説明

スライドキャビネット

【課題】 キャビネット本体寸法との関係において高い加工精度を必要とすることなく引出しの振れ防止の可能なスライドキャビネットを提供すること。
【解決手段】 前面開口した縦長状のキャビネット本体2の一内側面21aに設けられた支持片3に、フレーム体6による引出し5を側方に配設された桟材7を介して前後方向スライド自在に支持させ、該フレーム体6に収納トレー9を取り付けるとともに端部には前記キャビネット本体2の内側面に摺接される被ガイド部8を配設させて成るスライドキャビネット1である。被ガイド部8をローラー磁石81にて形成し、引出し5がキャビネット本体2の内側面に引き寄せられてスライドガイドされるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドキャビネットに関し、特に、フロアユニットと呼ばれるシステムキッチンの流し台、厨房台となるキャビネット本体において引出して収納物の出し入れが行われる縦長状のスライドキャビネットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のスライドキャビネット100として、図2に示すように、前面開口した縦長状のキャビネット本体101の一内側面101aに設けられた支持片に、フレーム体103による引出し102を側方に配設された桟材104を介して前後方向スライド自在に支持させ、該フレーム体103に収納トレー105を取り付けるとともに端部には前記キャビネット本体101の内側面に摺接される被ガイド部106を配設させて成るものが知られている。
【0003】
被ガイド部106は、このようなスライドキャビネット100においては、キャビネット本体101の内側面とフレーム体103との間の小さなスペースにおいてフレーム体103のスライド移動に際してのブレ止めをし、円滑におこなうために設けられたもので、樹脂製のローラー107がフレーム体103に固着されたガイド板端部に回動自在に配設されて形成されている。
【0004】
しかし、この構成では、引出し102内に収納物を多く収納すると、図3の概略構成図に示すように、矢印A方向の他内側面101b側に向け引出し102が傾くことがあり、キャビネット本体101の側板に干渉することがあった。
【0005】
また、本出願人により提案され、特許第3555448号公報として開示されている、図4に示すスライドキャビネット200がある。このものは、フレーム体203は振れなくスムーズにスライドされ、キャビネット本体となるボックス体201内のスペースも有効に活用可能であり、また、巾変更に簡単に対応するため、前面開口した縦長状のボックス体201の内底部に支持レール204を設け、該支持レール204上にフレーム体203を前後方向スライド自在に支持し、該フレーム体203に収納トレー205を取り付け、該収納トレー205の両側端縁206、206をフレーム体203の両側方へ突設しボックス体201の内側面201a、201aに各々近接させて、該収納トレー205の両側端縁206を同ボックス体の内側面201a、201aに摺接されるスライドガイド部となし、内巾寸法の異なる複数種の同ボックス体201と、これに対応して外巾寸法の異なる複数種の同収納トレー205とを備えてなるスライドキャビネット200において、フレーム体203の両側に桟材207、207を配設し、両桟材207間に上面開口した略器形状の収納トレー205を架設して着脱自在に取り付け、該収納トレー205上端の同桟材207に係止される両側端縁をスライドガイド部となしたものであり、同桟材207に係止される収納トレー205の側端縁206、206に該桟材207の外側へ突出して上面開口した略器形状の補助トレー部205aを延設し、該補助トレー部205aの外側端縁206を同スライドガイド部となしている。
【0006】
しかしながら、この構成では、桟材207に係止される収納トレー205の側端縁206に該桟材207の外側へ突出して上面開口した略器形状の補助トレー部205aを延設し、収納トレー205上端の桟材207に係止される両側端縁206、206をスライドガイド部となすために、フレーム体203の両側に桟材207、207を配設し、両桟材間に上面開口した略器形状の収納トレー205を架設するとともに、縦長状のボックス体の内底部に支持レール204を設ける必要があるものとなる。このため、キャビネット本体の内底部支持レール204の取り付け精度と両側面との関係寸法の精度を高める必要があり、加工のし易さに関し十分とは言えない。
【特許文献1】特許第3555448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、キャビネット本体寸法との関係において高い加工精度を必要とすることなく引出しの振れ防止の可能なスライドキャビネットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明によるスライドキャビネットは、前面開口した縦長状のキャビネット本体の一内側面に設けられた支持片に、フレーム体による引出しを側方に配設された桟材を介して前後方向スライド自在に支持させ、該フレーム体に収納トレーを取り付けるとともに端部には前記キャビネット本体の内側面に摺接される被ガイド部を配設させて成るスライドキャビネットにおいて、前記被ガイド部をローラー磁石にて形成し、前記引出しがキャビネット本体の内側面に引き寄せられてスライドガイドされるよう成している。
