スライドファスナーの逆開き開離嵌挿具
【課題】蝶棒または箱棒の表面に逆開き用スライダーを確実に停止させる機構、また該スライダーを無闇に内方へ移動するのを阻止した逆開き開離嵌挿具を提供する。
【解決手段】逆開き開離嵌挿具は、逆開き用スライダー1、箱棒3、蝶棒4とから形成され、ファスナーチエン5に挿通した逆開き用スライダー1に設けた停止爪35が、ファスナーチエン5の端部においては常時、停止爪35が開閉方向における端面と衝突する状態で当接できる当接部13を蝶棒4または箱棒3に設け、この当接部13は停止爪35と係止し停止できる形態に形成して、逆開き用スライダー1が無闇にファスナーチエン5の内側へ自動的に移動するのを未然に阻止し、品質のよい逆開き開離嵌挿具である。
【解決手段】逆開き開離嵌挿具は、逆開き用スライダー1、箱棒3、蝶棒4とから形成され、ファスナーチエン5に挿通した逆開き用スライダー1に設けた停止爪35が、ファスナーチエン5の端部においては常時、停止爪35が開閉方向における端面と衝突する状態で当接できる当接部13を蝶棒4または箱棒3に設け、この当接部13は停止爪35と係止し停止できる形態に形成して、逆開き用スライダー1が無闇にファスナーチエン5の内側へ自動的に移動するのを未然に阻止し、品質のよい逆開き開離嵌挿具である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドファスナーにおける逆開き開離嵌挿具であり、逆開き用スライダー、箱棒、蝶棒とから形成された逆開きタイプの開離嵌挿具の箱棒と蝶棒に改良を加え、円滑な開離嵌挿操作が行える逆開き開離嵌挿具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーは、衣服や鞄の開口部分の開閉具として用いられることはもちろんのこと、単位サイズに分割されたカーペットや人工芝の連結具としても用いられている。スライダファスナーは、ファスナーチエンの長さ方向の一端側から他端側へ向けて開放または閉鎖することができるタイプが一般的であるが、このタイプとは異なり、ファスナーチエンの長さ方向の両端側から開放または閉鎖することができるタイプが存在する。このタイプのフスライドファスナーには、ファスナーチエンに2つのスライダー、すなわち開き用スライダーと逆開き用スライダーとが配され、ファスナーチエンの一端に箱棒と蝶棒とを取り付けて、逆開き用スライダー、箱棒、蝶棒とから構成された逆開き開離嵌挿具が装着されている。
【0003】
従来の逆開き開離嵌挿具として、図16に示すものが知られている。箱棒の側面に凹陥部を設け、この側面と対向する蝶棒の側面に小片を突設し、箱棒と蝶棒とが逆開き用スライダー内に挿入されたときに、小片が凹陥部に挿入可能に形成されている。また、蝶棒の先端から基端側に向けて上り傾斜の斜面を形成し、蝶棒を逆開き用スライダーに差し込んだとき、蝶棒の斜面が逆開き用スライダーに装備した停止爪と接し、蝶棒の移動とともに停止爪を押し上げて、停止爪を蝶棒の上面に乗り上がらせることができるように形成している。また、斜面よりも蝶棒の基端側、すなわちファスナーエレメントに隣接する位置に、蝶棒の上面に押し上げられた停止爪が嵌入することができる凹部を設け、蝶棒が逆開き用スライダー内に挿入されている状態において、停止爪が凹部内に保持されている。さらに、箱棒の基端に開き用スライダーの停止爪が箱棒の上面に乗り上がるための斜面が形成されている。
【特許文献1】特許第3621040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述した逆開き開離嵌挿具を装着したスライドファスナーは各種分野の物品に装着され、従来の使用態様とは異なる新たな使用態様で装着されることが行われてきている。従来の使用態様では、スライドファスナーが物品に取り付けられた際、逆開き開離嵌挿具は物品の下方側に配置されていたが、新たな使用態様では、例えばスキー選手が着用するオーバーパンツにおいて、逆開き開離嵌挿具が物品の上方側に配置された。
【0005】
図16に示すスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、蝶棒が逆開き用スライダーに挿入されたとき、蝶棒の上面に形成した凹部に逆開き用スライダーの停止爪を嵌入して保持するものの、逆開き開離嵌挿具を物品の上方側に配置したとき逆開き用スライダーが使用中に揺動し、自重により物品の下方側、すなわち箱棒と蝶棒とから離れる方向へ勝手に移動しようとしたとき、蝶棒または箱棒は逆開き用スライダーの移動を停止させるような機能は持ち合わせてなく、ファスナーエレメントが逆開き用スライダーを人為的に操作することなく自然に分離されてしまう問題が生じた。
【0006】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、逆開き開離嵌挿具の蝶棒または箱棒に逆開き用スライダーの停止爪が当接する当接部を設けることによって、たとえ逆開き開離嵌挿具を物品の上方側に配置しても、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側へ無闇に移動することを未然に阻止できるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが主たる目的である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、蝶棒において、停止爪と当接部との当接が確実に行われるようにするとともに、蝶棒の円滑な嵌挿操作を行うことができるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、箱棒において、停止爪と当接部との当接が確実に行われるようにすることが目的である。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、蝶棒が逆開き用スライダー内へ挿入される際、蝶棒の当接部の移動経路において箱棒が障害物となることがなく、蝶棒の挿入操作を円滑に行えるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、当接部が停止爪と接触する部分の面積を広く確保し、確実に逆開き用スライダーを停止させることができるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、逆開き開離嵌挿具が、左右一対のファスナーストリンガー6,6における一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とが内部に挿入できる逆開き用スライダー1とから構成され、蝶棒4または箱棒3に逆開き用スライダー1に設置した停止爪35と対面したとき、この停止爪35と当接することができる当接部13を設け、当接部13と停止爪35とが当接したときに、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側への移動することを阻止したスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を主な構成とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことができる切欠部16を形成したスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、箱棒3は、蝶棒4と対向する側面に、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことができる切欠部16を形成し、切欠部16を構成する周壁に当接部13を設けたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、箱棒3は、蝶棒4と対向する側面から突出する挿入片22,23を有し、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面に箱棒の挿入片22,23を収容することができる収容部18,19と、箱棒3へ向けて突出する当接部13とを有し、当接部13と挿入片22,23とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向にずれた位置に配置されたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13は蝶棒4の基端側すなわちファスナーエレメント7に隣接する側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成されたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【発明の効果】
【0016】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、左右一対のファスナーストリンガーにおける一方のファスナーストリンガーのファスナーエレメントの長さ方向の一端に取り付けられた箱棒と、他方のファスナーストリンガーのファスナーエレメントの長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒と、箱棒と蝶棒とが内部に挿入可能な逆開き用スライダーとから構成された逆開き開離嵌挿具において、蝶棒または箱棒に逆開き用スライダーに設置した停止爪と対面し、当接することが可能な当接部を設け、当接部と停止爪とが当接したときに、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側への移動することを阻止したことによって、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側へ向けて勝手に移動しようとしても、当接部と停止爪とが当接することで移動が停止され、逆開き用スライダーが人為的操作なしでファスナーエレメントを左右に分離させてしまうことを防止できる効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、蝶棒は、箱棒と対向する側面から突出する当接部を設け、当接部の基部から蝶棒の先端にかけて、逆開き用スライダーの停止爪が入り込むことが可能な切欠部を形成したことによって、逆開き用スライダーの停止爪を蝶棒の当接部に対して確実に当接させ、そのうえ蝶棒を逆開き用スライダー内へ蝶棒を挿入する際に、蝶棒の先端と停止爪との衝突を回避できる効果がある。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、箱棒は、蝶棒と対向する側面に、逆開き用スライダーの停止爪が入り込むことが可能な切欠部を形成し、切欠部を構成する周壁に当接部を設けたことによって、逆開き用スライダーの停止爪を箱棒の当接部に対して確実に当接させることができる効果がある。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、箱棒は、蝶棒と対向する側面から突出する挿入片を有し、蝶棒は、箱棒と対向する側面に箱棒の挿入片を収容可能な収容部と、箱棒へ向けて突出する当接部とを有し、当接部と挿入片とが箱棒と蝶棒の表裏方向にずれた位置に配置したことによって、蝶棒が逆開き用スライダー内へ挿入される際に、蝶棒の当接部と箱棒の挿入片とが衝突し合うことなく、蝶棒を逆開き用スライダー内へ円滑に挿入できる効果がある。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、蝶棒は、箱棒と対向する側面から突出する当接部を設け、当接部は蝶棒の基端側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成したことによって、当接部における停止爪と接触する部分の面積を広くなり、当接部と停止爪とが広い面積で接触し、逆開き用スライダーの移動を確実に停止させる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明におけるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、図1に示すように、ファスナーチエン5の長さ方向の一端部に取り付けられた箱棒3と蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とを内部に挿入可能な逆開き用スライダー1とから構成される。ファスナーチエン5は、左右一対のファスナーストリンガー6,6を有し、各ファスナーストリンガー6,6は、ファスナーテープ8と、ファスナーテープ8の一側縁に沿って取り付けられたファスナーエレメント7と、一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の上端に隣接して取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の上端に隣接して取り付けられた蝶棒4と、各ファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7の下端に隣接して取り付けられた止め具14,14と、ファスナーエレメント7,7に沿って摺動し、ファスナーエレメント7,7を噛合または分離可能な二つのスライダー1,2とを有している。
