポンジ2について詳述する。
軟質スポンジの24時間水漬け後の線膨張率は1.5%以下であり、好ましくは0.1〜1.5%であり、より好ましくは0.3〜1.3%である。
【0035】
前記軟質スポンジは、天然ゴムラテックス、または天然ゴムラテックスおよびSBRラテックスの混合物から構成されている。
天然ゴムラテックスとしては高アンモニア保存天然ゴムラテックスを用いることが好ましい。
天然ゴムラテックスおよびSBRラテックスの混合物を用いる場合、天然ゴムラテックス中のゴム成分が全ゴムラテックスのゴム成分に対して70質量%以上95質量%以下となるようにすることが好ましい。
【0036】
前記軟質スポンジは例えば以下の方法で製造される。
まず、前記ゴムラテックスに加硫剤、加硫促進剤などの加硫系配合剤、起泡剤、老化防止剤、必要に応じて少量の充填剤および顔料などを添加し、混合することにより、本発明の軟質スポンジの原料となる配合ラテックスを作製する。
【0037】
加硫剤としてはコロイド状硫黄を用いる。加硫剤の添加量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.5〜3質量部であることがより好ましい。
加硫促進剤としてはジチオカルバミン酸類が好ましく、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛がより好ましい。加硫促進剤の添加量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。
【0038】
起泡剤としては脂肪酸塩系のアニオン界面活性剤が好ましく、リシノール酸(C=18)を主成分とするヒマシ油カリ石けんを用いることがより好ましい。起泡剤の配合量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
老化防止剤としては非汚染性のフェノール類が好ましく、ビスフェノール類がより好ましい。老化防止剤の配合量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
充填剤としては酸化チタンが好ましい。充填剤の配合量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましい。
【0039】
前記のような組成の配合ラテックスを撹拌装置で起泡させる。
前記撹拌装置は公知のものを用いてよい。例えば下端に撹拌子(ホイッパー)を有する1または2以上の軸を撹拌用容器(ボール)に垂下させた撹拌装置が挙げられる。なかでも、撹拌用容器と撹拌子が対向回転する撹拌装置や、撹拌子が撹拌用容器内で公転すると同時に撹拌子取付軸が反対方向に自転する撹拌装置を用いれば、撹拌効率をより向上させることができるため好ましい。撹拌装置における撹拌子は空気を混合させ易いためワイヤー形状のものを用いることが好ましい。撹拌子におけるワイヤーの数は特に限定されないが、好ましくは2〜20本、より好ましくは6〜16本である。
配合ラテックスを起泡させるための撹拌時間および撹拌速度は、配合ラテックスの組成、撹拌装置の構造または撹拌速度により異なるので一概には言えないが、例えば起泡後の配合ラテックスの容量が初めの容量の10倍程度となるよう調整することが好ましい。
【0040】
配合ラテックスに含まれる成分は全てを一度に撹拌してもよいし、一部を予め撹拌したのち残りの成分を添加して撹拌してもよい。特に、気泡安定剤や加硫促進助剤の亜鉛華については、ラッテクスを不安定化したり泡立てにくくしたりすることがあるので、後から添加する方が好ましい場合がある。
後から添加されうる気泡安定剤としてはアミン化合物が好ましく、ジフェニルグアニジンやトリエチレンテトラミンがより好ましい。
加硫促進剤の添加量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましく、0.2〜3質量部であることがより好ましい。
加硫促進助剤としては亜鉛華が好ましい。加硫促進助剤の添加量は、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜10質量部であることがより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
【0041】
ついで、ゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にさせると共にゲル化させ、ゲル状物を得る。
ゲル化剤としては、ケイフッ化ナトリウム(珪弗化ソーダ)、ケイフッ化カリウムもしくはケイフッ化カルシウムなどのヘキサフルオロケイ酸塩が好ましく、ケイフッ化ナトリウムがより好ましい。
ゲル化剤の配合量としては、ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、0.5〜5質量部であることがより好ましい。
【0042】
ゲル化時間は4〜40分であることが好ましく、6〜20分であることがより好ましい。「ゲル化時間」とはゲル化剤の配合直後からラテックスがゲル化して流動性を失うまでの時間をいう。
