スライドドア用給電装置
【課題】小型化かつ軽量化可能なスライドドア用給電装置を提供する。
【解決手段】スライドドア用給電装置30は、フラットケーブル4と、車体19側においてフラットケーブル4を支持する車体側取付部1と、スライドドア20側においてフラットケーブル4を支持するドア側取付部2と、を備える。車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持する。ドア側取付部2は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持する。そして、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4の厚み方向が前記水平面に略平行となるように、当該フラットケーブル4を支持する。
【解決手段】スライドドア用給電装置30は、フラットケーブル4と、車体19側においてフラットケーブル4を支持する車体側取付部1と、スライドドア20側においてフラットケーブル4を支持するドア側取付部2と、を備える。車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持する。ドア側取付部2は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持する。そして、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4の厚み方向が前記水平面に略平行となるように、当該フラットケーブル4を支持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車体側からスライドドア側に電力を供給するためのスライドドア用給電装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性向上のため、パワースライドドアを備えた車両が増えている。パワースライドドアはスライドドアを自動で開閉する機構であり、それを実現するためモータや操作スイッチ、乗員の安全を考慮した挟み込み検知センサ、それらを制御するコントロールユニット等、多くの電装品で構成されている。これらパワースライドドア関連の電装品の多く(又は全て)は、スライドドア内に搭載される。またスライドドアには、上記以外にも、パワーウィンドモータやスピーカ等の多くの電装品が搭載されている。
【0003】
スライドドアに搭載された電装品に対しては、車体側からの電力の供給、及び、車体側との間で各種制御信号のやり取りが必要となる。この点、スライドドア側と車体側にそれぞれ端子を設け、スライドドアを閉じたときに両端子を接触させて車体側からスライドドア側に給電する構成が従来から知られていた。しかしこの構成は、スライドドアが開いた状態では前記電装品に対して給電を行うことができないため、パワースライドドア機構を備えたスライドドアには採用することができない。
【0004】
そこで、パワースライドドア機構を備えた車両においては、車体側とスライドドア側とをケーブルで電気的に接続するスライドドア用給電装置が採用されている。ケーブルは或る程度柔軟に変形することができるので、スライドドアの開閉による当該スライドドアと車体との位置関係の変化に対応することができる。従って、この種のスライドドア用給電装置により、スライドドアの開閉状態にかかわらず、スライドドア側の電装品に対して車体側から給電及び制御信号のやり取りを行うことができる。
【0005】
しかしながら、上記のようなスライドドア用給電装置において、スライドドア側と車体側とを接続するケーブルの変形が完全に自由であると、変形したケーブルが電装品に接触して引っ掛かったり、当該ケーブルが振動して異音が発生したりするなど、不具合が発生する可能性がある。そこで、上記のようなスライドドア用給電装置においては、スライドドア側と車体側とを接続するケーブルの変形を規制する構成が各種提案されている。
【0006】
例えば特許文献1は、ワイヤハーネスの長手方向中間部の湾曲部をスライドドアに対して略平行に移動可能に収容する湾曲部保護部材を備えた、自動車用スライドドアの給電装置を開示している。また、この湾曲部保護部材は、第1湾曲壁と第2湾曲壁を有している。特許文献1は、この構成により、ワイヤハーネスの湾曲部が前記湾曲壁に押し付けられるようになることから、当該湾曲部がばたついて音や振動を生じることがない、としている。
【0007】
また特許文献2は、線状に連結された複数のリンク部材によって構成され、ケーブルを案内するケーブルガイドを備えた、スライドドアのケーブル配索支持部構造を開示している。このケーブルガイドは、スライドドアのスライド移動に応じて屈曲し、スライドドア側に向けて伸びるように配設されている。特許文献2は、これにより、車体本体側の他の部材への干渉を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3954802号公報
【特許文献2】特許第3850758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、現状のスライドドア内には多くの電装品や装置が搭載されており、それらの配置(レイアウト)を容易にするために各構造の小型化が求められている。また小型化と合わせて、環境性能向上の観点から軽量化も必要な項目となってきている。当然、スライドドア用給電装置の小型化及び軽量化も厳しく要求されている。
【0010】
またこれとは別に、スライドドア全閉時のスライドドア用給電装置は、意匠部品であるドアトリムに覆われ車内から見えない、触れない配置であることも求められている。当該スライドドア用給電装置が見えることで見栄えが低下し、触れることで乗員の安全性が損なわれたり、当該スライドドア用給電装置の破損や破壊が懸念されるためである。一方、スライドドアの全開時のスライドドア用給給電装置は、乗員の足元に露出しないことが求められる。乗員が乗降する際に、スライドドア用給電装置に足を引っ掛けたりしてしまう可能性を排除するためである。以上のように、スライドドア用給電装置への要求事項は、多種多様になってきている。
【0011】
この点、特許文献1は、ワイヤハーネスの湾曲部の移動範囲を考慮して、湾曲部保護部材の大きさを極力小さく形成する、としている。しかしながら、前記湾曲部はスライドドアの開閉によって必然的に移動するものであるから、湾曲部保護部材を小型化するには限界がある。従って、特許文献1に記載の自動車用スライドドアの給電装置は、小型化及び軽量化を実現することが難しい構造である。
【0012】
一方、特許文献2に記載のスライドドアのケーブル配索支持部構造では、ケーブルの屈曲動作が水平面内で行われている。このため、特許文献2の構成は、ケーブル配索支持部構造を、特許文献1のようにスライドドアのインナパネルに収容することができない。このため、特許文献2の構成ではケーブル配索支持部構造が外部に露出し、見た目が悪化するとともに、当該ケーブル配索支持部構造に乗員が触れてしまう可能性がある。また、特許文献2に記載のケーブル配索支持部構造は、多数のリンク部材を連結した構造のため、軽量化にも限界があった。
【0013】
以上のように、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術では、スライドドア用給電装置への要求事項を全て満足することは不可能であると言える。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、小型化かつ軽量化可能なスライドドア用給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0016】
本発明の観点によれば、車体側とスライドドア側とを電気的に接続するスライドドア用給電装置であって、以下のように構成されたスライドドア用給電装置が提供される。即ち、このスライドドア用給電装置は、フラットケーブルと、前記車体側において前記フラットケーブルを支持する車体側取付部と、前記スライドドア側において前記フラットケーブルを支持するドア側取付部と、を備える。前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持する。前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持する。そして、前記車体側取付部及び前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルの厚み方向が前記水平面に略平行となるように、前記フラットケーブルを支持する。
【0017】
即ち、フラットケーブルは曲がり易さに異方性があるため、変形させた時は所定の方向に曲がり易い。従って、車体側とスライドドア側をフラットケーブルで接続することにより、スライドドアをスライドさせたときのフラットケーブルの変形を3次元的に制御することが可能となる。この結果、従来技術が備えていたケーブルの変形を規制するためのガイド等を省略することが可能となり、スライドドア用給電装置を小型化、軽量化することができる。
【0018】
