説明

スライドファスナー用下止具及び下止具を備えたスライドファスナー

【課題】脆弱さの無いスライドファスナー用下止具及び下止具を備えたスライドファスナーを提供すること。
【解決手段】間にギャップ3を介在させて配された一対のファスナーテープ2であって、その内側縁部に噛合エレメント5を備えている当該ファスナーテープ2からなるスライドファスナー用の下止具10が開示されている。当該下止具は、リベット部材11と、これに対応するバックプレート12からなる。バックプレート12は、少なくとも一つの貫通孔12aを備えている。当該リベット部材11は、バックプレート12の当該少なくとも一つの孔12aを貫通して係合し、バックプレート12を越えた位置においてバックプレート12押圧して永久的に変形するようになっている少なくとも一つの一体的な突出ピン11bを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のファスナーテープを有し、各ファスナーテープの間にギャップを形成したスライドファスナーであって、当該テープの夫々の内側縁部に縦列状の噛合エレメントを設けたスライドファスナーに使用するための下止具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
具体的に言うと、本発明は、スライドファスナーの夫々の面に一つづつファスナーテープの噛合エレメント列の下端部近傍においてファスナーテープ間のギャップを跨って取り付けられるようになっている第1及び第2の取付プレート部材からなる下止具であって、これらのプレート部材は、ファスナーテープの表裏方向に延びる少なくとも一つの連結部材によって互いに連結されているような下止具に関するものである。
【0003】
この種の下止具は、例えば、EP−0110346−A1に開示されている。
【特許文献1】EP−0110346−A1公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この文献に開示されている下止具は、いわゆるバタフライタイプという構造であり、金属製の一片で作られている。この先行技術の下止具においては、下止具をファスナーテープに取り付ける際に下止具の翼部を折り曲げることが必要であるので脆弱さが見られた。
本発明の一つの目的は、上記のような脆弱さの無いスライドファスナー用改良下止具を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的及びその他の目的は、上に記載された種類の下止具であって、当該第1及び第2取付プレート部材11a,12は、夫々リベット部材11のプレート部11aとバックプレート12であること、バックプレート12は、少なくとも一つの貫通孔12aを設けていること、及び、当該連結部材11bは、リベット部材11に設けられた一つの一体的な突出ピン11bであって、当該突出ピン11bは、バックプレート12の少なくとも一つの貫通孔12aを貫通して係合し、バックプレート12を越えた位置でそしてバックプレートに対して押圧されて永久変形するようになっていることを特徴とする前記下止具によって達成することが出来る。
【発明の効果】
【0006】
本発明による下止具がスライドファスナーに取り付けられる際に、リベット部材のピンを変形するために圧力を均等にかけることができ、下止具の取付プレート部材の如何なる部分も折り曲げる必要性が無いのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の更なる特徴及び効果は、添付図面を参照して好ましい実施例に従って本発明を説明している次に続く発明の詳細な説明の部分から明らかになる。尚、この実施例は、発明の範囲を限定するものではない。
【0008】
これらの図面において、参照番号1は、スライドファスナーを示している。当該スライドファスナー1は、左右一対のファスナーテープ2を有し、各ファスナーテープ2の左右方向に対向する内側縁部を有し、これら内側縁部の間にギャップ3が形成されている。
【0009】
図に示された実施例においては、各ファスナーテープ2の夫々の内側縁部に沿って、縦状補強コード4が設けられている。
【0010】
テープ2の内側縁部には、それ自体周知の方法で、金属製エレメント又は射出成型エレメントのような縦列状の噛合エレメント5が設けられている。
本発明による下止具は、参照符号10で示されており、噛合エレメント5の縦列の下端部近傍においてジッパーのファスナーテープ2に取り付けられている。
【0011】
下止具10は、当初は別個の二つの部材、即ち、リベット部材11と、これに対応するバックプレート12とからなっている。(特に、図8を参照せよ。)
【0012】
図面に示された実施例においては、リベット部材11は、縦方向に長尺な実質的に矩形のプレート部11aからなっている。プレート部11aには、その内側面から一体的に突出する2本のピン11bが設けられており、当該ピン11bは、プレート部11aの縦方向に所定の間隔を空けて配置されている。一方、バックプレート12は、実質的にリベット部材11のプレート部11aと同じ長尺な矩形形状を呈している。バックプレート12には、バックプレート12を表裏方向に貫通する2つの孔12aが形成されており、当該孔12aは、バックプレート12の縦方向に所定の間隔を空けて配置されている。リベット部材11のピン11bは、バックプレート12の対応する孔12aに挿入され、再び孔12aから抜け取れないように係合するようになっている。(特に図3及び図8を参照せよ。)図8に関してであるが、ここに示されている実施例においては、ピン11bは、実質的に円筒状の軸部を有しており、実質的に円錐状の終端部で終わっている。