【0022】
箱棒3と蝶棒4の取り付けは、まず、ファスナーテープ8からファスナーエレメント7を除去したスペース部11を形成し、このスペース部11に樹脂製フィルムを貼り付けて補強部10を形成した後、この補強部10に樹脂製の箱棒3と蝶棒4とを射出成形して固定する。
【0023】
二つのスライダー1,2は、前後に反対方向を向いて配置されており、各スライダー1,2とも内部にファスナーエレメント7が挿通され、このファスナーエレメント7と係合可能な停止爪35,35’を有している。一方のスライダーは、箱棒3と蝶棒4とで逆開き開離嵌挿具を構成する逆開き用スライダー1である。逆開き用スライダー1は、ファスナーチエン5の上端部側から内方側へ向けて移動した時、すなわち、スライダー1が箱棒3と蝶棒4とに接触した状態から離れる方向へ移動した時に、噛合状態のファスナーエレメント7を左右に分離することができる。また、他方のスライダーは、止め具14と当接可能な開き用スライダー2である。開き用スライダー2は、ファスナーチエン5の内方側から下端部側へ向けて移動した時、すなわち、スライダー2が止め具14へ接近する方向へ移動した時に、分離状態のファスナーエレメント7を噛合することができる。
【0024】
箱棒3は、図4,5に示すように、ファスナーテープ8の内側すなわち左右のファスナーテープ8が対向する側に配置された内側面と、この内側面とは反対側で、ファスナーテープ8の外側に配置された外側面とを有し、箱棒3の先端は、L字状に側方へ突出し、詳述すると内側面からファスナーテープ8の内方側、すなわち、ファスナーエレメント7を取り付けた側の縁部とは反対側の縁部へ向けて突出し、逆開き用スライダー1の上翼板28に設けたフランジ31に当接して、逆開き用スライダー1の移動を停止させ、スライダー1が箱棒3から抜け取れることを防ぐ鉤止部21を設けている。
【0025】
また、箱棒3の外側面にはファスナーテープ8の外方側、すなわち蝶棒4側へ向けて突出する挿入片22,23が形成され、この挿入片22,23は蝶棒に形成した収容部18,19に挿入して収容されることができる。箱棒3の基端、すなわちファスナーエレメント7と隣接する側の端部には、箱棒3の裏面寄りの外側面から外方へ向けて突出し、蝶棒4に設置した第1収容部19に挿入することができる第1挿入片22を設けている。さらに、箱棒3には、第1挿入片22よりも箱棒3の先端寄りで、かつ第1挿入片22よりも箱棒3の表面寄りの位置に、箱棒3の外側面から外方へ向けて突出し、蝶棒4に設置した第2収容部18に挿入することができる第2挿入片23を設けている。
【0026】
蝶棒4は、図2,3に示すように、ファスナーテープ8の内側すなわち左右のファスナーテープ8が対向する側に配置された内側面と、この内側面とは反対側で、ファスナーテープ8の外側に配置された外側面とを有し、その先端がファスナーテープ8の内方側へ向けてやや反り返る形に形成して、逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに挿入し易いようにしている。また、蝶棒4は、その外側面すなわち箱棒3の外側面と対向する面の先端寄りに、箱棒4側へ向けて突出し、逆開き用スライダー1に設けた停止爪35の前後方向の端面に当接可能な当接部13を有している。さらに、蝶棒4は、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、蝶棒4の表面と外側面との境界部分を段差状に切り欠き、蝶棒4が逆開き用スライダー1に挿入された時に、蝶棒4と停止爪35とが接触し合わないようにするための切欠部16を有している。
【0027】
当接部13は、蝶棒4の長さ方向の中間位置に配置されており、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄く、蝶棒4の表面と連続する表面と、蝶棒4の外側面と連結する側端面と、この側端面と交差する方向に延びる先端面とを有した板状体であり、蝶棒4の基端側すなわちファスナーエレメント7に隣接する側から先端側に向けて漸次幅寸法、すなわち突出量を増加させた略三角形状を呈している。これにより、当接部13は、その先端が基端よりも幅広く形成されることとなり、先端面が停止爪35と当接した時に、停止爪35との接触面積を広く確保することができる。
【0028】
蝶棒4の外側面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3に向けて突出する支持部15,17を有している。また、支持部15,17の表面側または裏面側に箱棒3の挿入片22,23を収容可能な収容部18,19を有している。蝶棒4の基端、すなわちファスナーエレメント7と隣接する側の端部には、蝶棒4の外側面から外方へ向けて突出する第1支持部15を設け、この第1支持部15の裏面側に凹状の第1収容部19を設けて、箱棒3の第1挿入片22が挿入される。また、この第1支持部15よりも蝶棒4の先端寄りに、蝶棒4の外側面から外方へ向けて突出する第2支持部17を設け、この第2支持部17の表側に凹状の第2収容部18を設けて、箱棒3の第2挿入片23が挿入される。これにより、第1挿入片22と第1支持部15とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向で重なり合い、また第2挿入片23と第2支持部17とが表裏方向で重なり合い、箱棒3と蝶棒4とに表裏方向の突き上げ力が加わっても、箱棒3と蝶棒4の位置が表裏方向に変位することがなく位置決めされる。
【0029】
このスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、図6に示すように、箱棒3が挿通された逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに対し、蝶棒4を開き用スライダー2から挿入し、次いで逆開き用スライダー1に差し込む。この差し込み操作は、図9に示すように、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に挿入して収容され、第2挿入片23と蝶棒4の第1支持部15とが当接し、第2挿入片22が第1収容部19に挿入して収容されて完了する。次に、開き用スライダー2をファスナーチエン5の内方側へ向けて、ファスナーエレメント7に沿って摺動させることにより、図10に示すように、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が噛合し、ファスナーチエン5が閉鎖された状態となる。
【0030】
ファスナーチエン5を図10に示した閉鎖状態としたとき、逆開き用スライダー1が人為的な操作無しにファスナーチエン5の内方側へ向けて移動しようとしても、図11に示すように、逆開き用スライダー1の停止爪35が蝶棒4の当接部13に当接して、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することはできない。よって、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が逆開き用スライダー1により分離されることがない。
【0031】
閉鎖されたファスナーチエン5を開放状態にするには、まず、開き用スライダー2を逆開き用スライダー1へ向けて移動して、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7を分離させ、次いで、図6に示すように、蝶棒4を逆開き用スライダー1および開き用スライダー2から抜き取ればよい。
【実施例1】
【0032】
図1〜12に示した実施例1のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、蝶棒4に逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することを規制する機構を備えているところに特徴がある。ファスナーチエン5は、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂製モノフィラメントをコイル状に捲回し、またはジグザグ状に屈曲して、ファスナーテープ8の長さ方向に連続する線条ファスナーエレメント7を形成し、このファスナーエレメント7の内部に芯紐12を挿通し、縫糸9によってファスナーテープ8の長さ方向の一側縁部に沿って縫着する。あるいはポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、ファスナーテープ8の長さ方向の一側縁部に沿って形成した膨大部に、ファスナーテープ8の長さ方向に所定の間隔を空けて、射出成形手段によって単体のファスナーエレメントを成形してファスナーチエン5を形成する。
【0033】
ファスナーチエン5における左右一対のファスナーストリンガー6,6に一定間隔でファスナーエレメント7をファスナーテープ8から除去してスペース部11を形成する。スペース部11はファスナーストリンガー6の長さ方向の両端に形成され、その一端側に位置するスペース部11に樹脂製フィルム、例えば表面に熱可塑性エラストマーフィルム、裏面にホットメルト型接着剤から形成した補強テープを超音波溶着して補強部10を形成する。左右一方のファスナーストリンガー6,6における補強部10に箱棒3を取り付け、他方のファスナーストリンガー6における補強部10に蝶棒4を取り付ける。箱棒3と蝶棒4とはポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形手段によって成形され、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接して固定する。また、各ファスナーストリンガー6,6の他端のスペース部11には止め具14が取り付けられる。止め具14は、箱棒3、蝶棒4と同じ熱可塑性樹脂を用いて射出成形手段によって成形され、ファスナーエレメント7,7の長さ方向の他端に隣接して固定されている。
【0034】