前述のゲル化時間が前記範囲を下回ると、凝固に至るまでの時間が速くなりすぎるために型に充填する前にラテックスが凝固してしまうなどの問題が生じる。
一方、ゲル化時間が前記範囲を超えるときは、凝固の進行が遅すぎるかあるいは凝固が進行しなくなってしまうために、生成させた泡を維持することができず凝固させるまでに潰れてしまうために、所望の微細なスポンジ構造を得ることができないか、あるいは製品そのものを成形することができなくなるおそれがある。
【0043】
得られたゲル状物を注型によって所望の形状に成形し、加熱加硫を行う。
加硫温度は加硫剤の種類に応じて適宜選択することができるが、50〜200℃で行うことが好ましく、80〜160℃で行うことがより好ましい。
加硫時間も加硫剤の種類および加硫温度に応じて適宜選択することができるが、5〜120分で行うことが好ましい。
加硫の方法としては、蒸気、マイクロウエーブまたはラジオ波を用いる方法が挙げられる。本発明においては、およそ100℃の蒸気を用いて30〜90分間かけて加硫するのが特に好ましい。
【0044】
得られた加硫済みスポンジは洗浄したのち、濯ぎ、乾燥を行う。乾燥はスポンジの劣化を招かない温度で行う。具体的には乾燥温度は30〜90℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。乾燥時間は10分〜10時間であることが好ましく、1〜8時間がより好ましく、2〜6時間がさらに好ましい。
乾燥後、後加硫を施す。後加硫は、100〜120℃の熱空気を用いて1〜2時間かけて加熱加硫する方法を採用する。
ついで、所望の形状に裁断されて、本発明のスポンジたわしを構成する軟質スポンジに仕上げられる。
【0045】
つぎに、図1に示すスポンジたわしを構成する不織布シート1について詳述する。
不織布シート1としては、天然繊維または合成繊維、およびその混合物を含め様々な繊維を基材とする不織布を用いることができる。天然繊維としては、綿、ウール、ジュートまたは麻などが挙げられ、合成繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリル、レーヨン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマーまたは塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマー等が挙げられる。
また、不織布シート1の形態も特に限定されず、公知の方法で製造されるものを用いてよい。例えば、湿式不織布、乾式不織布(ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ステッチボンド不織布)、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布などいずれの形態を有していてもよい。
【0046】
不織布シート1は研磨剤粒子を含んでいてもよい。研磨剤粒子としては、二酸化チタン、タルク、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、ガラスビーズもしくは天然シラス等の無機粉末、またはポリプロピレン、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレンもしくはポリ塩化ビニルなどの合成有機材料の粉末を樹脂により粒状に固めたもの等が挙げられる。
【0047】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
表1に示す2種類のゴムラテックスを調整し、得られたゴムラテックスを用いて下記方法により本発明のスポンジを作製した。なお、表1中の数値は質量部を表し、括弧内の数値は有効成分量(質量部)を表す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例および比較例で使用した各種成分は次のとおりである。
・天然ゴムラテックス;高アンモニア保存天然ゴムラテックス
・SBRラテックス ;日本ゼオン(株)製「Nipol C−4850A」
・起泡剤;ヒマシ油カリ石けん(花王(株)製「FR−25」)
・加硫剤;硫黄
・加硫促進剤;ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛(大内新興化学工業(株)製「ノクセラーEZ」)
・老化防止剤;2,2’−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)((株)エーピーアイコーポレーション製「ヨシノックス2246G」)
【0050】
(実施例1〜5、比較例1〜3)
17℃に保った表1に記載の組成の配合ラテックス500gを、容量約8Lのボールを有するクリームホイップミキサー(ハクラ精機(株)製「業務用卓上ミキサー クリーマーC−30S」)に入れて泡立てた。
約5Lまで泡立ったら、次に亜鉛華/ジフェニルグアニジン=3/1の分散体(有効成分40%)をゴムラッテクス中のゴム成分100質量部に対して10質量部(有効成分として亜鉛華を3質量部、ジフェニルグアニジンを1質量部含有)添加し、1分間撹拌混合した。