上記のスライドドア用給電装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角は、前記車体側取付部と前記ドア側取付部との間で、前記フラットケーブルの少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されている。
【0019】
これにより、スライドドアの開閉時において、フラットケーブルがスライドドアや当該スライドドアの内装材に干渉してしまうことを防止できる。
【0020】
上記のスライドドア用給電装置において、前記フラットケーブルは、前記スライドドアが半開のときに比べて、前記スライドドアが全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されることが好ましい。
【0021】
即ち、スライドドアの全閉時においては、フラットケーブルの垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブルをスライドドアの内装材によって効率的に覆うことができる。これにより、スライドドアの全閉時において、フラットケーブルが露出してしまうことがなく、見た目の悪化を防止できる。また、スライドドアの全開時においても、フラットケーブルの垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブルの軌跡が大きく膨らまない。これにより、乗員が乗降する際の足元空間を確保し、足を引っ掛けてしまう可能性を低減することができる。
【0022】
上記のスライドドア用給電装置において、前記第1傾斜角は0°以上60°以下であり、前記第2傾斜角は30°以上90°以下であることが好ましい。
【0023】
第1傾斜角及び第2傾斜角をこの範囲とすることにより、フラットケーブルを適切な垂れ下がり姿勢とすることができる。
【0024】
上記のスライドドア用給電装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、前記フラットケーブルの長手方向が前記車体の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角を有するように支持する。前記第3傾斜角は、前記車体側取付部からの前記フラットケーブルの引き出し方向が、前記車体の斜め後方に向くように決定されている。
【0025】
これにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの急激な軌跡変化を抑制し、当該フラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0026】
上記のスライドドア用給電装置において、前記第3傾斜角は0°以上60°以下であることが好ましい。
【0027】
第3傾斜角をこの範囲とすることにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0028】
上記のスライドドア用給電装置において、前記フラットケーブルは、屈曲性に優れた外装材によって保護されていることが好ましい。
【0029】
これにより、フラットケーブルを保護することができるとともに、スライドドア半開時又は全開時のフラットケーブルの見栄えも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るスライドドア用給電装置の斜視図。
【図2】スライドドア用給電装置の正面図。
【図3】外装材の斜視図。
【図4】車体側取付部の斜視図。
【図5】ドア側取付部の斜視図。
【図6】車体側取付部の平面図。
【図7】スライドドアが半開の状態を示す斜視図。
【図8】スライドドアが全閉の状態を示す斜視図。
【図9】スライドドアが全開の状態を示す斜視図。
【図10】スライドドアが全開の状態を示す平面図。
【図11】変形例に係る外装材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の一実施形態に係るスライドドア用給電装置30は、車体側取付部1、ドア側取付部2、フラットケーブル4、及び外装材3から構成されている。図2に示すように、フラットケーブル4は、車体19と、スライドドア20と、の間にまたがって配置されている。このスライドドア用給電装置30は、車体19と、当該車体19に対してスライド可能なスライドドア20と、を備えた車両において、車体19側とスライドドア20側とを電気的に接続するためのものである。
【0033】
フラットケーブル4は、細いケーブルを複数本並べて平面状にまとめた公知の構成である。前記細いケーブルが並んでいる方向を、当該フラットケーブル4の幅方向とする。また、この幅方向及びケーブルの長手方向に直交する方向を、フラットケーブル4の厚み方向とする。フラットケーブル4の両端には、図略の接続コネクタが配置されている。フラットケーブル4の一端側の接続コネクタはスライドドア20側に配置された各種の電装品に接続され、他端側の接続コネクタは車体19側に配置されたバッテリーや制御装置などに接続される。これにより、スライドドア20に配置された電装品(図略)に対して、車体19側から、電力を供給したり、制御信号をやり取りしたりすることができる。
【0034】
車体側取付部1とドア側取付部2との間には、図3に示すようなチューブ状の外装材3が配置されており、フラットケーブル4はこの外装材3の内側に挿入されている。これにより、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4が、外装材3によって保護されている。また、フラットケーブル4が直接露出しないので、スライドドア用給電装置30の見栄えを向上させることができる。外装材3は屈曲性・柔軟性に優れた構成(例えばゴム製のチューブ)となっている。この外装材3は、その内部に挿入されるフラットケーブル4の形状に合わせて、その長手方向に直交する平面で切断したときの断面形状が扁平状となるように形成されている。
【0035】
フラットケーブル4は、車体側取付部1及びドア側取付部2によって支持されている。図2に示すように、車体側取付部1は車体19側に、ドア側取付部2はスライドドア20側に、それぞれ取り付けられる。また、車体側取付部1は、車体19側の内装部品であるスカーフプレート11よりも下側に配置されている。一方、ドア側取付部2は、スライドドアの内装部品であるドアトリム12よりも外側に配置されている。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2が、車内に露出しないようになっている。なお、本実施形態において、車体側取付部1とドア側取付部2は、フラットケーブル4を内装した外装材3を支持するように構成されている。従って正確に言えば、車体側取付部1とドア側取付部2は、外装材3を介して間接的にフラットケーブル4を支持する構成となっている。
【0036】
周知のように、スライドドア20は、水平面に平行な方向(より具体的には、車体19の前後方向)で、車体19に対してスライド可能に構成されている。従って、スライドドア20を開閉すると、車体側取付部1とドア側取付部2が相対移動する。フラットケーブル4及び外装材3は柔軟性を備えているので、上記のようにスライドドアが開閉されて車体側取付部1とドア側取付部2の位置関係が変化したときでも、車体側取付部1とドア側取付部2の間で変形することができる。これにより、スライドドアの開閉状況にかかわらず、車体側とスライドドア側との電気的な接続を維持することができる。
【0037】
ところで、上記のようなケーブルの変形が完全に自由であると、変形したケーブルが電装部品に引っ掛かったりするなどの問題が生じうる。そこで、ケーブルの変形を制御するための工夫が必要となる。
【0038】
ここで、従来の給電装置が用いていたケーブルは通常の丸ケーブルであった。丸ケーブルはどの方向に対しても均一に曲がるため、その変形を制御するための何らかの構成が別途必要となる。そこで、従来の給電装置は、前記ケーブルの移動を規制するためのガイドを備えていた。しかしこのようなガイド類は給電装置が大型化する原因となり、軽量化も困難であったのである。
【0039】
この点、本実施形態のスライドドア用給電装置30は、前述のように、車体19側とスライドドア20側を繋ぐケーブルとして、フラットケーブル4を用いている。フラットケーブル4は、その幅方向に直交する平面内で曲がり易く、幅方向に平行な平面内では曲がりにくい。即ち、前記丸ケーブルとは異なり、フラットケーブル4の曲がりやすさには異方性がある。この性質を利用することにより、スライドドアを開閉したときのフラットケーブル4の変形を、ある程度3次元的に制御することができる。これにより、従来の給電装置が備えていたガイド等を省略することができる。
【0040】
以下、より具体的に説明する。
【0041】
まず、フラットケーブル4を支持している車体側取付部1及びドア側取付部2の構成について詳しく説明する。車体側取付部1及びドア側取付部2は、合成樹脂の射出成形により成型されている。図4及び図5に示すように、車体側取付部1及びドア側取付部2は、それぞれ、固定座面5、ケーブル取付溝7、保護R部6を備えている。
【0042】