箱棒3、蝶棒4、止め具14を成形したファスナーチエン5には、図1に示すように、ファスナーエレメント7に対する摺動方向の前端側が箱棒3および蝶棒4側に向くように配置された逆開き用スライダー1と、この逆開き用スライダー1とは反対方向、すなわち摺動方向の前端側が止め具14側に向く開き用スライダー2とをファスナーエレメント7に挿通している。各スライダー1、2はアルミニウム合金、亜鉛合金などの金属を用いてダイカスト成形手段によって成形される。逆開き用スライダー1と開き用スライダー2は、箱棒3を取り付けた側のファスナーストリンガー6に対し脱落不能に装着されていおり、ファスナーエレメント7の一端に取り付けた箱棒3と、他端に取り付けた止め具14とで、両スライダー1,2がファスナーエレメント7から抜け取れることを阻止している。
【0035】
なお、逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とは同一形態、例えば図15に示すように、上下に間隔を空けて平行に配置された上翼板28と下翼板29と、各翼板28、29の一端を連結した案内柱33と、上翼板28と下翼板29の少なくとも一方の左右両側縁から他方へ向けて突出するフランジ31とを有したスライダー胴体30と、上翼板28の上面に配置され、上翼板28と下翼板29との間に形成されたエレメント案内通路32に対し、上翼板28に形成された爪孔34から出没可能な停止爪35と、停止爪35の上面に接し、停止爪35をエレメント案内通路32内へ突出する方向へ弾性的に付勢する板バネ37と、上翼板28の上面から起立する取付柱36に固定され、停止爪35と板バネ37とを内部に収納するカバー38と、スライダー胴体30と停止爪35との間に配された軸部41を有し、軸部41を上動させることで停止爪35を持ち上げて、停止爪35をエレメント案内通路32から抜脱させることが可能な引手40とから構成されている。各スライダー1、2は、ファスナーチエン5に対して、スライダー1,2の前後の向きが逆方向になるように配され、ファスナーチエン5の端部から内方へ向けて移動したときにファスナーエレメント7を分離できるように形成する。
【0036】
逆開き開離嵌挿具としての箱棒3、蝶棒4について説明する。箱棒3は、図4,5に示すように、正面から見て先端が側方へ突出し全体が略L字形状の棒状体で、ファスナーストリンガー6の長さ方向の一端において、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接する形で、ファスナーテープ8の一側縁に沿って固定されている。ファスナーテープ8における箱棒3が固定されるテープ部分には、補強テープを貼り付けた補強部10が形成されている。補強部10は、逆開き開離嵌挿具を操作する際に、箱棒の近傍のテープ部分を指で摘んで操作し易くするため、テープ部分が妄りに変形しないように補強している。
【0037】
箱棒3は、表面と、裏面と、箱棒3の表裏方向に直交する左右方向に、ファスナーテープ8の内方側に位置する内側面と、ファスナーテープ8の外方側に位置する外側面とを有している。箱棒3の先端には、内側面からファスナーテープ8の内方側、すなわち外側面がある側とは反対側へ向けて突出する鉤止部21を設けてL字状を呈するように形成し、この鉤止部21を含んだ箱棒3の先端の左右方向の幅寸法は、箱棒3の基端の幅寸法に比べて幅広く形成されている。これにより、箱棒3の先端が逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に入り込もうとしたとき、図6に示すように、鉤止部21が逆開き用スライダー1の上翼板28に形成したフランジ31の先端に当接し、箱棒3の外側面が逆開き用スライダー1の案内柱33の側面に当接して、箱棒3の先端がエレメント案内通路32内を通過することができず、逆開き用スライダー1が箱棒3から抜け取れるのを防ぐことができる。
【0038】
箱棒3の基端は、箱棒3の先端に対して箱棒3の長さ方向の反対側に位置し、ファスナーエレメント7の長さ方向一端に隣接している。箱棒3の基端には、箱棒3の外側面からファスナーテープ8の外方側、すなわち内側面がある側とは反対側へ向けて突出する第1挿入片22が形成されている。この第1挿入片22は、箱棒3の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、箱棒3の裏面と連続する裏面を有し、蝶棒4に設けた凹状の第1収容部19に挿入できる。また、第1挿入片22よりも箱棒3の先端寄りに、箱棒3の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第2挿入片23を形成している。この第2挿入片23は、箱棒3の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、箱棒3の表裏方向の中央位置に配置され、蝶棒4に設けた凹状の第2収容部18に挿入できる。各挿入片22,23が各収容部19,18に挿入されることにより、箱棒3と蝶棒4とが逆開き用スライダー1内に差し込まれた際に、箱棒3と蝶棒4の位置がずれないように安定して保持することができる。
【0039】
蝶棒4は、図2,3に示すように、ファスナーストリンガー6の長さ方向の一端において、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接する形で、ファスナーテープ8の一側縁に沿って固定されている。蝶棒4は、その先端がファスナーテープ8の内方側、すなわちファスナーテープ8におけるファスナーエレメント7を取り付けた縁部とは反対側の縁部側に向けて弧状に湾曲しており、正面から見てやや反り返った形状に形成されている。ファスナーテープ8における蝶棒4が固定されるテープ部分には、箱棒3の場合と同様に、補強テープを貼り付けた補強部10が形成されており、蝶棒の近傍のテープ部分が妄りに変形しないように補強している。
【0040】
蝶棒4は、表面と、裏面と、蝶棒4の表裏方向に直交する左右方向に、ファスナーテープ8の内方側に位置する内側面と、ファスナーテープ8の外方側に位置する外側面とを有している。蝶棒4の外側面すなわち箱棒3と対向する面には、蝶棒4の長さ方向の中央位置から先端寄りにかけて、ファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する当接部13を形成している。この当接部13は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、正面から見て略三角形状を呈しており、蝶棒4の長さ方向、すなわち蝶棒4の基端側から先端側に向けて延びる側端面と、この側端面と交差し、蝶棒4の長さ方向と直交する左右方向に向けて延びる先端面とを有している。この当接部13の先端面が、図15に示すように、逆開き用スライダー1の上翼板28からエレメント案内通路32内へ突出する停止爪35において、スライダー1の前後方向における後方側の端面と当接し、逆開き用スライダー1の移動を停止させることができる。
【0041】
また、当接部13は蝶棒4の表裏方向において表面側に寄った位置に配置されている。この当接部13と、箱棒3の第1挿入片22と第2挿入片23とは、箱棒3と蝶棒4の表裏方向において突出位置が表裏にずれていて、当接部13が表面側に位置し、第1挿入片22が裏面側に位置し、第2挿入片23が当接部13と第1挿入片22の間に位置している。これにより、蝶棒4が逆開き用スライダー1内に差し込まれ、蝶棒4と箱棒3とが接近したときに、箱棒3の第1挿入片22および第2挿入片23と接触し合わないようにしている。
【0042】
また、蝶棒4には、当接部13の基部すなわち当接部13の先端面と蝶棒4の外側面とが交差した隅角部分から蝶棒4の先端にかけて、蝶棒4の表面と外側面とが交差する部分を段差状に切り欠いた切欠部16が形成されている。停止爪35はエレメント案内通路32内に突出しており、この突出位置がエレメント案内通路32内に挿入される蝶棒4の挿入経路に位置している。このことから、切欠部16は、蝶棒4がエレメント案内通路32内に挿入するときに、その挿入途中において停止爪35が入り込み、蝶棒4と停止爪35との接触を回避するための空間を形成している。
【0043】
蝶棒4の基端は、蝶棒4の先端に対して蝶棒4の長さ方向の反対側に位置し、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端部に隣接している。蝶棒4の基端には、蝶棒4の外側面からファスナーテープ8の外方側、すなわち内側面がある側とは反対側へ向けて突出する第1支持部15が形成されている。この第1支持部15は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、蝶棒4の表面と連続する表面を有している。第1支持部15の裏面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3の外側面へ向けて開口する凹状の第1収容部19が形成されており、箱棒3の第1挿入片22が蝶棒4の第1収容部19に挿入されたときに、第1支持部15と第1挿入片22とが箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合うことができる。また、第1支持部15の先端には、蝶棒4に隣接するファスナーエレメント7側へ向けて突出する係合突起20を形成している。この係合突起20は、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が噛合したときに、箱棒3を取り付けた側のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7と係合することができる。
【0044】
また、蝶棒4には、第1支持部15よりも蝶棒4の先端側に、蝶棒4の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第2支持部17が形成されている。この第2支持部17は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、蝶棒4の表裏方向における裏面寄りの位置に配置されている。第2支持部17の上面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3の外側面へ向けて開口する凹状の第2収容部18が形成されており、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に挿入されたときに、第2支持部17と第2挿入片23とが箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合うことができる。また第2支持部17は、その先端から蝶棒4の外側面に向けて延び、蝶棒4の先端側へ向けて下り傾斜する傾斜面を有している。これにより、蝶棒4を開き用スライダー2へ差し込む際、第2支持部17が開き用スライダー2の案内柱33と当接しても、第2支持部17の傾斜面が案内柱33の側面を滑りながら移動し、蝶棒4を開き用スライダー2内へ円滑に差し込むことができる。
【0045】
このスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具の作用を説明すると、図6に示すように、箱棒3に挿通された逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに対し、蝶棒4を開き用スライダー2の前端側から、同スライダー2のエレメント案内通路32に挿入し、次に逆開き用スライダー1の後端側から、同スライダー1のエレメント案内通路32に挿入する。逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32に挿入された蝶棒4は、図7,8に示すように、蝶棒4の先端に形成した切欠部16にスライダー1の停止爪35の先端を入り込ませながら逆開き用スライダー1の前端側ヘ向けて移動する。この後、図9に示すように、箱棒3の第2挿入片23と蝶棒4の第1支持部15とが当接し、蝶棒4の差し込み操作は完了する。なお、このとき、開き用スライダー2に設けた停止爪35’が、箱棒3と、箱棒3に隣接するファスナーエレメント7との間にて、エレメント案内通路32内へ突出している。これにより、開き用スライダー2が逆開き用スライダー1から離れる方向へ移動しようとしても、停止爪35’がファスナーエレメント7と当接して、移動が停止される。