【0013】
リベット部材11のピン11bは、バックプレート12の孔12aに貫通した後、例えば、打撃によってバックプレート12を越えた位置でそしてバックプレートに対して押圧されて塑性変形する。また、打撃に代えて、当該ピン11bは、熱で変形させてもよく、ピン11bが永久に元の形状に戻らないように変形される。この変形によって、ピン11bの終端部は、ピン11bの半径方向へ膨大化し、孔12aの直径よりも大きな形状となって、ピン11bが孔12aから抜け取れ不能とすることができる。
【0014】
図8に関して説明するが、ファスナーテープ2に取り付けられるリベット部材11のプレート部11aの面には、ピン11bを挟んだ左右位置に、プレート部11aの縦方向へ平行に延びる一対の縦溝11cが設けられており、当該縦溝11cは、ファスナーテープ2の補強コード4を収容し、これを確実に把持するようになっている。
【0015】
リベット部材11のプレート部11aは、ファスナーテープ2を把持するため鋸刃状切込部13の列が設けられていることが好ましい。当該鋸刃状切込部13の列は、プレート部11aの4つのコーナー部分に配置され、縦溝11cに沿って、プレート部11aの縦方向へ延びている。(図8を参照せよ。)これらの鋸刃状切込部13が、対応するファスナーテープ2を咬着するようになっているからである。しかしこれを設ける必要は必ずしも無い。
【0016】
夫々の溝11cには、縦溝11cを横断するようにプレート部11aの横方向に延びる少なくとも一つの突出峰部11dを設けた方がよい。好ましくは、複数個の突出峰部11dをプレート部11aの縦方向に所定の間隔を空けて設けた方がよい。これらの突出峰部11dが、対応するファスナーテープ2の補強コード4を咬着するようになっているからである。しかしこれを設ける必要は必ずしも無い。
【0017】
図1乃至図7に示された実施例において、下止具10のリベット部材11とバックプレート12は、リベット部材11のピン11bがテープ2を貫通しないようにファスナーテープ2に取り付けられている。当該ピン11bは、テープ2を貫通しない代わりに、ファスナーテープ2の内側側面の間に形成されたギャップ3を貫通して延びているのである。即ちピン11bは、ファスナーテープ2の表裏方向に延び、ギャップ3に挿入されているのである。ファスナーテープ2、特に、その補強コード4は、リベット部材11のプレート部11aとこれに協働するバックプレート12との間にしっかりと挟着される。このとき、各ファスナーテープ2の補強コード4は、リベット部材11のプレート面11aに設けた縦溝11cに収容されているため、ファスナーテープ2を左右方向へ引っ張る力が加わっても、補強コード4が縦溝11cの側面に引っ掛かり、ファスナーテープ2がプレート部11aとバックプレート12の間の隙間から引き出されてしまうことを防止するのである。また、プレート部11aに設けた鋸刃状切込部13がファスナーテープ2を咬着し、更に、縦溝11cに設けられた突出峰部11dが補強コード4を咬着するため、ファスナーテープ2を縦方向に引っ張る力が加わっても、ファスナーテープ2がプレート部11aとバックプレート12の間の隙間から引き出されてしまうことを防止するのである。
【0018】
図9及び図10に示されている実施例においては、各ファスナーテープ2の下端部2は、夫々(少なくとも一つの)貫通孔(これらの図においては見えない。)が設けられており、リベット部材11のピン11bは、バックプレート12の対応する孔12aを貫通するとともに、ファスナーテープ2のこれらの貫通孔にも貫通して係合しており、下止具10は、全体として、ファスナーテープ2をその横方向に連結している。
【0019】
リベット部材11の外側面そして/又はバックプレート12の外側面は、商号、商標等を表すために使用しても良い。リベット部材11そして/又はバックプレート12の大まかな形状は、特定のロゴについての顧客の希望に最も良く合わせるために変えることが出来るのである。
【0020】
図面を参照にして以上説明された実施例においては、リベット部材11は、溝、鋸刃状切込部及び突出峰部を同時に設けているけれども、一般的には、リベット部材は、これらの構造の一つ又は一部のみを設けても良いのである。更に、鋸刃状切込部と峰部が、たとえ存在したとしても、リベット部材のプレート部に対して平行なあらゆる方向に延びても良いのである。
【0021】
以上のような構成によって、本発明による下止具をスライドファスナーに取り付けられる際に、リベット部材のピンを変形するために圧力を均等にかけることができるし、下止具の取付プレート部材の如何なる部分も折り曲げる必要性が無いのである。従って、当該下止具は、非常に丈夫であり、たやすく破断することが無いのである。
【0022】
以上の発明の詳細な説明の欄には色々な具体例が記載されているけれども、これらの具体例は、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではなく、本発明の好ましい実施例を単にいくつか提供していると解釈すべきである。
【0023】