固定座面5には、車両(車体19又はスライドドア20)に対して車体側取付部1又はドア側取付部2を固定するためのボルトを挿通できるように、ボルト挿通孔が形成されている。車体側取付部1及びドア側取付部2は、前記固定座面5にボルトを締め付けることにより、車両に対して固定される。
【0043】
ケーブル取付溝7は、フラットケーブル4を固定するための溝である。前述のように、本実施形態においては、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4を内包した外装材3を支持するように構成されている。そこで、ケーブル取付溝7は、フラットケーブル4を内包した状態の外装材3を固定できるように構成されている。具体的には、ケーブル取付溝7の幅は、外装材3の厚みと略一致するように形成されている。そして、このケーブル取付溝7に外装材3を差し込むことにより、当該外装材3(及び当該外装材3に内包されたフラットケーブル4)を固定するように構成されている。そして、このようにケーブル取付溝7に差し込まれた外装材3を、図1に示すように結束バンド7aにて固定する。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2に対して、外装材3(及びフラットケーブル4)を確実に固定することができる。
【0044】
保護R部6は、ケーブル取付溝7の端部において、当該ケーブル取付溝7の側壁面が滑らかなR形状となるように形成されている部分である。これにより、ケーブル取付溝7から引き出された外装材3(及びフラットケーブル4)が、規定以下の屈曲半径で曲らないように保護することができる。この保護R部6の曲率は、数万回にも及ぶスライドドア開閉回数にフラットケーブル4が対応できる曲率としている。
【0045】
次に、車体側取付部1及びドア側取付部2がフラットケーブル4(及び外装材3)を支持する様子について、詳しく説明する。
【0046】
前述のように、フラットケーブル4は曲がり易さに異方性がある。また、フラットケーブル4に合わせて断面扁平状に形成された外装材3も、その曲がり易さに異方性がある。従って、車体側取付部1及びドア側取付部2において、フラットケーブル4が曲がって欲しい方向に曲がり易く、曲がって欲しくない方向には曲がり難いように当該フラットケーブル4を支持することで、当該フラットケーブル4を所望の軌跡で変形させることができる。
【0047】
ここで、スライドドア20は水平面に平行な方向(具体的には車体前後方向)でスライドする。従って、水平面に平行な平面内でフラットケーブル4(及び外装材3)が曲がり易いようにできれば、スライドドア20の開閉時にフラットケーブル4を無理なく追従させることができるので好適である。そこで本実施形態において、車体側取付部1及びドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の厚み方向が水平面に対して平行になるように形成されている。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2の近傍において、スライドドア20の開閉に応じて外装材3及びフラットケーブル4を無理なく変形させることができる。
【0048】
一方で、本実施形態においては、図2に示すように、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、ドアトリム(スライドドアの内装部品)12の下を通過するように配索されている。そこで本実施形態において、車体側取付部1及びドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4が鉛直方向下向きに垂れ下がるように形成されている。
【0049】
具体的には、車体側取付部1のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角A1を有するように形成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、車体側取付部1から斜め下方に向けて引き出された後に、ドア側取付部2へ向かうようになっている。一方、ドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角A2を有するように構成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、ドア側取付部2から下方に向けて引き出された後に、車体側取付部1へ向かうようになっている。
【0050】
以上の構成により、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)を、鉛直方向下向きに垂れ下がるように変形させることができるので、当該フラットケーブル4(及び外装材3)がドアトリム12に接触することを防止できる。
【0051】
なお、上記の下向きに垂れ下がった姿勢が振動等によって変化してしまうと、フラットケーブル4(及び外装材3)がドアトリム12に接触してしまうことも考えられる。これを防ぐためには、フラットケーブル4(及び外装材3)が、上下方向に変形しにくいことが好ましい。言い換えれば、水平面に直交する平面内(例えば図2で示す平面内)において、フラットケーブル4(及び外装材3)が変形しにくいことが好ましいのである。
【0052】
ここで本実施形態では、前述のように、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4及び外装材3の厚み方向が水平面に対して平行になるように、当該外装材3(及びフラットケーブル4)を支持している。従って、車体側取付部1及びドア側取付部2の近傍において、フラットケーブル4及び外装材3は、水平面に直交する平面内では変形しにくくなっている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)が垂れ下がった姿勢を維持し易くなっている。
【0053】
以上のように、車体側取付部1及びドア側取付部2において、フラットケーブル4を支持する際の向き、傾斜角等を工夫することにより、ガイド部材のようなものを特に用いることなく、フラットケーブル4の変形を3次元的に制御することができる。具体的には、フラットケーブル4を、垂れ下がった状態を維持させつつ、スライドドア20のスライドに良好に追従させて変形させることができる。このように、ケーブルの変形を規制するためのガイド部材を設ける必要がなくなる結果、スライドドア用給電装置30を小型化、軽量化することが可能となる。
【0054】
また図6に示すように、車体側取付部1のケーブル取付溝7は、平面視において、フラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が車体左右方向に対して所定の第3傾斜角A3を有するように構成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、車体側取付部1から斜め後方に向けて引き出された後に、ドア側取付部2へ向かうようになっている。これによりスライドドア20の開閉に追従する際の、フラットケーブル4の軌跡を安定させることが可能となる。具体的にはスライドドア20を閉める際、フラットケーブル4の急激な軌跡変化を抑制する効果がある。
【0055】
なお、上記の第1傾斜角A1は0°から60°の範囲、第2傾斜角A2は30°から90°の範囲、第3傾斜角A3は0°から60°の範囲とすれば好適である。上記の範囲内で、各車両ごとに最適な傾斜角を設定することにより、車両毎に異なるスライドドア移動量に左右されることなく、ドアトリム12と干渉しないフラットケーブル4の軌跡を実現することが可能となる。
【0056】
また本実施形態では、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、スライドドア20が半開の状態での前記垂れ下がり量が、全開及び全閉時の垂れ下がり量よりも大きくなるように配索されている。言い換えれば、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、全開及び全閉時において、半開時よりも張った状態となるように配索されている。
【0057】
即ち、図8に示すように、スライドドア20の全閉時においては、スライドドア20の開閉途中(半開時、図7の状態)に比べて、車体側取付部1とドア側取付部2との間の外装材3(及びフラットケーブル)が張った状態となり、当該外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状となる。これにより、外装材3(及びフラットケーブル)をドアトリム12によって効率的に覆うことができ、且つドアトリム12の内側の占有空間を最小限とすることが可能となる。
【0058】