【0046】
次いで、開き用スライダー2の引手40を操作することで、同スライダー2の停止爪35’がエレメント案内通路32から抜脱するように持ち上げられ、この開き用スライダー2をファスナーチエン5の内方側、すなわち箱棒3、蝶棒4、逆開き用スライダー1からなる逆開き開離嵌挿具から離れる方向へ向けて移動させる。開き用スライダー2はファスナーエレメント7,7に沿って摺動し、図10に示すように、左右のファスナーストリンガー6,6の各ファスナーエレメント7,7を噛合させ、ファスナーチエン5を閉鎖させる。
【0047】
このとき、蝶棒4の第1支持部15が箱棒3の第1挿入片22の表面側に位置し、また箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2支持部17の表面側に位置して、箱棒3の2つの挿入片と蝶棒4の2つの支持部とが表裏の位置関係を変えて重なり合っているので、箱棒3と蝶棒4とに表裏いずれの方向から突き上げ力が加わっても、箱棒3と蝶棒4の姿勢が変位することない。よって、突き上げ力により箱棒3と蝶棒4との間に大きな隙間が生じ、箱棒3と蝶棒4とに隣接するファスナーエレメント7に対して噛合状態の分離が誘発されることがない。
【0048】
また、蝶棒4の第1支持部15に形成した係合突起20は、箱棒3に隣接するファスナーエレメント7と係合し、箱棒3または蝶棒4とファスナーエレメント7との間の部分に表裏方向の突き上げ力が加わっても、この部分の姿勢が変位することがない。よって、突き上げ力により箱棒3または蝶棒4とファスナーエレメント7との間の部分に大きな隙間が生じ、この部分からファスナーエレメント7に対して噛合状態の分離が誘発されることがない。
【0049】
開き用スライダー2によってファスナーチエン5が閉鎖された後、図11に示すように、逆開き用スライダー1が仮想線で示した位置、すなわち逆開き用スライダー1のフランジ31の先端が箱棒3の鉤止部21と当接した状態から、人為的な操作を行うことなくファスナーチエン5の内方側へ移動、すなわちフランジ31の先端が箱棒3の鉤止部21から離間した場合、蝶棒4の当接部13が逆開き用スライダー1の停止爪35に当接するので、逆開き用スライダー1の移動を停止させることができる。
【0050】
閉鎖されたファスナーチエン5を左右のファスナーストリンガー6,6に分離させるには、開き用スライダー2をファスナーエレメント7に沿って開離嵌挿具に向けて摺動させ、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7を分離させる。次いで、開き用スライダー2を箱棒3と蝶棒4とに挿通させ、逆開き用スライダー1に接する位置まで移動させる。次に、図6に示すように、蝶棒4を逆開き用スライダー1と開き用スライダー2の各エレメント案内通路32,32から抜き取れば、蝶棒4側のファスナーストリンガー6と箱棒3側のファスナーストリンガー6とにそれぞれ分離させることができる。
【実施例2】
【0051】
図13,14に示した実施例2のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、箱棒3に逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することを規制する機構を備えているところに特徴がある。ファスナーチエン5の形態は前記実施例1と同一であり、ファスナーチエン5は、左右一対のファスナーストリンガー6,6におけるファスナーテープ8,8の長さ方向の一側縁に、内部に芯紐12を挿通したコイル状のファスナーエレメント7を縫糸9によって縫着している。各ファスナーストリンガー6,6の長さ方向の一端に配置したスペース部11に樹脂フィルムを貼り付けて補強部10を形成し、一方のファスナーストリンガー6の補強部10に熱可塑性樹脂製の箱棒3を成形し、他方のファスナーストリンガー6の補強部10に熱可塑性樹脂製の蝶棒4を成形する。
【0052】
箱棒3は、当接部13および切欠部16を設ける以外の構成は、実施例1の箱棒3の構成と同一であり、図13に示すように、先端が側方へ突出し全体が略L字形状を呈し、箱棒3の先端の内側面からファスナーテープ8の内方側へ向けて突出する鉤止部21と、ファスナーエレメント7に隣接する基端の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第1挿入片22と、この第1挿入片22よりも箱棒3の先端側に配置され、箱棒3の外側面から突出する第2挿入片23とを有している。鉤止部21は逆開き用スライダー1が箱棒3から脱落することを阻止し、第1挿入片22と第2挿入片23とは、蝶棒4に配した第1収容部19と第2収容部18とにそれぞれ挿入される。
【0053】
鉤止部21よりも箱棒3の基端側の位置には、箱棒3の表面と外側面とが交差する境界部分を段差状に切り欠いて切欠部16が形成されおり、逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に箱棒3が挿入されている際、逆開き用スライダー1の停止爪35が切欠部16に入り込んで、箱棒3と停止爪35とが接触し合わないようにしている。また、切欠部16は、その周壁が停止爪35と当接できるように当接部13として構成されている。切欠部16は、箱棒3を正面側から見たときに略三角形状を呈しており、切欠部16の周壁が箱棒3の左右方向に延びる横壁面と、箱棒3の長さ方向に延びる縦壁面とを有している。この横壁面と縦壁面とが、箱棒3の内方、すなわち箱棒3の外側面から内側面寄りに離れた位置にて交差して隅角部24を形成している。切欠部16の横壁面が逆開き用スライダー1の前後方向に向く面であり、停止爪35の前後方向の端面と当接する。
【0054】
蝶棒4は、切欠部16と当接部13とが形成されず、それ以外の構成は実施例1の蝶棒4の構成と同一であり、図14に示すように、先端がファスナーテープ8の内方側へ弧状に湾曲して、全体が反り返った形状を呈し、ファスナーエレメント7に隣接する基端の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第1支持部15と、この第1支持部15よりも蝶棒4の先端側に配置され、蝶棒4の外側面から突出する第2支持部17とを有している。また、第1支持部15の裏面側に凹状の第1収容部19を設け、第2支持部17の表面側に凹状の第2収容部18を設けている。さらに、第1支持部15の先端に、箱棒3側のファスナーエレメント7と係合する係合突起20を設けている。
【0055】
従って、箱棒3と蝶棒4とを逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に挿入した状態においては、箱棒3の第1挿入片22が蝶棒4に設けた第1収容部19に収容され、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に収容されている。また、第1挿入片22と第1支持部15と箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合い、第2挿入片23と第2支持部17とが表裏方向に重なり合っている。なお、箱棒3に当接部13を設ける場合、蝶棒4は逆開き用スライダー1の案内柱33を挟んで左側のエレメント案内通路32に挿入する左差しタイプとなる。一方、実施例1の場合は、蝶棒4が案内柱33を挟んで右側のエレメント案内通路32に挿入される右差しタイプとなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、衣服や鞄の開閉部分、カーペットや人工芝の連結部分などに取り付けられるファスナーチエンに装着され、逆開き用スライダーが人為的な操作なしに勝手に移動することを防止するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1に基づく逆開き開離嵌挿具の正面図である。
【図2】同上の蝶棒の斜視図である。
【図3】同上の蝶棒の正面図である。
【図4】同上の箱棒の斜視図である。
【図5】同上の箱棒の正面図である。
【図6】同上の開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込み開始時の断面図である。
【図7】同上の蝶棒が停止爪に接近した状態を示す要部断面図である。
【図8】同上の蝶棒が停止爪との接触を回避しながら移動する状態を示す要部断面図である。
【図9】同上の逆開き用スライダーおよび開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込み完了時の断面図である。
【図10】同上の開き用スライダーを摺動させた状態を示す断面図である。
【図11】同上の逆開き用スライダーが移動したとき、停止爪と当接部が当接した状態を示す要部断面図である。
【図12】同上の蝶棒の裏側を示す部分断面図である。
【図13】実施例2に基づく箱棒の斜視図である。
【図14】同上の逆開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込みを完了し、箱棒と停止爪が係止した状態を示す要部断面図である。
【図15】逆開き用スライダーおよび開き用スライダーに用いるスライダーの断面図である。
【図16】公知の逆開き開離嵌挿具の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 逆開き用スライダー
3 箱棒
4 蝶棒
5 ファスナーチエン
6 ファスナーストリンガー
7 ファスナーエレメント
13 当接部
16 切欠部
18 収容部(第2収容部)
19 収容部(第1収容部)
22 挿入片(第1挿入片)
23 挿入片(第2挿入片)
35 停止爪
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドファスナーにおける逆開き開離嵌挿具であり、逆開き用スライダー、箱棒、蝶棒とから形成された逆開きタイプの開離嵌挿具の箱棒と蝶棒に改良を加え、円滑な開離嵌挿操作が行える逆開き開離嵌挿具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スライドファスナーは、衣服や鞄の開口部分の開閉具として用いられることはもちろんのこと、単位サイズに分割されたカーペットや人工芝の連結具としても用いられている。スライダファスナーは、ファスナーチエンの長さ方向の一端側から他端側へ向けて開放または閉鎖することができるタイプが一般的であるが、このタイプとは異なり、ファスナーチエンの長さ方向の両端側から開放または閉鎖することができるタイプが存在する。このタイプのフスライドファスナーには、ファスナーチエンに2つのスライダー、すなわち開き用スライダーと逆開き用スライダーとが配され、ファスナーチエンの一端に箱棒と蝶棒とを取り付けて、逆開き用スライダー、箱棒、蝶棒とから構成された逆開き開離嵌挿具が装着されている。
【0003】
従来の逆開き開離嵌挿具として、図16に示すものが知られている。箱棒の側面に凹陥部を設け、この側面と対向する蝶棒の側面に小片を突設し、箱棒と蝶棒とが逆開き用スライダー内に挿入されたときに、小片が凹陥部に挿入可能に形成されている。また、蝶棒の先端から基端側に向けて上り傾斜の斜面を形成し、蝶棒を逆開き用スライダーに差し込んだとき、蝶棒の斜面が逆開き用スライダーに装備した停止爪と接し、蝶棒の移動とともに停止爪を押し上げて、停止爪を蝶棒の上面に乗り上がらせることができるように形成している。また、斜面よりも蝶棒の基端側、すなわちファスナーエレメントに隣接する位置に、蝶棒の上面に押し上げられた停止爪が嵌入することができる凹部を設け、蝶棒が逆開き用スライダー内に挿入されている状態において、停止爪が凹部内に保持されている。さらに、箱棒の基端に開き用スライダーの停止爪が箱棒の上面に乗り上がるための斜面が形成されている。