【0009】
そして、前記キャビネット本体の内側面に磁性材料製の長尺状ガイド片を設け、同ガイド片に前記ローラー磁石を回動摺接させるのが好ましい。
【0010】
また、前記ローラー磁石を、前記支持片の設けられた側の内側面に摺接させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本願発明のスライドキャビネットによると、収納トレーの取り付け可能なフレーム体による引出しは、前面開口した縦長状のキャビネット本体内において、ローラー磁石にて形成された被ガイド部がキャビネット本体の内側面に磁性吸着されて摺接して、側方に配設された桟材を介して同キャビネット本体一内側面に設けられた支持片に、内側面に引き寄せられた状態にて支持されて前後方向にスライドされるので、引出しがキャビネット本体2との寸法関係において高い加工精度を必要とすることなく引出しの振れ防止の可能となる。
【0012】
そして、収納トレーの取り付け可能なフレーム体による引出しが、キャビネット本体の内側面に設けられた磁性材料製の長尺状ガイド片にローラー磁石を回動摺接されるものとなるので、キャビネット本体が磁性材料のみに限定されず木質材料でも良いものとなり、以って、金型等の加工設備投資の軽減が可能となり低コストとなる。
【0013】
また、前記ローラー磁石を、前記支持片の設けられた側の内側面に摺接させるようにした結果として、フレーム体が傾くことがなく、反対側内側面と干渉することも無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の上記および他の効果、特徴および利点を明確にすべく、添付した図面を参照しながら、本発明の実施の形態を以下に詳述する。 図1を参照すると、本発明の一実施形態としてのスライドキャビネットの概略構成を示す前面から見た断面図が示されている。
【0015】
この実施形態のスライドキャビネット1は、前面開口した縦長状のキャビネット本体2の一内側面21aに設けられた支持片3に、フレーム体6による引出し5を側方に配設された桟材7を介して前後方向にスライド自在に支持させ、該フレーム体6に収納トレー9を取り付けるとともに、端部には前記キャビネット本体2の内側面に摺接される被ガイド部8を配設させて成るスライドキャビネットにおいて、前記被ガイド部8をローラー磁石81にて形成し、前記引出し5がキャビネット本体2の内側面に引き寄せられてスライドガイドされるようにしている。
【0016】
そして、前記キャビネット本体2の内側面に磁性材料製の長尺状ガイド片4を設け、同ガイド片4に前記ローラー磁石81を回動摺接させてもいる。また、前記ローラー磁石81を、前記支持片3の設けられた側の一内側面21aに摺接させてもいる。
【0017】
詳しくは、このスライドキャビネット1は、支持片3とガイド片4とを有するキャビネット本体2と、桟材7と被ガイド部8と収納トレー9とを有するフレーム体6による引出し5とで構成される。
【0018】
キャビネット本体2は、この場合、木質材料により、図1に示すように、両側板21、21、底板22、上板23及び後部の背板24で形成され、その下端には台輪部25が設けられて、流し台、厨房台等となるフロアーキャビネットと台所壁面との間隔部分に設置される。フロアーキャビネットの上面カウンターにはシンク、コンロ等が配設され、該上面カウンターがキャビネット本体2上に延設されて上板となっている。
【0019】
キャビネット本体2の、一方の側板21の一内側面21aには前後方向に長い対のレールとなる支持片3、3が、下方において上下に並設固定されており、両支持片3、3のレール溝に引出し5のフレーム体6が桟材7を介して前後方向スライド自在に係合支持されている。この場合、同図に示す如く、上記一内側面21a上部に、鋼板等の磁性材料による長尺板にて折り曲げ形成されたガイド片4、4が、当該支持片3、3と前後に亘って平行に配設取着されている。
【0020】
引出し5は、前後の枠材61と、該両枠材61間に架設結合される上下の保持枠材62、62と、該両保持枠材62の上側、及び下側で同両枠材61間にそれぞれ架設結合される補強枠材63、64と、同両枠材61の内側及び下端間に架設結合されて、上記支持片3、3の被支持枠となる桟材7、7とで、骨組み状フレーム体6に一体化形成されている。上下の保持枠材62、62各々は、収納トレー9、9が架設されて着脱自在に取り付けられるもので、この場合、後側の枠材61の上方2箇所に、引出し5がキャビネット本体2の一内側面21aに引き寄せられてスライドガイドされるよう、ローラー磁石81を水平方向に回転自在に一端部に軸着された、平板にて形成された被ガイド部8が配設されている。
【0021】