一方、図9に示すように、スライドドア20の全開時においても、スライドドア20の開閉途中(半開時、図7の状態)に比べて、車体側取付部1とドア側取付部2との間の外装材3(及びフラットケーブル)が張った状態となり、当該外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状となる。このように、外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状に配索されるため、大きく膨らむ軌跡にならない。従って、乗員が乗降する際の足元空間を確保できるので、図10に示すように乗員が乗降する軌跡を外装材3(及びフラットケーブル)で邪魔することがない。これにより、乗員が乗降時に足を引っ掛ける等の危険を低減することができる。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態のスライドドア用給電装置30は、フラットケーブル4と、車体19側においてフラットケーブル4を支持する車体側取付部1と、スライドドア20側においてフラットケーブル4を支持するドア側取付部2と、を備える。車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角A1を有するように支持する。ドア側取付部2は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角A2を有するように支持する。そして、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4の厚み方向が前記水平面に略平行となるように、当該フラットケーブル4を支持する。
【0060】
即ち、フラットケーブル4は曲がり易さに異方性があるため、変形させた時は所定の方向に曲がり易い。従って、車体19側とスライドドア20側をフラットケーブル4で接続することにより、スライドドア20をスライドさせたときのフラットケーブル4の変形を3次元的に制御することが可能となる。この結果、従来技術が備えていたケーブルの変形を規制するためのガイド等を省略することが可能となり、スライドドア用給電装置を小型化、軽量化することができる。
【0061】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30は、以下のように構成されている。即ち、第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2は、車体側取付部1とドア側取付部2との間で、フラットケーブル4の少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されている。
【0062】
これにより、スライドドア20の開閉時において、フラットケーブル4がスライドドア20やドアトリム12に干渉してしまうことを防止できる。
【0063】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、フラットケーブル4は、スライドドア20が半開のときに比べて、当該スライドドア20が全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されている。
【0064】
即ち、スライドドア20の全閉時においては、フラットケーブル4の垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブル4をドアトリム12によって効率的に覆うことができる。これにより、スライドドア20の全閉時において、フラットケーブル4が露出してしまうことがなく、見た目の悪化を防止できる。また、スライドドア20の全開時においても、フラットケーブル4の垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブル4の軌跡が大きく膨らまない。これにより、乗員が乗降する際の足元空間を確保し、足を引っ掛けてしまう可能性を低減することができる。
【0065】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、第1傾斜角A1は0°以上60°以下であり、第2傾斜角A2は30°以上90°以下であることが好ましい。
【0066】
第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2をこの範囲とすることにより、フラットケーブル4を適切な垂れ下がり姿勢とすることができる。
【0067】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30は、以下のように構成されている。即ち、車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が車体19の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角A3を有するように支持する。第3傾斜角A3は、車体側取付部1からのフラットケーブル4の引き出し方向が、車体19の斜め後方に向くように決定されている。
【0068】
これにより、スライドドア20を開閉する際のフラットケーブル4の急激な軌跡変化を抑制し、当該フラットケーブル4の軌跡を安定させることができる。
【0069】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、第3傾斜角A3は0°以上60°以下であることが好ましい。
【0070】
第3傾斜角A3をこの範囲とすることにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0071】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、フラットケーブル4は、屈曲性に優れた外装材3によって保護されている。
【0072】
これにより、フラットケーブル4を保護することができるとともに、スライドドア20の半開時又は全開時のフラットケーブル4の見栄えも向上させることができる。
【0073】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0074】
上記実施形態では、車体側取付部1及びドア側取付部2の間のフラットケーブル4が垂れ下がった姿勢となるように第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2を決定しているが、これに限らない。本発明の要点は、フラットケーブル4の曲がり易さの異方性を利用して当該フラットケーブル4の変形を制御することにあり、必ずしもフラットケーブル4が垂れ下がり姿勢となることを要しない。第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2を適宜設定することにより、フラットケーブル4を、垂れ下がり姿勢以外にも所望の姿勢に変形させることができる。
【0075】
上記説明ではフラットケーブル4の変形をガイドするためのガイド部材を省略できるとして説明したが、必要であれば、フラットケーブル4の変形をガイドするための部材を適宜配置しても良い。
【0076】
車体側取付部1及びドア側取付部2において、外装材3を結束バンド7aで固定する構成としたが、これに代えて、2個の樹脂部品によって外装材3を挟み込んで固定するように構成しても良い。
【0077】
外装材3はゴム製のチューブとして説明したが、例えば図11のように、蛇腹形状のチューブとすることで構造的に屈曲性を確保した外装材3としても良い。
【0078】
なお、外装材3は省略することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 車体側取付部
2 ドア側取付部
3 外装材
4 フラットケーブル
19 車体
20 スライドドア
30 スライドドア用給電装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車体側からスライドドア側に電力を供給するためのスライドドア用給電装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性向上のため、パワースライドドアを備えた車両が増えている。パワースライドドアはスライドドアを自動で開閉する機構であり、それを実現するためモータや操作スイッチ、乗員の安全を考慮した挟み込み検知センサ、それらを制御するコントロールユニット等、多くの電装品で構成されている。これらパワースライドドア関連の電装品の多く(又は全て)は、スライドドア内に搭載される。またスライドドアには、上記以外にも、パワーウィンドモータやスピーカ等の多くの電装品が搭載されている。
【0003】
スライドドアに搭載された電装品に対しては、車体側からの電力の供給、及び、車体側との間で各種制御信号のやり取りが必要となる。この点、スライドドア側と車体側にそれぞれ端子を設け、スライドドアを閉じたときに両端子を接触させて車体側からスライドドア側に給電する構成が従来から知られていた。しかしこの構成は、スライドドアが開いた状態では前記電装品に対して給電を行うことができないため、パワースライドドア機構を備えたスライドドアには採用することができない。
【0004】
そこで、パワースライドドア機構を備えた車両においては、車体側とスライドドア側とをケーブルで電気的に接続するスライドドア用給電装置が採用されている。ケーブルは或る程度柔軟に変形することができるので、スライドドアの開閉による当該スライドドアと車体との位置関係の変化に対応することができる。従って、この種のスライドドア用給電装置により、スライドドアの開閉状態にかかわらず、スライドドア側の電装品に対して車体側から給電及び制御信号のやり取りを行うことができる。
