説明

スポーツ用手袋

【課題】長時間装着しても締付けバンドによる圧接力を強く感じず、常に勝れた一体感を維持するとともに、良好なグリップ動作をなし得るスポーツ用手袋を提供する。
【課題の解決手段】手袋1は、甲部7は使用者の手を容易に挿入するために切り込み部9によって左甲部7aと右甲部7bに分割し、左甲部7aには締付けバンド10の基端部を固定し、締付けバンド10の裏面と右甲部7bの表面には一対の面ファスナー11a,11bを相対的に設け、左甲部7aの掌部8に沿った部分を締付けバンド10側の縁部が湾曲する弓形の伸縮材12で形成し、伸縮材12と締付けバンド10の基端部との間に帯状ゴム13a,13bを配置して各端を縫着してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ、野球あるいは自転車用として好適なスポーツ用手袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の手袋は、装着時に手との一体感を高めるために、手首側を締付ける締付けバンドを設けている。この締付けバンドの基端部は、切り込み部によって左甲部と右甲部に分割された甲部の前記左甲部に固定し、前記締付けバンドの裏面と前記右甲部の表面に雌雄一対の面ファスナーを相対的に設け、これら一対の面ファスナーにより係脱自在に締付けるのが一般的である。そして、従来は、手袋の裏面側(手を挿入する内面側)において、前記締付けバンドの基端部と前記左甲部の掌側端とにゴム紐の各端を縫着して、手首側の締付けをより一層確実なものとしている(特許文献1)。
【0003】
また従来、面ファスナーを設けた締付けバンドを有するゴルフ用手袋において、手の出し入れをきわめてスムーズに行えるようにするとともに、手に装着した場合のフィット感をきわめて良好にするため、切り込み部であるスリットを、スリットの頂部を甲側領域の小指部側に近接させ、スリットの裾部を甲側領域の人指し指部側に近接させ、スリットを斜行状に形成することが提案されている(特許文献2)。この構成によると、面ファススナーによる締付け時に、手首部の小指側裾部より締付けることが可能であり、前記手首部の小指側裾部から、面ファスナーを介し、親指・人指し指の股部方向の一体感を高めることができる。
【0004】
さらに従来、面ファスナーを設けた締付けバンドを有するゴルフ用手袋において、甲部シートの小指側に発生するしわを軽減するため、切り込み部である分離スリットを、手袋の開口部から指先に向かって、小指側から人指し指側に傾斜させるとともに、先端は人指し指側に向く方向に途中を湾曲させ、この傾斜して湾曲する分離スリットの側縁に締付けバンドの一端を連結し、締付けバンドは、小指側シートを下方に引っ張りながら、人指し指側シートに脱着連結部(面ファスナー)を介して連結することが提案されている(特許文献3)。この構成によると、脱着連結部(面ファスナー)による締付け時に、甲部シートの小指側に発生するしわをなくすことができ、手にぴったりと沿わせて装着でき、一体感を高めることができる。
【0005】
さらにまた従来、面ファスナーを設けた締付けバンドを有するゴルフ用手袋において、手袋本体の手の甲側を覆う手甲部領域の下方に形成された切り込み部の小指部側の辺の一部を、頂点を小指部側にした「くの字」に屈曲させ、屈曲させた辺に沿って、面ファスナーを設けた小指部側係止舌片(締付けバンド)を取り付け、親指部側の手甲部領域上に小指部側係止舌片と係止される、面ファスナーを設けた手甲部係止片を取り付けることが提案されている(特許文献4)。この提案においては、「くの字」屈曲は、屈曲させた指先側の斜辺と手首側の斜辺との接合点を頂点とする二等辺三角形の底角が5〜30度となるようにするとよく、さらに、「くの字」に屈曲させた手首側の斜辺に手首部のゴム帯の端部が位置するよう縫着することが望ましく、斜辺の中央部に位置するように縫着することがより望ましいと説明されている。この構成によると、装着時に、締付けバンドである小指部側係止舌片を手甲部係止片に係止した後、ずれを戻す動作が不要となり、しっかりと手にフィットさせることができる。
【0006】
また従来、手にフィットして、手との一体感の向上を図るために、手袋の甲側に複雑な特別の構造を施すことが提案されている(特許文献5,6,7,8,9,10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平7−27650号公報
【特許文献2】特開2002−143364号公報
【特許文献3】特開2002−302814号公報
【特許文献4】特許第4520900号公報
【特許文献5】米国特許第5740555号明細書
【特許文献6】米国特許第5195188号明細書