最後に、珪弗化ソーダの分散体(有効成分30%)を、ゴムラッテクス中のゴム成分100質量部に対し、配合Aでは4.0質量部(有効成分量1.2質量部)、配合Bでは6.0質量部(有効成分量1.8質量部)添加し、1.5分間混合した。
【0051】
このように泡立てたラテックス組成物を内寸250mm(縦)×170mm(横)×80mm(高さ)のステンレス製バットにほぼ満杯まで注型した。
室温で保管し、ゲル化が始まってから30分後に100℃の蒸気中に入れて60分間加熱加硫した。
【0052】
得られたスポンジを水洗した後よく絞り、室温で3日間保管後、厚さ12mmまたは25mmに切断した。
各切断片を表2に記載の条件で乾燥後、さらに熱風オーブンを用いてを表2に記載の条件で後加硫を行った。
【0053】
【表2】

【0054】
このようにして得られた厚さ12mmのスポンジは、24時間水漬け後の線膨張率の測定に用いた。なお、密度を測定したところ、いずれのスポンジも約80kg/mであった。
一方、厚さ25mmのスポンジシートは本発明のスポンジたわしの作製に用いた。具体的には、当該スポンジシートと、厚さ8mmのアルミナ研磨剤粒子入りナイロン不織布(金井重要工業(株)製)とを、ウレタン系接着剤(トーヨーポリマー(株)製「ポリネート955H」)を用いて接合した。接合は、両接着面に前記接着剤をスプレー塗装したのち張り合わせ、圧着することにより行った。
このようにして得られた不織布貼り合せスポンジをカットダイプレスによって70mm×100mmの形状に打ち抜き、本発明のスポンジたわしを得た。
【0055】
実施例1〜5、比較例1〜3のスポンジたわしについて、24時間水漬け後の線膨張率を測定し、モニター使用テストで評価を行った。
【0056】
【表3】

【0057】
表3に記載の物性・評価は次のように行った。
(24時間水漬け後の線膨張率)
厚さ12mmのスポンジシートから、10mm×10mm、長さ約200mmの角棒状の試験片を切取り、長さを0.5mm単位で測定した。
次に、常温の水道水を前記試験片が十分につかる量入れたバットに前記試験片を浸し、よく揉んで試験片に含まれる空気を追い出した。そのまま水中に試験片を24時間静置後、濡れたままの試験片を取出し、そのまますばやく長さを0.5mm単位で測定した。
初期長さ(L1)と24時間水漬け後の長さ(L2)の値から、下記式に基づき線膨張率を算出した。
線膨張率(%)={(L2/L1)−1}×100
(モニター使用テスト)
実施例1〜5、比較例1〜3の10種類のスポンジたわし各10個ずつ、総数80個を、40名のモニターに2個ずつ1ヶ月かけて使用してもらい、その後アンケート調査をした。
なお、耐久性については従来のウレタンスポンジを有するスポンジたわしと比べた相対評価をしてもらった。外観・色調については使用前と使用後の両方で判断してもらった。
【0058】
比較例1〜3のスポンジたわしでは、全ての項目において好ましくない評価が下された。特に24時間水漬け後の線膨張率が大きいと、たわしの変形が激しく、水切れ性が非常に悪い。
これに対して実施例1〜5のスポンジたわしは全ての項目において好ましい評価が得られ、24時間水漬け後の線膨張率を本発明に規定の特定範囲に制御することが有効であることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のスポンジたわしの一実施態様を示す斜視図である。
【図2】本発明のスポンジたわしの他の実施態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 不織布シート
2 軟質スポンジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質スポンジを少なくとも一部分の構成要素とするスポンジたわしであって、
前記軟質スポンジは、24時間水漬け後の線膨張率が0〜1.5%であることを特徴とするスポンジたわし。
【請求項2】
前記軟質スポンジが、少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物からなる請求項1に記載のスポンジたわし。
【請求項3】
前記ゴムラテックスが、天然ゴムラテックスである請求項2に記載のスポンジたわし。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスポンジたわしの軟質スポンジの製造方法であって、
少なくともゴムラテックス、起泡剤、加硫剤および加硫促進剤を含む組成物を起泡、成形、加硫してラテックススポンジを取得し、その後、乾燥後に加熱して後加硫していることを特徴とするスポンジたわし用の軟質スポンジの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−99914(P2008−99914A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285552(P2006−285552)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】