【0005】
しかしながら、上記のようなスライドドア用給電装置において、スライドドア側と車体側とを接続するケーブルの変形が完全に自由であると、変形したケーブルが電装品に接触して引っ掛かったり、当該ケーブルが振動して異音が発生したりするなど、不具合が発生する可能性がある。そこで、上記のようなスライドドア用給電装置においては、スライドドア側と車体側とを接続するケーブルの変形を規制する構成が各種提案されている。
【0006】
例えば特許文献1は、ワイヤハーネスの長手方向中間部の湾曲部をスライドドアに対して略平行に移動可能に収容する湾曲部保護部材を備えた、自動車用スライドドアの給電装置を開示している。また、この湾曲部保護部材は、第1湾曲壁と第2湾曲壁を有している。特許文献1は、この構成により、ワイヤハーネスの湾曲部が前記湾曲壁に押し付けられるようになることから、当該湾曲部がばたついて音や振動を生じることがない、としている。
【0007】
また特許文献2は、線状に連結された複数のリンク部材によって構成され、ケーブルを案内するケーブルガイドを備えた、スライドドアのケーブル配索支持部構造を開示している。このケーブルガイドは、スライドドアのスライド移動に応じて屈曲し、スライドドア側に向けて伸びるように配設されている。特許文献2は、これにより、車体本体側の他の部材への干渉を防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3954802号公報
【特許文献2】特許第3850758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、現状のスライドドア内には多くの電装品や装置が搭載されており、それらの配置(レイアウト)を容易にするために各構造の小型化が求められている。また小型化と合わせて、環境性能向上の観点から軽量化も必要な項目となってきている。当然、スライドドア用給電装置の小型化及び軽量化も厳しく要求されている。
【0010】
またこれとは別に、スライドドア全閉時のスライドドア用給電装置は、意匠部品であるドアトリムに覆われ車内から見えない、触れない配置であることも求められている。当該スライドドア用給電装置が見えることで見栄えが低下し、触れることで乗員の安全性が損なわれたり、当該スライドドア用給電装置の破損や破壊が懸念されるためである。一方、スライドドアの全開時のスライドドア用給給電装置は、乗員の足元に露出しないことが求められる。乗員が乗降する際に、スライドドア用給電装置に足を引っ掛けたりしてしまう可能性を排除するためである。以上のように、スライドドア用給電装置への要求事項は、多種多様になってきている。
【0011】
この点、特許文献1は、ワイヤハーネスの湾曲部の移動範囲を考慮して、湾曲部保護部材の大きさを極力小さく形成する、としている。しかしながら、前記湾曲部はスライドドアの開閉によって必然的に移動するものであるから、湾曲部保護部材を小型化するには限界がある。従って、特許文献1に記載の自動車用スライドドアの給電装置は、小型化及び軽量化を実現することが難しい構造である。
【0012】
一方、特許文献2に記載のスライドドアのケーブル配索支持部構造では、ケーブルの屈曲動作が水平面内で行われている。このため、特許文献2の構成は、ケーブル配索支持部構造を、特許文献1のようにスライドドアのインナパネルに収容することができない。このため、特許文献2の構成ではケーブル配索支持部構造が外部に露出し、見た目が悪化するとともに、当該ケーブル配索支持部構造に乗員が触れてしまう可能性がある。また、特許文献2に記載のケーブル配索支持部構造は、多数のリンク部材を連結した構造のため、軽量化にも限界があった。
【0013】
以上のように、特許文献1及び特許文献2に開示された従来技術では、スライドドア用給電装置への要求事項を全て満足することは不可能であると言える。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、小型化かつ軽量化可能なスライドドア用給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0016】
本発明の観点によれば、車体側とスライドドア側とを電気的に接続するスライドドア用給電装置であって、以下のように構成されたスライドドア用給電装置が提供される。即ち、このスライドドア用給電装置は、フラットケーブルと、前記車体側において前記フラットケーブルを支持する車体側取付部と、前記スライドドア側において前記フラットケーブルを支持するドア側取付部と、を備える。前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持する。前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持する。そして、前記車体側取付部及び前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルの厚み方向が前記水平面に略平行となるように、前記フラットケーブルを支持する。
【0017】
即ち、フラットケーブルは曲がり易さに異方性があるため、変形させた時は所定の方向に曲がり易い。従って、車体側とスライドドア側をフラットケーブルで接続することにより、スライドドアをスライドさせたときのフラットケーブルの変形を3次元的に制御することが可能となる。この結果、従来技術が備えていたケーブルの変形を規制するためのガイド等を省略することが可能となり、スライドドア用給電装置を小型化、軽量化することができる。
【0018】
上記のスライドドア用給電装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角は、前記車体側取付部と前記ドア側取付部との間で、前記フラットケーブルの少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されている。
【0019】
これにより、スライドドアの開閉時において、フラットケーブルがスライドドアや当該スライドドアの内装材に干渉してしまうことを防止できる。
【0020】
上記のスライドドア用給電装置において、前記フラットケーブルは、前記スライドドアが半開のときに比べて、前記スライドドアが全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されることが好ましい。
【0021】
即ち、スライドドアの全閉時においては、フラットケーブルの垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブルをスライドドアの内装材によって効率的に覆うことができる。これにより、スライドドアの全閉時において、フラットケーブルが露出してしまうことがなく、見た目の悪化を防止できる。また、スライドドアの全開時においても、フラットケーブルの垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブルの軌跡が大きく膨らまない。これにより、乗員が乗降する際の足元空間を確保し、足を引っ掛けてしまう可能性を低減することができる。
【0022】
上記のスライドドア用給電装置において、前記第1傾斜角は0°以上60°以下であり、前記第2傾斜角は30°以上90°以下であることが好ましい。
【0023】
第1傾斜角及び第2傾斜角をこの範囲とすることにより、フラットケーブルを適切な垂れ下がり姿勢とすることができる。
【0024】
上記のスライドドア用給電装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、前記フラットケーブルの長手方向が前記車体の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角を有するように支持する。前記第3傾斜角は、前記車体側取付部からの前記フラットケーブルの引き出し方向が、前記車体の斜め後方に向くように決定されている。
【0025】
これにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの急激な軌跡変化を抑制し、当該フラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0026】
上記のスライドドア用給電装置において、前記第3傾斜角は0°以上60°以下であることが好ましい。
【0027】
第3傾斜角をこの範囲とすることにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0028】
上記のスライドドア用給電装置において、前記フラットケーブルは、屈曲性に優れた外装材によって保護されていることが好ましい。
【0029】
これにより、フラットケーブルを保護することができるとともに、スライドドア半開時又は全開時のフラットケーブルの見栄えも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るスライドドア用給電装置の斜視図。