【特許文献1】特許第3621040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述した逆開き開離嵌挿具を装着したスライドファスナーは各種分野の物品に装着され、従来の使用態様とは異なる新たな使用態様で装着されることが行われてきている。従来の使用態様では、スライドファスナーが物品に取り付けられた際、逆開き開離嵌挿具は物品の下方側に配置されていたが、新たな使用態様では、例えばスキー選手が着用するオーバーパンツにおいて、逆開き開離嵌挿具が物品の上方側に配置された。
【0005】
図16に示すスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、蝶棒が逆開き用スライダーに挿入されたとき、蝶棒の上面に形成した凹部に逆開き用スライダーの停止爪を嵌入して保持するものの、逆開き開離嵌挿具を物品の上方側に配置したとき逆開き用スライダーが使用中に揺動し、自重により物品の下方側、すなわち箱棒と蝶棒とから離れる方向へ勝手に移動しようとしたとき、蝶棒または箱棒は逆開き用スライダーの移動を停止させるような機能は持ち合わせてなく、ファスナーエレメントが逆開き用スライダーを人為的に操作することなく自然に分離されてしまう問題が生じた。
【0006】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、この発明のうち請求項1記載の発明は、逆開き開離嵌挿具の蝶棒または箱棒に逆開き用スライダーの停止爪が当接する当接部を設けることによって、たとえ逆開き開離嵌挿具を物品の上方側に配置しても、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側へ無闇に移動することを未然に阻止できるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが主たる目的である。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、蝶棒において、停止爪と当接部との当接が確実に行われるようにするとともに、蝶棒の円滑な嵌挿操作を行うことができるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、箱棒において、停止爪と当接部との当接が確実に行われるようにすることが目的である。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、蝶棒が逆開き用スライダー内へ挿入される際、蝶棒の当接部の移動経路において箱棒が障害物となることがなく、蝶棒の挿入操作を円滑に行えるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、当接部が停止爪と接触する部分の面積を広く確保し、確実に逆開き用スライダーを停止させることができるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、逆開き開離嵌挿具が、左右一対のファスナーストリンガー6,6における一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とが内部に挿入できる逆開き用スライダー1とから構成され、蝶棒4または箱棒3に逆開き用スライダー1に設置した停止爪35と対面したとき、この停止爪35と当接することができる当接部13を設け、当接部13と停止爪35とが当接したときに、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側への移動することを阻止したスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具を主な構成とするものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことができる切欠部16を形成したスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、箱棒3は、蝶棒4と対向する側面に、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことができる切欠部16を形成し、切欠部16を構成する周壁に当接部13を設けたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、箱棒3は、蝶棒4と対向する側面から突出する挿入片22,23を有し、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面に箱棒の挿入片22,23を収容することができる収容部18,19と、箱棒3へ向けて突出する当接部13とを有し、当接部13と挿入片22,23とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向にずれた位置に配置されたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具である。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13は蝶棒4の基端側すなわちファスナーエレメント7に隣接する側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成されたスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【発明の効果】
【0016】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、左右一対のファスナーストリンガーにおける一方のファスナーストリンガーのファスナーエレメントの長さ方向の一端に取り付けられた箱棒と、他方のファスナーストリンガーのファスナーエレメントの長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒と、箱棒と蝶棒とが内部に挿入可能な逆開き用スライダーとから構成された逆開き開離嵌挿具において、蝶棒または箱棒に逆開き用スライダーに設置した停止爪と対面し、当接することが可能な当接部を設け、当接部と停止爪とが当接したときに、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側への移動することを阻止したことによって、逆開き用スライダーがファスナーチエンの内方側へ向けて勝手に移動しようとしても、当接部と停止爪とが当接することで移動が停止され、逆開き用スライダーが人為的操作なしでファスナーエレメントを左右に分離させてしまうことを防止できる効果がある。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、蝶棒は、箱棒と対向する側面から突出する当接部を設け、当接部の基部から蝶棒の先端にかけて、逆開き用スライダーの停止爪が入り込むことが可能な切欠部を形成したことによって、逆開き用スライダーの停止爪を蝶棒の当接部に対して確実に当接させ、そのうえ蝶棒を逆開き用スライダー内へ蝶棒を挿入する際に、蝶棒の先端と停止爪との衝突を回避できる効果がある。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、箱棒は、蝶棒と対向する側面に、逆開き用スライダーの停止爪が入り込むことが可能な切欠部を形成し、切欠部を構成する周壁に当接部を設けたことによって、逆開き用スライダーの停止爪を箱棒の当接部に対して確実に当接させることができる効果がある。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、箱棒は、蝶棒と対向する側面から突出する挿入片を有し、蝶棒は、箱棒と対向する側面に箱棒の挿入片を収容可能な収容部と、箱棒へ向けて突出する当接部とを有し、当接部と挿入片とが箱棒と蝶棒の表裏方向にずれた位置に配置したことによって、蝶棒が逆開き用スライダー内へ挿入される際に、蝶棒の当接部と箱棒の挿入片とが衝突し合うことなく、蝶棒を逆開き用スライダー内へ円滑に挿入できる効果がある。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、蝶棒は、箱棒と対向する側面から突出する当接部を設け、当接部は蝶棒の基端側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成したことによって、当接部における停止爪と接触する部分の面積を広くなり、当接部と停止爪とが広い面積で接触し、逆開き用スライダーの移動を確実に停止させる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明におけるスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、図1に示すように、ファスナーチエン5の長さ方向の一端部に取り付けられた箱棒3と蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とを内部に挿入可能な逆開き用スライダー1とから構成される。ファスナーチエン5は、左右一対のファスナーストリンガー6,6を有し、各ファスナーストリンガー6,6は、ファスナーテープ8と、ファスナーテープ8の一側縁に沿って取り付けられたファスナーエレメント7と、一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の上端に隣接して取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の上端に隣接して取り付けられた蝶棒4と、各ファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7の下端に隣接して取り付けられた止め具14,14と、ファスナーエレメント7,7に沿って摺動し、ファスナーエレメント7,7を噛合または分離可能な二つのスライダー1,2とを有している。
【0022】
箱棒3と蝶棒4の取り付けは、まず、ファスナーテープ8からファスナーエレメント7を除去したスペース部11を形成し、このスペース部11に樹脂製フィルムを貼り付けて補強部10を形成した後、この補強部10に樹脂製の箱棒3と蝶棒4とを射出成形して固定する。
【0023】
二つのスライダー1,2は、前後に反対方向を向いて配置されており、各スライダー1,2とも内部にファスナーエレメント7が挿通され、このファスナーエレメント7と係合可能な停止爪35,35’を有している。一方のスライダーは、箱棒3と蝶棒4とで逆開き開離嵌挿具を構成する逆開き用スライダー1である。逆開き用スライダー1は、ファスナーチエン5の上端部側から内方側へ向けて移動した時、すなわち、スライダー1が箱棒3と蝶棒4とに接触した状態から離れる方向へ移動した時に、噛合状態のファスナーエレメント7を左右に分離することができる。また、他方のスライダーは、止め具14と当接可能な開き用スライダー2である。開き用スライダー2は、ファスナーチエン5の内方側から下端部側へ向けて移動した時、すなわち、スライダー2が止め具14へ接近する方向へ移動した時に、分離状態のファスナーエレメント7を噛合することができる。
【0024】