【特許文献7】米国特許第5435007号明細書
【特許文献8】米国特許第5226190号明細書
【特許文献9】米国特許第4065813号明細書
【特許文献10】米国特許第5197149号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来の各スポーツ用手袋は、常時、手にフィットする、一体感のある手袋になっていないという不都合があった。そして、特許文献1のスポーツ用手袋には、締付けバンドの基端部と左甲部の掌側端の間に縫着しているゴム紐の収縮力のみしか働かないため、締付けバンドの締付けの強弱で、フィット感及び一体感にバラツキが生じやすく、長時間装着していると、締付けの強い場合には、部分的にきつく感じられて安定したグリップ動作が阻害される一方、弱い場合には、プレイ時に手にフィットせず、一体感に欠けるという不都合があった。また、特許文献2のゴルフ用手袋には、切り込み部であるスリットの上部付近、すなわち薬指や小指側の下部付近の手袋生地がたるみ易く、この部分での一体感が損なわれるという不都合があった。さらに、特許文献3のゴルフ用手袋には、切り込み部である分離スリットの上部付近、すなわち親指や人指し指側の下部付近の手袋生地がたるみ易く、この部分での一体感が損なわれるという不都合があった。特許文献4のゴルフ用手袋には、プレイ時にゴルフクラブを握っている状態では、手にフィットし、一体感があるといえるものであるが、ゴルフクラブを握っていない非プレイ時に手を開いた状態では、手にフィットせず、一体感に欠けるという不都合があった。また、特許文献5〜10の手袋にあっては、構造が複雑なために、製造価格が高くなり、したがって販売価格も高くなってしまうという不都合があった。本発明は、これらの不都合を解消したスポーツ用手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載のスポーツ用手袋は、使用者の五指に対応する各指部と、手の甲側を覆う甲部と、手の掌側を覆う掌部とを有するもので、前記甲部は使用者の手を容易に挿入するために切り込み部によって左甲部と右甲部に分割し、前記左甲部には締付けバンドの基端部を固定し、前記締付けバンドの裏面と前記右甲部の表面には雌雄一対の面ファスナーを相対的に設け、前記左甲部の前記掌部に沿った部分を伸縮材で形成し、前記伸縮材と前記締付けバンド基端部とに弾性材の各端を縫着してなるものである。
【0010】
また、本発明に係る請求項2に記載のスポーツ用手袋は、請求項1に記載の構成において、前記伸縮材は前記締付けバンド側の縁部が湾曲する弓形であり、前記弾性材は複数の帯状部材、例えば帯状ゴムで、各一端は前記締付けバンドの基端部に縫着し、各他端は前記伸縮材の前記掌側に縫着したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明によれば、締付けバンドに対する弾性材の収縮力を伸縮材で緩和できるので、長時間装着しても締付けがきつく感じられず、常に手にフィットして、勝れた一体感を維持するとともに安定したグリップ動作をなし得るという効果を奏する。
【0012】
また、請求項2に記載の本発明によれば、上記効果を奏することはもちろん、伸縮材を締付けバンド側の縁部が湾曲する弓形に形成することによって、締付けバンドに対する弾性材の収縮力の緩和作用が、より一層向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】甲部側を示す手袋の正面図。
【図2】左甲部の裏面側を示す部分拡大図。
【図3】手袋を装着した手のグリップ状態を説明する斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明をゴルフ用の手袋に適用した場合の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、左手手袋についてのみ説明するが、本発明においては、左手手袋のみならず、右手手袋、さらには両手手袋についても適用可能であり、いずれの手袋であっても同様の作用効果を奏するものである。右手手袋及び両手手袋については、実施形態としての説明は省略するが、右手手袋は、左手手袋の構成を左右反転して適用可能であり、また、両手手袋は、右手手袋と左手手袋を組み合わせてなるものである。
【0015】
図1に示すように、手袋1は、天然皮革製あるいは合成皮革製であって、五指に対応する親指部2、人指し指部3、中指部4、薬指部5及び小指部6と、手の甲を覆う手の甲部7と、掌を覆う掌部8とからなる。前記甲部7は使用者の手を容易に挿入するために切り込み部9によって、左甲部7aと右甲部7bに分割している。
【0016】