【図2】スライドドア用給電装置の正面図。
【図3】外装材の斜視図。
【図4】車体側取付部の斜視図。
【図5】ドア側取付部の斜視図。
【図6】車体側取付部の平面図。
【図7】スライドドアが半開の状態を示す斜視図。
【図8】スライドドアが全閉の状態を示す斜視図。
【図9】スライドドアが全開の状態を示す斜視図。
【図10】スライドドアが全開の状態を示す平面図。
【図11】変形例に係る外装材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の一実施形態に係るスライドドア用給電装置30は、車体側取付部1、ドア側取付部2、フラットケーブル4、及び外装材3から構成されている。図2に示すように、フラットケーブル4は、車体19と、スライドドア20と、の間にまたがって配置されている。このスライドドア用給電装置30は、車体19と、当該車体19に対してスライド可能なスライドドア20と、を備えた車両において、車体19側とスライドドア20側とを電気的に接続するためのものである。
【0033】
フラットケーブル4は、細いケーブルを複数本並べて平面状にまとめた公知の構成である。前記細いケーブルが並んでいる方向を、当該フラットケーブル4の幅方向とする。また、この幅方向及びケーブルの長手方向に直交する方向を、フラットケーブル4の厚み方向とする。フラットケーブル4の両端には、図略の接続コネクタが配置されている。フラットケーブル4の一端側の接続コネクタはスライドドア20側に配置された各種の電装品に接続され、他端側の接続コネクタは車体19側に配置されたバッテリーや制御装置などに接続される。これにより、スライドドア20に配置された電装品(図略)に対して、車体19側から、電力を供給したり、制御信号をやり取りしたりすることができる。
【0034】
車体側取付部1とドア側取付部2との間には、図3に示すようなチューブ状の外装材3が配置されており、フラットケーブル4はこの外装材3の内側に挿入されている。これにより、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4が、外装材3によって保護されている。また、フラットケーブル4が直接露出しないので、スライドドア用給電装置30の見栄えを向上させることができる。外装材3は屈曲性・柔軟性に優れた構成(例えばゴム製のチューブ)となっている。この外装材3は、その内部に挿入されるフラットケーブル4の形状に合わせて、その長手方向に直交する平面で切断したときの断面形状が扁平状となるように形成されている。
【0035】
フラットケーブル4は、車体側取付部1及びドア側取付部2によって支持されている。図2に示すように、車体側取付部1は車体19側に、ドア側取付部2はスライドドア20側に、それぞれ取り付けられる。また、車体側取付部1は、車体19側の内装部品であるスカーフプレート11よりも下側に配置されている。一方、ドア側取付部2は、スライドドアの内装部品であるドアトリム12よりも外側に配置されている。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2が、車内に露出しないようになっている。なお、本実施形態において、車体側取付部1とドア側取付部2は、フラットケーブル4を内装した外装材3を支持するように構成されている。従って正確に言えば、車体側取付部1とドア側取付部2は、外装材3を介して間接的にフラットケーブル4を支持する構成となっている。
【0036】
周知のように、スライドドア20は、水平面に平行な方向(より具体的には、車体19の前後方向)で、車体19に対してスライド可能に構成されている。従って、スライドドア20を開閉すると、車体側取付部1とドア側取付部2が相対移動する。フラットケーブル4及び外装材3は柔軟性を備えているので、上記のようにスライドドアが開閉されて車体側取付部1とドア側取付部2の位置関係が変化したときでも、車体側取付部1とドア側取付部2の間で変形することができる。これにより、スライドドアの開閉状況にかかわらず、車体側とスライドドア側との電気的な接続を維持することができる。
【0037】
ところで、上記のようなケーブルの変形が完全に自由であると、変形したケーブルが電装部品に引っ掛かったりするなどの問題が生じうる。そこで、ケーブルの変形を制御するための工夫が必要となる。
【0038】
ここで、従来の給電装置が用いていたケーブルは通常の丸ケーブルであった。丸ケーブルはどの方向に対しても均一に曲がるため、その変形を制御するための何らかの構成が別途必要となる。そこで、従来の給電装置は、前記ケーブルの移動を規制するためのガイドを備えていた。しかしこのようなガイド類は給電装置が大型化する原因となり、軽量化も困難であったのである。
【0039】
この点、本実施形態のスライドドア用給電装置30は、前述のように、車体19側とスライドドア20側を繋ぐケーブルとして、フラットケーブル4を用いている。フラットケーブル4は、その幅方向に直交する平面内で曲がり易く、幅方向に平行な平面内では曲がりにくい。即ち、前記丸ケーブルとは異なり、フラットケーブル4の曲がりやすさには異方性がある。この性質を利用することにより、スライドドアを開閉したときのフラットケーブル4の変形を、ある程度3次元的に制御することができる。これにより、従来の給電装置が備えていたガイド等を省略することができる。
【0040】
以下、より具体的に説明する。
【0041】
まず、フラットケーブル4を支持している車体側取付部1及びドア側取付部2の構成について詳しく説明する。車体側取付部1及びドア側取付部2は、合成樹脂の射出成形により成型されている。図4及び図5に示すように、車体側取付部1及びドア側取付部2は、それぞれ、固定座面5、ケーブル取付溝7、保護R部6を備えている。
【0042】
固定座面5には、車両(車体19又はスライドドア20)に対して車体側取付部1又はドア側取付部2を固定するためのボルトを挿通できるように、ボルト挿通孔が形成されている。車体側取付部1及びドア側取付部2は、前記固定座面5にボルトを締め付けることにより、車両に対して固定される。
【0043】
ケーブル取付溝7は、フラットケーブル4を固定するための溝である。前述のように、本実施形態においては、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4を内包した外装材3を支持するように構成されている。そこで、ケーブル取付溝7は、フラットケーブル4を内包した状態の外装材3を固定できるように構成されている。具体的には、ケーブル取付溝7の幅は、外装材3の厚みと略一致するように形成されている。そして、このケーブル取付溝7に外装材3を差し込むことにより、当該外装材3(及び当該外装材3に内包されたフラットケーブル4)を固定するように構成されている。そして、このようにケーブル取付溝7に差し込まれた外装材3を、図1に示すように結束バンド7aにて固定する。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2に対して、外装材3(及びフラットケーブル4)を確実に固定することができる。
【0044】
保護R部6は、ケーブル取付溝7の端部において、当該ケーブル取付溝7の側壁面が滑らかなR形状となるように形成されている部分である。これにより、ケーブル取付溝7から引き出された外装材3(及びフラットケーブル4)が、規定以下の屈曲半径で曲らないように保護することができる。この保護R部6の曲率は、数万回にも及ぶスライドドア開閉回数にフラットケーブル4が対応できる曲率としている。
【0045】
次に、車体側取付部1及びドア側取付部2がフラットケーブル4(及び外装材3)を支持する様子について、詳しく説明する。
【0046】
前述のように、フラットケーブル4は曲がり易さに異方性がある。また、フラットケーブル4に合わせて断面扁平状に形成された外装材3も、その曲がり易さに異方性がある。従って、車体側取付部1及びドア側取付部2において、フラットケーブル4が曲がって欲しい方向に曲がり易く、曲がって欲しくない方向には曲がり難いように当該フラットケーブル4を支持することで、当該フラットケーブル4を所望の軌跡で変形させることができる。
【0047】
ここで、スライドドア20は水平面に平行な方向(具体的には車体前後方向)でスライドする。従って、水平面に平行な平面内でフラットケーブル4(及び外装材3)が曲がり易いようにできれば、スライドドア20の開閉時にフラットケーブル4を無理なく追従させることができるので好適である。そこで本実施形態において、車体側取付部1及びドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の厚み方向が水平面に対して平行になるように形成されている。これにより、車体側取付部1及びドア側取付部2の近傍において、スライドドア20の開閉に応じて外装材3及びフラットケーブル4を無理なく変形させることができる。
【0048】