箱棒3は、図4,5に示すように、ファスナーテープ8の内側すなわち左右のファスナーテープ8が対向する側に配置された内側面と、この内側面とは反対側で、ファスナーテープ8の外側に配置された外側面とを有し、箱棒3の先端は、L字状に側方へ突出し、詳述すると内側面からファスナーテープ8の内方側、すなわち、ファスナーエレメント7を取り付けた側の縁部とは反対側の縁部へ向けて突出し、逆開き用スライダー1の上翼板28に設けたフランジ31に当接して、逆開き用スライダー1の移動を停止させ、スライダー1が箱棒3から抜け取れることを防ぐ鉤止部21を設けている。
【0025】
また、箱棒3の外側面にはファスナーテープ8の外方側、すなわち蝶棒4側へ向けて突出する挿入片22,23が形成され、この挿入片22,23は蝶棒に形成した収容部18,19に挿入して収容されることができる。箱棒3の基端、すなわちファスナーエレメント7と隣接する側の端部には、箱棒3の裏面寄りの外側面から外方へ向けて突出し、蝶棒4に設置した第1収容部19に挿入することができる第1挿入片22を設けている。さらに、箱棒3には、第1挿入片22よりも箱棒3の先端寄りで、かつ第1挿入片22よりも箱棒3の表面寄りの位置に、箱棒3の外側面から外方へ向けて突出し、蝶棒4に設置した第2収容部18に挿入することができる第2挿入片23を設けている。
【0026】
蝶棒4は、図2,3に示すように、ファスナーテープ8の内側すなわち左右のファスナーテープ8が対向する側に配置された内側面と、この内側面とは反対側で、ファスナーテープ8の外側に配置された外側面とを有し、その先端がファスナーテープ8の内方側へ向けてやや反り返る形に形成して、逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに挿入し易いようにしている。また、蝶棒4は、その外側面すなわち箱棒3の外側面と対向する面の先端寄りに、箱棒4側へ向けて突出し、逆開き用スライダー1に設けた停止爪35の前後方向の端面に当接可能な当接部13を有している。さらに、蝶棒4は、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、蝶棒4の表面と外側面との境界部分を段差状に切り欠き、蝶棒4が逆開き用スライダー1に挿入された時に、蝶棒4と停止爪35とが接触し合わないようにするための切欠部16を有している。
【0027】
当接部13は、蝶棒4の長さ方向の中間位置に配置されており、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄く、蝶棒4の表面と連続する表面と、蝶棒4の外側面と連結する側端面と、この側端面と交差する方向に延びる先端面とを有した板状体であり、蝶棒4の基端側すなわちファスナーエレメント7に隣接する側から先端側に向けて漸次幅寸法、すなわち突出量を増加させた略三角形状を呈している。これにより、当接部13は、その先端が基端よりも幅広く形成されることとなり、先端面が停止爪35と当接した時に、停止爪35との接触面積を広く確保することができる。
【0028】
蝶棒4の外側面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3に向けて突出する支持部15,17を有している。また、支持部15,17の表面側または裏面側に箱棒3の挿入片22,23を収容可能な収容部18,19を有している。蝶棒4の基端、すなわちファスナーエレメント7と隣接する側の端部には、蝶棒4の外側面から外方へ向けて突出する第1支持部15を設け、この第1支持部15の裏面側に凹状の第1収容部19を設けて、箱棒3の第1挿入片22が挿入される。また、この第1支持部15よりも蝶棒4の先端寄りに、蝶棒4の外側面から外方へ向けて突出する第2支持部17を設け、この第2支持部17の表側に凹状の第2収容部18を設けて、箱棒3の第2挿入片23が挿入される。これにより、第1挿入片22と第1支持部15とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向で重なり合い、また第2挿入片23と第2支持部17とが表裏方向で重なり合い、箱棒3と蝶棒4とに表裏方向の突き上げ力が加わっても、箱棒3と蝶棒4の位置が表裏方向に変位することがなく位置決めされる。
【0029】
このスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、図6に示すように、箱棒3が挿通された逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに対し、蝶棒4を開き用スライダー2から挿入し、次いで逆開き用スライダー1に差し込む。この差し込み操作は、図9に示すように、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に挿入して収容され、第2挿入片23と蝶棒4の第1支持部15とが当接し、第2挿入片22が第1収容部19に挿入して収容されて完了する。次に、開き用スライダー2をファスナーチエン5の内方側へ向けて、ファスナーエレメント7に沿って摺動させることにより、図10に示すように、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が噛合し、ファスナーチエン5が閉鎖された状態となる。
【0030】
ファスナーチエン5を図10に示した閉鎖状態としたとき、逆開き用スライダー1が人為的な操作無しにファスナーチエン5の内方側へ向けて移動しようとしても、図11に示すように、逆開き用スライダー1の停止爪35が蝶棒4の当接部13に当接して、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することはできない。よって、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が逆開き用スライダー1により分離されることがない。
【0031】
閉鎖されたファスナーチエン5を開放状態にするには、まず、開き用スライダー2を逆開き用スライダー1へ向けて移動して、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7を分離させ、次いで、図6に示すように、蝶棒4を逆開き用スライダー1および開き用スライダー2から抜き取ればよい。
【実施例1】
【0032】
図1〜12に示した実施例1のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、蝶棒4に逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することを規制する機構を備えているところに特徴がある。ファスナーチエン5は、ポリアミド、ポリエステルなどの合成樹脂製モノフィラメントをコイル状に捲回し、またはジグザグ状に屈曲して、ファスナーテープ8の長さ方向に連続する線条ファスナーエレメント7を形成し、このファスナーエレメント7の内部に芯紐12を挿通し、縫糸9によってファスナーテープ8の長さ方向の一側縁部に沿って縫着する。あるいはポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて、ファスナーテープ8の長さ方向の一側縁部に沿って形成した膨大部に、ファスナーテープ8の長さ方向に所定の間隔を空けて、射出成形手段によって単体のファスナーエレメントを成形してファスナーチエン5を形成する。
【0033】
ファスナーチエン5における左右一対のファスナーストリンガー6,6に一定間隔でファスナーエレメント7をファスナーテープ8から除去してスペース部11を形成する。スペース部11はファスナーストリンガー6の長さ方向の両端に形成され、その一端側に位置するスペース部11に樹脂製フィルム、例えば表面に熱可塑性エラストマーフィルム、裏面にホットメルト型接着剤から形成した補強テープを超音波溶着して補強部10を形成する。左右一方のファスナーストリンガー6,6における補強部10に箱棒3を取り付け、他方のファスナーストリンガー6における補強部10に蝶棒4を取り付ける。箱棒3と蝶棒4とはポリアセタール、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて射出成形手段によって成形され、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接して固定する。また、各ファスナーストリンガー6,6の他端のスペース部11には止め具14が取り付けられる。止め具14は、箱棒3、蝶棒4と同じ熱可塑性樹脂を用いて射出成形手段によって成形され、ファスナーエレメント7,7の長さ方向の他端に隣接して固定されている。
【0034】
箱棒3、蝶棒4、止め具14を成形したファスナーチエン5には、図1に示すように、ファスナーエレメント7に対する摺動方向の前端側が箱棒3および蝶棒4側に向くように配置された逆開き用スライダー1と、この逆開き用スライダー1とは反対方向、すなわち摺動方向の前端側が止め具14側に向く開き用スライダー2とをファスナーエレメント7に挿通している。各スライダー1、2はアルミニウム合金、亜鉛合金などの金属を用いてダイカスト成形手段によって成形される。逆開き用スライダー1と開き用スライダー2は、箱棒3を取り付けた側のファスナーストリンガー6に対し脱落不能に装着されていおり、ファスナーエレメント7の一端に取り付けた箱棒3と、他端に取り付けた止め具14とで、両スライダー1,2がファスナーエレメント7から抜け取れることを阻止している。
【0035】
なお、逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とは同一形態、例えば図15に示すように、上下に間隔を空けて平行に配置された上翼板28と下翼板29と、各翼板28、29の一端を連結した案内柱33と、上翼板28と下翼板29の少なくとも一方の左右両側縁から他方へ向けて突出するフランジ31とを有したスライダー胴体30と、上翼板28の上面に配置され、上翼板28と下翼板29との間に形成されたエレメント案内通路32に対し、上翼板28に形成された爪孔34から出没可能な停止爪35と、停止爪35の上面に接し、停止爪35をエレメント案内通路32内へ突出する方向へ弾性的に付勢する板バネ37と、上翼板28の上面から起立する取付柱36に固定され、停止爪35と板バネ37とを内部に収納するカバー38と、スライダー胴体30と停止爪35との間に配された軸部41を有し、軸部41を上動させることで停止爪35を持ち上げて、停止爪35をエレメント案内通路32から抜脱させることが可能な引手40とから構成されている。各スライダー1、2は、ファスナーチエン5に対して、スライダー1,2の前後の向きが逆方向になるように配され、ファスナーチエン5の端部から内方へ向けて移動したときにファスナーエレメント7を分離できるように形成する。
【0036】
逆開き開離嵌挿具としての箱棒3、蝶棒4について説明する。箱棒3は、図4,5に示すように、正面から見て先端が側方へ突出し全体が略L字形状の棒状体で、ファスナーストリンガー6の長さ方向の一端において、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接する形で、ファスナーテープ8の一側縁に沿って固定されている。ファスナーテープ8における箱棒3が固定されるテープ部分には、補強テープを貼り付けた補強部10が形成されている。補強部10は、逆開き開離嵌挿具を操作する際に、箱棒の近傍のテープ部分を指で摘んで操作し易くするため、テープ部分が妄りに変形しないように補強している。
【0037】