図1及び図2に示すように、左甲部7aの切り込む部9縁には締付けバンド10の基端部を縫着している。図2に示すように、前記締付けバンド10の裏面と右甲部7bの表面には雌雄一対の面ファスナー11a,11bを縫着している。これら面ファスナー11a,11bはほぼ同一大で、周知の構成である。
【0017】
図1及び図2に示すように、締付けバンド10に対応する左甲部7aの掌部8との境に沿った部分は、手袋1の素材よりも伸縮性に優れた、例えば合成繊維製の伸縮材12で形成している。この伸縮材12は左甲部7aを切り欠いて除去した部分に裏面側から当てて、前記左甲部7aと前記掌部8に縫着したもので、締付けバンド10側の縁部が湾曲する弓形である。
【0018】
図2に示すように、伸縮材12の掌部8側端部と締付けバンド10の基端部との間に、弾性材たる、例えばエラスティックゴム製の2つの帯状ゴム13a,13bを配置し、千鳥縫いで縫着している。また、手袋1の手首側端縁に沿った部分にも、弾性材たる、例えばエラスティックゴム製の帯状ゴム14a,14bを配置し、千鳥縫いで縫着している。これら帯状ゴム13a,13b,14a,14bは、手袋1装着時に、掌周りの小指側側面部に手袋1を圧接して、装着時の一体感を高めるためのものである。
【0019】
本実施形態は、以上のように構成したので、使用者が手袋1を装着して面ファスナー11a,11b同士を係合すると、各帯状ゴム13a,13bは一旦伸張した後、締付けバンド10と掌部8を接近させるように収縮して、掌周りの小指側側面部に手袋1を圧接する。この各帯状ゴム13a,13bの収縮力による圧接は、前記伸縮材12が前記収縮力に応じて伸縮することにより緩和される。このため、使用者が手袋1を長時間装着しても、締付けバンド10の圧接力をきつく感じることはなく、勝れた一体感を維持することができ、良好なグリップ動作をなし得る。
【0020】
図3は、手袋を装着した手のグリップ状態(実線図示状態)とグリップ動作前状態(仮想線状態)を示すものである。図3に示すように、グリップ動作をした際には、左甲部において、切り込み部上部すなわち小指及び薬指側であるAと、切り込み部下部すなわち手首側であるBが、比較的伸縮の変動が小さく、前記A,Bの間の部分を中心とする、掌周りが膨大化する。図3で網状斜線を施した部分Cは、手の甲側から見たグリップ動作前後の手幅の変動である。したがって、本発明の好ましい実施形態は、図1,図2に示す伸縮材12の形状が、伸縮の変動の大小に合わせた弓形であり、かつ、伸縮材12のみの収縮力ないし伸張力を助長させる帯状弾性材13a,13bを装備したものである。
【0021】
なお、本発明は、上述の実施形態になんら限定されるものではなく、例えば、伸縮材12の形状は弓形に限らず、台形や長方形でもよく、特定の形状に限られるものではない。また、伸縮材12を設ける面積が広いほど、各帯状弾性材13a,13bの収縮力に対する緩和作用は向上するが、少なくとも締付けバンド10の上下幅に対応する部分に設けられていれば足り、いたずらに大きなものにする必要はない。
【符号の説明】
【0022】
1 手袋
2 親指部
3 人指し指部
4 中指部
5 薬指部
6 小指部
7 甲部
7a 左甲部
7b 右甲部
8 掌部
9 切り欠き部
10 締付けバンド
11a,11b 面ファスナー
12 伸縮材
13a,13b,14a,14b 帯状ゴム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の五指に対応する各指部と、手の甲側を覆う甲部と、手の掌側を覆う掌部とを有するスポーツ用手袋であって、前記甲部は使用者の手を容易に挿入するために切り込み部によって左甲部と右甲部に分割し、前記左甲部には締付けバンドの基端部を固定し、前記締付けバンドの裏面と前記右甲部の表面には一対の面ファスナーを相対的に設け、前記左甲部の前記掌部に沿った部分を伸縮材で形成し、前記伸縮材と前記締付けバンド基端部とに弾性材の各端を縫着してなることを特徴とするスポーツ用手袋。
【請求項2】
前記伸縮材は前記締付けバンド側の縁部が湾曲する弓形であり、前記弾性材は複数の帯状部材で、各一端は前記締付けバンドの基端部に縫着し、各他端は前記伸縮材の前記掌側に縫着したことを特徴とする請求項1に記載のスポーツ用手袋。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−81146(P2012−81146A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231067(P2010−231067)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【出願人】(303030911)株式会社ナイガイ (4)
【Fターム(参考)】