収納トレー9は、合成樹脂にて一体成形されたもので、図1に示す如く、上端周縁には外方へ突出したフランジ部91が一体に形成されており、同フランジ部91の一側端縁が、キャビネット本体2の支持片3の設けられていない側の他内側面21bに摺接しスライドガイド可能となる。この収納トレー9には、長手方向両側の裏下側に溝状部92が形成されており、この溝状部92が上記保持枠材62に位置決めされて、図1に示すように、各々フレーム体6に取り付けられる。したがって、例えば収納トレー9上の収納物の重量が重い場合にあって、引出し5をスライドさせるときにローラー磁石81がキャビネット本体2の一内側面21a側から一時的に離れたときにおいてフレーム体6の位置規制がなされ、振れ軽減が図れるものとなる。
【0022】
上記構成のスライドキャビネット1において、収納トレー9の取り付け可能なフレーム体6による引出し5は、前面開口した縦長状のキャビネット本体2内において、ローラー磁石81にて形成された被ガイド部8がキャビネット本体2の内側面のガイド片4に磁性吸着されて摺接することとなる。そして、引出し5を操作する際に、側方に配設された桟材7を介して同キャビネット本体2の一内側面21aに設けられた支持片3に、内側面に引き寄せられた状態にて支持されて、寸法バラツキによるガタツキや、操作の硬くなることが無くてスムーズな操作感をもって前後方向にスライドされるのである。
【0023】
このとき、収納トレー9の取付けられた引出し5が、木質材料製のキャビネット本体2の内側面に設けられた磁性材料製の長尺状ガイド片4にローラー磁石81を回動摺接されるが、これによりキャビネット本体2が磁性材料のみに限定されず木質材料でも良いものとなって、低コスト化が可能となり、加えて、ローラー磁石81を支持片3の設けられた側の内側面に摺接させるようにした結果として、内側面の片側のみに取り付け作業をすればよいので組み立ても容易となって、フレーム体6が傾くことなく反対側内側面と干渉することも無いのである。
【0024】
したがって、以上説明したスライドキャビネット1によると、引出し5がキャビネット本体2との寸法関係において高い加工精度を必要とすることなく引出し5の振れ防止が可能なものとなる。
【0025】
そして、収納トレー9の取り付け可能なフレーム体6による引出し5が、キャビネット本体2の内側面に設けられた磁性材料製の長尺状ガイド片4にローラー磁石81を回動摺接されるものとなるので、キャビネット本体2が磁性材料のみに限定されず木質材料でも良いものとなり、以って、金型等の加工設備投資の軽減が可能となり低コストとなる。また、ローラー磁石81を、支持片3の設けられた側の一内側面21aに摺接させるようにした結果として、フレーム体6が傾くことがなく、他内側面21bと干渉することも無い。
【0026】
なお、本発明は上記各実施例に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施例は適宜変更され得ることは明らかである。 すなわち、キャビネット本体2は磁性材料を採用したものであっても良く、この場合には、ガイド片4が不要となり、構成の簡易化ができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態を示すスライドキャビネットの概略構成を示す正面断面図。
【図2】従来のスライドキャビネットの斜視図。
【図3】同スライドキャビネットの概略構成を示す正面断面図。
【図4】他従来例のスライドキャビネットの概略構成を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 スライドキャビネット
2 キャビネット本体
21a 一内側面
3 支持片
4 ガイド片
5 引出し
6 フレーム体
7 桟材
8 被ガイド部
81 ローラー磁石
9 収納トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口した縦長状のキャビネット本体の一内側面に設けられた支持片に、フレーム体による引出しを側方に配設された桟材を介して前後方向スライド自在に支持させ、該フレーム体に収納トレーを取り付けるとともに端部には前記キャビネット本体の内側面に摺接される被ガイド部を配設させて成るスライドキャビネットにおいて、
前記被ガイド部をローラー磁石にて形成し、前記引出しがキャビネット本体の内側面に引き寄せられてスライドガイドされるよう成したことを特徴とするスライドキャビネット。
【請求項2】
前記キャビネット本体の内側面に磁性材料製の長尺状ガイド片を設け、同ガイド片に前記ローラー磁石を回動摺接させたことを特徴とする請求項1に記載のスライドキャビネット。
【請求項3】
前記ローラー磁石を、前記支持片の設けられた側の一内側面に摺接させたことを特徴とする請求項1または請求項2いずれかに記載のスライドキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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