箱棒3は、表面と、裏面と、箱棒3の表裏方向に直交する左右方向に、ファスナーテープ8の内方側に位置する内側面と、ファスナーテープ8の外方側に位置する外側面とを有している。箱棒3の先端には、内側面からファスナーテープ8の内方側、すなわち外側面がある側とは反対側へ向けて突出する鉤止部21を設けてL字状を呈するように形成し、この鉤止部21を含んだ箱棒3の先端の左右方向の幅寸法は、箱棒3の基端の幅寸法に比べて幅広く形成されている。これにより、箱棒3の先端が逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に入り込もうとしたとき、図6に示すように、鉤止部21が逆開き用スライダー1の上翼板28に形成したフランジ31の先端に当接し、箱棒3の外側面が逆開き用スライダー1の案内柱33の側面に当接して、箱棒3の先端がエレメント案内通路32内を通過することができず、逆開き用スライダー1が箱棒3から抜け取れるのを防ぐことができる。
【0038】
箱棒3の基端は、箱棒3の先端に対して箱棒3の長さ方向の反対側に位置し、ファスナーエレメント7の長さ方向一端に隣接している。箱棒3の基端には、箱棒3の外側面からファスナーテープ8の外方側、すなわち内側面がある側とは反対側へ向けて突出する第1挿入片22が形成されている。この第1挿入片22は、箱棒3の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、箱棒3の裏面と連続する裏面を有し、蝶棒4に設けた凹状の第1収容部19に挿入できる。また、第1挿入片22よりも箱棒3の先端寄りに、箱棒3の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第2挿入片23を形成している。この第2挿入片23は、箱棒3の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、箱棒3の表裏方向の中央位置に配置され、蝶棒4に設けた凹状の第2収容部18に挿入できる。各挿入片22,23が各収容部19,18に挿入されることにより、箱棒3と蝶棒4とが逆開き用スライダー1内に差し込まれた際に、箱棒3と蝶棒4の位置がずれないように安定して保持することができる。
【0039】
蝶棒4は、図2,3に示すように、ファスナーストリンガー6の長さ方向の一端において、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端に隣接する形で、ファスナーテープ8の一側縁に沿って固定されている。蝶棒4は、その先端がファスナーテープ8の内方側、すなわちファスナーテープ8におけるファスナーエレメント7を取り付けた縁部とは反対側の縁部側に向けて弧状に湾曲しており、正面から見てやや反り返った形状に形成されている。ファスナーテープ8における蝶棒4が固定されるテープ部分には、箱棒3の場合と同様に、補強テープを貼り付けた補強部10が形成されており、蝶棒の近傍のテープ部分が妄りに変形しないように補強している。
【0040】
蝶棒4は、表面と、裏面と、蝶棒4の表裏方向に直交する左右方向に、ファスナーテープ8の内方側に位置する内側面と、ファスナーテープ8の外方側に位置する外側面とを有している。蝶棒4の外側面すなわち箱棒3と対向する面には、蝶棒4の長さ方向の中央位置から先端寄りにかけて、ファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する当接部13を形成している。この当接部13は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、正面から見て略三角形状を呈しており、蝶棒4の長さ方向、すなわち蝶棒4の基端側から先端側に向けて延びる側端面と、この側端面と交差し、蝶棒4の長さ方向と直交する左右方向に向けて延びる先端面とを有している。この当接部13の先端面が、図15に示すように、逆開き用スライダー1の上翼板28からエレメント案内通路32内へ突出する停止爪35において、スライダー1の前後方向における後方側の端面と当接し、逆開き用スライダー1の移動を停止させることができる。
【0041】
また、当接部13は蝶棒4の表裏方向において表面側に寄った位置に配置されている。この当接部13と、箱棒3の第1挿入片22と第2挿入片23とは、箱棒3と蝶棒4の表裏方向において突出位置が表裏にずれていて、当接部13が表面側に位置し、第1挿入片22が裏面側に位置し、第2挿入片23が当接部13と第1挿入片22の間に位置している。これにより、蝶棒4が逆開き用スライダー1内に差し込まれ、蝶棒4と箱棒3とが接近したときに、箱棒3の第1挿入片22および第2挿入片23と接触し合わないようにしている。
【0042】
また、蝶棒4には、当接部13の基部すなわち当接部13の先端面と蝶棒4の外側面とが交差した隅角部分から蝶棒4の先端にかけて、蝶棒4の表面と外側面とが交差する部分を段差状に切り欠いた切欠部16が形成されている。停止爪35はエレメント案内通路32内に突出しており、この突出位置がエレメント案内通路32内に挿入される蝶棒4の挿入経路に位置している。このことから、切欠部16は、蝶棒4がエレメント案内通路32内に挿入するときに、その挿入途中において停止爪35が入り込み、蝶棒4と停止爪35との接触を回避するための空間を形成している。
【0043】
蝶棒4の基端は、蝶棒4の先端に対して蝶棒4の長さ方向の反対側に位置し、ファスナーエレメント7の長さ方向の一端部に隣接している。蝶棒4の基端には、蝶棒4の外側面からファスナーテープ8の外方側、すなわち内側面がある側とは反対側へ向けて突出する第1支持部15が形成されている。この第1支持部15は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、蝶棒4の表面と連続する表面を有している。第1支持部15の裏面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3の外側面へ向けて開口する凹状の第1収容部19が形成されており、箱棒3の第1挿入片22が蝶棒4の第1収容部19に挿入されたときに、第1支持部15と第1挿入片22とが箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合うことができる。また、第1支持部15の先端には、蝶棒4に隣接するファスナーエレメント7側へ向けて突出する係合突起20を形成している。この係合突起20は、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7が噛合したときに、箱棒3を取り付けた側のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7と係合することができる。
【0044】
また、蝶棒4には、第1支持部15よりも蝶棒4の先端側に、蝶棒4の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第2支持部17が形成されている。この第2支持部17は、蝶棒4の表裏方向の厚みよりも薄い板状体で、蝶棒4の表裏方向における裏面寄りの位置に配置されている。第2支持部17の上面には、ファスナーテープ8の外方側、すなわち箱棒3の外側面へ向けて開口する凹状の第2収容部18が形成されており、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に挿入されたときに、第2支持部17と第2挿入片23とが箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合うことができる。また第2支持部17は、その先端から蝶棒4の外側面に向けて延び、蝶棒4の先端側へ向けて下り傾斜する傾斜面を有している。これにより、蝶棒4を開き用スライダー2へ差し込む際、第2支持部17が開き用スライダー2の案内柱33と当接しても、第2支持部17の傾斜面が案内柱33の側面を滑りながら移動し、蝶棒4を開き用スライダー2内へ円滑に差し込むことができる。
【0045】
このスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具の作用を説明すると、図6に示すように、箱棒3に挿通された逆開き用スライダー1と開き用スライダー2とに対し、蝶棒4を開き用スライダー2の前端側から、同スライダー2のエレメント案内通路32に挿入し、次に逆開き用スライダー1の後端側から、同スライダー1のエレメント案内通路32に挿入する。逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32に挿入された蝶棒4は、図7,8に示すように、蝶棒4の先端に形成した切欠部16にスライダー1の停止爪35の先端を入り込ませながら逆開き用スライダー1の前端側ヘ向けて移動する。この後、図9に示すように、箱棒3の第2挿入片23と蝶棒4の第1支持部15とが当接し、蝶棒4の差し込み操作は完了する。なお、このとき、開き用スライダー2に設けた停止爪35’が、箱棒3と、箱棒3に隣接するファスナーエレメント7との間にて、エレメント案内通路32内へ突出している。これにより、開き用スライダー2が逆開き用スライダー1から離れる方向へ移動しようとしても、停止爪35’がファスナーエレメント7と当接して、移動が停止される。
【0046】
次いで、開き用スライダー2の引手40を操作することで、同スライダー2の停止爪35’がエレメント案内通路32から抜脱するように持ち上げられ、この開き用スライダー2をファスナーチエン5の内方側、すなわち箱棒3、蝶棒4、逆開き用スライダー1からなる逆開き開離嵌挿具から離れる方向へ向けて移動させる。開き用スライダー2はファスナーエレメント7,7に沿って摺動し、図10に示すように、左右のファスナーストリンガー6,6の各ファスナーエレメント7,7を噛合させ、ファスナーチエン5を閉鎖させる。
【0047】
このとき、蝶棒4の第1支持部15が箱棒3の第1挿入片22の表面側に位置し、また箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2支持部17の表面側に位置して、箱棒3の2つの挿入片と蝶棒4の2つの支持部とが表裏の位置関係を変えて重なり合っているので、箱棒3と蝶棒4とに表裏いずれの方向から突き上げ力が加わっても、箱棒3と蝶棒4の姿勢が変位することない。よって、突き上げ力により箱棒3と蝶棒4との間に大きな隙間が生じ、箱棒3と蝶棒4とに隣接するファスナーエレメント7に対して噛合状態の分離が誘発されることがない。
【0048】
また、蝶棒4の第1支持部15に形成した係合突起20は、箱棒3に隣接するファスナーエレメント7と係合し、箱棒3または蝶棒4とファスナーエレメント7との間の部分に表裏方向の突き上げ力が加わっても、この部分の姿勢が変位することがない。よって、突き上げ力により箱棒3または蝶棒4とファスナーエレメント7との間の部分に大きな隙間が生じ、この部分からファスナーエレメント7に対して噛合状態の分離が誘発されることがない。
【0049】
開き用スライダー2によってファスナーチエン5が閉鎖された後、図11に示すように、逆開き用スライダー1が仮想線で示した位置、すなわち逆開き用スライダー1のフランジ31の先端が箱棒3の鉤止部21と当接した状態から、人為的な操作を行うことなくファスナーチエン5の内方側へ移動、すなわちフランジ31の先端が箱棒3の鉤止部21から離間した場合、蝶棒4の当接部13が逆開き用スライダー1の停止爪35に当接するので、逆開き用スライダー1の移動を停止させることができる。
【0050】
閉鎖されたファスナーチエン5を左右のファスナーストリンガー6,6に分離させるには、開き用スライダー2をファスナーエレメント7に沿って開離嵌挿具に向けて摺動させ、左右のファスナーストリンガー6,6のファスナーエレメント7,7を分離させる。次いで、開き用スライダー2を箱棒3と蝶棒4とに挿通させ、逆開き用スライダー1に接する位置まで移動させる。次に、図6に示すように、蝶棒4を逆開き用スライダー1と開き用スライダー2の各エレメント案内通路32,32から抜き取れば、蝶棒4側のファスナーストリンガー6と箱棒3側のファスナーストリンガー6とにそれぞれ分離させることができる。
【実施例2】
【0051】