一方で、本実施形態においては、図2に示すように、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、ドアトリム(スライドドアの内装部品)12の下を通過するように配索されている。そこで本実施形態において、車体側取付部1及びドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4が鉛直方向下向きに垂れ下がるように形成されている。
【0049】
具体的には、車体側取付部1のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角A1を有するように形成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、車体側取付部1から斜め下方に向けて引き出された後に、ドア側取付部2へ向かうようになっている。一方、ドア側取付部2のケーブル取付溝7は、当該ケーブル取付溝7に差し込まれたフラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角A2を有するように構成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、ドア側取付部2から下方に向けて引き出された後に、車体側取付部1へ向かうようになっている。
【0050】
以上の構成により、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)を、鉛直方向下向きに垂れ下がるように変形させることができるので、当該フラットケーブル4(及び外装材3)がドアトリム12に接触することを防止できる。
【0051】
なお、上記の下向きに垂れ下がった姿勢が振動等によって変化してしまうと、フラットケーブル4(及び外装材3)がドアトリム12に接触してしまうことも考えられる。これを防ぐためには、フラットケーブル4(及び外装材3)が、上下方向に変形しにくいことが好ましい。言い換えれば、水平面に直交する平面内(例えば図2で示す平面内)において、フラットケーブル4(及び外装材3)が変形しにくいことが好ましいのである。
【0052】
ここで本実施形態では、前述のように、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4及び外装材3の厚み方向が水平面に対して平行になるように、当該外装材3(及びフラットケーブル4)を支持している。従って、車体側取付部1及びドア側取付部2の近傍において、フラットケーブル4及び外装材3は、水平面に直交する平面内では変形しにくくなっている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)が垂れ下がった姿勢を維持し易くなっている。
【0053】
以上のように、車体側取付部1及びドア側取付部2において、フラットケーブル4を支持する際の向き、傾斜角等を工夫することにより、ガイド部材のようなものを特に用いることなく、フラットケーブル4の変形を3次元的に制御することができる。具体的には、フラットケーブル4を、垂れ下がった状態を維持させつつ、スライドドア20のスライドに良好に追従させて変形させることができる。このように、ケーブルの変形を規制するためのガイド部材を設ける必要がなくなる結果、スライドドア用給電装置30を小型化、軽量化することが可能となる。
【0054】
また図6に示すように、車体側取付部1のケーブル取付溝7は、平面視において、フラットケーブル4(及び外装材3)の長手方向が車体左右方向に対して所定の第3傾斜角A3を有するように構成されている。これにより、フラットケーブル4(及び外装材3)は、車体側取付部1から斜め後方に向けて引き出された後に、ドア側取付部2へ向かうようになっている。これによりスライドドア20の開閉に追従する際の、フラットケーブル4の軌跡を安定させることが可能となる。具体的にはスライドドア20を閉める際、フラットケーブル4の急激な軌跡変化を抑制する効果がある。
【0055】
なお、上記の第1傾斜角A1は0°から60°の範囲、第2傾斜角A2は30°から90°の範囲、第3傾斜角A3は0°から60°の範囲とすれば好適である。上記の範囲内で、各車両ごとに最適な傾斜角を設定することにより、車両毎に異なるスライドドア移動量に左右されることなく、ドアトリム12と干渉しないフラットケーブル4の軌跡を実現することが可能となる。
【0056】
また本実施形態では、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、スライドドア20が半開の状態での前記垂れ下がり量が、全開及び全閉時の垂れ下がり量よりも大きくなるように配索されている。言い換えれば、車体側取付部1とドア側取付部2との間のフラットケーブル4(及び外装材3)は、全開及び全閉時において、半開時よりも張った状態となるように配索されている。
【0057】
即ち、図8に示すように、スライドドア20の全閉時においては、スライドドア20の開閉途中(半開時、図7の状態)に比べて、車体側取付部1とドア側取付部2との間の外装材3(及びフラットケーブル)が張った状態となり、当該外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状となる。これにより、外装材3(及びフラットケーブル)をドアトリム12によって効率的に覆うことができ、且つドアトリム12の内側の占有空間を最小限とすることが可能となる。
【0058】
一方、図9に示すように、スライドドア20の全開時においても、スライドドア20の開閉途中(半開時、図7の状態)に比べて、車体側取付部1とドア側取付部2との間の外装材3(及びフラットケーブル)が張った状態となり、当該外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状となる。このように、外装材3(及びフラットケーブル)が略直線状に配索されるため、大きく膨らむ軌跡にならない。従って、乗員が乗降する際の足元空間を確保できるので、図10に示すように乗員が乗降する軌跡を外装材3(及びフラットケーブル)で邪魔することがない。これにより、乗員が乗降時に足を引っ掛ける等の危険を低減することができる。
【0059】
以上で説明したように、本実施形態のスライドドア用給電装置30は、フラットケーブル4と、車体19側においてフラットケーブル4を支持する車体側取付部1と、スライドドア20側においてフラットケーブル4を支持するドア側取付部2と、を備える。車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角A1を有するように支持する。ドア側取付部2は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角A2を有するように支持する。そして、車体側取付部1及びドア側取付部2は、フラットケーブル4の厚み方向が前記水平面に略平行となるように、当該フラットケーブル4を支持する。
【0060】
即ち、フラットケーブル4は曲がり易さに異方性があるため、変形させた時は所定の方向に曲がり易い。従って、車体19側とスライドドア20側をフラットケーブル4で接続することにより、スライドドア20をスライドさせたときのフラットケーブル4の変形を3次元的に制御することが可能となる。この結果、従来技術が備えていたケーブルの変形を規制するためのガイド等を省略することが可能となり、スライドドア用給電装置を小型化、軽量化することができる。
【0061】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30は、以下のように構成されている。即ち、第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2は、車体側取付部1とドア側取付部2との間で、フラットケーブル4の少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されている。
【0062】
これにより、スライドドア20の開閉時において、フラットケーブル4がスライドドア20やドアトリム12に干渉してしまうことを防止できる。
【0063】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、フラットケーブル4は、スライドドア20が半開のときに比べて、当該スライドドア20が全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されている。
【0064】
即ち、スライドドア20の全閉時においては、フラットケーブル4の垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブル4をドアトリム12によって効率的に覆うことができる。これにより、スライドドア20の全閉時において、フラットケーブル4が露出してしまうことがなく、見た目の悪化を防止できる。また、スライドドア20の全開時においても、フラットケーブル4の垂れ下がった部分が張って略直線状となるので、当該フラットケーブル4の軌跡が大きく膨らまない。これにより、乗員が乗降する際の足元空間を確保し、足を引っ掛けてしまう可能性を低減することができる。