従って、本発明の範囲は、記載された実施例によって判断するのではなく、むしろ、添付の請求項及びその均等物によって判断すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明による下止具を備えたスライドファスナーの一部を示す斜視図である。
【図2】図2は、図1に示されたスライドファスナーの一部の平面図である。
【図3】図3は、図2のIII−III線に沿って切った部分断面図である。
【図4】図4は、図2の矢印IVの方向に見たスライドファスナーの側面図である。
【図5】図5は、図2のV−V線に沿って切った部分拡大断面図である。
【図6】図6は、図2の矢印VIの方向に見た平面図である。
【図7】図7は、図1及び図2に示されたスライドファスナーの部分の背面図である。
【図8】図8は、本発明による下止具の分解斜視図である。
【図9】図9は、本発明の下止具を備えた別のスライドファスナーの端部の正面図である。
【図10】図10は、本発明の下止具を備えた別のスライドファスナーの端部の背面図である。
【符号の説明】
【0025】
2 ファスナーテープ
3 ギャップ
4 縦状補強コード
5 噛合エレメント
11 リベット部材
11a 第1取付プレート部材
11b 突出ピン
11c 溝部
11d 突出峰部
12 バックプレート(第2取付プレート部材)
12a 孔
13 鋸刃状切込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間にギャップ(3)を介在させて配された一対のファスナーテープ(2)であって、その内側縁部に噛合エレメント(5)を備えている当該ファスナーテープ(2)からなるスライドファスナー用の下止具(10)であって、当該下止具(10)は、ファスナーテープ(2)に取り付けられるようになっている第1及び第2取付プレート部材(11a,12)からなり、当該取付プレート部材(11a,12)は、噛合エレメント列(5)の下端部近傍でファスナーテープ(2)の間に介在したギャップ(3)を跨るようにスライドファスナー(1)の夫々の面に一つづつ取り付けられており、当該プレート部材(11a,12)は、少なくとも一つの横切って延びている連結部材(11b)によって互いに連結されており、当該第1及び第2取付プレート部材(11a,12)は、夫々リベット部材(11)のプレート部(11a)とバックプレート(12)であり、バックプレート(12)は、少なくとも一つの貫通孔(12a)を設けており、当該連結部材(11b)は、リベット部材(11)に設けられた一つの一体的な突出ピン(11b)であって、当該突出ピン(11b)は、バックプレート(12)の少なくとも一つの貫通孔(12a)を貫通して係合し、バックプレート(12)を越えた位置でそしてバックプレートに対して押圧されて永久変形するようになっていることを特徴とする下止具。
【請求項2】
リベット部材(11)は、複数の一体的な突出ピン(11b)を有しており、バックプレート(12)は、これに対応する数の貫通孔(12a)を有していることを特徴とする請求項1に記載された下止具。
【請求項3】
一対のファスナーテープ(2)の内側縁部は、夫々、縦状補強コード(4)を備えており、ファスナーテープ(2)に取り付けるためのリベット部材(11)のプレート部(11a)は、その面に、一対の平行に走る溝部(11c)を有しており、当該溝部(11c)は、ファスナーテープ(2)の補強コード4を収容して保持するようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載されたスライドファスナー用の下止具。
【請求項4】
リベット部材(11)のプレート部(11a)は、ファスナーテープ(2)を保持するための鋸刃状切込部(13)の列を設けていることを特徴とする請求項1に記載された下止具。
【請求項5】
当該リベット部材(11)は、ファスナーテープ(2)の補強コード(4)を咬着するようになっている少なくとも一つの突出峰部(11d)を設けていることを特徴とする請求項1に記載された下止具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載された下止具(10)を備えたスライドファスナー。
【請求項7】
バックプレート(12)とリベット部材(11)は、リベット部材(11)のピン(11b)がファスナーテープ(2)の間に介在するギャップ(3)を貫通して延びているような態様でファスナーテープ(2)に取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載されたスライドファスナー。
【請求項8】
一対のファスナーテープ(2)は、夫々、その下端部において、少なくとも一つの貫通孔を設けており、リベット部材(11)は、ファスナーテープ(2)の孔部及びバックプレート(12)の対応する孔部(12a)を貫通して係合する少なくとも二つの一体的なピン(11b)を有していることを特徴とする請求項6に記載されたスライドファスナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−68110(P2008−68110A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267185(P2007−267185)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】