図13,14に示した実施例2のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、箱棒3に逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側へ移動することを規制する機構を備えているところに特徴がある。ファスナーチエン5の形態は前記実施例1と同一であり、ファスナーチエン5は、左右一対のファスナーストリンガー6,6におけるファスナーテープ8,8の長さ方向の一側縁に、内部に芯紐12を挿通したコイル状のファスナーエレメント7を縫糸9によって縫着している。各ファスナーストリンガー6,6の長さ方向の一端に配置したスペース部11に樹脂フィルムを貼り付けて補強部10を形成し、一方のファスナーストリンガー6の補強部10に熱可塑性樹脂製の箱棒3を成形し、他方のファスナーストリンガー6の補強部10に熱可塑性樹脂製の蝶棒4を成形する。
【0052】
箱棒3は、当接部13および切欠部16を設ける以外の構成は、実施例1の箱棒3の構成と同一であり、図13に示すように、先端が側方へ突出し全体が略L字形状を呈し、箱棒3の先端の内側面からファスナーテープ8の内方側へ向けて突出する鉤止部21と、ファスナーエレメント7に隣接する基端の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第1挿入片22と、この第1挿入片22よりも箱棒3の先端側に配置され、箱棒3の外側面から突出する第2挿入片23とを有している。鉤止部21は逆開き用スライダー1が箱棒3から脱落することを阻止し、第1挿入片22と第2挿入片23とは、蝶棒4に配した第1収容部19と第2収容部18とにそれぞれ挿入される。
【0053】
鉤止部21よりも箱棒3の基端側の位置には、箱棒3の表面と外側面とが交差する境界部分を段差状に切り欠いて切欠部16が形成されおり、逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に箱棒3が挿入されている際、逆開き用スライダー1の停止爪35が切欠部16に入り込んで、箱棒3と停止爪35とが接触し合わないようにしている。また、切欠部16は、その周壁が停止爪35と当接できるように当接部13として構成されている。切欠部16は、箱棒3を正面側から見たときに略三角形状を呈しており、切欠部16の周壁が箱棒3の左右方向に延びる横壁面と、箱棒3の長さ方向に延びる縦壁面とを有している。この横壁面と縦壁面とが、箱棒3の内方、すなわち箱棒3の外側面から内側面寄りに離れた位置にて交差して隅角部24を形成している。切欠部16の横壁面が逆開き用スライダー1の前後方向に向く面であり、停止爪35の前後方向の端面と当接する。
【0054】
蝶棒4は、切欠部16と当接部13とが形成されず、それ以外の構成は実施例1の蝶棒4の構成と同一であり、図14に示すように、先端がファスナーテープ8の内方側へ弧状に湾曲して、全体が反り返った形状を呈し、ファスナーエレメント7に隣接する基端の外側面からファスナーテープ8の外方側へ向けて突出する第1支持部15と、この第1支持部15よりも蝶棒4の先端側に配置され、蝶棒4の外側面から突出する第2支持部17とを有している。また、第1支持部15の裏面側に凹状の第1収容部19を設け、第2支持部17の表面側に凹状の第2収容部18を設けている。さらに、第1支持部15の先端に、箱棒3側のファスナーエレメント7と係合する係合突起20を設けている。
【0055】
従って、箱棒3と蝶棒4とを逆開き用スライダー1のエレメント案内通路32内に挿入した状態においては、箱棒3の第1挿入片22が蝶棒4に設けた第1収容部19に収容され、箱棒3の第2挿入片23が蝶棒4の第2収容部18に収容されている。また、第1挿入片22と第1支持部15と箱棒3および蝶棒4の表裏方向に重なり合い、第2挿入片23と第2支持部17とが表裏方向に重なり合っている。なお、箱棒3に当接部13を設ける場合、蝶棒4は逆開き用スライダー1の案内柱33を挟んで左側のエレメント案内通路32に挿入する左差しタイプとなる。一方、実施例1の場合は、蝶棒4が案内柱33を挟んで右側のエレメント案内通路32に挿入される右差しタイプとなる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
この発明のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具は、衣服や鞄の開閉部分、カーペットや人工芝の連結部分などに取り付けられるファスナーチエンに装着され、逆開き用スライダーが人為的な操作なしに勝手に移動することを防止するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施例1に基づく逆開き開離嵌挿具の正面図である。
【図2】同上の蝶棒の斜視図である。
【図3】同上の蝶棒の正面図である。
【図4】同上の箱棒の斜視図である。
【図5】同上の箱棒の正面図である。
【図6】同上の開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込み開始時の断面図である。
【図7】同上の蝶棒が停止爪に接近した状態を示す要部断面図である。
【図8】同上の蝶棒が停止爪との接触を回避しながら移動する状態を示す要部断面図である。
【図9】同上の逆開き用スライダーおよび開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込み完了時の断面図である。
【図10】同上の開き用スライダーを摺動させた状態を示す断面図である。
【図11】同上の逆開き用スライダーが移動したとき、停止爪と当接部が当接した状態を示す要部断面図である。
【図12】同上の蝶棒の裏側を示す部分断面図である。
【図13】実施例2に基づく箱棒の斜視図である。
【図14】同上の逆開き用スライダーに対し、蝶棒の差し込みを完了し、箱棒と停止爪が係止した状態を示す要部断面図である。
【図15】逆開き用スライダーおよび開き用スライダーに用いるスライダーの断面図である。
【図16】公知の逆開き開離嵌挿具の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 逆開き用スライダー
3 箱棒
4 蝶棒
5 ファスナーチエン
6 ファスナーストリンガー
7 ファスナーエレメント
13 当接部
16 切欠部
18 収容部(第2収容部)
19 収容部(第1収容部)
22 挿入片(第1挿入片)
23 挿入片(第2挿入片)
35 停止爪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のファスナーストリンガー6,6における一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とが内部に挿入可能な逆開き用スライダー1とから構成された逆開き開離嵌挿具において、蝶棒4または箱棒3に逆開き用スライダー1に設置した停止爪35と対面し、当接することが可能な当接部13を設け、当接部13と停止爪35とが当接したときに、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側への移動することを阻止してなることを特徴とするスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項2】
蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことが可能な切欠部16を形成してなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項3】
箱棒3は、蝶棒4と対向する側面に、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことの可能な切欠部16を形成し、切欠部16を構成する周壁に当接部13を設けてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項4】
箱棒3は、蝶棒4と対向する側面から突出する挿入片22,23を有し、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面に箱棒の挿入片22,23を収容可能な収容部18,19と、箱棒3へ向けて突出する当接部13とを有し、当接部13と挿入片22,23とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向にずれた位置に配置されてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項5】
蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13は蝶棒4の基端側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成されてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項1】
左右一対のファスナーストリンガー6,6における一方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた箱棒3と、他方のファスナーストリンガー6のファスナーエレメント7の長さ方向の一端に取り付けられた蝶棒4と、箱棒3と蝶棒4とが内部に挿入可能な逆開き用スライダー1とから構成された逆開き開離嵌挿具において、蝶棒4または箱棒3に逆開き用スライダー1に設置した停止爪35と対面し、当接することが可能な当接部13を設け、当接部13と停止爪35とが当接したときに、逆開き用スライダー1がファスナーチエン5の内方側への移動することを阻止してなることを特徴とするスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項2】
蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13の基部から蝶棒4の先端にかけて、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことが可能な切欠部16を形成してなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項3】
箱棒3は、蝶棒4と対向する側面に、逆開き用スライダー1の停止爪35が入り込むことの可能な切欠部16を形成し、切欠部16を構成する周壁に当接部13を設けてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項4】
箱棒3は、蝶棒4と対向する側面から突出する挿入片22,23を有し、蝶棒4は、箱棒3と対向する側面に箱棒の挿入片22,23を収容可能な収容部18,19と、箱棒3へ向けて突出する当接部13とを有し、当接部13と挿入片22,23とが箱棒3と蝶棒4の表裏方向にずれた位置に配置されてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【請求項5】
蝶棒4は、箱棒3と対向する側面から突出する当接部13を設け、当接部13は蝶棒4の基端側から先端側に向けて漸次幅広に突出する形に形成されてなる請求項1記載のスライドファスナーの逆開き開離嵌挿具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−99975(P2008−99975A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286654(P2006−286654)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
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