【0065】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、第1傾斜角A1は0°以上60°以下であり、第2傾斜角A2は30°以上90°以下であることが好ましい。
【0066】
第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2をこの範囲とすることにより、フラットケーブル4を適切な垂れ下がり姿勢とすることができる。
【0067】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30は、以下のように構成されている。即ち、車体側取付部1は、フラットケーブル4を、当該フラットケーブル4の長手方向が車体19の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角A3を有するように支持する。第3傾斜角A3は、車体側取付部1からのフラットケーブル4の引き出し方向が、車体19の斜め後方に向くように決定されている。
【0068】
これにより、スライドドア20を開閉する際のフラットケーブル4の急激な軌跡変化を抑制し、当該フラットケーブル4の軌跡を安定させることができる。
【0069】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、第3傾斜角A3は0°以上60°以下であることが好ましい。
【0070】
第3傾斜角A3をこの範囲とすることにより、スライドドアを開閉する際のフラットケーブルの軌跡を安定させることができる。
【0071】
また本実施形態のスライドドア用給電装置30において、フラットケーブル4は、屈曲性に優れた外装材3によって保護されている。
【0072】
これにより、フラットケーブル4を保護することができるとともに、スライドドア20の半開時又は全開時のフラットケーブル4の見栄えも向上させることができる。
【0073】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0074】
上記実施形態では、車体側取付部1及びドア側取付部2の間のフラットケーブル4が垂れ下がった姿勢となるように第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2を決定しているが、これに限らない。本発明の要点は、フラットケーブル4の曲がり易さの異方性を利用して当該フラットケーブル4の変形を制御することにあり、必ずしもフラットケーブル4が垂れ下がり姿勢となることを要しない。第1傾斜角A1及び第2傾斜角A2を適宜設定することにより、フラットケーブル4を、垂れ下がり姿勢以外にも所望の姿勢に変形させることができる。
【0075】
上記説明ではフラットケーブル4の変形をガイドするためのガイド部材を省略できるとして説明したが、必要であれば、フラットケーブル4の変形をガイドするための部材を適宜配置しても良い。
【0076】
車体側取付部1及びドア側取付部2において、外装材3を結束バンド7aで固定する構成としたが、これに代えて、2個の樹脂部品によって外装材3を挟み込んで固定するように構成しても良い。
【0077】
外装材3はゴム製のチューブとして説明したが、例えば図11のように、蛇腹形状のチューブとすることで構造的に屈曲性を確保した外装材3としても良い。
【0078】
なお、外装材3は省略することもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 車体側取付部
2 ドア側取付部
3 外装材
4 フラットケーブル
19 車体
20 スライドドア
30 スライドドア用給電装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側とスライドドア側とを電気的に接続するスライドドア用給電装置であって、
フラットケーブルと、
前記車体側において前記フラットケーブルを支持する車体側取付部と、
前記スライドドア側において前記フラットケーブルを支持するドア側取付部と、
を備え、
前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持し、
前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持し、
前記車体側取付部及び前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルの厚み方向が前記水平面に略平行となるように、前記フラットケーブルを支持することを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角は、前記車体側取付部と前記ドア側取付部との間で、前記フラットケーブルの少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記フラットケーブルは、前記スライドドアが半開のときに比べて、前記スライドドアが全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第1傾斜角は0°以上60°以下であり、前記第2傾斜角は30°以上90°以下であることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、前記フラットケーブルの長手方向が前記車体の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角を有するように支持し、
前記第3傾斜角は、前記車体側取付部からの前記フラットケーブルの引き出し方向が、前記車体の斜め後方に向くように決定されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第3傾斜角は0°以上60°以下であることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記フラットケーブルは、屈曲性に優れた外装材によって保護されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項1】
車体側とスライドドア側とを電気的に接続するスライドドア用給電装置であって、
フラットケーブルと、
前記車体側において前記フラットケーブルを支持する車体側取付部と、
前記スライドドア側において前記フラットケーブルを支持するドア側取付部と、
を備え、
前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第1傾斜角を有するように支持し、
前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルを、当該フラットケーブルの長手方向が水平面に対して所定の第2傾斜角を有するように支持し、
前記車体側取付部及び前記ドア側取付部は、前記フラットケーブルの厚み方向が前記水平面に略平行となるように、前記フラットケーブルを支持することを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角は、前記車体側取付部と前記ドア側取付部との間で、前記フラットケーブルの少なくとも一部が鉛直方向下向きに垂れ下がるよう決定されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記フラットケーブルは、前記スライドドアが半開のときに比べて、前記スライドドアが全開及び全閉のときの方が張った状態になるように配索されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第1傾斜角は0°以上60°以下であり、前記第2傾斜角は30°以上90°以下であることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記車体側取付部は、前記フラットケーブルを、前記フラットケーブルの長手方向が前記車体の左右方向に対して平面視で所定の第3傾斜角を有するように支持し、
前記第3傾斜角は、前記車体側取付部からの前記フラットケーブルの引き出し方向が、前記車体の斜め後方に向くように決定されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項6】
請求項5に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記第3傾斜角は0°以上60°以下であることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載のスライドドア用給電装置であって、
前記フラットケーブルは、屈曲性に優れた外装材によって保護されていることを特徴とするスライドドア用給電装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−96682(P2012−96682A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246616(P2010−246616)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
[ Back to top ]